星だけどまあどうだ、あれは ? 『巌窟王』は、あれは感動を与し、それから、犯罪者がせっせと努力するところにも感動はある だろうし、善悪じゃなくて、あなたがいまいわれたように、やっ 6 えるか ? ( 矢野徹が『巌窟王』好きであることを、星さんはよく ばり人間の可能性かな ? ご存知なのです ) だから、感動とは何かだな ? 常に対象が正義とか何とかでな星だから、そうなると、かくもとっぴょうしもないことをやりか ねないというのも、ひとつの小説のめざす点ではなかろうかとい ければいけないことはないわなあ : : : だから、あのすさまじい : う気がする。・ほくらはそう考えてるな。 ・ : やはり感動だろうと思うよ ( 笑 ) 。 人類の可能性か。なんだかしめくくりみたいになってきたな。 星復讐の快感じゃないか ? あれもやはり感動か ? うーん。そういわれると気がっかなかったけども、あれに感動何か読者諸君に贈る言葉はない したけども、何に感動したのかな : : : あとの復讐のところで感動星うーん、なんだろうね : ・ : ・の話があんまり出なかったな。 したんではなくて、最初の脱出するところに感動するんだなあ : ・ いやあ、界のあんまり中心人物的すぎるから、を書く : ・だから、不可能を可能にしたところにあるんじゃないかな : 人物のまわりには、こういうものがあるんだってことを、最初か あとでどんどん復讐するところは面白いけども、感動ではないわ ら・ほくは聞ぎたかったから、これはよかった : : : 星さんが、前の なあ。 戦争をどう考えるか、というようなことを考えているとか。 星うん、そうだなあ。 星うん、そう、明治以後のいろんな人を調べているうちに、その 最後にヨットで去ってゆくところではまた感動する : 問題につきあたったという : 星だけど、そうするとあの「パビョン」なんてのも。 かならずつきあたるし、つきあたらなければいけないわなあ。 感動あるわなあ ( 笑 ) 。だから、善悪とはあまり関係ないのか星いままでだれも論じていないものねえ。タ・フーだったのか、論 なあ。 ずる才能が・ : 星だから、人間とは、いろんな可能性を秘めているというのを、 論じようがなかったのか、 いかに発掘するかが作家の仕事かもしれんなあ。 星論じようがなかっただろうなあ。 うーん。だから、自己犠牲を書いて感動するのを、ちょっとエ 作家といえば、宇宙船が出て、ロポットが出てきて、空飛 夫して : : : あれだれだったかな、「さぶ」を書いた ? ぶ円盤が下りてきて、マルチ商法でそれを新しい宗教に変えるよ 星山本周五郎・ : うなことばかり考えていると思われても心外だからな : : : やつば 山本周五郎の作品で、好きな男がいるけれど、ロではいえない りちゃんと、戦争とは何かを考えているというのは大切なことで し、着せることもできない着物をつぎからつぎへと作っている女 の人 : : : あれは、やつばり自己犠牲で、そういうタイプもある星別に戦争をテーマに、
「何ですか、それは、閣下」 「さもないと、効果はない」 デビ日エンは、先まわりする恐怖を感じた。 「そうですね」 「いま、かれらが平和を保っているのは、ほぼ対等の力をもっ二つ デビ日エンはそういって、ハゲタカを思い浮かべた。そうせずに の勢力が、どちらもあえて開戦の責任を負おうとせんからだ。・だ はいられなかった。かれの眼のまえに、大きな、鱗のある鳥が舞っ が、一方が始めれば、もう一方もーー・あからさまに言ってしまえばていた ( それはフルリアに棲む小さな、無害な飛行生物に似ていた 全面報復をするだろう」 が、ただし途方もなく大きかった ) 。ゴム質の皮膚に被われた翼をも デビ日エンはうなずいた。 ち、長いカミソリの嘴をもち、大空から輪を描いて舞い下り、死に かけたものの眠玉をつついていた。 政務長官はつづけた。 「どちらかの領土内に一発でも核爆弾が落ちれば、被害者はただち かれの手が眼をふさいだ。かれはふるえながらいった。 に、相手側がそれを発射したと考えるにちがいない。かれらは二回「だれが、その宇宙船を操縦するんですか。だれが爆弾を落とすん めの攻撃を待ってはいられないと思うだろう。全面報復は、数時間 ですか」 以内に行なわれる。そして、反対側もそのお返しに報復する。数週長官の声も、デビ日エンよりカ強くはなかった。 間で、すべては終わる」 「わしは知らん」 「しかし、どうすれば、どちらかの側に最初の爆弾を落させること「わたしはいやです」とデビ日エン。「わたしにはできません。で ができますか」 きるフルリア人なんて、絶対にいませんよ」 「ちがうのだ、中尉。そこがポイントた。最初の爆弾は、我々が投哀れにも、長官は前後に身体をゆらしていた。 下する」 「モウブ人に、命令してやればどうかねーーー」 「なんですって ? 」 「だれが、命令するんですか」 長官はがつくりと吐息をもらした。 デビ日エンはよろめいた。 「そこだよ、きみ。大型霊長類の心理を計算してみたまえ、この解「評議会を呼び出してみよう。向うにも、データはみな行っておる はずだ。たぶん、なにか提案してくるだろう」 答は自ずから浮かんでくる」 「しかし、どうやって我々が ? 」 「爆弾をひとっ組み立てる。これはきわめて簡単だ。それを宇宙船 こうして、フルリア人は十五年あまり維持してきた、月の裏側の であそこへ運び、どこか生息地に投下するーーー」 基地を撤去することになった。 「生息地に ? 」 成果はなにひとつなかった。あの惑星の大型霊長類は、いまだに 長官は視線をそらし、不安そうにいった。 核戦争を起こしていない。今後も起こさないかもしれない。 ー 42
行くやつなんて数。 ( ーセントにすぎなかったけども、いまや全員ものは、読んで面白いものが本質だわな : : : それをなんかかえっ が行くようになっていて : て、文章というものを変に教えてアレルギーをおこさしているの協 オいかと思うんたが。その点、何か改革 が、いまの国語教育しゃよ ふーん、中学に行くのが半分とはなかったころだわな。 したらよさそうなもんだという : 星だからまあ、学問というものはまあ、そもそも、やれば面白い 国語の問題というのは、いやにしち面倒くさいんだな。何とか ところがあるわけだ。 うん。 を観賞しろとか : : : 書いてあること以外、何もないのに。 星いまになって、・ほくなんか、明治以後の歴史を調べて、いやこ星それに読む本人によって、いろんな受け取り方があると思うん んな面白い時代があったかという気分にもなったし、時代物を書 だな。まあ、ある人はこの会話が面白いとか、ここの形容が面白 いていたときには、徳川時代てなこんな妙な時代が二百五十年も いとか、そういうふうに、各人それそれの受け取り方があるんだ つづいたかという気分にもなったし、まあ、生物学だって新しい から、そういう教え方をすりゃあいいけど。でもこれは、入試と : だけどいまの学校の先生がもうすこし 発見を見ると面白いし : ・ いう問題があるから、そういうふうにできんのかもしれないわ そういう面白さを伝えてくれたら、いまの若い連中、どんなに考 え方が変わるかなあ。そこんところをもうすこし : だから、われわれのほうから、そういう入試の改革に役立てる そうだ。それがね、半村さんがいってたけど、戦争の終ったあ方法はないかと : くる年、だから昭和二十一年かに中学の一年生になったんたな、 星 ( 笑 ) かれ。そうすると、こないだまで英語は敵国の言葉だとおさえっ よくはないな、いまの入試というのは。かわいそうたなあ、入 けられていた英語の先生が、自分の知っていることを、英語に限 学試験たけのための勉強というのは、かわいそうだよ。人生の最 らすあらゆることを自分の生徒に夢中になって伝えようとしたと後というか、四十すぎたころに、ああよかったなと思える勉強じ いう、そういうところが必要たわなあ。 ゃなくて、大学に入るときだけ勉強して、あとは麻雀にスキー 星うん。 テニスだけ、遊ぶためだけというのは。 たから、・ほくが英語を教え、星さんが理科を教えたら、こいっ星まあ、学校へ行けば、それだけ友達がふえるというのが、いい は子供も面白がると思うわなあ。 ことかもしれん。 星そう ( 笑いながら ) 、それに小松さんが世界史でも教えるとか うん、そうだ。しかし、友達を得るためたけに、そんなに無理 をしなければいかんというのはなあ。遊びたい連中には「遊び大 それがいし それがいし 学」を作ったら、サービス業に勤めるには、遊ふたけの連中のほ 星それとあと、国語の時間も、小説にしろ何にしろ、文章という うが役に立つんじゃないのか ?
ったって、考えていいのね」 「できない」と彼は言った。 「できるわよ、サム。もう一度やってみて。体の力を抜いて、さ、 ハスケルは首を横に振った。 もう一度」 「あれは強盗のつもりだったのかしら。それに強姦とか : : : 」 彼は首を横に振った。「やってみたんだ。本気でやったんだ。通 「そういうこと」彼は椅子に腰をおろした。娘の膝のすぐ脇だ。 路なんてあるなら、あの時開いたはずだよ。ありやしないんだ」 「見事なお手並みだったね」 「そういう訓練を受けてるもの。地球の人ももっとそういう訓練を「あるわ」 「通路なんてない。マルなんていなし 、。ンヤロンもいない。もうわ すべきょーーーそうすれば、暗がりもそれほど危険じゃなくなるわ」 かっただろ。みんな思い違いなんだ。君は綺麗な女の人だし、闘い 「ああ、そうだね」 娘は手を伸ばし、彼の片頬に触れた。「ねえ、サム、これ以上い慣れてもいる。それは確かだけど、だからと言って、君がシャロン られないの」身をかがめて、彼の額にくちづけする。「思いがけとは限らない。君には手助けが必要なんだ。ちゃんとした医者のー ず、あなたに会えたのは素敵だったけど、愛する人も待ってるし、 アラリオン卿にたてた誓いもあるわ。送り返してくれなきや困る娘がまた身をかがめてきた。「通路はあるのよ、サム。マルのこ とも考えて。待ちながら、私がどうなったのか、不思議に思って 娘の暖い手に、 ( スケルが手を重ねた。「どうしたらいいんだるわ。アラリオン卿の、尖塔の聳え立っ宮殿のことを思って。透き とおった床の、広々とした舞踏場や、宝石を散りばめた壁飾りや、 い」 「眼を閉じて、サム。頭の中で、マルや私や私たちの遠い未来の暮黄金の階段や、ダイアモンドの扉ゃーー」その声はなめらかに、な だめるようで、子守歌に似ていた。 しのことを考えて。あなたの時代と私たちの時代との間の、あなた 「すまん。あんたの名前が何だか知らないけど、気の毒だとは思 だけが開ける通路のことを考えて。あなたならできるのよ、サム」 彼は眼を閉じ、いろいろのことを考えた。すぐそばの娘の肢体、う」 ロの中の安酒の香り、娘が消えれば、ひとり・ほっちになる、みす・ほ娘はテープルから滑りおりて、彼の前に膝をついた。「ね、サ ~ なし力ないわ らしい部屋。そして最後に、マルのことを考えた。どこか遠くで待ム、みんなが私を頼りにしてるのーーー裏切るわけこよ、 っているマル。待ちながら、たぶん彼女を呼び求めている。サム・傭兵にも誇りがあるのよ」 ハスケルが呼んだのと同じことだ。そこでマルが気の毒になり、そ ハスケルは両手で娘の黒髪を撫ぜた。「僕が手助けしよう。君を の瞬間、通路を開こうという気になった。彼女を通り抜けさせよう離しはしない。二人で力を合わせよう。君を助け出してあげるよ。 とした。娘の手が遠のくのを感じ、息を詰めた。 君もじきにアラリオン卿とかマルとか忘れてしまうさ」 一瞬が過ぎ去った。彼が眼を開くと、娘はまだいた。 「サム。こんな、みじめったらしい、時間と空間の淀みには、いら
私たちの見たものがいかなる意味を持つのかも分らないままに日 日が過ぎ、ある時私たちはふと山々の姿を見なくなってから異常に百の方角へ散っていったはずの〈影〉たちの行く手に、この宇宙 4 長い期間が過ぎていることに気づいた。今まではほ・ほ四、五十日の館は次々に立ち現われたわけだが、この建物が宇宙を自在に放浪し 間を置いて雲間から現われるさまざまな峰々を目撃したものだった続けているというのならばそれに不思議はあるまいと私たちは思っ が、あの白茶けた岩山を遠くに見て以来少なくともその倍以上の日 た。宇宙館がいかなる空間に位置するものなのか私たちは知らな えるにや ・ : そしてその夜、輝きわたる板 日が過ぎているはずだったのだ。 耶路庭なる国がいかなる空間に在るものか私たちは知らない。 硝子に腹を押しあてて思い思いに横たわっていた私たちは、雲海のそうしてみれば、各々異なる方角を目ざして前進する百人の〈影〉 えるにや 平らな拡がりの一角からふと鈍い光が湧きあがってくるのを見たの たちの行く手に、耶路庭もまた自在に立ち現われることになって だった。わずかに渦巻く雲間から湧きだす光は徐々に円型の輪郭をも、それは不可解なことではあるまいと私たちは思うのだ : とり始め、そして雲の表面がふいに隆起して煙のように吹きあがり えるにや ながら四方に崩れたかと思うと、その源はその上端を現わした。私 * 耶路庭・ 3 たちが眼下の雲海の中に見たのは、月だった。クレーターの模様さ えはっきり見せているその月は、それ以上高度を上げることなく雲 〈影〉たちがひそかに出立して数十日後、衛兵の姿もほとんど見か 間を分けて水平に進み始めた。その動きにつれてドライアイスの煙 けられなくなった宮殿の後宮の丘に一群の男たちが姿を現わした。 に似た水蒸気が月球の面を這うようにまつわりつき、ゆるい動きで 硝子の屍体が転がる棟々を声もなく取り壊していくと、男たちは酢 噴きこ・ほれては四散する。私たちの見守る中、月は緩慢な動きで雲 が真珠を蝕していく勢いで円丘の頂を掘り崩し始めた。その地底に 海を斜めによぎって遠ざかり、そして夜明け前にはもう見えなくな 拡がる〈庭〉の天井を崩して埋めるためだった。 くにたみ っていたのだった 〈庭〉と地上世界との精緻な照応関係は国民のすべての知るもので 宇宙館という名のこの建物は、いっか地表に降ろしていた錨綱を あり、そしてその頃誰言うとなく、天球の黒硝子の外を動く人影は 断たれて宇宙を放浪していたのかもしれない。最初に訪れた〈影〉 〈庭〉の造物主である初代皇帝とその眷属に違いないというが拡 が一夜をこめて語り続け、夜明けと共に再び黒馬を駆って出立して まっていた。〈庭〉の機械仕掛けが狂って照応関係の糸が切れたこ いった後、次の夜にも私たちは雲海の果てから近づいてくる〈影〉 とも彼らは夙に知っていたが、初代皇帝の幻影を消し去るためには の姿を認めた。その顔も姿も前夜の〈影〉と全く同一だったが、そ〈庭〉を埋めるしかないと彼らには思われたのだ。万一〈庭〉を埋 れは百人の〈影〉たちの別の一人なのだった。そしてその〈影〉めたためにこの世界もまた崩壊するようなことになっても、いつ自 が一夜の間物語り続けて去っていった後、次の夜にはまた新たな 分にも見えるかもしれない天の人影を待ち続ける日々の恐価よりは ましたと思われた。 〈影〉が宇宙館を訪れた。そしてその次の夜も、さらに次の夜もー
〈種の障壁〉を越えて、その意味を理解した。かれはフルリア人に たのであります。あれ以来、わたしは満足にものが食べられず、眠 飛びかかろうとしたが、まさに空中を飛んでいるとき、モウブ人のることもできない。実際、残念ではありますが、わたしはどうして 9 ひとりに捕えられてしまった。モウ・フ人は苦もなく上腕二頭筋をしも解任をーー」 めつけ、かれを動けなくした。 「始めた仕事を終えるまでは、いかん」長官はきつばり言った。 霊長類はわめいた。 をしったい、このわしが、あのイメージをーー・死肉食いのイ ハゲタカ 「やめろ、こいつ。ここに坐って、待ってるがいいぜー メージを楽しんでいるとでも思っておるのか・ーーもっとデータを集 ハゲタカー めたまえ、データを ! 」 ハゲタカ ! 」 幾日か過ぎるまで、デビ日エンはもう一ど野生霊長類に会ってみ デビ日エンはとうとううなずいた。もちろん、かれは理解したの ようという気にはなれなかった。かれは、長官が心理構造の完全なである。政務長官はすべてのフルリア人と同じように、なにも核戦 分析にはまだデータが足りないと主張したとき、ほとんど非礼な態争を起こしたがってはいないのだ。かれは決断の瞬間を、できるだ け先に延ばそうとしているのであった。 度をとってしまったほどだった。 デビ日エンは無遠慮にいった。 デビエンは、気をとり直し、もう一ど野生霊長類と会見した。 これはまことに耐えがたい、そして最後の会見となった。 「確かに、我々の問題に立派な解答を与えるに充分であります」 長官の鼻はふるえ、ビンク色の舌が即座にペロリと鼻をなめた。 その動物は、まるでつい今しがたまで、モウブ人に反抗していた 「たぶん、きみはある種の解答と言いたかったんだろう。わしに といった具合に、頬べたに打撲傷を負っていた。いや、事実、かれ は、この解答は信用できん。我々は、きわめて異例な種族に直面しは反抗していたに違いなかった。まえから何度となく反抗をくり返 ておるのだそ。すでに、それは明らかだ。ここで誤りを犯すことはし、モウ・フ人たちは、危害を与えないようきわめて熱心に努力した にもかかわらず、時として打撲傷を与えざるを得なかったのであ できんのだーーー少なくとも、一つ問題がある。我々はたまたま、 常に知能の高いやつを捕まえてしまった。かりに かりに、あれる。なんとか傷つけずにとり静めようと、モウ・フ人たちがどれほど がこの種族の平均でないとすればだが」 熱心に努めているか、この霊長類にだって少しはわかってもよさそ 長官はその考えに動転しているように見えた。デビエンはいつうなものだった。だが、こいっと来たら安全な拘東にかえって拍車 をかけられるように、反抗をくり返すのであった。 「あの動物は恐ろしい心像を持ちだしたのでありますーーあの、鳥 ( 大型霊長類というのは根性が曲がっているのだ、ひねくれ者なの だ、とデビ日エンは暗い気持で考えた ) ですが : : : あのーーー」 「ハゲタカ」と長官。 一時間あまり、会員は無意味な、つまらないおしゃべりに終始し 「あいつは、我々の使命全体に、あのように歪んだ光を当ててみせていたが、霊長類はいきなり好戦性をむき出しにして、いった。
と ~ 、 て少ないだろうから、もうひとっ得をしている。 星麻雀のやり方とか、酒の飲み方とか、こりゃあ教える必要があ るかもしれん。自動車の運転だってなあ。だいたい手紙の書き方星そうかもしれない。同期生が死んでるだろうからなあ。 たくさん死んでる。同じ日に入隊したのが八百人で、いま生き ぐらい、ありゃあ教えるべきだなあ。 ているとわかっているのは十六人でね。このあいだ新聞に、生き うん、本当だ。 さぎ 星麻雀だって、ありやちゃんと教えるべきじゃねえかな。先づも残っているものは連絡してくれとのせてもらったが、十日たって もひとりもいないところを見ると、やつばり、あまり生き残って がいかんとかね ( 笑 ) の麻雀に先づもがはやっとるけど、あ いないんだなあ。 りや、ルール違反だと思うがねえ。 星そこへゆくと、われわれの世代は運がいいというのかなんとい まったありとかね ( 笑 ) 点数もかそえられるようになるし : うのか、理科系に徴兵はなかったけど、いわゆる文科系の連中は まあ、とにかくいまは戦争がないからいいけれど、戦争があった 四月に入隊したけども八月に終戦で、死んでねえどころか、なん わ。あなたの場合、途中で戦争があったというのは、のちのちの か物資を山ほどもらって帰ってきて ( 笑 ) 。 ために非常によかったろうなあ。 そりゃあ、入隊した連中のほうが運がよかったな ( 笑 ) 。 星うんまあ、ちょっと、ふつうの人には体験できない時代をたま たま生きてきたということはあるわな。 星だけどあのころ文科系に敢然と入ったやっというのは、偉いわ なあ。 それに、生きていて申しわけないという感じが・ほくらにくらべ うん、そうだ。 しまの人には 、 ~ ふ星しかしまあ、東京が焼野原にな 0 たと」う 0 は、、 想像もっかんだろうなあ。 うん。いまの星さんの人格に、戦争が作りあげた大きな部分が あるだろうなあ。人格形成に ? 一轟星いやあ、それよりむしろ、戦後、おやじの会社がつぶれたとき のほうが、まあ、いろんな意味で体験にはなっているたろうな あ。 ・ほくの場合のような、自分が罪悪を犯したわけじゃないのに、 : いまだにちょっと 罪悪感を相当長いあいだ持っていたという : すまないような気になるものなあ。それがないのが、いちばんう 4 らやましいね。 字宙のあいさっ ( ハヤカワ r-nk シリーズ ) A 、 HAYAKAWA %SCIENCE FtCTiON SEÄtES
・解説 きみは五つ、だれも知らない場所に隠れている。樹の皮の粉にま アメリカ界でも、デーモン・ナイトほど多面的な活動をして みれ、あっちこっちを小枝にひっかかれ、汗びっしよりで暑い。風 きた人はめずらしい。ご多分にもれずファンジンの発行 ( イラスト がポプラの葉に吐息を投げかけている。かすかで絶え間ないシュウ レーターを兼ねる ) から始まり、作家、雑誌編集者、書評家、フラ シュウいう音が、両手に持ったビューアーから聞こえている。やが ンスの翻訳家、アンンロジストと、ほとんどあらゆる仕事に手 、見イつけた ! ーー納屋の下で、リンゴか て声がいう。「ローリー を染めている。しかも、それぞれの分野で一流で、評論集『驚異の 出てこいよう、見つけたんだか じってる ! 」沈黙。「ローリー、 探求』では一九五六年度のヒューゴー賞をもらっているし、一九六 六年から編集している「オービット』は今や十九巻に達し、オリジ ら」別の声。「ほんとだ、あそこにいる」ややあってから、すねた ナル・アンソロジー中、最長の寿命を誇っている。このアンンロジ 「ちえつ、わかったわよ」 ーで彼が育て上げた作家は、奥さんのケイト・ウイルヘルムを始め きみは体をくねらせ、ビューアーを持ちあげて、丘の麓に狙いを として、ジーン・ウルフ、・・ラフアティなど数多い つける。親指でつまみを回すと、あざやかな映像がきみをめがけて 作家としての腕も、一九五〇年代には短篇の名手 ( 『人類供応法』 『楽園への切符』『王者の祈り』など ) と謳われたほどだが、最近 駆け出してくる。樹々が赤い闇の中に飛びこんでは消え、つぎにひ は編集者としての業績のかげに隠れた形だった。その彼が三年ぶり とかたまりの家並が映り、そしてやっとプル 1 スの姿が見える。家 に書き上げた新作が、ここに紹介する短篇で、誌一九七六 畜囲いの柵のそばに立って、ビュ 1 アーをのそきこみながら、ゆっ 年の『デーモン・ナイト特集号』に発表された。作者自身は、長篇 くり向きを変えているところだ。彼の背中はこっちに向いている。 に匹敵する内容を短篇の中に凝縮してみた、と語っているが、まさ きみは自分が完全なのを知り、むつくりと起きあがる。カケスが翼 にこれそ v-v という感じのする、知的エンタティンメントだ。よ お、この作品のテーマは、本誌の一三二号に掲載された・・シ で風を切って、枝の上にとまる。もう肉眼でも・フルースが見える。 ャーレッドの傑作『努力』とおなじもので、あの作品へのナイトの 。ほっんと青い点。ビュ 1 アーの中で 家々の天色の板壁のむこう オマージュ、あるいは挑戦と見て、読み比・ヘても面白い。 ( 訳者 ) 彼がこっちへ向き直るのを見て、きみはまた首をすっこめる。別の 「晩ごはんよ、さあ、みんな帰ってきて、手を洗いなさい」 彼をスミスと呼・ほう。彼は自分の名を冠した会社の社長で、この 「ちえつ、つまんないの ! 」「ママ、今かくれん・ほの最中なんだ。会社は理化学機器の分野で百件以上の特許を持 0 ている。彼は六十 もう十五分だけ。ね、 いいだろ ? 」「おねがい、 = リーおばさん」歳で、男やもめだ「た。彼の一人娘とその夫は、一九七八年に旅客 「いけません、さあ早く中に入 0 てーーごはんのあとでまた遊びな機の墜落で死んだ。彼には共同経営者が一人いて、いまではその男 さい」そして・フルースの声。「ちえつ、わかったよ。おーい、かく が事業を切りまわしている。スミスは自由な時間の大半を自分の研 イメージ・インテンシファイア れん・ほゃーめた。みんな出てこーし 、」こんどもきみは見つからずに究室で過ごした。一九九〇年の春、彼はある光学像増大装置に手を すんだ。秘密の場所はきみだけのものた。 つけていたが、その性能の良さは不可解なほどたった。いま彼はそ の装置を工作台の上にのせ、部屋のむこうに置かれた深い遮光ポッ 6
万物の創造主というか、そのために異教徒は悪いといって十字軍どうかしら ? でぼん・ほんやったでしよ。あれも、かれらの神を信じて邪教徒を さあ : : : ・ほくが子供のとぎ、友達に大阪の阪上病院という院長 こらしめにいったわけだなあ : : : 日本だって、明治以後の天皇を さんの一家があって、そこのお母さんが、そのころの白衣の軍人 神さまと考えさせる教え方からすれば、根本的には同じだわな。 を、・ほくが小学五、六年生だったか、昭和七、八年ごろか : 星 ( 笑 ) いや、そら天皇は、そう、明治以後の : から日露戦争での傷痍軍人だったんだろうな : : : そういう白衣の シンポルであることは同じだもの。それを利用しつづけるとい 軍人を見て、「戦争をおこすと必すこういう人が現われて、その う占 ~ は . :. : 。 当座はほめ讃えられるけれども、すぐに忘れ去られ、いまみたい 星だけど、明治以前は、もっと違う感じのものだったんじゃない に乞食あっかいされるんですよ」と聞かされて、子供心にくいこ のかな。天皇というのは。 んだんだな : : : それが、こんどの戦後にも同じことがおこってい ・ほくが問題にしているのま、、 をしまのところ第二次大戦たけで、 たわな。やつばり年上の人に聞かされるというのは、非常に大切 なことだと思うな。だから、完全に伝えることはもちろんできな そこを解決したいんだから。それより前は別よ : : : だから、宗 教、キリスト教の場合でも、まわりのものがそれを利用したの いが、できる限り語り伝えようと努力するのは大切たと思うな あ。 は、それは当り前のことだと思うんだ。だから、為政者が天皇を 利用したのは当然だから、ヨーロッパもアメリカもみないっしょ星うん、そうだ。 ぜんぜん語らないよりはいし しゃないか、ごちやごちゃいわずに頑張れえと、 星だろうな ( 笑 ) 。 星だけど、「スター ・ウォーズ」 ( 笑 ) 、戦争というのは、ああ というのは、それがちゃんと解決しないと、戦争を舞台にした いうもんだという受け取り方をしている連中のほうが多いんじゃ ないかね ? が書きにくいわけよ。少なくとも・ほくにとっての存在の哲学 あれだって、光線銃があたりや痛いんだしねえ。 というと大げさだが。まだほとんど日本人はやってないわな、戦 う兵士を主人公にしたは。・ほくはこんどやろうと思っている星痛いというより、あっというまに死んじまうんだろ ? んだけども。 指の先にあたったらどうだ ? ま、死んじゃうが、死ぬのがこ 星しかし、われわれの世代はいちおう知ってるけども、いまの高わいからって、正義を守るためにだれかが死ななければいけない 校生なら高校生は、まるで知らんでしよう ? というときに、だれも死んでくれないでは話にならないわな。 日清戦争も第二次大戦もいっしょだろうからね。 星もうすこしの話をしないと、 いかんのではなかろうかな ? 星ああ、そうだろうな。だから、戦争体験を語り伝えるなんてい ああ、そうだそうだ ( 笑 ) 。の話をしましよう。 うけども、これは不可能じゃねえかな。文字なりなんなりじゃあ星何かいい話、いいアイデアないか ?
星そうだなあ。 そうだ。だから今日ぼくが書いたエッセイにね、高級官僚の天 ほんと、つまらないことかもしれんが。 下りはいけないとジャーナリズムはさわぎたてるだけでなく、な 星うん : : : 生き残っていて申し訳ないような気分か ? ぜいけないかの根拠を示せと、そして告訴しろ、と。悪い悪いと そう。なんとなく自分だけ、、、 しし目をしたという感じでね。そ いうだけではいかんわなあ。悪いならやめさせるべきだろ。悪く れに腹が立つのは、ただ生きていたということだけで、日本の政 ないから行っとるのかもしれないぜ。 府は・ほくらもふくめて、無理に戦争に引きすり出したものに、な星うん。 んの補償もしていないわな。 そのへんをはっきりしてくれればいいのに。 cn とあまり関係 星うーん。 ないか ? 貴重な時間を無理に引ぎずり出しましてと、一言、礼ぐらいい 星だから、美濃部さんがだめになったというのも、マスコミが変 えばいいのになあ ( 笑 ) 。 にかわいがってしまったから、体質改善をやりそこねて、哀れな 星そうだそうだ ( 笑 ) 。 ことになっちゃったということでしようなあ。 職業軍人はまあ別よ。しかし、学徒出陣もふくめて、召集で無 さてと、お父さんの会社が倒れたと、それで、そのときから 理に引きずり出した連中に、天皇陛下も、すみませんでしたとは にどんなふうに移っていったの ? 平行してやったわけ ? ・ほ つきりいえばいいのになあ。・ほくはどちらかというと右のほうだ くがおっきあいねがったのは、どうもそのへんあたりからだろう けども、ああいうはっきりしないところは、・ とうも気にくわんな と思うんだけども。 あ。 星これもまあ何回も書いちゃったことだけどさあ。それでまあ、 いっしょに靖国神社へ帰ろうといったような連中がたくさん死 なんか一種の精神的・時間的に空白状態に陥って、それでたまた んでいるから、いくらさそわれても、いまさら別の方向へ行くわ ま五反田にあった空飛ぶ円盤研究会に出入りしているうちに柴野 けにはいかんから、いやだなあと思っても、保守勢力側の肩を持拓美と知合い、宇宙塵を始めた、と、しかしまあ、そういうほう ちたいわなあ。ところが自民党のほうは、何か悪いことばかりし に進む傾向がなんか子供のときからあったことは確かたな。 ているようなムードがあるわなあ。実体は知らないが、悪いやっ そこそこ、そこを聞きたいわけだ。そういうものがお父さんの が多いという感じね : : : あれを早く払拭してくれんかなあ。 会社のことで出てきたのか、なぜを書くようになったのか、 星いやあだけど自民党は、それもまあ、なんとなくマスコミの操それも人並でないとっぴなことを考えるようになったのか ? 作じゃないかねえ。マスコミがしよっちゅう自民党をたたいてる星うん、それも「奇想天外」の評論大全集に出ている福島さんと から、自民党がそれによって体質改善を徐々にやってきているか の対談でしゃべっちゃったけども、原田三夫さんの科学解説記事 ら、政権をずっと持ちつづけているんたと思うんで : とか、海野十三のとか、乱歩さんの怪奇探偵小説・ :