ゆりこ - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1978年8月号
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1. SFマガジン 1978年8月号

タンクタンクロ - ー が、ワー。フに入った瞬間、客席から一斉に拍手が湧きあったけど、後半のストーリイが実によくわかり哲学的で がるのたそうだ。『スター ・ウォーズ』小成金 ( 大成金ないぶんたけ『スター・ウォーズ』の勝ち。 ・ウォーズ』を全面的にほめち そこで、この『スター は野田昌宏大元帥 ) の伊藤典夫さんがいっていた。 書くつもりはなかったのたけれど、いつのまにか話がぎる同好の士を探していたら、すでに〈スター 『スター ・ウォーズ』のことになってしまったので、つズ過激派〉なる組織が存在していることがわかった。こ いでたから、もう少し書いてしまう。『スター れは非合法 ( ? ) の地下秘密結社で、なにしろ、ただひ ・ウォーズ』を礼賛し、これをけなすも ズ』はなんとも、すごい映画た。いま、この原稿を書いたすら『スター ている段階では、まだ一度しか見ていないけど、おそらのがあれば、断固鉄槌をふりおろす恐怖の秘密組織。頭 目はアメリカで八回、日本で一回という観賞記録をもっ く・ほくは、十回ぐらいは見ることになるだろう。ともか く、。ほくのの波長に、これほどびったり合った伊 x 典 x 氏、代貸が名古屋在住の作家で、 映画というのも珍しい。試写会でこれを見た時、終って 2 の異名をとる川 x 千 x 氏。もちろん、・ほくは志願して こよっこ。 ・ウォーズ過激派〉のメン・ハー この〈スター からもしばらく興奮でロがきけなかったほどた。 ・ウォーズ』の悪口はいわ だから、・ほくの前で『スター 特撮のみごとさ、サービス精神満点のストーリイ作り よ、ま、つ、カしし、を ・、、、。まくはともかく、同志が黙っちゃいな のうまさ : : : ただただ、感激するばかり。当然のことな いと田心う。 がら、中にはたいしたことないという人もいるけど、・ほ くにとっては『スター それで、どうして、この映画がこんなに・ほくの波長に ・ウォーズ』は、これまで見た 映画のナン・ハ ーワン。『二〇〇一年宇宙の旅』もよか合うのか考えてみた。本来なら憎つくき鬼畜米利堅国が 作った映画だから、そんなにしつくりくるわけはなく、 『宇宙からのメッセージ』のほうがすごいぞというとこ ろなのに、これはもう、お話にもなにもならない。 宙からのメッセージ』という映画は、特撮はともかく、 あのストーリイ、コスチュームなどは、まさに国辱もの 、やを〉韋《ですな。そりや、・ほくの小説やエッセイも国辱ものたけ ( 他人に指摘される前に、先に自分でいってし まうと気が楽になる ) : えー、話はどこまでいったつけ ! そう、なぜ、 『スター ・ウォーズ』が・ほくの波長にびたりと合うのか 考えたところまでだった。で、考えたわけ。そうした ら、この映画にでてくる、いくつかのキャラクターを、 を材ーお いイ . いろ

2. SFマガジン 1978年8月号

うおすすめしても、夢のことは話して下さいませんのよ」 リサ ! よかったら、いっしょに来てもいいですよ」 「昏睡状態の時には、ロをおききになるんですの ? 」 つぎの瞬間には二人は通りに出ており、モルドー 川にかかる橋の 「わたしは、まだ、ロをおききになるのを聞いたことはありませ一つにむかって急いでいた。月は天頂近くにあり、通りにはほとん ん。でも、ときどきお歩きになるそうですわ。一度なそは、まる一ど人影がなかった。彼女はたちまちおっきの者を追いぬいてしま おっきの者が橋についた時には、もう橋の中ほどにいナ 時間も姿を消しておしまいになって、お屋敷じゅうをふるえあがらい、 「自由におなりになりましたか ? お嬢さん。自由におなりですか せてしまわれたそうですの。雨でぐっしよりぬれてお帰りになり、 疲労と恐怖でほとんど死んだようになっておられたとか。でも、そ の時でさえ、なにがおこったのかは、ひとこともおっしやろうとな彼女が急いでいると、こういう言葉が、すぐそばから聞こえた。 さらなかったのです」 ふりむいてみると、橋の欄干にもたれて、コスモが立っていた。す ここで、横たわっている婦人の、じっと動かない唇から、ほとんばらしい服を着ていたが、その顏は蒼白で、けいれんしていた。 ど聞きとれないつぶやきがもれ、つぎそいの者たちをおどろかせ「コスモ ! わたしは自由です。そして、永久にあなたのしもべで た。病人は、声を出そうと、数回努力をかさねた。それから、「コす。今、わたしは、あなたのもとへ行くところでしたの」 「そうして、・ほくも、あなたのもとへ : 。死がぼくに勇気を与え スモ ! 」という言葉が、急に出た。 その後も、彼女は、あいかわらずじっとよこたわっていたが、そてくれたのです。でも、もうこれ以上進めません。・ほくは、すっか りつぐないをすませましたか ? ・ほくは、少しはあなたを愛してい れも、ほんのわずかなあいだだけだった。彼女は、激しいさけび声 ほんとうに : をあげて寝椅子からとびおきると、床の上にまっすぐに立ち、両腕るでしよう ? 「ああ、今、わたしには、あなたが愛していて下さることがわかり を頭の上にあげた。にぎりあわせた手を緊張させ、大きく見開いた 目をきらきら光らせて、大声でこう言った。まるで、墓地からとびますわ、わたしのコスモ。でも、死ぬなんて、何をおっしやるんで すの ? 」 だした霊魂の声のように、喜びにあふれた声だった。 「わたしは自由です ! わたしは自由です ! ありがとう ! 」 コスモは答えなかった。彼の片手は、脇腹におしあてられてい 彼女は寝椅子の上に身を投げだすと、すすり泣いた。それからまた。彼女は、そばに寄って、見た。指のあいだから、血があふれだ た起きあがり、喜びと心配のまじりあった身ぶりをしながら、やたしている。彼女は、かすかな、苦しげな泣き声をたて、両腕でコス らとそのへんを歩きまわった。彼女は、身動きも出来ないでいるおモを抱いた。 しびと つきの者たちのほうをむいて、こう言った。 おっきのリサが追いついてきた時、彼女は、やつれきった死人の 「早く、リ サ、わたしの外套とフードを ! 」それから声を低くし顔の上へ、身をかがめていた。きみのわるい月光の中で、コスモの て、「わたしはあの方のところに行かねばならないの。急いでちょ顔は、ほほえんでいた。

3. SFマガジン 1978年8月号

へ行って三千円負け、安いなと思った。 いうちにーー無理を承知にーー応募しようっと。 「最適解」・ネゴイツア ( ルーマニア ) 住谷春 が。フームですが、気にいらないのです。何やってみなければ、わからん。 也訳「未来の物語」クラリーン ( スペイン ) 事においても、たとえ自分の好きなものでも、人もう一つ読もうかな。いや、今日はもうやめと「・ほくが人魚だったとぎ」シェフネル ( ソ連 ) 他 が騒ぎたてると嫌いになる性格のためか。、 こう。一カ月かけて読めばいいのだから。さて、 タイブオフ百頁。頒価七百円 ( 送料共 ) それは他人に知られていない自分達少数の世界。フランス語の勉強でもするか。なになに、否定文 炻号は七月二十日発行。ルーマニア第二弾 他人にない自分だけの宝物を持ってる優越感。その後で直接補語のもっ不定冠詞と部分冠詞は de 「古ポ。フラ街」・ニクレスク他翻訳四本。 れがくずれたのです。 となります。所有形容詞は被所有物の性に一致し「ハンガリーのプロフィール ( 上 ) 」等。 他人が自分の家に土足であがり込んで、デカイます、か。眠くなるな。よし。もうひとっ読んじ タイブオフ九二頁。頒価六百円 ( 送料別百 やえ。 ッラをしてるような気がして : 二十円 ) 最後に、誰か何か言ってこい。文句でもいい 「アョドーヤ物語 ( 一 ) 」 : ・これの絵を書いて ( 振替東京七ー七三五一〇イスカーチェリク こんなファンもいるんだそー る萩尾望都さんていいなあ。うん。 ラブ東京事務局 ) ( 制尼崎市北城内八八番地聖愛荘瀬川善次 ) 話は変わって。星さんの作品を読みおえて、・ほ〒世田谷区代沢四ー一三ー一五大石アパート くの熱は筒井康隆さんへと向かっているかも田川康弘 マガジンなるものをはじめて買った。・ほくしれない。 この間読んだ、彼の文庫本。かなりお は星新一さんのファン。だから、〈矢野徹インタもしろかった。星さんと違うおもしろさがある。 ビ、ウ〉第九回星新一、という見出しを見て、た・ほくのことだ。この一作を皮切りに筒井さんに傾 めらわず手に入れた。・ほくは、星さん以外の倒するかもしれない。一度人りこんだら抜けられ はあまり読まないし、マガジンの存在を知っぬ沼。あははは。 たのも、ここ二、三年。よって、はじめてマ さてと。来月のマガジンどうしようかな。 ガジンを買った次第。 まあいし ここ一カ月の間に決めれば、 まずそのインタビュウを読んだ。やはり、い、 だ。今のところ、 : そんなことより、はやくボ なあ。星さんの一言、 一言が、なぜか頭に鋭くきストに投げ入れねば。一番乗りできるかなあ。は ざみこめられていく。軽くおっしやっているのかじめて買って、はじめて投稿するてれぼーと。ま もしれないが、 ・ほくにはひとつひとつ重みが感じあ、のらないだろうなあ。でも、のせてくださあ られる。ところで、できれば、実生活にわたって の質問が欲しかった。残念である。 マガジン 7 月号を枕に、今日は寝るんだ。夢 星さんのファンと自称するだけに、彼の本につの中で、星さんとお話しをしたいんだ。うーむ。 いては殆ど読んだ。 ( ただし、現在出版されていこんなこと書いてると中学生に思われるな。何 ? る本。つまり、絶版本は夢の彼方なのです ) どれ中学生でもこんな幼稚な文章は書かない : が一番おもしろかったか、というと : : : むつかしつへへ。それでは、星新一さんのファンの方、お い。まあ、一番奇妙だと思ったのは、たしか「不便り下さい。 ( 本人は、ま「たくのる気にな 0 と 在の日」とかいう題名のショート = ショート。ま る ) わりからみつめられてるような感じがしますね、 ( 黼杉並区梅里一ー一三ー一一今村荘石坂憲司 ) この短編を読むと。 告知板ーー 次に読んだところは、リーダーズ・ストーリ 。うまいなあ。・ほくも、このくらいなら書けそ「イスカーチェリ」号発売中ー うという気がする。が、無理でしよう。でも、近「ソ連刊行日本作品目録 ( 試 ) 」深見弾編 タイム・みラフル タイム・トラブル ( 320 栃木県宇都宮市一条 1 丁目 3 ー 23 神野和司 ) ~ 2 ー 5

4. SFマガジン 1978年8月号

い人が多いようだ。しかし読者の中には、投オ」はビビ ' たが、状況に変化はなか 0 た。今、 稿もせず、ファン活動にも参加せず、それでいてオレは 7 月号の撫で回してニヤついている 4 係は呈とは馴染の仲、という人も結構いるのにちがのだ。最近はもう勉強しようなどとは、これつ。ほ 2 とに進いない。先日も、ある本屋で、どこからみても大っちも考えない。ひたすらにおすがりして、 一分冊銀行の支店長クラスといった紳士が、熱心にゼラズ = イ万歳を唱えておれば、極楽浄土へ行け ぼ載一 れ掲刊に読みふけ 0 ているのを見た。そうした「サイると信じき 0 ている。 レント・マジョリティ」の支えがある限り、 ( 埼玉県戸田市下前一ー一〇ー一五ー二〇五 て , 新 誌照最はこれからも、表面的なはやりすたりとはかかわ安田勝己 ) 迎当参庫りなく、たしかな成長をとげて行くだろう。あと ら・歓は付文は質の良い作品がどんどん出てくるのを待つばか えーと 3 カ月分の言いたいこと。 、 = 稿先奥りだ。以上、「サイレント・マジ , リティ」のひ 5 月号だったか「幸福な男」ジ = ラルド・・ 第第投宛 ( とりがつい沈黙を破ってしまったお粗末の一席。。ヘイジですか、すごいすごい、読んでいて吸って ( 兵庫県芦屋市伊勢町八ー一一〇ー六〇七大串た煙草が落ちたぐらいのひさびさの衝撃だった。 弘之 ) 生きる根性なくすぐらい実に楽しい 寄る年なみのせいか、近頃思い出にふけること 何年か前、「この世の中が現実かどうか確める が多い。初めて本格的なと巡り会ったのが、 思い起こせばこの三月、両親一同、そして全校ために死にます」と言って自殺した奴を思い出し 小松さんの『果しなき流れの果に』だった。ちょの期待を一身に受け ( オー , ーにもほどがある ) た。そいつは今は″現実″に生きてるかもしれな うど大学受験の頃。何が何だかよく理解できなか某りつばな高校を受験し、みごとに落ちてこのあいと思ってみたりして。 日下実男氏の「星座の歳時記」が終ったけど、 ったけれど、こんなにも壮大な文学の世界があつりさま。当然のことながら、オレが高校落ちた一 たのか、という驚きで明日が入試という前の晩も因として、が血祭りに上げられた。「ふん、新連載が楽しみ。日下氏の本で文芸春秋だったろ 読むのをやめられなかったつけ。 こんなもんにうつつをぬかしておるからじゃあ」うか「宇宙の進化」っうのずいぶん前に買ったの ふり返れば、あれから早や十年。その間とと。そこでオレは考えた。「高校に入ったら、シ覚えてます。で名前見て、ああ、あの人か はつかず離れずの関係がずっと続いてきた。激しコシコと勉強にはげみ、その上で読みや文句と思ってずっと読んでた。次の連載も楽しみにし ています。 く燃えあがることもなく、かと言って冷めきってあるまい。やったるでえ ! 」てなぐあいに。 エリック・フランク・ラッセルが死んだそうで しまうこともない。 にしても買ったり買わだが、そううまくはいかなかった。は、 なかったり。しばらく遠ざかったかと思うと、ま以前にも増して、おもしろかったし、文庫はすね。『私は″無″』よかったなあ。という た思いだしたように続けてとってみたり。恋して ハシ・ハシ出るし、おまけに、海外ノヴェルズしつえいしょんを使って描いた人間。『どこかで いるわけでもないのに、何故か気が合って、不思も本格的に刊行されだした。春休みは、狂喜の叫声が』はとくによかったなあ。 リイ・プラケットもか : ・ : ・『赤い霧のローレラ 議に別れる気にならない女のようだ。余りいい読びをあげて本屋をめぐり、入学式後もそれは続い 者とは言えないかも知れない。 た。暇さえあれば、読んで、おせんべかじりイ』は、たしか松本零士でマンガ化されたはずだ 私ととのこんな淡い関係は、これからもずながらハードロック ( ウッ、レッド・ツェ。ヘリンな。 ・ハックがいる。そう っと続いて行くことだろう。私がすっかりとに栄光あれ ! ) を聞く毎日が続いた。反比例して好きな作家でリチャ 1 ド・ 切れてしまうのは、私の心が老いて柔らかさを失勉強には、ますます手がっかなくなった。 『カモメのジョナサン』の人。彼の作品で『イリ った時だ。そんな時はこないことを願っているの中間試験の結果は、目もあてられなかった。親、ージョン』てのがあり、これはだ。一読勧 は、ついにあきらめたのか、何も言わなかった。める。 雑誌に投稿したり、ファンクラブに参加しウウッ、オレはだんだん落ち込んでゆく。『男お『愛に時間を』ですが、二千五百円を半村さんは たりする人は、圧倒的に十代から二十代前半の若いどん』を地で行くようになったらどーしょ】。 安いと言ったけど、高い高いと思って、パチンコ

5. SFマガジン 1978年8月号

つくしていた。 「七月十日 ? 」 「なにしてるんだい。棒みたいにつったって。はいっておいでよ」 「あれ、あたった。きみの健忘症って、ずいぶんおかしいね」 / プは入り口ちかくに、べたんとすわった。くすれおちたという ふたごたったら、性質は多くの部分で類似してるたろう。 ほうがただしい。ショルダー / ・、ツグはひじのところまで落ち、台本「ゆりこ、コーヒーでもいれてやれ」 をいれた紙袋は入口におとしたまま。まりこはその台本をもって、 由夫が命令すると、彼女はわざと荒らつ。ほくしたくをはじめた。 部屋のなかまではこんだ。 ひとりごとのように「ええい、チキショウ ! 」とちいさく叫び、そ 「どうしたんだい ? ひき殺されたカエルみたいにひらべったくなのとたんにカップをおとして割った。その破片をゆりこは、むんす とっかんで始末している。指のあいだから血がしたたりはじめた。 「あいつ、 いつもああなんだ。スタンド・。フレイだよ、ありや。 由夫が声をかけた。 「だって、あなた、奥さん : : : 」 ゃな女た」 「え ? なんだって ? 」 由夫はつぶやく。 「 : : : 奥さん、いないはずでしよ」 ゆりこがふりむいてわめいた。「スタンド・プレイしてるのは、 「そんなことまでわすれちゃったのかい。相当重症だな。三年まえどこのどなたよ ! 」 「なんだとオー に結婚したの、きみだって知ってるはずじゃないか」 この野郎 ! 」 「だって、まりこちゃんは死んた : : : 」 「野郎じゃないわよ」 「そうだよ。かわいそうにな。おれたちがあう三日ばかりまえに殺「もう一度、いってみろ ! きさまのその首、ねじ折ってやる ! 」 されたんだよ。彼女のふたごのねえさんよ。、、 いうよりはやく、由夫は台所へひととびして、左ストレートをか 。しし子だったらしい 気の毒に。新宿のパーで泣いてる彼女をみて、わけをたずねて、そませた。ゆりこは抵抗する余裕もない。彼はゆりこの頭をがっしり れで知りあったんだよ。ゆりことは」 とっかみ、台所の床におそろしいカで何度もうちつけた。 「やめて ! 」 ゆりこっていうのか。三十分ぐらいでかえってくるといっていた ノ・フはおもわず叫んた。ゆりこの首。ほそい首。あの殺人。由夫 となりの部屋の住人とは、ゆりこのことだったのか。 はゆりこを殺す ? 「ねえさんのほうが、感情がはげしくて神経質なひとたったそう 「気絶したな。ふん、まねごとだろう」 だ。それなのに、ひとりぐらしなのに、ドアにカギもかけすにね。 ゆりこはしばらく、神経がおかしくなっちゃっててね。それで、お だが、彼のことばの後半には、心配しているようなようすもみら れがずるずるとゆりこの部屋にいって、つぎのつぎの日に結婚したれる。洗面器に水をためると、ゆりこの顔にぶつかけた。 んだ」 ゆりこは、しずかにゆっくりと目をあけた。 ロ 5

6. SFマガジン 1978年8月号

「それが理想なんだがーーーー過去にいってもどってくることはできる 「試作品だ。 / ーベル賞ものだそ」 ラドックスというⅢ んだよ。未来はまたダメだ。それにタイム・パ 父親は超特大冷蔵庫のようにみえるマシーンのまえで、満足そう題がある。過去にいって、自分を生むまえの両親を殺してきたら、 に腕をくんだ。 どうするね ? むずかしいよ、じつに」 「まさか」 ノ・フはあくびをして、キャメイをとりだした。由夫がすっている ノ・フはキャン・ ( ス張りの椅子に片脚をおりまげて、その足首をもタ・ハコ。彼女は『男に似せる女』の典型なのだ。 「そんなものに興味ないわ。おとうさん、のよみすぎじゃない う一方のひざのうえにのせている。これもまりこのまね。まりこは 十八歳のころから、下品、アパズレ、キンキラキンを習得すべく修の ? 」 行してきたそうで、いまではまるで街角ガール。そのくせ世帯くさ「わたしは十六のときから六十年もこの研究に心血をそそいでいる さがまるでないから、映画のなかのコール・ガールのイメ 1 ジだ。 んだそ」 口調だけはおだやかに、父親は宣言した。 本物の売春婦やストリッパーは世帯くさいぜ、といっか由夫がいっ ていた。 ノブの頭のなかで、ちいさななにかが破裂した。頭のうしろに組 んでいた腕を、ひざのうえにもどす。ついでに両脚ともキチンと床 「いや、これで完全なはずだ」 にそろえた。 父親は、マシーンをこぶしでかるくたたいた。ここは、彼個人の 「ごめんなさい」 研究所である。数人の助手には口止め料をだしている。つまり彼は いちおう、しおらしく。 たいへんな大金持ちなのだ。 いいんだよ。わかってくれれば」 『そのわりこよ、 、とこのお嬢さんってふうにはみえないのね、 父親は笑顔にもどった。 あのひと』とまりこがノ・フをさしていい 、そのことばを由夫がった 「ほんとにそうなら、あたし知りたいわ。いろんなこと、使いかた えてくれたおかげで、彼女は髪を逆立てた。 『あんたも、そうおもうの ? ナンデさん』 とか : : : 機械のしくみとか」 『そうね : : : ま、いい・ しゃないか。こんなことは。たいした問題じ「使用方法はじつに簡単だよ。ただし、場所移動ができない。ま ゃない』 あ、この研究所は三十年まえから建ってるし、このマシーンのため おもいだすたびに腹がたつ。内密の寝物語をもらした由夫にではの場所は完成を予測して、ひろくあけてあったから、だいじようぶ なく、最初にそういったまりこに。 だが。わたしには自信があったんだ。きようのこの日を予測できた 「じゃ、おとうさん、この機械にのると、過去にも未来にもいけるんだよ」 わけ ? 」 「おしえて ! 」 7

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うんうん。そうすると、もう一番最後のしめくくりは読者に与 えるお手軽なの書き方という : ・ 小松そうかあ、そうたなあ。 これはサービスのためですよ。 ト松さっき、そのことで話が出たけど、つまり、人さまに読ませ て、何かこう時間をつぶすものですからね。だからやつばりオー ダービリテ ーサービスすると嫌らしいけども、何かこう、リー イとサービス精神というのは、これはもう最低いるだろうという こと、それで・ほくはね、サービス精神というのはいやしいものだ といわれていた時代があるんですけどもね、これね、マナーで、 礼儀だと思うんですよね。 お客さまに来ていただいたんだと・ : 小松そうですね。楽しませなければーー・つまり、お茶の精神と同 じですよ。 おみやげ持たせて帰らさんといかん ( 笑い ) 。 小松それと、今は恥すかしくも何ともないんだから、これが好き だと思ったら、しばらくもう酔って、酔い続けて、それで何かこ う、その人のロ真似になっちゃってもかまわない。下手に美文を : うん。星さんのとき、あの話出まし 書こうと思わなくても : こ ?. ーー何の話 ? ト松つまり、・ほくらのように、とかくメダカは群れたがる。 いやいや、全然、そんな話しなかった。 小松群れたがるグルー。フが、実は彼の要するに一つの実験的マー ケットになっていて、それで話をそこでしてみてね、ひとつひと つの。 反響を見てね : : : 全然しなかった。 小松だけど、いま、こんなになっちゃったから、これからすこし 自分の話をすこし相手にく いっかせて、相手にその、自分を売り 出す技巧というのは、これから必要かもしれないね、かえって。 これからの人はしかし、いわれなくても身につけてくるような 感じはするなあ。 小松しますね。それは実際に、かんべむさしだって、それからか んべむさしは、あれは筒井さんのエ。ヒゴーネンかと思ってたんた けども、二作目、三作目、「背で泣いてる」なんて、あんなすご いもの書くんでしよ。あれ、昔だったら、芥川賞ですよ。 今度書いた、あの何ていうんだい、料理の : 、あれだってね え。手法だって立派なもんたし。 小松うん、あいつ、あんなシリアスな、あんなすげえ感覚持って るとは思わなかったもん。 しかし、人は放っておくと、一年たっと一年ぶん成長するな 小松ええ。 びつくりしたあ。 ト松それから、横順だってねえ。 うん : : : つまり、 しい時代であることは間違いないけどね。 。しュー 小松うんうん。 ( 純文学作家の話がすこし出て ) : : : と、 って、外国ののラリイ・ニーヴンとか、オールディスだっ て、あれよりもっとすごいですからね。 あれは人間はあんまり好かないけども ( 笑い ) 。・ほくは現象と して、ハインラインは非常に面白いです。しかし、それだけじゃ 0 6

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S F スキャナー ここまでは超光速飛行を例にしてきたが、以 さて、わたし ( ス。ヒンラッド ) がこのエッセに注目することがめったにない。ほ・ほ例外な 下はちょっと違う。サイエントロジイ ( 能力開イ中で示そうとしているのは″の中のいわ 、登場人物は二十世紀中葉の意識をもってい 発や病気・けが・精神異常の回復のために、精ゆる科学は、実在する事実ではなく、小説上のるのである。 神分析・精神治療学を利用した精神衛生工学 ) テクニックであり、科学的論理である″という だからハードはだめだ、というのではな は既に存在していたふたつの科学、精神分析とことだ。 。その狭い制限範囲内ですぐれた作品がつく ラリイ・ニーヴン、 コンビ、ータ理論を基礎にしてできあがった。 ( ル・クレメント、マレられているし、その狭さが緊張をうみだす例も ・サイエンスはこれまで交わったイ・ラインスタ 新しきラ ー、ジョン・・キャンベル ある。わたしが指摘しているのは、ハ ことのないふたつの科学の境界にうまれる。アジュニア等は一般にハ ード作家と考えられは根本的にみすからを単一の現実に閉じこめて ている。さらに、ポール・アンダースン、ジェ イザック・アシモフは″ファウンデ . ーション しまい、登場人物の意識もごく狭くなってしま ・リイ シリーズ″で″歴史心理学〃をつくりだしていイムズ・プリッシ、、レスター・デル っている、ということなのた。 る。 その証拠はハ ード T' の作家が、もっと″ソ ・サイエンスの フト″なものも書いており、それがその作家の 第五条ーーーふたっ、もし 最高作になっている、という事実である。『渇 くはそれ以上の既存の科 きの』のクラークは『幼年期の終り』のクラ 学を組みあわせること ークではない。 『二十一世紀潜水艦』のフラン で、新しい科学がつくり 、ートは『デューン』のノ だせる。 はない。初期のロ求ットもののアシモフは『鋼 ラ : ・サイエンスの 鉄都市』や『裸の太陽』のアシモフではない。 もっともらしさをつくり クラークよ、ハ ードなものが書けないから、 だすもうひとつの方法 ーというべき『幼年期の終り』を書い は、専門用語を使うこと たのだ、などと考える者はいないだろう。 である。つまり、専門用 作家は、自分の書いているものが科学ではな 語を体系化し、読者の心に共鳴する言葉を選ふアイザック・アシモフ、アーサー・・クラー く、文学なのだという事実を見失ってはならな ことで、その専門用語と人類の知識とを結びつクの作品のいくつかも ( ードと考えられて 。自分たちが未来の詩人であり、人類の運命 ・け・よーーーラ、、ハ ・サイエンス第六条。 いる。これらの ードの共通点は何の予見者であることを忘れてはならない。 続いて、スビンラッドは、・ロン・ ( 前出のサイエントロジイをつくった作ひとつには、、 ノードの″感覚とわれわというわけであります。もう一篇、登場人物 家 ) の作品にでてくるメーターなるハードウれが呼んでいるもの。宇宙を見たとき、その暗 ( 主人公から異星人まで ) の名前のつけかたや ェア ( 機械 ) を紹介して、 黒を、星々を見たときに感じるアレである。こ ーマンシッ。フなどについて書かれたラリイ ラバ ・サイエンスの第七条ー - ーあなたの擬れはまた、″月世界征服″や″二〇〇一年″を ・ニーヴンのエッセイも紹介したかったのだ 7 2 似科学を、信用しうる ( ードウ , アで強化せ見たときとも同じ感動だ。 が、これまた星群祭のおたのしみ。 よ。 いまひとつには、、 ードはその登場人物 0 = 45 ー MW1236 $ し 50 ' 、 CI€NC€ 日 GIO R€AD€R„ A し niq- 旧 0r0b0 ′ OCOti 肥 Of ゞ 0 「を 5 ~ w 0 q es 一 A 10 「を ite 0 「 50 旧・を

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ト松たとえば技術革新というのは日本の社会で生産がものすごく しかしね奥さん、この人と結婚されてよかったですね。おめで あがるし、それから片方で終戦直後にしかけたいろんな民主化の とうございます ( 酔っぱらいはじめたようだ ) 。・ほくだってね、 中で情報民主化みたいなことでずうっとあとになると効いてくる 星、小松ての知ったってこと、実によかったもの。よくもまあ、 わけですよ。そうすると、それにふさわしいものとして、こうい あんなにみんな集まったね。昔なら、気違いあっかいされるよう うものが用意されていたわけですね。 なのばかりが ぼくは、あのとつばしの頃から、転石苔を生ずか何かしらん 小松世の中まともなら、気違いだな。 が、一番最初に石がころがり出すところのよいしょを。ほくがやっ 百たたきだよ。 たような自信はちゃんとあるものな。だから、もうそれだけた、 小松だからねえ、依然としていまになって、小学校、中学校、そ れから意外に三高の時の友達というのが、わりといい友達がいて生きとってちゃんとしたことをしたというのは : 小松それは実際なんでね、だって矢野さんの時もそうだしさ、・ほ 結びつきが強い。それから大学でも卒業間際とかね。それからい くらの時もそうだけども、星さんはもうひとつ前の時代でそうだ まいちばん結びつきが強いのはやつばり界の連中ですよ。 だから・ほくもね、あの時代というものを取り出して、それをわ けども、福島さんもそうだけども : れわれの人生からなしにするといったら、いつでも自分の生命を 教祖集団みたいなものたな。 捧げますと。生命と引き換えにしましようと、何かに書いた。い 小松そうだよ。それでね、自分がね、世の中のほうが全部違うム や、本当におれ、生きとった甲斐があったと思うね。 ートで動いてるようだけども、自分はこれに賭けるってものが、 こんなに育ったら、それは嬉しいですよ。 小松それよりも実際、つまりそれで、・ほくがが世の中に売れ そうだ、われわれどんなに阿呆なことをいっても、みんなでわ ようが売れまいが、こんな楽しいグループがあるんだったら、も っと笑ったわけだ。ほかの集団ではなかったことじゃないのか うこれでいいと思ったんですよ。それが売れちゃったから、おか しいんだ。何か今でも騙されてると。また、こういう感じがある んですよ。本当かねと思ってね。 ( と、酒が入るほどに談論風発。これからも延々とつづきますが、 残りはいすれ、単行本にするときにでも : : : と、本日はここで失礼 本当だ、よかったなあ・ : い世の中ですよ。 いたします ) ト松だって、いい世の中っていうけど、十分の一ぐらいはまく らも作ったのよ、で、やつばり若い人達に : : : それで、あとから 考えてみると : ぼくらも、しゃない。・ほくらが作ったんですよ ( 笑 ) 、それは そうだよ。 7 6

10. SFマガジン 1978年8月号

もあるよ。 きゃなんない。で、ジャンルは別だから私達はここでって、いっ てられないではないかと。 ト松そうですね。それからやつばり・ほくは界に初めてとび込 んだ時にですね、ラインナツ。フのいまいったみたいな潔さと、そ そういうことが、とにかくちゃんと通ると、御民われ、生きる れから何か : しるしあり、 ℃い時代ですね。 ( 笑 ) 優秀さと : 小松そうです。マンガは面白いと、手塚治虫の漫画のほうがです 小松とっても優秀ですよ。それから人柄の良さってのはねえ、と ねえ、何かこうおごそかなものがあって、はるかに大きな問題を っても大事だったんではないかという気がするんですよ。その中 投げかけていて面白いっていったって、それでな、ぜこっちのほう でですね、もし仮にですよ。どっか別の世界で志を得なくてです が上だっていえないのかということですね。ロックが面白ければ ね、こっちへ入ってきてここでおれがこれを率いて、おれがそこ それでいいんですからね。 んとこを反撃してやろうなんてのが、もしトップにいたらまた全 そういう意味ではいい時代だなあー 然別なことになっちゃう : ト松いい時代だし、それからそのある種のファンには、・ほく たから昭和文化史の中でね、福島さんは偉大なことしたわけ はねえやつばりたいへんうらまれているんじゃないかと。と だ。作家クラ。フを作ったというだけで意義があるもの。 いうのは非常にその特殊な楽しみだとして、ミステリイではあき 小松福島さんは福島さん自身のルサンチマンもあったらしいけど たらない人達の楽しみとしてですね、いわゆる奇妙な味の小説と して楽しんでる、そういうのがいし というふうな人達にはですも : うん、しかし一番えらかったのは、あすこにまとめてくれたこ 間口を自分でもだいぶん拡げちゃっ ね、あんまりというの、 とだ。 たと思うので、だいぶんこううらまれているような気がするんで ト松だけど矢野さんと星さんと、その他もろもろ、あのラインナ すけどもね。 ップは本当に最高だったな。だからいま、若い人が、もう自由に とんでもない。それは・ほくは若い次の世代の人の義務みたいな 育ってくるわけですね。 もので、常に何か創り出す、何かを見つけなきゃいけないと。。ほ そうです ( 威張っている ) ( 笑い ) 。 くが一生のあいだにした一番いいことはたぶん昭和二十一年に の中へとびこんでいって、アメリカのを何とかして引きず小松一時期ね、やはり今度は逆にね、は擬似科学だからつま り込んでこようと、まっしぐらに来たわな。、これは実に人生の転らないと、馬鹿なことを言うやつがね。それを・ほくは逆にね、そ れを賞めるにしろ、くさすにしろ、そのやり方でもってね、その こんどっぎの時代の人はね、 期、あすこにあったわけだ : ま現在あるのが面白くなけりゃあ別のものを何かこしらえてくれ評論家の器をはかった時代、ひそかにはかった時に、これは馬鹿 7 だな。これはどうしようもないなと思ったな。わりとえらい先生 れば、見つけてくれればいいんだ。こんないい時代だもの、何で