たのがまたすごいおっさんだったからな。 ふざけすぎるので注意するようにと書かれてますから : ・ ・ほくが想像しとったよりもどういうのかな、非常にこまやか かんべ小松さんとくらべてもらうと困りますよ。 ( 笑 ) 堀何か、すごい原体験みたいなのがあったら純文書くのか、ない な、女性的でもないだろうけども、非常に神経質な : から書くのかというと、これはむ十・かしいことになる。 かんべ神経質は神経質ですね。すごく気にしいですし、気を使い ますし、そういうところはあります。 かんべでも、そういう意味ではないですけどね。そういう意味じ ゃなくって : いや、何でそういうことになったのかというか いや、これは反省するなあ。こっちはたいぶ抜けてるみたいだ らそういうのであって、そういう意味じゃないですよ。 もの ( 笑 ) 。 あなたは、いやに神経が繊細で、何となく非常におとなしいん かんべそれでまあ、さっきの話でいいますと、正紀との対談でい だなあ。 うてるときに、そういう原体験みたいなことがあっての話で : かんべそうですよ。・ほくはかなり神経過敏というか、なんという あれがたまたま正紀と・ほくと一致したんですけども、その : : : 自 んですか、神経症っていうんですか、メランコリー後発性といし 分というものをもろに出して小説を書こうとすればですねえ、戦 ますか、そういう感じのとこありますね。ちょっとだから割に強中派とか戦後派とかの人には、そんなもん頭から負けることが決 まっているんやという感じがするんだと。・ほくもそうやというふ 迫観念にとらわれたりねえ、そういうことはよくありますよ。 堀お笑いに目覚めたのはまたなんか : うにまあいってる。 かんべそれはぼく、昔からおっちょこちょいのね、イチビリだっ それで、だからといって逆に考えたら昭和二十年以降に生まれ たから、これはまあ、もともとのものですよねえ。 たのは、われわれの責任ではないんやと : : : そういうのが終って そのイチビリという関西弁を東京の人にいうとしたら、なんて から生まれたのは、これは仕方がないといえば仕方がないことで いうの ? ねえ、それをぐるりから、戦後だから何もないだろう、どうだ楽 かんべう 1 ん、なんちゅうですかねえ、人を笑わすことによって だろう、ワーワーといわれたって、これは・ほくらの知ったことじ 目立ちたがるちゅうんですかね。そんな感じが・ほくはありますね ゃないという、開きなおりの気持も若干はありますねえ。 え。イチビリという意味はもっと範囲広いでしようけども、・ほく いや、戦争の原体験のほうが、いまの何もない、非常に平和な の場合は、笑わすことで目立とうという感じですね。 世の中で育っていった人の原体験よりも、下だとか、上だとか、 ふっさ そういうことは・ほく、ぜん・せんないと思うよ。たとえば福生あた 小学校ぐらいのときから ? りで麻薬遊びをやってなんとか、ああいうものはこっちはしたく かんべそうですね。小学校の通知簿にすでにもう書かれてますか らね。ときどきふざけすぎるので注意してくださいちゅうて。ふ たってできなかった時代だから、こっち、うらやましいわなあ。 たんは何か真面目でよくやってくれますが、ときどき度をこしてかんべうーん、それとちょっと意味が違いますわね。それはやめ
SF レヒゴウ り沢山な内容をもっている。手なれた筆 えば、沿岸部以外の内陸は真っ白で、 ″未知の大地〃であったわけたから。火致で、破綻もなくまとまった作品になっ 星、金星、地底世界、さらには月世界、ている。舞台もアフリカからはなれ、前 石器時代などと変わるところはない。途後の巻との関連も薄いようで、独立した 中の巻からあとかなり的な設定をと作品として読めた。一九四〇年と、四一 りいれるようになる〈火星〉シリーズに年に、「アーゴシイ」、「プルー・フック」、 川又千秋 スリリング・アドヴェンチャー」とい しても、第一巻の『火星の。フリンセス』 など、舞台が火星であるということひとった冒険小説誌に発表された中短篇で、 お聞きしたいのたけれど、女性読者が つをのそけば、らしさはかなり希薄ごく後期の作品ということになる。ドイ ツ人の悪役が登場するのは毎度のことた男性の作家の作品を読むとき、″おとこ こ。 GO かどうかの問題は別にして、タ の作家石をどれ位意識するものなのだろ ーズの、たとえばプレスタが、ヒットラーを崇拝するその男がいし ーザン・シリ ・ジョンの伝説にもとづく帝国を訪れところなく書かれているあたりはやや鼻う。 る話、ローマ帝国の末裔がアフリカの密につく感じだった。悪役側にはもうひと " 女流。文学賞があるのに、 " 男流。文 と書いたのは確か 学賞というのはない、 世界革命を演説するロシア人もい 林の奥に栄華を伝えている話などにぼく 倉橋由美子だったけれど、やはりそんな て、頓狂なあっかいで描かれている。 が感じる驚きの質は、少なくとも他の のこりの二本の短篇のうち、「ターザ風なもので、女性の読者にとって、きっ ロウズ作品と比べて、基本的に異なるも ンとチャン。ヒオン」は、ボクシングのへと″男性″作家という意識は希薄なんじ のではないと思う。 ( ャカワ版ではシリーズ第十六巻に当・ヒー級チャン。ヒオンがアフリカまで猛獣ゃないか、と僕は思うのだ。 ところが男の側からすると、″女流石 たる『勝利者ターザン』には、三作の中狩りに来て、ターザンにノックダウンさ というのはそれだけで何かひとつの質を 短篇がおさめられている。一冊の半分以れてしまう話。「ターザンとジャングル 上を占める「ターザンと難船者、は、記の殺人者」は、ジャングル探偵ターザン暗示する大きなマークであって、かなり ″おんなの作家れということを意識させ の一作である。 億喪失におちいったターザンがニューヨ 1 クで見世物にされるために、檻にとじ星新一が解説を書いているが、主としられる。 ( 誤解のないように今からこと こめられて船ではこばれるところからはて初登場の訳者を紹介した文章になってわっておくが、社会的間題としての差別 いる。作品の内容については、軽く触れだとか区別だとか言うことと、この認識 じまる。乗組員の反乱、嵐による難船を へてたどりついた孤島には、古代マヤ人た程度である。 ( 『勝利者ターザン』 / は全然関係がない。文学の質について語 ー・ライス ハロウズ / 訳っているのだ ) の子孫が住んでおり、おりしもひとりの著者日エドガ どういうことかと一口うと、娃価局、つ 娘が森林神への生け贄としてささげられ者日長谷川甲二 / 文庫判 / 315 頁 / つめた所で、男にとって女の感性という ようとしているところだった : : : と、盛 3 6 0 / 早川書房 ) 山尾悠子日著 「夢の棲む街」 幻 3
ちのカードとこっちのカードくつつける場合もありますからね。 しますけどね : ・ 。そういう感じですね。 だから、・ほくとしては百はあるだろうという気はしますけども堀わりと会社での出世と似ているね、ずっと : ね。二百五十ぐらいのうちの百五十ぐらいはエ。ヒソードとしてし 会社の延長にあるな。 か使えんものとか、あるいは形式のアイデアの場合もありますかかんべそれと、これ変な癖なんですけど、最近だんだんなくなっ らね。形式のアイデアだけでは小説できませんから、それに何が てきましたけれども、会社におる頃に新聞なり雑誌なりのコ。ヒー 一番びったりか、こっちのネタとっていかなければいけませんか を文章書いてますとね、字詰めとか、ああいうのが非常にきびし ら : ・ : 。だから二百五十は数というか、目の子勘定であって、実 いでしよう、広告の文章は。そうするとマス目が大きい、さっき 際には百ぐらいだと思いますけどね。 いいました企画書用紙みたいなのに原稿書いていたわけです、当 で、それでひとっ選び出して、だいたい見当っいたらさっきい った企画書用紙っていうんですか。碁盤の目みたいになった紙が そうすると雑誌一ページの広告のコ。ヒーなんて、三百字とか二 あるんですけどね、これは会社時代に企画書用紙だったんで、使百五十字ですね。ひと目で見渡せるわけですね。そうすると十五 いなれているのでやりやすいと思って、自分でも作ったんですけ字詰めの何行と決まっているわけですね。十五字詰めの仮に二十 ど、それで構成立ててメモしていって、だいたいの見当っけるわ 五でしたら三百ですか、十五字詰三十行で、それなら最初からそ けですね、それでイントロから最後まで、枚数の見当もつけて。 の枠切ってしまうわけです、自分で。この中に納まるように書か ま、それがだいたい二、三回書き直ししますね、最初すっとした にゃあいかんと思って。それで一応書いたとしますよね、三百 メモですから、それを順番に整理してったらだいたいびちっと決字。こう見ると中身を見なくとも、その段数たけで・ ( ランスがわ まってくるまで、二、三回書き直して : かるわけですよね、段数で最初の五段でまだこんなあいてるから 書き直して作るというのは企画書 : まだイントロに重過ぎるなという感じが量でわかるわけですね。 かんべシノ。フシスみたいなものですね、シノブシスを作るわけで あの段数の量で、物差でわかる感じですね。その癖がなかなか抜 す、構成表ですね。台本みたいなものです、ラフ台本を作るわけ けなくって、原稿用紙、あれ四百字めくって書いてはやっていっ です。ラフ台本でだいたい整理できたと分るということは、自分 たら、ひと目で見えないでしよう。量の見当、・ハランスの見当が の頭の中でだいたい決まっているわけですから、それができたら 一時つかなくて困ったことがあったんですよ。それをなくすため 書き出すということですね。 に、そのラフ用紙のそれを作って・ハランスの見当をつけているわ だから、それを机の前にセロテー。フでとめてそれを見ながら書けです。 いてって、ただし、途中でどうしても話の都合上、ラフ台本と、 ここで十五枚、ここで二十枚というふうに書いていくと。 こっちずれてくれば、当然原稿のほうを優先さして、こっち没に かんべそうです、だからイントロなんかの場合は、ラフ用紙の五 6 6
に強いと変な具合に吹きこんたりしてそんな音をたてるものだ。 、トリッジ氏が言った。 「ホー、ホー」 風が鳴っている。 スネップがあらためてそう思った。だが、自分では少しも気づか ずに、子供の頃に聞いたこわい話の、魔法つかいのことばを呟いて スネップが耳をそばだてた。彼は風の音がいろいろに変化するの を知っていた。チル氏の工場で一流の職工になる前に、スネップは 「うちの玄関の戸をたたくのは誰だい ? 風かな ? ただの風なのよく夜警の役をかって出た。冬場、冷たい風が吹きつけてくる頃に かな ? 」 なるとたびたび耳にした。立木や建て物の壁や、そうした所にぶつ その魔法つかいは、悪い子をつかまえてはかまどへ放りこんでし かるためだろう。あるいは風と風が空でこすり合されるからかもし まうということたった。 。とても風の音とは思えないような音となって聞えてきたり フェネストランジュ氏の食べ方はゆっくりしている。それに、チする。それは時に、嗄れた声だった。絶望の叫びにも聞える。苦し ル氏やポーマン氏や。ノ 、トリッジ氏にくらべると量もすっと少なかつみの底から絞り出される声でもあった。 た。それで、喋るのはもつばらフェネストランジュ氏たった。せつ 窓のよろい戸を煽る風の音はけだものじみていた。狂犬が何頭も かくの会食を、たた黙々と食べてしまってはつまらない。話をはす集まって空へ向って吠えたてているようだった。暖炉へも吹きこん できている。ヒュ ヒューし J 喰 1 っこ。 ませなければ : : : そして、それは、主人たる者の役目でもある。 だが、あれは ? フェネストランジュ氏はよく喋った。そして、そのほとんどが、 妖怪、の話たった。よほどの情熱をかたむけているらしい。 スネップが耳を疑った。今聞いた。あれもやはり風の音だったの 「 : : : ということでして、本当に妖怪と呼ぶにふさわしい存在は、 だろうか ? 果して。彼には、外からではなくて、この家の奥のほ このフランスと、あとはフランドル地方でだけ認められていると考うから聞えてきたように思えた。そして、たしかに、年端もいかな えられます」 い女の子の泣き声のようだった。 「ドイツにも似たようなものが語りつがれています。出てきて、蕪「では戻りましたらさっそくに」 の数をかそえるという、 一種の化けものですが、子供がいると脅し チル氏がフェネストランジュ氏に約東して言った。チル氏の著書 はしますがけっしてわるさはしないということになっています」 のことだった。フェネストランジュ氏に送る、という。フラマン ポーマン氏が言った。 で書かれているがフランス語訳がついているから心配はいらない。 「わが国にはミスター ルイとかアラビ ・レインというものがいます。雨降りととも「きっとご興味がおありのはすです。ムッシュー に現れます。幽霊の仲間でしようか。子供には手を出しません。むイとかわたくしの住んでおりますあたりで申します、やはり妖怪で しろ気に入らない大人をひどい目に会わすということです」 すが、そのことも取上けているのです」 2
あっこ。 かった。ア・ラ・カルトで、しかも店の最高のをえらんで注文して 民俗学と関わりがあるとすれば、氏が雑誌に、、・ カン市とその周辺いた。ニジマス、ヤマシギ、とつづけて、一八八七年のヴヴレー ・マルゴーで仕上げるという念の入れ方だっ の古い慣例と風習について、小文を寄稿したことだろう。原文はと一八八五年のシャトー もかくとして編集、加筆が秀れていたためにその小文はかなりの評た。もちろん、目の玉のとび出るような勘定書を持ってこられるだ 判をとった。これに勇気づけられて氏は、 ″ガン地方の暗黒の六週ろうが、そんなことは少しも意に介さなかった。ニジマスが運ばれ 間″と題する小冊子を発表した。二百部の限定でオランダで印刷さて来た時、チル氏はちらっとリーンポエルとセルヴァンのほうを見 れたものだったが、とびらに凝りに凝った献辞が書きこまれて市長やった。同国人たったが別に親交はふかくない。ちょっとからかう をはじめとする有力な人々へ送られた。そうした文化的な面へのな ようなつもりでちらりと見やった。二人はもちろん当てがいぶちの ーだった。そしていかにもうんざりしたように溜め息をつき みなみならぬ関心を示すためであったし、もちろん、それが他方面メニュ ながら、チル氏のテー・フルのニジマスをにらみつけた。 へも何かと有利にはたらくであろうことをひそかに期待したものだ 〈はあ ! 〉 「ランプイエの学会へはぜひとも参加されることです。実績になり どうだい、 という気持もあった。少しは当てこすりの意味もあっ ますからなあ。教育功労勲章の指定を受けるという意味からも : ・ た。チル氏はその二人ではなくて、近くのテ 1 ・フルにいたドイツ人 とイギリス人を自分のテープルに招いたのだった。 とりまきにもそんなふうにそそのかされた。注文しておいた最新 コーヒーになり、リキュールを説きにきた。チル氏はシャルトル 最高の自動車も届いたし、出席しないという理由はない。ガンから 】ズを注文した。この頃出回っているタラゴナ産のではなくて、緑 ラン・フィ h へ。 ( ンドルはスネップに任せて、快適な旅たった。そ色をした本物のフランス産のだった。 して、思ったとおりその真赤な = レクトリック・ランダウは街道筋「あのコン・フという男のおかげでこれほどの銘酒がためになってし の人々の目をひきつけたのだった。 まった。実に残念なことです」 ワイン。とりわけてシャトー・マルゴーがきいたらしく、チル氏 はそんなことを声高にロにした。それがまた近くのテ 1 ・フルですっ オテル・デ・プランスで昼食をとった際、チル氏は二人の外国か ばいワインを飲まされた連中の反感をかったようだった。チル氏は らの参加者と知り合った。一人は ( ンノーパ 1 から来たルドウイヒ無視した。 リ . ツン ・ポーマン氏で、もう一人はブリフトンからのジェームス・パトリ ポーマン氏はアルザス地方のキルシュがいし ッジ氏だった。 氏はやはりウイスキーが希望だった。 チル氏は初めから当てがいぶちのメニューなどをとるつもりはな 三人はリキュールのあとも話がもてた。誰からともなく午後の会 、と一一一口い 7
・前回までのあらすじ ジローはあえぎ、あえぎながら、ようやく体を起こし、あぐらを 戦士ジローの生きる世界は、現在とはまったく異なる動物相・植 かくことができた。そして、歯を使いながら、両手首を縛っている 物相を持っ世界だった。そして、彼の生まれたマンドールは、″稲 ナワを解こうとする。 やっとナワが解けたときには、ジローは 魂″と呼ばれる存在が頂点に立っ生態系に支配されていた。 疲労困憊の極に達していた。しばらく、放心したように両手首に残 幼時から人里離れて、父親から戦士として厳しく育てられたジロ る赤いアザを見つめている。 ーは、父の死とともに街に出たが、そこで美少女ランに出会う。そ して、激しい恋に落ちたのだった。しかし、ランは″稲魂″につか さしもの体力に恵まれたジローも、馬に引かれながらの一日の強 える巫女であるばかりか、ジローのいとこにあたる。近親婚は犯す 行軍は、そうとうこたえたようだった。警吏たちは容赦なく馬を走 べからざるタブーだ。ランへの思慕を断ち切れぬジローは、ふとし らせ、ジローらが転・ほうと、地を引きずられようと、まったくおか たことから知りあった放浪者のチャクラ、呪術師のザアルーの力を まいなしの非情さだったのだ。 かりて″稲魂″の神殿に忍びこむ。だが、ジローはそこでランに会 ジローは立ち上がろうとして、傍らの草むらに自分の剣が放りだ うことは出来ず、幻覚のうちに″稲魂″そのものと出会い ラン・か 欲しくば失われた宝石″月″をとってくるよう命じられる。 されているのを見つけた。どうやら、警吏たちが立ち去る際、落と チャクラ、ザルアーらとともに旅に出たジローは、まず県圃の里 していってくれたものらしかった。小 丑がそうしろと警吏たちに をめざした。だが、そこにつくまえに、県圃の役人だという小丑と 命じたのだろうが、これはジローにとって思いがけない喜びといわ いう美少年に出会う。彼は県圃に入る許可を与えるかわりに自分が ねばならなかった。少なくとも、徒手空拳の心細さからは解放され 満足のゆく料理を食べさせるよう要求した。ようやく、それをやり るからだ。 とげた三人は、そこで意外な障害にぶつかる。チャクラがなに気な く拾いあげていた植物を持っことが、極刑にあたるというのだ。三 ジローはその剣を杖にしながら、ふらっく足を踏みしめて、やっ 人はたちまち畢方という化物に襲いかかられたが : との思いで立ち上がった。そして、地に横たわったまま、うめき声 をあげているザルアーのナワを、震える指でほどいてやる。 チャクラはといえば、すでに自力でナワをほどき、グッタリと地できれば、その罪は帳消しになるという話だった。しかし、草原は シャオチュウ に伏している。 丑の言葉をかりれば、「県圃の里には水がなく、他所者 三人ともに、とことんまで体力をし・ほりとられていた。あの にはとても苛酷な土地」ということなのた。疲れきった彼らが、は 丑の命により、彼らは水一滴与えられずに、草原を歩かされ、そのたして草原を突っきることができるかどうか、大いに疑問といわね ど真ん中で放りだされてしまったのた。たとえ悪意はなかったにしばならなかった。 ろ、県圃に鬼を持ちこもうとした罪は重く、 いうならば島流しにさすでに、喉の渇きがひりつくようなのである。 れたようなものだった。 「そんな莫迦な話はないよ」 ジローはザルア 1 を立たせながら、カづけるように言う。「これ ただし、彼らが自力で草原を突っきり、県圃にたどり着くことが シャオチュウ シャオチ 8
でいるわけですよね、調べてみるとね。でもそれは単に面白さだ このこ出てぎたりしてたわけですよねえ。そういうのになると、 とか、こういう話があるとかいうふうなことを聞かされて読んだ 非常にこう・ハランスが崩れるような不安感はかなりありましたね 5 だけであって、だからと思って読んだわけでもないし、ある 松さんとか星さんの短篇集もある程度は大学のころには それをなんとか取りもどそうみたいな気で土曜日のたとえば、 読んでましたね、調べてみたら。 四時ごろに会社終ったとしたら、当時にしてみれば土曜日でも四 それは面白いなあとか、これ、あつなるほどなあとかいうこと時に会社終ったということは非常に嬉しいというか、有難いこと あさひや であって、その時点でだから読もうとかいう、そういうこと なわけなんですよねえ。家へ帰るまでに旭屋に行って、文庫本 三、四冊ばらばらと買いこんで家へ帰って、土曜の晩から日曜の は何もなかったみたいですねえ。だから、他の小説なり、あるい は随筆なり旅行記なり、ハウッー物なりとおんなじレベルでばら 朝まで徹夜でばしっと三冊ぐらい一気に読んで、ちょっと安心す るとかですねえ、そういうふうなことはありましたねえ。 ばらとばらまかれている中から、いろいろ、次から次へとチョイ スして読んでいったという感じですねえ。 ほんで、それから仕事に関しては広告とか、そういうもののも もちろん仕事の関係の本は、こらまあ仕事ですから読まないかん 堀を意識して、まあ小松さんとかを読む以前に、なんかいろ ので、当然読みましたけれども、それ以外にどんだけの、断片で いろ面白い発想の小説を読むところで、なんか職業の広告のコ。ヒ もいいけども、どんだけの知識を持っているかによって、アイテ ーなりに応用しようふうな気とか、そういうものは・せんぜんなか ったわけ ? アの発想のカ、変わってきますんでねえ。いろいろなスポンサー に出入りしなければいけませんから少なくとも向こうがいうてい かんべいや、あのねえ、学生のときはそんな何もなかったんで、 とにかく面白いとか、暇つぶしとかねえ、そんなんで読んでまする言葉がどんな方面の言葉かくらいわからんと話になりませんの でねえ。それは新しいスポンサーがつくたんびに、そういう入門 ねえ : ・ : 学生のときは無目的な読み方というか、めったやたらと いう感じで、で、会社に入ってからはそんな自由に本を読める時書なり、それに関した本なんかは・ ( ラ・ハラと読んだり、そういう ことはしておりましたねえ。 間が少なくなりましたんで、割にちっちゃい代理店でめちゃくち 何かこのあいだ、豊田さんのエッセイでだいぶ感心したのは、 や仕事をさせられたりしたこともあったんで、それの反動みたい なので、あせりっていうんですかねえ、こんなことをしてたらだ 小説書くときには、もとの原体験というか、それが非常に大きな んだんそういう面でのあれが摩耗していくんじゃないかという気ファクターとなる。星、小松の場合には戦時中の体験がものすご がして、いまでも思い出しますけど、土曜日でもね、いまはもう く大きかったと。そうすると、いまの若い作家の場合、それがな たいてい世間は週休二日になっておりますけれども、・ほくらは土 いから、何か自分で作り出している : 曜日でも五時、六時までやったり、夜十時ごろにスタジオからのかんべありましたね。今月号の「奇想天外」ですねえ。
あと噂していたら、何かやつばり違うもんであったらしいという稿を送ったあとで、審査員の人がゲラゲラ笑ってくれるか、そう のか、いまごろわかってきたわなあ。 でなければ、こいつ、なんでこんなものを送ってきたんか、なん かんべうーん、そうですね。これはなんていうか、非常に強引な か勘違いしてるのと違うかと思って、ばっとほかされるのか、ど アナロジーをしますとねえ、はなし家といっしょでねえ、こうい っちかやと思ってましたねえ。 う師匠が好きだといってそこに行って口うっしで教えてもらいま 堀さん、どんどんしゃべって。あなたのほうがかれを、ずっと すわねえ。そして、たとえば円生師匠の弟子の円楽さんが円生師よく知っているからなあ。 匠に同じ話を教わって同じ話をやっても、自然と、そもそもまず堀・ほくはまあちょっと知りすぎてる面があって、いや、つねづね 第一に、声が違いますから、もうすでに違うものになっています思うんですけどね。・ほくがいちばん不思議なのは、筒井さんが好 よね。それで、修業積んでいったらだんだん自分のものが出てき きで、それから野坂昭如が好きで、開高健が好きで、お笑いの作 ますよねえ。そういうふうなものだと・ほく思いますけどねえ。 家ではあるわけなんですけどね、なぜ ()0 なのかというところ だからなんていうんですかねえ、逆にいえば百パーセント真似 が、まだちょっとわからない面があるんです。なぜの型式を るほうが難しいんでねえ、百。 ( ーセント真似られたらこれ天才や取ったのかということですね。それで「決戦・日本シリーズ」な と思うんですね。百パ 1 セント真似られたらその人と同じレ・ヘル んか読むと、どう考えてもあれは破格ではあるけど、・ほくは いうことに、外から見ればそういうふうに見えますからねえ、そ の構成きちんとおさえているように思うんですよ。 ういうのは不可能なんでね。無理して真似ようとしたって半分も 星、小松とか、昔の、最初のころに出た人のときには、翻訳の 真似られないんじゃないかと思いますけどね。 が非常に大きな影響源だったけど、あなたの場合はどうだっ そうすると、一番最初は、筒井さんを非常に大きく意識してお たの ? かんべこのあいだちょっとほかの原稿を書くことがあって調べた かんべ意識というか、読んですごく面白かったんで、ばらばらと んですけどねえ、さっきいいましたように、いろいろなのを手当 こう、ぜんぶ出ているものを次から次へと : りしだい、そんな感じで読んでおりましたんで当然そん中に と称されるものも入ってたわけですね。こちらそんなのを意識せ 最初は、あれと同じものを書こうとしていたわけですか ? かんべいや、同じもんとか、違うもんとかいう意識は。せんぜんなずにこれ面白そうだ、つぎこれおもしろそうだと読んでいたわけ くて、とにかくこういう話書いたら面白いなと思って、ぶつつけ ですけどねえ : : : そうすると、なんというんですかねえ、たとえ 本番で、わからすに書いたという感じですねえ。だから、いまで ば「山椒魚戦争」とかねえ、カレル・チャベックの。あれだと 、カ ヴェルヌとか、ウエルズとか、いわゆるまあ古典というか も覚えてますけども、その原稿をコンテストに送ったときに、も ちろん必す落ちると思って送る人はいませんけどねえ、自分の原だれでも読むようなもんですねえ、そういうものはある程度読ん 5
ネタラ号は、郵便物と旅客を積んで金星と火星との 「ふん」 ( 鼻先で、せせら笑う ) あいだをいったりきたりしている。われわれの飛行「あ、あの、新しい原稿、これからすぐ書くよ」 が不規則なのは、天文上、そうしなければならない 「ムリでしようねえ。 しったい、この原稿、〆切日をな 理由があるからた。金星と火星がそろって地球に大ん日遅れていると思ってるんですか ? 」 接近した二〇七〇年春のその日、われわれはこの年「そりや、当然できませんね。それから、編集部として になって二回目の〈地球ー火星ー金星〉周回飛行をは、この原稿に対して、すんなり稿料をお払いするわけ 終えようとしていた。たしか、五月何日かの夕刻のには。なにしろ、珍しい作品ではないのですから」 ことで、自由金星連邦のグレ 1 ・フ / 「で、でも、その : 、ールから新ニュ ーヨークに着いたわれわれは、五時間だけここに滞「まさか、文句はないでしよう。文庫に入ってる作品の 在したあと、同じ晩の十二時に今度は火星連合の首ストーリイ紹介をして、お金をもらったら、横田さん、 都フェロック・シャーンに向けて出発する予定でああなた人間じゃないですよ」 「だから、書き直すと : : : 」 「ほう。三時間で新原稿三十枚書きますか ? 」 「な、なんと。そっくり同じだ。ま、ますい ! 俺の立「じ、しゃあ : : : 」 場はどうなる。創作だと信じてたから、あんなに・ヘタホ 「ま、とりあえず、来月号は読けることにしましよう。 メしたのに : ところで、横田さん、に、なにかおもしろい連載 「光線銃もカー・フ光線も、全部オリジナルにあるんでのできる人いたら紹介していただけませんか ? 」 す。すごくもなんともない」 「あ、あの『日本こてん古典』おもしろいですよ」 「しかし、この原作が書かれたのは昭和六 ( 一九三一 ) 「ま、むかしはね。、 しま書店に並んでいる翻訳書を同し 年。翌年、翻訳されているというのはたいしたものだ作品を創作とまちがえて紹介するなんてことはなかった よ。ひょっとしたら、これがレイ・カミングスの本邦初ですからねえ」 訳かも知れない。意義がある」 「六十回近くも連載していれば、一度ぐらいはこんなこ 「まあね。でも、それたけのことです。スト ーリイを紹 とも : : : 」 介したってしようがない。読みたい人は、すぐ文庫で読 「アマチュアなら、そんなことをやることもあるかも知 めるんだから。そうでしょ ! 」 れませんねえ。でも、プロと名のつく人はいくらなんで 「う、うん : : : 」 もねえ : 「それにしても、横田さん、「月面の盗賊』読んでなか 「わあっ ~ リ」 ( 激しく泣きしやくる ) ったんですか」 ここで、—氏はひとこと「アホ」と小声でつふやき、 電話を切ったのたった。奇絶 ! 怪絶また壮絶リ 2 ー
だったですからね。フィクションというのは、それまで書いたこ とはなかったという感じですねえ。コンテストがきっかけです 5 矢野徹インタビュウ〈一六頁より続く〉 ね。 そして書いたらすっと書けたわけ ? 要するに、あなたがどういうふうにしてを書くようになっ たかということですが、ね、阪上さん ( 笑 ) ・ : : ・的なことをかんべすっとというか、もちろん、つつかえつつかえでしようけ どね。 考えるとか、書き出すとか、子供のときからその萌芽はあったわ 小説を書くという勉強はしたわけ ? け ? なんでいまみたいになったかですわ。 かんべどうでしようねえ、あったといえば、ま、結果論で、いまかんべいや、しませんでした。しませんていうか、だからもちろ んいろいろ本を、それまでにわりに本読むのが好きでしたからね からの思い出でねえ、あれもそうか、これもそうかというのはい え。大学のときなんかでも、わりに読んでおりましたけども。な えるかもしれませんけども、実際に書き出したのは、あの g-k コ んというかもちろん雑学趣味なんでねえ、いろいろな本をあっち ンテストのあれがとつばなですからね、その、フィクションとい 読みこっち読みしているわけで、そうするとその中で当然確率と うのを書いたのも。 して小説なんかもちろん入ってくるし、たとえば「私の小説」な 四、五年前たった ? んていう本がありますね。毎日新聞の学芸部が編集して、雪華社 かんべ四十八年のマガジン十五周年記念コンテストですか : かどっか出していますねえ。あんなんなんか、そういう意識なし にたまたま読んで、ああこういう人はこういうふうに書いている どうして書くようになったの ? のか、読んだりしてましたし、それを実際に書くという、こうい かんべ文章というか、書くこと自体は、もともと好きでしたんで うふうにすれば小説になるのだとか、そういうのは。せんぜん知ら ねえ。だから、高校の二年か三年ぐらいから広告のねえ、コビ】 なかったんで、コンテストの「決戦・日本シリーズ」の場合は本 ライターになりたいなあというふうに思っておりましてね。大学 当にぼく、ぶつつけ本番でね。 では広告研究会にすっとおって、で、就職も代理店しか受けな どんな筋だった ? 、他の業種にはまあ見向きもせん、みたいな感じで、で、一応 なれたわけです : : : たからラジオのとか、あるいは、テレビ堀あの : : : 阪神・阪急が優勝して、阪神沿線の阪神ファンと阪急 沿線の阪急ファンがちょうど、今津線でつながれた甲子園と西宮 のコマーシャルのコンテとか、あるいはね、オートスライドの台 本とか、新聞広告の原稿とか、やれ誌の提灯記事とか、いろ球場、両方で日本シリーズ : : : それでもう地区全体が大騒ぎにな るという無茶苦茶な : いろまあそういうものは書いておりましたからね。原稿用紙に字 を書くというのは別に、なんの抵抗もなかったし、もともと好き 最初のころはみんな、筒井さんと同じような方向に行くのかな