て、奥の小部屋に入りました。べッドがおいてあるところで す。中はわりに明るかった。壁から上はトタン屋根で、明りが 反射しているからです。ドクター フェイがべツ。 トの上でしす かに横たわっているのが見えました。まっすぐ仰向けに寝てい て、服はすこし乱れているが、両足はそろえてありました。自 分はそれを見てほっとしました。・フラウスは上にひつばり上げ られていて、腹に切り傷が一つありました。そこから血が流れ ていました。きっとさっきまでは、まるでロのようにパクパク 動いて、血がふき出していたんでしよう。もう、いまでは動い ていません。そのほかに、のども切りさかれていました。 自分は事務室へもどりました。・フラント町長はひどく疲れた ようすで坐っていました。もう血は洗いおとしてありました。 町長はいいました。「あれはきみのためにやったんだ。わかる かね ? 」 自分は、町長がまるで父親のような気がしました。それしか うまくいえません。町長は恐ろしい重荷にたえて、自分のため に骨を折ってくれたんだということに、気がついたんです。町 癶は、ドクター ・フェイがどれだけ危険であったかを説明して くれました。彼女はいわゆるセンプク ( 潜伏 ? ) 女性で、いち ばん危険な種類だということでした。町長は彼女の正体をあば いて、ここを清めたのです。町長の話は回りくどくなくて、す んなり頭へ入りました。町長が正しいことをしたのを、自分は 知っていましたから。 われわれはその本のこと、人間が自分を清めて、神に清らか な世界をお見せしなければならないことを、話しあいました。 町長は、女がいなければ人間はどうして子孫をふやすのだと疑 士気つでつ だ何神なわたの部をらっ問 がちしすたそケ説人転まクそま人にこれぶと分おのてを 無がて。ん ー得の席しにれすもしとわんきを救けいぶ 、かるいたをれ天、捨いがなっ 罪い調もでがドし兵にた にじ査しすすのよ士乗。ドらよるがあは使はてにれいけ しや団、がご警うのりそク調うのえれ永がじたはたのる く備とうこれタ査でたばこ遠新めとな動だ連 てなのこ くいたん調平にしちみか一団し。よれのしてきら物、中 れしのな査和残ま四まら・がたそい想生い神、な的とが る、みト団なるし人し彼フ帰。の。像命魂はそいないい はなをラが感こたがたら 霊話こすをを新れとやいる 。をイて感はこるさ運しがいりまが すにきゾどしとが でもいルうなを、帰し解がきにすにのずんい神う方し す悪たにしの許結ろか放処たあごははかで真のこにたそ 。いりなてでし局うし区置のつく主思るくの待とた。ん まあと、のをでた奥のいかる清つだよかな しるも うとなと車自しきしパ外う、気深天上もからて。つん連 はか知を分たらまリまけ自がく使がしもかお人てじ中 運も。めせケでて分してをりれしなら間いんは としつつ はてたて転い てん一送運はま、見でなれ道れがるなか ドつばドし自た 、いなをる女か点ん そいでいしっ 。のてれクた分もわ。いお合とぎはじ ド れなしたてし 。ののれしし示図いり、ん だいよらくよ ラーといてタ けかう、れに ム大こくい 心、がわか 、しなう、人な 自と残か尉ろたっ の、れしそにの動神間点 でら す、自分いりんがにめたフ。中すは、れなだ物はがが ででたそとる。的人昔わ 。弁分はうたの彼いにとリ にだんも。そな間かか 護はけんか ー 35
すてきである。私にレヴュ , ーさせればよかったんだよ。 くは退役している。二十の宇宙すべての中で、退役した なぜすてきかというと、とてもいかがわしいからであ英雄ほど役に立たないものを、きみは知っているかい る。なぜいかがわしいかというと。ーーま、ね、池波正太 ? 」 郎サンがっかこうへいサンのタッチで山手樹一郎のまね そしてオスカー ・ゴードンはやたらにジョン・カータ をした、とこう考えてごらんよ。 1 を意識し、ここは「火星」 C ハスルームでなくて何よ というよりむしろ柴田錬三郎が意識してわるふざけしりた。あ、ダジャレ ) でうんぬん、とジョン・カーター たら何ができると思う。知ってるかね、「徳川太平記」と自分をくらべてみる。三銃士、アーサー王。コナンは には「ドッグをくらわば皿までも」なんてわるいダジャ ほとんど出てこない。 一ヶ所だけだ。「戦争で死ねなか レ ( 高千穂先生のダジャレよりひどい。ま、の今ったお父さんのために」ですよ、三井継クン。オレあ何 岡編集長ていどのダジャレね ) が断りもなく出てくるだって書けるそ、という、しかも結局何書いたってオレ の。ところでつかこうへいさんってうまく年とったらシあオレだそ、という、この怪物のなんたる健全さ ! た くましさー ハレンそっくりになるだろうって感じしないかね。 そんなことはどうでもいい 「栄光の道」がヒロイツ これについてももうちょっとそのうち書いてみたい。 ク・ファンタジーかどうか、といわれたらこれはもう、 いろいろ考えているうちに、ヒロイック・ファンタジー ・ハーカ、というしかないが、それは、ハインラインってとその周辺についての本が一冊くらいあってもいいんじ 人には、根本的に、ヒロイック・ファンタジーを書けるやよ、 オしか、という気がしてきた。タイトルは「幻影たち ファクターなんかまったくないからだ。ノ。 彼まアジテータの王」というのにしよう。昔から、そのタイトルの本を 1 だもの。ヒッ。ヒーって・ ( カたけんね。アジられないと一冊書きたかったのた。 ・ ( イプルとは思わないよ。見かけとは逆にね。本当に狂「栄光の道 . をよみおわったら、ふいと「マスカレード った人って家を出られないのよね。。フロヴィデンス、オ ( 仮面舞踏会 ) 」のメロディーが口をついて出てきた。 1 。ハーン、クロスプレインズ。 な・せだかわからない。で、聞きたくなり、レオン・ラッ しかしそれならそのハインライン先生が、なぜそんなセルの「カーニー」を探してきて、「マスカレード」を 妙チキリンなものを書いたかーー・わからんこともない。 かけた。とても、よかった。 「き こんな一節をよむと特によくわかる気がする。 これから、「七人の魔道師」の大詰を書かねばならな みは・ほくが何者か知ってるだろう ? 職業は英雄、きみ いのた。 はそう云った。きみは・ほくを志願させた。いまでは、・ほ モンスター ー 5 3
連載⑩ス名ンオぬえの 夛ーシッフ。ラ 4 フラリイ めずらしく朝早くおきて ( 前日、徹夜だった によって密教美術の雰囲気があり、十二神将にちょっと説明しておこう。・ほくは何度も「虚 のです ) スメーシッノ・ライプラリイを書いて似ている。金属と布でできている普通のものと空王」のデザインを自分で高く評価してるよう るはずなのに、で「牧神の午後への前奏は変えたい。以上二つが条件である。十二神将に書いた。それには理由がある。そのひとっ 曲」などを聞いたりすると、頭の中の宇宙船もには、字宙服の部品とみて見えないことはない は、半村さんが「虚空王」の・ヒジ飄アルな面を どこかへ飛んで、たどりつくのは、つい最近読飾りがあちこちについており、ひょっとしたら全面的に、・ほくにまかせてくれたことである。 んだ「星を帯びし者」。 しいですなあファンタ先祖たちは、この宇宙服を目撃して : : : という・ほくは半村さんの与えてくれたヒント ( やり易 ジイは。なんかどうでもよい ( わけでもなのが半村さんの話。 い必要条件 ) にしたがい、自由にデザイソでき いか ) 。も読んでる時は最高だが、名曲を人間の形や動きが決まっている以上、宇宙服る。そして、できあがったデザインを半村さん 聞いたり、名画を見たりしたとき、ふ「と思 .. いなんてものはだいたい似たりよったりにならざは本文中で描写し、絵で足りないところを、お 出してすてきな気分になるなんてことがないのるをえない。目新しいものを考えるのはびと苦ぎなってくれる。するとぼくはまた、それを参 です。山岸凉子さんのイラストもよかった。妖労である。「 2001 年宇宙の旅」以後、成功考にして、もっと細かくデザインでぎるという 精王をまた読み返したりして。ファンタジイ文しているのは「エイリアン」くらいなものだろわけだ。しかも ( ここが他と違う ) 描写が気に 庫、何か仕事ありませんか ? ア ( ア ( 、やつう。もちろん、・ほくのデザインした「虚空王」しオ 、らよければ、それを無視してもよいのであ ばり時間がないか ( なんのこっちゃ ) 。 をのそいてのことだが、アハ る。絵と文とでは見せ方が異なり、互いにあく さて、第二章「虚空王の秘宝」小道具篇のはデザインは、互いにムジ = ンのない条件があまでヒソトなのだからだ。いままで、これほど じまりである。と、その前に、前回スペースのればあるほど簡単にできる。たとえその条件が至れり尽くせりでデザインさせてもらったこと 関係で描けなか「た巨大宇宙船の完成図①を。自分の感性に反するとしても、デザインする時はない。 なんと半村さんご病気のため本篇の方はただ間たけは短縮できる。逆に、条件が少なければ次回は、第二章その②、搭載艇の予定であ 今、休載中。いまこの宇宙船を見られるのは単自分の思い通りにできるが、今度は時間がかかる。 行本とマガジンだけである。マガジる。条件 ( またはヒント ) がたくさんあって、 ソ、えらいつ。 それが・ほくの好みにあったのが「虚空王の秘 というところで、まずは宇宙服から。例宝」の字宙服であった。 ( 図② ) 今回の担当者文・絵共 / 加藤直之
り上げてしまいました。なぜ取り上げる必要があるんでしよう ? 救ってくださったのは、知っています。ここへきて最初の町への旅 彼の最後の手記、最後の言葉、それを書いてから、彼の手がとりあで、新聞を買いました。アポストル諸島龕部 3 あ 3 小しからの避難 げたのは、とりあげたのは 者がどこで爆撃されたかを知りました。それから、三人の女が空軍 内容はおぼえています。「いとも突然にあ「さりと絆は切れ、わの飛行機を盗んで、ダラスを爆撃した = ースも。もちろん、彼女 れわれは墓のほかにも結末があるのを知った。人間を結ぶ絆が切れたちはメキシ「一湾上空で撃墜されたそうです。わたしたちがなにも て、・ほくたちはもうおしまいだ。愛しているーーー」 しないのを、ふしぎだと思いませんかただおとなしく、一人か わたしはだいじようぶです、 ーニイ、ほんとうに。あれを書い二人ずつ殺されていくたけ。 しいえ、もっと大・せいかもしれませ たのはだれでしたか、ロ・ ( ート・フロスト ? 絆は切れ : : : 。あん、避難者に鉾先が向けられたことだし : まるで催眠にかかっ あ、それからこう書いてありました。・ ( ニイに伝えてくれーーー・こ たウサギ。わたしたちは牙のない種族なんです。 の恐ろしい正しさ。 いったいなんの意味でしよう ? ご存じですか、これまでのわたしが、女性を意味するつもりで一 あなたにわかるはずがありませんよね、 ニイ。わたしょこ・こ ( ナナ度も″わたしたちといったことがないのを ? ″わたしたち″は 正気をたもっためにこれを書いているだけです。書いたら、あなたつねにわたしとアラン、それにもちろん = ミーを意味していまし の隠し穴へ入れておきます。ありがとう、ほんとにありがとう、 た。選択的に殺されることが集団意識を高める : 。ねえ、わたし ーニイ。あんなふうに頭が・ほんやりしていても、あなただってことがどれほど正気か、これでわかりますね。 はわかりました。あなたがわたしの髪を短く切り、顔に泥を塗りつ でも、まだわたしは心底から実感できません。 けているときも、わたしはこれが正しいんだと知っていました。あ ここへきて最初の旅は、塩と灯油の買出しでした。例の小さな なたがすることだからです、 ーニイ。わたしはあなたのことを、 〈赤鹿〉ストアへ行って、裏口でおじいさんから買いましたーーあ あなたがい 0 たあんな恐ろしい言葉で考えたことは一度もありませなたに教わ 0 たとおりに。ね、ちゃんとおぼえていたんです ! お ん。あなたはいつも大好きな・ハー ニイなんです。 じいさんはわたしを「坊や」と呼びましたが、たぶん疑っていると クスリの効き目が薄れたあと、わたしはあなたがいったことをぜ思います。わたしがあなたの山小屋にいることも知っているんです。 んぶやりました。ガソリン、食料品。そしていま、あなたの山小屋とにかく、そこへ何人かの男と少年たちが表から入ってきまし で暮らしています。あなたがこれを着ろといってくれた服を着てい た。みんなとてもノ 1 マルな感じで、笑ったり、冗談をいったりし ると、わたしは少年に見えるようです。ガソリンスタンドの係員てるんです。とても信じられませんでした、・ ( 1 ニイ。事実、彼ら が、「たんな」と呼びかけました。 のそばを通り抜けて外へ出ようかと思ったぐらいですが、そのと またわたしははっきり認識できてないようで、すぐにも帰りたい き、中のひとりがこういうのが聞こえたんです。「ハインツが天使 4 気持を抑えつけなくてはなりません。でも、あなたがわたしの命をを見たってよ」天使。わたしは足をとめ、聞き耳を立てました。彼
の下でたわみ続け、時には大きく沈んで、・ほくの胸を凍らせた。 く汚れ、大きく引き裂かれて肩と胸の一部がむき出しになってい 半ばまで進んたところで振り向くと : ほくに登るべき場所を指示る。負傷している様子はなさそうだったが、よほど痛めつけられた したマロカが、心配げに見守っているのが目に入った。しかしもはらしく、文字通り死んだようにぐったりと、土の上に横臥してい や戻るのもままならず : ほくは額から汗をしたたらせながら、不安た。 定な屋根をよじ登って行った。 たき火の照り返しが、かたく目を閉じた横顔を照らし出してい ふち ほくとしてはそう る。意識を失っているという可能性もあったが、・ ついに、縁にまで辿りつき、ぶきみにしなる樹皮を押えながら、 顔をのそかせた。 さしわたし三十メートルはたっぷりある広場ではない方に賭けるしかなかった。 ・ほくに気づきそうもないことを見す ・ほくは、ワイカ族の誰もが、 が、目に入った。屋根の下にかくれている部分を含めれば、″村″ の直径は、五十メートルはあるだろう。屋根の中間に空いた空所のますと、ジャケットのポケットから実包をひとっかみ取り出した。 直径が、三十メートルということである。 一発ずつ、小刻みに間を置いて、たき火の中へと投げ込んだ。 マロカのことば通り、空き地の中央に大きなたき火がしつらえら男たちはすっかり踊りに引き込まれており、たき火の炎が揺れて れている。その傍で、足を踏み鳴らし、呪文に似た歌声を上げながも、まるで目を向ける様子はなかった。 レポルバ ら、踊っている。繰り返しの多い、ひどく単調な踊りだ。 ・ほくは腰のホルスターからコルト拳銃を抜き出すと、歯を食いし ばって、待った。たき火熱が、実包の火薬を爆発させるまで、何秒 男たちの平均身長は、ざっと百六十センチほどで、頬や膝を黒く 塗ってはいるが、後は腰紐ひとつの裸だ。ーーー屋根の下には、おびかかるのか、正確には分からない。 ただしい数のハンモックが吊られており、 いくつかの炉が赤く燃え ・ほくは身じろぎし、跳び下りるにふさわしい体勢を試みた。 ている。やはり裸体に紐を巻きつけただけの女たちがその周りで立その瞬間、木が折れる音がして草ぶきの屋根は大きく揺らぎ、ぼく ちはたらいているのは、祭りのご馳走を作っているらしい。子どもは樹皮やヤシの葉のかたまりとともに、空き地へと降下した。 たちゃ犬が、その間を興奮した様子で、走り回っていた。 とっさに体をひねり、脚からの着地に成功したのは、やはりオー たまもの 踊りの輪からわすかに外れてうすくまっている奇妙な二人組が、 ル・アイルランド・チームでのラグビーで鍛えた運動神経の賜物で 目に付いた。一方が、長く細い棒を持ち、一方の男の鼻に、その棒あったにちがいない。 はず あし しかし、脚は降下の衝撃を受け止めかねて、・ほくの体は大きく弾 を通して何かを吹き込んでいるようである。エンリケ船長がいった んでころがった。同時に、たき火がすさまじい灰かぐらとともに、 ョポ ( 幻覚剤 ) を、喫う儀式なのだろう。 そして、ワイカ族の戦士たちからたき火を距てて、エスメラルダつるべ打ちの爆発音を発した。 ぎようぜん の姿が見えた。 ぼくは跳ね起きた。その場に凍りつき、凝然とこちらを見つめて 5 いるワイカ族たちの姿を、一瞬目に焼きつけると、エスメラルダに 白い・フラウスにズボン、編み上げ靴という姿だが、・フラウスは黒
こいつが、ペッドの中で、ささやく言葉か。だが、おれは、むか 金を払うなら、女を手に入れるのは、難かしくない。食事代だけ 払ってやるというのでも、まあ、何とかなるだろう。だが、自分のっときたのをおさえて、答えた。もちろん、至極、やさしく、だ。 食事代もない状態で、女を手に入れられたら、こいつは奇跡だ。も「東京さ。知ってるかい、日本の首都だよ」 ちろん、あんたが、ルドルフ・ヴァレンチノまっさおのハンサムだ「知ってるよ、あたしだって、大学に行ってるんだもの」 おれは、またロを押しつけた。左手は、ちゃんと、乳房を擱んで ったら話は別だ。いや、何も、おれがヴァレンチノを知ってるとい いる。右手 ? そいつは想像にまかせる。彼女は、ジュリーってい うほどの年ってわけじゃない。おれはまだ三十にもなってないんだ し、ヴァレンチノときたら、そのおれが生まれる半世紀以上も前うんだが、くすぐったそうに含み笑いをした。 「じゃあ、あなた東洋人なのね」 に、あの世にいっている。今、流行りの、キャシディとか、レーン とかいう名を挙げるより、ましじゃないかと思っただけだ。少なく こいつには、おれも、かちんときた。結局、おれがこんなところ とも、物を識っているように見える。 でくすぶっていなきゃならないのも、自分がアメリカ人じゃないか で、おれは、寄跡を現実のものにしつつあった。女を部屋の中にらだ。そのために、何度、手ひどい目にあったことか。 引きずり込んだだけじゃない。べッドの中にまで、見事に引きずり「東洋人で悪いか」 込んだのだ。とにかく、ここに至るまでのおれの奮闘ぶりは、我な ジュリーは、驚いたように、目を開けた。そして、かぶりを振っ がら、涙ぐましいばかりだった。ゴミ箱のようになっていた部屋の 床に、べッドまで通じる道をつけた。彼女を両腕に抱いたままだっ 「悪くなんか、ない。あなたが、どこの人でも、あたし、かまやし たから、足を使って、だ。 ないもの。それに、東洋人て、好きよ。肌がつるつるしてるもの」 シ 1 ツをきれいにし、といっても、それまで使っていたやつを裏おれの背中を、なでる。試合再開ってわけだ。そのときた、畜 返しにしたたけだが、彼女にウイスキ 1 を渡し、大急ぎで冷蔵庫に生、電話が鳴りやがった。減多に鳴らないのに、こういうときに限 飛んでいって、氷を出して、ペッドの近くに運び、ラジオを付け、 って、鳴りやがる。放っとけばいいさ、そう言って、おれは、早く 明りを暗くした。その間、一分と経っちゃいない。世界記録とは言片付けなきゃならない仕事に取りかかろうとした。だが、相手は、 わないが、歴代ベスト 5 ぐらいには、入ってるにちがいない。おかどうもそうじゃないらしい。電話の・ヘルが気になると言う。おれは げで、久しぶりにおれは、枕以外のものを抱きしめることができた枕を招み、電話器を狙って、放り投げた。 というわけだ。 けたたましい音をたてて、電話器は、床に落ち、受話器が外れ ひとしきり、唇を押しつけあったところで、とろんとした眼付きて、ベルが鳴り止んた。その受話器から、誰かが、呼んでいる声 が、くすくす笑って、おれの首筋のあ が、かすかにした。ジュリー で、彼女が言ったものだ。 たりに、顔を押しつけてきた。 「あなた、どこから来たの ? 」 202
: というか、だれも見たがらない何か。彼ジェフティについていえば、彼はおとなしい子供だった。おだや かのだれにも見えない : にいちばんふさわしい言葉は、憑かれているだろう。変り果てた彼かな恐怖と鈍い憎悪の中にどっぷり漬りながら、気づいているにし 5 ても、ひと言も漏らさなかった。そこらの子供と同じように遊び、 の人生 : : : そう、憑かれているがびったりだった。 リオーナ・キンザーが埋め合わせをしようとする努力は涙ぐましそれで幸福のようだった。だが五歳児なりの直観で、自分が両親と いはかりだった。・ほくが何時に家を訪ねても、必ず何か食べるものはどれほど異質な存在か気づいていたにちがいない。 を出そうとするのだ。ジェフティが家にいるときには、息子の食べ異質 ? いや、これは当っていない。むしろ、あまりにも人間的 おいしいオといったほうが近いだろう。たた周囲の世界と位相が、波長がすれ 物にかかりきりだった。「坊や、オレンジ食べたい ? ミカンもあるのよ。ミカていて、両親とは異なる波長に共鳴しているのだ。と、これは・ほく レンジよ。じゃ、ミカンはどうかしら ? ンの皮をないてあげるわね」だが彼女の中には明らかな恐怖、わがの想像だが。ジェフティにはまた子供の遊び友たちもなかった。肉 子への恐怖があり、おやつをすすめる言葉はどことなしか不気味な体的年齢で彼を追いこすにつれ、友人たちはみんな彼が子供つ。ほす ぎることに気づき、つぎには退屈に思い、やがて成長の仕組みがの 調子をおびるのだった。 リオーナ・キンザーはもともとは長身の女だったが、過ぎこしたみこめてきたところで、彼が時間の影響を何もこうむっていないと 歳月に腰は曲っていた。その目はいつも隠れがをさがすように、壁知って、おびえ敬遠するようになるのだ。ときには同い年ぐらいの 小さな子供が、うつかり近所に迷いこんできて彼と知りあうことも 紙や収納用の壁のくぼみのあたりをただよっており、チャンスさえ あればいっそういうところへとびこんで、チンツや・ ( ラ模様の保護ある。だが連中もまた、通りで車の・ ( ックファイアを聞いた大みた いに、たちまち尻尾を巻いて逃げたしてしまうのたった。 色をとりいれ、姿をくらますか知らない風情だった。息子が大きな 茶色の目でいくらさがそうと、日に何百回と彼女の隠れている前をそんなわけで、・ほくは彼のたったひとりの友だちだった。古いっ 通りすぎようと、彼女は息を殺し、永久に姿を現わさないのだ。リきあいの友人。古いっきあいといっても、それは五年なのか二十二 、。ぼくは彼が好きだった。これは言葉ではいいあらわせな オーナ・キンザーはいつもエ。フロン姿たった。手は洗濯や掃除のし年なのカ すぎで赤かった。しみ一つない生活環境を作ることで、変な生き物 、。はっきりした理由もわからない。だが、ためらいなく、好きだ を生んだという罪の意識を拭い去ろうとしているのか。 ったということができる。 キンザー夫妻はテレビ好きではなかった。家はたいてい静まりか ジェフティといっしょにいる時間が長いので、必然的にキンザー えっていて、パイプを流れる水のかすれたささやきも、木材がひず夫妻とーー上品な言い方をすればーーー時を過す機会もよくめぐって むきしみも、冷蔵庫のうなりさえも聞えなかった。まるで時間が家きた。夕食の時間、ときには土曜の午後、ジェフティを映画から連 を遠回りして過ぎ去ってゆくようで、こんなおそろしい静けさもなれて帰ったあとの一時間かそこら。二人はこれを感謝していた。卑 っこ 0 らんー 屈なほどに。とにかく、ぼくにまかせておけば、ジェフティを連れ
と思った。だってほら、来週はダンスがあるし、それにマーサ おばさんはホワイトホース ( カ 。 , 準の都ー ) に住んでて、あそこ はなんにも、なんにも、なんにも、なんにもないとこなの。だ からあたしはイヤッてさけび、ママもさけび、そしたらパパは どなった。行けえッ ! それから。 ( 。 ( は泣きだした。泣いたの だからあたしも、アレレ、こりや本気だなってわかっ た。だからパパのほうへいこうとしたら、ママがあたしをすご いカでひきもどすしゃない。それではしめて気がついたんだけ ど、ママこんな大きなナイフ持ってんだⅢそれからママはあ たしを背中にかくすみたいにして、自分も泣きだしたわ。おお アラン、おおアランって、まるで気がちがったみたいに。だか ら、あたしはいったの。。、。、、 あたしは絶対にパパを置いてい ったりしないわ。それがびったりの言葉だって気がしたわけ。 すごいスリルたったわ。。、。、 ; ′ / 力あたしのことをまるでおとなみ ・パトカーがやってくるのが聞こえたとき、わたしはエ、 たいに、すごく悲しそうな、神秘的な目つきで見つめるの。マ 日記からそのページをちぎりました。これまであの子の日記を一度 マがいつものようにあたしを赤ん ' ほ扱いしてるのと大ちがい。 ものそいたことはないけど、 いなくなったのを知ったとき、開いて でも、ママがわめきちらしたので、なにもかもプチコワシよ。 みたら : ・ ああ、なんていうことだろう。あの子は彼のところへ アラン、この子は頭がヘンなのよ、帰ってちょうだい。すると 行ったんです。わたしのかわいい娘、かわいそうな小さいおばかさ 。 ( もどなりながら門の外へ走りだしたわ。早く行け。あの車 ん。もしわたしがもっと時間をかけて説明してやっていたら、たぶ で。ぼくがもどってこないうちに、行っちゃってくれ。 んこんなことには そうそう、書くのを忘れてたけど、あたしがなにを着てたか ごめんなさい、 ーニイ。クスリの効き目が薄れてきたようで 「ていうと、ば「ちいグリーンの服で、おまけに頭にカーラーす、打たれた注射の効き目が。わたしはなにも感じませんでした。 をつけたままなの。ほんとにツィてないんだからもう。あんなつまり、だれかの娘が父親に会いに行ったら、父親は娘を殺した。 ビ、ーティフルな場面があとで起こることなんか、わかるわけそして娘ののどを切り裂いた。でも、それがなんの意味も持たなか ないじゃない。ああ、なんたる人生のザンコクな皮肉。なのに ったんです。 ママはスーツケースひつばりだして、わめくのよ。さっさと自 アランの遺書、それをあの人たちはわたしに渡してから、また取 分の物をつめなさい、早く だからママは行くつもりらしい けど、あたしはいやよ、絶対にいや。マーサおばさんの穀物サ 4 イロにこもりつきりでこの秋を過ごして、ダンスも、サマース クールの単位もぜんぶすつぼかすなんて、いやなこった。それ 冫 , パはあたしたちとコミニケ 1 トしようとしてたわ、ちが う ? あたしは思うな、。 ( パとママの関係はもう旧式なのよ。 だから、ママが二階へ上がったら、あたしは出ていくんだ。研 究所へいってパパに会うんた。 あ、そうだ、 =-;r-n0 ダイアンがあたしの黄色いジーンズをや ぶいちゃって、自分のビンクのを貸すからって約束したわ。 ( 、あんなムサイの着られるかって。
ふいにマロカは、足を止め、・ほくらを振り返って体をかがめ るよう合図した。ぼくは同時に、煙の匂いを嗅いだ。香のように異 様な、甘ったるい匂いが、生木をいぶす強い匂いに入り混ってい る。 7 マロカが手招きし、ぼくらは彼の傍に這い進んた。彼がひそむシ ゃぶ ダの薮ごしに、前方をのそいた。 白っぽい、奇妙なド 1 ム状のものが、五十メートルほど先に、見 それは、ワイカ族が踏み慣らした踏み分け道らしい。カシキアレ かさ 二カウト の支流に沿った、密林の間のその小径を、斥候役のマキリターレ族えた。巨大なキノコの笠とも見える。高さはたつぶり五メートルは あり、何カ所か、縦に亀裂が生じている。青い一条の煙が、その釜 のインディオ、マロカを先に立てて・ほくらは進んだ。 へり 正確には、マロカに続いてロクストン卿、この・ほく、エドワ】ドの縁ごしに立ちのぼっていた。 ・ダン・マローン、エンリケ船長、それに船長の部下の屈強なサン 「ワイカのシャプノだ」 ロクストン】卿がささやいた。 ポ ( 白人と黒人の混血の、さらにその混血 ) が一人、殿軍を守って 「木の枝の支柱の上に、ヤシの葉、樹皮を重ねて作った差しかけ小 マロカは、山刀で、前をさえぎる蔓草を叩き切りながら、豹そこ屋だ。あの中に、部族の全員が住んでいるのだ」 ロクストン卿は、マロカに何ごとか囁いた。マロカは頷き、マチ のけのしなやかな身ごなしで進んで行く。彼とロクストン卿は、ほ ュ 1 テを腰の・ハンドに差すと、体をさらに低くし、トカゲのような ほくはそうは行かなかった。彼らま とんど足音を立てなかったが、・ すばやさで、薮から藪へと伝いながら、シャゾノの割れ目に近づい どに密林での猟の年季を積んでいたわけではなかったからだ。 しかし、よしんばかまびすしい足音を立てていたとしても、ワイていった。 マロカは、そう。ほくた ロクストン卿が彼に何を命じたのか、説明されるまでもなかっ カ族に気づかれる心配はなかったろう。 た。偵察を命したにちがいない。 ちに伝えた。彼らは戦勝の祝いの準備に夢中になっている。しか めぐ マロカは、その割れ目の一つーーむろん、いくつかある出人り口 も、歩哨を立てるほど知恵の巡る種族ではないとのことだった。 や に近づくと、一分ほど中の様子をうかがっ ぼくらをこの支流にみちびいて来た太鼓の音は、すでに熄んでい の一つにちがいない る。熱帯の唐突な日没が近づいており、空気はじっとり湿って蒸していたが、ふたたびトカゲの敏捷さで戻って来た。早ロで、ロクス ふくめい 暑かった。・ほくらは、密林をくぐり抜ける強行軍のため、すでに汗トン卿に復命した。 あえ ロクストン卿は、・ほくたちを見回した。 みどろとなり、息を喘がせていた。だがマロカは消耗した様子も見 「ーーー中には、五十人近いワイカがいるそうだ。もっとも、その半 せず、ぼくらを導き続けていた。 セルヴァ 第三章幻の水路を目指して ( 承前 ) セルヴァ ドラム しんがり 十ノザ ゃぶ きっ こう ー 55
とでした。むりもないですね。大が人間なみの知能をも「てるなん者はごくりとグラスを乾すと、肩ごしにそれを投げた。グラスは正 て、予想するものがいるわけないでしよう ? 確に火のなかへ落ちた。 ぼくの知ってる範囲でも、・ほくだけです , ーーじっさい、ぼく一匹「いや、失礼」シ = パ ードはつづけた。「ともかく、かなり長いあ であることを切望したい気持だな。ほかに知能の高い犬がいても、 、だ、ぼくは見つからずに生きてきました。大型犬にとっては、サ しゃべる能力がないんだから、だれにもわかりやしない」ラルフは フォーク郡で自活するのは、そうむずかしいことじゃない、とくに 身ぶるいした。「ともかくぼくは、あいつのくだらないおしゃべり夏の人たちが行 0 てしまえばね。でも、気が変になりそうでした。 にうんざりして、初めてあの男やパヴ 0 フやスキナーについて自分話しかける相手がだれもいないんで。リオンのとこの食券をなく がどう思 0 ているか、き「ばりと言 0 てや 0 たときに、あの「リオしたくなか 0 たんで、何年も口をつぐんでいたんだけど、それで欝 ンの野望をうちくだいてしま「たんです。最初は、あたりまえだけ積しちゃ 0 て、ぼくはいまにも堤を破りそうな河みたいにな 0 てた ど、あの男はえらく感激してましたよ。でも、何時間か、ぼくがぼんです。でも、話しかけるたびに、相手はび 0 くりして逃げていき くたちの過去の生活の ( イライトを一つ一つ指摘してや 0 ているうました。小さな子供たちとはよく話しをしましたが、やがてそれも ちに、こわくな 0 たようでした。行動主義心理学者はもちろんのこあきらめましたーー親たちが嘘をつくなと責めたてるものだから、 と、実験動物のなかに意識のある襲撃犬がいると気が 0 けば、研究ある日ぼくは思わずその一人に噛みついてしま 0 たんです。かれは 者はだれでもこわくなるのがあたりまえですよ。そのうちあいつぼくを射ちましたよーー・銀の弾丸で。 も、ぼくが何十カ月も口をつぐんでいた理由に気がっきました。・ほ そこで、・ほくは昇華につとめることにしました。廃品置き場で、 くのことを博士論文なんかにしたら、大笑いされて大学から追い出使えそうなタイ。フライターを見つけて、紙とスタンプをか 0 ばら されるのが落ちですからね。それで、ぼくを捨てました。単純に、 し、作家になったんですーーーもちろん、スベキ、レーティ・フ・フィ 通り〈蹴り出して、大用のドアをふさいだんです。かれは 0 ぎのクシ ' を書きました。たいていは、ここの東にまだ残 0 ている農 日、町を離れ、それ以来うわさを聞いたこともありません」 村地帯に住んでいたので、トラウト ( 鱒 ) とか・ ( ードとか、ファ 「あれあれ」とエディ 、もっ A 」 , も、 「ひでえ話た。あんたは、つくり主に捨て「ーとかいう田園詩風なペン・ネームを使いました られたわけかい」 ときには古いファミリイ・ネームを使ったこともありますよ、ヴァ 「フランケンシ = タインのように」ドク・ウ = ・フスターがしった。 ン・ワウ・ワウというやつを」 「そのとおり」ラルフは賛成した。「あのブタを、マリオンを爪で 「あれまあ」ワイアットがささやいた。「それじゃ、あの人かつぎ ひ 0 かいてやりたい ( こ 0 びどくや 0 つけてやりたい、の意の常套の話は、ありやみんな = : : 」 句 ) 」 「やがて、・ほくにもいくらか読者がついて : : : でも、ファンの手紙 と、かれは自分の言 0 たことに気づき、大声で笑いだした。藪医に返事を書くのは、しゃべるのとはちがいますから。それに、小切 4