向かっ - みる会図書館


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1. SFマガジン 1979年10月臨時増刊号

接近していった。 た・ーーーと思った。 しかし、人質は長官である。ェアカーの操縦員はまだしも、長官 「社長か ? 私た」男は言った。貫禄のある太い声。長官に違いな い。「まずいそ。何者かが介入しとる。連邦政府かもしれん。脱走に万一のことがあれば手のつけられぬ事態に発展することも予想さ 者を横取りされた。そう、その、モクという名の年寄りだ。しつかれる。 りしてくれんと困るじゃないか : 。星系警察がこの件について捜緊急指揮所は、一キロ以内には接近するな、犯人を刺激するなと 狂ったようにわめきつづけた。 査するのは限界があるそ。 しろきすな ああ、あのバムとかいう娘は今日の午後、白沙で焼死そして、その長官専用ェアカ 1 が無灯火のまま超低空で市の北東 端にある中央宇宙港へ進入していったとき、はやその周辺は、星系 した」 機動警察隊や星系軍による非常線が二重三重に張られていた。 ビクリー 又八のとなりでモクの体がひきつった。 中央宇宙港に進入したエアカーは、大きく旋回をはじめ、それと 「航空軍の練習機を盗み出して逃亡し、いったん逮捕したが、。ハト 同時に無線で地上にいる指揮官を呼んできた。長官の声である。 ロール宇宙艇が墜落事故を起こしてーーそう、あとのーー」 ー・ー長官専用宇宙艇を離着床に移動の上、離昇準備を行え。完了 次第、全作業員は離着床外へ退避せよ。航空宇宙管制は、平時のコ 声を震わせてとっ・せん老人が立ち上った。 ンディションで運用せよ。一切の敵対行動は止めてくれ : ・ 止むなく又八も、レーザー銃の安全装置を外しながら立ち上っ ェアカーは大きく旋回をつづけた。 やがて準備完了を示す発光信号が地上から打ちあがった。 ェアカーは、地上に用意された専用宇宙艇へ向かって降下を開始 非常手配はまたたくうちに全市へとんだ。 あろうことか、あるまいことか、星系警察本部長官が官邸で人質した。 ″こちら長官。灯火をすべて消灯せよ。一切の攻撃行動は止めよ。 にされ、侵入犯人二名と共に専用ェアカーで中央宇宙港へ向かって 全員、離着床外へ移動せよ・ : しるというのである。 まぎれもない長官の声とて、止むなく指揮官はひしひしと周囲を こうとなったら、もはや星系警察の面子のないのと言ってはいら れない。長官の指示によって呼ばれた = アカーが官邸を離昇したのかためている突撃隊、狙撃隊をはじめ、全員を離着床の縁まで後退 ほしのはて とほとんど同時に、星系航空軍にも急報がとび、星涯市防空警戒管させた。 制網は、宇宙港へと向かうその = アカーをすぐに標定して追尾しはそしてパトロール艇を ( リケードの陰から、暗視鏡を使って様子 1 ゲ一、つか、刀ー じめた。 そしてその誘導によって、攻撃〈リや。 ( トロ】ル・〈リが次々と " 犯人が宇宙艇へ搭乗し、離昇するのを妨害する行動は一切とる

2. SFマガジン 1979年10月臨時増刊号

考えられるそうよ」 きな半透明黒板にこの付近一帯の地図が描かれている。まん中、た ぶんラス 「それは有難いな。それでぼくらの乗りこむ転移機は ? 」 ・・ハガスの中心部に赤い豆ランプがついている。将校がほ 7 2 「ドアの外に待機しています」 かに十人ほどおり、参謀肩章をつけた連中もいる。機動歩兵師団の 「どこへまず行くべきか、きみの意見をいってくれ : : : マリリン」前線司令部らしい いままで何をしていたのか、全裸に近い格好で飛びこんできたマ 「われわれの位置はここ、 バガスの南東三十マイル、・フルダー・シ リリンは答えた。 ティ。師団は・ハガスを包囲して展開しており、事態のいかなる発展 「はい に対しても、あなたがた三個特殊部隊を支援できる態勢にありま ・ : ラス・・ハガス地区機動歩兵司令部 : : : いま、直径十五マ す。この号線で・ハガスにむかい、イースト・ラス・・ハガス、これ イル、円周約四十八マイルで機動歩兵団が包囲しています」 ですが、これを経て十マイルほど進むと、フレモント街と・ハガス通 「では、そこへ」 ・ほくはナイフのホルスターを腰に巻いた。いろいろな武器の使用りの交差する中心部に出ます。その近くにある″黄金の馬″という カジノ、もしくはその隣りにつづいて建っているホテルに、 X とそ 法を学んだが、どうもこの古典的な武器がないと淋しいのだ。 の一味は現在集結していると思われます」 トラックがドアの前にその後部をつけていた。両側に機動歩兵が ぼくはすぐに命令した。 銃をかまえている。それが転移機らしい その車内に飛びこむなり、ス。ヒーカーがさけんだ。 「いづみとマリリンは、軽飛行機で・ハガスへ行き、タクシーで直 「宇宙海軍、空軍、位相網部隊、機動歩兵全師団は即時出動可能の接、″黄金の馬〃へ行け。攻撃はするなよ。カジノで遊びながら情 態勢にある。こちらアキャマ」 況偵察だ。少尉、飛行機は用意できていますな ? 」 ドアがしまり、道代はいった。 「もちろんです、セスナが待機しています」 「では出発 ! 」 「・ハガス市内には、機動歩兵に限らず、連邦軍人はひとりもいませ ん。いればそれは >< 組織の連中が扮装したもの。われわれが市内に ふたりはちょっと片手をあげ、その少尉に案内されて出ていっ 入るころは、警官も退避しています」 「着きました」 すぐに別の少尉が・ほくのそばに立った。 かおるの言葉で、後部のドアが開いた。なんのショックもなく、 「われわれ三人は日本人観光客ということにして、レンタカーでの 時間の経過を感じることもなく、ぼくの乗った転移機は千キロを飛んびり出かけることにしよう。あと一時間で、″黄金の馬″へ着く んだらしい : いまは午前十一時。ちょうど昼だな。行こうか」 どこかのビルの中に作られた転移機離着場らしい。機動歩兵が警・ほくがドアへむかうと少尉がさっと走って先にドアをあけた。そ 戒している。出迎えた少尉はわれわれを情況説明室に案内した。大こにでつかいキャデイラックがとまっていた。

3. SFマガジン 1979年10月臨時増刊号

くは告げた。 8 まだまだまだまだ 4 冊目 「艦橋へ ! 特別攻撃隊、発進用意よろしい ! 」 でも、その終章 「十七秒前よ、軍曹将軍 ! 」 これでとうとう終り 評判の美人、オキタ艦長の朗かなコントラルトの声が聞こえた。 色即是空 チョマリリン、イヅミ、ジュデ 「がんばってね、みなさん かくして、読み手は、本の中で死んでゆく 「ありがとう、艦長 ! 」 戦艦ヤマトの十六万プロトン馬力の機関がうなり、海王星の近く と、四人はいっせいにさけびかえした。 にあるワープ地点にむかってわれわれを運んだ。ャ ( ギ以下九隻「用意しろ ! あと五秒だ ! 」 の小艦艇が、まわりを守っている。 おれは体しゅうべルトでくくられていたーー腹も額も両足 点近くで、とっぜん不思議な敵が出現した。中国人の夢にある も。だがおれは、それまでよりひどく、震えはじめた。 のと同じ巨大な竜が十数匹出現し、襲いかかってきたのだ。それが 発射されたあとのほうが、まだましだ。それまでは、加速の の指揮する海賊宇宙船部隊であることは、ます間違いなかった。 ためまるでミイラみたいにぐるぐる巻きにされ、ろくに呼吸も 妄想波攻撃だ。その発生源と思われる点にむかって、ヤマトの四十 できないまま、まっくら闇に坐ったきりだ。 六センチ・プロトン砲が火をふいた。竜の姿は一瞬にして消えた。 やがて、ヤマトが加速するショックが体にったわってきて、・ほく 〈ワー。フ地点に接近する船舶は、ことごとく撃減する。ワ 1 プ地点の震えはとまった。光速に近いところまで加速し、駆潜艇をワー に近づくな ! 〉 。フ点に発射するのだ。 との警告が放送され、なおかっワープして逃げようと試みた四隻 8 か、ひょっとしたら川ぐらいか、女のパイロットが操 の海賊船がプロトン砲の餌食になって文字どおり蒸発した。残りの 縦するとなると、宇宙船というものは、まったく乗り心地が悪 ししハイロットになるってこと 海賊船は停止した。 くなる。男より女のほうが腕の、 ぐらいは、おれも知っている。女のほうが反射動作が早く、加 ・ほくと四人の女性は、ヤマトの驤潜艇射出口ックに入った。 速重力に耐える力も強い。しかし、だからといって、もとの体 「帽ふれ ! 」 重の十倍もの重さで背骨をおしつけられるのは愉快なことでは の号令で、見送りの全士官、兵が帽子をふる中を、ぼくらは小さ な宇宙駆潜艇に乗りこんだ。その胴体には″ 186 ″と、ぼくの家 ドスンー の郵便番号と同じ数字が描かれていた。 そしてとっぜんの無。 ・ほくは中央座席に坐り、前後左右の席に四人の部下が坐った。ぼ 8 3

4. SFマガジン 1979年10月臨時増刊号

揃っている基地では異彩を放っていた。 しかしさすがにプロはプロというわけか、こんなおもちゃみたい となれば、暗くなるまでひと寝入りするかーーーとまで考えたとこなポケット通信機に、ちゃんとコンの声が伝わってきたのである。 ろに、とっぜんべッドサイドのコム ・パックの呼び出しチャイムが 向うは、格納庫のてつべんに据えてあるパラボラアンテナ四基を 。ヒンコロン ! と澄んだ音を立てたのである。 並列につないで、指向性を目一杯絞り込み、もろに一メガキロワッ トもプチ込んでる筈だからかなり明瞭に人ってくるが、よくも、こ しろきすな メカ・イ んなささやかなこっちの波があそこまで届くもんだ。むこうはさそ " 白沙 0 長距離通話すと、星系通信公社 0 合成声が告げ。 苦労してることだろう : ″タイムラグ往復秒です ・ : などと、双方向波六十秒のタイムラグの やがて、コンの声が伝わってきた。 間にそんなことを考えながら、とにかく受けた指令というのは、今 連絡することがあるので、そっちからポッケで呼べーーーという。すぐ、市内のペ 。ハミント居住区劃区層 230 番に急行し、バム しろきすな からの迎えだと言って、そこにひそんでいるモクという老人をひそ そりや、ここからも白沙は大きな皿みたいに浮かんじゃいるが、 それたけ。 このポケット通信機じや無理たぜーーーと又八がつつばると、六十秒かに連れ出し、船に便乗させて基地へ連れてこい 後、 一体なんのことやらさつばり訳がわからねエ・ しいから、スペアのエネ・セルを四つばかり直列につないでプ チ込みや大丈夫た。こっちや目一杯感度あげて待ってる。たのむぜ しかし、わざわざこんなやりかたで指示してくるくらいだからよ で通話は切れた。 ッぽどの事だろう。どっちにしたって、ロケ松やお頭目の指示に逆 う訳にやいかね工。俺らにとってあの二人は神様みてエなもンだか なにかよほど秘密を要する連絡らしい 又八は言われた通り、エネ・セルを四つほどまとめてそのポケッら : きちん ト型通信機に背負わせると、そいつを持って外へ出た。 又八は自泊舎へ戻り、万一のためにラインメタルの〇・〇一熱線 。ヒストルを内懐におさめ、通信機をポケットに入れると外に出た。 そしてすぐ隣にある公園の展望台にあがってやってみたが駄目。 そこでよく考えてみれば、あたりはレーザー・放射線防護ガラスに彼が滞在している自泊舎は巨大なビラミッド状になった積層街区 の四〇層程にあって、ドアを出ると、海を見下ろす鼻の先の崖みた ばっちり包まれてるわけで電波の減衰も激しいわけである。 いな縁を自走軌道車が通っている。 そこで又八は年甲斐もなくジェットホイルにのつかり悪餓鬼共に もまれるみたいにてッペんへ上って、抜けるような青い空の地平近又八は呼びよせた箱に乗り込むと、すぐに行先をイン。フットし しろきすな く、白々と大きく皿みたいに浮かでいる白沙へ送信素子をびたり向た。走り出した o>r-n はすぐにトンネルみたいな積層街区の間を出 けてやってみた。定格の四倍もエネルギーをブチ込まれた通信機たり入ったりしながら市の東北部へ向かって走り出した。 は、向うの波が帰ってくるまでの往復六十秒間はスイッチを切らな 又八は、もともとこの惑星の生まれだがずっと田舎の出だし、ロ はしのはて きゃならない程あっくなった。 ケ松やビーターと共に星涯市に来たことが前に何度もあるとはい 0 6

5. SFマガジン 1979年10月臨時増刊号

たのだ。 「玉遣いが五人とも墜落した ! 」 彼は思わず眼を掩った。もうおしまいだ。 ・」とっさに又八が通信機に向かって呷んだ。「すぐ降り 8 ロープを掛け終ったのか、再び無気味な地響きが起こった。 てこいー 緊急だ ! テントの上に玉遣いの娘が五人ともおっこち おそるおそる眼をあけてみると、五頭の〈バカヂカラ大トカゲ〉 た ! 収容しろ ! 」 のひつばるロープによって、巨大なテントはもうゆさゆさと揺れは ″わかったー ノイズの奥でジミーの声が答えたと思う間もなく、 じめており、トカゲ遣いが必死で鞭をふるっている。 星空の方から耳なれた F410 の爆音が伝わってきた。 だがさすがの馬鹿力も、さしわたし三キロという大テントを支え 「よし ! そのまま入ってこい ! 」又八が叫んだ。 る支柱ともなればそうあっさりとはいかなカった 進入してきた F410 はテントの真上に入るとそのまま静止し、 男は祈る思いで見守るしかない。 やがて垂直降下に入った。 しかしその祈りもむなしく、ついにその支柱の一本は、五頭の大「ゆっくり降ろせ、ゆっくり」 トカゲの怪力に耐えきれず、ゆっくりとへし曲るように倒れた。 ″又八ッつアン ! あかり点けていいですか ? ″ジミーの声であ それと同時に、張力の釣り合いで支えられていたテント全体は・ハる ランスを失い、いともあっけなくべシャンこになった。 「いいそ、ミサイル・ランチャーに配置されていた奴はもう狼に食 その直後である。 われて骨ばかりだろうて」和尚が叫んだ。 彼は、自分の頭がおかしくなったのかと思うような現象を眼にし 又八が OX を出すと、 F410 の底部にばッと照明灯が点灯し たのである。 た。真下には広大な平地のような灰色のテント。その上に娘が五 信じられぬことに、ひと抱えほどもある白い玉にのつかった娘が人、上を見上げている。 五人、なにか筒状のものを手にして、すーツと宙をとんで接近して「肝心のときにしくじりおって」憮然として ( インケルが言った。 きたのだ。そして、そのまま、一気につぶれたテントの真上に進入「五人が五人ともとはなんたる事だ。尻に鞭を当ててくれるそ」 したとたん、一体どういうことなのか、その五人が五人とも、のつ 「いやいや、これはひとつの手掛りかもしれん」和尚が言った。 かってる白い玉もろとも真逆様、テントの上にころげ落ちたのであ「あの娘たちのせいではない。あそこには重力場そのものがないの る : かもしれん」 「なんだって」ハインケルは思わすスコー。フのアイビースから眼 「いかん ! 反重力玉が故障だ ! 」 をはなして和尚を見上げた。 タンポポ峠の上から暗視スコープをのそいていたハインケルが叫「よし、ジミー、 そのまま ! ー又八はそんなやりとりにも気づかず んだ。 に指示をつづけている。「そのまま ! 綱梯子おろせ ! 」 ホパリング

6. SFマガジン 1979年10月臨時増刊号

つかない。手荷物は何も持っていないようだが、・ へつに言う事も思した。 いっかす、駅長は老人に向かってお座なりに言った。 「訓練風景はもちろん村の皆さんに見ていただきますよ」 「お発ちで ? 」 「それはたのしみですな」 「いえいえ、相棒が着きますもんでな、ホッホウ ! 迎えにやって駅長は本当にたのしみだなーーと心の中でつぶやいた。 きました」 やがて上り列車が進入してきた。 「今度の下りですな」 銀色に塗装された円筒形に近い二十両編成の客車は自動的に扉を 「左様、左様、ホッホウ ! しかし、この空の青さ ! 星涯という開いたが、降りたのはほんの五、六人。 のは結構な惑星ですなあ」 小さなスーツケースをさげた又八の姿はすぐにわかった。 「御商売で 「ハインツ ! 」和尚はとんでもない声をあげた。「待っとったそ、 「ええ、まあ、商売と申しますかな」老人は陽気に言った。「曲馬ホッホウ ! 」 団をやっとりましてな」 ハインツと呼ばれて又八はちょっととまどったようだったが、す 「曲馬団 ? 」駅長はけげんな顔をした。 ぐにギンギラな和尚の姿に気がっき、ニャリと笑いながら大股で近 づいてきた。 「左様、わたしはハインケル東銀河曲馬団の支配人でして : : : ホッ ホウ ! 」 和尚はオー ーに又八と握手をかわし、駅長に向かって銀色のシ 「はア・ ルクハットをちょいとさしあげ、につこり挨拶してから改札ロの方 「まア、まア、おたのしみ、そのうちにいし 、ものを見せて進ぜますへ歩きだした。 よ」老人はオー ーに片目をつむって見せた。「その節は、特別に 「ひといき入れる間もなしに、御苦労だのう」 御招待いたしましよう」 「まったくだぜ」又八はくすぐったそうな顔をした。 「こんな小さな村でやるんですか ? 」駅長は狐につままれたような つい先日、完全な痴呆状態となってしまった謎の老人モク共々、 ほしのはて 顔をした。 星涯市の第二宇宙港から鮮やかな脱出をやってのけた又八は、打ち ランデヴー 「興行を打っーーと申しますと、いささか誤解が生しますが、この合せ通りに小惑星〈弘安〉で迎えにきたジミーと会合し、乗ってき 鳥の木村の静かな環境をお借りして、団員の訓練をやらせていただた買いとったばかりのポロ宇宙船はそこに乗り捨てて、ジミーの連 しろきすな こうかと考えましてね。 絡宇宙艇に乗り替えて無事に惑星・白沙の基地へ帰投したのだっ 村長さんも大いにのって下さいましてね」 「なるほど」 もちろんその前から、星涯市の〈星海企業〉出張所は、甚七の指 駅長は、これでこのへんな老人の正体がわかったーーという顔を図によって買取り契約が終ったばかりの貨物宇宙船を何者かに乗り ほしのはて ほしのはて 0 9

7. SFマガジン 1979年10月臨時増刊号

ない。あそこへモクと呼ばれるその老人が間もなく連行されてく いう凄まじい音がとび出して、警官は思わず耳を掩った。 「通信妨害だ ! 」又八はわざと叫んだ。 特捜 ! 「一分程前から入っています ! 」 たった今、店のおやじをおどかした二字が頭の中にひらめいた。 「地下組織のやつらだ」 次の瞬間、又八はイヤホンを外し、通信機のスイッチを切り換え 「地下組織ですか : ていた。 その妨害波が相手のポケットの中から出ているとも知らず、二人 という凄まじい音が、テープルの上に放り出したイヤの警官は顔を見合わせた。 ホンを通して伝わ 0 てくる。彼はあわててプラグを抜いた。妨害波「だから俺達はもう二日もここに張り込んどるんた」 である。司令部とパトロールの間で使っている波長帯全域にかかる 言いながらも又八は気が気ではなかった。いつ見破られるか、わ 筈た。 かったものではない。当然ながら星系警察の司令通信系は、こんな 又八はあわててその通信機をポケットにおさめると店をとび出妨害がかか 0 た時のためにいくつかの波を用意している。このパ し、さっきの自動昇降路にのって先程の道へおりた。そしてそのま ロール艇の通信系は、なにしろ鼻の先で強力な妨害波を食わされて まっかっかとパトロール艇の方へ向かって歩いていった。 いるから全帯域が使えないだろうが、すこし離れた所ならべつの波 容疑者逮捕の連絡にす 0 かりしゃンとな 0 ている警官は、いそぎも使える筈だ。万一、気の利いた奴が街頭の公衆テレ・ポイかヴ心 足でやってくる又八に向かってレーザー銃を向けた。 ズを使って本部に身許照会をやられたら : ・ 。レーザー変調波の通 「止れ ! 」 信系も運用されている筈だし 「特捜た ! 」又八は相手を無視しておっかぶせた。「逮捕したな それでも又八は、そんな余裕を相手に与えまいとして高飛車にか ました。 ・ : あの : : : 」警官はそれでも言った。「身分証明書を提「何大隊だ、貴様らは ? 」 示願います」 「はツ、第 2 大隊であります」 「本庁に問い合せろ ! = ードは = メラルドだ」又八はでたらめ「隊長はミラノフか ? 」又八はでたらめを言 0 た。 を言った。 しいいえ、チトフ隊長であります」 「では認識票を」 「あ、そうか」又八は、わざとあわてて見せた。 「そんなものあるか。見ろ ! 変装しとるのがわからんのか ? は 「ところで、おい、貴様」と又八は一人をつかまえて言った。「貴 やく、本庁と連絡とれ ! 」 様、さっき立哨中になにか、食ッとったな、あアン ? 」 つられて警官が無線機のスイッチを入れたとたん、ガーツー と「はツ ! 」若いその警官はどぎまぎして又八の顔を見つめた。 モトウェイ 6 6

8. SFマガジン 1979年10月臨時増刊号

のまま左手で前進レ・ハーを進めた。 け」 ぐーン・ 「ベルトをちゃんと締めないからだ」 土埃を立てながら地表艇は動き出した。 足を伸ばしてべたンと道へすわり込んだバムに向かってビーター 右舷側にオフセットしてある操縦席の、少女の小さな背中がひどが言った。 く大人びて見えた。 彼は、片側が崖によりかかった形になっている艇体のところへ戻 それでも、なみの大人なら腰から上が艇体からっき出るⅣ型地表「た。そして下から手をつッ込み、ツールポックスからウインチを 艇だが、その娘たと背中が半分ほど見えるだけである。 とり出すと、手際よくそいつを手頃な樹に固定して、ワイアを艇体 。ヒーターは、遠去かっていく艇をじっと見送った。 にひっかけた。 ところが、川上へ向かって小さくなっていったその地表艇は、も余程あっかい馴れているのか、それともこつがあるのか、ひっく のの二百メートルとは行かぬうちに、とっぜん = ンジンがおかしなり返 0 た艇体が今度はあ 0 けないほど簡単にもとへ戻った。 音を立てはじめ、たちまち大きく尻を振って山側の崖にはなをこす バムはすわり込んだままそれを見守った。 ボ・ハ・ヴィ りつけたかとおもうと、まるでスリッパでもひっくりかえすみたい 「一ン日に二回も地表艇ひっくり返しやこりや、 しいかげんこたえも にくるり ! と横転してしまったのである。 するぜ」 ビ】ターははじかれたようにつッ走った。そして、もろにひっく 損傷を調べながら、ピーターは道にすわり込んだままのバムに向 かって言った。 りかえっている艇体に駈け寄ると下をのそき込んだ。 雨天用天蓋の支持枠がアンチ・ロール・・、 / ーの役を果たして、 ムは、べしゃんこにはならずに済み、補助席側の床の隅へむりやり「それにーーおッ ! 」なにか言いかけて、ビーターはあわてて計器 詰め込まれたみたいな格好になっていた。 盤の下へ手を伸ばした。キナ臭い煙がうッすらと昇りはじめてい しつかりしろ ! , 言いながら。ヒーターは、すんなり伸びる。かれはあわてて回路遮断器を切った。 ジャ / クション た脚をつかんでバムの体を外へひきずり出した。 煙は、電源回路の接続箱から洩れている。 : ・」少女の眼から涙がポロポロこ・ほれ落ちた。 「ほれ、見ねェ」 「ちょいと腕をあげてみな」 ピーターがケープル・コネクターの間からとりあげたのは指輪で ビーターは、骨折したんではあるまいかと彼女の手を片方ずっさある。 しあげてみた。なんともない。 「あの野郎が、艇をもとへ戻しながら、こっそり指輪で回路をショ 「足は ? 」 ートさせてたんだ」 「大丈夫 : : : 」。 ( ムがかぼそい声を出した。「すねをぶつつけただ「・ : キヤノ・ヒー ホ・ハ・ヴィ ング・パンケー 6 2

9. SFマガジン 1979年10月臨時増刊号

「なに、恐れることはない」 てたかに見えた。 イエライシャは一一 = ロって、 「王さま、王さまーー王さまってば ! 」 「ただ、この対・ハリャーの魔術がきやつの介入を拒んでいるうちに すでに半泣きの声で叫びながらまろび寄り、一瞬、宙にうかんで カまずー ! ・それ ! 」 いる赤い球へ気味のわるそうな目をやったあと、たちまちに豹頭王行なわねばならぬので、少々厄介だ。 : 、 の胸にすがりつき、その豹の頭をやわらかな手でなでさすろうとし彼は指をばちりと鳴らした。 それと同時だったーー鎧を透して、その上にうかんでいた赤い光 「王さまッ ! 」 の球が、静かに王の体内へ沈んでゆきはじめたのである。 「こ、これは。ーー」 反対側から、おっかなびつくりのアルスもかけよる。 アルスが目を見はって手をの・はそうとする。 「イエライシャ、どうしたの ! 魔法がとけたというのに、王さま は、目をあかないじゃないの ! 」 「さわってはならん。よいか、これでとりあえす魂は戻した。お前 たちの、王を思う気持でもって、ノルンの闇へさまよい出た王を呼 ヴァルーサはとがめるように叫び、呼びさますためにゆさふろう び返し、その肉体にもとどおりしばりつけ、馴染ませるのだ。その とその、細いが強い手をのばす。 ためにはますーーさよう、とにかく王の名を呼びながら手足をマッ 「待て ! 」 サージしてやるがいい」 鋭くイエライシャが制止した。彼女はハッと手をひっこめる。 こうで ? 」 「わしのといたのはきやつの・ ( リャーであり、しかしそれもそう長「こ アルスはおっかなびつくりで王のからたに手をのばした。 くは保たん。ましてその・ハリャーをとくためにわしら自身の・ハリヤ 死人みたいだ ! 」 ーもいったんとかねばならなかったのだからな。それにさすがにや「ウワッ、冷たい つの精神エネルギーは、実に途方もなく巨大なもので、いまもなお「当然た。王はここしばらく、お前たちのこと。はのような意味では 生きておらなんたのだ」 わしに激しく立ちむかってくるのでことは一刻を争う。 「こうでーーーこれでよろしいんで ? 」 これからが、お前たちに頼みたいのだ、ヴァルーサ、アルス おそるおそる、アルスは王のたくましく発達した脚をさすりはじ 国王はいったん魂をぬきとられている。わしの術をつかえば戻 すのはいとやすいことなのたが、急激なそれは王じしんを傷つけるめる。が、ふと気づいて、 「ヴァル 1 ーサ」 おそれがある。そこで、お前たちのエネルギーをかりたい か、急ぐそ」 不平そうな声をあげた。 「ど 「何してるんたよう どうするんで ? 」 「何か : : : 」 アルスがふるえ声を出した。 王さまを早く助けなくちゃ 448

10. SFマガジン 1979年10月臨時増刊号

「殺したねーーこのタミヤを殺したね。 て、われらがあがめるすべての神々とはその系統を異にするものー テゴスは決ーーしてその : : : しもべ ーすなわち異類の神だ。なぜャンダル・ゾッグほどの魔道師が、正覚えている力しし 面き 0 ての対決であればいざ知らず、その結界の中に異類を入りこを見すてない。 ク・スⅡルーの古きーーーもの おまえはドールだけしゃなく、 ませるものか」 たちにも追われ : : : 」 「そんなーー・そ、そんな ! たが云いおえることはできなかった。その黒い顔にみるみる天色 タミャはわめいた。その蛇の頭髪はすべてさかだち、その顔は絶 の死の翳がひろがり、光の筋をうちこまれた体の中心から四肢〈む 望のあまりひきゅがんでいた。 けてけいれんと共に灰色の炭化作用がはじまり 「ランⅡテゴスがあたしを見すてるなんて ! ラン日テゴス , そしてみるみるうちに、ラン日テゴスの魔女は、固いやけこげた 「むただというのがわからんか。蛙神がお前を見すてるのではな お前が、その神の手のとどかぬ次元〈人りこんでしま 0 たの棒と化し、さらにはその端の方から・ほろ・ほろとくずれ去「てゆきー ーっいには一塵の風が、かってランダ 1 ギアのタミヤであったもの の名残りをあとかたもなく吹きちらしてしまった。 イエライシャの手の杖がたかたかと上がる。 ドールに追われる男》はそれを憐れみとも嫌悪ともっかぬ無表情 「恨むならば自らのカで魔道をきわめたのでなく、何ものかの力を《 でじっと見守っていた。そのくちびるから低いつぶやきがもれる。 かりて勢いを誇っていた自らの不明を恨むがいい」 イ = ライシは杖を投げ 0 けた。杖は光の矢とな 0 てま 0 しぐら「ク・ス。ルーの古き者たちかーー追うならば追「たがいい。どの みちわしを追っている百八の悪魔がもう少し増えたところで、わし にタミャにむかってとんだ。タミャは逃げようととびあがったが、 あたかも魅人られたようにそのからだは持主のおもわくとは逆に杖の死ぬのは一回限りなのだからな」 それから、彼はふいに我に返ったようにあたりを見まわした。 の正面へむかって突進しーー、そしてそれはまともに魔女の二つの乳 いよいよ時は近づき、ということはわ 「こうしてはおられぬ。 房のあいたをつきとおして背中へつきぬけたー しとヤンダル・ゾッグとの、さいごの死闘のときもまた近づいてき 「ギャア ] タミャの絶叫があたりをゆるがした。魔女は黒い両手で自らを 0 た。当のあいての結界のさなかで戦わざるを得ぬというのもむろん きさしたその灼熱の矢をつかみ、空中にほんのわずかのあいだふら不利なら、あいてがヤンダル・ゾ〉グとあ「てはわしとてもタミャ や、他の木っ端どもをあしらうようなわけにはいかん。 ふらと止まっていた。その顔に、信しられぬ表情と、そしてみにく ( ッ ! 或いは、皮肉なことたがわしを追うドールやク・ス い恐怖がしみのようにひろがってゆく。 ”ルーのものたちすべてから逃げのびたわしの最期はヤンダル・ゾ イエライシャ : ッグとの戦い、ということになるやもしれんわ ! 」 そのくちびるがうごいた。