三人 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1979年6月号
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1. SFマガジン 1979年6月号

見開きのイラストばかりをあつめてみた。大部分がタイトル・ペ ージである。これが先月とおなじ作家なのだ : ・ . ーをふ .. and comfort t0 enemy : 山、 4 にイねみ種邑 w んに 0 卩気可” : S 一人、一上 Y 、 CH 、Ⅱ 01 . ツ第んィ、人ス応こ第こ :

2. SFマガジン 1979年6月号

・ンヤリ、シャリ、ンヤリ、シャリ : ・ : け出して、窓ぎわまで行き、ガラスごしに外る。 かすかな、乾いた音を耳にして、目を醒まを眺める。深夜の街は寝静まっている。目醒昔、これを私にくれる時、サヨコはこんな ふうに言った。 した。 めているのは、私ひとりだ。 昨日、私は恋人のサヨコに堕胎手術を受け「このコケシはね、 x x 島の土民の、安産の 午前三時。ア・ハートの部屋である。 御守りなのよ。何でも、とても不思議な力を 何の音だったのだろう ? 闇の中で耳をすさせた。もちろん、私の子供である。 もっているらしいのよ : : : 」 ましたが、もう、妙な音は聞こえない。おお子供を産みたい、と彼女は言った。だが、 なるほど、人形は妊娠した女性の形をして かた夢でも見ていたのだろう。全身にびっし私は反対した。私ははじめから遊びのつもり いる。もちろん、その時サヨコは妊娠してい よりと汁をかいている。 だった。彼女と結婚するつもりはない。それ に、自分の子供が生まれてくるなんて、考えたわけではない。しかし私は、そんなものを 蒲団の中から手をのばして、枕元のスタン おみやげに持って来る女の気持に、何だかい ドをつける。六畳の部屋の中を見回す。何もただけでもゾッとする。 変わったことはない。 さんざんもめたあげく、私はサヨコを、無ゃなものを感じた。 テー・フルの上の木彫の人形が目についた。 理やり、知り合いの医者のところへ連れて行 「不思議なカって、お産が軽くすむってこと 人形に、見つめられているような気がした。 った。そこで、彼女は子供を堕ろした。 私はホッとした。そろそろ、あの女とも別 その人形は、昔、恋人のサヨコにもらった 「ええそうよ。でも、そればっかりじゃない れた方が良いな、と思った。 ものだ。海外旅行のおみやげだった。 らしいわ。よくわからないけど、場合によっ . シャリ、シャリ、シャリ、シャリ : ては、神様にも悪魔にもなるんですってよ : 一本の木を削ってつくったコケシである。 また、かすかな乾いた音を耳にして、私は 突き出した大きな腹を、両手でかかえてい る。多分女なのだろう。ポカンと口をあけて、部屋の中を振り返った。 そう言って彼女がほほえむと、その顔は驚 呆けたような表情だ。頬に皮肉なうす笑いを いったい何の音だろう ? くほど人形の顔に似た。 . シャリ、シャリ、シャリ、シャリ : 浮かべている。 : : : その顔が、サヨコの顔と 誰かの視線を感じる。テープルの上の人形 重なり合って見えてくる。 が目につく。 かすかな音がする。私は耳をすます。どう 木偶人形め ! 私は無性に腹が立って裸で、細い足をふんばって立ち、両手でつやら、その音は、テープルの上のくだんの人 くるのだ。 やつやと輝く大きなおなかをかかえた、土人形の方から聞こえてくるようだ。 煙草をくわえて、火をつける。蒲団から抜の人形。素朴な、土の香りのするコケシであ 私は窓ぎわをはなれ、テー・フルの前にすわ ・今月の入選作 0 「虫」 鈴木研児 ー 74

3. SFマガジン 1979年6月号

ソナトネが最大た。すくなくとも、ソナトネのやつがいちばんけしです ? 」 からん。他の連中ははるかに小者だ。しかし、わたしは他の連中を「特許権だ」プロックはあっさり言った。「さっき、最近までテレ 踏みつけにしたことはない。今までは一度も、他人にシラミよばわビの画面を大きく引き伸ばすことができなかった、と言ったろ。十 年前、うちとソナトネは、いかなる引き伸ばし改良方法も、共同で りされたことはなかった」・フロックの表情が暗くなった。 使用するという同意書にサインしたんだ。それなのに、ソナトネは 「それで ? 」ギャラガーがうながす。 その契約から逸脱した。こともあろうに、それを偽造書だと言い、 「それで、ソナトネは視聴者アビール対策を始めた。そんなこと は、最近までは不可能だったんだ。つまり、立体テレビを大きな画裁判所にも認められている。ソナトネは裁判所、つまり政治を盾に 取っているんだ。それはともかく、ソナトネの技術者たちは、大き 面に拡大する場合、どうしても走査線やミラージュ・イフェクトが 出てしまう。それというのも、家庭テレビの画面は、ふつう三 x 四な画面を使う方法をものにした。そして、特許を取ったんだ。実 に、そのアイデアの応用を広く力、、ハーするたけの、二十七にもの・ほ サイズを使っているからだ。成果は完璧たった。ところが、ソナト る特許だ。うちのスタッフも、昼夜兼行して、特許権侵害にならす ネは全国各地で、ゴースト・シアターを買い占めた : : : 」 にすむ方法を研究している。ところが、すべてソナトネに網羅さ スト・シアターって ? 」 「そうだな、ええっと、音声映画が斜陽になる前、その世界は強力れてしまっているんだ。やつらはそのシステムをマグナと呼んでい る。マグナ・システムは、どのタイプの受像機でもキャッチできる だと隸っていた。ビッグーー。わかるね ? ラジオ・シティ・ ジック・ホールって、聞いたことあるだろう ? それがそうじが、やつらはソナトネの受像機にしか、使用を許可していない。わ なかったんだ。テレビが普及してくると、激烈な競争になった。映かったかね ? 」 画館はより大きく、より豪華になってきた。宮殿といったところ「倫理的にはもとるが、合法的だな。それなら、おたくの客たちに みんな、良いものを見たいと 料金以上のものを与えてやればいい。 だ。すごいものだったよ。だが、テレビが軌道に乗ってしまうと、 もう誰も映画館に行かなくなった。人の目をテレビから引き離すに思いますよ。画面のサイズは問題じゃないでしよう」 「たが、それたけ 「そうなんだ ! 」・フロックは勢いこんで言った。 は、やたらと金がかかるようになってしまったんだ。だから、ゴー オーディエンス スト・シアターなのさ。わかるね ? 大小にかかわらずだ。景気回じゃない。新聞は・ーー視聴者ア。ヒールの新しい略語だーーの 復を狙っているところに、ソナトネの計画を見せつけられた。視聴記事ばかり載せている。群集心理だよ。きみが視聴者は良いものを い。だけどね、同し値段でスコッチの 者ア・ヒールがその第一要因だ。映画館はたっぷり代金を払うが、客欲していると言ったのは正し はたくさん入る。目新しいものへの好奇心と、群集心理のせいで半クオートびんが買えるとしたら、まさか四分の一クオートびんは 買わないだろう ? 」 ギャラガーは目を閉した。「なぜ、あんたも同じことをしないん「中味の質によりますな。なにが起きたんです ? 」 ロ 5

4. SFマガジン 1979年6月号

「ははあ」 った。イシュトヴァーンは笑い出した。 「別にどうするか決めておらんさ。ただこの塔の外側の城壁が、ケ 《紅の傭兵》はそれが持ち前らしい、楽天的で不敵なようすで云っ ス河の暗黒の流れの上にまっすぐっき出しているから、とにかくこ こから出ようとしているだけだ。いいから肉と穀物を食えよ。腹が 「じや少なくとも殺されはせすに戻ってくるというものさ」 、というのは傭兵の最初の鉄則だそ」 のそき穴から、松明に照らされた室内やレムスのようすを物珍し減っていては何もできない レムスは云われたとおりにしながら、隣の室で《紅の傭兵》が丈 げに見ていたが、 「おい、小僧、なんだってそんなにふさぎこんでるんた ? 大丈夫夫な歯と指で掛布をたてにひきさき、つなぎあわせて器用に繩梯子 をつくる気配をじっときいていた。イシュトヴァーンが彼には松明 だって、その食い物には癩の菌は入っておらんさ」 をくれなかった牢番をののしったり、ぶつぶつ呪いのことばを並べ 陽気に保証した。 いまさらの 「おまえは服装からして、モンゴールの開拓民の子どもなんかじゃ たりしながら、不屈の努力をつづけているのをきくと、 ノレスで世継の王子 ないなあ。いったいなんであの化物と旅をし、スタフォロス砦の騎ように、わずか数日前まで美しいクリスタル・。、 として大切に守られてきた身の、いまの心細さが心にしみた。 士隊にとらわれたんだ ? いったいあの化物はーーーくそ、まるで化 物の巣じゃないか、いくら辺境とは云えーー何物なんた ? 」 グインは日が完全におちて、青白い月が森を照らしはじめても戻 っては来なかった。繩梯子をつくりおえるとイシュトヴァーンは、 「グインはいい人だよ」 レムスは云い、疑わしげにのそき窓をにらんだ。イシュトヴァー長椅子に戻り、毛皮をかぶって、力をたくわえておかねばと云いざ ま眠ってしまった。リンダの身の上も案じられる。辺境の森ーーゅ ンはそんなことばは聞き流して、 「とにかく飯を食えよ、腹ごしらえをするんだ。お前が生血を絞らうべまで、二夜をすごした危険と怪異にみちた森の上を、得体の知 れるのがイヤなら、おれに手をかしてくれ。おれはこのいやったられぬ影がとんでゆく。 レムスは長椅子にうすくまり、長い不安な夜を生まれてはじめて しい塔をぬけ出すために石を抜き、何とかくぐりぬけられる穴をこ しらえたんだが、そこからケス河まで無事に這いおりるという段にのたったひとりで耐えていた。だれが知っていただろうかーーーそれ は、長い髭とウマのひづめ、三巻き半の尻尾と時の終わりまでを見 なって困っていたんだ。おい、この穴から、そっちの室の寝台の掛 布をさし入れてくれ。おれの室の奴だけじゃ、充分なくらい長い紐通す隻眼をもつ、運命の神ャーンが、彼の運命の小車を、静かにま をこしらえられないんだ。といって、あんまり細く裂いては、おれわしはじめた最初の瞬間だった。ャーンは長い、そしてきわめて入 り組んだ模様を織りあげようとしており、その模様でそれそれの役 の体重を支えることができないしな」 5 「ケス河 ? ケス河へおりてどうしようというの ? 」 割を果たすべき人々にすら、まだ、かれら自身が自らの運命の糸の 云われたとおりに掛布をさし出しながら、おどろいてレムスは云先端にあることは気づかれていないのたった。

5. SFマガジン 1979年6月号

ものはトーラスの都から一日半しかはなれていないタルフォの砦 一画があった。 や、『赤い街道』に沿っていてそこでの主な仕事といったら交易で細めの石柱で仕切られたその一画には、いくつかの大きな椅子と あきんど 行き来する商人どもの荷をしらべてかれらのわいろをうけとるだけテー・フルとが並べられていた。だがそれはなろんそこで友人どうし が卓をかこむように内側をむけてあったのではなく、背を壁につけ というェイムの砦に派遣される部隊に入れるし、運のないものが、 高いテープルがおかれ、 たえすセム族におそわれたり、妖魅の結界にあまりにも近すぎるこて、こちらへむけられた椅子の列の前に、 んなスタフォロスの砦やマルヴォンの砦にまわされるのさ」 その上にふどう酒のつ・ほや石杯、石づくりの大皿などがのっていた のだ。そのために全体の雰囲気はどうやら裁きの間めいていた。テ 「そこは何を口軽く喋っておるか ! 」 ー・フルも、椅子も、何もかも石で、椅子の上にはふかふかの毛皮が 先頭からかけもどってきた隊長がムチをふりあげて騎士の肩をビ シリと叩くと、騎士は黙り、隣と足並をそろえて石づくりの廊下をかけられ、その毛皮に埋もれるようにして大きな男がかけていた。 歩くことに専念した。 「ただいま戻りました」 その奥の間の手前で一隊を立ちどまらせた隊長が、すすみ出て房 廊下は長く、はてしもなく続いているかのようにリンダたちには 思われたーーそれは暗く、そしてひえびえとして、足音や話声がひ飾りのついたかぶとをとると右胸にあてながら申しあげた。 の森にてとらえました捕虜三名をめしつれました」 どくよく反響する。両側の壁には先史時代からでもあったのではな「ルード いかと疑われる、磨減してほとんど顔かたちもたしかではない神々 「その二人の子どもはパロの例の双児としてーーーー」 の像が刻まれ、像と像とのあいだはかくし扉になっているのかもし椅子の上から、ゆるやかな重々しい調子の返答があった。 れないがそこから出てくる顔はなかった。 「その左側の異形の者はそもそも何者なのだ ? 」 夜になったら、この廊下を歩いてゆくことも、ルードの森でヴァ隊長がかぶとを胸にあてたまま、豹頭の大男を森の焼けあとで発 シャの茂みにもぐっていることも、その恐ろしさにかけてはたいし見したいきさつを話しているのをききながしながら、リンダはひそ たかわりはないだろう、とリンダは思い、・フルッとからだをふるわかに非常な興味をもって椅子の上の男を眺めた。 せて肩を抱いた。 一列に並んだ石づくりの椅子は、中央の玉座然とした最も大きい かれらは角を曲がり、石段をの・ほり、また角を曲がった。無人のそれを頂点にして、両側に二脚づつ、しだいに丈を低くしながらな らべられている。しかし、食事のときか、あるいは正式の謁見のと 城かと思うほどに、森閑としたなかを、もういちど角を曲がると、 ふいに、規則正しく石の柱が立ち並んでいる巨大な広間がひらけきにでも、一族のものかそれともおもたった家臣が居流れるための ものらしい、それらの椅子は、中央のひとつを除いては、いまはが 9- 石柱のあいだに、使い走りらしい男女がうろちょろしている。そらんと空いたままだった。それそれの背にかけられた毛皮が主待ち R れをつきのけて一隊は通っていった。奥の正面に、一段高くなった顔である。

6. SFマガジン 1979年6月号

ら自身の室の扉にひびいて、ゆっくりと石の扉が開いたからであ壊と暴力へ、嵐のような爆発と闘争から無為なときには筋肉ひとっ る。 動かそうとせぬ、一見従順とまがうばかりの無抵抗と無感動へと、 牢獄の入口に立っている黒騎士たちは、皆手に松明をかざしてい 一瞬にして移行することができるのであるらしかった。 た。その光でおぼろげに照らし出されて、はじめて虜囚たちは、そ その彼が黙ったまま連れ出されると、もと通りに石の扉がとざさ ろそろ日没が迫りかけていることに気がついた。室内がもともとうれ、錠がかけられ、レムスは一人きりで残された。騎士たちは壁の す暗い上に、あかりとりの窓からのそける空は濃いスミレ色の、 灯明入れに松明を一本残していってくれたが、それはかえって室全 辺境特有の暗い色調をしていたので、気づかなかったのた。松明の体にゆらゆらした魔物めいた影を投げかけてぶきみだった。 光が石壁に虜囚たちと騎士たちのゆらゆらする影をおとし、室内に グインがつれてゆかれ、リンダともひきはなされて、。ハロの王子 は、逢魔が刻の心もとなさが漂いはじめていた。 はぼんやりと長椅子の上にうずくまり、卓子の上の食物にも手をの ばす気になれずにいた。だが、兵士たちがたしかに行ってしまい 隊長ーーー面頬をおろしているので、さきの隊長と同一人であるか塔が静かになった、とみるや、またあの音ーー石のまわりのつめも どうかは外見からははかりがたい が手短かに云った。 のをそっと注意深くひっかき、向こうがわへ押し出そうとする音が はじまった。 「我らが主君が、お前の力と技をお試しになる」 「そっちからも引っぱってくれ」 同時に二人の騎士が前に進み出て、グインの両脇につきそった。 「グイン ! 」 傭兵の声がした。レムスはあわてて手をのばし、石をひつばった レムスは叫び、立ち上ろうとしたが、隊長がそれを制し、うしろが、あやうく石のぬけた勢いでうしろに倒れるところだった。 から進み出た牢番が、卓子の上に焼肉と粉にひいた穀物をかためた もとのとおりにのそき窓があくと、松明のあかりに照らされて、 もの、それにモンゴールの果実酒のつ・ほ、という一人分の食物をお黒いきらきらする目がのそきこみーーーそれから若々しい、しかし引 きしまった顔全体が壁にかこまれて見えた。 「どうした、小僧」 「豹人だけだ」 隊長はかんたんに告げると、彼を引ったてるよう合図した。グイ傭兵はささやいて、唇のまわりについた焼き肉の脂を手の甲でぬ ンはそれが彼の主たる特質をなしている、ふしぎな無感動な態度でぐった。 立ち上り、両脇を騎士たちにかためられたまま促されるままに室を「彼らはあの豹の男をつれて行っちまったのか」 出た。どうやら、彼にとって、静と動とは極度に背中あわせの二面「ええ」 をなしているものでーーー彼はその頭に冠せられている野獣そのもの レムスは泣き出しそうな声で云った。 と同様に、きわめて忍耐強い長時間の沈黙と待機からすさまじい破「癩伯爵が、グインの力と技を試すのだそうです」 224

7. SFマガジン 1979年6月号

「はあ。だけど、隊長。彼はこれまで誰かと握手したことなんかあて、物静かな父親は答えるのだ。「今晩は、皆様方。グラフトン様 は客間でお待ちです . りますかね ? 彼はこれ以上なにもしませんよ。ホワイト・フォー ( 砦 ) にじっとすわって、ぶくぶくと汚ならしく太り、と しみ一つないイヴニング用の服装をして、堂々とした百万長者は O — << 、おまけに個人別の対人ミサイル、猛毒細菌ガス・タワーな かれらを歓迎した。そして、実験の成果を用意すると言って中座し んかのかげにかくれているんですからねーーーそれから、あのばかで た。ジェイムズがたつぶりと飲みものを注いでいるあいだ、何人か かくて卑しい大もいる」 は部屋にある本物の一九五〇年代の調度品を賞味しーーそのなかに コン隊長は、その隊員をねめつけて言葉をついだ。「わたしの考は、正真正銘の″ステレオ″装置もあったーー、またある者はテレビ ーンズを一九三七年の幼年時代から誘拐すをつけたりした。そろそろ、消灯時刻であり、チャンネルは大統領 えはだ。アーニイ グラス・エッグ の O でいつば、だった。 る。そして、かわりにガラス卵を置くんた」 「クラシック何です ? 」 「おやすみなさい、アメリカ ! 大統領は安全です。そうです、— ソナル・ミサイル イソ . ディヴィデュアライズド・アンチ日 「ガラス卵だ。鶏から子供をとったとき、かわりに人れておいてやに感謝を捧げましよう。個人別対人ミサイ るやつだ。つまり、本物を人工児で代用するというわけだ。ウイル 誰もわれらがリーダーに危害を加えることはできません。その通り ・グラフトンが、一九三七年当時そっくりなアーニイの複製ロ なのです。ホワイト・フォート中で、彼とあなた方の眠りを守るた ポットをつくれると言っている」 め、百億発以上もの小型ミサイルが油断なく見張っています。そし 市 , イレく ・グラフトンはタイム ハトロール員みんなによく知て、お忘れないようにーーーあなたの名のしるされたものがその中に られた、金持ちの奇矯なアマチュア発明家だった。パトロール隊の一発はあるのです」 ウ . イレく ーに雇われてもいた。 父ジェイムズ・コンはウイル・、 ・グラフトンが再び現われた。やがて消灯時刻に、 行の一人が彼に実験の成果を見せてくれとせがんだ。彼は喜びにぜ 「一つ付け加えると、一九三七年の誰かが疑いだして、そのロポッ 「いや、諸君。お いぜい喉をならし、眼鏡をきらめかせて答えた。 トが分解されたとき用に、ロポットの装置はすべて一九三七年より 以前のガラクタ類でつくってある。蒸気駆動というわけだ。もっと披露目はすでに進行中たよ」シャツの飾りボタンの一つを押しなが 「こいつが ″蒸気駟動少年だ ! 」 も、彼らの時代に分子回路や蠕動論理の秘密がもれたとしても役にら、彼はつけ加えた。 と同時に、彼の身体がまっ二つに割れ、貝殻のように両側へ開い は立たないだろうがー た。中からは、編み地の水泳パンツに縞模様のシャッというスタ イルのずんぐりとした少年が現われたが、この子が中で型ハンド 。ハトロール隊員 ( カール ) を加えた かれら四人、それに五人目の ・グラフトンの館へと赴いた。招じ入ルや種々のレスーを動かしていたのは明瞭だった。少年は″グラフ 一行は、あるタ刻ウイルく れてくれた執事に全員が挨拶をする。「父ちゃん、今晩は」そしトンのぜいぜい笑い″に似せたうなり声の操作を止め、ロポットの 6 4

8. SFマガジン 1979年6月号

「蛮族の神の名たよ、グイン また語りはしめた。 レムスがささやいた。 「もしかしたら , ー・ー」 「ノスフェラスの荒野に住むセム族の神の名がアルフェットウとい イシュトヴァーンは怒鳴られたことなど意に介さずに、 うんだよ」 「その女の子というのを別にしたのは、その例の用途に使おうとい 「草原の神モスに誓って ! 」 う肚なのかも知れんそ」 イシュトヴァーンがわめいた。 「そんな 「そこにはもう一人いるのか ? それを早く云え ! 」 レムスは震えながら、 「リンダを、癩の薬にするために生血を絞ったりさせないよ ! 」 グインは舌打ちして、 グインは震えている少年の肩を叩いて慰めた。隣からはそんな少 「訳は云えんが、俺は子供を一人連れているし、もう一人の子供ー年の動揺などいっこうにかまわぬように声がつづいた。 ー女の子だがーーをこの牢の入口で引きはなされてしまったのだ。 「ならなおのこと急がね、はならんというわけだ、そうだろう。実は イシュトヴァーン、あんたが脱走するのよ、 。しいが、俺はどうやらまおれ自身も少々焦っている。それで遠からずセム族がかれらの同胞 すその女の子を助け出さんとならぬようた」 を取り返しにか、復讐にか、いすれにしてもこの砦を大挙して襲っ 「おお、グイン ! 」 て来るだろうと踏んだのでな、おれは癩の化物に喧嘩をふつかけ、 レムスはグインの手を握りしめた。壁のむこうからはややあっ怒らせて、 トーラスの都へ送り返されようともくろんだのだーーお て、 れは類伯爵の領地からの徴兵でなくて、モンゴール軍の傭兵なのだ 「女の子がいてーー一人だけ、引きはなされた ? 」 から、おれを罰するのはトーラスのグドウ将軍の筈だからな。とこ 「ああ。どこやら別の小部屋にとじこめるといって連れていかれろがほんの少しおれはやりすぎてしまった、あるいははじめから化 物には軍律に従う気持がなかった。都へ、次の連絡隊と共に送り返 そいつは、危険だそ」 すかわりに彼奴は、ただちにおれの処刑を宣告しここにぶちこみや 「どうして」 がったのだ。おそらく奴は処刑にことよせておれの血を絞ろうと思 レムスが夢中で叫んた。 ってるのかもしれん。 「どうして危険なの ? 」 なろん、おれは、そんなことぐらいでは参りはしなかったが いきなり石の扉が、槍の先か何かで激しく叩かれ、 ね。おれは《魔戦士》イシ、トヴァーン、生まれてきたとき、掌に 「うるさいそ ! 」 玉石を握っていたので、土地の老予言者は、この子はいずれ掌の上 と張り番の怒鳴る声がした。かれらは沈黙し、やがて声を低めてに王国をのせて支配することになろうと予言したのだ。おれは自分 2 2 2

9. SFマガジン 1979年6月号

銀河辺境シリーズでおなじみの・・チ ャンドラーが日本を訪れたのは、もう二年も 前のこと。各地でファンの熱烈な歓迎を 受けたが、なかでも福岡では、チャンドラー のサイン会がきっかけとなって「以下同文」ぎ というファン・グルー。フが誕生した。そして さる三月の三十、三十一日にわたって、延べ 八百人近い人数を集めたコンべンションを主 催するまでに成長した。その大会が、九州 ・ & アニメ祭「一〇〇一人・の旅」だ。 天神ビルという、繁華街の真中にあるビル ポ の十一階が会場。メイン・ホール、アニメ映 写会場、そしていくつかの小部屋が会場となー ~ " 、 レ っている。 第一日目は開会式につづいて、矢野徹、野 田昌宏両氏の講演があ 0 た。矢野氏の講演 は、作家クラブの長老にふさわしく、日 メ 」昇本の揺籃期からの歴史や、どうすれば翻 ア 白訳家になれるかという話をユーモアたつぶり に話された。矢野氏の講演を聞いていると、 ム あっという間に英語がうまくなるような気分 にさせられてしまう。まさしく、体験の強味ををい・′ ズ・・松とい、つところ。 一方、野田氏は、会場の天神ビルに太陽を 宏置いたと仮定しての太陽系のスケールの話 や、豊富なイラスト・コレクションの ( ご スラ 野く ) 一部ーーといっても大変な量の イドの上映があった。 この大会では、そのほかに、従来の大 信氏 野各会にはない = ニークな企画があった。矢野徹 河の氏のサジェスチョンによって準備されたこの 企画は、「 2 0 01 年を考えるシンポジウ よ隅 ーは、矢野徹、野田昌宏、 右小ム」。参加メン・ ( 小隅黎、松崎真治の関係各氏のほか、農 業問題の専門家として白水昇、女性問題の専 門家として河野信子の両氏が参加された。こ のシンポジウムは大会第一日目と二日目の両 日にわたっておこなわれ、熱心な討議がされ こ 0 氏「シンポジウム」とはいっても、一定の結論 野をひき出すといったような形式ではなかった ーは」矢が、大会のひとつのあり方として、非常 のに興味深い企画だった。 さて、最後に七十人が参加しての合宿のこ 、ごとだが、ゲストを囲んでのにぎやかなおしゃ てべりがつづいた、とだけ書くしかなさそうだ。 れこればかりは、そこに参加した人でなければ ーをま まったくわからないことのひとつだろう。 囲 ともかく、大会というのは、主催者に ンは大変な苦労であり、参加者にはまことに楽 しいものだ。 ( 今 ) シャンプロウ ( ? ) と野田氏

10. SFマガジン 1979年6月号

遠慮なく帰らしてもらうぜ」 た鉄の尖塔にしかみえなかった。くろい粘土を不器用に積みかさね 船長は船のうえからそう大声でいうと、サッと右手をふりおろしたような樹が、にぶい金属沢を放ちながら、ニョキニョキと空にの た。ナイフが陽光にきらめき、母船と短艇をむすんでいた綱が切っぴているのだ。しかも、″自殺者の森″はよほどふところがふかい ておとされた。短艇の帆は風をいつばいにはらみ、 そして、 らしく、ほとんど日の光もさしこまないぐらい樹々が密生し、ぶ厚 ″空なる螺旋″に向かってスルスルと走りだした。 く視界をさえぎっていた。 フェーン・フェーン ″自殺者の森″はこの島の全幅にわたっているようだった。″自殺 短艇が接近していくにつれ、″空なる螺旋″は五人の眼にますま すその異様さをあらわにしていった。 者の森んを迂回するすべはなく、″空なる螺旋〃に足をふみいれる ためには、この森をつつきるしか方法はないということだった。 四周の崖はきっちり九十度をなして、沙海のうえにきりたってい 「つまり、この″自殺者の森″は甲虫の戦士に与えられた試練とい る。いや、崖と表現すること自体、誤りであるかもしれない。その うわけだ」 表面はふかい藍いろに沈み、冷たい金属の光沢を放っているからだ フェーン・フェーン ビンがいつもの皮肉な口調でいった。「言葉をかえれば、この森 それに、下からみたかぎりでは、″空なる螺旋″のうえはまっ たくの平坦になっているようだ。断じて、自然物ではありえなかつを通り抜けることのできないような人間は甲虫の戦士たる資格がな いということさ」 短艇は沙海のうえを滑っていく。 フェーン・フェ : ン ジローたちはたがいに顔をみあわせ、あらためて前方の″自殺者 ″空なる螺旋みはしだいに視界をおおっていき、やがては暗い影が なるほど、たしかにひどく異質な森 の森″に視線をなげかけた 五人の頭上にのしかかるようになった。 フェーン・フェーン ″空なる螺旋〃をみつめる五人の眼には、いちょうに決意の色がみではあった。たとえていえば、くろい牙をビッシリ埋めたような森 で、生命の息吹きみたいなものはまったく感じさせない。数メート なぎっていた。 ルに達する金属質の樹々が、ただ無表情にならび、みわたすかぎり なにを決意したかは、五人てんでに異なるようではあったけれ ひろがっているだけなのだ。 「俺はこの森は嫌いだ」 ダフームがいぶかしげこ、つこ。 冫しオ「だけど、通り抜けるぐらいは なんでもない。獰猛な生き物もいる様子はないし、べつに危険はな いんじゃないか」 「危険はないか : : : 」 ビンがうすい笑いを浮かべた。「まえに俺がここに来たときに 8 ″自殺者の森″はいまだかってジローたちのみたことのない 森だった。 ジロ 1 たちの眼には、それは鉄屑のかたまり、奇態にねじまがっ 99