宇宙 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1979年7月号
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1. SFマガジン 1979年7月号

を、どのように消化していくのか、そこは今より劣っても、豊田さんや平井さん のところをもっとよく見たかったようにが参加していた作品の方が、ずっと 思う。まさに、推理小説家としての解決としても作品としても際だっている。何 2 : 、、羅、 ウ を知りたかったのだ。 ( 『未来警察殺人しろ、水金地火木土天海冥を知らないシ 課』 / 著者。都筑道夫 / 四六判上製 / 2 ナリオライタ 1 やら、宇宙空間のド真ン“、 24 頁 / Y980 / 徳間書店 ) 中で、宇宙船が横転すると書くライター やらがいるんだもんね。白痴作品ができ あがるのも無理はない。ただただ原作者 石日本サンライズ作品 の作家や漫画家や翻訳家に同情してしま 『機動戦士ガンダム』 しかし、といってアニメの全部がクズ だとはいわない。何しろ、週に三十数本 高千穂遙 もアニメをオンエアしているのだ。中に 知ってる人は知ってるんだろうが、今は一本くらいまともな作品もある。ちょ どきのロポットものテレビアニメは、ほっと前までは『未来少年コナン』がそう とんどがおもちゃ屋の企画でつくられてだった。原作を大胆に変えたが、これがそんな状況の中でがんばってるンだな いる。つまり、作品が先にあってそれに最高。結局、傑出した人が中心に立ってア。たとえばロポットも『宇宙の戦士』 スポンサーがつくんじゃなく、おもちや作品をぐいぐいリードして、け・よ、 からヒントを得て、大型の強化服として ができているから、それを売るためにアものができるのだ。『コナン』では大塚扱っているし、いちはやくスペースコロ ニメが製作されるのだ。要するに三十分康生がこの役を果たした。それにスポン ニーなんてのも使っちゃって、リアリテ の O> である。 サーに関係ない Z 制作というのも幸イをもたそうとしている。キャラクター いしたといえる。こんなのは民放では、 だから内容なんておよそいいかげんな デザインは安彦良和だから、もちろん申 ものばかりで、などと平気で銘うつできない。 し分ない。四月新番組のうちのお勧め品 てるが、冗談、なんてひとつもな『機動戦士ガンダム』はロポットものでである。 。むしろ、初期の『鉄腕アトム』や、ある。スポンサーはやはりおもちゃ屋ストーリーは、ジオン公国というスペ 『 8 マン』のように、アニメ技術だけでで、制約は大きい。ところがこの作品が ースコロニ 1 が地球連邦政府に対して独 田 8

2. SFマガジン 1979年7月号

一九二四年、この年はソビ = トから見てみよ魔」・、 - = 第 のう。 「アエリータ - 」 "Aelita" は、・トルストイのオ 最 原作で、原作の小説は以前に「火星に行った地球 人」という題でジュヴナイル訳が出ている。原作 はロシア人の技師が、自作の宇宙船で火星に行 き、腹黒い政府主席と闘ったり、主席の娘と恋を したりの冒険談だが、映画では、映像にかなりシ円 ュールな手法が取られたりしているらしい。監督界 のヤーコフ・。フロタザーノフは、革命前から映画世 界にいたが、革命中は国外に亡命生活を送り、これ の作品が帰国第一作。 もう一本、この年ソビエトで作られた作品「惑 く連載 > SF 映画講座 井口健ニ 第 9 回 円 24 年 ~ 円 28 年 メトロポリスの登場 第物第

3. SFマガジン 1979年7月号

分でもなぜそんなことを知っているのかわからないまま、しかし奇スフィンクスのズッシリと重い声がチャクラの言葉をさえぎつ 妙に自信にあふれた声で、三人の″甲虫の戦士は同じ言葉を口に したのだった。 「心配するな。おまえにもすぐにすべてがわかるときがくる。狂人 「それは、″甲虫の戦士″だ」 は狂人で、″甲虫の戦士″とはまた異なったさためがあるのだか ら」 それは″甲虫の戦士″だ、といった言葉が、なにか自分の声「″甲虫の戦士″は宇宙パイロットで、戦闘要員 : : : 狂人は辺境惑 ではないかのように、うつろに耳にひびいた。 星開発要員 : : : 」 「な・せなら、俺たち″甲虫の戦士〃は四つんばいの赤ん坊として生まるで、意識をだれかにのっとられたように、ジローは自分でも まれ、それから自分の二本の足で立ち、最期には剣を手にしたままわからない言葉を、その唇からつむぎだしていた。 で死ぬから : : : 」 「宇宙連合機構は、西側の国家が協力して宇宙開発にあたるための かぶとむし ジローはそう言葉をつけ加えながら、砂を噛むような、索漠とし機構体で、宇宙パイロットはその戦闘強化服を着用した姿が甲虫を た気持ちにとらわれていた。じつは、スフィンクスの謎にたいする連想させることから甲虫を、また辺境惑星開発要員は惑星にコロニ 答えが、どうして″甲虫の戦士″であるのか、その理由などどうで ーを築きあげる能力がビー ーを連想させることからビー もいいことたからである。要するに、″甲虫の戦士″という言葉はそれそれのマークとして襟につけていた : : : 宇宙連合機構と、東側 キー・ワードにすぎずーーそら、いまやジロ 1 はこんな言葉も知っ諸国からなる宇宙友邦統一機構との摩擦は絶えたためしがなく、月 アステロイド ているのだ なぜそうなのかなどとせんさくする必要はまったく植民地紛争、木星利権紛争、小惑星獲得紛争とこぜりあいがつづい ないのたった。 ていた : : : 」 頭のなかで、かって想像したこともないような、さまざまな知識暗闇から光のなかに、記憶がつぎからつぎにムックリと身を起こ がせめぎあっていた。ちょうど言葉をおぼえはじめたばかりの子供していく。スフィンクスの謎が引き金となって、いまや記憶の奔流 はとどまるところを知らないようだった。 みたいに、それらの知識を再構成し、体系化するすべもわからない ままに、三人の″甲虫の戦士″たちはいつまでもポンヤリと、その 「そして、ふたつの機構体が外宇宙にのりだしたとき、ついにその 場に立ちつくしていた。 角逐は最悪の事態を迎えることになった。だれもが恐れていたこと 「おい、どうしちまったんだ」 が現実となり、宇宙連合機構と宇宙友邦統一機構が全面戦争に突入 ダフーム、ビンしてしまったのだ。そして : : : そして : : : 」 チャクラがうろたえた声でさけんだ。「ジロ】 : ・おい、みんな魂をぬかれちまったみたいに : ジローは苦しげに顔を歪めた。それから先のことは想いだしたく なかったからた。 「おまえは狃人だな」

4. SFマガジン 1979年7月号

キャ。フテンの所へ行った。部屋の中央に浮かべられると、・ほくは首特な御仁がいずれ拾いに来てくれるだろう。それまでは大好きな土 をねじってキャ。フテンにツを吐いた。ツバは真っ直ぐな就道を描いじりでもしていろ」 いて飛び、キャ。フテンの顔に当たった。彼は手に持った手袋の端で 土いじりというのはもちろん、・ほくの専門の星間考古学を冷やか それを拭った。何も言わない。そこで、・ほくはひとしきり周りの者して言っているのだ。馬鹿野郎、余計なお世話だー に噛みついた。皆、憎しみと憐れみの混じった表情でぼくを見てい ともかく、こんな次第でぼくは〈惑星付き〉の第四惑星へ る。 置き去りとなった。地球時間でたっふり一年分の食糧と、大量の白 怒鳴り散らす・ほくの方に、キャ。フテンは近寄って来て、落ち着い血球強化剤と一緒に。水は現地で調達しろ、だって。 た声で言った。 「おまえのうるさい声はもう聞きたくもない。黙って俺の言うこと着陸した救命艇の中。通信機のス。ヒーカーからは遠去か「てゆく を聞け」 船の仲間達のメッセ 1 ジがひっきりなしに聞こえてくる。気をしつ ・ほくは身体全体で彼をにらみつける。 かり持てよ。またどっかで会った時は飲み明かそうぜ。惑星を壊す うる 「処分だ。本来なら航行中に反乱を起こした者はその場で射殺されなよ。のんびり休んでいろよ。きっといい女が現れるさ : ても仕方のないところた。おまえのやったことは充分反乱罪としてさいんだよ。島流しになった友人を慰めるもっと気の効いたセリフ 成り立つ。艦を破壊し、乗組員全員の生命を危機におとしいれた。 は無いのカ 、。・ほくはスビーカーのスイッチを切った。受信中を知ら わかるか、おまえのやったことは反乱なんだそ ! 」 せるモニターの音が。ヒコビコ。ヒコと鳴り続ける。 当たり散らす相手がいなくなってぼくはかなり減人っていた。 そう言ってキャプテンはしばらく間を置いた。ぼくに自分のやっ ・シン』らしくもない、 と思ってもどうしようもなかっ たことをよく考えさせようというのだろう。古めかしい戦術た。し『。 ( ルサー た。気分は最悪。冥王星の衛星で宇宙ギャング共に宇宙船を乗り逃 かし、・ほくの爆発もそろそろ収まりかけていた。怒りは白色矮星と げされた時でもこんなにひどくはなかった。でも、誰たって自分の なって華々しいその一生を終えようとしていたわけだ。 一番愛する人が突然この宇宙から消え去ってしまったらこうなるん キャ。フテンは机に戻って記録簿を取り上けた。開いて読む。 「イナガキ・シン二等技官、二十一歳。星間考古学担当。艦船破壊じゃないだろうか : ・ ばくは涙をぬぐって観測機制御盤の前に坐った。重力がやけにき 及び器物損壊、上官不服従の罪で船外追放に処する」 さらに・ほくに向かって言う。 つく感じられる。指だけが、まるで別の生き物のように、スイッチ 「おあつらえ向きに型惑星付きという願ってもない星がすぐを入れ、操作ボタンを押してゆく。 近くにある。そこまで送り届けてやるから、しばらく頭を冷やすん だな。おまえを島流しにしたことは銀河中に通報するから、誰か奇 〈テータ〉重力日〇・八七自転周期日二十時間前後 ( 資料 ー 45

5. SFマガジン 1979年7月号

立レヒ三ウ 文庫 Z から出ているシリーズも、僕の 「ダーウインを超えて」、渡辺格十小松 愛読書だ。そして、本誌にとびとびで連左京の「生命をあずける」などは、いず 載されている堀晃氏の″マッド・ サイエれも本欄で取り上げたかったほどの面白 ンス入門〃は、大のお気に人りコラムでさだった。 ある。 ( 堀晃氏の一冊にまとめられた 本書の構成は、第一講″宇宙の中での 的科学解説書を、是非読みたいというわれわれの位置第二講″宇宙論の変 のは僕だけの願望ではないだろう。愛読遷″、そして第三講″宇宙の距離を測るみ 者のワガママではあるが、なんとか時間あたりまでは、かなりていねいに初心者 をさいてこっちの方面の執筆もお願いしにも判るように、われわれの宇宙がどのそらくを考える上で、星を見て、そ ます。もちろん、小説も書いてもらわな ようなものであるかが語られている。これに訳もなく感激できるかどうかという くては困りますが ) のあたり、すれつからしのファンに ことは、極めて、決定的なくらい重要な そして、こうした科学解説書を通じはややカッタルイかもしれないが、このことなのだ。 て、現代科学の最前線に触れた ( 気がすていねいなイントロがあとで効いてき ードでなくともよい、一見サイ る ) とき、僕は少年時代に図書館でアンて、ビッグ・ハンと膨張宇宙論、・フラックエンス味ゼロのファンタジイでも、僕ら ドロメダ星雲のカラー・グラビアを見たホールとホワイトホールといった現代天が感動できる作品には、必ず、こ ときに近いようなショックを味わう。 の、星を見てそれに興奮するという資質 文学の最前線へと話題が一気にぐいぐい 小尾信彌氏と半村良氏との、〈現代宇といくあたりのス。ヒード感覚はもう何とが秘められているのだ。 宙論講義〉とサプの付された「宇宙とのもいえない。 無論、人は、星に陶酔する感性だけで 対話」を読み進みながら、僕は常に、こ そして、面白い、面白いとページを繰は生きていけない。いま、僕は、星と人 の少年時代の″科学解説書を読む興奮とりながら、僕が考えていたのは、人間にの世の中とどっちをおまえは選ぶかと問 快楽んについて思いをめぐらし、かっ、 われたら、ウーンと唸ってしまうだろ はやはり二種類の人間がいる。つまりー また、それを感じていた。 ー人と話をしたり恋をしたりする方が面う。俗なものと、無機質的なものとのア ンヴィ。ハレンツといってしまうとカッコ 朝日出版社から刊行されている、この白いと思う人間と、星を見上げて面白い O 0 0 は近来になと感ずる人間の二通りが、ということだ良すぎるが、かっての少年団も、や い好企画で、岸田秀 + 伊丹十三の「哺育った。 はりそこまでは変質してしまっているの このことを軽く考えてはいけない。おだ。だから、半村良氏の、徹頭徹尾、人 器の中の大人」、今西錦司十吉本隆明の 円 0

6. SFマガジン 1979年7月号

あとに新たな世界を築きあげた、と受けとめたほうが理解しやすいの特性を持つ者は、″甲虫の戦士″の伝説を与えることによって、 かもしれない」 同族意識を持たせ、つねに遺伝子強化をはかった。人の場合には、 おどろくべきことに、ジローは生体コンビ、ーター素子という概冷凍精液と冷凍卵子の知識を与え、これも惑星開発要員の特性がう 念をお・ほろげながら理解していた。そして、マンド 1 ルの地をつねすれることのないようにつとめた : : : 」 にとびかっていた、おびただしい数のホタルのことを想いたしてい ジロ 1 は自分が以前にも増して、強い無力感にとらわれるのをお た。もしかしたら、あれがそうたったのかもしれない。 ・ほえた。自分たちが、あらかじめさだめられた連命の下に動いてい 「″甲虫の戦士″と狂人のことを話してくれないかしら」 るだけだ、ということが、いま、疑問の余地のない事実として、眼 それまでかたくなに沈黙をたもっていたザルアーが、はじめてロのまえにつきつけられたのである。 をきいた。ザルアーは″甲虫の戦士″でも、狂人でもなく、当然の 「″月〃はどうしたんだ ? 」 ことながら、先祖から受けついだ記憶共同体の恩恵にはあずかって ビンが奇妙にけだるい声でいった。「かって地球には″月″とい いないのだが、女呪術師の能力をもってして、彼女は彼女なりにスう名の衛星があったことを、いま、俺は想いだしている。″月〃は フィンクスの話を理解しているようだった。 どうなっちまったんだ ? どこへ行っちまったんだ ? 」 「もし、人類を地球に幽閉することが目的だとしたら、どうして 「″月″はわれわれが破壊した : : : 」 ″甲虫の戦士″や狂人などという人間が存在するのを許したのかし スフィンクスがしずかにいった。 ら。おかしいじゃない ? 彼らは宇宙パイロットであり、惑星開発「その必要があって、われわれが破壊してしまったんだよ」 要因だったわけでしよう」 ( 以下次号 ) 「誤解しないでもらいたい」 註Ⅱロッキ ード・ミサイル宇宙会社の科学者たちが、月基地と スフィンクスがいった。 して、これと同じような建物を考察している。円筒形のユニッ 「われわれの目的は、あくまでも地球人を矯正することにあったん トを・ハラ・ハラに月に輸送し、それをつぎに接合することによっ だ。宇宙進出の芽を完全につみとってしまい、ひとつの種を袋小路 て、基地を拡張していくというのが、その基本設計をなしてい に追いつめることが目的だったわけではない : : : その存在を許すど るーーまた、岩石から水をとりだし、その水蒸気によって作動 する″水車″も、月の輸送手段として開発されたものである。 ころか、われわれは″甲虫の戦士″や狂人が存続するように、むし このふたつの事実から、どうやら″空なる螺旋は月と密接な ろ努力してきたんだ。なにしろ、宇宙へあえて進出しようとする人 関係にあるらしいことが想像される。 間は、地球人のあいだでもごくかぎられた存在だったからな。神話 現実世界がつづいたあまりに、彼らの特性が希薄化することのない ようにさまざまの措をこうじる必要があった : : : 宇宙パイロット

7. SFマガジン 1979年7月号

リーブル天神という ラム・チャンドラー氏が来日したとき、福岡の 書店でサイン会が開かれ、客がすくないと申し訳ないと思って案内 役の松崎真治氏や高校の後輩の小野原一くんにサクラの駆り出しを 依幀したら、これが集まりすぎて当日大騒ぎとなり : : : そんなこん なで、これをきっかけにつくられた〈以下同文〉というファングル 1 プが、この大会を企画したものである。 第一回であれだけの規模を成功させたのだから見事なものた。 故郷を追ン出て二十五年 : : : 。柄にもなくサイン会かなんかの椅 子にすわらされ、山積みにされている『レモン月夜の宇宙船』がど ンどン売れて、それにひとつひとっサインしていくうれしい気分ー 。昔、俺を振ッたあ 誰か知ってるのが通りかからないかな のセーラー服の女の子ーーーもう、 しい年増になってるだろうなアー ーかなンかが、地元の銀行の偉いさンあたりの亭主と二人づれで通 りがかって、「アラ ! まア ! 」なんてことになったら、思い切り クールに「やア、お元気ですか ? 」なンて、答えちゃうんだがなア しかし、顔を見せるのはムクつけきわが同窓生ばかり。そいつら がまた、自分よりもっとムクつけき伜をつれてやってくるんたな ア。かわゆい娘をつれてきたやつなンて一人もいやしない : も、うれしいものである。こっちはもう大ニコニコでサービスにつ とめちゃった。 『レモン月夜 : : : 』の山はみるみる : だが待てよオ・ あそこであんな勢いで『レモン月夜 : : : 』が売れたということ は、つまり、今までみんな全然『レモン月夜 : : : 』を買ってくれて 5 そうかー いま気がついた凵 いなかったという訳だなア・

8. SFマガジン 1979年7月号

「ちょっと遅くなったんしゃないかな」 しかかったときには、″水車〃のスビードはますますおち、ほとん ど人が走る速度とかわらなくなっていた。グラマン 4 ワイルド 0 ビンが視線を宙の一点にすえ、・ホソリとつぶやくようにいった。 ・キャット、ムスタング、ゼロ戦、メッサーシュミット、ス。ヒット ″水車″のスビードはまだかなりのものだったが、なるほど、たし ・ファイヤ : : : と、戦闘機は急速に精悍さのどあいを増していき、 かに一時みたいな、宙を滑っていくような爽快感はうすれつつある ようだった。 ジェット機の時代を経て、ついに宇宙船の時代にいたった。 雑多な品物がとぎれ、しばらくはなにもない湾曲した壁面がつづ″水車″のスビードがガタンとおちた。ほとんど余力だけで走って いた。″水車″の影が、すばしつこいネズミのように、壁のうえを いるようで、それすらもしだいに遅くなっていく。あきらかに、 走っていた。 ″時間旅行が終わりに近づいたのだ。 ふいに照明がかげり、ジローたちは一斉に頭上をあおぎーーそし人工衛星打ち上けロケット、科学衛星打ち上げロケット、有人人 て、声をあげた。 工衛星マーキュリ・フレンドシップ、アポロ、ソューズ、ドッキン 頭上から、鳥のような形をした巨大なものがぶらさがっていたのグモジュール、サターン 5 型打ち上げロケット、そして人類をはじ である。ジローたちがそれを鳥のようなと感じたのは、まことに優めて月にみちびいたアポロⅡ号 : : : 人類が宇宙に進出していくにつ れ、″水車″が遅く、遅くなっていく。ジロ 1 は″水車″が遅くな れた直感力といえた。 それは、世界最初の飛行機″ライト・フライヤー一号″だったのっていくことに、どうしてか胸をかきむしられるようなさみしさを お・ほえていた。 骨組みだけのような″複葉推進式飛行機″につづき、巨大な凧を放射同位元素利用の発電機を利用した遠外惑星探測器を最後にし て、もう天蓋の天井を通しては、なにもみえなくなっていた。右手 思わせるリリエンタールのグライダーが頭上にのしかかってくる。 ライト X パン・フィズ号、 パリⅡニューヨークをむすぶ大西洋横前方に大きな月面車がおかれてあったが、それ以外にはなにもない さしもの巨大な博物館もとうとう出口にたどり着いてしまった 断に成功したライアン飛行機会社のセントルイス号、世界一周に成 日ようたった。 功したダグラス・ワールドクルーザー ・ : 飛行機のなんたるかを攵 らないジローたちの眠にも、それがしだいにガッシリとした、優れ″水車″は月面車ーーーもちろん、ジローたちにはそれがなんである たものになっていくことだけはわかった。 かはわからなかったのだがーーのまえでしすかにとまった。空気の ぬけるような音がきこえて、″水車″のドアが外側にひらいた。 第一時世界大戦がはじまる。フランスの戦闘機一五〇馬力のス。 ( 「ここから先は歩いていただきます」 トⅦ、木製桁小骨に羽布張り主翼のドイツ戦闘機フォッカー・ シューダ Ⅶ、アメリカの豆鉄砲戦闘機・ポ】イングー、ライト兄弟の 双子の兄のほうが奇妙に沈うつな声でいった。「もうここから 軍用偵察機・ライト・ミリタリー・フライヤー : : : 第二時大戦にさ″空なる螺旋みまではすぐですから」 フェーン・フェーン

9. SFマガジン 1979年7月号

乗せられるなんて、君らしくもない」 「頼むからやめてくれよ」 ・ほくは人目をはばか 0 て橋に通じる廊下〈アキ「を引 0 ば 0 て「他人に言われたからやるのじゃないわ。私が一番適任だと思うか らやりたいのよ。そのことをキャ。フテン達たって認めてくれたんじ 行って、何度目かの説得にかかった。 ゃないの」 イ . リ . ッ - ノ 「本当に死にかけているかどうかわかりやしないんだろ。もし君が ・ほくは腹立ちまぎれに壁を思い「きり蹴ると艦橋入口のドアまで そばに居る時、急にあいつが暴れだしでもしたら、いったい君はど 飛んでゆき、キック・ターンで元の位置に戻って通風管にとまっ うなる ? 」 アキコは送風管を右手で擱んで身体を安定させておいて、左手でた。 耳の上の髪を神経質そうに何度もかき上げた。悩んでいる時の癖「君はサ ~ トーナを救うのに命をかけようというんだね」 「ええそうよ」 だ。悩んでいるのは、もちろん、・ほくに説得されている為たが、・ほ アキ「は一度頭をそらしておいてゆっくりふりおろす得意のうな くが喋っている内容よりも、どうやって喋るのを止めさせようかと すき方をした。普段はかわいいその仕草も、こんな時にやられると いうことに違いなかった。構わすにぼくは喋り続けた。 「そりあ、あい 0 を手に入れるのには苦労をしたさ。殺したくな腹が立 0 ばかりだ。何だ 0 て・ほくはこんな高慢な女を好きにな「て いという皆の気持ちもよくわかる。だけど、もし死んでしま 0 たとしま「たんだろう ? 「君は・ほくよりもあの頭で 0 かちのパッタのお化けの方が好きなん してもまた獲りに行けないわけじゃない。山羊座のアルフア系には まだあいつの仲間はうじゃうじゃいるんた」 「うじゃうじや「てほどはいないわ。それにサルトーナの性質を考「違うわよ ! 」 えたら、今度私達があれを生け獲りにするのは、これまで以上に難それまで横を向いていた彼女が急に・ほくの方に向き直 0 た。唇を 白くなるほど噛みしめ、大きく開いた目の内側にある涙腺からは大 儀するのは目に見えているじゃない」 っこ。・ほくも文字通り目 立の涙が湧き出してまっ毛の先にひっかかナ アキコはゆっくりと、まるで小学校の生徒に説明するように言っ * た。腹をたてているのた。どうせ説得できないことはわか 0 ている一杯、目を見開いてアキ = の顔を見返してや 0 た。 のだから、・ほくもそのくらいでやめておけば良か 0 た。だけど飛び「わからすやの甘えん・ほ ! 」 立「た宇宙船はそう簡単には止まらないのだ。昔こんな言葉が地球彼女は泣きながら唇の端をゆがめてそうい 0 た。せいい 0 ばい皮 肉な笑い顔を作ったつもりだったんたろうけど、まるつきり成功し にあったつけ ? ていなかった。負けじと・ほくも言いかえす。 「何度も言うけど、・ほくは君のことが心配だから止めようとしてい るんだ。君はこの採集隊の責任者でもなんでもないんだから、こん「さそかし立派な獣医になることでしようよ」 これがマズかった。宇宙生物解剖学を獣医学と言われることを彼 な危険なことはしなくてもいいんたよ。キャ。フテンや教授のロ車に ー 43

10. SFマガジン 1979年7月号

/ イ第気 連作宇宙叙事詩刈 絵文 萩光 尾瀬 亡月 都龍