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検索対象: SFマガジン 1979年7月号
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1. SFマガジン 1979年7月号

とにかく、ひまなの。部屋のそうじと料理とあとかたづけしたえば、六歳以下か六十歳以上にしか興味がない、という理解できな いやつがいる。そいつの心理は、こんなものだろうか。それに、ど ら、やることがなくなっちゃった。そこでゲームセンターに、し こかでみたような気がする。 びたってたわけね。ひとりでやってたの。 「まえに会ったこと、あるよね」 背後から、だれかがちかづいてくるのがわかった。ゲーム盤に影 おれはいいかげんにいった。 がうつったわけじゃないけど、おれって、そういうことに敏感なん だ。その人物は、どうやら立ってみているらしい。気になってふり「そうね」 。うちの近所にこんなひと、 ハアさんは、もうわらっていない かえった。 六十すぎぐらいの、おばさんた。髪の毛がばらばらで、きたならたかな。ア。ハートのおなじ階は、ほとんどひとり者の男ばっかりだ しい。じゃがいもの袋みたいな上着をきている。ここの従業員だろし。家主のパアさんの友達でもないだろうし。いくらかんがえて も、おれには、赤ん坊とバアさんの知りあいはない。おふくろは四 十代たし、おばあちゃんは死んじゃったし、親戚にもいない。 「勝ってる ? 」 その想いをふりはらおうとして、ゲームを二分ばかりつづけた。 ハアさんは、につこりした。とたんに、顔じゅうが山脈地図みた いいな、とねがった。・ハアさんは、立ち去ろうとはし いなくなれば いになった。なんだ ? なんの用だ ? ない。おれは他人をひどく意識するほうなので、中断せざるをえな 「これ、あげる」 ハアさんは、ポケットから、ゲーム用のメダルを、ひとっかみ出 した。 彼女は、真剣な顔をしている。おもいちがいでなければ、執着と でもいうべき目つきだ。うつ、見染められたのかもしれん。やばい 「あ、すいませんですねー」 なあ。 おれは例のごとく、調子よくうけこたえた。他人にあわせるの 「あの、どうして : : : 」 が、ものすごくうまいんだから。子供のころ、おばあちゃんに「こ おれは、とまどいながらも、たずねた。 の子はタイコ持ちみたいだよ」なんて、いわれたことがある。 「でも、いし 、んですかア ? 」 「ものわすれがはげしいのね」 彼女はだまって、かすかにわらった。くちびるの横に深いえくぼ 彼女は低くやわらかい声でいった。不意におもいだした。レイコ ができた。それが、ゾーツとするほど色つぼいのだ。鳥肌がたつの 以前、ちょっとっきあっていた。おれがはたちで、彼女は三十 、。どういうことだ、これ一歳だった。あれからどうなったのか、おれとしては、かなり心配 がわかった。快感か、不快感かわからなし してた時期があったのだ。 は。老女のえく・ほは、少女のそれより、はるかに効果がある。あ、 しかし、この老女がレイコであるはずはない。よく似てるから、 おれ、じつは変態なのかな。おれの知ってる十九歳の男で、女とい 、 0 3 8

2. SFマガジン 1979年7月号

朝戦るう よのう ⅢⅢ則ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢうう力、 - そ 0 よこヒのをこ . ス・づ - なが の四″だおフペ 具おなと本で三まィて 箋合よんき足あ三えンを なばと 、る答たクあ のないジ昼なえちスき 三だいっロはらるにがら 、がすうか 三そたらの本わいべなに 箋しりい身足たいてずし 、し。をきよ てでいに ま扉、、の起夜の人知、う かつは質間るい 問た資 ひ、チ、た ら、ンジ変本にち格た き、とロ化足答よが 、音ーを三え。あ そをのな三るおるだ れた頭ん答こまかが まて脳とえとえど でての説ろがたうそ 三の、ど明。でちかの ジ錠こしそ、きが エヌ氏の会は純然たる SF ファングループとは違い , 口がかたれ、る真試え 星新一氏のファンクラブです ( もちろんメンパーの多く ーは深らは、はにすに は SF ファンですが ) 。最近では特定作家のファンクラ ですくいな、ず″必 はさ、いに、だ甲要ほ プもどんどん結成されていますが , 一番の老舗にあたり 、れ意だか、三虫がん ます。 たた識ろ のあと 会則によると , 「エヌ氏の会は , 星新一の世界を楽し み , 会員相互の親睦を目的とする」となっていますが , たみ体あた知と 要するに , 星作品を肴にしてワイワイやろうということ 。そたが験るた 識え で , 昨年はエヌ氏の会フェステイバル“星 CON ' 78 ”を 彼れきえでさと 開催し , 星新一氏とともに楽しいひとときを過ごしまし らはのつあさえ た ( 今年も引き続き " 星 CON Ⅱ " を開催する予定で の、めてついて せ、き 眼ほさくたない す。星ファン , 東京に集合 ! ) 。 はかれるに出え をさ 会員の分布が幅広く , 独立心豊かなことも大きな特徴 驚のた知ち来ば 切れ で , 名古屋を中心に , 東京・大阪・松山・福岡・札幌等 箋愕ふよ識が事 った にたうのいをそ でも各々会誌発行・例会開催等 , 独自の活動を繰り広げ てと みりにあなきれ ドこ ています。もちろん , 星新一氏を中心にお互いが堅く結 ひのなまいつは ッろ 東されていることは言うまでもありません。エヌ氏の会 。か重 ら とで は , 星新一ファンは , ひとつなのです。 か甲、のつけい あ れ虫呆膨ぎに記 ふと どうです , あなたも仲間になってみませんか ? ( 信 ) 、の然大かし憶 れう エヌ氏の会の概要 そ戦とさらて喪 だて ①正式名称エヌ氏の会 ( 略称・星新一ファンクラブ ) 箋の士立、つ、失 しい ②代表者林敏夫 / 連絡先〒 454 名古屋市中川区露橋 芸唇″ち異ぎす症 た理 町 57 林静子方③創立昭和 48 年 4 月 / 創立者森輝美 はのす質にべに 解 耋ふ場くさ、てか 林敏夫④会員数 120 名 ( 平均年齢 24 歳 ) ⑤会費年額 し まる合んにあをか そえ 1500 円⑥発行物会誌「ホシヅル通信」 ( 年間 50 頁以上 ) えもで、ざ想っ んな また東京 , 大阪 , 松山にも独立した会誌を発行してい ーた同いジやいて なか る。 じたロかだい ・この欄への応募歓迎 ! 官製葉書に上記の要領でグル そだ ープ概要① ~ ⑥までを明記の上 , 当誌「ファンダム・ス しつは脳の人 なで ポット係」宛お送りください ( 宛先は奥付参照 ) 。抽選 まてた な裡に物 のあ により , 当選グルーフ。には原稿を依頼します。 かに似が だろ ばよた ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ川ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅧⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢい自う Ⅷファンタムスホット エヌ氏の会 いをを 0 を 00 、 99

3. SFマガジン 1979年7月号

( おい、ここはとんでもないところだぞ。おれは間もなくこの呪わ にはもっと見えなかったのた」 れた城をおさらばするつもりだが、そのときにはお前たちもさっさ とここをーーーでないとこの城の石、ひとつひとつが、お前の上にお 「というのはな」 ちてくることになる ) グインは無意識に指と指を交又させてャヌスのまじないをした。 「俺はその願人のおおいかくされた手が、マスクのあわせめをおろ「グイン : レムスはふるえ声でささやいた。 しかけるのを見てしまったのたが 「・ほくたち、これからどうなるのかしら」 マスクの内側には、何ひとっとしてなかったのさ ! 」 「わからん」 「まさか」 グインは、 いくぶん気をとりなおして、 とレムスは叫んだ。 「いや、そうなのだ。俺は目を疑い、呆然とし、手から長剣のおち「とにかく、たしかにこのまま手をつかねて運命を待つのはよくな ことのようだな。たとえどのようななりゆきになってもいいカ の森の、梢のさ てゆくことにさえ気づかすにいた。俺の目はルード きのルト鳥までも見え、下生えと同じ色をした草ヘビでも見わけら、この塔をぬけたし、辺境地帯へ入ってしまうことだ。どのみち そこも妖魅の領土だが、なあ、子ども、この城に巣くっているいま られる。 その俺が何度みても、癩伯爵の首から上には、類でたたれた頭どわしい恐怖よりは、ルードの森のゾンビーのほうが、まだ俺は好き だそ ! 」 たとえそこに宇宙の無限の星々が輝いていたとしても、 ころか 俺はこんなにはふるえなか 0 たたろうさ。マスクのすきまからのそ「でもーーーでもリンダが : : : 」 かれたものは深淵だった。ドールの居場所である地獄そのままな深「それたが、何とかして手たてを考えるさ」 グインは云うと、のこったはちみつ酒を、つ・ほを傾けてのみほ 淵だった。わすかにかいま見ただけたったが、そのすきまから吹き し、改めて毛皮をかぶって丸くなった。 つけるなんともいえぬなまぬるい風がいとわしく俺の肌にとどき、 俺の鼻孔は耐えがたいまでに強まってきた、かびくさいようないま「モンゴールの妖怪のことは、考えてもしかたのないものなら考え ずにおこう。やがて、なるようになるたろうからな」 わしい匂いをかいだ。 そう結論して、力をたくわえるために目をとじ、眠ろうとする。 しったい、モンゴールの願伯爵ヴァーノンとは、何物なのた ? 」 レムスはうすくまったままそれを見つめていた。彼の目には暗い グインとレムスは黙りこんで顔をみあわせた。二人の頭に、まる で今夜の明けぬうちに砦をぬけ出さなくては生命にかかわること不安な想念が燃え、彼はやがて豹頭の戦士が静かに眠りこんでしま を、知ってでもいるかのようにあわてて脱走していったヴァラキアってからも、その姿勢をくすすことができなかった。 の戦士、イシトヴァーンのことばが期せすして同時にうかんた。 2 ー 2

4. SFマガジン 1979年7月号

伊藤この。ハターンでみんなが書きだせば ったわけです。それと、最近、同人雑誌を 眉村こんなのが五、六十篇来たらどうで りつばなもんでね。 ( 笑 ) 見ているときわめて陳腐な会話を読まされ す。 るから、せめてこの程度の会話は意識して 小松このパターンでいいんだとかさ。そ伊藤いや、すばらしい くれということです。 れからあの作品は選ばれたのにこういう穴 小松「狐と踊れ」はどうする。 小松「昨日に加えて一日」というのは、 があるとか、リアクションはどうせあるよ伊藤・ほくはフニヤフニヤした印象があっ ね。 て、下読みの段階でという評価がついて惜しいところなんだな、ある意味では。入 眉村いろいろなタイプがあったなかできたけど、それほどには喜べなかった。た選作はいいとして、佳作を選出するかどう の、作品としてのできのよしあしで決めた だ、非常に変な小説で、それなりにおもしか、大問題なんだ。十二歳は参考作とし て、いちおうさわってみるというのはいし んだな、ということをはっきりしておかなろくはある。 かもしれない。 小松眉村さん、ひとっ弁護論を。 ければね。この。ハターンを推奨するもので 眉村弁護論というのは、最初にいったと編集部これは、そうした扱いをしたいと は毛頭ない 思います。 おり、社会構成がいい加減であるから、 り松でも、このパターンがいちばんいい 小松このなかで将来性があるかもしれな い加減なムードが流れていて、ある意味で よ。「狐と踊れ」よりも「花狩人」のほう いなと思ったのは、「昨日に加えて一日」。 整合性があったということですな。それで これはうまくなってくるとおもしろいだろ ・ハッと点がよくなったけれども、 一つ A 」田一つ . 。 いろいろ突っ込んで考えると、そ れがもし全力を挙げてやわな部分伊藤バランスがよくとれている。 ノランスとれてる。それと、「ドー 書いたんだったら、これはガタッ ソンヴィル伯爵夫人 : : : 」だ。 氏と評価がさがりますな。もう一つ 震、・夫弁護論をいうならば、胃がとび出伊藤この人は悪すれしているような気が したり、ああいうところの変チクする。 小松浅利知輝ちゃんが第二の、新井素子 リンなシーンというのは、で になるかどうかだな。 なければでてこないシーンがちょ 、ちょい見えたということで、部眉村その十二歳の人の、努力賞とか奨励 分的に、対外的に一つのアビール賞とか、名目つけるんでしよう。佳作を入 7 ができるであろうということもあれるとしたら、佳作の本数だって適当に考 守、 0

5. SFマガジン 1979年7月号

たて、スタフォロス城の守護兵たちはかぶとをかしげてうつむいて 2 歩いた。 「おい、気をつけろ」 なみはずれて長身のグインが、通路の上からのしかかってくるよ そして、再び、彼のうしろで重々しい音をたてて牢舎の錠がおり うな低い天井に頭をぶつけそうになると、彼の左を歩いていた兵士たのだった。 が低い声で注意してくれた。グインはそっとそちらを見やり、その グインは肩をひとっすくめると、石の扉に背をつけて立ったまま 親切な男が、腰の鞘に剣の人っておらぬことと、かぶとの下からの戻ってきた獄舎のなかを見まわした。。 ( ロの王子は向うをむいて、 そくモンゴール人特有の青い目とまだ若々しい顔とから、さきに剣毛皮にくるまって寝台の上にまるくなっていたが、戸口でおこった を投げて彼を救ってくれたトーラスのオロにほかならぬことに気が物音にはっとはねおきて戦士を見、あわてて何か叫び出そうとし ついた。 た。しかし彼のうしろに黒騎士隊の姿を見ると何も云わす、寝台を グインがそれに気づいたことを悟った為だろう、オロははにかんおりると、かけよってグインにすがりついた。 グインはそのほっそりした腕にしがみつかれたまま安心させるよ だふうをし、驚嘆のまなざしで豹頭を眺めた。 うにうなすいてみせた。戦いのあとで弱ってもいたし、空腹で疲れ 「あんたは凄い戦士だ」 はてていたが、その少年の銀色の絹糸のような、なめらかな髪を傷 彼は先頭をゆく隊長にはききとれぬような声でささやいた。 だらけの手でなでてやっていると心がなごんだ。 「あんたを見殺しにしたら、おれは長剣を腰に帯びる資格などはな 「帰ってきたんだね、グイン」 かったろうよ。あんたと戦わされすにすんで、おれは心からよかっ ふるえ声でレムスはささやき、うしろで戸がしまるのを見守っ たと思っているよ」 隊長がふりむいたのでオロは黙りこんだ。グインも口をひらか 「ぼくとても心細かったよ。グインが殺されてしまったらどうしょ ず、一行は長い石段をようやくぬけたときには心から安堵の息をつ うかと思って」 いて新鮮な夜気を思うさま吸いこんたのだった。 グインは黙ったままたった。機械的に歩いてはいたけれども、そ「心配するな。俺は生きている」 の豹のまなざしはかげり、何かしらいとわしい思いっきの萌芽を隠グインは笑った。 しているように見えた。だが彼の丸い、毛皮に包まれた頭の中でど「このぐらいのことでどうにもなるものか。それよりも食物があっ のような奇怪な疑念がきざしているのかは誰にも知られぬまま、一たらくれ。それと酒があったら」 「ええ、グイン」 行はこんどは地上を通って、改めて白い塔へと人っていき、せまい 段々を足音を反響させながらの・ほっていった。 あわてて少年は卓子に行って、食物ののこりとっ・ほをもってき 209

6. SFマガジン 1979年7月号

たら、ずっと高層の方にかかるらしいレンズのような形のやつを何鹿、もうちょっと他にやりようは : 回か見たぐらいで、雨を降らしそうなのを見たことがない。こんな ここまで考えかけて、・ほくは立ち上がった。川の中を彼女 0 ( ケ に植物が育っているのだから、雨が降らない筈はないのだが。まナメってのは性はあるのだろうか ? ) がやってきたからだ。水の中 あ、あちこちを流れている小川の水はいっこうに減る様子もないかを歩いてくるアキコの姿を見て、ぼくはまた自分の考えがかなりね ら、植物は別に構わないのだろうけど。 じ曲がっていたのに気付いた。いつもあなたは自分に都合のいいよ 植物といえば、菜の花に似たこの草はもうぼくの背丈を超すぐらうに考えている、とよくアキコに非難されたものだった。 いに成長している。どこまで大きくなって、どんな花を咲かせるの 「おはよう」 だろう。それとも花なんかつけないのたろうか ? そばまでやってきた彼女にあいさっする。彼女は笑顔で応えて、 水汲み場まで草の中を行って、そこから川に沿って流れを下る。すぐに不思議そうな表情をする。 少し歩くと、丈の低い、細い葉の草が生え茂っている広い場所に出「どうしてぼくがこんな所に来てるのかわかるかい ? 」 る。ところどころに銀杏に似た木が立っている。木の表皮は柔らか彼女、小きざみに顎を震わせて否定。 くて、爪で削り取ると肉桂のような良い匂いがする。 「気分がいいから遠出をしたくなったんだ。日が沈む方向にある森 その草原を通り抜けると川は大きな流れに合流する。広くて浅いまで行ってみたいんだけど、案内してくれるかい ? 」 川・こ。日底は小指の先ほどの白い砂利に覆われている。 心もち頭をふり上げておいて、ゆっくり降ろす得意のうなずき ・ほくは川辺りに腰を降ろした。ぶケナメはこの川の中に住んでい方。笑顔。でも、これでバケナメが受け合ってくれたわけにはなら るのた。あいつはまた水の中から出てきていなかった。アキコの姿よい。反応はぼくの思った通りにするのだから、うなずいたからっ になった時は、・ほくがやってきたルートを通って来るから、行き違て当てにはできないのだ。 いになる筈はない。 でも彼女は自分から先に立って歩き始めた。どうやら大丈夫だ な、と・ほくは思った。 ぼくはキラキラ光る水の流れを見ながら考えた。魂なんてものが あるとは思えないけれど、ひょっとしたら・ハケナメが化けるのは、 森までの道の途中、彼女がたびたび立ち止まるのにぼくは気付い アキコの魂が・ほくを慰めに来ているんじゃないだろうか。確かにあた。よく見ていると、そういう時は決まって、近くの石の上や、草 いつのおかげでぼくの島流し生活には随分張りができた。そりゃあの葉のかげに灰色のトカゲに似た動物がいるのだ。バケナメは身体 本物のアキコと居るようこよ 冫 ( いかない。第一、二人で一緒にやる一をこわばらせて、動物の方へ飛びかかるのをじっと我慢しているよ ハケナメのアキコはただに まくのまわりをうに見えた。ははあ、あれはきっと・ハケナメの好物なんだな、と・ほ 番楽しいことはできない ウロチョロしているたけで、こっちが話しかけたりした時に、身振くは悟った。アキコの格好をして、しかも・ほくがいるところでは、 冫。しかないと思っているのだろう。 りで反応するたけた。それもぼくが思った通りのやり方で。あの馬飛びかかって食うわけこよ、

7. SFマガジン 1979年7月号

きたない夜がおりてくる。 っしょにきいた。内容はむしろ、恋というより情事とかゲームとか わたしはカネをはらって。そこをでた。まがりくねった坂道のと 自由恋愛とかいうものにちかい。男がなんの罪悪感もなしに「心か ちゅうの安アパートが、いまのわたしの棲み家だ。玄関で靴をぬぐ るく涙うかべて」女の子をだましちゃうはなしなのだ。 と、底に穴があいてるのがわかった。だから足がよごれるのか。 事故は、おこらなかった。 わたしは夕方までにタ ' ( = を二箱すい、なんにもしないで音楽だ部屋は、乱雑なんてもんじやアない。四カ月まえにそうじしただ けをきいていた。目がしょ・ほしょ・ほする。タ・ ( 「のすいすぎか、年けだから。ターミナルのクズカゴからひろ 0 た雑誌が、ちらば 0 て いる。照明といえば、天井から二重の円になった螢光灯がさがって をとりすぎたのか。手の甲で涙をふきながら、地下鉄にのってその いるだけだ。壁照明なんてものはない。あかりは、つけたまま外出 レベルをでた。 しばらくあるくと、谷間だ。きたない店や屋台がならんでいる。する。夜ひとりでかえってくるのは、さびしいから。もうひとつの カ理由は、暗いなかでこの部屋にはいったら、かならずなにかにつま そのうちのひとつにはいった。おやじが無愛想にこっちをみた。・、 ずくか、踏むかするたろうから。 たっく木の椅子にすわって、わたしは注文した。 服をぬぐと、おなかの横しわがたれさがっているのがみえる。し となりには、わかい男がふたりならんでいた。あのゲームセンタ ーにくるようなタイプとはまったくちがう。あそこにくる男の子たわは何本もある。指でつまんでみる。気持ちわるい。つみかさねた ちは、髪を部分染めにしたり、ラメのテープをまいたり、生き物とふとんの端みたいだ。自分のからたが、こんなに気色わるいとはお いうよりお人形だ。ここにいるふたりは汗くさい。ひたいにしわをもわなかった。 、。まんとうにこ 急激に年をとりすぎたせいで、まだ慣れていなし よせている。 れがわたしなのか、とうたがってしまう。あきらめきれないでいる 「あそこは警備がうすいんだよ」 わけだ。 びとりがしゃべっている。アルコール・、はいっているらしい。 「四、五台やったらすぐずらかるんた。五分とかからねえ」 三回めの離婚をして、半年たったころだった。わたしは、ジャズ 「しかし、セコいな。自動販売機をねらうなんてよ」 喫茶でアル・ ( イトをしていた。一日おきに、昼から夜の十一時まで 「身入りはけっこうあるぜ」 はたらく。その仕事は、はじめたばかりだった。 「このかっこうじゃあな。目立ってしようがないよ」 「簡単だよ。頭をへんな形に切って、ズ・ホンのすそにリ・ホンっけり「あなたのあいつ、なにしてるかな」 ママが自分のグラスに、チンザノをそそいだ。だれのことをいっ 「おれ、もう三週間も、おんなじズ・ホンはいてんたよ。よごれてきてるんだろう。 「しかし、よくもまあ、つぎつぎと結婚するのかね。ほかに能がな たよ」 5 8

8. SFマガジン 1979年7月号

感じたな。 なるものがあり、危険に身をさらすほど、 ぐらいで。ハッと読まされて、どこかの雑誌 小松たけど筒井さんの「大いなる助走」 に載ったら、あ、わりに新鮮なやつがある死への蓋然性はその分回避されるという定 という気はするでしよう。話自体はよくあ説も、その一つなのである」というところみると、会話のなかで、しゃべっているや つが気が狂いだすとものすごい文章が出て るやつだと思ってもね。さて、次いきますなんだ。 くるな。句読点なしでつな恭っちゃう。あ 小松行動心理学のナラティヴみたいのが か。「昨日に加えて一日」・ 編集部ウラシマ効果を前提にした宇宙航ずいぶんでてきたな、この人、やってるのれはあれで一種のテク = ックなんだろう よ。 よ。 行時代が背景になって、宇宙航行から帰っ た男が二十四時間以内に死ぬ可能性を持っ眉村をずいぶん読んでいて、あちこ伊藤様式化されているから。 眉村これは、昔小松さんに言われたけ ちひつ。はってきているんたけど、もう一 ているという話でしたが。 ど、・ほくはこれ見ていると、自分の若いこ 伊藤これは十九歳にしてはキチッとして発、この人だけというようなものがほしい ろを思い出すんだ。つまり、こういう書き という気がするな。 いると思うんですよ。 方、メリハリが足りないんですよ、完全 小松主人公の帰るのを待っていた恋人が伊藤そういうことでしようね。 をつけて、パッ。ハッと に。これでメリハリ 、点よとれる、ということで : 冷凍室から消えちゃって : : : 最後はどうな眉寸 アクションを行動的に入れて、ス。ヒードっ るんだ ? 伊藤地の文は快調でいいんですよ。で いたらそれ相応に読めるでしようね : も、会話が陳腐たな。 伊藤主人公が二十四時間ちょうどたった 小松そうだ。 ところで死んじゃうわけ。これは二十四時眉村そういえば、この話は感情的表現と 眉村そのへんは、もうちょっとなんべん か戯曲的な会話というのはなかったなあ。 間以内のどの瞬間にも死ぬ可能性があると も書いてなれてくるよりしようがない いうところはいいんだけど、一日がどんどぜんぶ状況の説明とか、会話でなくてもい 小松スタジオぬえの女の子とつぎ合うべ けるやつでね。ドキッとするようなうまさ ん過ぎていって結末近くに来ても死なない きだ、芽理という子。 ( 笑 ) 芽理をハリと となると、読者は当然、最後の瞬間に死ぬみたいなものはなかった・ような気がする。 ばせばいし ( 笑 ) んだろうと考える。だから、あたりまえす会話を書いてて、あとではっと気がつくん だけど、地の文章を読んでればわかること眉村いちおう、それなりの線には来てい ぎて、何をいいたかったのかよくわからな るとしても : でも、しやべって通じるかどうかわからな い言葉ってあるでしよう。会話の場合、そ伊藤そうですね、ひらめきがもうちょっ 編集部設定がよくのみこめませんね。 とほしいな。 ういった、のは一応忌避しなければいけな 伊藤・ほくが好きなのは、「特別措置下に いけれども、その ~ へんはあくまで視覚的な眉村これはもう少し芝居とか映画をたく ある人間の行動体系は、常人のそれとは異

9. SFマガジン 1979年7月号

女は一番嫌 0 ていた。も 0 とも、嫌がることを知 0 ていたからぼく奴もいるぐらいで、しよっちゅういろんな人とやり合 0 てきたけ も口に出したんだけど。とにかく彼女は、その言葉を聞くなり、握れど、あれほどの大爆発を起こしたことはない。あの時のぼくの脳 4 「ていた通風管を押し放して自分の船室へ飛んで帰「てしま「た。波をとれば、き 0 と太陽フレアーのように強力な放射線が観測され どうせ枕がぐしょぐしょになるまで泣くんたろうな。そう思うと・ほ たんじゃないだろうか。二丁のレーザー・ガンを持ってサルト 1 ナ くは、早くも後悔の嵐の中〈投げ出されるのだ 0 た。何度もくり返の納められている標本庫〈なぐりこみ、アキ = を噛みつぶした一メ されてきた・ほくとアキコの喧嘩。でも、これが最後の暄嘩になると ートル半もある醜いアゴをはじめ、さも重傷であるかのように見せ 。思いもしなかった。 かけていた神経剥き出しの後肢、ステンレス・スチールほどの固さ 六時間後、勤務を終えて自分の船室に帰ると、ドアの前でアキ「のある翅など、目につくすべての部分を焦がし、切断して、八メー が待っていた。・ほくも彼女もさっきの喧嘩のことはひと言も言わな トルはあった・ハッタのお化けをいつでも肉屋の店先へ並べられるぐ い。これが・ほくらの流儀なのた。 らいに切り刻んだ。ついでに今回の採集旅行の獲物のほとんどを殺 「中に人らないか ? 」と言うと、アキコは」目を振るというよりは、 し、標本庫の内装も、一部は外壁に達するくらいに、破壊した。そ アゴの先を小さく震わすといった感じで否定の身振りをした。 れから船首にある船長室へ飛び込んでいって、キャ。フテンを半殺し 「そう : : : 」とぼく。 にしてやろうと殴りかかったところを取り押さえられた。 アキコは一度大きく背筋を伸ばすと、胸の前で腕組みをし、それ ミ / ムシのように縛りあげられて閉じ込められた倉庫の中で、ぼ から、ゆ「くりと・ほくの目を見すえた。生意気たけど、優しさに溢くは船長や教授を呪 0 た。あの年寄り共が自分の手柄のことばかり れた眼差し。 を考えてアキコを殺したのだ。奴らには人間の命と標本の命のどち ・ほくは小さく壁を蹴るとアキコの前に票、、 ほぼ直角の角度を保らが大切なのか、まるでわか「ちゃいないのだ。ああい 0 た手合い ったままキスをした。 , 彼女は組んでいた腕をほどいて・ほくの背中に のためにこれまでどれたけの犠牲者が出てきたろう ? 他の犠牲者 まわし、・ほく達は平行になっこ。 のことはともかく、アキコを殺したことたけは許さない。 唇を離すと彼女は小さな声で「 ( カモノメ」と言い、彼女の頭をため ? へつ、学問なんか全部まとめて・フラック・ホールへ投げこ 押さえていたぼくの手を振りほどいた。そして、軽く・ほくの肩を押んでしまえ。銀河系の歴史を知る ? 銀河系なんかかきまぜてミル して身体の向きを変えると研究室の方〈飛んで行「た。ぼくはドアク・セーキにしちまえばいいんだ。人類の進歩のため ? 人一人の のノブにま「て、遠去か「てゆく彼女のひ 0 つめ編みにした頭を命を救うこともできないのに何が進歩た。シリウスでもホー「ル ( 見ていた。 ウトでも、突然超新星になってみんなぶっ飛んでしまえばいい。ほ くは本当にそう思った。 もともとそうおとなしい方しゃない。 毒づき疲れて眠っていた・ほくは、三人の仲間達に引き連れられて 『パルサ ー・シン』と呼ぶ

10. SFマガジン 1979年7月号

河を泳ぎわたってきた。それらはそれまでも事あるごとにそうしてさしのばされるとケスの河面はま昼のように明るくなり、崖の下の 辺境をおかす中原の先兵をせめるべくやって来ようとしたのだが、 セム人たちはまるで毒トカゲのように平たくなってあぶら汗を流し これまでのところそれは功を奏していたとはいえない。なぜなら ば、ケス河がかれらの退路を阻んでおり、 いったん河をおし渡って だがヤーンは結局のところセム族に肩入れをするつもりだったー きたかれらは河のこちら側で分断されるとなすすべなく数でまさる ー松明の火だけであったら、ほどもなく歩哨のたれかが襲撃者に気 砦の守護兵にたいらげられるほかはなかったからだ。 づいたかもしれないが、城ではやがて夜明け前の寒気に対抗しよう だがその夜ふけ、河をあとからあとからおし渡ってくる黒い小さと松明ののこりをあつめて天も焦すばかりなかがり火をたきはじ な頭は、かってないほどの数にのぼった。それは音ひとったてずにめ、 ひたすら河を渡っては森に走りこみ、ルードの森のやけのこった部「夜が明けたらケス河にポートを出すぞ」 分と、タロスの森とをくまなく埋めつくした。しかもなお、黒い頭「だがもちろんもう脱走兵は死んでいるだろうに」 は増えつづけるのだった。 「かまわん、死体を確認しろとの伯爵のご命令だ」 さしもの大部隊が夜明けを前にして河をようやく渡りおえるかお声高に話しながらみなかがり火の周辺にあつまって夜明けを待ち えないかのうちたった。にわかに城のあちこちに灯りがっき、壁のはしめた。かがり火は砦を昼のように明るくし、天を赤く照らし出 しーーその火のかげで、ルード の森やタロスの森々、それにケスの 内がさわがしくなった。 。いよいよその暗さを増して、セムの大部隊をのみこん セムの族長たちはあおざめた。伝令が激しくとびかい、甲高いさ暗い流れよ、 だまま黒々と闇に沈みこんでしまったのである。 えするような声がかわされた。たが、 しかしセムの族長たちは、この予期せぬなりゆきに一瞬はとまど 「ヴァラキアの傭兵が逃げたそ ! 」 ったものの、かれらの最大の味方が夜闇であり、夜が明けおおせて 「塔からケス河の流れに身を投じたのた」 そう、城内で叫びかわしていることに気づくと、またすぐにかれしまえば戦いは七割方、砦がわに有利になることをよくわきまえて いた。族長たちは音もなくよせあつまって小声で相談してから、さ らは動揺をおさめて、それそれの部隊に伝令をとばし、断崖の下に っと散ってゆき、自らのひきいる蛮族たちに命令を下した。 はりついているものはいっそう身をちちめ、森にひそんだものはい セムの長の手の、ウマの尾の鞭が打ちふられたー っそう息をひそめて、城内がもとどおり静まるのを待ちうけた。 たちまち、小さくすばしこい蛮族たちの一隊が、ケス河に面する だがしかし、この夜、百の耳とただひとつの目をもっ老いた運命 の神ャーンは、とびきり皮肉な心持ちでいたのにちがいない。まも城壁をサルのようにすばやくのぼりはじめた。同時に森にひそむ部 なく城中でひとしきりざわめきがおこり、やがてケス河に面した城隊は音もなく砦までの間合いをつめた。 壁という城壁に、数知れぬ松明が運ばれた。それが河の上にむけて城内ではたき火をかこんで果実酒、はちみつ酒の皮袋がまわさ おさ 225