「操機員 ! どうしたの ? 工務員。そこにいるの ? 二人とも。 光源が床にすえつけたようにかがやいていた。 答えなさい」 通路をふさいでいた壁は半分ほど焼き切られていた。 リトをハラの投光器が、その奥の暗黒をまさぐった。 無線電話は永劫の沈黙を送りつづけるばかりだった。 その光の中に、何か動いたような気がした。 「監督官。今の聞いた ? 」 ふりかえると、宇宙帽の中の、死人のようなアビアの顔が、黙っ リトル・ハラは、焼き切られた部分を押し開いて、壁の向う側へ出 てうなすいた。 アビアが何かさけんだ。 「監督官。武器をもっているわね」 アビアは震える手を腰の熱線銃に当てた。 リトル・ハラの宇宙帽の側面すれすれに、アビアの発射した光条が 「いつでも発射できるように構えているのよ。安全装置をはずし走った。 「あぶないー て。私を援護するのよ」 アビアはこのようなことは全く経験がないらしい リトル・ハラは跳びのいた。 リトル・ハラの背後を援護するどころか、びったりうしろについて 通路の奥の天井が、光条を吸いつけ、そこに紫色の火柱が立ち上 くる。かれの右手の熱線銃がひどく危険だ。 アビア」 「少し離れて。少し離れて ! それじゃ何かあったとき、二人とも「やめなさいー・ リトル・ハラは床に伏してさけんだ。 自由がきかないじゃないの」 リトルバラはじやけんにアビアをうしろへ押し下げた。 通路の天井が灼熱してなたれ落ちた。 その火光の中に何かが動いていた。 船内通路を来たときとは反対の方向にもどる。 宇宙服の腕にとりつけた環境探察装置がオレンヂ色の灯をとも アビアはふいにリトル・ハラに向って走り寄ってきた。熱線銃の銃 した。警告をイアホーンに切りかえた。 口がリトル・ハラの顔面をねらっていた。 : 空間ニ徴細ナ物体ガ浮遊シティル。直径約三ミクロン。一立 リトル・ハラは床をころがった。 方メートル二六個テイド。人体ニハ無害。クリカエス : アビアはその リトル・ハラの体を跳びこえ、通路をかけもどろうと リトルラは影のように進んた。 した。 そのうしろを、アビアが呼吸も荒く、足をもつれさせるようにつ そこに、奇妙なものが横たわっていた。 いていった。 アビアとからみ合い、ひとつになって回廊いつばいに膨れ上っ ェシュティとハミに、作業を命じておいた船内通路へ入った。 通路の天井に、二個の光環が静止していた。 リトル・ハラは腰の信号拳銃を抜くと、引金を引いた。 こ 0 0 3
それを途中で通行止めにしたのでは、いざという時に、船内の通 あとの二冊は見つからなかった。 「しかたがない。行きましよう。乗組員を見つけること。故障の原路が使えなくなってしまう。 。いいわね」 通路をもどってエレベーターを探した。 因を発見すること。絶対に単独行動をとらないこと 投光器の光の中に、エレベーターのトンネルが暗黒のロを開いて 五人は船橋を出た。 「医務室へ行ってみましよう」 内壁に垂直のラッタルが設けられていた。 考えられる所はそこたった。 リトル。ハラはトンネルに体を入れ、ラッタルをつかんだ。 アビアが投光器の下で船内見取図を指でたどった。 「調査員。上からケージが落ちてこないだろうな」 「この先を右へ曲って、最初のドアを入った奥です」 「動力が全部止っているのを忘れたの」 通路の壁には、点々と非常灯がともなっていた。 五人は必死に手足を動かした。 アビアがふと立ち止り、首をかしげた。 リト化ハラの放った光の環が、顔の前であかるくかがやいた。手 「調査員。右へ曲る通路がありません」 をのばしてみると、トンネルはそこで終っていた。 前方をうかがい、背後をふりかえった。 エレベーターをふさぐどんな理由があったのだろうか。 「もっと先じゃないの ? 」 「いや。非常灯の数からいって、ここです」 「調査員。もう引き上げましよう。この船のやつら、頭がどうかし ちまったんだ。これ以上、調べたってしようがねえ」 アビアは見取図を投光器の落す光の環の中にかざした。 ェシュティが体を震わせた。 見取図に記された通路はなかった。 「修理でもしたのだろう。行こう。道草を食ってはいられないぜ」 「調査員。この船はこのまま船団で責任を持って連んでゆく。《カ ェシュティがみなをうながし、さらに前進を開始した。 ランコ工》へ置いてゆくから、そこで調べたらどうかね ? その 「おい。行きどまりた ! 」 方が時間も道具もそろっているたろう」 アビアがおすおずときりだした。 二十メートルほど進んたところで通路は壁で行き止りになってい 「ここだって時間も道具もそろっているわよ。それに人手も」 リトをハラは一人一人の顔を指した。 「こんなはずはない。主要通路を壁でふさぐなんてそんな修理をす アビアはそっぱを向いた。 るわけがないだろう」 元の場所へもどって、さらに進むと、非常階段があった。 アスティスが言いつのった。主要通路は、強固な縦通材の役目も その階段の下に、最初の死体があった。 し、また完全な気密構造たから非常の場合には強固な避難場所とも ス・ヘース・スーツ なる。 完全装備の宇宙服の中でミイラになっていた。 5 2
乗組員全員のその日の、体温。脈搏。血液中塩分濃度・たん白質「ああ。もどしそうだ」 ・白血球数。代謝調節装置の点検。反射神経反応度。脳波診断。呼「しつかりしなさい」 吸器管神経電流。その他、百項目にもおよぶ測定と点検の尨大な数「何かわかったか」 「たしかめてみたいことがあるの」 字と記号の羅列が流れ出した。 リトル、、ハラは回廊へもどった。 一分が過ぎた。医療用コンビ、ーターの報告には何の異常もあら ・クレーン巣作コンソールというのはど 「ェシュティ。第三ヘビー われない。 こにあるの ? 」 二分が過ぎた。異常なし。 「船首に近い第一船倉だと思います」 三分以上、アビアを仮死状態にしておくことは危険だった。 作業甲板の通路を、船首の方向へ進んだ。 二分三十秒が過ぎた。 「調査員。通路が閉鎖されています」 と ? せん、ディスプレイの数字の流れが変った。 ・三 leo 甲板員ョゼッキ。原因不明の神経性通路は、壁や床や天井と同じシリコン材で密閉されていた。ボル トも全くないし、溶接の跡もない。床や天井と完全に一体になって 発作。体温四一・二度 0 。脈搏一、 ノノ。メタボライザーの故障にあ らず。〇四・一五。ョゼッキ。死亡》 「幻覚ではなかったんだ」 ・ : 三一九〇七・二五。操機員ブルガ。死亡。神経性発作。 心臓停止。原因不明》 「でも調査員。こんな壁をなんで作ったんだろう ? 乗組員が知ら 《ョゼッキは発作前に幻覚をうったえていた》 ないというのも妙じゃないか」 「そんなことがあるものか。乗組員は知っていたんだよ。それを忘 《宙航士タス。幻覚をうったえる。船内通路が閉じられていると一「ロ れたんた」 う。神経安定剤を投与する》 《機関士ハ ー。幻覚をうったえる。第三ヘビー ・クレーン操作「そんな大事なことを忘れるものか」 コンソールが二基あるとうったえる。神経安定剤投与。心不全をと通路を閉鎖する必要があって閉鎖したものなら、乗組員たちがそ もなう。急速に悪化する》 れを忘れているわけがない。何かの理由で一部の乗組員が知らない 「調査員。なんでしよう ? これは」 うちに通路が閉鎖されたということはありえないだろう。これだけ たんねんな工作がほどこされているのだ。相当時間もかかったに違 スクリーンをのそきこんでいたアビアたちが顔を見合わせた。 リトル・ハラはスクリーンを消した。 電源をアビアにもどした。 不安と混乱が乗組員の神経を狂わせ、とっぜんの死にいたらしめ アビアは大きく息を吸いこみ、ひたいを押えてうずくまった。 たのであろう。かれらが体験した恐怖の実態が、今なお船内の暗黒 メタライザ チェック 8 っ 4
リトル・ハラは制した。 ハミが引き起そうとするのを、 「でも、最初からあったのでないことははっきりしているじゃない 「触るな。危険だ」 か。なぜこんなものを作ったんたろう。調査員こいつはただごとし 装備はすべてまだ作動していた。外傷はないようだった。 ゃないよ」 未知のビールスの可能性もある。 ハミは逃げ腰になっている。 非常階段を上ると、作業用の全通甲板がのびていた。 リトルバラは黙って、山形にもち上った作業甲板通路をこえてい そこにまた乗組員の死体がころがっていた。 った。四人はのろのろとついてきた。 な・せか宇宙帽を脱ごうとしたらしく、宇宙服の肩口から半分はずようやく医務室にたどり着いた。 マスク れた・ハ・フルが、顔面部を背後に回していた。 病棟の二段べッドはほとんど使われていた。 ・ハ・フルの内部に死体からの噴出物がいつばいにつまっていた。 死体は二十二個を数えた。これまでの三体を入れて、まだ四体あ 作業甲板の下に、球形の気密船倉が巨大なポールをならべたようるはすだ。それとも、どこかで生きているのだろうか。 につらなっていた。 リト化ハラは医療用コンビューターの電源コードを引き出した。 「監督官。本船の積荷は ? 」 「監督官。三分間ほど眠っていてください」 「粗成液化石炭二十五万ガロンです」 「眠る ? どういうことだね」 「乗組員が完全装備だけれども、それと何か関係があるの ? 」 「あなたの代謝調節装置のエネルギー発生装置を借りたいの。この 「気密船倉だけでなく、利用荷重部全体を真空状態にしているので医療用コンビーターのデーターを読みたいんです」 す。惑星パラディン産の液化石炭は非常に酸化しやすいので」 アビアは意味不明の言葉を発して尻ごみした。 作業甲板に三個目の死体が横たわっていた。 「命令です。監督官」 「見ろ ! あれを」 リトル・ハラはアビアの背のメタボライザーのコントロール・シス ェシュティがさけんだ。 テムに手をのばした。 作業甲板通路が下から大きく突き上げられ、山形に折れている。 すばやく二個のスイッチを押し、別な二個のタン・フラーを引い 下をのそきこんだ五人は思わすハンドレールを握りしめた。 ならんた球形タンクの上に、もうひとつ、同じ大きさの球形タン それからゆっくりと、、ハリエーション・オームを回した。 クが乗っている。 アビアはすでに石のように硬くなっていた。動力源である核分裂 「こんな所にタンクを増設するわけがない。あとから作ったから作電池からの電路を・に切り換え、補助電路を接続コ】 業甲板がもち上げられて折れたんだ」 ドに使って医療用コンビューターにつないた。 アビアが船内見取図をたたいた。 データーがディス。フレイされてきた。 メダライザ 6 2
にひそんでいる。 ガラスの砕け散ったうつろな窓から内部をのそきこんだ。 それを見つけ出し、白日のもとにさらけ出すのが、リトル・ハラの 任務だった。 巨大なコンソールが積み重なっていた。 「操機長と工務員は通路をさえぎっているこの壁を切り取って本船操作用コンソールが一台しか入らない場所に二台入れるのだか へ運ぶ用意をしてください。その前に材質を調べること。船内搬入ら、ハウスがつぶれてしまうのは当り前だ。 リトル・ハラは、四方へ膨張したように引き裂けているハウスの中 についての一般的な検査はとくに念入りにやってください。ビニー ル・コーティングをしてェア・ロックに運んでくたさい」 へもぐりこんだ。 「メーザーで焼切ることができるかな ? 」 調べるまでもなく、上に乗っている方があとから搬入されたもの ウスのとびらはコンソールを運びこむことができるほ 「フェリーに大容量メーザーがあるはすです」 / ノ、刀ノ 「おれたちは何をすればいいんた ? ど幅は広くない。もとの一台は、ここに組立てすえつけを終ってか アビアが不安そうに周囲に視線をめぐらせた。 ら、あとでハウスを造ったものであろう。 「来て ! 」 どうやって、もう一台をここへ運びこんだのたろうか ? ハミたちが心細そうに見送っていた。 これを目にしたクレーン操作員は、自分の理性に自信を失ったの リトルバラはアビアをせきたて、迷路のような船内通路を、行っ は無理もない。 たりもどったりして進んだ。 リトル、、ハラはデッキに立った。壮大な洞くつのような船倉の、対 第一船倉へ入った。船倉の床には数十本の鋼材らしい長大な円柱岸の絶壁にかけられた作業甲板が、球形タンクに突き上げられて山 が横たえられているだけだった。 形にせり上っているのが遠い光環の中にお・ほろに浮き上っていた。 ヘビー・クレーンの腕が、船倉の広大な空間に長く突出していた。 永遠の暗黒と静寂がひろがっていた。 その基台の下にクレーンの操作室があった。 したいここで何があったのだろうか ? そのとき、とっ・せん、イアホーンから絶叫が飛び出した。 管制塔の監視室のようなハウスが船倉の空間の上へ張り出してい 「調査員 ! あれはなんだ ! 」 その側面が大きく膨らみ、その中央が裂けて、機器の一部がのそ「たいへんだ。たすけてくれー 「早く ! 」 いている。 ェシュティとハミの悲鳴が交錯した。 エレベーターに沿ってのびているラッタルを伝って操作室のデッ 9 キへはい上った。 ィアホーンの奥底に、泣き声とも笑い声ともっかぬ声がはしけ、 っ ~ 操作室は爆弾の直撃をこうむったように大きくゆがみ、引裂けてふつつりと断たれた。
出るっていう話、聞いたことがあったわ」 ほんのかすかな震動も、回転のリズムも、乗組員の存在している 気配も全く感じられなかった。 「それですよ。それ」 「調査員。やめましようよ」 この船は死減していた。 いそいで ! 」 確実な死がこの船を占拠していた。 工務員のハミは、ふてくされるだけふてくされて、メーザー切断その死へ向って、五人は一歩一歩近づいていった。 器を組立てた。 三十メートルほど進んだところにラッタルがあった。 それをフェリー・ホートの原子力ュニットに結びつけた。 五人は一列になって上った。 プリッジ 二分後、 ( ッチの外鈑が溶融した。 ェシュティが言ったとおり、上層に船橋があった。 五分後、ハッチの二重ドアがすつぼりと焼け切れた。ドアはひる航法用コンビューターも、三系統通信システムも、すべてエネル がえって宇宙空間に消えていった。 テリーを使った非常灯だけが、また薄暗い ギーを失っていた。・ハッ ェア・ロックの内側のドアを焼き切ると、そこはもう船内だっ赤つ。ほい光を落していた。 船橋には何者の姿もなかった。 五人の上腕部にとりつけられた投光器の描く強烈な光の環が、暗「ハ 幽霊なんてどこにもいないじゃないの」 黒の中に人り乱れた。 リトル・ハラは工務員をふりかえった。 「まず船橋へ行こう」 ハミは沈黙したきり何も答えなかった。笑う者もいなかった。 五人は通路を進んだ。 「船内を捜索しましよう。監督官。どこかに船内の見取図があるは ェア・ロックが破壊されたというのに、非常灯もっかなければ、ずです。見つけて」 船内見取図は船長と主席宙航士と甲板長は、いつも身につけてい かけつけて来る者もいない。 なければならぬ作業備品だった。だが実際には、それは自分のロッ 「生存者は皆無ですな。このぶんでは」 カーの中にほうりこんである。 アビアが上すった声でささやいた。 「このタイ。フの船の中はよく知らないのだが、この通路はたぶん第しかし、はじめてその船の中に入った者には、案内者なしでは、 三甲板の左舷メイン通路だと思います。船橋はこの上ですよ」 もとの所へもどることもおぼっかない。その時役に立つのが船内見 丁シュティが自信なさそうに闇の奥をうかがった 取図だった。船内艤装を改造したときには、必す見取図も書きかえ 慣性航行中とはいえ、推進系統以外のシステムはすべて作動してることになっていた。 いる。だが、船内にはいかなるエネルギーも流れていないようたっ 「ありました」 アビアが分厚いそれを見つけてきた。 メイン・ナビゲーダー 4 2
それで航路管理局へはあたしが申請して調査をすることにしたんで 「調査官 ! あなたの勝手で調査だのなんだのと騒がれてはたまら んー 監督官は顔に血を上せた。 リトル・ハラはその顔を見つめた。 監督官の左右のこめかみの血管が膨れ上り、火のような息を叶 かわうそ 歩わせ 《カランコ工伐》の第二惑星経由、《翡翠座 02- 》座から《川獺座こ 「監督官。あたしが『マンモス』を調査することが、あなたの気にを結ぶ第七大圏航路は、凸レンズ状の銀河系の、内側を通って一方 入らないというのはわかる。この事故であなたの成績にはすでにひのレンズ面からもう一方のレンズ面に至る主要幹線航路だった。 それは太陽系をはるかに離れた人類の前進拠点をつらねたいわば とっ傷がついてしまった。その上、調査などやられて、もっとほか のことでも見つかると、その傷はますます深くなるでしようから最前線を定期的に結ぶ大動脈だった。 ね。でも、監督官。こんどの事故は、直接的には、乗組員の健康管大な量の物資がその航路を運ばれ、流れていった。 それらの物資を満戴した船団が、むれ鳥のようにその航路をゆき 理に手ぬかりのあった『マンモス』の船長の責任であなたの責任で きした。 はないと思うわ。そのことはあたしがよく承知しています」 しかし、そうかといって、その大圏航路が安全な航路というわけ ではけっしてなかった。 リトル・ハラは白い歯をこ・ほした。 アビアはまだ何か言いたそうにしていたが、ェシュティがそれを むしろ、船団を構成する幾十隻もの宇宙船のうち、何隻が目的地 さえぎった。 へたどり着くことができるか、という程度のものであった。 「調査官。これは特別任務だと思うが、ポ 1 ナスは出るんだろう脱落した宇宙船の多くは、未知の宇宙塵の濃密な雲にさえぎられ な」 たり、時には流星雨の直撃に打たれたりしたものだった。そうでな くても貨物を棄て、あるいは引返し、また目的地を変更して離脱す 「ポーナス ? 」 る船はあとを断たなかった。 リトル・ハラは息を呑んだ。 広漠たる大宇宙の中では、光の速さの何分の一かに達するような 「操機長はずいぶん計算高いんだね」 スビードでも、実際にはほとんど動いていないようなものだった。 ただよってくる宇宙塵の雲さえ、その存在を何十時間も前に知り 「ポーナスでもなんでもはずむわよ」 アスティスはしかたなさそうに肩をすくめた。 「協力する。指図してくれ」 アビアもェシュテイもハミも黙ってうなずいた。 の用意をしてくたさい。すぐ『マンモス』へ 「それじゃ、フェリー 行きましよう」 リトル・ハラは立ち上った。 2 2
・ハッチと、二十か所の ながらも、それを避けることができないほどあわれなスビ 1 ドだと『マンモス』には十二か所のエア・ロック 貨物用 ( ッチがある。貨物用の ( ッチは船内からでなければ開くこ いったら事実に近い そして、何事か事故が起れば、それはそのたびにそれまで全く経とはできないが、一般用の ( ッチは外部からでもあけることができ る。「だめだ。どこもあかねえよ。あいていれば調査員をたのむは 験したことのない新しいできごとであり、原因たった。 ず、ねえじゃねえか」 工務員の ( ミが舌打ちをもらした。たしかにそうだ。 船団ベガサスで、船団を編成する輸送船『マンモス』が、乗組 ハッチがあかなくなっているのを」 「監督官はたしかめたの ? 員を失ったという報告を《カランコ工代》で受け取ったリトル、、 ( ラ 「たしかめましたよ」 は、三十時間後に、船団ベガサスに追いついた。 「それで何も手を打たなかったの ? 」 七十二隻からなる船団は、三つのむれを形作って《カランコこ アビアは肩をすくめ、両手を開いた。 近傍の小惑星帯をかわし、大圏航路を慣性飛行しつつあった。 いかなる呼びかけにも全く応じなくな 0 た『「ンモス』は、慣性「あの船の中には人りたくないね。それに私には船団監督官として の責任もあるし。この船のことばかりかまっちゃいられない」 航法のままに、船団から離れることなく僚船とともに航行してい ェシュティはくちびるを鳴らした。 「調査員。この船は幽霊船なんだ。この船の中に入るときっと何か こんな船はもう よくないことが起きるよ。引きかえした方がいし 廃船にしてしまった方がいいんだ」 このハッチを焼き切ってください。以前、この船に幽霊が ◎定価 48 円 / 隔月刊 / ⅱ月加日発売 日本 tOLL 年鑑 が生活になったから、をさ 土 呆 0 わって生きたい。プラスチックみ〔 1982 幇新〕 殴年度全メディアの活動を代田 たいな「の本」はいかが ? 一望の下に収録した画期的年鑑。 日田 活字・視覚・聴覚メディアに加 特集ディックにくひったけ ! 全邦訳作品解題 / ディ ; 論 / 大討論会 え、 300 余のファングループ新刊 コミックス、ドラマ、ミュージック、サイ を詳細に収録。ファン必携。 ◎新刊レヴュー / メディア・レヴュー】ムーヴィー 5 判 216 頁 「 LL のほほん」・「たのしい (J) LL 批評」 「。、ラレルワールド通信」 エンス / 連載ェッセイ】′ 東谷 定価 2 円 / 連作小説「べナレスのマッサージ師」 / コラム】「エレベーターの正しい乗り方」他情報満載 本 3 好評発売中 3 2
断した。 マグネシウムの焔が炸裂した。 天井も壁も床も、アビアの体もそうでないものも、目のくらむよ解読機はひとつのデーターを示して止った。 うな緑色の閃光に染った。 輸送船『マンモス』は青の魚座『カレリア。 ) 』の第三惑星《ヴァ リトル・ ( ラは両手で信号拳銃を握ると、落した腰を軸にたえず回ル ( ラ》から《カランコ工》の小惑星帯まで、岩塩のばら積み輸 送をおこなっていた。 転しながら、じりじりと進んた。 岩塩のばら積み輸送は、あとの始末が非常に厄介だった。船倉に もう一度、船橋へもどった。 空気を放出すると、船倉内が錆び、腐蝕する危険が大きかった。 過去の就航記録のファイルを探した。 その時、船内機器の重要部分が故障を起したのかもしれない。 マイクロテー。フのロッカーからそれを見つけ出すと、それを解読 だが、それではなお説明できない部分が多過ぎた。 機に押しこんだ。通信装置の・ハッテリ】を抜き取って解読機につな ・クレーンの操作室へ足を向けた。 リトル・ハラはふたたびヘビー 就航記録の中の寄港地と積荷の項をチェックする。 怩月 1 日困ー月四日水 リトル・ ( ラの胸に、かの女自身がその場に居あせた二つの事件の◆学参・辞典フェア・ グランデ 6 階 情景がよみがえってきた。 月 1 日水ー 1 月引日 コントロ 1 ルを失って、宇宙の果へ向って突進する『マンモス』 クランデ 1 階 ◆スキー図書フェア : ⅱ月 1 日月ー月四日水 を救援するために接舷しようとした『アルケロン 3 』を、拒否する ・フックマート 4 階 ように撃破した『マンモス』 ◆私大願書・大学別入試特設コーナー グランデ 6 階 / ブックマート 2 階 惑星『パルミラ』の夏。 学 - やト 正長石や大理石の徴粉が視界をおおって舞い狂う惑星の大地に、 着陸操作をあやまってさかさまに突っこんだ『マンモス』 社文児 0 ド般ロ一書 そして、宇宙船乗りたちは声をひそめてささやきあっていた。 学機生経教詩家 『マンモス』は呪われている。と。 誕 . ンク噺グ 3 典気学学術 『マンモス』には幽霊が出る。と。 泉、一文文判泉「」辞電医法哲文芸 。←を ( 一 , それ = 自分が《憂」 0 十架座》 0 第一一惑星 = 寄圭日 321 地圭日 0 " 654321 地 港していた年から、おそらく十数年さかのぼった時期であろうと判 3
かれらの姿が全く消え去ると、あとに精いつばい不満を顔に浮か 「あの船は呪われているんた」 べた四人の男が残されていた。 男はもう一度さけんた。 「船団監督官。航路管理局船団指揮資格級所持者。ア・ヒア」 「どうしてそう思うの ? 」 胸も肩も分厚く、背丈は二メートルを越すであろう。頭も他の者 「どうしてって。おれたちにはわかるんた」 の倍はあろうという大きさだった。 「わかるんだって、どんなわかりかたよ ? 」 『フォーマル ( ウト』の主席宙航士は、このような定期航路の超大 「説明できるようなものしゃねえよ。まあ直感かな」 型輸送船の勤務にふさわしい冷静な秀才型の男だった。 「おれたちと言ったわね」 「アスティス」 「おれたちさ」 そう名乗った。 「誰たちのこと ? 」 / ミという名の工務員たった。 アスティスが指名したのは、、 「宇宙船乗りみんなのことさ」 「調査員。航路管理局はわれわれの送った報告では不満足なのか ? 「じゃ、あたしたってそうた。だけど何も感じないわね」 あなたも、われわれと同じ宇宙船乗りなのだからよく承知している 「違うんだよ。立場が」 はずだが、われわれはたえざる生理的故障や神経的抑圧と戦ってい 「あるの ? そんなもの」 「調査官は貨物船なんか乗「たことねえんだろう。薄「気味悪いもる。それが、なんらかの原因で、不可逆的な自己抑制不能つまり発 狂状態をもたらすということも、けっしてありえないことではな んさ。貨物船なんてものは」 い。いや。残念だがよくあることだ。こんどの『マンモス』の場合 「あなたの名は ? それとポジション」 でもそうだ。船団医務主任はそのように診断をくだした。船団医務 「ェシュティ。この船の操機長た。船団の操機主任でもある」 主任はべテランだ。そのかれの報告がどこか不備だとでも言うのか 「『マンモス』調査の応急調査員を命します」 ェシュティはほほを強張らせた。 船団監督官のアビアは、感情をおしころした声音でたずねた。 一座ににわかに不安がゆれ動いた。 「この『フォーマル ( ウト』の主席宙航士と、船団監督官。応急調「その報告の「。ヒーは見たわ。航路管理局から電送してもら「た 査員として協力してもらいます。それと他に一名、技術員を出しての。報告そのものに不備はないわ」 「それならどうして」 ください。解散」 「監督官。あたしは、あの宇宙船が二回も大事故を引き起したと 会議室を埋めていた船団司令船『フォーマルハウト』の幹部士官 っム や下士官たちは、人選から洩れたことを、露骨に表情や言葉であらき、いつもその場にいたの。こんどで三度目。ほかにもや「ていた かもしれないわね。こんどは自分でたしかめようと思っているの。 わしながら回廊へ押し出していった。