0 イ ) を養殖したりする。 このほか、ニンジン、トマトなどを、手間の そのアイデアの一つによると、直径一・五メ ポ ートル、長さ三メートルの円筒形栽培室をスべかかる種からの栽培にたよらず、タンク内で小 ス ) 薬 Z ースステーションに取り付け、円筒の内壁にガさな細胞や組織片から細胞培養、組織培養によ ス ラスウールを張り、レタス、ホウレンソウ、サ って増やす方法も提案された。 ラダ菜などの葉菜類の種をまいて、水耕栽培す宇宙ステーシ = ンから海面温度分布や波の状フ卦 / ャ町州 / る計画。太陽光線は、ステーション外に取り付態、海色計などによりクロロフィル分布状況な ン キ CO けた直径七メートルの集光器で集め、グラスフどをキャ〉チ、それを地上のデータ処理システキ ムで処理し、魚の種類ごとの漁場情報も入れたス アイ・ハーによって栽培室に導く。 乗 O また別のグルー。フのアイデアによると、動物漁業情報図を作り、ファックスで漁船に知らせ ン 性蛋白質を自給するため、ウズラを飼育して卵る「海洋情報即時通報システム」も、漁業国な 人イ 2 レ・、 を産ませ、孵化したり、テラピア ( イズミダらではのアイデアとして注目を集めた。 置ビレ CO 太陽発電衛星から地上へ電力を無線送 グ装ラニ作 ンマ操レ 一言 電する場合、マイクロウェー・フが電離層 ュ 例一 ド用 にさまざまな影響を与えることが懸念さ 波ナ器レ れており、その問題を解明するための実 クテ験ビ 験計画も提唱された。 マ供マ 親ステーションからレーザー光線を発ものについても、各国からアイデアを募集する と Z は呼びかけており、これにこたえて 射して、それを受けた子衛星が、キャッ チしたレーザー光をエネルギー源とし三菱重工、三菱電機、三菱商事の「三菱グルー て、就道変換などをするアイデアも出。フ」は、スペースステーション本体に接続する CO 「有人実験モジュール」や、ステーションから このほか、スペースステーションからやや離れて飛行する無人実験室「・ハス。フラット ホーム」、さらには・ハス。フラットホームとスペ 千キロ以内に近づいた他の衛星やロケッ タ トの燃え殻などを探知し、回避する「宇ースステーションを往復する一人乗り「スペー 宙衝突予防レーダー」計画は、宇宙も過スキャ・フ」と無人の「テレオペレータ」などか ビレ 密時代を迎えつつあり、タイムリーな。フら構成されるスペースステーションシステム構 ランである。 想を打ち出した。 リニアモーターカーに使われる磁気浮こうしたアイデアの数々は、宇宙開発委員会 上リニア・シンクロナス・モーターを宇の宇宙基地計画特別部会に提出され、科技庁が モ 行なったアンケート調査の結果などとともに検 宙に利用、低戦道を回るスペースステー ションから人工衛星などのペイロードを討され、一九八三年五月ごろまでに日本として Z 馬 中高度軌道や静止軌道へ打ち上げるのにの参加テーマを絞り、へ提出する。 Z CO 役立てるアイデアも発表された。 で受け人れられれば、いよいよ日本人の田 スペ 1 スステーションのシステムその夢が現実へ向かって動き出すことになる。 工アロック 実験機器 0 曝露型バレット ( 4mX4 司 ドッキング / 与圧型有人モジュール (4méX12m) こ 0 WSZ 操縦桿 ーヘリウム 拘束プロープ
トをつたわってけば、なんとかに出られるはずよ」 ノー ! するとすべては 認識は稲妻のように来た。「それかー 立ちあがったおれは、左手をこぶしに握って痛みをこらえた。 画策されたことだったのか ! 故障は計画のひとつ。プログラムさ 7 「よしきた、行く ! 」 れてたんだ ! 」 そのとたんである、シャフトから熱風の波があふれ出たのは。周おれは女を突きはなした。腕に痛みがはしり、女はクッションの あいだに倒れた。 囲でまぶしい光が爆発した システムがおのれを修理したのだ。 機械に特有のこれが当然という風情で、ふたたび機能しはじめたの 「そうよ」と、女はすばやく起きなおった。「認めるわ。でも、ほ である。 かにあんたを納得させる手があって ? システムはもうぼろ・ほろ 「生きてるわ、わたしたち」女はささやいて、おれの胸にもたれよ。古びて、いっこわれるかわからない。本当よ。ね、あんたが必 た。「生きのびたのよ、今度のところは」 要なの。わたしにはただの遊びーーそう思ってるの ? わたしたち その意味をおれは理解した。これまでシステムは一度も故障した竜にはあんたが必要 : : : あんたって、そこまでシステムペったりな ことはないが、いったん故障してしまうと、 いくどくり返されるかの ? 処理されちゃってるの ? わからないの : わからない。空気はみるみる澄み、裂けた天井と踏みあらされたク もううんざりだった。女にも、竜にも。「気ちがいだよ、きみら ッションだけがいまの事件を偲ばせるものだった。 は ! 狂人だ。偏執狂、・ハラノイア、アモキスト ! 」昔の人間につ いての知識が、命令に応じるかのように、心にうかんできた。「閉 おれはまばたきし、習慣どおり、人間が出逢う場合にノーマルと される距離をとったーーー三メートルを。が、女はまたすりよってき所恐怖症なのさ ! きみらはシステムのなかにいるのがたまらなく た。これだけの昻奮があったのだから、もう一夜をともにしたい気なったんだ。せますぎて。システムの力が理解できず、いつも人間 になったのか ? おれのうけた教育は女をしかるべき距離だけおしのなかにいなくちゃならない。できるならしよっちゅう誰かにさわ もどすよう命じているのだが、それができなかった。女があまりそっていたい : ・ : 」そう考えただけでめまいがした。「きみだって、 ばにいるので、おれは不快だったーーー女と何をすればいいのか ? おれと個人的つながりをもちたかったんだろ ? 」問うまでもなかっ しかし、同時に快感をもお・ほえた。女というものを感じとって た。女の顔を見れば答えはわかった。逃げるんだーーーおれは考え いたから。 た。ここからー 女はじっとおれの眼をのぞきこんで、「まだチャンスがあるわ。 通廊にのがれた。いいかげんな方角に走る。おれの思考の大浪に 急がなきや。誰にもわからないもの、システムが次の発作をのりきぶつかる。個人的つながり ! これが昔の社会をとんでもなく複雑 れるかどうか。ね、協力してくれる ? わたしたち、竜が独立できなものにしたてあげ、制御不能にしてしまったのだ。人間に不幸を るように・ わたしたちには迷路専門家が要るの。わたしだっ運んだとはいわずとも、たいていはその安らぎを奪ってしまったの て、もうひとりはいや」 。おれは走った。命がけで。原子化された社会でなければ、
ゾチアルストハスティクの法則は適用されないのだ。竜ーーーこの竜 たちは、システムをゆるがそうとしている。カタストロフィありと すれば、それはたちによってであろう。疲れはてておれは足をと めた。 眼の前のア・ハートがあいている。そこへはいった。汚いものでも つかむみたいにあのベルトを腕からとり、シャワーをあびる。ひら いた傷口に汗がすごくしみた。自動医療器がすぐそこに細かい粉末 をふきかけ、痛みはたちどころに和らいだが、おれはそれにもろく に気づかなかった。まだそれだけ昻奮していたのだ。連中はおれを スパイしていたのに違いない。おれこそ連中に必要な迷路専門家と 思い、おれの反応も計算ずみだったのだろう。どっこい、それは計 算違いというもの。連中が考えたよりおれは利ロだった。連中の心 底をおれは見ぬいた。竜たちょ、ひっかからないぜ、おれはー 徐々に落ちついてきて、凝縮ロ糧をかみ、横になる。お気に入り の舞台装置を念じた。木星が巨大な光球となって眼のまえにあらわ れた。大赤点の輝き。南温帯、南熱帯じよう乱のグリーンのしまに かこまれて。眼下はガニメデの岩の表層。 ガニメデⅡ現実におれがそこへ行きつくことはないだろう、も しも : そのことさえ連中は探りだしたのだ。ガニメデ。 いつも はるかなものを夢みるだけということ。なんと的確にやつらはおれ の反応を知っていたことか はたしておれは本当に相手を見ぬい たのか ? 見ぬくようにしむけられたのではなかろうか ? おれが 自由意志で決断できるように、と ? 狂人の集団 ! これからどん な意外事が待ちかまえているか , ー・ーそれを思うたけでふるえが来 た。システムからの脱出ーーーそれはなんとかなる。しかし、それに つづく宇宙飛行。つねに同じ顔をながめる。毎日、毎時間℃ ょに食事をし、話し、話し、話し : 。人間たちの汗の匂い : : : 安 らぎはもはやない。 システムの論理的冷静さというものはない。大 きすぎるジャンプではないのか。おれには耐えきれるまい。しか し、木星とガニメデと : : どういうことだ ! 夢は現実の助けにな らぬ。 ひょっとすると、ひょっとすると、システムもこの冒険をおれの ためにアレンジしてくれたのかもしれない。変化を求めてわめいた のはおれなのだから : ・ 薬が効きはじめ、おれは眠りにおちた。システムのやわらかな、 どこででも聞こえる音につつまれて。 フェニックスアロイ アイデア募集・結果発表 「形状記憶合金をどう使う ? 」 これに応えて、 多数の読者からアイデアが寄せられましたが、この 中から選考の結果、福岡市の吉良義文さんほか五名 の方に、株タカラから世界最初の形状記憶合金玩具 「フェニックスアロイ」が送られました。 9 7
トナーではな ・こ。どうしようもなく。 感じが魅力をたかめている。この女はたんなるパー 。今度はどんなことが起こるかと、おれは覚悟していたーーそし だけど、女はいった。「出るのよ。やってみなくちゃ ! 」 て、本当に : : : おれはくたくたになってねむってしまった。 おれの眼は闇に慣れてきて、すごくかすかな徴光をもみとめられ 女にゆりおこされる。眼をあけ、この無作法ぶりにうめき、何もるようになった。壁のグリーンの螢光である。簡便リフトのところ 理解せず、何も見なかった。あたりはまっくらだが、おれの眼はすへ行ってみたが、それが動くはずもない。狂人のように操作コンソ でにひらいていた。 ールをいじり回してみたものの、もとよりむだな話。こぶしで壁を 「憶えておいてね」女の声が耳もとでうったえた。 なぐる。すぐにあの殺人狂のことを思いだした。エネルギーの完全 起きあがったおれは、女の手をふりはらった。愛の時間は終わっ なむだづかいだ。空気は汚れてきたらしい。手でつかめるような感 たのである。アパートのなかは暗い。暗いどころではなく、おれたじた。むろんこれは錯覚。アパートはひろい。絶望の数時間、われ ちの呼吸、鼓動、ふとんのこすれる音以外には何も聞こえない。 われを呼吸させるに足りる。おれひとりならその倍もつわけだ。生 「ライトを ! 」おれは闇にどなった。が、音声コントロールは反応まれつきの一匹狼にはおかしなことだが、そして常識には反するこ しない。居住区画のコンピューターがだめになったにしても、メガ となのだが、おれは断末魔をわかちあえる人間がいてうれしかっ ロポリス全体をつつむやわらかな響きぐらいは聞こえるはず。これた。その期間がみじかくなるかもしれぬが。衛生ルームに走った。 は大システムの永遠の響きなのである。しかし、それすら聞こえな一滴の水も出ない。たちまち渇きをお・ほえる。何もひらかない。は 。空調装置の単調な作動音も。空気はよどんでいた。 ずせない。 突然におれはさとった、どんな危険にさらされているかを。シス 「わたしたち、最後の人間かもしれないわ」女がゆっくりといっ テムが死んだのだ。システムそのものか、少なくともその大半が。 た。「ほかの人はもう死んじゃったかも : : : 」 それでなかったら修理ロポットがやかましく作業にかかっているは「そんな」と、おれはさえぎった。「ばかな ! 」コンソールをいじ ず。いやだ、せまい居住区画で窒息したくないー システムの奥ふりつづけた。「数時間前に、ソニーのひとりとしゃべったばかり かいどこかで ! はねおき、三歩はしった。いまいましいまくらに つまずいて、べったりと倒れ、またはねおきようとする : 「映像でしょ ! 」 「あわてないで ! わたしだってこわいもの ! 」 いっときおれはたじろいだ。その前の殺人狂も幻影だったかもし トナーとねたんだ。あれ おれは気をとり直し、いっときだが、女をなぐさめてやらなくてれない。しかし、「百時間ぐらい前 はならないという奇妙な感情をおぼえた。救ってやらなければならは映像じゃなかったな。ぜったいにー それどころか、おれにはそれだけの力があるのだ、 「じやロポットよ」女は切りかえした。「でなければ、あんたには 5 ン」 , も。・はか、なー システムがだめになれば、おれたちは死ぬだけ区別がっかなかったのか : : : 」
G ( 1972 ) として刊行されている。 アルヴィン・トフラーの『未来の衝撃』 ″ S ん。 ( 1970 ) は未来学というよ り社会学のベスト・セラーである。この本 は、現在までの加速度的な変化を集めたも のだが、未来についてはっきり予測を述べ ることには比較的慎重である。その対極に あるのがェイドリアン・ペリーの『一万年 後』 The N ビ靦 Ten T ん 04 れ d Y 囮” ( 1974 ) で、これは未来学一般というより テクノロジー楽天主義の本となっている。 未来学より S F で馴染みがありそうな、、も しも″の疑問を、豊富な文献とともに示し ているが、そのために価値が下がるといっ た本でもないだろう。 予言ということでは、未来学者も S F 作 家もあまり成績が良くないが、作家は個人 の反応に力点をおく分だけ、より人間味が ありそうだ。未来学と重なりあうような分 野を扱った S F の作品例は、テクノロジ 、エコロジー、近未来、人口過剰といっ た項にある。ジョン・フ・ラナーは、この種 の長篇を書く注目すべき作家である。もち ろん、たいていの場合フ・ラナーもその他の 作家も、予言しようとするより、そうした 事態を避けようとしている。不気味なシナ リオが早期警戒システムとして影響するよ う望んでいるのだ。これに反してアーサー ・ C ・クラークは、ノン・フィクションで も創作でも、楽天的な未来学的予測をかな り使っている。 S F そのものも、キャラクターとして未 来学者を生み出してきている。最も良く知 られているものとしては、アイザック・ア ジモフの《ファウンデーション》シリーズ に出てくる、心理歴史学の提唱者たちであ る ( 文化工学 ) 。最近の例ではロート ーグの『確率人間』 The シノレウ・ア・一 / 、 & oc ん 0 立な Ma れ ( 1975 ) があるが、現実 の未来学の考え方からいくとごまかしがあ 255 〔 PN 〕 る。予知能力がからんでいるからだ。 銀河帝国 GALACTIC EMPIRES ドナルド・ウォルハイムは、その著書 The U 〃れ , 」イ 0 ( 1971 ) の中で、 雑誌 S F が示すさまざまな未来のヴィジョ ンの中から基本バターンを抽出しようとす る一一一そしてこれを、、未来の宇宙進化論″ と名付ける。全体で 8 つある段階のうち、 第 3 から第 5 段階のパターンが、、銀河帝国 こで言う、、帝国〃は の興亡″にあたる。 一般的な、ほとんど隠喩的な意味であり、 政治的に定義されたものではない。ウォル ハイムはいみじくも言う。現代 S F の多く がこの枠組みに合致するように書かれてい るのは、これがすでに約束事であるのを利 用しているのだ、と。この文学装置を使う ことによって、作家は、ほとんどどのよう な空想社会あるいは生物システムでも現出 させることができ、またわれわれと似たよ うな考え方をする人間のキャラクターを、 こうしたシステムと接触させることができ るのである。 この約束事を確立した功績は、大部分ア イザック・アジモフのものだ。《ファウン デーション》シリーズ ( 1942 ー 50 ; 『銀 河帝国の興亡 1 』 4 〃。 1951 ; 『銀 河帝国の興亡 2 』五側れた・。〃 4 〃 d E 襯が尾 1952 ; 『銀河帝国の興亡 3 』 & c 。れイ 側れ〃。れ 1953 ) は、きわめて影響の大 XVII 1900 年にまでさかのぼると、 方のもっと早い例をたどることもできる。 きい実例を示した。ただし、 こうした考え
「区別 ? どんな ? 」おれはびつくりした。ロポット女のことなどなかった。それは千年間も軽微なミスひとつなく機能してきたので 聞いていない はなかったか。しかし、事実はうけ入れなくてはならない。事実は 7 事実なのだ。おれはシステムについての失望を声を限りと叫び、 「魂。人間的反応。目的 : : : 」 トナーはぎくりとした。 おれは女を別様に解釈した。「すると、おれもロポットなのか な ? 」 そして、「前まえから予感してたわ。恐れていたの。こういう崩 「違う」女は否定した。「ロポットはそんなに昻奮しない。理由な壊を。機械がとまることを。誰ももう機械を点検、コントロールし く叫ばない。自分の運命をしずかにうけ入れ、ありもしない出口をなかったわ。システムの耳慣れた作動音で、みんなが、。 まとんどみ さがしはしないわ」 まそのときが来た んなが、ま・ほろしの安全感にひたっていた。い なんと非論理的な ! 人間の反応を模倣できないとでもいうのの。早すぎた。あまりに早すぎたわ。わたしたち、やれなかった」 か。だが、おれはロをはさまなかった。かたくしまった食物供給ス 「たれが ? 何を ? おれはいぶかった。女についてのなぞはいよ リットで手を血だらけにするのはよした。「そりや、きみがここで いよ深まる。 窒息するのは自由だ。とめはしないよ」 「わたしたち、竜が。わたしたち、機械から出たかったの。独立 「ごめんなさい」女はいった。「そういうつもりじゃなかったの」し、自分の生活は自分でつくりたかった。システムと遊ぶのはよし その声を聞いておれの怒りは消えてしまった。 てーーーシステムのおもちゃになりたくなかった。人類のためにあた らしい道をひらきたかった。地球から去って、ガニメデで新生活を 二人で壁を組織的にたたき回ってみる。肩と肩をつけ、歯をくい はじめるつもりだったの。数年だけ遅すぎた。人類史でいえば一秒 しばって、最初の小牢獄から脱出したらそこに何が待っているかは 考えないことにした。何が待っているかはわかっている。ひとけのぐらいなのに・ ないを日い通廊、闇中の迷路、そこをいく百キロメートルもさまよっ「数時間前なら、きみのこと、狂人と思ったろうな。きみから逃げ たあげく、飢えか疲労でひっくりかえってしまう。地表ーーメガロ だしたかもしれない。殺人狂のときみたいに」 ポリスの屋根へ通じるぬけ道があったところで、それからどうな「わかるわ。機械は住民をつくってるんだもの。あなたの暮らしは る ? 地表で生きのびられるか ? 鋼とコンクリートの荒野でつ・ らく。叫びさえすれば、なんでももらえる。自分の意志、自身の思 おれたちのーーー人類の運命はもはや変えるべくもないのだ。システ考以外はね。それでもし : : : 」 ムはどんなミスを犯すこともなく、おのれ自身を修理、コントロー 疲労の発作でおれの膝はがくりといきそうになった。体力をこれ ルし、地震を防ぎ、大きな隕石さえ、地球大気圏に突入する前に核ほど長時間、集中的に使ったことはない。使った効果は何もなかっ ミサイルで破壊してしまうというのに。人間の手がつくったこのすたのだ。横になり、肩で息をした。女は顔をよせて訊いた。「なん ばらしい有機体が死んでしまったというのか ? おれには信じられ ていうの ? 」
けんめいに走った。汗にまみれて。けに躯けた。が、木星はちされたとらえどころのないような、低い音響である。 っとも近くならない。走るリズムに合わせて大赤点が上下し、おれおれは剃った頭をなで、ゆっくりとそこに近よった。近よると音 の視線はそこにへばりついた。それでも木星は遠い。限りなく遠のまぼろしは逃げる。おれはそれを追った。動きが、変化が、うれ 。その衛星ののつべらした地表がおれの脚の下をとびさり、背後しかった。十字路を二つ過ぎて、気送力。フセルについた。ふわふわ に消えた。がんばった。けれど、どうにもならぬ。大惑星の大気中のクッションに横になると、キャビンの扉が歌うがごとくにしま で大赤点をとりまく渦乱流、じよう乱ゾーン、くろつぼい線条は、 り、おれは加速圧をお・ほえた。透明。フラストガラスのむこうを通過 王者の落ちつきをみせて輝いている。汗が眼にしみる。あきらめする。 ( イ。フの速度がどんどん高くなり、ついにはひとつのゆらめき た。肩で息をしながらやわらかい床にぶったおれ、大惑星の平和に にまとまってしまった。おれの考えもしだいにまとまり、こういう ひたった。ひとりで。期待した効果はなかった。木星もおれの助け行動はどうもアナクロ的だとさとった。なんだって変化を求める ? にはならない。 ほかのメガロポリスへ、つまりシステムの別の下部構造へ移動す 呼吸は規則的なのに、心では不安がうずまいていた。ここによ : いる ? 居住区画のタイ。フは十二しかなく、どうせ自分でつくるか選 られない。・ とっかに行かなくちゃ。さらば、愛する風景、さらば、 んだ舞台装置のなかで生きるだけではないか。前情報時代の遺物、 遠くて近い星。おれの手は制御コンソールへ伸び、舞台装置は瞬時非合理のインパルスなのだ、おれを想像上の″はるかなる世界″へ に消えさった。残ったのは、居住区画のしなやかで、つやけしを施 かりたてるのは。おれはこの非合理をうけいれた。おかしな衝動に してはあるが、なんの飾りもない壁だけ。浴室にはいる。あたたか かられていても、こういう行動がまったく合理的といえなくても、 いシャワーで汗を洗いおとした。冷水に切りかえ、熱風がからだをそれに抵抗してなんになる ? システムにとってはどうでもいし 乾かすのを待って、供給シュートから新しいオーヴァオールをととなのだ。おれにとっても同じはず。それで快感をおぼえさえすれ り、頭からかぶる。去ろう 心がせく。ひとりでにひらいたドアば、、。数秒間力。フセルはプレーキをかけ、いきなり横手から圧力 がかかり、ふたたび加速。旅、気ばらし、変化、移動ーーーそういっ からするりと出た。もうこの居住区画にもどることはあるまい 通廊に人影はなく、均等に象牙色の照明をあびていた。システムたものを三次元の投影という舞台装置で体験したほうがずっと楽 の声が機械的ななれなれしさをこめてたずねた。「どこへ行くんでで、速いのだ。しかし、理由はわからぬが、どうしてもこの実体の まま移動しなくてはならなかった。誰にも非難されず、誰にもじゃ す ? はっきりした目的は ? まされないが、おれの心には割りきれないものが残った。場所を変 「ない」むしろおれ自身のために答えた。目的があるはずがない。」 えるという動物的本能の爆発をおれは押さえにかかった 「また気ばらしが必要。それだけ。 「ついて来なさい」声はそういし もう加速はやんでいた。力。フセルは可聴域をこす高いさえずりと 9 凝って音のま・ほろしになった。 音のまぼろしというのも変たが、おれの前方十歩ほどの廊ドに局限ともに動いている。あたりは濃い闇。計器盤のラン。フが明るいだ
出るっていう話、聞いたことがあったわ」 ほんのかすかな震動も、回転のリズムも、乗組員の存在している 気配も全く感じられなかった。 「それですよ。それ」 「調査員。やめましようよ」 この船は死減していた。 いそいで ! 」 確実な死がこの船を占拠していた。 工務員のハミは、ふてくされるだけふてくされて、メーザー切断その死へ向って、五人は一歩一歩近づいていった。 器を組立てた。 三十メートルほど進んだところにラッタルがあった。 それをフェリー・ホートの原子力ュニットに結びつけた。 五人は一列になって上った。 プリッジ 二分後、 ( ッチの外鈑が溶融した。 ェシュティが言ったとおり、上層に船橋があった。 五分後、ハッチの二重ドアがすつぼりと焼け切れた。ドアはひる航法用コンビューターも、三系統通信システムも、すべてエネル がえって宇宙空間に消えていった。 テリーを使った非常灯だけが、また薄暗い ギーを失っていた。・ハッ ェア・ロックの内側のドアを焼き切ると、そこはもう船内だっ赤つ。ほい光を落していた。 船橋には何者の姿もなかった。 五人の上腕部にとりつけられた投光器の描く強烈な光の環が、暗「ハ 幽霊なんてどこにもいないじゃないの」 黒の中に人り乱れた。 リトル・ハラは工務員をふりかえった。 「まず船橋へ行こう」 ハミは沈黙したきり何も答えなかった。笑う者もいなかった。 五人は通路を進んだ。 「船内を捜索しましよう。監督官。どこかに船内の見取図があるは ェア・ロックが破壊されたというのに、非常灯もっかなければ、ずです。見つけて」 船内見取図は船長と主席宙航士と甲板長は、いつも身につけてい かけつけて来る者もいない。 なければならぬ作業備品だった。だが実際には、それは自分のロッ 「生存者は皆無ですな。このぶんでは」 カーの中にほうりこんである。 アビアが上すった声でささやいた。 「このタイ。フの船の中はよく知らないのだが、この通路はたぶん第しかし、はじめてその船の中に入った者には、案内者なしでは、 三甲板の左舷メイン通路だと思います。船橋はこの上ですよ」 もとの所へもどることもおぼっかない。その時役に立つのが船内見 丁シュティが自信なさそうに闇の奥をうかがった 取図だった。船内艤装を改造したときには、必す見取図も書きかえ 慣性航行中とはいえ、推進系統以外のシステムはすべて作動してることになっていた。 いる。だが、船内にはいかなるエネルギーも流れていないようたっ 「ありました」 アビアが分厚いそれを見つけてきた。 メイン・ナビゲーダー 4 2
電送が終了した。 「パワー・オン ! 」 、つ . ア」よ と電送装置が作動を開始した。高々と尻尾をあげたま実験室は再び、しんと静まり返った。 長い長い沈黙のあとで、何かをとりなすような口調で、山下が言 まの格好で凍りついた馬の姿が、金色の光のシルエットと化し、 っこ 0 ・消えた。実にきわどいタイミングだっこ。 「まあ、とにかく、馬はとりのそけたんだから、半分は成功と言っ 「ふう・ : : ・」 てもいいんじゃないですかねえ」 三人の口から同時に、ため息がもれた。 システムが反転した。 苦虫をかみつぶしたような顔で、マクドナルド博士はしぶしぶう もう一方のステージに光が現われた。徐々に輪郭がはっきりしてなずいた。 くる。ちゃんと人の形をしているようた。山下が言った。 「その点は評価しよう」 「よし。今度はうまくいったみたいたそ」 ちらとみのりを見る。みのりは首をすくめた。博士はほとんど叫 三人の顔が期待に輝いた。 ぶような声で言った。 3 6
ートナーにきめるものなのである。おれは自分のデータを打ちこ 「しや、コードをいうからね。それを先生に打ちこんでほしいん み、現実的な実体をということにし、半時間は待たされるだろうと 学′ . し 覚悟した。 「いいよ」と、おれはそれをうけとった。こっそりそいつをシステ ついていた。コンビューターの声ですぐに夜間用のダ・フル・アパ ムにチェックさせる。システムはそれを無害と判断した。 の下なので、ひとっ先の隣 ートにさしむけられる。おれのアパート よ、ソニ 1 」おれはいっこ。 室の簡便リフトで降りられる。女はまだ来ていなかった。おれはあ 「よかった。じゃ、あんたの問題のこと、話しあえるね」 のおれの部分に刺激性の香料を たらしいドレスをはおり、ア・ハ 1 ト 「問題なんかない」おれはこだわった。 まかせた。つづいて適当な舞台装置をさがす。自動的におれはお好 「じゃいいよーと、かれはスイッチを切った。 けっこう図々しい・せーーと、おれは考えた。ま、よかった。もうみの土星の風景を命じ、グリーン、黄、明灰色のしまと大赤点でお かれを照明させた。しばらくしておれは、凍った土星の衛星の表面は お前さんとかかわりあいになることはない。次にはシステムはほ 愛の場所として適当でないことに気づき、急いで無難な草原を。フロ のソニーをおれとつなげるだろう。むろん、年をとってからロポッ トの先生を。フログラムし直してしまうことが予定に組まれているにグラムした。標準版のやつを。背景に樹々がならび、蝶が飛び、花 しても、だ。 内の隔壁がなくなって、そこに女が立ってい 仕事と対話をすませると、また空腹をおぼえた。食欲増進の舞台背後で音。アパート 装置をアレンジもしないで、棒状の凝縮ロ樶を一本さっさとたいらた ! 歓喜のたかぶりがおれをゆさぶる。淡く光る絹の衣が、女の 丿ットルの滋養ジースを飲んだ。トイレに行ってさつばり肉体をきわだたせている。髪はまとめて結び、につこりと、「よろ し、殺菌水でロをすすぐと、隣室で横になる。かなり疲れていたらしいの : しい。すぐねこんでしまったから。 じれったく手をふって、おれは不似合いな草原を消した。それと 二時間後にめざめると、女が欲しくなった。半分ね・ほけて起きあ同時に女の舞台装置が居住区画じゅうにひろがる。しかし、たいて がり、よろよろとメインルームへ。希望を。フットインする。 いの場合とは違い、その外まではいかなし 。淡く照明された部屋に ナーを。へテロの。ちょっとためらってから、欲望の対象を思いえはいくつか発光ノ くルーンがあったが、おれはそのひとつのなかに立 がこうと努めた。昔ながらの問題である。いちばん良いタイ。フは需っていた。壁をひかえめに飾る装置は、第二種の迷路を連想させ 要が多く、本人もおれのような二流。ハ ートナーを望んではいない。 た。材質の。フラスティックは上等な布に似せてある。いくつものク めだっ女の子を所望すれば、ことによると数時間も待たなければな 。ットにちらしてあっ ッションがよく考えられたパターンでカーへ らない。そういうのがおれみたいなのにも食指を動かし、おれの番た。 が回ってくるまでに。だからたいていは、自分と同じ年齢クラスの おれのパートナーは優雅にそこへすわると、気軽にいった。「お 3 7