ン、同時に「本質的に悪魔的なものであり、 多い型式ながら、その名手とも呼べるほどに 根本的な何かを動揺させる」シミ、レーショ 卓越したディックの技量は、かような枠組の ンこそ、固有にしてディック固有でもあうちにもそれらのテーマを巧みに溶かしこ ウ るヴィジョンのひとつだったことには疑う余む。 地もない。 ところで、これら二つのテーマを媒介する 一方、しばしば見のがされやすいのだが、 イメージが確実に存在している。言うまでも 同じ意味で重要にして相補的なテーマとしてない、外在操作者ならぬ神のシミ = ラクラ ヒ ュビキティ ( 遍在性Ⅱ超時空性 ) がある。むだ。そのレベルでこそ抽象と具象は最も生き ろん、『火星のタイム・スリツ。フ』で確立、 生きとした交換運動を行ない、エントロ。ヒー レ 『ュービック』で象徴的に表現される概念増大に赴き、強迫観念に転化する。ディック で、現実 / 幻想の相互侵食のかたちで押しだをして「書かせ」てきた実体が誕生し、 はディック化され、ディックは化され 5. される場合もあれば、 = ビキテ→にの 0 と 0 た存在者が浮き彫りにされる場合もあるが、 る。そしておそらくそのメカニクス全体を包 まさしくこの概念こそディックをして科学的含していたものこそ、アメリカのメカニクスを読んだという満足感が似ている。 認識と宗教的認識との間で引き裂いていたフ だったはずなのである。 ( 『人間狩り』 / 著傑作にめぐりあったときの畏敬を帯びた感 アクターなのだ。一見したところでは、後期者日フィリツ・フ・・ディック / 訳者Ⅱ仁賀動とはちがうのだ。『翼人の掟』や『ファイ の彼は前者から後者へ移行するように見える克雄 / 二五一一一頁 / \ 一二〇〇 / 四六判上製 / アスタータ - ー』みたいに、期待どおりのクラ イマックスへとつれていってくれる作者のし かもしれない。だが、たとえば本書ひとつを集英社 ) とってみても、神々の追跡・戦闘をコミカル つかりした筆さばきに安心しきって身をまか に描いた「パット への贈り物」 ( ガニメデの せられる心地よさとももちろんちがう。手垢 まみれであるはずのオーソドックスなの 一一流の神が登場する ) 、全身黄金色のミュー タント・クリスに再臨のイメージをかけあわ テーマと枠組みを、照れもしないで正面きっ せた「ゴ ] ルデン・マン」 ( 語源的にもクリス て堂々と小細工を弄せず組みあげていく姿勢 はキリストとつながる ) 、終末後の世界で神 は颯爽としてきもちがいし 。それでいて話が 話的に君臨する機械神グレート o を語る「偉 どう転ぶのか最後まで気をもませる不透明感 大なる神」などを読むと、もうすでに宗教的 がある。 ( これがどうも作者の意図的作為ば 認識の素地は散見される。だからこそ、後期 かりではなく、むしろ未熟さのたまものでも 長篇はそうした初期作品の課題を再構成した 水鏡子あるようなのだが ) 。伝統に裏打ちされた安 もの、何と言っても小説型式による自注とみ 定感と裏腹の不透明感。結局、自分が読みた るのがふさわしい がっていた TJ というのはこういうものだっ たぶん、これらシミュレーションとユビキ たんだなあ、と自分の原点を確認させてくれ はこうでなければ。 ティなる二大テーマが的にもディック自 る、そんな類の充足感があった。肝心要のア ひさしぶりにそんなすがすがしさを味わっ 身にとっても有効な形で C ハランスよく ) 昇た。マイクル・コ = イをはじめて読んだときイデア、とりわけアースウインドのシイホル 華された時にかぎり、彼の小説は普遍的な人の気分と似ている。小説のタイ。フ、出来栄え図形に結局何の意味があったのやら、その他 いろいろ、展開不足か、いまひとっ釈然とし 気を博してきたのだろう。短篇という制約のとしてはちょっとちがっているけれど、 『アースウインド』 、ート・ホールドストック著
セカ ) ′ド・ヴァラ 4 エフィールド方式よ、・ すいぶん乱暴なような / 文庫 / 早川書房 ) 表題作は、原題どおり訳せば「変種第二 気がする。後者は、地球をまわる軌道の中で 号」。対ソ核戦争中、敗退気味のアメリカは、 最も安定なラグランジェ点で、まずケープル 二本の鉤爪を備える殺人金属球〈クロウ〉を フィリツ。フ・・ディック著 の全体を作ってから、それを地上に落下さ 発明、まずは形勢逆転に成功する。しかし、 せ、その一端を一瞬にして地中に埋めこみ、 〈クロウ〉はやがて擬似生命体として自走、 タイ・フヴァラエナイ 同時に逆の端には軌道上の小惑星を接続する 人間そっくりの型〈変種〉を自ら製造開始 『人間狩り』 というもの。読んでいる間は、つい納得させ して、ついには人類以後の新種族として自己 られてしまったが、よく考えてみたら、この ディック・フ 陶汰さえするようになる : 長さ十万キロのケー・フルが振動を起こすこと アンには『アンドロイドは電気羊の夢を見る レ は確実で、そうなればパラストとしての小惑 か ? 』からすでにおなじみのシミュレーショ 巽孝之 星も安定な軌道をとらず、その結果ケー・フル ンがテーマ。本書中では他にも、それこそ電 気羊を連想させずにはおかない、人間の精神 ・ 5. の張力も一定せず、ひどい場合には、たわん 的パランスを保つべットとしてのシミュラク でしまうことにもなるはずだ。主人公は、ど今さらしたり顔で涙する気もない。 こか別の個所で「静的安定性より、動的安定 ただ、ディックの作家生命というのが事実ラを扱った「。フロクスからの侵略」、外宇宙 からの侵略手段として用いられるヒュー 性の方を好む」と述べているが、たしかにこ上六〇年代でほぼ潰えていた、という俗説に んな事態になっても、動的安定性だけは保た はひとことコメントしたいと思う。もちろんイド型自動爆弾の運命を描く「偽者」、無機 れていて、小惑星が地上に落下するようなこ彼の死は私にとってもたしかにひとつの完結物に限り擬態自在の異星原型質がショッキン とにはならないだろう。 であったのだけれど、同時にひとつの再生でグな「植民地」などに、それは如実に読みと れよう。ポードリャールが『象徴交換と死』 あげ足とりはおもしろいけれど、その結果もあったからなのだ。 本書が誤解されてしまっては元も子もない。 ( 筑摩書房、今村仁司他訳 ) で、合目的性も 死すなわち再生なる表現が少々気恥かし イデオロギーも消失した現代、唯一にして新 クラークと比較するのも、たぶん間違いだろ 、できすぎた紋切り文句とみる向きには、 たなる現実原則とみたてるシミ一一レーショ う。本書は、どちらかというと、ル。ハンⅢ世よろしい、百歩譲って正確を期そう。ディッ のイメージなのだ。大イカと接続されたコン ク自身が再生の手続をふもうと懸命になって ・ヒュータとか、ゴプリンの謎とか、ラストの いたのが、七 0 、八〇年代のすがたである。 クライマックスシーンでの x x の喜劇的な死つまり、『怒りの神』から『ヴァリス』『聖 ) などは、まさにルバンである。 なる侵人』へときわめられてゆく神学的議論 固苦しいことは抜きにして、宇宙エレベー とは、以前の自作に対する膨大なる自注に他 ターの建造方法すら演出の一部と見るなら、 ならない。その過程にて、誰より作家本人が そして初めからそういう気持ちで読んでいく自らの再生を夢みた。そして、結果的には社 なら、この本は非常におもしろい 人からアメリカ人への変容を余儀なくされ 過激なハー ドを求める一部ビヨーキのファ た彼ーー。少なくともこれら後期長篇群を読巛 ンの方は、次作に期待して下さい。この人はんでしまった私の眼には、五〇年代短篇中心 ものすごいものを書くはずです。 ( 『星・ほしに編まれた本書『人間狩り』さえも、まさに に架ける橋』 / 著者Ⅱチャールズ・シェフィそのような角度から映しだされてきたのであ ールド / 訳者日山高昭 / 三二三頁 / ¥三八〇る。 円 7
六百円〈第八回「ハヤカワ・ T, コンテスト」発表〉 ・の・ハックナン・ハー在庫一覧を掲載しま四月号 す。ここに掲載されていないものは全て品切れ栗本薫、鏡明、神林長平、・ジョン・ハリス / 栗本薫、神林長平、殿谷みな子、草上仁、レ ム、〈翻訳ショート・ショート傑作選〉、山田 です。なお、☆印は残部少数につきお早めに御ン、ポプ・レマン、ゾラン・ジフコヴィッチ、 ミネコ、エンサイクロペディア 3 注文ください。 萩尾望都、エンサイクロ・ヘディア⑩ 一一九八 0 年 五月号 六百円十一月号 六百円 六月号 ( 五百円 ) 、七月号 ( 七百三十円 ) 、☆八光瀬龍、栗本薫、鏡明、亀和田武、ラリイ・ニ光瀬龍、岬兄悟、火浦功、水見稜、ヴァーナー ーヴン、キャサリン・マクレイン、ジョン・ス・ヴィンジ、・ディヴィッドスン、山田ミネ 月号 ( 六百円 ) 、☆十月号 ( 六百円 ) コ、エンサイクロペディア@ ラデック、萩尾望都、エンサイクロペディ ア⑩ 一九八一年 十ニ月号 六百円 ☆ニ月特大号 ( 八百円 ) 、三月号 ( 六百円 ) 、四六月号 六百円谷甲州、岬兄悟、草上仁、鈴木秀明、オールデ ーグ、イス、・・ポーン、スヴェトスラフ・スラ 月号 ( 六百円 ) 、五月号 ( 六百円 ) 、☆八月号栗本薫、鏡明、・シルヴァしハ ( 六百円 ) 、十ニ月号 ( 六百円 ) 、十ニ月臨時増・ストルガッキー、・・ジェフリーズ、萩フチェフ、山田ミネコ、 r-n エンサイクロペテ 尾望都、エンサイクロペディア⑩ ィアの 刊号 ( 九百円 ) マガジン・ ・、ソクナンバ 七月号 六百円 一九八ニ年 入手方法 〈・・ディック追悼特集〉ディック、プラ 六百円ット、 川又千秋、萩尾望都、森下一仁、水鏡子・本欄に掲載していないパックナイハーは品 、ノ一月号 栗本薰、鏡明、鈴木いづみ、森下一仁、亀和田 / 矢野徹、栗本薫、田中文雄、山田ミネコ、切れですので御注意下さい ①最寄りの書店に月号指定のうえ注文する。 ナ 武、大原まり子、火浦功、高井信、飛浩隆、キエンサイクロペディア⑦ ②小社の通信販売係へ直接注文する。 ングズリー・ ェイミス、萩尾望都、エンサ ク 田現金書留、切手、 3 郵便振替を御利用 イクロペディア⑩ 八月号 六百円 下さい。郵便振替の振替番号は《東京 6 ー ッ 〈年ヒューゴー / ネビ、ラ賞特集〉シマッ 47799 》送料は次の通りです。 ニ月号 九百五十円ク、ヴァーリイ、マーティン / 栗本薫、火浦 〈普通号〉一冊日 ( 八〇年六、八月号 ) 六 ン〈海外特集〉アイザック・アシモフ、・功、草上仁、山田ミネコ、エンサイクロペ 十五円・ ( 八〇年七月号 ) 七十五円・ - ン・・ハズビイ、ギョルゲ・ササルマン、 O ・シディア⑩ ( 八一年二月号 ) 八十五円、他は七十円。 エフィールド、ボ・フ・レマン、ヨゼフ・ネスヴ マ 二冊日百円、三冊日百三十五円 アドバ / 栗本薫、鏡明、神林長平、水見稜、岬九月号 六百円〈増刊号〉一冊Ⅱ八十五円 兄悟、萩尾望都、エンサイクロペディア⑩〈年ヒューゴー / ネビュラ賞特集〉マ 1 ティ ☆ここに示した以上の冊数の場合の送料は ン、ウォルドロツ・フ / 光瀬龍、栗本薫、神林長 小社までお問合せ下さい なお、送料の残金は切手でお返しします。 三月号 六百円平、岬兄悟、大原まり子、ホーガン、山田ミネ また、図書券の代用は不可。 ・ポールインタビュウ / 栗本薫、鏡明、夢枕コ、エンサイクロペディア⑩ 御注文の際は、住所、氏名を忘れずに必ず 獏、神林長平、・ポール、・セイ・ハーへー 御記入下さい ゲン、萩尾望都、エンサイクロべディア⑩十月号 六百円 8 2
・ハッチと、二十か所の ながらも、それを避けることができないほどあわれなスビ 1 ドだと『マンモス』には十二か所のエア・ロック 貨物用 ( ッチがある。貨物用の ( ッチは船内からでなければ開くこ いったら事実に近い そして、何事か事故が起れば、それはそのたびにそれまで全く経とはできないが、一般用の ( ッチは外部からでもあけることができ る。「だめだ。どこもあかねえよ。あいていれば調査員をたのむは 験したことのない新しいできごとであり、原因たった。 ず、ねえじゃねえか」 工務員の ( ミが舌打ちをもらした。たしかにそうだ。 船団ベガサスで、船団を編成する輸送船『マンモス』が、乗組 ハッチがあかなくなっているのを」 「監督官はたしかめたの ? 員を失ったという報告を《カランコ工代》で受け取ったリトル、、 ( ラ 「たしかめましたよ」 は、三十時間後に、船団ベガサスに追いついた。 「それで何も手を打たなかったの ? 」 七十二隻からなる船団は、三つのむれを形作って《カランコこ アビアは肩をすくめ、両手を開いた。 近傍の小惑星帯をかわし、大圏航路を慣性飛行しつつあった。 いかなる呼びかけにも全く応じなくな 0 た『「ンモス』は、慣性「あの船の中には人りたくないね。それに私には船団監督官として の責任もあるし。この船のことばかりかまっちゃいられない」 航法のままに、船団から離れることなく僚船とともに航行してい ェシュティはくちびるを鳴らした。 「調査員。この船は幽霊船なんだ。この船の中に入るときっと何か こんな船はもう よくないことが起きるよ。引きかえした方がいし 廃船にしてしまった方がいいんだ」 このハッチを焼き切ってください。以前、この船に幽霊が ◎定価 48 円 / 隔月刊 / ⅱ月加日発売 日本 tOLL 年鑑 が生活になったから、をさ 土 呆 0 わって生きたい。プラスチックみ〔 1982 幇新〕 殴年度全メディアの活動を代田 たいな「の本」はいかが ? 一望の下に収録した画期的年鑑。 日田 活字・視覚・聴覚メディアに加 特集ディックにくひったけ ! 全邦訳作品解題 / ディ ; 論 / 大討論会 え、 300 余のファングループ新刊 コミックス、ドラマ、ミュージック、サイ を詳細に収録。ファン必携。 ◎新刊レヴュー / メディア・レヴュー】ムーヴィー 5 判 216 頁 「 LL のほほん」・「たのしい (J) LL 批評」 「。、ラレルワールド通信」 エンス / 連載ェッセイ】′ 東谷 定価 2 円 / 連作小説「べナレスのマッサージ師」 / コラム】「エレベーターの正しい乗り方」他情報満載 本 3 好評発売中 3 2
しフン。矢野徹大明神は例のごとく午前一一時美少年ストリツ。フが人を集め、同人誌だの まで顔を桜色に染めてスケベ話にうつつを湯飲みだのクズだのゴミだのの即 いや高尚な論を展開されておりまし売会があり、どこで誰が何をやってるか主催 た。のエージェントではないかと噂さ者が把握できぬまま怒濤のごとくエンディン れる ( 失礼 ! ) 深見弾氏は各地で神出鬼没のグショーにもつれ込むのでありました。 諜報活動を展開されておりました。深見氏の エンディングでは、クイズの合い間にイデ はから」による , 連本格一 = , 第一作オ〉 , が合体し ( 一」れはすご」 ) ギ ! ( が変物 , 〔、 ( ( ( ( ) 、 織が動いたとの情報もはいっています。 年の開催地仙台の代表者にハリポテの神 そしてそして、仙台の強豪クラプ「スを厄介払いし、矢野、深見両氏の講評をいた コー。ヒオン」はアニメイントロ当て、 だき、やることなくなって O O Z アニ 0 Z 3 ・ 5 を引っさげてついでに酒もや メを再上映し、の暮を閉じまし たらに引っさげて乗り込み、「ああこれは 参加者の皆さん、お疲れさまでした。 祭りだったのだな」と改めて気付くシ ( 十月三十、三十一日・盛岡・レポーター 丿ーズのオークションがあり、暗い雰囲気の 中でディック降霊会がしめやかに行われ、や石戸橋昇 ) んややんやの花火音頭が荒れ狂い、時々時間 イ 新聞がいかがわしげに出回り、淫猥ムードの 赤門蹴とばし白門祭 くものらしい さて二時からは、お待ちかね、ゲストの矢 永遠不滅につづく畑、山、みどり : : : そう野徹氏の講演。 農耕民族である日本人にとって、外界から して多摩動物公園のすぐそばに、マムシと学 の刺激としての翻訳がいかに大切であるか、 生が放し飼いにしてあるという、中央大学の 景キャンパスがあった。オレンジトンネルをぬまた、社交場としての大会といった = = ークな視点をまじえながら、の重要性を 風けると、巨大な白亜のビルが林立する、超未 大いに語られた。お話は創作の方法、さらに 宿来的な光景が広がっていたのである。 ハインラインをはじめ作家ゴシッ・フにまでお コスチューム・ 白鹿亭 よび、氏のお人柄とあいまって実に楽しい二 乱扉をあけたとたん、の濃厚な雰囲気が 時間だった。 の中に . ト物狂ただよう。うすぐらいカクテを ( ー 七時より打ち上げ。乾杯 ! 万才 ! 色紙 は、ダーティ・ペア : ハンコラン、スポック、 ートをもっ とサイン本がとびかう。青年のハ ・ソリスなど十数人がたむろし、根暗の ファンの客を圧倒している。中大研つ大御所矢野徹氏をかこむ宴は、こうしていっ てという翻訳中心のかた果てるともしれずつづくのでありました。 ( 十一月三日・東京・レポーター】大原まり い同人誌のイメージとずいぶんちがうのね。 やはり人間はパランスをとりながら生きてゆ子 ) 0 こ 0 講演中の矢野徹氏