て長くここに置いてはいかん」 いきなり連中が起き出して、こっちが不意をつかれるなんてのはご めんだそ。九時きっかりに芝居はお開きにして、ヒッ。ヒーどもにお 9 「だから今夜、やることにする。 しいかね ? 」 やすみを言って ( 忘れずに時間のことを言うんだそ ) できるだけ急 「今夜 ? そりやーーーそりや、 ℃しとも。ふむーー要する いでここへ戻ってこい。さてと、うちへ帰って少し寝て来るとしょ におれたちは何をやらかすんだ ? 」 う。あんたもそうするがいし 。あんたが出かけるころには見送りに 「あんたが呪文を唱えてこいつらを起こす。そうしたら僕が笛でこ来るよ」 いつらを操ってあんたの叔母さんの家まで連れて行く。仕事がすん だらまた笛を吹いてトンネルに連れ戻し、あんたに眠らせてもらう六時をすこしまわった頃、ゴードンとデ = スは出発した。デ = ス あと千年は眠ってもらいたいものだがね。重要なのはアリ・ハイ は不安そうにそわそわと、ゴードンは発作的に上機嫌になったり消 だ。仕事の前と後にたつぶり余裕をみて、少なくとも二時間はあん沈したりを繰り返していた。ステーション・ワゴンが車道に消えた たの居場所を証明できる人間が必要だ。ということは、呼び出しのあと、スミザースは居間へ入っていった。二匹の生きものは倒れた 呪文は証人の目の前でやってもらわなくちゃならん。そこで、こう時のまま横たわっている。絨毯の血は黒く変色し、死臭の名残りだ いうことにするんだ。ゴアズ・サヴ = イのヒッビー・キャン。フのそけがわずかに空気に残っていた。スミザースはキャンバス製のスポ ばまで出かけて行って、 ッ ハリウッド式に大がかりなインディアン ・・ハッグを持っていた。その中からゴードンにやったのとそっ ショ 1 をやりたまえ。戦さ化粧をしてな。焚火をたいてデニスに太 くりの一対のがらがらと、原始的な小型の管楽器を取り出した。二、 鼓を打たせる。あんたは踊り回って奇声をあげる。何してるんだと三度慎重に楽器を吹いてみて、雁の鳴くような哀調をおびた音を出 ヒッ。ヒーどもに訊かれたら、自然の神々を宥めるんだとか何とか答してから、ポケットにしまった。つぎにがらがらを手にとった。 えるがいし 。そうしておけば、呪文を唱えても全体の馬鹿騒ぎの一 「ようし、相棒、お昼寝はおわりだ。起きて働く時間だそ」 部にしか見えないからな。どんなもんだね」 彼は戸口に移動すると、くつきり伸びたひと続きの階段を背にし 「うまくいきそうだな。それに面白そうじゃないか。連中、のってて、がらがらを振り吟唱を始めた。ややあって怪物の一匹の脚がビ くるぜ。一緒になってやりだすかもしれん。あいつらの好きそうな クリと動き、もう一匹は頭を動かした。スミザースはがらがらを落 とし、ポケットのフリ ことだもんな」 ースを抜きとった。二匹がぎごちなく立ちあ 「そうだろうな。あとはタイミングだ。六時半には日が暮れ始めがると同時に、彼は吹きはじめた。 それは不快な音色だった。調子は単調、明確なリズムがないのが て、それから三十分で真暗になる。焚火を燃やしておいて、七時に はショーを始めるんだ。呪文は七時半。時間を間違えんように気を神経をいらだたせる。しばらくの間、怪物たちは無関心で、鼻をく つけろよ。僕は、このおやすみ中の友人たちと一緒にここにいる。 んくんさせたりうなりあったり、ぼんやりと戸惑いがちにあたりを
ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅱⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅱⅲⅲⅢⅢⅲⅢⅲⅢⅲⅢⅲⅢⅢⅢⅢⅢⅶⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅱⅢⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢ してはその発明家よりも賢明であることを 証明する。この作品はまた短篇集 The Sco ゆ / 0 れ Go ( 集 1971 ) に ほか 2 つの ファンタジイとともに収められている。 7 ' ん / 尾 ( 1964 ) は、中世の教会の 400 ートに達する尖塔建設をテーマとし た、精妙な暗喩に富んた長篇小説。プロバ ー S F ではないが、初期科学の情報をふん だんに使い、それ以上に、天にむかって野 心的な工学実験を挑む人類の、危難と傲慢 と歓喜が語られており、その意味で SF 精 神を要約したものと解釈できる。 ゴールディングの S F との関わりは、彼 の一般主流文学との関わりと同じ程度に周 縁的なものである。しかし彼は、特に初期 作品においては寓話と小説の接線上を巧み に歩んで、驚くほど実り多い成果をもたら 〔 J C / P N 〕 0 ゴールドスミス、シール GOLDSMITH, CELE ( 1933 一 アメリカの編集者。 1956 年から 58 年にか け、ポール・ W ・フェアマンのもとで、ア メージング・ストーリーズ誌およびファン タスティック誌の編集補佐を、ついで編集 主任をつとめた。 1958 年 12 月、両誌の編集 長に就任、 1965 年 6 月までその地位にあっ た ( その後両誌は別の発行主の手にわた り、しばらくのあいだ新作小説の掲載を中 止している ) 。彼女が編集長になるととも に、アメージング、ファンタスティック両 誌の質は目立って向上した。彼女は実験を 奨励し、新人作家の育成にも努めた。彼女 のもとで処女作を発表した作家には、トマ ス・ M ・ディッシュ、ロジャー・ゼラズニ イ、アーシュラ・ K ・ル・グインなどがお り、特にル・グインは「 S F 雑誌にはめっ たにいない、進取の気象に富み、感覚も鋭 い編集者」とほめあげている。 1964 年に結 婚し、シール・ G ・ラリと名が変わった。 255 〔 M J E 〕 ゴードン、レックス GORDON, REX イギリスの作家 S ・ B ・ハフ S(tanIey) B(ennett) Hough ( 1917 ー ) が最も多く つかう筆名。この名前は S F にのみ使われ るが、また本名でも境界的な S F スリラー 刃ェツ c 〃 0 ”おの〃厖 r ( 1956 ) や、原爆による 破減もの召 00 ” e 刃ん眦厩ん〃 0 ″ K1961 ) を発表している。レックス・ゴードン名義 のデビュー作は U が 4 239 ( 1955 ) 。無 政府状態にある未来社会が、はじめのうち は愚劣に、しかし最終的には迫力満点に 描かれている。『宇宙人フライデイ』 No Man ・ / 靃 y ( 1956 ; Ma ”米 ) は、最も力のこもった作品である。ダニ 〔次しにつづく」 〔 J C/ P N 〕 が常に不協和音となっている。 を少々うわすべりに使う傾向が見え、それ はうかがわれるが、 S F テーマと科学情報 には、人間の行動論理についての深い理解 る。そのキャリアを通してゴードンの作品 する標準的な疑問がひととおり提出され 時間旅行もののスリラーで、予定説にかん 7 ' / 〃尾 ( 1962 ; 圜 T T / 襯け 0 だ英 ) は する。『未来を変えた時間』窺 r 立 7 ' 厖 g ん 助力もなしに生き残り、子孫をのこそうと ほぼ同様で、不時着した男女が何ら文化的 Ⅳの・ I み Ec ん 5 英 ) も、テーマは前作と る ) 。お耘立ん / / 尾 & 4 ” ( 1959 ; ßThe が、筋書きにはかなり似たところが見られ には彼の名前こそクレジットされていない 1 号』しん・ 0 Crusoe 0 れね 1964 の漂流譚がつづられる ( 映画『火星着陸第 のの、静かな説得力のある文章で、火星で で、科学考証にあやふやなところはあるも ー』。房れ” C を語りなおしたもの ノレ・デフォーの『ロビンソン・クルーソ XVII
マが解き放たれて " 齧り屋。どもがあらわれ、殺しまわ「たのでも結構忙しくなりますから。もう予備学校に入れてあるんです。 スで手なずけることずれ ( 1 ヴァードかプリンストンに行くでしような。僕がそちらで す。はじめの勢いがしずまったところをフリー お祖父さんに会う頃には、あいつも金持になるでしよう。僕はあの ができました。今はすっかり元どおりになっていますよ。連中はい まーーーお笑いになるでしようがね、お祖父さんーーある家の下のト子が裕福になるように準備をしといてやりたいん : : : お祖父さん ? ンネルの中にいますよ。今まで二匹の死肉食らいの墓場だったトンお祖父さん ? 」 微風が起こり、煙は吹き散らされていた。スミザースは土をすく ネルですが。そいつらも今は減びました」 って燃えがらの上にかけ、足で踏みつけた。彼は林をぬけて車に戻 再び耳をすましてから、彼はいった。「しつかり閉じこめてあり ーマをあてがってきてやりました。連中はると、狭い道での方向転換に必要なややこしい操作をや「てのけ、 ますとも。新しいテイハ その男を永久に食いつづけ、そうしているかぎり逃げ出すことはで山を下っていった。 山道からアスファルト道に出、そこから ( イウ = イへ。ゴアズ・ きますまい。偉大なる精霊が整えられたとおりに戻ったのです」ま た間をおいて、「ゴードン・ = ヴァンズという男です。悪い男ですサヴ = イで彼は ( イウ = イを離れ、しばらく車を停めて感慨深くあ よ、お祖父さん。むかし悪しき精霊に仕えたまじない師にも劣らずたりの景色を眺めた。死んだ土地はいつもと変わらず荒涼と天色 悪い奴だ。その男の先祖の宗教は地獄のことを説いていますが、彼に、薄れゆく光のなか、はるかな林の境〈と続いていた。青々とし は今ではも 0 とひどい所にいます。恐れよと教えられてきた劫火もた未来の兆しはまだどこにもない。だがしよせんまだ第一日目なの 今の彼には涼しいオアシスのような憧れの地にみえるはずです。そだ。 さらに車を進め、アルフレッド・エヴァンズの地所で屋敷へむか して今彼がなめている苦しみは永久に続く。すくなくともそう願い たい。彼が解放されれば " 齧り屋。どもがまた自由になるわけですう車道〈折れる。ここでも何ひとっ変わ「ていなか「た。わずかに からね、そんなことにな「ては困る。その男が、人殺しを企てたあ家の周囲では花々が今しもしおれかけようとしているところだ「 ーマを解き放ってしまったのです。新しいテイハ げくに古いティ ーマをつとめるのは当然の報いというものでしよう」 ふたたび沈黙。彼はいった。「ええ、上乗ですよ、お祖父さん。 狩猟法はひどくなる一方でしてね。鹿は年に一頭だけ撃っていいこ どになってるんですが、たいていあと二頭かそこらは密猟します よ。家内は数年前に死にました。六カ月になる孫がひとりいますが ね。どうでしような、術を教えたものかどうか。孫にはかえって邪 魔にならんものでもないという気がしましてね。正規の教育だけで こ 0 ー 05
妙な化学変化さね。もうそろそろ誰かが死体を見つけて保安官を呼らはあの土地が急速に胴枯れ病にやられるはずだからね」 ぶはずだ。検死の結果がどう出るかだな。死体にはなんの跡もな「わか「たわ、そうしましよう。そのお金があれば助かるし : : : あ 8 ″齧り屋〃といっても実際にかじるわけじゃないらしい。物理たしたちって血も涙もないのね、そう思わない ? 」 的な実体すらないのかもしれん。それでも奴らはちゃんと殺すん「起こってしまったことを有利に活用するのは悪いことじゃない だ。殺すんだよ」 さ。そりゃあ、ヒッビーどもにはいささか気の毒だったがね。天災 スミザースはウイスキーの残りをぐっとあおり、窓の外を見つめ だったと思うのがいちばんだ。避けようがなかったのだとね」 た。ヘレナがいった。「とっても不思議なお話ね、エディ それ「ええ」とヘレナはいった。「そう思うことにするわ」 にとっても恐いわ。ほんとのことを言えば、とても信じられないく らいだわ。みんな実際に起こったことなの ? 」 午後に、スミザースは彼の大型車で山を登り、廃道になった道の 「ああ、起こったのさ。ゴアズ・サヴ = イで見つかった死体の話は終点までやって来た。それより先へは進めなくなると、車を降り、 いまにたっぷり聞けるとも。麻薬中毒の一種ってことでけりがつく徒歩で林をぬけてとある空き地にでた。古いカーキ色のズボンに皮 のじゃないかと思うね : : : あの土地には税金が千五百ドルばかり滞ジャケットにモカシンといういでたちだった。彼は薪をあつめ小さ 納になっている。それプラス経費分であそこが手にはいるそ。今日い焚火を燃やした。火が燃え尽きて明るい燠となり、白煙のほそい のうちに手を打ったほうがいいな。これからは青々としてきて、 柱が静かな空に垂直に立ちのぼりはじめた時、スミザースはひくい まにいい土地になる。値がでるぞ」 声で呪文を唱えだした。上着のポケットからひと握り取り出した何 「どれくらい ? 」 かを、燠の上にふりかけた。 「わからんな。五十万ドル、というところかね」 もうっと濃い煙があがり、広がって、風もないのに激しく渦を巻 「もしそれが本当ならね。本当でなかったら税金の滞納分だけの値きはじめた。数分後には動きはおさまり、それは小さい雲となって 打ちもないわ。いままで何ひとっーー・何ひとっ育ったことがないんじっと燠のまわりに垂れこめた。いまや煙は薄れ、ぼんやりとなが ですもの」 ら視界がきくようになっていたが、スミザースから焚火を隔てた向 「これからは育っとも」とスミザースは自信ありげにいっこ。 うがわにただ一カ所、めだって濃い塊があった。その塊にスミザー 「そう、そうしたら、わたしたちふたりとも、ちょっとしたお金儲スは話しかけた。「お祖父さん、あなたの霊ですか」 けができるわね」 彼は答えを聞いた、あるいは聞いたように思った。そして続け た。「近況をお知らせしたかったのですよ、お祖父さん。僕が″齧 「僕はビジネスマンだ。チャンスが舞い込めばせいぜい利用する。 あんたもそうしたまえ。ゴードンの家もこれであんたのものだよ。 り屋″と戦って負かしたことを、お知らせしようと思いましてね」 できるだけ早々に売りに出したほうがいい。 僕の予想では、これか彼は言葉を切って耳をすました。それから、「手違いからテイハー
レヒ三ウ 者と共有させるところにあるんじゃないかと 心ひそかに思「ている。『火星の砂』や『銀 ' 。。・磯、。 ( ・籤。。 ( ( ( ・ ~ 巖 ( ( ( ( 第・ 河帝国の崩壊』のラスト・シーンはそんな少 年の夢想が実現していく心地良さだ。 ( もし かしてすべてそういうところがあるのか もしれない ) そして呪文のように唱えられて いたのは、自分が正しければ、世界は正しさ を支持してくれるという信念である。そし て、自分と世界はよりよき未来へ手をたずさ 水鏡子 えて歩いていくのだ。 けれどもやがてクラークもいつまでもそん ただ、『タイムスケープ』は破局をむかえ ペンフォードはまちがいなくクラークの正な子供っぽい夢を抱えつづけていけなくな 嫡である。一人として継ぐことのできなかつる。自分と世界の蜜月時代が終わった時かた未来から過去へと歴史を変えようとして通 たクラークの作風が、七〇年代の時代風潮のら、クラークの誇大妄想は影をひそめ、世界信を送るという地味な話であ「て、邦訳のあ は小さくなり、主人公は子供つぼく開けゆくる前二作にくらべ主人公の個性は強烈でな なかでみごとに甦った。 。未来からの通信という馬鹿げた仮説を信 クラークの時代、世界は夢を追う少年にや未来に胸をふくらませなくなった。そうしてい じこんだばっかりに、まわりの科学者から疎 さしかった。世界の安定した流れを、一見妨クラークは老いた。 外されてイジイジといじけるゴードンをはじ けれども真理の前では科学者はアナキスト げるように思える行為も、それが真理を求め めいかにもどこにでもいそうな人間ばかりで てのものであるなら、ただひたすら追いつづであっていいのだ。世界と、社会と折り合い けていくうちに、世界は隠されていたもうひをつけられないなら、世界を社会を捨て去れある。少なくともこのじ 0 くり書き込まれた とつの相をあらわにし、少年の夢の実現を助ばよい。所詮それらは地位や名誉というよう小説の中では『夜の大海の中で』のような主 人公はむしろ妨げにしかならないだろう。 けようとする。一つの夢を追い求めてきた少な世俗の泥濘にすぎないのだから。 ラドックスの処理は この小説のタイム・。ハ 年は、いつのまにか、もっと大きなもっとすかくしてペンフォードの主人公たちは折り 合いをつけようとしない世界に果敢に戦いをきわめてオーソドックスなものである。その ばらしい新しい時代の幕あきに関与していた 意味では新味はないといっていいかもしれな リードし挑んでいく。だから『夜の大海の中で』は、 ことに気がつく。その新しい時代を いが、微妙に変化していく未来社会の描写が ていくのは彼自身なのである。象徴的な夜明夢を追い求める男の話であるけれど、同時に 。そしてなにより、この小説で一九九八 けの光の中で、彼は決意をあらたにし、新し自らの信じた道に立ちふさがった障害物をひ 年という時点がどうやって設定されたかとい とつまたひとっと打ち倒していくヒーロー い時代にむけて第一歩を踏み出していく。 ストーリーでもあるのである。 ( あとでよくう点に着目してほしい。 実はクラークの魅力というのは、自己中心 この本はアメリカで一九八〇年に刊行され 的な誇大妄想、世界は自分中心に回っているよく考えると、実はマッド・サイエンティス トという種族も同じ弭屈を唱える権利があるた。この年ペンフォード三十九歳。 のだ、自分は世界になくてはならない人間な 一九九八年からの通信は一九六一一年のカリ のだ、というような子供つばい世界認識を読はずなのだ ) グレゴリイ・・ヘンフォード著 『タイムスケープ』 時を超えるメッセージ 駝のをきた、 : 9 すい : をうこ心は可か ? イ - おー′くラ 、二ドッツみに物も学せをリアルく をキ物登三。 : 第寧みツ気 : ! 田 6
うかがったりしていたが、やがてついにフリースの効果が鈍い精神ゴアズ・サヴェイは荒れ地であった。十五から二十エーカーばか りのこの土地が、かってゴアという名の開拓者に下付された三千工 に浸み入った。と、二匹はまるでひとつの生きもののようにくるり 彼よ十八世紀半ば ーカーの地所の名を今にとどめているのだった。 , ー と向きを変え、スミザースを見た。 スミザースの顔に汗が滲みでた。とっさに逃げ出せる身構えをしにここを区分けして農場や屋敷の用地にした。ゴアが手に入れたと たものの、流れる音色にはいささかのためらいもない。不規則に途きからきわめて望ましい土地だったものが、続く二世紀の間に値打 切れた一つの音を長く吹き鳴らした。遅めのモールス信号にどこやちは上がる一方で、その歳月のあいだ、ほとんどの区画が手から手 へと転々とした。その過程でかなりのものがさらに小さい農場に分 ら似ている。やにわに、そしてそろって、二匹は右手を振りあけ、 かたれ、すでに一九三〇年代にはますます細分されて住宅用地にさ ローマ式に敬礼した。 スミザースはフリ いつれたところもあった。手つかずに残った大きい区画には、どれも莫 ースを口から離し、顔の汗をぬぐって、 「よし、 しいぞ、了解。さあ、ちょいと稽古をしような」二匹大な値がついた。ふたつのエヴァンズ屋敷はこれに該当するものだ っこ 0 は身動きもせず、敬礼したまま凍りついて立っている。スミザース は笛を口にあてると、前のように怪物どもをひたと見すえながら再そこは起伏のある田園地帯で、地形はゆるやかな斜面から中程度 の丘陵まで変化に富んでいた。富み栄えた農場にまじって広い原生 びあの音を吹きだした。二匹は動きだした。はじめはまったく同一 林が残っている。林のなかを澄みきった小川が流れ、鳥獣も豊富に の動きだったのが、スミザースの技と自信が増すにつれててんでに 別の動作をするようになった。スミザースが部屋の中を歩きまわらあった。夏には緑と黄金色、秋には赤や黄色の祭典となる。寒く白 い冬も、凍てつく飢餓というよりは腹いつばいの冬眠の季節であ せると、最初は危つかしく、ゴードンの財産に若干の損害をもたら したものの、しまいには正確に家具のあいまを縫ってほとんどぶつる。優しい自然が、ここにはあった。 からずに歩けるくらいになった。ついにスミザースは、「結構。準ただ昔の名をとどめたひと続きの地所だけが例外だった。そこだ けはどういうわけか胴枯れ病に冒されていた。かさかさで薄っぺら 備はいし 、ようだな。前へ、進め ! 」と、また笛を吹いた。 一列になって部屋を出、開けつばなしの玄関をぬけて石段をおりの地衣類を除けばそこには何ひとっ育たず、それすらたまにあるだ この上地は灰色にただれた、そこだけ不毛な病 芝生を横切けだ。緑のなかに、 る怪物どものそのあとを、スミザースがついていく。 、低い石垣についた門をすぎ、林の中を歩きだす。日は暮れかけ斑となって横たわっているのだった。昔から時たま、ここをわずか ていたが怪物どもが人目につくだけの明るさはあったので、スミザな値で州から買い受け、あの手この手で地味を肥やそうと数年の月 ースは距離をおいて影のいちばん濃いところを進んだ。いったん動日と多額の金を費す人々がいたーーー・手のこんた排水システム、灌漑 き出すとあとは指示するまでもなく二匹は歩ぎ続けた。スミザース設備、高級な肥料と化学薬品。もくろみは決まって失敗に終わり、 そのうちふたたび州が土地を税がわりに取りあげることになるのた がフリースを吹くのは時たま方向転換させるときだけだった。 9
ジネスマン、いまや人間ではなくなり、金 属と融合し、そのおそるべき現実改変は善 悪をほとんど超越しているかに見える。上 記作品をはじめ、ディックの著書は、平凡 な人びとを宇宙的なあやつり手の夢と悪夢 に直面させる。そこにはポルテージの高い スリルがある。 もっとはるかに正面きって神を扱った作 品も一握りある。その思想の起源は中世占 星術にさかのぼり、どんな惑星にも守護霊 が存在するというものだ。 C ・ S ・ルイス の《ランサム》もの 3 部作がそれにあたる が、その着想は直接キリスト教から発して いる。ゴードン・エクランドとグレゴリイ ・ペンフォードのノヴェラ「もし星が神な らば」 "lf the Stars are G0ds" ( 1974 ) は、後に同題の長篇 ( 統 1977 ) の一部にも 使われているが、 ここに登場する異星人た ちは、宇宙が恒星の内部に住む神々によっ て支配されていると信じている ( このアイ デアはウィリアム・フ・レイクの詩にも見ら れる ) 。同じテーマをさほど神秘的でも超絶 的でもなく扱った先駆的な例としては、フ ランク ートの『鞭打たれる星』 悪魔的な闇の生き物どもも、ロノく一 ・ハワード描くコナンには、まったく日常 のものだ。ジャンル S F 作品に特別おそま しい異星人が登場する場合、 ( 種族的記憶 の話題などを添えて ) 悪魔的な外貌が付与 されることが多い。『宇宙船ビーグル号』 The % the S, 加化 & ( 1950 ) に組みこまれたヴァン・ヴォートの デビュー第 2 作、 "Discord in Scarlet" ( 1939 ) 、そしてキース・ローマーの A ~ g46 De 襯 0 ( 1965 ) どちらに もおそろしく邪悪な生物が描かれる。もう 少し創意に富んだ変種は、アーサー・ C ・ クラークの『幼年期の終り』 C んん。。 d な 五〃 d ( 1950 ; 囲 1953 ) に現われる。 は人類は、まさに悪魔そっくりの異星人に 遭遇する ( キリスト教神話にあるコウモリ の翼を持ったイメージは、かって来訪した 異星人の記億が綿々と伝えられたものであ ったのだ ) 。しかし彼らの性格はなさけな いほど穏やかなものであることがわかる。 ハード S F 作家の S F がかったファンタジ イでは、地獄も悪魔も実在すると仮定さ れ、そこに擬似科学的な合理性が与えられ る。初期の例のひとつはロバート インラインの「魔法株式会社」 "The Devil Makes the Law" ( 1940 ; Y'Magic, lnc. ") で、近年の例にはポール・アンダースンの 『大魔王作戦』 0 加 ra 〃。れ C 。 5 ( 統 1971 ) 、 Ⅳんゆがれ g Star ( 1970 ) ならびにその続篇 『ドサディ実験星』 The D 。市刃の加厖 - ”尾厩 ( 1977 ) がある。 悪魔や悪霊のコンセフ。トも SF では同様 にありふれたものだが、その扱いはたいて い単純なレベルにとどまっている。一般の ファンタジイと同じように、それらは中世 的な地獄の解釈から導きだした、恐ろしい 邪悪な存在であるにすぎない。 S F 的要素 を含んだ悪魔学小説もかなりあり、アンソ ・パウチャーの「スナル虫」。。 Snulbug " ( 1941 ) には時間を歪める悪魔が、またへ ンリイ・カットナーの「その名は悪魔」 "CaII Him Demon" ( 1946 ) には異次元 からやってきた吸血生物が登場する。剣と 魔法ものには、悪魔そのものも現われる。 XII ラリイ・ ーヴンとジェリ ーネルに S F よるダンテの模作『インフェルノ 地獄篇』み。 ( 1975 ) などがある。ノ ーヴェル・ W ・ペイジの最も有名な作品 "But Without Horns" ( 194 のでは、テ レバシー能力を持っミ ータントの物語に 悪魔のイメージが重ねられる。アイザック ・アジモフの「地獄の火」 "Hell-Fire ” ( 1956 ) は核実験の道徳性をたくみについ ート・ショートで、爆発の瞬間をと らえたスローモーション・フィ / レムに、キ 260