キャノーに気づくと、かれはあわてて銃をつきつけ、それから たりして : わずかに銃口をおろした。「おでえ ! 」かれは言った。キャパノ】 運ちゃんがしつこく広場のはずれで待っていた。キャ。 ( ノーは相 5 はそれをジャ = ジアンのいつもの挨拶″よう ! であると理解し手ににつと歯をむき出してから、向いのタ、、 ( コ屋へ入っていった。 こ 0 そして、足首までつもったネクタイやポケット・ブック、つぶれた 「こっちこそ、おでえだ」かれは言った。そして財布をとりだし、 キャンディ・。、 ーのなかから市内地図を引っぱりだし、またゆっく 小銭ポケットから残った一つのダイヤーー百カラット をつまみり通りをわたってキャプに乗りこんだ。 出し、相手に示した。 運転手がもの欲しそうにかれを見た。 ジャニジアンが厳粛にうなすいた。そして、散弾銃を慎重に片手「おまえの母ちゃん、でべそ」キャ、、 ( ノーは言った。 で持ち直して立ちあがり、もう一方の手で一度もしたを見ずに、木「しいくあ ? 」 箱のふたをひらいた。半ダースほど汚れたシャツを引っぱり出し、 「でべそが三つだ」キャノーは地図をひらき、クイーンズ日ロン さらに深く手をつつこみ、なにかを一つかみつかみ出した。 グアイランドのページを出し、苦労してフラッシング・べイを捜し キャ。ハノーにそれを見せた。 あて、ラガーディア空港でしかありえないところに x 印をーーこれ ダイヤモンド。 はすぐマル印にしたーーーっけた。 靴屋はじゃらりと木箱に石ころを放りこみ、その上にまたシャッ運ちゃんがそれを見てうなずきーーそれから、肉づきのいい手を を詰め、ふたをして上に坐りこんだ。「おでえ ! 」かれは言った。 さし出した。 こんどはそれは″あばよ ! みの意味だった。キャ・ハノーは外へ出 キャ。ハノーはつばを吐きかけたい衝動をようやくこらえた。激怒 こ 0 して、さっきくれてやったダイヤの絵をなぐり描き、その絵を指さ 頭痛が、四十二丁目あたりでいったん消えていた頭痛が、またすし、相手を指さし、それから地図を指さした。 きずきと始まった。ぶつくさ心のなかでつぶやきながら、キャ・ ( ノ運転手が肩をすくめ、出ろと親指で合図した。 ーは広場の西のはずれへ戻った。 キャ "( ノーは歯をくいしばり、ぎゅっと眼をつむって二十までか さて、どうしよう ? フーリガンを追いかけて、フィリ・ヒンだかそえた。挙句の果てに、なにか先のとんがったものを手にもっと自 スウェーデンだかメキシコだかへ、出かけて行く気だろうって ? 信が湧くと思いっき、万年筆をもってマンハッタンのページを捜 よは、そうしちゃ悪いかし ? し、五十丁目と二番街の角のところにマル印をつけた。そしてま おれがあいつを捕まえなきや、キャ、、 ( ノーは心のなかで言った。 た、ダイヤモンドの絵を描き、そのマル印に向かって矢印を引っぱ 一年したら、おれはきっと洞穴住いだ。へまな穴居人ができあがるった。 ぜ。空っ腹かかえて、また毎日あくせく力。フト虫の幼虫なんぞ捜し運ちゃんはじっくり絵と地図を観察した。そして、運転席からさ
上にズボンをおろした。 いったいなぜ・ーー何がおこったというのだろう ? なぜ、マック 「これ、あんたーーーマックスさんや。すまんかったーーーすまんことスは、目をさまさないのだろう。 しだいに冷えてゆく若者の体をひざの上にのせて、老ャンは、し をした。わしは、な、そんなこと、するつもりでは、な : : : 」 マックスが激怒しておそいかかってきたらどうしよう。なかばおつまでもいつまでも、そこにすわりこんでいた。 その胸の中に、しだいにひとつの、まっ黒な絶望だけが、他の混 それながら、ヤンはマックスをかかえおこした。かれの手には、た 乱した物思いを圧してひびきわたりはじめる。 くましいマックスの体をもちあげるのは、ひと仕事である。 「マックス。 マックス」 ( こんどこそーーーこんどこそ、それは、本当だったのかもしれな かれの手の中で、若者の、叩きつぶされた頭がだらんとゆれた。 セイ博士こそ、世界の救い手であり、その救出に、太陽系の破 口からも、鼻からも、血が流れている。ャンはそでロでふいた。滅か理想の実現かが、かかっていたのかもしれない ) マックスもまた、自分に何がおこったのか、わからなかったのに ( もし、そうだとしたら ) ちがいない。その顔は、きよとんとした、ほとんど無邪気といって ( こんどこそーーーこんどこそーーこんどこそ ) いい表情をうかべ、あどけない とうてい、革命の戦士とはみえ ( もしそうだとしたらーーわしはこの手で、人類の《明日》を殺し よ、つこ 0 てしまったのかもしれない ) このあどけない、きよとんとした顔。それを、老ャンは、前にも ( このわしが、この手で、《明日》を : : : ) みたことがある。部下とともになだれこみ、寝室でかれの銃がその かれは、子供のように、しずかにすすり泣きはじめた。 胸をうちぬいたときの、プラム大統領の顔であった。 老ャンの絶望と、若いマックスの死体とをのせて、天色の貨物船 おろかしい、獣のような、びつくりして目を見ひらいた顔。 は、何もない空間を、虚無にむけていつまでもっきすすんでゆくの マックスは完全に息絶えていた。 である。 何もかもが、途方もなくこつけいに、そしていかがわしく、混乱 しているように思われた。 誰か教えてくれーーもうわしには、何がどうなのか、全然、わか らない。 こんなつもりじゃなかった こんなつもりじゃなかった。わし は死ぬ気だったのだ。 わしは老い先短い、みじめな老い・ほれで、生きていたって仕様も ないんだから。 2 引
まどろんでいる浅瀬だ。 目をあけると、頬に誰かの手が触れていた。それを自分の手で捉 見えるものといったら砂ばかりだ。上空から眺めれば、それでもえると、ひやりとした感触がそちら側に移った。 かなりの起伏が観測できるが、低いところを飛んでいると、とらえ こちらを見おろしている目があった。長い髪が垂れさがってきて どころのない砂、また砂だ。波の形を憶えられないのと同様、砂でおり、その影の中に双眸が輝いていた。 できた地形を。 ( ターンとして捉えられない。同じところをぐるぐる青白い肌を持っ女だった。それが女だとわかるまでに、すいぶん 回っているのではないか、という疑念にかられる。 と時 ' 間がカカった 「ここまで降りちまうと、レーダーだけが頼りなんだ。むこうが消「ミ えちまっては話にならんな」 自分が探した名前が見当違いであることがわかるまでには、さら 「視界はどうだ ? 」 に多くの時間がかかった。その女は見たこともない女だった。 「もちろんいいさ。良好。見渡す限りの砂漠だよ。それが問題なん 上体を起こし、女と向きあった。鼻筋といい、顎の線といしカ ラス細工のような冷たい美しさを持った顔立ちをしていた。その中 「着陸して探せないのか ? 」 にあって、大きな両の目だけが、ウェットな雰囲気を出しすぎてい る。 「よしてくれ、アール。大みたいに後肢で砂を掘れってのか ? 」 「砂にもぐってるかもしれないぞ。金属探知機を oz にしてるたろ もうそろそろ、根本的な疑問を表明するころだと思った うな ? 」 「おまえは、誰だ ? 」 「アール、気は確かか ? ハギーがどうやって砂にもぐるんだ。そ声が出たのかどうかすらわからなかった。 もそもスタックしないために設計された六輪・ハギー 女は何も反応しなかった。なにもかも呑みこんでしまうような目 「いいから一応、手は尽してくれ」 で、こちらを見ていた。 アーレよ、、・ カほそい声を出した。自分のすることに自信が持てな疑問はひとつの連なりとなって胸の内に湧いてきた。解く手たて くなってきている。 、—はいし」い、つのに 0 スーツもヘルメットもつけていない自分の額に手をやった。 「見つけたぞ ! 着陸する。何てこったいー ここは、月面ではないのだろうか ? だ。車輪の上あたりまで砂に埋まってる」 女は、突然立ちあがって、こちらを見おろした。髪が翻る。 「フィルはそこにいるか ? 」 はしめて背景が目に入った。風景は見なれたものである。白く連 「車の中にはいないようだ。とにかく降りる。それからだ」 なる砂丘ーーどうやら、また月面にいるらしい 女は踵を返して歩きはしめた。一度振り返ってこちらを見る。ど アール、半分当たり 2 6
かれはのろのろと身をかがめた。 てもらえませんか ? 」 「義足ーーー」 ャンの追億をマックスがさえぎった。 かれはつぶやいた。 その声に、かすかな、苛立たしげなひびきがある。彼は心配して とりはずすあいだ、待ってい 「この義足も、もういらんでな。 いるのだ。燃料の減少が、やりくりできる範囲をこえてしまうこと てくれ。少しでもかるい方が、カ。フセルがとおくへゆける」 彼は、すでにヤンのことを考えてはいない。死んでゆくもの この期に及んで , ーー、と云いたげな表情が、気がっかぬほどかすかは、もう死んでしまったも同しことーー生きつづけるものは、生き に、マックスのおもてをよぎった。しかし彼は神妙に云ったーーそていることの重荷をおわねばならぬ。なぜ ? 生きるために。生 の神妙さのうちに、すでにヤンを死者として扱っているものがあきつづけるために。 る。 ャンの中に何かがっきあげた。 「その義足を、ぼくが記念にいただいてもいいでしようか。いずれ ボクッと、鈍い音がした。 に革命が成功したあかっきに、革命博物館をたてます。そこにおさ めてーーーあなたの崇高な行為について、人々に知らせるように」 ャンは体をぐらぐらさせながら立っていた。 ャンはくすくすと笑い出したくなった。若さーー若いことが、必何がおこったのか そして、自分が何をしたのか。 ずしもいいとは限らない ! 若さとはときとして、おのれの滑稽さ にも、残酷にも、傲慢にも気づかない。おのれの若さに陶酔し、酔しばらく、ヤンは気づかなかった。 いしれ、いっかそれが失われるだろうとさえ、想像もっかずに、 目の焦点があうように、ゆっくりと、心に正気が 「若さの勝利」に満足しきっている。かっては、かれにも、そんなの正気がーー戻ってくる。 ときがあったのだ。はるかな昔に。 かれの足もとに、何ものかがたおれていた。 マックスだ。 ャンは、はずした義足を手にもって、じっと眺めていた。 頭から血が流れている。うつぶせたまま動かな 「こいつは、よう働いてくれた」 ャンは、途方にくれて、自分の手をみた。手には、彼の義足が握 かれは、マックスのさしだした手に体をもたせかけ、老人だけの 知る感慨にみちて云った。 られている。それの先端が、べっとりと、血と、黒いマックスの髪 「もう三十年からわしの一部だった。クーデターも、追放も、何もの毛数本がこびりついている。 かもみてきた この目はちがうがね。これは、やつらが、拷問の誓ってもいい。 そんなつもりは、なかったのだ。 ときくりぬいたのだ。この指はーーー」 ャンは、いたずらをした子どものように、あたりを見まわした。 「燃料をもたせるのに、速度をおとす計算のしかたを、教えておい そして、あわてて、義足をふるえる手で足の切口にとりつけ、その いくぶんか 250
を向け、交差点へ向かって一、二歩あるきかけてぎくりと立ちどま キャスノーは思考を中止した。すぐさきの交差点手前に、市内横 り、また振りかえって新聞売子のところへ引きかえした。 断・ハスがとまるのが、ちらりと視野のすみに見えた。かれはパスを 4 思ったとおりだった。少年の手にした新聞の見出しには、こうあめがけて走りだした。 った。《もとんるにうる、いまつぶ、くいふらっと (MOTN LN まっかな顔の運転手が、からだをうしろにねし向けて肥満体の女 IUL IMAP QYFRAT) 》 性にぎゃんぎゃん吠えたて、相手もまた危険なパラソルを振りまわ 新聞名はティリー・ニューズそっくりの字体で、。ヒオヌウ・ヴァ しながら、負けずにわめき返していた。その奥のせまい通路は、あ イル (Pionu Va 」 l) となっていた。 つけにとられた顔、怒りくるった顔顔、がなりたてる顔顔顔でいっ 眼に警戒の色をうかべて、少年がじりじりと後退した。 ばいだった。脱日した子音と母音で、空気はやけどしそうに白熱し 「待ってくれ」キャパノーはあわてて言った。 : ホケットを探ったがていた。 小銭がなく、財布をたして札を一まい抜いた。かれはそれを少年に さらにその奥で、たれかが金切声をたてて後部ドアをどしんどし 突きつけた。「新聞をもらおう」 んとたたいていた。運転手が悪態をつき、ドアをあけようと前方に 相手は札を受けとり、ちらりと見てキャスノーの足もとに投けっ 向きなおった。これを好機とでぶ女が運転手の頭を思いきりなぐり け、とたんに身をひるがえして一目散に逃げだした。 付け、つづく乱闘が一段落したときには、キャ。ハノーは通路の中ほ キャ・ハノーは札をひろいあげた。四隅に大きく 4 と活字があっ どあたりまで、料金も払わずにぎゅうぎゅう押しこまれていた。 た。おなじみの・ワシントンの肖像にかさねて、 CFRA EVOF ・ハスが走りだした。ヒステリー状態の乗客たちは、、 ( ス停ごとに降 AP LFIFAL YK IQATOZI) と銘が刷りこんであった。その下 りていったが、代わりにどやどや乗ってくる人々も、たいしてまし に (YVA PYNNIT) とあった。 な精神状態ではなかった。キャパノーは気づいて愕然としたのた かれは息苦しくなって襟もとをひろげた。あの振動装置ーーーしか が、まともに会話のできるものは誰もなく、字が読めるものも一人 し、そんなばかな。かきまぜられたのは世界であって、キャ、、ハノー もいなかった。 ではない。い や、ありえない、不可能だ、なぜなら : 騒音は高まっていった。運転手の吠えたてる声さえ、いまはもう 山高帽の薄汚れた小男がいきなり走り寄って、首っ玉にかしり付かすれ弱々しかった。前方では、すさましい警笛の大合奏がまきお こうとした。「ぼずく」男はわめいた。「へんどげへえくん、へんこりつつあった。キャ・ハノーは必死に精神統一をはかり、ものを考 このなにか どげへえくん ? ふううずいいぶ、るむうとざあっくん ? 」 えた。どこまでこんな ? こいつは重大な点なのだ キャ。ハノーは男をつき飛ばし、あとじさりした。 は全ニーヨーク、あるいは全世界で、同時に起きたのだろうか ? 男がそのまま手ばなしでわあわあ泣きだした。「ふううふ , ・」男それとも、そっとする考えかただが、これは一種の伝染病で、行く : 嘆いた。「ふううふ、べくんるなはぶ、しやおお ? 」 先きざきにかれが自分で運んでいくのかフ
「あ、お金いいです。ただでお譲りします なんですよ」 トの半分より少し下のあたりに、小さく、 一羽の白い鳥が飛んでいた。鳥は翼を大き「へえ : : : 」 ・ほくは、ちょっとがっかりした。このレ 「た、ただで ! 」 く広げ、天の高み目ざして昇っていくとこ コードは売り物じゃなかったのだ。でも、一 あんまり驚いて、ぼくは彼の顔をまじま ろのようだ。 じと見つめたまま絶句してしまった。する ばくは自分の気持ちを押し殺せそうになか それにしても、奇妙なジャケットだっ と、青年は央活に、はははは、と笑いなが た。題名も曲目も、演奏者の名前すら記さ 欲しいなあ、このレコード・ : : ・ ら、・ほくの手からレコードをとって、店の れていないのだ。・ほくは、ジャケットを手 。ほくが表情を変えたのを見ると、青年は名前の入った黄色い紙袋に入れてくれた。 にとって、裏側を見たが、そこにも表から ・ほくは彼に、もう一度心の底から礼を言 続いた青空があるだけだった。 言った。 一体、どんな曲が入っているのだろう「欲しいですか、それー ぼくは、思わずうなずいた。 「本当にありがとう ! 」 か。そう考えると、・ほくはその場から動け 「ええ、とっても ! 」 なくなってしまった。 彼は照れたように、カールのかかった長 すると彼は、意外なほどあっけなく言っ い髪に手をやった。 欲しいな、このレコード・ : ・ こ 0 「いいんですよ。ただし、ひとつだけー その時、誰かが声をかけた。一 「それ、気に入りましたか ? 」 「じゃ、お譲りしましよう」 そこまで言うと、青年の顔から人懐こい ハッとして、振り返った。声の主は、レ いいんですか ? 」 笑みが消えた。急に真面目な口調になっ ジの傍に立っている、髪と髭を長くのばし 青年は肩をすくめた。 「構いませんよ。あなたが本当に欲しいとて、彼はぼくに言った。 た青年だった。彼は、昔よく見た「ヒッピ 「いつの日か、そのレコードはあなたにと ー」なる人々に似ていた。 思うなら、今はあなたが持っているべきも って必要ではなくなります。必ずね。そし ・ほくは、レコードを手にしたままでうなのですから」 ずいた。 たら、この店にまた持ってきて下さい 「いやあ・ : : ・本当に : : どう . 、も亠めりが , こ 「ええ、このジャケットが、すごくいいも しいですね ? 」 謎めいた言い方だった。ぼくには、彼が のだから・ : : ・」 思わぬ好意に、ぼくは何と言ったらよい 何を言いたいのか、よく判らなかった。 すると、彼は髭の下から真っ白な歯を見のか判らなかった。 「必要でなくなる ? どういう意味です せて笑った。 「えと、あの、それじゃ、これ か」 「ーーーでしょ ? それね、・ほくのレコード 払いましようか」 、くら 幻 2
タトラデン人といっているのである ) と、それに原住種族の、連邦 ハイド 1 ランは、われにかえったように、ふんと鼻を鳴らした。 での称呼ではタトラデアである。イ ( オヌたちを相手に、司政官とし「では : : : きみの一五星系行きについての、具体的な打ち合わせに 3 て考え、司政官として行動すればいいのである。 かかろうか」 「これは : : : まるで愚痴になってしまったな」 デスクに戻ったとき、むこうからメルニアがやって来た。 「今しがた、内示を見たわ」 メルニアはいった。「担当を与えられたんだって ? 」 「うん」 彼は答えた。 「おめでとう」 メルニアは手を差し出し、彼はその手を握り返した。 「内示では、一〇〇三星系のタトラデンとあったけど」 メルニアはいう。「でも : : : たしかあなた : : : タトラデンの : 「そう。出身世界」 「まさか」 「本当だよ。これまでにも、そういう例がないわけしゃないそう 「出身世界 : : : ねえ」 メルニアは呟く。「きっと : ・・ : 厄介だと思うな。もっとも、 らこんなことをいっても、あなたが辞退するとは考えられないけ ど」 「ご推察の通り担当を承諾したよ。きよう、一五星系へ出発して、 詳細説明と再訓練を受ける」 メルニアは、目をまるくした。 「きよう ?
ショウ・ウインドウや暗い商店をながめていた。どこか山の手の方ッジへ行っていないとしたら、あそこであいつを捕まえられるかも これがキャノーのはかない唯一の希望だった。 角から、錯乱した怒鳴り声がきこえていたが、ひとりふたり通りをしれない。 行きかう人は無言で、当惑しきっていた。 四十一番街を南へわたった八番街で、かれは道ばたにイエロウ・ 七番街との角に無残な事故車があり、八番街との交差点もまたまキャ・フがとまっているのを見つけた。運転手は「 zi-Zy 「 (i) 標識 あ似たように悲惨だった。ということは、かれは気づいてほっとしのしたでレンガ塀にもたれ、身ぶりでひとりごとを言っていた。 キャ・ハノーは相手の袖にとりすがり、必死に南のほうを指さし たのだが、このプロックにまったく車の往来がないのはそのせいだ ィートほど塀 た。男はぼんやりとかれを見つめ、咳ばらいして二フ ったのだ。片手で頭を抱きかかえ、かれは小走りに通りをわたり、 ぎわを移動し、中断された講義を再開した。 まっくらな—地下鉄の入口に飛びこんだ。 むかっと来て、キャスノーは一瞬どうしようか迷ったが、それか 地下街も駅そのものもからつぼで、よく音がひびいた。たちなら ぶ新聞スタンドに売子の姿はなく、ビンポール・マシンで遊ぶものらポケットに手をつつこみ書くものと紙を捜した。そして、例の世 もなく、両替所にも駅員の姿はなかった。吐気をぐっとこらえてキ界を救うアルファベット表が記された封筒を見つけだし、やぶいて ャスノーはひらきつばなしのゲートを通り抜け、足音をひびかせて内側の白いところをひろげ、大急ぎでそこに絵をかいた。 階段をくだり、ダウンタウン行きのホームへ入っていった。 快速ホームに電車がとまっていた。ドアがみんなひらき、こうこ うとライトがともり、モーターが低くうなっていた。キャ。ハノーは 先頭車両まで走っていき、連結部の通路をとおって運転士室に入っ 制御レ、、ハーがなくなっていた。 呪いの言葉をつぶやきながら、キャ・ハノーはまた街路へもどっ た。なんとしても、フーリガンを見つける必要がある。見つかるか運転手が疲れた顔で見ていたが、やがてかすかに知性のきらめき 日ーしカけるように どうかチャンスは百万に一つ、いまむだにした一分がそれこそ命と があらわれた。キャパノーは最初の絵を指さし、、、 りの一分になるかもしれないのだ。 相手を見つめた。 あの小男はたぶんまだ、この惑星上にいるだろう。しかし、キャ 「おうえへ ? 」と運ちゃん。 ・ハノーのアパート で、あいつが興味を示した品物の産地は世界各「ご名答」キャパノーは熱烈にうなすきながら言った。「では、そ 国。フィリビン、マラヤ、スウェーデン、インド そして、グリ のつぎはーー」 ニッチ・ビレッジ。まさかとは思うが、もしかしてやつがまだビレ 運転手は考えこんだ。「むとしえる ? 」 こ 0 0 ロ 8 4
けゆ ね手 あなたが 作ったんだったら 中和剤くらい できるんでしょ ? せつかく 面白く なってんのに ぶちこわすこと ないじゃない こりやー もっと気合を いれて 騒か′ルカー そーじゃない , そこのフリは , れて ・一なイ ロ 5
落着くんだ、かれは自分に言いきかせた。どこかにまだ、落し穴 した指先で、フーリガンが慎重に金属棒のてつべんのこぶをたたい があるのかも。最善の方策はダウンタウンへ出かけて、どこかの宝 た。こぶと棒がすごい勢いで振動しはじめた。 突如として、頭のなかをカクテル棒でかきまぜられているような石商に鑑定してもらうことだ。さいわい、かれには一軒こころあた 奇怪な気分がやって来た。もそもそ脳味噌がくすぐったかった。めりがあった , ーーフレンチ・ビル、愛国コミックス社の廊下をはさん ったやたらに元気が出てきた。とても幸せな気持だった。「へえつだ真向い。かれは大小二つの石を選び、財布の内側の小銭入れに落 しこんだ。残りは興奮にうちふるえながら、紙袋に入れてキッチン ! 」キャ・ハノーは言った。 「くふえ ! 」フーリガンが叫び、嬉しそうに笑った。それから、テの流しの下にかくした。 イエロウ・キャ・フがちょうど通りを流していた。キャ・ハノーは大 1 プルの道具をつかんで、どこかにしまい込みーー・キャパノ 1 には もうちょっとで、それがどこへ行くか見えるところだったーー立ち声で呼びとめ、乗りこんだ。「四十五と五の角」 「ぶあ ? 」運転手が顔をねじ向けた。 あがった。キャパノーは玄関まで妖怪を送っていった。相手がまた キャパノーは顔をしかめた。「四十五丁目と」かれはなるべくは キャ・ハノーの袖をかるくたたいた。キャ・ハノーは相手の手をぎゅっ つきり発音した。「五番街の角だ。やってくれ」 とにぎり、ポン。フの柄のように打ち振った。それがすむと、フーリ ガンは一度に三段ずつ陽気に階段をかけおり、たちまち見えなくな「ずあうす」運転手が叫び、車をとめた。「おうふけるぐとれす、 ういるふつく。ぶのぐぬうどいぐ、やあのりつく ? 」 っこ 0 数分後、窓から外をのぞいたキャ・ ( ノーの眼のまえを、二番街縦キャパノーはあわてて車から出た。「ぶこす、ちょいぐう ! 」運 転手が怒鳴り、ギャをきしませ見るまに遠ざかっていった。 貫パスの屋根に乗って、フーリガンが通りすぎていった。 。ほかんと口をあけて、キャ・ハノーは遠ざかるタクシーを見つめ た。耳た・ほがかっと熱くなっていくのがわかった。「畜生、なんで あいつの車のナイ ( ーを見逃したんだ」かれは声に出して言った。 「だいたい安全な家のなかで、じっとしてないのが悪いのさ。こん 多幸症的情緒は二、三分で消えてなくなり、あとにはけだるい、 ・コッダム・シティ な馬鹿げたいかれた町に、よくもまあおれは住んでいるよ」 だが妙にむ細い気分がのこった。キャ・ハノーは自信回復のために、 かれは歩道にもどった。「いかあすか、あにい ? 」耳もとで声が ふくれたズボンのポケットの中身を、テー・フルの上にあけてみた。 かたく冷たい、まばゆくカットされたした。 たくさんのダイヤモンド キャパノーはぎよっとして振りかえった。新聞のたばを抱えたソ 美しい小石。かれは数をかぞえてみた。ぜんぶで二十七個、百カラ ( カスだらけの少年が、二つ折りにしたやつを差しだした。「すま ットから三十カラットくらいまで。今日の総取入ーーーぜんふでいく ないけど、おれのことは放っといてくれ」キャパノーはくるりと背 らだろう ? 4