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検索対象: SFマガジン 1983年3月号
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1. SFマガジン 1983年3月号

◎ ◎ 〇 ◎ 〇 我等骨ある限り骨を喰らいて生きる者なり かくて残りし者達祈りを識り再び跪く ドウォーを喰ら - 減・ほさんとす たとえ汝骨を求めて来たりといえども 我等ドウ ンが風馬車上から吐ぐ息を憎む者我等もはや愚者に非ず 我等新たなる名を得ん 地の下の我等の棲家は広し なカ 残る全てのラーンが生みし者、生き物達 我等魔王の生みしドウォーンなり 我等トロルなり我等骨を掘り起こす 銀の大君は我らに堅牢なる鋼の風馬車を与えん、我等ドウ恭いン喰らふ 午後の静寂の中彼の門をくぐりて去れり 神よ王達よ我等はドウォーンなり その引締りたる豊かな肉を好む者な 一頭の一角獣古の高貴なる司祭と残れり 我等はドウォーンなり ベルトレーン達の最後の日を見届けんと 今日此骨塚の上に死が訪れん ラーン、ラーン、ああラーン、ラーン 我等リソンなり我等死を導かん 老いたアガディンマールは再び書を詠み 亠の亠のラーン、ラーンよ 我等ドウォーンが風馬車上から吐く息を憎む者一つのリソンの卵を取りて陽の熱の下に置けり かくて獣と人は龍より始まれり なり 我等は貴方に何の悪しき心持たず 時の書より我はその数行を詠むなり 我等ドウォーンを喰らう ラーン、ラーン、亠め亠のラーン、ラーン 我等ラーンの子なり 我等ドウォーンを減・ほさん 我等かって陽の谷間を行かん 、あ - あ - ラーン、ラーン 白馬に打ち跨がりて飛べば叫ぶ者あり ラーン、ラーン、ああラーン、ラーン 我等宇宙の探究者 変化の徴霧立てり 〇 闇よ来たれそして暁に闇を落とせ 貴方は我等が何の悪意も持たぬことを知りたる我等かって我等の支配者の顔を見たり 若々しく気高くいぶし銀に輝くその顔を 未来の風過去の嵐草原にて出逢い 者なり 我等宇宙の探求者 遂には渦巻き合わさり再び変化の源とならん時の書より我等その数行を詠むなり ( 資料提供高綱裕介 / 山本聡 ) 我等リソンなり、我等死を導かん リソンの連命の雲ひらめく そは彼等の未来を封じ過去を奪う トロル達は塚上で歯を鮮紅に染め残骸を食らい 彼等の寝ぐらを夢見てり 彼等は運命の馬車に乗せられ追い払われり れ そして伝説の生き物達彼の門をくぐりて消え すス 去れり その時ラー . ンの子ら自由となりて有るべきもト のの為東に向かいて祈れり コク のヒ そして神に仕えし司祭雨の中その名をベル ンク トレーンからアースと変え給う ホマ うつろい きざし うつろー・ て ひざます

2. SFマガジン 1983年3月号

◎ を ) ノ ? グ ◎ 〇 0 〇 〇 ラーンの子ら ラーゾの子らの一行 我等はラーンの子供 我等かって陽の谷間を行かん 白馬に打ち跨がりて飛べば叫ぶ者あり 我等宇宙の探究者 我等かって我等の支配者の顔を見たり 若々しく気高くいぶし銀に輝くその顔を 我等宇宙の探究者 若き予言者よ 我に汝の耳を貸したまえ ドウォーンの暁は近づき 暗黒は辺りに満てり 歌う子供達は我にラーンを知らしめる ・渚は震え古き時は身を潜め 天の業は歌声のうちに砕かれる 神殿へ行き汝の角笛を吹かん 僧侶木の魔法使いを呼び出す 僧侶白馬の王を呼び出す 清らかなる笛の響き いにしえ 古の者僧侶は呼び出す 洗礼に依るカースト社会 鞭振るうドウォーン族の主人達は 風の中角笛の音を嘲笑えり しかし愚者は若くその魔力は弱し たとえ彼等が居酒屋に住み往来に眠ろうとも 長達は火の森に棲む おさ 森の一端には焦熱の地有り 荒れし岩地に泥の沼淀んだ川流れり ほふ これら皆汝の情熱を闇に屠り うつろわ 汝の夢を変容せしむものなり 丘から現われしトロル塚より下方を睥睨す 戦の朝そこには静寂のみ有り 人たるべルトレーンよ汝ら再び甦らん 此の大地の上に 我等は魔王の生みしドウォーンなり 鋼の大君は我等に堅牢なる鋼の風馬車を与えん 神よ王達よ我等はドウォーンなり 我等は大地ほど古きリソンなり 我等には生も死もなし我等はリソンなり 龍は今日昼に子を生む 我等肉もてその子を育てん 我等は骨塚より出でし者なり 0 0 0 ゝ 3 4

3. SFマガジン 1983年3月号

ある少女のシベリア日記 南海に祖国の旗を アレグサンダー・ケント / 高橋泰邦訳定価五八〇円 シルヴァ・ダレル / 佐藤高子訳 〈海の勇士 / ボライソー スター リンは代、ユダ シリーズ⑤〉列強の思惑が 庫 渦巻く東インド材日 , ) 強制連行された一家の ったボライソー艦長。その 苦難の生活を、前一境に 行手に替む凶悪な敵とは ? もめげす明るく生きた 少女の張を通して描く 定価三六〇円 カ亡命詩人、雨に消ゅ ウィリアム・ I ・ハラハン / 村 -2-: 博基訳定価四四〇円 〈アメリカ探偵作家クラブ賞受賞〉白昼堂々 と誘拐されたソ連の亡命詩人。謎を追う一一人 ( 一愛する者の名において ( 上 ) マルタン・グレイ / 長塚隆二訳 の男と大胛な救出作戦を描く桀作スハイ小「 占領下のワルシャワのユ ダヤ人ゲノ の著者は抵 ~ 几亜動に加っ ( 当ヴァルハラ最終指令 z 丿ー・ るか、両親と弟を虐殺さ パタースン / 井坂清訳定価四一一〇円ョ 定価三八〇円 ポルマンからナチスの存亡を睹けた特命を受 け、炎 -= するべルリンを脱出した少佐。 ・ヒギンズが別名義で放っ戦争冒険小説 , 文愛する者の名において ( 下 ) 〈 2 月刊〉 マルタン・グレイ / 長塚隆一一訳 カ 戈麦、肛業に成功した著 ス。ハイク〈上・下〉 ( 仮題 ) ポルシ , グラーヴ & モス 者は、と四人の子供に ャ クロード・クロツン 市心まオるカ・ アメリカを買って ト命と闘った勇気の記兪 ロバート・ウィーパーカ 定価三八〇円 愛する者の名において 愛する者の名において

4. SFマガジン 1983年3月号

種もの雑誌が星新一の作品を発表してい 私もこの本のために序文を書き、この作家星新一氏の連作『 / ックの音が : : : 』を全 8 て、中にはこの作家の。フロフィールを載せ 5 の。フロフィールと作品の特色を紹介してい 文訳してもらった。私はこの巧妙なプロッ たものさえある。一九八一年十月十六日、 る。本はすでに印刷に廻されており、陳達 トを用いた作品が大好きだからである。 「光明日報ーに発表した拙作「ショート・ 林の装丁によって黒竜江科技出版社から出 筒井康隆、眉村卓、矢野徹、杉山祐次郎 ンヨ】ト の話」でも、星新一氏の創作の概版される予定である。また、孟慶枢の編集らのも、さまざまな雑誌に載ってい 況や作品の特色を紹介し、″星新一のショ による星新一ショート・ショート選も、江る。貴州の「大衆科学」、上海の「児童時 】ト・ショートは。フロットが精巧で、物語蘇科技出版社から出版されるはずである代」、天津の「智恵樹」、北京の「科幻海 性が濃く、空想と現実とがよくとけあい が、私は孟氏と意見を交した上、両選集の洋」などである。筒井康隆氏は、氏の編集 かなりの程度に日本の社会の様子を反映し作品が互いに重複しないようっとめた。更による『日本ベスト集成』を寄贈して ている″と指摘しておいた。星新一のショ に私は上海にいる二人の翻訳者に頼んで、 下さったし、眉村卓氏もまた作品を寄贈し 1 ー , い・ンヨ 1 ーー が中国で流行するようにな ったのは、私見によればいくつかの原因が ・解説 事情はあまり変わらないだろう。だから、日 考えられる。一、作品が短いので新聞や雑 日中交流雑感 本の翻訳者たちも作品を人手するのに苦 誌に載せるのに具合がよいこと。二、物語 労する。しかもこの国はまだ万国著作権条約 深見弾 性が濃厚で、面白く、結末がしばしば人の に加盟していないため、著作権エージェンシ 意表をつくこと。三、何人もの熱心なファ 一昨年、各誌で中国が何点か続いて紹 ーを通じて手に入れる事もできない。そこで 介されたとき、社会主義圏を表看板にし熱心な翻訳者や研究者は直接作家から送って ンがいて、たえず翻訳しては推せんしてい ているため、解説を書いたことがある。中国もらうか、あるいは個人的な友人に頼むしか ること。たとえば上海の李有寛氏、長春の 語ができもしない者が、中国について解方法がないわけだ。これにはいろいろと障害 孟慶枢氏などは星新一作品のきわめて熱心 説したり、紹介者のような顔をするのも烏滸もあり、長い目で見たときけっして好ましい な紹介者である。「科学文芸訳叢」の第四 がましいと思い、そのご本誌で中国に関状態とはいいがたい。中国が早急に著作権条 心がある人達に呼びかけ、昨年一月に仮称約に加わるのがとりあえずはいちばん望まし 号には孟慶枢のこんな文章が載った。が科 「中国研究会」 ( 代表者・岩上治 ) を発 いのだが、それは国家レベルの問題であって 学的思索、詩的抒情、深刻なる諷刺 ( 星新 足させてそちらにパトンメッチした。 すぐには実現しないだろうから、現実的な策 一のショート・ショートについての読後メ ところがまたもやこうしてこの国のことをを考えなくてはならなかった。 書いているには事情がある。 そこで、目下中国界で精力的に活躍し 社会主義圏では一般に個人が外国の書籍を ている葉永烈氏と日本のプロダムの窓口 私の編集による『星新一ショート・ショ 手に入れにくい 。ソ連や東欧ではいわゆる洋として私が、とりあえずは文献交換の方法に ート選』には、李有寛、盛樹立ら五人が翻 書店があり個人でも店頭で外国書が買えなく より、事態の改善をはかることになった。そ 訳した作品を収めている。巻頭には作者の もないが、いろいろと制約がありが自由 してできる限り早い機会に公的組織にこの仕 に手に人るわけではない。中国でもおそらく 写真と中国の読者へのメッセージがある。 事を引き渡し、それそれの国の研究者、翻訳

5. SFマガジン 1983年3月号

のを思いのままに動かせる。 ( メルンの笛吹きの伝説の起こりも、 たしたちどうやってゴードンを殺すの ? 」 「僕らじゃない。ネーダケーネーケヴィスどもさ。あいつらが彼をこれと似たような物だったんじゃないかと思うね。 ( メルンの笛吹 殺す。それも目撃者の目の前で、あんたにーーー僕にもだーー・・嫌疑がきがネズミや子供たちを誘い出したようにしてゴードンの鬼どもを かからんようにやってくれる。場所は選択すみだ、目撃者も」 操ってやれると思う。もちろんまた遊びにしか使ったことはないが 「どこで、エディ 誰なの ? 」 ね。鵞鳥や野生の七面鳥にはよく効くよ」 「なに、ちょっとした妙案をひねり出したんだ。いいかね、ゴード ヘレナは椅子から立ちあがり、窓のところに歩み寄ると、しばし こんなこととても信じられないわ。あた ンには、目撃者をおくのは彼のためなんだと信じさせなくちゃなら外を眺めた。「エディ ない。あんたが死ぬはずになっている時刻のアリ・ ( イを作るためなしたちが何をしようとしているのか気がついてる ? わたしたち、 んだとね。また、正確なタイミングで計画をたてることはとうてい無人殺しを企んでるのよ」 理だから、いっ何どき事が起こってもそばに目撃者がいるような場「さあ、どうかね」スミザースはいった。「むしろ正当防衛ではな 所でなければだめだ。それに加えて、ゴードンとあんたの両方の家いかな、実際は。害虫退治みたいなものかもしれない。煎じつめれ にある程度近いことが必要だ。そうなると場所はひとっしかない。 ば、ゴードンは全くの性悪者だよ。僕が二つ三つの取引きのために ゴアズ・サヴ = イのヒッビー・キャン・フに近いどこかだ。位置も申殺しの手伝いをすると本気で考えるような奴だ。だが、どうしても し分ないし、つねに人がうろついているからね。ゴードンが、つやらなきゃいかんというわけじゃない」 まりその、あんたとも僕とも似ても似つかない何者かに殺されるの 「それが問題なのよ」とヘレナはいった。「やるしかないと思う が、必ず誰かの目にとまる。だが念のために今夜はお客を呼んでおくの」 といい。殺人犯の人相は、警察の連中にはさそかし突拍子もなく聞 こえるだろう。目撃者が何やら吸ったか飲んだかしていたせいだと ゴードンもこれと同じようなことを言った。彼とスミザースが食 考えて、ひょっとすると証言を本気で取り上げないかもしれない」 堂にすわって紅茶を飲んでいたときである。ゴードンはいった。 「頭がいいのね」とヘレナはいっこ。 「だけど、あなたの言うその「議論するだけ無駄さ、スミザース。おれはやる。手を貸すのか貸 ″何者か″が肝心な時に肝心な場所に来てくれると、どうしてわかさないのか、どっちなんだ。これには多額の金がかかってるんだ ぞ。それにあんたはもう相当深入りしちまってるんだぜ」 るの」 「そりや、ゴードン、もちろん手伝うとも」とスミザースはいっ 「あんたの専属まじない師には方法があるのさ。僕は祖父さんのフ ースを持ってる。楽器の一種だ。ごく原始的なリコーダー、とでた。「ただあんたの気が変わったかもしれんと思ってね。肝心なの はだ、できるだけ手つとり早く片づけちまわなきゃならんてこと 7 もいうんだろうな。そいつが出すのは厳密に言うと音楽じゃないー だがそいつを吹くと、あらゆる生きもだ。どうしてもやむを得ないのでないかぎり、この怪物を一分たっ ー音が三つしかないんだ

6. SFマガジン 1983年3月号

いる。第三幕が、七〇年前後の気配をあまり し立てる他者が必要」とされる。こ】ゅー一 にも濃厚にただよわせているから。 般化に、・ほくは疑問を感じてしまうんです、 一方、アインシ = タインも、原爆製造のマ ね。 ンハッタン計画を始動させえはしたが、世界 科学が避けて通ることのできない核や公 害、異常気象などといった倫理問題は、異議政府の夢は、一歩も進ませえないまま、死ん を申し立てない動植物の沈黙の声 ( 動物パ = でしま「た。そのアインシタインの夢を担 う幽霊が、『創世記機械』のクリフォードで ックものは、人間が代弁してやっているよー はあるまいか。 ( 『戯曲アインシュタイン なもんですね ) 、あるいは、人によっては、 レ 人間のカテゴリイに入れないだろうロポットの秘密』 / 著者日 O ・・カールソン / 訳者 日桂愛景 / 一一〇〇頁 / \ 一九五〇 / 四六判並 やクローンとの関係を取り上げざるをえない 筈。とすれば、さきほどの倫理の定義は、議製 / サイ = ンス ( ウス ) 氏 ) とい・つた具合。果たして同紙十二月十八 論が必要とする一般化の程度に達していない 日夕刊には、その賛否両論をとりまとめた記 んじゃないか。 映画・ノヴェライゼーション 事「な・せいま・人気ーーー見失った夢大人 第三幕は、科学者を選抜する学校という制 にも / 感動誘う巧妙な仕掛け」 ( 進藤隆夫記 度に対する疑問が中心テーマ。学校が選抜し 者 ) が出た。 た科学者が、自分の狭い専門領域ではあれだ ここで ( 哲 ) 氏のレヴ = ーを再読し改めて け首尾一貫して厳しい思考をするのに、なぜ 気づいたのは、ここで氏が槍玉にあげている 社会的問題や、自己の研究の社会的意味につ 『・』そのもの のが、何のことはない、 いては同様な態度をとらないのか。学校が天 というより・』の人気に他ならない事 才を几人化する機関だからだ、とは痛烈な答 巽孝之 実である。表面的には明らかに『・』批 だが、では、どーするか、というと、本書も 判と見える文調も、本当のところ、すべて 遂に戦略を見出していない、と・ほくは思う。 第 = 一幕でのアインシ = タインの話相手が東昨年暮には「・論争」とでも呼べそう『・』人気を皮肉るための戦略的レトリ ック。たとえば、「かぐや姫」の構造を自ら な事態も起こって、なかなか面白かった。 洋の学者で、彼は、世界政府をつくるという 出所は、朝日新聞十一一月七日夕刊の ( 哲 ) わざわざ指摘しながら「お姫さまというには アインシュタインの目標とは反対の極、すな わち、個別の問題に関わり、それをのり一」名義による映画評。 ( 哲 ) 氏は、「幼稚すぎ何とも醜悪」と結論したり、「子役」をカ え、一般化する視点から、現在の科学と科学るフ , ンタジー」と題し一応は美点も認めつの一因としながら「それ自体甘さと思考停止 者をのりこえることをめざす、という。どうつ結局「お子様ランチ」と断定してしま 0 たの限界を持つ」と規定したり、ひいてはちゃ も、この一般化は、議論が必要とする程度をのである。当然ながら、これが熱心な・んと「しかし『お子様ランチ』を正面き 0 て こえているのではないか。ところで、訳者、讃美者のごうごうたる非難の渦を巻き起こ難ずるのは、いささか大人げないかも知れま 桂愛景氏は七〇年東大理学部卒。実はこの人す。「これだけよく出来たお子様ランチがどせん」と一言加えてしめくくるという心にく がこの本の原作者ではないかと・ほくは疑 0 てこにありますか」 ( 『びあ』編集長・林和男さ。要は、人気の図式を作品にかこつけてえ 円 2

7. SFマガジン 1983年3月号

川なのに、両岸には植物が生えていない。植物の代りに、異様な と粗末であろうと、墓は墓た。それらは生きていないのである。 とすると、ここの住民たちは死に絶えたのか。すくなくとも、こ形状の立体がつらな「ていた。降り立 0 て観察すると、彼には読め ない文字が、どの立体にも刻み込まれているのである。 の都市にいた者はもう生きてはいないのか。 これは、原住種族の墓なのだ、と、彼は直感した。 しかし待てよ。 原住種族も減亡したのか。 死に絶えたのは、この都市の住民たけなのかもわからない。そし て、こういう都市を建設するのは、人間の植民者たけなのかも知れ人間の植民者と、原住種族と = = = ど「ちが先に減んだのだろう。 : ・別の場所にはまた人間がいる可能性があり、人風が吹いて来た。 。とすれば : 間がいないとしても原住種族が残「ていることも考えられる。これ風と共に、地面にあ 0 たすべての墓は・ほろぼろと削られ、少しす っ吹き飛ばされて行くのだった。ほんのしばらくのうちに、あらゆ はきわめて論理的た。自分はちゃんと論理的に思考をしている る墓が土に還ってしまった。 と、彼は誇らしい気分になった。 川も、もう涸れている。 彼はまた飛んた。 では、この世界にあった生物の減亡さえもが、もはや古い過去と びっしりと野や山や丘や谷を埋めつくした墓の上を飛んだ。 どこもかしこも墓ばかりであ 0 た。真昼のはすなのに雲が乱れ重化したのであろうか ? 減亡の記憶そのものも、消えてしま「たの な「て妙に暗い空の下、墓が何万、何十万、何百万と、ひしめいてであろうか ? その通りに違いなかった。ここでは数百年数千年が、あっという 間に過ぎて行くのだ。 Ⅱがあった。 眉い 官始がた海 シめ内司洋 リ、包政惑 ー著す官星 ズ者るのミ の諸姿ロ のラ問を一 傑イ題とゼ 作フをおン 三ワ描しの 篇ーくて調 をク表組査 収″題織に 録司作社赴 ! 政を会い ハヤカワ文庫」 A 定価 400 円 早川書房 3 2

8. SFマガジン 1983年3月号

ー窮乏ーーそれと三惑星連合のエゴイズム、地球への反感、古いに がまにすわっても、三惑星連合は、いまが地球をつぶすチャンスと いまでなければ。いまでな くしみ、独立への気運がぶつかりあったとき、確実にそれは起こる思うだろう。必ず戦争がおこるんだ ければ ! 」 のだ ! 」 地球への反感、古いにくしみ、エゴイズムーーだが、それを与え老ャンは、若いマックスの熱しきった顔を見つめてすわっていた。 たのは、ほかならぬ地球だったのだ、老ャンはロの中で呟いた。地寄妙な、ひどく他人ごとのような感慨が胸にみちてくる。この十 球が新世界をいじめぬき、そこまでおいやってしまったのだ。エゴ年の辺境ぐらし、も、ラジオも、ニ、ースもなく、たまの手紙 イズムという。それもまた、地球のエゴイズムの反映にしかすぎはをまちこがれ、一杯の合成コーヒーにのどをならし、灰色のスペー ハデスとウラニア スポート、 天色のキャンプ、ウラニアとハデス、 しかし、マックスは、おのれのことばに酔いしれているようだ「を行っては戻るだけの単調な生活は、老人のかれを、一種世すてび こ 0 とめいたものにかえてしまった。マックスの、それは疑うすべもな 「あんたは知らんだろう。こんなところで、来る日も来る日も貨物い真摯な熱情、憂国の真情のあふれる叫びをききながら、老ャンの 感じたのは、奇妙なくらいうつろなかるいおどろき をはこんでいたのじゃな だが、時はいまなのだ。、 しましかない のだ。なぜかというと ( それでは、あそこでは、まだ、そんなさわぎをくりかえしている のか。わしが追放されたときと同しように、まだ、権力者だ、ナン 《彼》は病いの床にいる。明日をもしれぬ病だ。だがわれわれは、 ほんとうはそれが病気じゃないことを知ってる。われわれの暗殺計 ー 1 だ、といったさわぎに倦みもせず、むなしい ー 2 だ、ナン・ハ 画が、ついに成功したのだ ! むろん、《彼》にとどめをさすこと現世のささやかな権力をうばいあっているのか ) はできなかった。しかし《彼》は年をとってる。たぶん、再起はで その、諧謔にも似たおどろきにしかすぎなかったのである・ きぬだろう」 しつでも、どこでも、同じことをく ( あの連中は、いや、人間は、、 りかえしてゆくしかないのか。ほんのひとかけらの権力ーーそれさ 「いまがチャンスなのだ。《彼》の死の混乱に乗じて、セイ博士をえあれば、たちまら、支配者になりたがるもの、それにとってかわ 統治者の座につけなくてはーーそれに、いまがチャンスだというだろうと虎視たんたんとねらうもの、それそれに媚びるもの、おこ・ほ けしゃない。い まを外しては、ダメなのだ。このままゆくと、《彼》れにあずかろうとするもの、虎の威をかるきつね、走狗、裏切者、 の後継者争いがおこるのは必至だ。ナン・ハ ー 2 のロンジャー書記長が決まったようにむらがってくる。人間とは、これほど、変りえな か、ナイハー 3 のカム・レイ党委員長かーーどっちもとうてい《彼》いものか。何千年かけてなお、同じことをくりかえすだけなのか。 のあとにこの混乱を収拾してゆく能力はない。 ことにロンジャーはしよせん、人間は、これまでの種族なのか ) そんな感慨は、しかし、云うなればまぎれもなく老ャンがすでに 征軍権をもたず、カム・レイは弾圧の鬼だ。どちらが《彼》のあと 239

9. SFマガジン 1983年3月号

て下さっている。 日本の作家の筆になる人物で、中国 で最も名声を得ているのは、アトムである にちがいない。というのは、中国中央テレ ビ局では一九八〇年十二月四日から、連続 アニメ『鉄腕アトム』 ( 全二十六回 ) を、 毎週土曜日の夜に放送し、小さな観衆たち に大歓迎されて、かなり大きな社会的反響 を呼んだからである。手塚治虫氏も中国中 央テレビ局の招きに応じて第一回の放映に ゲストとして出席、中国の観衆に向かって メッセ 1 ジを述べた。今では、中国の子供 ならほとんど誰もが『鉄腕アトム』の主題 歌が歌える。玩具屋の店先にはアトムの人 形が並び、子供たちのハンカチやマフラー にはアトムのキャラクターがプリントされ ている。『鉄腕アトム』のシナリオ作者の 一人である杉江恵子が一九八一年六月二十 二日に自殺したというニュースが伝えられ たときは、大勢の注目を集めたものだ。北 京科普出版社からは一九八二年五月から 『鉄腕アトム』の連環画を分冊にして出版 していゑ一九八二年に出版された雑誌 「科幻世界」にはその推せん文が載った。 いわく″『鉄腕アトム』の特色は、科学技 術を形象化し、人格化して、科学の持っカ を示してみせてくれる点にある。また科学 は人間が邪悪と戦うのを助け、前途にふさ であり、その活躍ぶりは目ざましい。 ( もっ 者が広く利用できるように努力するよう申し とも処女作を一九五一年、十一歳のときに発 合せた。 表したという ) に限らず推理小説もて そして八月からその作業が始まっている。 がけるが、最近はが多い。六三年に北京 すでに送られてきている文献は、当面、中国 研究会が管理してくれるので希望者があ大学化学科を卒業したあと、転じて科学教育 ればそちらから借り出すことができる。でき映画の制作にたずさわり現在もディレクタ , ー ることなら最初からどこか公的機関、たとえとして活躍している。推理小説の手法を に応用した巧みな筋の運びかたは中国界 ば公共図書館などの協力が得られればと思 で第一人者と目されており、若い層にファン 、何カ所か相談を持ちかけたがことわられ た。どこかに、中国と中国語に翻訳されが多い。ことに西側への中国の紹介では た日本をぜひ収集してみたいというとこその功績は大きい。たとえば「ローカス」へ ノノロン編、 ~ 、 0 ミヒ 0 ト の寄稿、ニーレ・・、 ろはないだろうか。 三、・ ( 第二版、一九八一年 ) の中国 中国は日本のように出版活動がかならずし の頃の執筆などで、英語圏にもその名は知ら も中央に集中しているわけではなく、北京、 上海、長春、杭州、天津などそれそれの都市れている。十月初めに日本へ寄った後、上海を ( 地方 ) で独自の出版活動が行なわれている訪れたハインラインを密着取材したそうだ。 一般に中国では翻訳出版書に原作名を表示 ようだ。したがって、それぞれの地方で個別 しない習慣があるせいか ( しかし、ごくたま に同じ作品が翻訳紹介されることも起ってい には記載してあるものもある ) 、この人の原 る。中国の翻訳者や研究者が広く利用できる ことを条件に今回の文献交換が始まったわけ稿には訳題しか表記されておらず、せつかく の貴重な情報がその価値をなくしてしまって だが、結局、葉永烈氏の住む上海の関係者に いる。今回の「中国における日本につい ついてはその条件が満たせても、他の都市は ても星新一、眉村卓、田中光二の作品に ( ? ) 依然としてあまり状態は変わっていないよう がつけてあるのは、葉氏にも問い合せても原 だ。相変わらず交換交換の要請が続いてい 題がわからなかったからだ。浅倉久志氏の指 る。だがとてもそうした要請に応えきれない のが現状である。〈中国へ本を送る運動〉の摘によれば、「ローカス」の記事にも原題が はっきりしない作品がかなりあるという ( 訳 版ではないが、手持ちのの中からも し送れるものがある方があれば、ぜひ協力し題から英訳されているため ) 。 ここで見るかぎり、今のところ中国に紹介 てもらいたい。 された日本は短篇の紹介しかされていな い。たが、 r-nr-æに関心のある日本語翻訳者が 今回、本誌に中国における日本の紹介 かなりいるようだし、田中光二の『大いなる を寄せた葉永烈氏は、いわゆる文革以前に 逃亡』の連載が始まっていることからみて を発表したことのある鄭文光、童恩正とい った作家とちがって、第二世代に属する作家も、今後が期待できそうだ。 9

10. SFマガジン 1983年3月号

待った。ややあって、「ドン」そして吹いた。怪物どもはズシノズ 一九二五年に、そんな楽天的な事業家のひとりがこの区画に家をシンと繁みから踏みだし、ゴードンの焚火めがけて重たげに進んで 8 一軒建てた。その変哲もない木造農家は、やがて見捨てられたの行った。 ゴアズ・サヴェイに霧がかかった。呪文が始まるまではなかった ち、時折やってくる流れ者のすみかになった。目下の住人は麻薬と 暴力の時代の落とし子たち、時勢のあらしの中で年老いつつある漂霧だ。霧は地表づたいにゆるゆると渦を巻き、呪文が進むにつれて 流者たちだった。彼らは過去に生き、そして今なお、薬で頭をそこ少しずつ濃くなっていったが、人の腰より高くなることはなかっ ないむさ苦しい生活をすることが、彼らの横を知らん顔で通り過ぎた。死んだ土地の境界線で霧はふつつり切れていた。スミザースは スを口もとに構えたまま。 ていった世間に対する復讐になるという、漠然とした信念をもちっ不安げにそれを見つめた。フリー づけていた。生計のみなもとは謎の財源から定期的に送られてくる ゴードンの呪文は断ち切れたような短調の低音と念入りに打ち振 現金で、それは荒れ狂う過去が残していったひとりの逃亡者をかくられるがらがらの音で終わった。完全な静寂の一瞬があった。つづ まう謝礼として彼らに支払われているものだった。その逃亡者とい いて地中から何かが現われた。 うのは、かって大学の史学科の書庫に爆弾をしかけ、初老の夜警を乾いた灰色の土が動き、もりあがり、割れた。裂目から人影が立 ちあがった。鹿皮をまとったインディアンの戦士だった。ふたつに 本ともども吹っ飛ばすことに成功した過激派の男だ。 スミザースのいう目撃者とはこんな連中だった。信頼度が高いと体を折った姿勢から身を起こし、ゆっくりと全身を伸ばそうとして はいえないが、肝心なときに肝心な場所にいたわけである。スミザ いるようだ。そのあいだにも、時折まっかに燃え上がる焚火の明り ースと彼の奇怪な操り人形たちが森のはずれにさしかかったとき、 で、男の腕がかたく両脇にくくりつけられているのが見てとれた。 彼らは家の前の朽ちかけたポーチに集合していた。戦さ踊りがまん顔には言うに言われぬ苦痛、どんな悪夢のような苦悶もおよばぬ苦 まと注目を惹いたのだ。デニスの打ち鳴らす一組のポンゴの気まぐ 悶の表情があった。男はしばし、首をのけぞらせ、真黒な空を仰ぐ 力やがて、炎のまたたきとつぎのまたた れなリズムにあわせて、ゴードンが燃えさかる焚火の周囲を跳ねまかのように立っていた。・ : わるさまを、一同、とろんとした好意のまなざしで見守っていた。 きの間に、男の顔が変わった。声にならない叫びをあげて開いてい スミザースはひと吹き、雁の鳴くような音を鳴らして二匹の怪物た真黒な穴は消え、苦しげにひきつった顔の筋肉が弛み、やわらい をあつい繁みの陰に凍りつかせると、もっとよく見るために用心深だ。古い苦悩は終わったのだ。そのしるしは拭い去られた。解放の く影をぬって近づいた。ゴードンがデニスに話しかけていた。デニその瞬間、男の顔には穏やかなやすらぎの表情があった。 スはポンゴを打つのをやめた。ゴードンががらがらを取る。呪文を が、その一瞬だけのことだった。すぐに顔は消え、戦士も消えて 唱えはじめた。 いた。こまかい塵だけがしばし静かにただよいうねって、霧の渦に 「定刻きっかりだな」スミザースはいった。「者ども、用意」彼はさらわれていった。 っこ 0