アドミラル - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1983年5月号
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1. SFマガジン 1983年5月号

「歓迎なんかされるものか。しかし彼らはの要求を拒むこと 「ハート・ホート はできない。地球防衛国際法を守る義務がある。コンタクトをと アドミラル、左旋回をはじめる。 全迎撃部隊を発艦させておくのだったと南雲海軍少将は唇をかんる」 アドミラル上で南雲艦長は雪風が燃料を要求するのを苦い気分 ・こ。だがいまさらどうにもならない。 しかし迎撃隊の死は無駄にはならなかった。ジャムがそれを相手で聞いた。ジャムをひきつれてやってきたくせに。ジャムを撃墜し にしている間に、雪風はアドミラルに接近していた。ジャムは海たのは当然だ。それが彼らの役目なのだからな。そのおかげで自分 面すれすれを、海を割るかのような衝撃波動を引き、アドミラル浦は八機もの損害をこうむった。艦長歴に汚点がついてしまった。 「着艦許可を出して下さい、少将」わきに立っていた女性ジャーナ を狙う。 「目標確認」と・フッカー少佐。「距離六七、前方を横切る。チャンリスト、リン・ジャクスンが言った。「の要求はよほどのこ とでないかぎり受け入れる義務があるはずです。わたしは彼らとー スは一度だ。外すな」 「外れても雪風の責任じゃない。地球に入ったジャムは地球のやっー彼、・フッカー少佐に会ってみたい」 余計な女を乗せてしまったと艦長は思った。彼女が乗っていて らが墜とせばいいんだ」 ツ・ファップ 雪風は超低空からおどりあがり、九十度ビームアタック。四発のは、下手な行動はとれない。 高速ミサイルを同時発射。雪風はミサイルを放っとただちに急旋「着艦許可を出せ」と艦長は命じた。 回、最大出力で離脱。・フッカー少佐は急激な機動に一瞬気を失う。 雪風誘導のため、正確には監視のため、二機の戦闘機が発艦す ジャムのミサイルはアドミラル突入二秒前に撃墜された。自爆る。 装置が作動したのか、閃光を発して爆発。六十キロ先のアドミラル 雪風機上からアドミラル浦を視認。後上方から二機の戦闘機が接 浦は超音速の衝撃波をくらったが、無事だった。アドミラル浦はあ近してくる。 わたたしく核汚染除去のために大量の海水で艦洗浄をはじめる。 「着艦誘導システムはのものとはちがう。自信はあるか、 「核ミサイルではなかったようだ。冷汗が出る」 「ジャック、帰投燃料が足りない。地球では空中給油機も呼べな「おれは現役だぜ、ジャック」 。雪風を捨てるつもりか」 雪風は大出力ルックダウンレーダー作動。アドミラル浦の誘導電 「降りる場所はあるさ」・フッカー少佐は言った。「燃料もたつぶり波がかき乱される。艦のレーダーがマスキングをかけられてレ 1 ダ ースクリーンが真っ白になる。監視機との交信不能。 積んでいる」 「なんてやつだ。あれがの戦闘機なのかーーまるで」 「アドミラル浦へ ? ばかな。熱烈歓迎されるとでも思っているの 「天翔ける妖精ですわ、艦長。シルフィードです。地球には彼女と 9 4

2. SFマガジン 1983年5月号

んイ / 戦える武器はないでしよう。ジャムはそれほど強敵 です。幻ではない 雪風、超音速でアドミラル浦上空を通過。アドミ ラル浦所属の監視機は追いつけない。 旋回した雪風は、今度は低速でアドミラル浦の着 第ル興ー 艦デッキ上を飛び抜ける。再び旋回し、ギアー Z0 フラツ・フーアレスティング・フックー Z0 マニュアル・ア・フローチ。 「雪風 : : : おまえはおれなしでは降りられない : ここは妖精空間ではないんだ」 オートスロットルー 0 アンチスキッドー 「着艦する」 アドミラル艦上の誘導員は、地球に初めて姿を 現わした巨大な妖精に目を見張った。戦闘爆撃機な みの大きさの怪鳥は水平姿勢を保ったままふわりと 着艦する。雪風はエンジン出力を上げて排気。それ から。ハワーをアイドルへ。キャ / ビーオープン。黒 いへルメット・ハイザにマスク。二人のプーメラン戦 士がアドミラルの人間の前に姿をあらわず。 やつらこそ宇宙人だ : : : 南雲少将は思った。 リン・ジャクスンは取材道具一式を入れた愛用の ショルダ ー・、ツグをかかえて・フリッジを降りた。 わたしは雪風が給油のためにスポッティングドー

3. SFマガジン 1983年5月号

「おちつけ、ジャック」 されたら g-q << への批難は必至だ。零、撃墜しろ。なんとしてで 空間通路の霧の壁が目の前し 、つばいにせまる。回避不能。も」 1 、 0 。 Q 0 キューが出る。 上の数字、 「燃料がもたない。帰れなくなる」 雪風、震動する。灰色の闇に包まれた。レーダーが利かない。電「かまわない。中尉、これは命令だ。従え」 波高度計、外部通信機器も作動しない。雪風は位置不明の警告サイ「わかったよ、少佐どの」 ンを点減させている。敵を見失ったという雪風の悲鳴に似た警報燃料流量がはねあがる。 音。 超空間中心に突入した雪風は二秒弱で地球側へ抜けた。超音速。 アドミラル浦所属の早期警戒機は雪風が超空間を突き抜けるのを 超空間霧柱があっというまに真後ろへ遠くなる。雪風エンジン・コ確認した。その直後、レーダースクリーン上の・フリップが二つに分 ントローラは瞬時に各種センサから大気状態を調べ、エンジン動作離する。雪風は対地球用を作動させていたが、もうひとつは を最適状態へ。飛行系統、気圧高度計などが対地球モ ードへ自動リ 不明。雪風からの国際緊急通信が入る。〈ジャムだ〉オペレー セット。しかし零はこれら新型システムの動作を確認している暇はタは初めて見るジャムに。ハニックにおそわれる。「撃墜しろ」と若 ュな、かっ亠」 0 い彼は叫ぶ。「だ ! 」 マスター・アーム・オン。 O cn 作動。 Q ・ Z 、 アドミラルの艦長はそれほどあわてはしなかった。迎撃隊に攻 撃命令を下し、そして彼はつぶやいた。め、ジャムをつれて 「ジャムはどこだ、ジャック」 きやがった : ・ 「真下だ」 アドミラル所属の八機の迎撃機は、ジャムを確認。たたちに迎 雪風、パレルロール。ジャムはそのすきをついて爆発的大で加撃態勢に入った。しかし彼らはジャムを相手にしたことがなかっ 速、まるで発射されたミサイルのような雪風から離脱。零は素早くた。 高速ミサイル発射、二発。敵、アンチミサイル ・ミサイル発射。雪 ジャムは嘲笑うかのように迎撃機の攻撃をかわすことなく受けて 風、最大パワーで追撃。 立った。ジャムが、その目標の前に立ちはだかる障害を排除するの 敵は雪風よりひとまわり大きい パワ 1 。フースターを切り放してに必要としたのは、迎撃機の攻撃をかいくぐって放った八発の高速 逃げる。 ミサイルだけで十分だった。アドミラル浦の迎撃隊は一瞬のうちに 「あいつ、なにを狙っている。なんだあれは」 壊減した。艦長にはその事実が信じられない。あれが、ジャムか引 「対艦ミサイルたろう」と少佐。「目標はアドミラルだ。ジャム o—o ( 戦闘情報指令室 ) からジャム接近中の警告。 は地球側とを完全に離そうとしている。アドミラル浦が撃沈「対核防御。対空戦闘用意。 ド・ホート」 8 4

4. SFマガジン 1983年5月号

トはブレーキ操作のためと、そしてちらりと見たのだが、空軍の自 動拳銃を手にして、機と少佐の安全を守るためにコク。ヒットについ 「雪風が来なかったら、ジャムもアドミラル浦を狙ったりはしなか 5 ていた。プーメラン戦士は自分と愛機しか信用しない。そうでもしった。と思う。そう、雪風はいい機だ。そして彼もいい男だ」 少佐は雪風の。ハイロットに目をやった。 なければフェアリイでは生きてゆけないのだ。 「あなたは」・フッカー少佐はヘルメットをかかえてわたしを見つめ「彼にインタビューはできないでしようか」 た。「ジャクスンさんですね。どうしてここに」 「わたしに訊いて下さい。やつのこたえることくらい予想がつく」 「お会いできて光栄です。まさかここで会えるとは思ってもみませ「今回のミッションは成功でしたか ? 」 んでした。取材のためです。に対する地球の反応を」 「エンジントラブルはなかった。予想以上の高性能だ。スー。ハ】フ 長身の男にわたしは手を差し出す。大きく力強い手がわたしの手ェニックス・」 を握る。 「ジャムとの戦闘は ? 」 「ジャムは強敵だ。雪風の腹にコ ' ハンザメのようにくつついて地球「ジャムは雪風を狙ったのではなかった。楽なものだーーー零なら、 に飛び込んだ。予想もしなかった。 わたしは・フッカー少佐で彼ならそう言うだろう。しかしわたしは : : : 生きた心地がしなかっ た」 「心地・ : : いい言葉ですわね、少佐」 「存じてます。お手紙で」 「無事に届きましたか。読んでいただけるとは思っていませんでし「地球は今回の雪風のテストフライトにはかなり激しく反対したよ うだが む地、だって ? 」 ここにはコーヒーを飲む場所はなさそうですね」 「だめでしようね。艦内には入れてもらえないでしよう」 ブッカー少佐は早ロのおしゃべりをやめて、はっとわたしを見 「ここではわれわれは妖精ですよ。雪風も」 ブッカー少佐はわたしを見つめて、少し照れたようにはにかん「どうかなさいまして ? 」 だ。彼の一言葉は語というべき言語だ。英語を基にしてはいる「美しいな : ・ : なっかしいよ」少佐は母国語をやっと思い出したと が、形容詞は少なく、省けるものは省いて、簡潔で高速だった。合いうように正調な英語で言った。「もう五年以上故郷に帰っていな 理的だが非人間的だ。まるで機械と話しているようだ。 。気がっかなかった : : では言葉も変化しているんだ。そ わたしはゆっくりと詩を朗読するように、美しい英語の話し方のれがわからないとはな。ぞっとする。故郷の言葉がこんなに美しく 教師になったつもりで・フッカー少佐に話しかけた。 聞こえるなんて : : : たしかにここは地球なんだな」 「見事にジャムを撃墜なさいましたね、少佐。アドミラル浦の兵装 わたしはマイクロレコ 1 ダーを・ハッグにしまいこんで、少佐に徴 では防御できませんでした。もしがいなかったら笑んだ。

5. SFマガジン 1983年5月号

えばなんということもなかったろうに。それとも彼は、人間にもどながらわたしに言った。「自分の周囲にある光電子システムの動き ってしまうのがこわかったのだろうか ? でも、な・せ ? に注意することだ。ジャムはすでにそれらを支配しているかもしれ 5 「雪風は彼が信じられる唯一のものなんですよ。傷をつけられては ない」 たまらないたろう。彼は雪風がこうして欲しいというのを代弁して雪風のキヤノビが閉じる。わたしは・フリッジにもどった。雪風は いるんだ」 カタバルトにつき、そして南極の空へ放り出された。スー 海のうねりが大きくなる。天候が変わろうとしていた。だが飛行 = ックス・の炎をふいて雪風は急速上昇する。旋回すると、翼 甲板は動揺打消機構のおかげで徴動だにしなかった。わたしは海を端から、空を切り裂くような白いペイ。 ( ートレイルを引く。雪風は 見つめている少佐に尋ねた。 大きく旋回し、加速すると、アドミラル浦を威嚇するかのようにプ 「ジャムとはいったい何なのだとお思いですか」 リッジすれすれを超音速で飛び抜けた。・フリッジが落雷にあったか 少佐は切り傷らしい跡のある頬をかすかにひきつらせて、わからのように震えた。雪風流の感謝の表現だったのかもしれないが、南 と一一「ロった。 雲艦長は悪態をついて雪風を見送った。雪風の機影はあっというま 「たが」と少佐はつづけた。「人間の敵であってほしい に小さくなり、視界から消え去った。静寂がもどった。十五分と少 げていると思いますか ? ジャムが人間の敵でも味方でもないとししで雪風はレ 1 ダーディス。フレイからも消える。彼らは帰っていっ たら、の人間の死は無意味だ。それこそばかげてる」 た。妖精空間へと。戦うために。 「完全に無人化したらどうでしよう」 わたしが目撃したのは本当に妖精たったかもしれない。それにし 「いずれそうしたいが : : : そのときは地球のコンビ 1 タ群が人間ても、なんて大きな、なんと巨大な。 ( ワーを秘めた妖精だったろ に挑戦してくるかもしれない。現に、地球ではそういう動きがあるう。 とは思いませんか ? コンピ、ータ化はますます進むでしようし。 わたしはッグから愛用の取材 / ートとペンを出す。海を見なが 、ハンデイワ 1 プロ 彼らは意識をもっていますよ。人間を殺すなどわけない。道路の交ら語ったブッカー少佐の言葉を書きつけながら 通管制システムを暴走させるとか、この空母を自分の意志で動かすを持ってくればよかったと思い、そしてふと少佐の忠告を思い出し とかね」 てかぶりを振った。 雪風の給油が終わる。南雲艦長は一刻も早くこの怪鳥を追いはら ワ 1 ーゾロで書いたらきっとちがう内容になるたろう。 いたいようだった。これは死神だ、とでもいうように。結局 の戦士は一杯のコーヒーのねぎらいも受けずにアドミラル団を出て ゆくこととなった。 「注意しなさい、ジャクスンさん」少佐は雪風のコクビットにつき

6. SFマガジン 1983年5月号

サー」と副長が復唱する。 た。それでよく ;-q ß-q が保っていられる。コンビュータたちの優秀「ゴ さがそれを支えているのだろう。 アドミラル浦は全速で雪風を迎えにゆく。 いま、わたしは南極海にいる。ロス氷棚にそびえる通路空間から早期警戒機はすでに飛んでいる。艦長は迎撃隊に発艦命令を出 一〇〇〇キロ、スコット、マクマード基地からおよそ四〇〇キロのす。 冷たい洋上を航行中だ。乗艦しているのは攻撃型航空母艦、アドミ ラルというニックネームをつけられた日本海軍空母。この空母の 任務は国連軍として、フェアリイから飛来するかもしれぬジャム雪風、フェアリイ基地発進。新型スー ーフ = = ックス・は と、そしてフアアリイ空軍を見張るものだ。ジャムならわかる。し いくぶん小さく軽くなり、出力は・ >< を上まわる。 かし対臨戦態勢もとっている。は同じ国連内の地球防「零、おまえと飛ぶのは初めてだな」 衛軍に属するというのに。地球はジャムよりもをうとんじて「目をまわすなよ、御老体」 いる。まるでこそインペーダーであるかのように。 エンジン・コントロール系統、異常なし。燃料流量、正常。燃料 もっとも普段は地球側もこのような挑戦的な行動はとらない。今移送系統、異常なし。 回のこの空母の派遣は、が地球に次のように通告したからだ「おれはそんな歳じゃない。現役のパイロットとしても飛べる」 っこ 0 「雪風はあんたが乗っていたころの戦闘機とは格がちがうよ」 のエ雪風、増速。通常任務とは逆の方向、地球に直接飛び込むことの 〈将来にそなえ、わが空軍機の主力戦闘機であるシルフィード ンジンおよびコントロール・システムを、地球大気内でも最高の性できる超空間通路を目ざす。後席のゾッカー少佐は大に息もつけ よ、。零、おまえはいつもこんなストレスを受けて飛んでいるのか 能を発揮できるス 1 パ 1 フェニックス・マークに換装する。テスオし ト機は特殊戦・第五飛行戦隊機、雪風。・ ( イロットは深井零中尉、ーー少佐はあらためてパイロットの激務を思う。 「空間突入、三十秒前」と零。 システムモニタ要員はジェイムズ・ブッカー少佐。日時はーーー〉 この通告は地球にちょっとした騒ぎをひきおこしたから、わたし 上に目標指示ポックスが出ている。フェアリイの森にそび の耳にもすぐに入った。 える巨大な灰色の霧柱が急速接近。上に数字、カウントダウ ・フッカー少佐が。わたしは過去の取材中に得たあらゆる情報網とン。 人脈を頼り、この空母に乗艦取材する許可を取りつけた。 「行くそ、ジャック。初体験だ。地球へ飛び込む」 南極は夏。よく晴れている。プリッジで艦長の南雲海軍少将が双 、という警告音。・フッカー少佐は驚愕する。警戒レーダーデ 眼鏡に目をあてている。 イス。フレイ上に、突然あらわれた敵のシンポル。 「そろそろ来るそ」と少将。「ゴー・アヘッド」 「ジャムだ ! どこから来た ? 急速接近中」 7 4