リトル - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1983年5月号
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1. SFマガジン 1983年5月号

リトル・ ( ラは床に横たわったまま、上体だけ起し、上方の闇の中《コノ、サイフル キンゾクテキゾッシッデアルサンシュル に逃れ去ろうとしているその物体に向って、たてつづけに四発、発イイジョウノキホンテキ・フッシッョリナル : 射した。その中の一発が命中した。闇の中に百千の火花が散った。 《コノ・フッタイハオンドサニヒジョウニビンカンニ それはカなく落下してきた。 ウスル : もはや何の反応もなかった。 《コノブッタイハ トザサレタトクシュジュウリョクケイノナイ 手ざわりが少し違う。重さも加わったように思う。 ・フニオイテジュウリョクヲジュウニコントロールスルコトガデ リトル・ハラはそれを投け出した。手が腰の信号拳銃へのびた。 キルシタガッテソノクウカンナイヲヒコウスルコトガデキル : その物体が、 リトル・ ( ラの手の中で、あきらかに、ビク、と動い たのだった。 《ソノメカニズムハ だが、それたけだった。 分析装置が答えた。 リトルラはふたたびそれをひろい上げ、通路へもどった。 「イノウはどこからこんなものを見つけてきたのたろうか ? 」 これまで、リトル・ハラの調査した空域では、このような物体は発 照明灯の光の下でイノウの遣体は邪悪な作り物のように、人らし見されなかった。 さを失っていた。 イノウが、馴れない初任務で、このような物体にぶつかったの リトをハラの目が吸い寄せられた。 は、不幸としか言いようがなかった。 イノウが背負った代謝調節装置と、イノウの首筋を結ぶ管に、金分析装置のとびらを開き、サンプルを取り出した。 属板がし「かりと巻きついていた。そのために、イノウは代謝の調それがとっぜん空中に舞い上るのと、リトル・ ( ラが分析装置の台 節が停止して、その場所で倒れたのだ。 の下へもぐりこむのとが同時だった。 リトル・ハラは、金属板を・ハッグに押しこんた。 金属板は分析室の中をゆっくり旋回すると、獲物を探すようにな フェリー・ポートで『アナクレオン川』へもどり、はじめて心が なめに降下してきた。信号拳銃は船橋に置いてきた。 ゆるんた。 金属板は分析装置の補助機器の間をくぐり抜け、台の下に入って 体は、鉛のような疲労で閉されていたが、リトル・ ( ラは、運んできた。 きた金属板を、コンビ「一ーターの分析装置にゆだねた。 それはリトルバラにとびかかってきた。 ステンレスのとびらが閉され、分析装置がうなり出すと、リトル さえぎろうとして突き出した腕にからみついてきた。それを引き ・ハラはそこに倒れて眠った。 剥がすと、こんどはその手に巻きついてきた。それをほどくと頭や 首に貼りついてきた。 メタライザ ー 50

2. SFマガジン 1983年5月号

気密帽の中におさめられているのは、顔に類似の形をとどめた有 イノウは、その船倉にどんな用があったのだろうか ? 第八船倉は、直径五十メートルほどの球形のタンク・ユニット、 機物の、乾燥した残骸だった。 六個からなっていた。 「イノウ ! イノウよね。ひどいものに変ってしまったわね」 天井をユラハ ーサル・ホイストのレールが縦横に走っている。 銀色のスペース・スーツの両そでを染め分けているオレンジ色の タンクの側面にラッタルが設けられていたが、自由回転式のそれ横縞は《操船者》を示している。 は、コンビューターのサポタージュで、妙な位置に停止したきりだ死因を調べなければ。 リトルバラは、イノウの遺骸をホイストのパスケットに積みこも 高い天井に、ホイストの操作室があった。 うと思った。 下りてきたばかりのエスカレーターの階段を上って、桟道のよう そのとき、投光器の光と、その外の暗黒の境い目を、何かがかす な。フラットホームから操作室へ入った。 めた。 目視操作用の制禦機は、完全に作動していた。 キラ、とかがやいて、一瞬、闇に溶けこんで見えなくなった。 ホイストの台車を引き寄せ、。ハスケットに跳び移った。 リトル。ハラは、周囲の闇に、投光器の光を回した。 台車が走ってタンクの上を移動していった。 何ものも見えなかった。 三番目のタンクが目の下に迫ってきた。 錯覚だろう。リトルバラは、イノウの遺骸を、・ハスケットに投げ 投光器の光の輪の中で、タンクの上部のふたが開いているのが見こむ作業にもどった。 えた。 その時、背後から、弾丸のように突込んできたものがあった。 ・ハイ・フ タンクの開口部の周囲を、管と金網でできた。フラットホームがと リト化ハラは・ハスケットの中に身を投げた。 り巻いていた。 リトル・ハラの立っていた位置で、閃光のようにひ それは一瞬前の その上を走った光の輪が何か布を投げ棄てたようなものを照し出るがえると、闇の中へ消え去った。 してたちまちそれていった。 それを見さだめるひまもなく、つぎの物体が急降下してきた。 リトル・ハラは、・ハスケットの底に体を伏せた。 リトをハラはもう一度それをとらえた。 人の形をしたものだった。 すさまじい衝撃が、 ' ハスケットを震わせた。金網の。フラットホー リトル \' ラは、 ' ハスケットをゆっくりおろした。 一メートルほどの穴があいていた。 それは完全に、かって人体たったものだった。 急降下してきた物体は、。フラットホームを突き破って下方へ飛び ハスケットから。フラットホームへ跳び移った。 去ったらしい リトル・ハラはホイストを動かし、後退した。 うつ伏せになっている体を、あお向けた。 ー 48

3. SFマガジン 1983年5月号

リトルバラの心は恐布に閉された。 「本船に新しい操船者が乗組んだ」 イノウの死が、にわかに現実のものとなった。 「コレハホモ・サ。ヒエンスデハナイ」 リトル・ハラは首に巻きっかれたまま壁に走って白熱灯のスイッチ 「これはホモ・サ。ヒエンスだ」 を入れた。 「コレハホモ・サ。ヒエンスデハナイ」 ふいに呼吸が楽になった。 「これはホモ・サビエンスだ。おまえが知らないだけだ」 「コレハホモ・サビエンスデハナイ」 金属板は空中を、白熱灯へ向って泳いでいった。 リトル・ハラは分析室から逃れ出た。 「ホモ・サビエンスを拒否するのか」 「コレハホモ・サビエンスデハナイ」 ー・ラン』へ向った。 ふたたびフェリー・ポートで『カツ・ハ 「それもホモ・サビエンスだ」 ナンシュルイ 『アナクレオン』で『カッパ ー・ラン』を曳行することは可能だ「ソレモトイウコトハホモ・サビエンスニ、 ったが、現実にそれを不可能にさせているのは、・フレ】キをかけるモアルノ力」 ことができないからだった。いったん慣性航行に入った巨船を、外「そのとおり。しつかりおぼえろ。お・ほえたら、新しい操船者の命 令に従って、基地『ミニョンⅡ』へ帰る」 部から減速停止させることは、極めて難かしい。 「リョウカイカッパ たが『カッく ノー・ラン』を帰港させなければならない。 どうしても『カッパ ・ラン』のコン。ヒューターを仕事にもどさ「ただちに操船者の保護にあたれ」 「リョウカイカツ。ハ ー・ラン」 なくてはならなかった。 この最新型の宇宙船は、その厖大なシステムが、すべて乗組員の リトレ・、ラは『カツ。、 / ー・ラン』の船体を離れた。 生命を守るために、自動的にコントロールされている。 イノウは、ネズミのために命を失ったが、そのネズミによって基 そのために、生命体としての乗組員の認承がなされなければなら 地へ帰遠できるのだった。 リトレくラよ、『カツ。、 ノー・ラン』の「一ン。ヒューター・ル 1 ムへ リトルバラのフェリーは、『アナクレオン』のランチャー 入った。 ッチへ、吸いこまれていった。 『カッく ノー・ラン』が、背後の星々をかくして、ゆっくりと進みは 物かげから物かげへと走るネズミに、麻酔銃を放った。 リトル・ハラは、分析装置の中へネズミを人れた。 じめた。 「本船に新しい操船者が乗組んだ」 リトル・ハラはマイクに口を近づけた。

4. SFマガジン 1983年5月号

なるタイゾの生命反応とはなんたる言い草だよ ! 」 「なんだと思う ? こんなの、知らないでしよう ? 」 「シュセキカンリカンセッメイセョ」 「ソレハナニカ ? 」 監査官のテレビ・アイとセンサーはイノウと待機所の床に半々に 「リトル・ハラ。やめてくれ ! たのむ ! 」 向けられた。 イノウが監査官の背後で手を合わせた。 そのとき、リトル・ハラの足もとを、この待機所の空間を、スペー 「これ。ホモ・サピエンスよ」 ス・マンたちと共有している生物が影のように走り抜けた。 「ホモ・サビエンス ? チガウソノセイメイタイハホモ・サビ エンストハコトナル」 すばやく体を起したリトルバラの右手の動きが、わずかに早かっ 「監理官さん。あなた。知らないのよ。これもホモ・サビエンスな チュ、チュッ、キイ、キイツ の。お・ほえなさい。これもホモ・サ。ヒエンスよ。、、 ししこと。これも けたたましいさけびがひびいた。 ホモ・サピエンスなの」 「チガウソレハ ホモ・サビエンストハ コトナルセイ・フッ 四つ肢が必死にちゅうを蹴った。 「リトル・ ( ラ ! やめろ ! そんなもの見せるばかがいるか ! 」 主席管理官が悲鳴をあげた。 「あなた、知らないのよ。これもホモ・サビエンスなのよ。ホモ・ 「ソレハナニカ ? 」 サビエンスに関するあなたの知識は不完全だわ」 監査官のテレビ・アイやセンサーが、リトル・ ( ラの右手につかま「ソレハホモ・サ・ヒエンスデ ( ナイ」 れ、つるされてもがいているものに集中した。 「これもホモ・サ。ヒエンスなの」 房。マガジン版派遣軍還る 光頼地球連邦と辺境星域との苛酷な戦争は、ようやく終 土月吉し、派遣軍の大部隊が帰還した。だが、地上に降 早 りたった大船団はもぬけの殻。しかも地下都市に勿然と現われた派 遣軍兵士は破壊の限りをつくす。なぜ ? 単行本・定価 1400 円 : 第 1 マこヾ 派遣軍還る 3 好評発売中 !

5. SFマガジン 1983年5月号

リトル・ハラは、イノウの体を背負ってラッタルを下った。ラッタ だが、それはつぎつぎと襲ってきた。 ルの下にイノウの体を置くと、巨大な球形タンクの形作る闇の谷底 長さ、数十センチ。幅は三十センチほどの奇妙な物体だった。 投光器の光の中をそれは、白銀の鳥のように、柔軟に、目にも止へ進んだ。 そこからあおぐ上部は、投光器の光さえとどかない。 らぬ早さでかけぬけた。 島だろうか ? 船倉の床を這うように足を動かしてゆくと、前方に、ちゅうを飛 まさかー 船内ではあっても、ほとんど真空状態である。羽根を翔していた物体が横たわっていた。 リトル・ハラは信号拳銃を向けながら、そっと歩み寄った。 使って飛ぶことができたら、それはむしろ悪夢と考えてよいであろ それはカー・フを描いて折れ曲った一枚の金属板だった。 信号弾の直撃を受けたのか、一部が変色していた。 まさにそれは悪夢だった。 放射能検知機のセンサ 1 は沈黙したきりだった。生態反応も全く リトル・ハラは信号拳銃をぬいた。 引金をしぼった。銃口から、一メートルもあるほのおが噴出しよ、。 た。そのほのおの先端が切れ、闇の奥へ飛んでいった。 リトルバラは靴先で、そっとそれに触れた。軽く動いた ) そこに、青白い大きな光の玉があらわれた。 とつ。せん、その物体がはね上った。さしのべたままのリトルバラ 空中を飛行していた物体が、その光をあびて、むれ鳥のように見の足に飛びついてきた。 えた。い っせいにひるがえり、光の外へ消えていった。 リトル・ハラは悲鳴を上げ、床に転倒した。その体の上を、金属板 ハスケットはホイストによって船内通路へ運ばれていった。 はくねりながら飛び越えていった。 高飛びレイク・シリーズ第 1 ! 大宇宙のめはしい銀行や宝石 ~ の強盗を続ける超能力犯罪者 ~ レイク・フォレストは、ふと したことから別れた妻ジェー 宇宙カジノ略奪作戦 ンともども難攻不落の宇宙カ 大市功ジノの略奪作戦に巻きこまれ ~ てしまった : : : 手に汗にぎる - 新シリーズ ! 定価 360 円 ハヤカワ文庫 JA 宇宙カ第謇作戦 協 9

6. SFマガジン 1983年5月号

ホモ・サビエンスデハナイ」 っ乙 「これもホモ・サビエンスなの」 「ソレハホモ・サ・ヒエンスデハナイ」 「これもホモ・サビエンスなの」 前方二時の方角に、大マゼラン雲が広大な光のしみを描き出して 「コレモホモ・サビエンスダ」 「そう。これもホモ・サ・ヒエンスなの」 背後に、銀河系のすさまじいばかりの星々のむれが在るのだが、 「コレモホモ・サビエンスダ」 スクリーンの第三、第四象限は電源を切ってあるので、前方はわび 監査官とリトル・ ( ラのやりとりは、その瞬間、瞬間に、遠く離れしい暗黒が空漠とひろがっているばかりだった。 た宇宙省・統制・管理局のモニター ・ル 1 ムに送られているはずだ い電波が入りはしめた。 スビーカーから、声が流れ出てきた。その声はコン。ヒューターの そこでは、今、必死に、監査官に、ヒトとネズミの違いを教えこ発するリトルバラ自身の声だった。 もうとしていることだろう。 《緊急指令。調査船『アナクレオン川』は、調査船『カッパー だが、監査官は、目の前に突きつけられているネズミと、それもン』に接触せよ。同船は船内に異常事態が発生した模様。『カツ。 ( またホモ・サ。ヒエンスであると強調するリトルバラの説得に、強く ー・ラン』の現在位置。 O 座標系、一七一・五より三〇七・三。ロ」 影響されはじめていた。 1 ラン一一八九。以上》 監査官のフレキシ・フル・コンビューターは、二種類の異ったデー リトル・ハラは航法装置に、ローラン一一八九の追跡を命じた。 ターの注入に、大きく混乱した。センサー側にデーター導入回路を それから、なかまの声を探した。 作動させたままにしておいたのが、致命的だった。 「こちら。リトル・ハラ。だれか答えてください。こちら。リトル・、 ただ、統制・管理局のモニター ・ルームでは、この辺境の基地ラ : 「ミニョンⅡ』で、監査官が、ネズミをヒトだと言いくるめられる 三十分ほど呼びつづけると、星々の海の中から、かすかに応答が だろうとは想像もしていなかった。 あった。 監査官は大きくよろめいた。 「その声は、調査船『シンコペーション・サラビア』のタタール・ 方向を失ったように、五、六歩進み、それから、どうんと倒れランスだね。タタ ール。今、緊急指令があったんだけれども、イノ ウの船に何か異状が起きたらしいのよ」 あちこちから青白い火花が飛び散った。 《おれも聞いていた。イノウもかわいそうだった。あのネズミがた たったんだよ。おまえにも半分、責任がある》 協 2

7. SFマガジン 1983年5月号

するどいメーザーが作った裁断孔から、船内のエアが爆発的にも ( ッチをあけてくれ出した形跡はなかった。船内のエアは、とうに失われているのた。 「イ / ウ。リトルバラです。聞えていますか ? ー・ラン』の船内に入った。 リトルバラは『カツ・ハ ださい」 プリッジ 船内の操機システムが作動していなければ、 ( ッチを外から開放機能を喪失した = ア・ロ〉クを通過し、通路をぬけて船橋に足を 踏み入れた。 することはできない。 プリッジ 船橋の内部は『アナクレオン』とほとんど変りなかった。 リトル。ハラは、腰の・ ( ッグから、メーザー集東弾をとり出した。 そこにはイノウの姿はなかった。 十数基のメーザーの光東をひとつの焦点に結ばせることによって、 この巨大な宇宙船の内部を、すみすみまで点検することは、地球 いかなる強固な金属壁をも一瞬に焼き切ることができる工具は、重 の小都市を、くまなく調査することと同じである。 戦車の装甲に対する成形炸薬弾のような効果をあらわした。 それをおこなうはずの監視システムは、コンビューターのサポタ 二十メートルほど離れていると、一瞬、 ( ッチが、ルビーのよう ージュによって死減していた。 にかがやいた。 プリッ - ン ・ルームへおりてい リトルバラは、船橋につづくコンビューター 閉鎖機構が完全に焼き切れていた。 ( ッチは、音もなく開いた。メーザーの集東は、内殻のドアにもった。 コン。ヒューターは死んではいなかった。 穴をあけていた。 そこはエア・ロックだった。 だが、あきらかに、幾つかの主要な回路を閉鎖していた。 リトルバラははっとした。 それをイノウがおこなったものだとすれば、理由のいかんにかか 平和な日本で翻訳稼業にいそしん でいた私を、突如巻きこんだ次元 嵐ーー気がつくとそこは、異星人 に侵略されつつあるもう一つのア・ 悪夢の戦場 メリカだった。そこで出会った美 少女を従え不思議な世界を探険 ! の奔放さ、冒険小説のスピー 1 第第第第 ( 矢野徹 ドを見事に盛りこんだ傑作長篇。 定価 420 円 ハヤカワ文庫 早川書房 ー 45

8. SFマガジン 1983年5月号

わらず、彼を連れ帰ることの意味はない。スペース・マンとしての それだけだった。 神経活動に、回復不能な障害を生じていることはあきらかだった。 「なぜ ? 」 ライダ コン。ヒューターが自らそれをおこなった可能性はある。 《操船者ノ指令ガナケレ・ハ、。 テーターフ公開スルコトハデキナイ》 コン。ヒ、ーター自身のダメジ・コントロールをコントロールさせ リトル・ハラは舌打ちをもらした。 得る機能ははたらいているはずだった。 コンビーターの回路を組み直すのは、かなりの時間と工程を要 だが、その場合には、コン。ヒ = ーターにそう判断させるような、する作業だった。 なにかの条件があったはずだ。 「『ミ = ョンⅡ』へ引き上げる。『アナクレオン』について来な イノウを見棄てたコンビ = ーターが、かれに変るなにを見出したさい」 のだろうか ? 《拒否・ : ・↓ リトル・ ( ラは、イノウが生命を落した原因の解明よりも、宇宙省 思ったとおりの拒絶だった。 ライ は『カツ。、 , ー・ラン』を持ち帰ってほしいのだろうと思った。この「操船者はどこにいる ? 」 新鋭の調査船を、虚空の果に棄て去るのは、忍び難いのであろう。 《第八船倉。 3 セクション》 だが、それだけに、この船のサポタージの原因を明確にする必イノウはそんな所で何をやっているのだろう ? 要があった。 そこに死体があるということなのか。 リトル ' ハラは棒立ちになった。 リトル・ハラは船橋から通路へ出た 9 その足もとを、影のように走りぬけたものがあった。 船内は迷宮のように入り組み、通路も船橋も、機械室も、すべて ネズミだった。 無重力六面床構造になっているため、前進することさえ容易ではな 与圧され、完全に気密にされた環境の中で、ネズミだけが確実にかった。 生存を続けていた。 ヘルメットの投光器が、足もとや頭上に、たえず光の輪をおどら そのネズミは、『ミ = ョンⅡ』のネズミであろうと思った。そのせていた。 ためにイノウが、調査船の乗組員に降等された元兇が、やはりどこ第八船倉は船殻の左舷側上部にあった。 までもっきまとっているのであろうとった。 停止しているエスカレーターを、一歩一歩踏みしめておりた。 リトを ( ラは、コンビ、ーターに航行日誌と作業日誌を読み上げ 八個の巨大な船倉は、そのひとつひとつに中型の探察船を収容す るように命じた。 ることができた。この『カッパ ・ラン』は大がかりな調査隊の基 《拒否・ : : ・》 地として使うことができる能力を与えられていた。 6

9. SFマガジン 1983年5月号

んど異状なしにひとしい。星間物質や小いん石などが充満しているトにさしこむと、気密帽を引きおろし、電磁ジツ。 ( ーを作動させ こ 0 よ、つこ 0 太陽系の圏内などでは、こうよ、 さらに数時間たった。 三〇分後、『カツ。ハ ー・ラン』は、スクリーンの中央に、暗黒の レ 1 ダーによる反射像を分析したコンビュ 1 ターが、スクリーン巨大な塊のようにあらわれてきた。 にそのスケッチを描き出した。 リトル・ハラは、三十秒おきに十発の照明弾を発射した。 それは三枚羽根のスクリュ ーにフォークリフトを結びつけたよう暗黒の空間の中で、『カッパ ー・ラン』は白銀の翳を撒き散らし な、おそろしくぶざまな形象の物体だった。複雑に組み合わされた ・フームの間から、遠い星がのそいていた。 リトル・ハラは、ランチャーに乗っているフェリー・ポ 1 トにおさ 『アナクレオン 2 』は急速に接近していった。 まった。 スクリーンのデッサンは、目にも止らぬ早さで修正されていっ フェリー・ポートは、イオン・ガスの尾を曳きながら突進してい 『カツ。、 全翼機の折紙飛行機を二、三機、重ね合わせたようなシルエット / ー・ラン』がぐんぐん大きくなってきた。 が固定した。 やがて、視野をおおった。 長さ三五〇〇メートル。地球上換算重量七五万八千トン。核融合十発目の照明弾が燃えっきる直前、フェリーは、『カッパー 反応を動力源とする重力場推進システムを四基備えていた。 ン』の船橋の真上に停止した。 ー・ラン』だった。 イ / ウの調査船『カツ・ハ ゆっくり接近する。 プリッジ 「船橋は ? 」 投光器の描く光環の中に、ハッチがくつきりと浮かび上った。 スクリーンのデッサンの、船首に近い上部に赤い矢じるしがすべ リトル・ハラは、リフトに体をあずけた。 っていった。 両足をかけ、ハンドルをつかむと、軸が音もなくのびだした。 「イノウはそこにいるのね ? 」 リトル・ハラの足の下で、リフトのスプリングが、かすかにはずん コンビューターが答えた。 「その可能性は大きい」 そこは、巨大なクジラの頭頂とも思えるような大円丘の上だっ 「距離三〇キロメートルで平行して。フェリー の用意」 「アイ・キャ。フテン」 クローム・モリ・フデンと強展張性。フラスチックのチョー・、 リトルラは、装具室で、すべての装具を身につけた。 ニカムの船殻は、いかなる物質の侵蝕をもくいとめていた。 信号拳銃の弾倉に、八個の弾丸を装填した。それを宇宙靴のベル ハッチは、保塁の円蓋のように、なにものの侵入もさえぎってい フル・ウイング こ 0

10. SFマガジン 1983年5月号

かたくなに沈黙を守る最新鋧調査船。同僚の安否を気づかうリトルバラの前に ーー調査船報告・ 7 ーー ガラスの島光瀬龍 イラストレーション金森達 1 なー ー 37