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検索対象: SFマガジン 1983年5月号
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1. SFマガジン 1983年5月号

「シュリック ! 」ウェゼルが厳かな声で言った。「すぐ、みんなの 「その、べつの世界ってどんなものだ ? 」 ところへ帰りましよう。みんなに知らせなくては。巨人たちは″終「ちらっとだけ見たわ。恐ろしい、恐ろしい世界。わたしたちは中 4 2 わり〃をもたらす魔法をはじめたのよ」 の世界の広さにおびえていたでしようーーでも、・ヘつの世界は、一 「ものすごく熱い光か ? 」 方だけを除いて、あとはすっかり開け放しの広がりなのよ」 、え。でも、待って ! まず、わたしがあそこで知ったことを「だけど、じゃ、おれたちは何者なんだ ? 」われしらず、シュリッ クは、ついにウェゼルの空想めいた話を、なかば信じるようになっ あなたに話さなくちゃ。でないと、あなたはとても信じてくれない わ。わたしは知ったのよーーわたしたちが何者なのか、この世界がた。たぶん彼女は、親密なものの心の中に自分の考えを投影するカ どういうものかを。それはわたしたちがこれまで信じてきたこととを、わずかとはいえ、もっているのだろう。「おれたちは何者なん は比べものにならないほど、ふしぎですばらしいの。 ウェゼルは何鼓動ものあいだ黙りこんでいた。それから・ーー「巨 外側の世界ってなんだと思う ? 」彼女は答を待たなかった。彼の 、ユータント〃。その意味は 口に言葉がうかぶ前に、もう彼の心からそれを読みとったのだ。人がわたしたちにつけた名前は : : : よくわからないわ。どうやら、わたしたちーー・ー民の・せんぶがー 「この世界は、想像もっかないほど大きな金属のかけらの中にあ る、がらんどうの場所。だけど、それだけじゃないの ! 外の世界ー変わったらしい。でも、巨人のにある、変わる前の民の姿は、 の外にある金属の壁のもう一つ外側は、なんにもないのよ。なんにわたしたちがみな殺しにした変わり種とおなじものなのよ。 も ! 空気もないのよ」 遠い遠い昔ーー何回もの食事の前ーーー最初の民、わたしたちの親 の親のそのまた親たちが、この世界に現われた。彼らはもっと大き 「しかし、空気はあるはずだ。いくらなんだって」 、え。なんにもないのよ。 な世界ーー恐ろしくだだっ広い世界からやってきたのよ。大きな食 そしてこの世界はーーなんといえばいいのかしら ? 巨人がこのべ物の洞穴にある食べ物といっしょにーーその食べ物は、べつの世 世界につけた名前は ″船″というのよ。あるところから別のと界へ運ばれるものだったの。 ころへ行く大きなもの、という意味らしい。で、わたしたちみんな ところが、外の世界の外側にある、恐ろしいからつぼの場所には はーー巨人もわたしたちもーーその船の中にいるのよ。巨人がその 光でない光があるのよ。その光がーー生き物を変えてしまう。 船を作ったわけ」 といっても、おとなや子供じゃなく、生まれる前の赤ん坊をね。も 「じゃ、船は生き物じゃないのか ? 」 う死んでしまった大ぜいのかしらのように、巨人たちも変えられる 「わからない。巨人たちは、それを女だと思ってるようだけど。きのが怖かった。そこで、光でない光が中の世界へ入ってこないよ っと、何か、命じゃない命を持っているのよ。そして、一つの世界にしたんだわ。 からべつの世界に向って進んでるのよ」 つまり、こうなのよ。境の壁と外の果てとのあいだのすきまに、

2. SFマガジン 1983年5月号

っしょに腹ごしらえはいかがで から腕をごしごしとこすった。そしてウインド・・フレーカ 1 をはお「教授、これから一周ですか ? ると、軽くジョギングをしに表に出た。 太陽はもう高いところにあった。 ウイルスンは、面識のない娘の、この無邪気なジョ 1 クに応接す ニールは汗を流すうちに、夢のことはすっかり忘れた。 る気転がきかぬまま、曖昧な笑みを返した。彼女は、そんなウイル スンのとまどいなど意に介せぬように、猛烈な勢いでサンドイッチ 2 を詰めこんでいた。たとえ彼が彼女といっしょに、手すりにもたれ かかってサンドイッチを頬ばる気になっても、彼女はウイルスンが 公園のべンチに腰かけていると、何人ものジョガーがまっ白な息一回の咀嚼をする間にロのまわりについたマヨネーズをふいていた を吐きながら、ウイルスンの目の前を横ぎっていった。かすかに濡だろう。それでもよかったのかもしれないが、とにかく彼はコート れた舗装路の上を、ひたひたと規則正しいリズムが遠ざかってゆの襟を合わせてその場を逃れた。周囲を通りすぎる人間の色鮮かな く。カラフルなパンツとシ、 1 ズ、そしてそれを結びつけるすんなウインド・・フレーカーと白い吐息に、な・せかため息をついた。 メイ・ダグウッドが彼の講義に出ていることを知ったのは、それ りと伸びた脚が、彼の視野の奥の方に・ほんやりと残る。 からひと月ほどたってからのことだった。彼女は前から五番目の列 視野の中央には、動物園の柵や池があいまいな像を結んでいる。 白クマはじっとして動かない。冬空の下を肌を露わにして走りまわにいて、まっすぐ前を向いていた。公園で会ったときとは見ちがえ る人間たちと、氷の世界から来て惰眠をむさぼっている猛獣との取るほど地味な紺のジャケットスーツを着ていて、講義が終わるまで、 の引、にこりともしなかった。 り合わせが、非常に奇異なものに彼には思えた。 ひと口かじっただけで、手の中でスタイハイさせられているパス っ 0 トラミ・サンドを、紙の中にしまいこむ。そのかわりに、左手に持 った缶ビ 1 ルだけは、責任を持って消費しようと思った。ビール ルーべの下には、楕円形、波の形、樹形その他、様々の素朴な図 は、ビュ】リタン的な厳格さで、よく冷えていた。 ウイルスンは、サンドイッチ屋の前で、メイがこの巨大なパスト形が並んでいた。 「これがそうなんだね ? 」 ラミを頬ばっていた姿を思い出す。・フルーのジョギング・パンツか ウイルスンは、・ヒューワーの上でルー・フを調節しながら言った。 ら長く形のよい脚を見せ、セ・フナップとサンドイッチを交互にロに 運びながら、彼の方を見て笑った。彼はそのとき、新聞記事のあま「ああ、そうだ」 ロイスが眼鏡の両端を指でおさえながら答える。 りのつまらなさに、それをくしやくしやと丸めてくずかごに放りこ 「それが軍の連中が小惑星帯で採取したサンゾルの写真だよ」 もうと、立ち上がったところだった。 せんせい 4 7

3. SFマガジン 1983年5月号

みどりはエスパー・⑩ 「へえー、信じられない。ュッコがお母さんなんてねえ」生ま れたばかりの赤ちゃんを抱くュウコに、みどりは驚嘆の声 をあげる。日、私に似て可愛いいてしよ。学校にあがる前に ビアノとバレエを習わせるの。そうそう英会話も。早い 力しいって一一一口 - フてしょ・ ( うひやあ、やだなあ ) 突然、 みどりの心の中に強烈な精 神感応が流れこんてきた。 もちろんュウコのものてはな 4 まさか〕』田わ亠 9 、↓まじ まじと赤ちゃんを見つめた。 ・』学にカ 『この子はエスパ 赤ちゃんはスャスャ眠ってい るごけだ。ュウコの声にみどりは我に返る。「・ : ・ : あと、お習 字とそろばんも。結婚前に新年金型預金を続けていたから、 うち、新婚ても余裕あるのよ」「ね、ねえ。 いくら可ても、そ んなにいつ。へんじゃ、子どもがかわいそうよ。預金の使いみち は也にもあるわ」「 : : そうかしらねえ」ュウコが心の中て考 - ス直し始めたとき、みどりは見た / 眠っていたはずの赤ちゃ んが、こ「ちに向か「てウインクすのを。 べ丕ビイ・ドリーム く▽ 7 7 三和銀行

4. SFマガジン 1983年5月号

かたくなに沈黙を守る最新鋧調査船。同僚の安否を気づかうリトルバラの前に ーー調査船報告・ 7 ーー ガラスの島光瀬龍 イラストレーション金森達 1 なー ー 37

5. SFマガジン 1983年5月号

巨人たちは詰め物をし、その詰め物の中にわたしたちは洞穴やトン ないうちに、巨人どもをやつつけてしまうんだ」 ネルを作った。最初の民が食べ物の大洞窟をあとにして、境の壁に 「ため ! 片手の指の数だけの巨人がいるのよ。あなたが出っ腹を トンネルを掘り、外の世界の詰め物の中にもぐりこんだ。そういう 殺したから、残りは四人。いまではあいつらも自分たちが殺される 習性なのよ。そして、あるものは外の果ての洞穴の中で番った。そこともあると知っている。きっと警戒しているわ。 の子供たちがーー変わり種だった」 病気の仲間を埋めたときのことを、覚えてる ? あれをこんどは 「そうだったのか」シ = リックはゆっくりといった。「外の果てで部族のみんなにやらなくちゃならないのよ。そのあと、巨人たちが 生まれた子供たちは親に似ないという言い伝えがあった。逆に、境とっておいた空気で、もう一度世界をいつばいにしたら、そのと の壁の近くで生まれるとーーー」 き、こっちも出て行けばいいの」 「そう。で、巨人たちはここに民が住んでいるのを前から知ってい シュリックはしばらく黙ってた。彼 、 - 女の言う通りと認めざるを たけど、怖がってはいなかった。こっちの数も知らないし、自分た得なかった。不用心な巨人がひとり、彼の刃にかかったとはいえ、 ちよりもずっと下等な生き物だと思っていた。罠や命とりの食べ物怒り、警戒している巨人が四人もいては、どうしようもなかった。 で、わたしたちの数がふえないようにするだけで、満足していた。 いずれにしても、やつらがいっ空気を逃がすかはわからない。みん ところが、どうやらむこうは、わたしたちが変わってきたことに気なに警告しなければならない。 それも、急いで。 がついたのよ。死んだ長たちのように、やつらはわたしたちを恐れ てるーーそして、わたしたちに征服される前に、わたしたちをみな シュリックとウェゼルは、集まりの場所で、みんなを前にしてい 殺しにしようとするでしようね」 た。ふたりは経験談を語ったが、とても信じられないという受けと 「で、″終わり″は ? 」 り方しかされなかった。たしかに、シュリックが持ち帰った見事な 「そう、″終わり″ね」彼女はまた黙った。シ、リックのうしろのびかびかの刃物を目にして、信じる気になったものもいた。だが、 何かを見ているような彼女の大きな目は、言いようもなく恐ろしか彼らは、大多数の者から野次り倒されてしまった。″終わり〃への った。「そう」彼女はくり返した。「 " 終わり〃ね。あいつらはそ対策として、みんなで穴に閉じ籠ろうと説得をはじめたとき、彼は れを作り出して、自分たちはそれを生き延びるつもりなのよ。あい猛反対に直面することになった。病気に苦しむものを彼がどう扱っ つらは、体ぜんぶを、頭までを覆ってしまう作り物の皮を身につけたかは、大衆の記憶の中にまだ大きな影となって残っていたのであ てから、船の : : : 皮についてる大きな戸を開ける。すると中の空気る。 がぜんぶ、外の世界の外側のなんにもないからつぼの場所へ逃げ出破局を早めたのは短か尾たった。 してしまうのよ。そして、新しい民は、みんな、死んでしまう」 「あいつは、世界を独り占めにしたいんだ ! 」彼は叫んだ。「あい 「おれは行かなくちゃ」シリックは言った。「そんなことの起きつが大牙と尾なしを殺し、変わり種をみな殺しにし、大耳を殺した

6. SFマガジン 1983年5月号

センチほどの丸い窪みがあった。 情報官はいった。「タトラデンを含むこの七つの植民世界には、 彼はそれが何であるか知っていた。実習や訓練でしばしば見せら当然ながら交流がある。その航路と、宇宙船が航行した頻度を示す 2 と : : こうだ」 れ、自分でも使ったこともあゑ立体像現出盤なのである。 「これを見たまえ」 十数個の光点の、そのうちの四つが、細い赤い線で結ばれた。タ いいながら情報官は、自分が持って来たらしいいくつかのカセッ トラデンから出ているものが、幾分太い トのひとつを、壁面の小板をずらして現れた挿入孔にさし込み、ポ「太いのは、それたけ航行頻度が高いわけだが : ・ ・ : これは、十五年 タンを押した。 前の姿なんだ」 部屋は再びーーさっきよりももっと暗くなって、立体像現出盤と、情報官。「十年前には、それがこう変化している」 たちまち、光条の数が増えた。七個の光点がお互いにかなり太い に、何百という光点が浮かびあがる。 線で結ばれたのだ。 「第八大星区だ」 情報官の声がひびいた。「この第八大星区のはずれに第四五星区「だいぶ行き来が頻繁になっているだろう ? 各植民世界の貿易や その他の交流が、さかんになったわけだ」 がある」 音もなく、ひとつひとつの光点が強く輝きはじめ、光点間の距離情報官は説明する。「もっとも、これは各世界の司政庁が運航報 が大きくなって行く。その動きがとまると、十数個の光点が残って告を受けたその数をもとにしたもので : : : 司政庁に連絡のない運行 いるばかりであった。 は入っていないんだ。昔は植民世界の宇宙船の運行は許可制で、そ 「第四五星区。その右上の光点が一〇〇番星系ーーータトラデンの太れが単なる届出制になり : : : 今では報告義務もなくなっているか 陽だ」 ら、習慣的に報告されるものだけを集計した数字なんだよ。これ 情報官がいう。 に、報告はないが各司政庁が独力で把握した分を桃色の光線で示す 彼はそうと悟っていた。が、言葉をはさむ必要もないので、黙っと、これだけ増えるわけだ」 ていた。 七個の光点間の赤い光条に、。ヒンク色の光条が加わった。ビンク 「この星区を担当する連邦軍は、第四五星区軍で、受け持っ宙域色の光条は、赤い光条とほぼ同じ位の太さであった。 は、このようになる」 「五年前はこう」 声と共に、十数個の光点を包み込むようにして、淡い青色のかた情報官が告げると、赤い光条は増えないのに、。ヒンク色だけが一 まりが現れた。 挙に三倍以上も太くなった。 「この第四五星区には、十四の星系があり、うち七つは植民世界「ここまでは、届出のない運行回数がどんどん増大しているという ことになる : : : そう解釈して間違いはないだろう。ま、それだけ各

7. SFマガジン 1983年5月号

CO 池見照一一 サイエンス・トヒ〉ク・《① 原子炉衛星ショック CO カット佐嘉隆 くと役所に泊まり込みで、待機。中には三日も オトソ気分が抜けない一月六日から始まった落下する危険性があるのかどうかをチ = ック ソ連原子炉衛星コスモス 1402 号落下騒動し、対処しなければならず、宇宙開発事業団の連続になった職員もおり、はた迷惑な落下動 コンビューターを駆使、献道予測をするのに大に渋い顔だった。 は、一月二十四日に主要機器部分が南東インド ソ連の原子炉衛星落下は、今度が一一回目。五 洋に落下したのに続き、二月七日に炉心部分がわらわだった。とりわけ、最後の炉心部落下の O 南大西洋上空で大気圏に再突人して、幕とな 0 さいには、落下三日前の二月四日にわが国初の年前の一九七八年一月二十四日、カナダ北部に こ 0 実用通信衛星「さくら 2 号ー」が打ち上げらコスモス 954 号が落下した。このときは、米 この一カ月間、世界に張りめぐらした衛星追れ、刻々と行う軌道修正のために宇宙開発事業国が二カ月近く前からコスモスの軌道が低下し し合わせを受けた つつあることをキャッチ、問、 跡、監視網を総動員したアメリカは、鑿 Z ソ連も認めたものの、パニックを引き起こす恐 情報をつぎつぎと発表。米政府は放射 能の危険に対して緊急事態の警告を出 部れがあるとして、公表はせず、極秘に対策が進 心められた。落下六日前、アメリカは衛星落下の cn し、エネルギ 1 省核事故緊急調査班が、 炉危険のある友好諸国に通報。わが国にも情報が 出動態勢をとるなど、緊迫した空気に CO 包まれた。 - ま炉伝えられ、科学技術庁放射線医学総合研究所の 畿・、こ一一子専門家がひそかに出動準備を整えた。 わが国も、米国からの情報によっ 結果はカナダ北部の幅五十 ~ 六十キロ、長さ て、科学技術庁、運輸省、警察庁、外 務省など十八省庁からなる関係省庁連 ン一齷約五百キ 00 帯状 0 地域〈破片が落下した。重 絡会議を設置。また内閣の放射能対策、 . 【を - Z 本部も、科学技術庁、気象庁、防衛庁、 ~ ~ 、 ~ ) 六本が東にな 0 たものから一 ~ 〇・一。、 ( ソの小さなウランの微粒子まで、回収された数は 各都道府県衛生研究所などに放射能の 四千個にの・ほった。中には、一時間五百レント 緊急調査を指示し、航空自衛隊のジ = ゲンという極めて強い放射能を持ったものもあ ト機が日本列島上空の放射能を調べ 団のコン。ヒ = ータはフル回転。本来の「さくらり、数時間持っていると生命に危険が及ぶ恐れ るなど、実際に観測活動が展開された。 幸いコスモスの大気圏再突入地点が、オース 2 号ー」用の業務を終えたあと、未明にコスがあった。回収された破片の総重量は六十五キ 0 トラリア南西の海上と・フラジル東方の大西洋モスの軌道予測作業を行わなければならず、担ロで、このうち七〇 % が放射能を帯び、三〇 % には放射能がなかった。 で、日本から遠く離れていたため、日本上空で当者は悲鳴をあげた。 ″死の灰″が検出されるようなことはなく、関関係省庁の連絡調整に当たった科学技術庁の落下したのが、人口の少ないところで、放射 宇宙国際課、宇宙開発課、放射能対策本部の事能の被害を受けた人はなかった。だが、検出、 Z 係者はほっと胸をなでおろした。 だが、落下が近づくにつれ、はたして日本に務局である同庁防災環境対策室は、落下が近づ回収作業は大変で、十カ月もかかった。 ロ 6

8. SFマガジン 1983年5月号

「シュセキカンリカンソ / ロンリ、 / セイカクデハナイキチシセ ッノコウゾウナラビニコウホウニカンスルショウジョウレイシーコ 3 ジョウジシコウサレルタイ ウノフロクサンジュウコウモク ヒトッ マンノッミハキカモプンタンシナケレ。ハナラヌ」 「シュセキカンリカンコノクカクガキミッシャッター 「そんなこと、やられてたまるか ! 」 ナクスペテカイホウサレタッウロデムス。ハレティルノハイ 「シュセキカンリカンツギノエリアヲシサッスル」 カナルリュウニモトヅクモノカキチシセッノコウゾウナラビニコ テレビアイが移動しはじめた。 ウホウニカンスルショウジョウレイシーコウノフロクサンジュウコ ウモク ハシラヌワケデハアルマイ」 アルテア 4 の第三惑星『パルミラ』の宇宙空港『ミニョンⅡ』 「宇宙省統制管理局監査官。お言葉ではありますが、その区画、つ まり、フラットのからにおよぶ部分は、基地施設の構造は、宇宙省の統制・管理局の監査官をむかえていた。 ならびに工法に関する省条令 O 項の付録三〇項目が発令される以基地の司令ともいうべき管理官の、イノウは、監査官の追及にし 前、つまり今から三百年も前に建設された個所でありまして、遺憾どろもどろのありさまだった。 そのようすは、基地内の連絡用テレビが、一部始終を写し出して、 ながら、われわれの責任のおよぶ範囲内ではありません」 スペテロクオンサレテいた。 「シュセキカンリカンキカノハッゲンハ 監査官はきびしく、規定どおりの正確さを要求していた。 イルトウ・ヘンハシンチョウニナセキカノセッメイニモトヅキ タダイマショウキロクキョクホゾンゲンポヲチョウサシタトコロ 「主席管理官のやつ。やられていやがら。ふだん徹底してなまけて ニセンヨンヒヤクジュウクネンショウジョウレイニソッテカイ いやがるから、いい薬だぜ」 シュウスルタメノョサンガヒョウギカイニョッテカケッサレティ 「それにしても監査官てのはだいぶ底意地が悪いやつだな。宇宙基 ルトウガイシリョウノコピーヲヒッョウトスルカ」 「わかった。わかった。当該資料のコ。ヒーを必要とするか ? なに地の通路や部屋が、つながっていようがふさがっていようが、やっ こっちにはこっちの事情ってえものがあるらにどんな関係があるってんだよ。こまけえことばっかり言ってや を言ってやがんでえー がる」 んだ」 「シュセキカンリカンワタシニリカイデキルョウゴヲッカッテホ 「この基地ができてから、宇宙省の視察なんそ、これまで一回もな かったじゃねえか、それが、なんだって今頃、出てきやがって文句 「監査官。その時の、この基地の管理官は私ではない。当時の管理ばかりたれやがるのかな」 みなの目が、壁のテレ・ヒ・スクリーンに集中していた。 官の無能ぶりの責任まで私がとる必要はあるまい」

9. SFマガジン 1983年5月号

正直なところ、今回の紹介は少々後ろめが潜みこちらをうかがっている夢に : 夕刻砦に到着した。その彼を歓迎するかの だが彼らはそこに留まったーーそれが恐節ように、その夜恐怖は彼を直撃したのであ たい気がする。小説には、そのストーリー る の一部はもとより、どのような類いの物語の始まりであった。 一夜明けた朝、ふたりの衛兵が死体とな ふたりの兵士が夜間巡回していると、目 かも、読者がそれを読む以前には知らない ほうが良い、いや知らされるべきではない って発見された。ひとりは首がちぎれてなの前の外灯が次々と消えてしまい真暗にな イ品がある。かのフィニイの名作「盗まれ くなった状態で、もうひとりは首を裂き開り、その闇の中から何かが襲いかかってき 。うとうとと眠っていたケムフ ) 一ル た街』がその好例だが、この・ポール・ かれて絶命していた。その夜も、巡回中のた・ : 少佐は、寝室のドアを外から引っかくよう ウイルスンの新作「砦』もまさにその典型兵が全裸で逆さに吊されて死んでいた な音で目を覚した。「誰だ」と呼んでも返 的な作品である。しかし読者諸兄にこのよ同じように喉を引き裂かれ、顔面を真赤に うな作品の存在を知っていただくため、と血に染めて。そしてまた次の夜も : : : ひと事はなく、音は次第にギシギシとドアにの ~ しかかるような大きな音に変わっていく。 同時に編集部諸氏に邦訳を出す気に なってもらうためには、その一部な 凍りついたように動けない少佐の前で、分 りとも紹介せざるを得ないのであっ 厚いドアは巨大な力でたわみ、やがて止め 金が引きはがされてパッと開く。背後から 照らされて浮かび上がるヘルメット姿のふ たりのドイツ兵。と思う間もなくつかっか スな一九四一年四月、ナチ・ドイツ占 と歩いてきて、少佐のペッドの前でピタリ 領下のル , ーマニア。その小さな田舎 町に、ヴェルマン大尉率いるドイツ - 、〔・、・と止まる。少佐は懐中電灯を取り出し灯け たーーそこには喉を大きく裂かれ血に染っ 〃軍の一隊が到着した。彼らの任務は 0 ルーマニアのその地方一帯を掌握 た兵士の姿が : : : その死体が彼におおいか し、ロシア侵攻の布石とすることにあつりまたひとりと衛兵が同じように首を引きぶさってきた : : : 。その頃、ポルトガルの た。彼らは古い”砦″に陣をとることに決裂かれて殺されていった。それは永遠に続奥地から、ひとりの赤毛の男が必死の思い ン めた。それは古城のようにそびえる奇怪な く悪夢そのものだった。兵士の間ではパンで砦へと向かっていた。 カス ・ハイアの仕業だとのうわささえ囁かれ始 レ砦で、その壁は数千にのぼる十字架で覆わ 一口で言うならば、・キングの一呪わ やれていた。何か異様だ「たーーその一帯にめ、ヴ = ル「ン大尉自身、恐怖の虜とな 0 ウ・・は、鳥の姿がただの一羽も見あたらないのていった。これを限界と見た彼はポ , 、ランれた町一と山田風太郎の忍法魔界転生』 んいだ。ず「と昔から砦の掃除を続けてきた老ドのワルソ 1 支部に電報を打「た、「至急とムア「一 , クの「ストーム・フリンガー』を 一人が言った、「立去りなされ。留まれば悪配置移転を望む。何物かが我が兵士を殺害たして三で割ったような物凄い作品であ こうして、調査を命じる。ともかく、以上の紹介文は全て忘れ去 5 ヒづポ夢にうなされる。窓も出口もない真暗な小し続けている」 『部屋に閉じこめられ、その闇の中に何物かられた諜報部のケムフ = ル少佐がその日のり、ただひたすらに読むべし ! 泉本和

10. SFマガジン 1983年5月号

ー特別企画・連載ー THE ENCYCLOPEDIA OF SCIENCE FICTION SF 工ンサイクロべディア ピーター・ニコルズ編 浅倉久志・伊藤典夫監修 安田均訳 Copyright ◎ RoxbY Press Limited 1979 几 例 1 . 邦訳のある作品には邦題を添え、未訳作 品は原題 ( または英訳題名 ) のみ記した。 2 . 原題のうちイタリック体で表わされてい るのは単行本、引用符 ( ' ' ” ) でかこんで あるものは短篇。 3 . 邦題も 2 にならい、単行本は「』で、 短篇は「」でかこんだ。 4 . シリーズ名は、未訳のものも含めて日本 語で表記し、《》でかこんだ。 5 . 作者名の中には、あえて慣例に従わず、 原音に近い表記をとったものがある。 ( 例 : ヴァン・ヴォート ) 6 . 本文中のゴチック書体は、本事典中に項 目の立てられている見出し語。またポール ド書体の年号は、初版発行年。 7 . 映画および TV ドラマについては、日本 で公開された作品には邦題を「』でかこ んで添え、原題をイタリック体で示した。 未公開作品は原題のみを示した。ポールド 書体の年号は、本国での製作年。 8 . コミックは《》でかこんだ。 9 . 略語および記号 A S F : アスタウンディング・サイエン ス・フィクション誌、および ( 後 年の ) アナログ誌 F& S F : ファンタジイ・アンド・サイ ェンス・フィクション誌 TWS : スリリング・ワンダー・ストー リーズ誌 NW : ・ワールズ誌 巨いアンソロジー 図 : 版による題名の異同 : 加筆 : 改訂版 集 : 短篇集、またはひとりの作家による 長篇のオムニバス版 統 : 複数の短篇を加筆改訂し、長篇のか たちに統合したもの 前 : 戦前にしか邦訳のない書名 扨 : 抄訳 ① : ジュヴナイル向きに翻訳されたもの * : 訳註 : 参照 P N : ヒ・一ター ニコノレズ、 B S : プライアン・スティフ・ルフォード T S : トム・シッヒ・一 ハリスン、ハリイ HARRISON, HARRY ( 1925 ー アメリカの作家。現在はアイルランドに 住む。ハリスンはまず商業画家としてスタ ートし、おもにコミックスの世界で働いて いた。当時からすでに熱心な SF ファンで 筆 者 レ ワグ ・ト。フ ムクッ カ・イ ルンヴ マヨイ を続「 前 2 刀