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検索対象: SFマガジン 1983年5月号
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1. SFマガジン 1983年5月号

はそんなことは問題にならん。しかし、おそろしい数の人間が、同 1 、ニング族とイヴニング族は、味方のロポットが、相手を退治してか 。そしてたまたま えって来たと思い込むことだろう。それが、わしの狙いだったのだ。時に、地面を同じ方向にけっているとすると 」こ言ったようなペアリング構造になっているとすると その星が、市冫 。そう、踏み車を回していたのは彼らだったんだよ。彼らは、 ・クジキは話をやめた。 ・ハイゾの煙をぼかりと吐き出し、サー 同じ方向に歩き続けることによって、小惑星の自転をわずかずつ速 「それから ? 」 好奇心を制しきれなくなって、客はとうとう、催促の言葉をさしめていたんだ。スケールの大きい丸太乗りだ。そうは思わんかね」 サー・クジキはクックッと笑って、知能をはかるような目付きで はさんだ。このじいさんにはかなわない。い つも、この台詞を言わ 若者を見た。 されてしまう。 「それから ? これで終わりさ。あの小惑星は、こうして " すれ違「じゃあ、ロポットは と、若者はくいさがった。 小惑星石になった。両種属は、互いに相手をやつつけたと信じて ゥ一一イト 「つり合いおもりさ、ね、きみ」 満足している」 サー・クジキは、大きなあくびをひとつ、もらした。 「しかし・。・ーー」 「人造人間は重たくて、足が速く、原住民と反対の方向に走る。こ 若い客は、けげんな表情をかくしきれなかった。 れによって、自転速度をおくらせることができる。勿論何万年もか 「ロポットを使ったのは、時間かせぎのためだったんでしよう ? かるだろうが、最後には、問題は解決する。作用、反作用の法則 それじゃ、問題の解決にはならない」 さ。それまでは、両種属が早まった真似をしないように、ロ求ット 「まだわかっていないな、きみ」 、トロールしてくれる。 たちが。 / サー・クジキは、小気味よさそうにパイゾの天をはたきおとし、 アリが二、三匹、十万トン級タンカーの上を歩いているとする。 右手を五重あごをなでた。 「トワイライト・ウォーカーズをだましたことは確かだ。しかし、 アリが甲板をける力で、船は動き出すと思うかね ? 目に見えるほ 時間さえかければ、あれは完璧な解決になる。いいかね、きみ、惑どの距離を進むには、どのくらいの時間がかかるだろう ? 別のア 丿・ : その動きをとめることができるだろうか ? 」 星の自転を速めていた原因は何だと思う」 サー・クジキは再び、クックッと笑った。 客は、そこがどうもはっきりしなかったのだと正直に答えた。 カウンメーウェイト 「ふた組の歩行人間どもだよ、きみ。他にあるかね。歩くというこ 「つりあい重りだよ、きみ。信じようと信しまいと、わしは一向に かまわんがね。それにしても、手近にあるものを使ったにしては、 とは、地面を後ろにけって、体を前に進める行為だ。さよう、ご く初歩的な物理の法則だ。作用と反作用・ーー人体が前に出ると同時なかなかエレガントな解決法だろう。いささか気の長い話ではある に、地面は後ろにさがる、両者の質量に差がありすぎるから、普通が。どうだ、そうは思わないかね ? 」 7

2. SFマガジン 1983年5月号

ウイルスンは彼女の目を凝視した。 「どうして、そんなことを知っている ? 」 そう言ってから、彼はうなずいた。 「そうか。きみは調整局には知りあいが多かったんだな」 「望まざる知りあいです」 メイは言わずもがなのことをつけ足した。 ート・ウイルスン博士は、夜遅く研究室に姿を現わした。ひ 「愚にもっかないこととお思いですか ? 」 よっとすると照明の加減かもしれなかったが、その青白い顔色にメ ウイルスンは、眉をしかめた。 イは一瞬ぎくりとした。 「きみは興味があるのかね ? 」 「先生、本をお借りしていました」 「あります」 彼女は、どうでもいいようなことを言った。 ほくのところにいる限り、そんなこととは関係がない 「残念だな。・ 「まだ残っていたのか」 三ろう」 ウイルスンは、びからびた唇で、呟くように言った。 メイは驚いたようだった。 「もの好きと言うしかないね、こんな時間まで。仕事を手伝っても 「どうしてですか ? 連合の計画に参加することは、現代言語学の らっておいて、こんなことを言えた義理じゃないがーーー」 メイは、そのことには直接応えず、彼の抱えている書類ケースに優秀性を満天下に知らしめるチャンスじゃないですか ? 」 「現代言語学は優秀かね ? どういう意味において ? 何を満天下 目を落とした。 に知らせたいって言うんだ ? 」 「調整局に御用でしたの ? 」 メイはウイルスンを見つめたまま立っていた。 「ふん、近頃は調整局の人間にもよほど酔狂なのがいると見える。 「きみがどう思うか知らん。しかし、・ほくは世間に対してつまらん 何を考えているのやら」 見栄など張りたくはないよ。・ほくの学問は、連合のやってるような 「どんな御用ですか ? 」 ウイルスンは、ちらと目を彼女の方へやった。予想外の追究に少こととは無縁のものなのだ ! 」 一気にそう言って、ウイルスンは肩で息をした。部屋の沈黙の中 しとまどっていた。 「連合がやってる愚にもっかない研究に協力せよとさ。大学の貧乏に、彼の息づかいだけが響いた。 研究室で、資金を援助してもらってるからやむを得まいが、一体何「・ほくは : : : 人のしようとすることにまでロを出そうとは思わん。 しかし、・ほくは自 軍や連合の研究所がやると言うならやればいい。 を思いついたのかね」 分のために研究するのであって、連合のために研究する気はない」 「研究というのは、地球外言語に関することですか ? 」 同じ言葉をくり返した。 「心配するな、心配するんじゃない」 0 8

3. SFマガジン 1983年5月号

のだ。ただ、どんなことをどんなふうに考えていたのかは、どうし ても思い出せない。しかし、そのときは次々と生き物を殺してゆく 行為が、自然なことだったのだ。 ニールは肩のあたりが寒くなった。彼は・〈ッドを降り、トレーナ ニ 1 ・ルは不思議な夢から醒めた。 ーをかぶって、コーヒーをわかしにかかった 不思議な夢だった。ーー彼が動物、それも得体の知れない奇怪な ものに次々と変身して、それまで自分だ「た生き物をかみ殺した歩きまわ「ているうちに、不条理感は潮が引くようにすう「と失 せていった。そのうちに、夢の内容も思い出せなくなっていった。 、絞め殺したりしてゆくのだ。 天気だ 彼はコーヒーを飲みながら、窓の下を見おろした。いい 彼は恐怖とも不条理感ともっかぬ感覚に突かれて目を醒ました。 もう早々と実家に帰った者も多い ドの上で、今の夢の内容を思い出してい が、学生たちの姿は少ない。 それから小一時間ほどべッ のだろう。そう言えば、メイも今日は出かけると言っていたつけ。 = ールはトーストを焼きながら、さっきの夢の内容をもう一度思 自分が人間以外のものになる夢は、めったに見るものではない。 い出してみようとした。今度は何ひとっ思い出せなかった。 まれに見ることがあっても、考えることは人間の論理で考えてい 彼は、ちょっと信じがたい思いにかられた。しかし、もう何ひと る。感情や価値判断も人間のものだ。ところが、今の夢の中では、 自分が何を考えているのかわからなか「た。単なる衝動につき動かっ、どんな事実も、どんな映像も脳裏に浮かぶことはなか「た。 = ールは、ちょっとうすら寒い感じにとらわれ、トレーナーの上 されて暴れていたのではない。そのときは確かに何かを考えていた こ 0 3 7

4. SFマガジン 1983年5月号

という錯覚をもっていた人に するわけである。ただしあまりこだわるを切りとったときの断面である。 生じる と堅苦しくなるので、″向きんのかわり 変形像の断面はスビードがますとともはちょっと信じられない奇妙な事実であ 7 にしだいに前へ前へと伸び、ゆがんだ細ろう。 に時々″方角″だの″方位″だのという これはアインシュタイン自身やローレ 言葉をつかったりして、文系の人にきら長い形状となってゆくことがわかる。 われぬよう涙ぐましい努力をしている。 だが、この断面のゆがみは、 ( 前述のンツ自身も錯覚していた ( らしい ) こと ただし時間にかんする用語はかなりてきように ) それが《星虹号》の乗組員の眼で、最初に指摘したのは『銀河旅行と特 とうで、″時間 ″時″時点″時に映ずる という性質のものではな殊相対論』の連載のときにもお話しした 刻″″時計の進み方″固有時″などの 《星虹号》から断面を見ることはでように、プラックホール理論の権威、エッ - 」使いわけにはあまり神経をつかっていなきないからだ。 シャ 1 の絵のアイディア提供者としてし 。特殊な場合以外、さほどの必要性を見ることのできるのは、あくまでもこられるべンローズで、一九五八年、まだ 感じないし、また書く方の自分も頭が疲の変形像を《星虹号》の窓から眺めたとケン・フリッジの学生時代のことである。 れてしまうからだ。ハ ードの術語ときの″眺望″である。だから、瞳に映ず ( 石原博士がデビューまもないころに書 るその形はまったく異なったものとな ″ブラックホールのお茶漬け″ いた『イリュージョン惑星』はこの″奇 という変なものを発明したとき、学者がる。 妙な事実″にヒントを得たもので、のち 論文に主に使っていたミニ・ブラックホ それは、上空から見おろす富士山は略にソ連の短篇集に翻訳紹介されたことは ールを使わず、意識的にマイクロ・・フラ略円に近い形でひろがっているが、地上知る人そ知る : : : ) ここでちょっと注意しておかなければ ックホールと呼んだのは、「これはお遊からの眺望は三角形に近いーーという現 びですよ」ということを明確にしたかっ象に似ている。 ならないことが二つほどある。 たからである。しかし今考えてみると、 で、そのじっさいに《星虹号》から見ひとつは図 2 の右がわの図形を眺める そこまで神経質になる必要はなかったよえる球体表面の姿がどうなるかを計算しときの人間の身体の向きである。 うな気もいたします : : : ) て作図したものが、図の右がわである。 この図形が、《星虹号》の乗組員の視 閑話休題ーーー 中心点はずれているが、外周はすべて線が″変形像〃の方角を向いているとき 図 2 にもどって、図の左がわは、静止″円〃であって、その意味では「球形物の瞳またはスクリーンに映る像であるこ 時の球体の断面およびその″変形像″の体の輪郭はいくら相対論的な変形をうけとはまちがいないのだが、そのときの乗 断面を示している。 ても円のままで、静止時とかわらない 組員の姿勢というのは、紙面の上に頭が どのような断面かというと、図 1 でい ということがいえるのである。 あり、下に脚があるーーーと理解していた えば③で指示されている z 、 =z=O の この興味ぶかい結論は、物体の相対論だきたいのである。 ーゾ平面 ( すなわちー平面 ) で全体的変形像が″ローレンツ短縮″によって つまり図 1 のマンガの人間のように、

5. SFマガジン 1983年5月号

。てれほーと、ー タートが遅れた分だけ、自分の知らない時代がはガキ大将もしくはいじめっ子の論理としか受 0 Z Ⅳのお知らせ 多い分だけ、私たちは安易な、プームの申し子けとれません。「ここには美味しいお菓子があ にすぎないかもしれません。だからこそ、そのるよ。でもみんなには頒けてやらない。どう 日時一九八三年八月二十日、二十一日 自分たちの知り得ないものを欲して閉鎖されたせ、それを味わう舌も持ち合わせていないんだ 会場大阪厚生年金会館 扉にぶつかるのです。時にはやり方がわからから : : : 」これが、最も忌み嫌うべきエリート 定員四千名 意識でなくて何ですか。 参加費六千円 ( 事務登録費二千円、大会連ず、礼儀を逸してしまった形で。 今こそ、両者がせいいつばいぶつかって、火例えば『レンズマン』を読んだというだけ 営費四千円 ) 花を飛ばさねばならない時だと思うのです。そで、あるいはアニメの「ガンダム」を観ただけ 主催 Q<—OOZ2 実行委員会 ☆参加を希望される方は、七十円切手を貼っれが良い結果をうむかどうかはわかりませんで、論を開陳したがる若者がいるかもしれ ない。でも、それに莞爾として耳を傾け、適正 た返信用封筒同封の上、左記まで詳細をお問 最後に、如月光さん。遠い異国の地より、実に啓発して真のファンに育ててやることも い合わせ下さい。折り返し、案内書を送付い に見事に引金を引いて下さったあなたに敬意を「界」の先達としての仕事の一つではない たします。 でしようか。たまたま年をくってから初めて 表し、ペンを置きます。 〒大阪淀川郵便局私書箱七三号 に遭遇する者もいるのです。経験不足という 乱文にて失礼致しました。 第二十二回日本大会 ( 石長恵 ) だけで、彼等に一つのチャンスも与えないとい 〇なお、合宿につきましては既に定員に達 うのはひどすぎるんじゃありませんか。故福島 し、受付を締め切りましたので、あしからず 恥を申し上げますが、私は如何なるファンク先生をはじめ、大家と呼ばれる作家の方々、そ 御了承下さい ラブ、同人等にも属したことはなく、大会 にも行ったことがなく、と名のつくものは だって生まれ落ちてすぐににひたっていた たかだか一千冊ちょっとしか読んだことのな わけでは、ないのでしよう ? 初めてに触 い、つまりズ・フの素人です。会社勤めはしてな れ、がむしやらに貪ってきたからこそ、今日の い ( させてもらえない ) が、量子化学の教科書 偉大なファンたちが出来上がっているのではあと微分方程式の参考書と人間の赤ン坊を抱えて りませんか。 いる身には ( 大した言いわけにはならないけ ファンは人間です。皆それそれ違う生き方をど ) 本は一日に一冊がやっと、に関しては しています。当然そこにはひとつひとっ異なっ週に三冊が限度という有様です。 たファンの姿が出来てくるべきです。を単しかし、敢えて言わせていただきたい。・フラ に楽しむ人もあれば議論する人もいる。 ジルの如月さん、あんまりな言い方じゃありま ーもいる。どれかひとつのみが本当のファンだせんか、わざと挑発的に書かれたことは百も承 とは言い切れないはずです。 知ですが。あなたは多分「界」では名の通 昔ながらのファンの皆さんには、幼い世代のった方なのでしよう。でも「界」の重鎮の ファンが自分たちを認めてもらいたがるのを生方々が皆、あなたと同じお考えとは思えない 意気だとか反抗的だとかと受けとってしまわれし、思いたくもありません。 るかもしれません。でも、人間の成長には反抗はその昔、確かに世間から異端視された 期が必要不可欠であるのと同じく、幼い世代にこともあったでしよう。この「界」の閉鎖 必要な過程なのではないでしようか。 性は、その時代に芽吹いたものであるかもしれ 私たちは今、必死にもがいているのです。スません。しかし、現在の時点から見れば、それ 0 、 0 映画大全集。ハートⅢ 四月九日 ( 土 ) 日本特撮映画特集 「大怪獣バラン」「美女と液体人間」「フ ランケンシュタイン対地底怪獣」「海底軍 艦」「大魔神逆襲」 四月十六日 ( 土 ) ごった煮コレクション 「猿の惑星」「ファンタジア」「モンティ 。ハインン & フォリイグレイル」「シンド・、 ッド黄金の航海」「未知への飛行」 〇上映時間はいずれも、夜八時 ~ 翌朝五時三 十分まで。 前売り千三百円 当日千五百円 場所熊本市電気館 企画熊本クラブ ☆問い合わせは TEL0963 ( 25 ) 45 9 6 0 内田まで

6. SFマガジン 1983年5月号

正体不明の異星体がフェアリイ星と地球を結ぶ巨大な紡錘形超空、 ・コンビュータを造って ? 間通路を南極地にぶち込み、そこから地球に第一撃を加えてからす ジャムはそんな疑問をわたしになげかけた。彼らは異星体だ。邪 でに三十三年になる。その超空間通路が異星人ジャムによって造ら悪な神と言ってもいい。人間の存在意義を問う鍵だ。わたしにとっ れたものなのかどうか、わたしにはわからない。だれにもわからなてはそうだった。「ジ・インべ】ダー」を著わしたのも、それが元 ・こっこ 0 いだろう。わたしは五年前にこの戦争を各国がどのようにとらえて いるのかを取材し、一冊の本にまとめた。「ジ・インべーダ 1 」 / しかし多くの地球人はそうではなかった。地球人 ? こんな一 = 〕葉 リン・ジャクソン。 はいまの国際情勢を見るとナンセンスである。地球には人類はいる ジャムが先制攻撃をしかけてきたとき、わたしはまだ四歳だっ が、まとまった地球人という集団は存在しない。愚かだ。少なくと た。わたしは大人たち、父や母が話していたことを昨日のように思もわたしはそう思う。だがそれを口にすると他人はわたしをナイー い出すことができる。 プだと入う。 「なにやらロロでロロがおこったらしい。だいとうりようはロロに人間はアナログ的好在であるというアイデアを一人の科学者に言 ロロをだしてーー」 ったことがある。彼はそう言うわたしを笑って、この世界、宇宙の 子供には、子供時代には、わからない言葉がある。わたしはそれ本質はデジタルであると説明した。物体も原子も、時間でさえも、 を不思議な気持で聞いていた。わたしも大人になればわかるように とびとびの値しかとらず、完全なアナログ状感などないのだ、と。 なるのかしら、と。会話のなかに空白の、つまり意味不明の単語が ミクロの世界ではそうなのかもしれない。でも人間単位はミクロで ぼつんぼつんと出てくるこの子供時代の奇妙な感覚を、わたしはい はない。そう食いさがるわたしに彼は、自分にはあなたがなにを言 までも鮮やかに思い出すことができる。言葉というのはデジタル わんとしているのかわからないと言った。わたしはこう説きたかっ だ。大人になったわたしはもちろん会話に空白を感じることはな たのだ。人間は、では、機械、特にデジタル・コン。ヒュータに近づ 流れるようにとらえることができる。しかし、やはり文字はデ いているのか、と。デジタル化の方向へ進むのか、と。彼はそうか ジタルだ。わたしたちはそれに気がっかないが。人間はすべての物もしれない、とわたしを不思議なものを見る目つきで答えた。 事をアナログで処理するほうが楽なようにできているとわたしは思 わたしがそんなことにこだわるようになったのは、ジャムと最前 う。視覚は流れるようにとらえることができる。車のスビードメー線で戦うフ = アリイ空軍の戦士たちを取材してからだった。戦士た ターのデジタル化はこれに逆行するのではないか。そして、現在ちはいまだ正体の知れぬジャム、異星体と戦うことに疑問をもちは の、デジタル・コンビュータ群も、人間とは異質だ。人間の本質とじめていた。 は相容れないもののように感じられてならない。言葉も。この文明 とくにわたしの注意をひきつけたのは、戦闘偵察という非情なー そのものも。わたしたちはなにをしようとしているのか。デジタルー彼らは味方が全減しようともそれに目をつぶってとにかく帰投し 5 4

7. SFマガジン 1983年5月号

S. 戸レヒッウ った者、精神病院へ入院した者、それぞれの うぶマイフレンド』 / 著者Ⅱ村上龍 / 二五四み出す契機に無関係ではなかった。 ( 意外に ファン的ゲットー観を持っている自分に道へ進んだ元宇宙飛行士たちの人間くさいド 頁 / \ 八八〇 / 四六判上製 / 集英社 ) あきれたのだが ) ラマが展開されるが、共通して浮かびあがっ 本書の最初のセクションが宇宙からの帰てくる非常に重要な問題が、その底には眠っ 立花隆著 還を読むまで、何度も小説、あるいはている。トム・ウルフのいう〃ザ・ライト・ Z のフィルムなどで、疑似体験的シミ スタッフ〃、より良きものを持っオール・ア ュレーションとして宇宙飛行のなんたるか、 メリカン・ポーイズ、世界に誇れるアメリカ 『宇宙からの帰還』 を知っているつもりでいた。ところが、これ人として選ばれた宇宙飛行士。彼らの実生活 が著者の理解力のすぐれたところの証なのだのスキャンダラスな部分、国民的英雄となっ ろうが、人間が宇宙に出ていくこと、が宇宙てからのスポークスマンとしての生活の実態 など、世俗的な興味も満足させてくれる。 高橋良平船と宇宙服の内部に地球環境を閉じ込めて が、しかし、最初に登場する宇宙飛行士は 宇宙へいくことの事実を、実にわかりやすく ードファ伝道者となったジム・アーウインである。よ かっ明確に教えてくれる。ハ 無類に面白いノンフィクションだ。ひとりン、科学ファンは知っていることなのかもしく言われるように、宇宙飛行は、幻覚剤によ でも多くの人に読んでもらいたい。といってれない。宇宙船の内部が気圧を下げて酸素濃るトリツ。フ体験と同じように、認識拡張体験 も、恥かしながら評者も本書を読んだのは、度一〇〇パーセントであること、宇宙旅行のを人間に与える。全人類の住む〃宇宙のオア 発行後だいぶ経ったあとだった。なるべく広時間の測り方、宇宙ボタルの正体、宇宙でのシス地球を、対象として見る体験が神の い視野を持とうとしているのだが、どこか偏排泄法、などなど。もちろん、評者にとって眠 4 を彼らに与えるのであろうか。また、そ の認識の拡張は、地球の周囲軌道にとどまっ 見を持ってしまうもので、本書にしてもタイは初耳ばかりで、興味深く読みすすむ。 トルがレムの『星からの帰還』に似ているこ た人間よりも、月まで行った人間の方が、さ 宇宙における人間存在の意味、人間にとっ とや前に同じ出版社から同じく宇宙飛行士ての宇宙、「地球を離れてみないと、我々がらに月に降り立った人間の方が大きい、とい ( マーキュリ ー計画のオリジナル・セ・フン ) 地球で持っているものが何であるのか、ほん について書かれたトム・ウルフの『ザ・ライとのところはよくわからないものだ」という ト・スタ . ッフ』が出ていたことなどあって、 ジム・ラベルの言葉に代表されるように、地 理由にもならない理由で手に取って読もうと球をトータルに、ひとつのモノとして見た宇 しなかった。が、翻訳家の—さんにその面白宙飛行士たち。宇宙飛行の現実を読者にわか さのサワリを聞き、すぐ読みはじめた。するりやすく把握させた後、本書は、十二人の宇 ともう、夢中になる。さらに余分なことだ宙飛行士にインタビュー取材した報告、本題 が、巻末の参考文献に石原藤夫『銀河旅行』 へと移ってゆく。つまり、宇宙体験とは何な 『銀河旅行Ⅱ』や野田昌宏『宇宙船のか、そして宇宙から帰還した人間として、 野郎たち』『 Z<T)<< これがアメリカ航空彼らはどうなっていったのか、である。伝道 宇宙局だ』があがっていると聞いたのも、読者になった者、政治へ、ビジネスへ入ってい

8. SFマガジン 1983年5月号

てあったーー、を握る手に力を入れた。だれかがトンネルをこちらに なしろものだった。 そっと、ほとんど愛撫でもするように、おぞましい手が、不快な近づいてくる気配があった。テッカの国の方角からやってくる。新 2 しい民のひとりになる子どもを連れた変わり種かも知れないし、敵 なれなれしさで、彼女の体を撫でまわした。 襲かも知れない。いずれにしろ、彼の心がうけた印象はまぎらわし やがて、声がした。「変わり種だわ」 く、二つの仮定のどちらが本当か、判じ難かった。 ウィーナは希望を持とうとした。 毛なしはトンネルの壁を背に、身を縮め、ふわふわしたものに深 「子どものほうは ? 」 く沈み込んだ。こんどは、闇を通してひそやかにゆれ動く孤独な闖 「二つ尾が赤ん坊を生んだばかりだから、乳をやれるわよ」 入者の姿が、ぼんやりと見えてきた。彼は、嗅覚を働かせて、それ 鋭い刃物が喉につきつけられたとぎ、ウィーナは、居心地のよい が女だと判断した。だが、彼女は明らかに子どもを連れていなかっ 住み慣れた世界を捨てたことを、いままでになく激しく後悔した。 自分のいのちを失うのは、たいして問題ではなかったーーーそれはスた。そのよそ者が、彼の潜んでいる前を通ればすぐ跳びかかろう、 テレットに反逆したとき捨てたのだ。シ , リックが、身内の手にかと身構えた。 かって清らかな死を迎えるのではなく、このうす汚い化けものども意外なことに、女のほうが動きを止めた。 「仲よくしにきたのよ」と彼女は言った。「わたしは、あんたたち の中で生きながらえると思うと、やりきれないのだ。 そのとき、鋭い痛みと、生命の潮が急速に退いてゆくときの、どの仲間なの。わたしは : : : 」彼女は少し間を置いた。「新しい民の うしようもない無力感があって・ : ウィーナが大好きだった暗闇ひとりなの」 シュリックは答えす、身じろぎもしなかった。この女は異常に鋭 が、永遠に彼女を包みこんだ。 い視力の持ち主なのかも知れない。女が彼の存在を嗅ぎ当てた、と いうことは、もっとありそうなことだった。それにしても、新しい は、スカロのトン 毛なしーーー生まれたときの名はシュリック 民が自分たちのことを呼ぶとき口にする名を、どうしてこの女は知 ネルという名で知られている通路の中ほどにある自分の持場で、い っているのか ? ほかの世界から見れば、彼らこそ変わり種なのだ。 らいらと焦れったそうにしていた。長っ鼻が交替に現われる時間だ った。光の粒の場所の巨人が、同類のべつの巨人と交替したことをもし、この見知らぬ女がそんな呼び名を自分で名乗ったら、よそも いのとして、たちまち命を奪われることになったろう。 告げる声が境の壁の向う側でしたときから、もう何鼓動も経って た。巨人たちがそこで何をするかは謎だったが、新しい民は、怪物「あんたは知らないわね」また声が聞こえてきた。「わたしがどう たちの行動に奇妙な規則性があることに気づき、自分たちの時間をして自分のことを正しい名で呼んだかってこと。わたしの部族の中 では、わたしは変わり種なのよ : : : 」 それに合わせることにしたのだ。 「じゃ、どういうわけで」毛なしの声は高飛車だった。「おまえは 毛なしは、槍ーーー境の壁の材料で作られ、一端が荒削りに尖らせ

9. SFマガジン 1983年5月号

かが、何重もの断想や回想によって読者 きとした人物なのである。 に伝えられる。そしてある入江で、妻と この短篇集の題ともなっている作品 『タイムストツ。フ』では、男が「スタト共通の思い出に出会った瞬間、彼の知覚「あるテーマのが欲しいと思った クロナート」という名の麻薬によ「てそは一匹の ( = の羽が " まるでポートの櫂時、話の持「ていける作家が、ドイツ語 の妻を失う。この麻薬には、人間の主観のようにゆ「くりと動く。と感じられる圏にはいま六十人ほどいる」 の冒頭で紹 的時間感覚を速める作用がある。つまほど高まるのである。飛ぶ鳥も彼には空これはすでにこのレポート り、人はこの麻薬を服用することによ 0 に張りついたままに感じられる。彼はっ介した、アンソロジストとして最近のド いにもとの世界には戻れなくなってしまィッの事情に詳しいヨルグ・ヴァイ て、例えば一秒間に二十も三十ものこと ガンドの言葉である。 てラ を知覚できるようになるわけ しク作 また一九八二年に出版された本をめく 念 , である。 記フが ってみると、アンソロジーなどにその処 をモ訳 彼の妻はこの麻薬を一度に 年シ翻女作を発表した新人作家の数は月を追っ 周アのき 多量に服用してしまい、あま 加 . 等驚て増えていることが解る。 版一ムも りに高められた知覚に自我を ・出ジレジ ドイツの展望は、作家の数を見る 失ってしまう。男が妻を病院 ソンペ限り明るいものと一一日えよう。 のンイ に運ぶと、医者は彼女を助け 社アラト しかしながらドイツのはようやく ン華ンス るためには彼女と多くの記憶 . 、 , 豪イラ ここ数年その発展の基盤を築いたばかり ドたハイ を共有している男自身が同量 ルれ , 一 であり、その成り行きはいましばらく時 の薬を服用し、彼女の知覚世 、、一さクラ ゴ出一カ 日 間をおいてみないと解りそうにない。 界に入り込まねばならないと 告げる。しかし医者は、これによ「て男うのである。 " 世界は溶けた。しかし、本や他の国々に比べ、ドイツでは一般に 自身も妻と同様の状態となり、取り返しものはそのまま残「ている。これが止ま名の知れた作家ははるかに少なく、 自己の作品集や長篇を発表できる作家も った時間の秘密だ″ のつかぬことになる危険性が高いことは 一見対立するとも思われるファンタジほんのひとにぎりに過ぎない。 語らない。 しかし未来のドイツの城を築くの 男が薬を服用し、妻の失われた意識をー的要素と現実的要素を、文学的手法に 捜しに同じ知覚世界〈と入り込んだ時、よ「てこのようにうまく調和させ、複雑は、今回ここに紹介したような、その作 品を一作一作アンソロジーに投稿、発表 現実世界の溶解を彼がどのように感じるな心理描写として表現できる彼シャッテ ンシ、ナイダーの才能は、ドイツのしている多くの若い作家たちに間違いな いのである。 発展に欠かせないものになるであろう。 ・ドイツ (f)LL 情報

10. SFマガジン 1983年5月号

と、機械というものになにか空恐ろしさを感じて んとなくひっかかった 大体、現在のワープロごときを完全無欠と考えしまうし、よく、これまでの五回があんなにスム 、、ほっとしないで ースに行ったものだと、なにカ ている奴など居ない訳で、この際ューザーも身内 はいられない。 に引っぱりこんで手のうちをさらし、実用化試験 に利用した方が得だろうに : 。あれではまるで いや、実は、のとき、打ち上げ二十分 主婦連扱いである・ : / カカカったとき、 前に予定通り十分間のホ】レド : 、、 さて、本来ならスペースシャトルの二番機〈チふっと不吉な思いが走ったのだ。 プレジネフが死んだばかりではないか ャレンジャー〉はとっくに初飛行を完了している 理由はわからないが、不吉な事はな・せか二度続 頃なのだが、・ とうやら四月にずれ込みそうな気配 である。主エンジン、いわゆるで水素漏けて起きる事が大変多いのである。去年のホテル ・ニュージャパンの火事に»-a の片桐さン事故 れが起きていて、それはたしかなのだが、一体ど こから漏れているのかがどうしても分らない。そがそれだし、古くは昭和四十一年の羽田の れで・ハックアツ。フのエンジンに換装したらまた同と富士山の墜落が二日続きである。その じことが起こって、今朝聞いた所では、とうとう他にも沢山あって、しかも、アメリカ人たちがそ 〈コロンビア〉のを一基外して〈チャレれを言うのでびつくりしてしまった。これは世界 的なジンクスらしい ンジャー〉に再換装するのだという : ・ こっちは、打ち上げが先へ伸びてくれればそれ だけ金の工面も楽になって、なんとかまたケー。フ さて、この一皿のホールド ( 一〇分 ) の間 ・カナベラルへ見に行けそうな気配なのだが、そに、これから打ち上げまでのどこかでなにか問題 れにしても、あれだけ慎重かっ確実に一歩一歩作が発生して、それが復旧したあと、どこに戻って 業を重ねていく Z<-n< でこんな事態が発生する時間読みを再開するか、その詳細な手順の確認が Sense of Wonde 「 land 行われる。現にのときにこの手順が物を 言って、結局は打ち上げ延期になったものの、テ レビで見ていても非常にスムースに時間読みが再 開されたのは御記億の通りである。 しかし、こうして打ち上げの現場に来てみる と、こんなドタ . ン場で延期になったら本当に頭に くるだろうなあという思いと、ここで延期になっ たら、昨夜からの胸もしびれるようなあのワクワ クした気分を始めからもう一度味わえるのに : という思いが交錯して、なんとも不思議な気分な のである。 エドワーズを始めとして各着陸予定 この間に、 地に展開している着陸支援チームに対し、再度の 確認が行われ、ケープカナベラルでは予定通りに 打ち上げ手順が進行中である事を通告する。 それから、チェース・プレーン、追跡機と言う のか、伴航 ( ? ) 機と言うべきか、カメラを積ん で上昇していく〈コロンビア〉を追っかけるジェ ット機に搭乗員が乗り込む。 これは Z<T< の宇宙飛行士が下駄代りに使っ ているおなじみのノースロップ・ー高等練習 機だが、来月はこの話をしよう。 二日前に、私はこのーに危うく自分の首を る : 持っていかれる