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検索対象: SFマガジン 1983年6月号
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1. SFマガジン 1983年6月号

0 0 0 0 3 コ - 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 いので、地球の海よりもミネラル成分が少なか ったし、また、これらの物質はエキゾチックで あった。毒になる物は、より下等な動物で実験 して除去してあった。標準的な品物の中には、 いくらかの玩具がふくまれていた。例えばビー チボールなどがそうで、鯨型生物はそれを使っ ・ぐておそろしく乱暴なゲームをした。それから、 特別に工夫された外傷用医薬材料があった : ・ ああ、オスカーの知能がチンパンジーよりも高 とホーソンは思った。 いことを疑う者はない、 いつも問題になるのは、その知能が人間と同じ くらい高いか ? ということだった。 かれは・ハスケットを引き上げて、中に入って いる、平等に規格化された支払の品々を取り出 した。宝石類ーー紅珊瑚大理石の特に美しいも の。それらは地球で装飾品に加工される。それ から、いろいろな種類の貝殻。また、研究用の 海洋生物の標本もあるが、それらは、人間がこ れまでに見たことのないものだった。それか ら、海中に落としてしまった道具類がいくら か。かれらはまるで、宇宙飛行に一ポンドいく ら費用がかかるか知っているかのように、そう いう物を拾い上げてきてくれた。黄色い軽い得 体の知れない塊りーー、あまり面白くない物かも 知れないし、また、化学のまったく新しい分野 の手掛りを与えてくれる物かも知れなかった。

2. SFマガジン 1983年6月号

ん感 いたそ浮 号に寄せて 。う気な これ わなな気 赤し ねて よ根 藤子不二雄 料に っ理なれ いて っか いきなり私事で恐縮ですが。僕の漫画歴の中 にな で , 最も嬉しかった出来事が二つあります。ーっ は昭和 24 年 4 月 , 漫画少年に初投稿の 2 ページ物 が掲載されたこと。自分の描いた画が , なんとイ 無は ンサッされて , 同じ画が何万枚か全国の本屋の漫 画少年にとじこまれているんだなと , ごく当り前 の事にひどく感動したのを憶えています。あの時 臭か た週 をカ の印刷インクの香りは , どんな香水よりもかぐわ 毎さ しかった。 二つ目が昭和 45 年 , S F マガジンから読切短篇 の依頼を受けた時でした。 S F マンガめいた物は 哽と なな ずっと以前から描いてはいました。しかしもつば れ意 めな ら子供を対象とした物ばかりで , だから良い加減 に描いたというわけではないのですが , 大人のし かも SF 専門誌に登場はとても無理と , 一応お断 わりしたのです。結局は説得されて「ドジ田ドジ ュあ いん 郎の幸運」を描いたのですが , 嬉しかったですね へれひけ え。子供の頃から大好きだった SF 村の一隅に たた やっと居住を許されたというか , もぐりの自称 S フ。殺 思が F マンガ家が , ついに認知されたというか , そん れけ いく な喜びでした。 、を切ナ もちろん , 僕の子供の頃には SF なんて言葉は ありませんでした。でも後世 SF と呼ばれるよう になる小説やマンガはあったのです。「火星兵 きし 団」とか「火星探険」とか。田河水泡氏のロポッ トマンガを模写した覚えがあります。戦後は手塚 なは 治虫氏に狂いました。しかし , 今の S F 出版状況 から見れば , 当時ははるかに品薄でしたね。もっ ともっと SF を読みたい。 SF はないか。 SF, S F と探し求めて本屋を歩く。慢性キガ状態でし た。そんな時 , S F マガジンが創刊されたわけで す。ガッガッと読みました。隅から隅まで面白か った。傑作も多かったし , 当方の感性も若かった んでしようね。あれから 300 号ですか。おめでと うございます。これからも面白い SF を読ませて ください。以上 , お礼とお祝いと励ましのお便り です。 SF マガジン 7 そ し て 保 安 局 か ら 知 が 届 し、 た 察 は フ ン リ 寛 容 だ い る う に い 尾 . 羽 通根発 は き れ 。な く っ て あ 毋 さ になた う ち さ 出 て く と の で い の も の 、、 4 頁 の と 、だ た ま白あ顔す っ 、て そ う いただけ ろ か れ ちはた ひ 局 苹 を し く な た 。間 ど 寝 ん で 、びた と ま し . い じ る と さ あ た 魚 4 ) 。なた 無 の が ま ぎ . ・一 1 も 見 く な わ ね り に 執 え着赤 し つな尾 し う に時け あ ら ま な を ぐ に 出 て さ そ かれオ で も い 、羽 が か ら じ る と 白 い ひ あ タ が い判市 し た の り し 、た ん ナこ ク ) : 者に よ フ ン フ。 リ は お て お け て コ ン ざ と 皿 を 床 に 落 た り き オよ 窓 の 外 ん や り ー 1 ど 2 と お 殺 て か る と も う 日 う ツ ッ ン し て 手 つ け ら れ て 力、 は わ り し裂白 したひ く ひ と 、白出 い と と ほ と ん ど 色 ど て よ う カ ; し 目 カ : 離 せ く た す る と し、 と は た て て

3. SFマガジン 1983年6月号

っ知 最ロ お匹 血ナ 東ば 獲夏 の 臭かれ出 は予 の生 い ふ少 を ナた 危た 嗅 のも なれ ぶな は混険森 し フだ れは いた いは な独 で つな ア いし レ グ 根め 冬初 *t, フ フた と獲 しで ツ だ白 リ いな が避 びな きか寝たた春 い細 にを い同 も迎 重を め白 つ肉ただ の十 つ 。獣森オ て血文だ がた こ潮 いも で知 フ・木 な いあ い噴 か 血間チあ のわ だ裂 い間 と 節な し動 らを れ 油 をれ なか け がたそれ レや る なみずく にれ ん袋 気だ最あ れび つが 消カ いあ いも の費 。ら 貫を おを ずは い仰 の臭 きそ にき 内入 だれ わ熱 でか 物カ にれ けは っか 夏の か弾 よ離 いカ かめ だな があ 下ふ て歯 態吸 す力 いと る落 が陽 ば り の 獲 、 4 勿 力、 ら は び た し い カ ; き 、し かたた はそ死 の 力、 。は し て 蒼 と 茂 る 木 々 の の 主 の 姿 を や と 見 力、 は イ の よ う 、なれ お嘴だ で 月夏 をネ : に り い ん - ー 1 ン フ。 巴 い し カ ; そ け 、で も よ う っ た よ よ カ さ ん は の し い よ う な 白 に を た 白 季冫 の 奮カ こ驚笑 て か 0 よ 、身た る 、灰か そ色れ の ら し 羽 、び物 目散を り い 。月几し ら る 声 、が ひ い ま汚あ測者 る 日 と がただ 解 、体 し て じ る あ る の 、かそ知彼 み ) し さ は そ れ に ど う う 行 動 に で る か ま き と し 眼て白 天 の 匂 し、 く ん で 射 オこ く カ ; つ ぬ と し か の 両 を た 瞬 カ : お り て く る か ら ま ぶ た 閉 ら 性 さ っ し、 難 を 次けれ る と き . よ う か 、し物 と ッき 糸屯 いが上 。枚る 目 の 目リ ひ ら ひ ら ち て く 、知 恵 の あ る ら フ ン リ ク ) 群 だ た の な い 植 、な ぶ のだれ 酸 、素 の 里 根がな カ ; ほ ん と う に わ いを の ノくた フ・ ン で も 走 ま 。われ る 恵吸仲度 ツ リ でれ も な か は 心、 拍 数 多 く る の を 感 し た 逃 ; 走ー 争 か : 反 応 の 目リ そ る へ き ワ 発 は揮れ し た た び の の 力、 も し . れ な い と も し か の 商攵 で は の かが天 ム く たむ匹 ア グ ッ リ な ら 木 々 の 間 に 隠 れ て 擬 っ フ ン フ。 リ 獲 、物 で も つ た が 、敵 で も た し、 姿 も 見 オよ し 他ず大 し も し な い 0 よ を血 / リ も し い は り ン ブ リ だ と て な 、な 動 の う でだた 、た ツ リ て 大 オよ も カ : かはれ 、跳 あ る よ の 場 ら れ も す ) ろ ん カ ; いわ今 け な っ の の 。は レ ッ と 揺ー る カ ; し た 青 々 と し の 中 いがゆ の 力、 、はれだ 床 つ フ ン フ。 リ の 肉 。ほ と ん ど 体 に め ん ろ す が ガ サ 日 に 日 に く ら ん く よ う ぜ オよ ら ま た つ 肉 手 る っ ら し 力、 、ら 物冫 で厳れ し で あ つ 力、 わ れオ の 体 は め 、だ 肉 る 、時袋 に がはあ で る つ ま 、牙ユ な 。な い オよ ま 、か は め て の う 胃 の 。ほ 力、 に つ が り か 肉 を そ へ つ め め る け 独 ま つ初ナ に か引を き り 化出ナ の る フ。 リ は な り た く な か た も ち ん 誰 て 断 な り 目 く の た つ中を 未 消 や 肉 出 き り る と た な に せ好

4. SFマガジン 1983年6月号

かんそう ず、まごうかたない甘草の風味を持っている。一方、反ナリトロンれるからである。 としよう ナリトロンの発見後、研究者たちが試みた最初の実験は、ナリ の味は、熟してない杜松のジュースそっくりである。この実り多い 分野では、さらに研究が進められており、すでにダイエット食品のロンをより小さな粒子に分裂させることであった。この実験は、簡 各メーカ = が、その商業的可能性に関心を示している。最大の難問単にいえば、ナリトロンを捕獲し、相当な力でそれを床に投げつけ : いかにしてナリトロンをその″ポテンシャル場んから大量に抽るものである。こうして作られた″ナリトロン・ビーム〃のエネル ギーが弱すぎるときは、厄介なふらっきが起こるし、強すぎるとき 出するかである。 これがいまや周知の哭ウンド効果″ 戦争兵器への利用の可能性 ( とくに″ナ リトロン爆弾〃が現時はパウンドが止まらない 点、または近い将来に実現可能かどうか ) については、まだなに一である。この厄介きわまる弾性は、まずナリトロンを。ハイ中間子の つ自信をもって断言できない。 ケーシングに埋め、しかるのち″自然の成行きにまかせる″ことに よって、容易に克服できる。 この方法によって発見されたナリトロン構成粒子は、この報告の 空間と時間とナリトロン 時点においてすでに一万七千種類以上にのぼるが、これらの数多い タイプを識別するのは至難のわざである。この方法によって生み出 ナリトロンの最も特異な性質は、寿命が比較的短いことである。 どの観察例においても、ナリトロンは、その生成の瞬間、ただちにされたすべての構成粒子は、どれもおなしように見えるからであ 完全に崩壊する。研究の初期には、このことが判明していなかつる。 た。崩壊したナリトロンは、ただちに、すべての点で″親〃と見分明らかに、より高度なア。フローチが必要であろう。 けのつかないほどよく似かよった、別のナリトロンにとって代わら 0 0 0 0 0 205

5. SFマガジン 1983年6月号

話を考えたことがあるんですよ ( 笑 ) 。 編集部相対性原理はスメートはもともれない。 一から書ける。 大原それはいし と、光速が有限であるというところじゃな火浦かもしれないね。 神林もっとも、このあたりの議論はぜん編集部しかし、ひところ、はもうす い。だからとにかく、光速を無限にしちゃ ド T) でにいろいろなジャンルを書き尽くされち ードじゃないから、すご、 ぜんハ えばいいんでしよう。 やって、新しい人は自分のジャンルを開拓 ファンから文句がきたりして : : : 笑って 火浦そうそう。 するのが大変だとかいわれてましたね。あ ごまかそう ( 笑 ) 。 神林そうすると質量が無限になるから、 あの理論でいくとどうしてもだめなんです火浦まいどおなしみの相対性理論でござれは完全にいまは吹きとばされたような気 ュ 0 がしますね。というか、ここにいる人はみ います ( 笑 ) 。 んなそれを吹きとばしたところで仕事して 編集部アインシ「一タインの考えた理論編集部しかし、その「まいどおなじみの いるような気がするんだけど。 相対性理論でございます」のおかげで、ど は、確かに妙に筋が通っているからな。 れだけ大・せいの作家がその相対性理論火浦作家が一人いれば違 神林妙じゃなくてビシッですよ ( 笑 ) 。 うものね。 編集部いや、よくあれたけのヘ理屈を考に苦しめられていることか。 火浦なまじ知っちゃったからね。アイデ えた。 アに苦し作家が、いままでのの 火浦あれは実はうそしゃないかという : 記を全部消しちゃう装置 神林でも、アインシュタイン自身も考えを考えたという ていたけれども、彼自身は方程式を立てた けれども、それを完璧に解くということを しなかったから、あの方程式を解いて別な : もっともこのへんはよく 解が出れば、 わからないけど、方程式はとにかく。ハッと あるでしよう。徴分方程式というのはそも そも解けないものなわけ。それで、それを 必死になって解いているわけ。日本の科学 者でも解いた人がいるし、解いた結果、・フ ラックホールの存在も予言されたわけでし よう。だから、ぜん・せん違う解がポンと出 て、抜け道みたいなものが見つかるかもし

6. SFマガジン 1983年6月号

がね わ う と 0 オょ か雪これ な き に ぜ 射 信 に風ろわ にみを レムリアン・サーガ フ 出 にれ をた考 も イく の に能 保 う通 ぇ お さ信 護 つはて は で 傑作ヒロイック・ファンタジイ ! も ど す シ装 し リ い ス置 る く う イ や 基 が に中 る 味 の さ ん ァ ゾンガーと魔道師の王 ムあも尉 地 と の方か 力、 っ っ理 力、 でな 多田雄ニ訳定価 320 円 SF80 連 すの零た作て解雪 し 0 丿 で風 絡 に か ゾンガーと竜の都 を す は T き の 中 ? さ ま C A せ と 尉見 SF95 多田雄ニ訳定価 360 円 せ 0 ら 少 フ 当 B る ん M な し 邪神と闘うゾンガー い 時 も つ 14 、ン と ・雪ス の ち 力、 SF135 多田雄ニ訳定価 320 円 が い ろ な 生 ァ そ ム れ いき か う ん ク ) ゾンガーと魔道師の都 が シ を か で ス す る し、 SF259 関口幸男訳定価 320 円 テ動 わ ち か も ム し 時の果てに立つゾンガー 整 は ま ん し の 。す 簡 れ 備 関口幸男訳定価 320 円 SF287 単 カ ; いか 終 だ たは せ 海賊と闘うゾンガー ろ ん わ る 関口幸男訳定価 340 円 SF311 は り ・つ ー -1 ー -1 マ身流 フ あ た も っ し め よ う 一体動 り う にた ム 力、 。な っ の食 り し、 し 、き 回だ ひ ま カ せ が 彳夏 . ん帰 ど 力、 ッ っ し た プ し 、も た にて の の 味 す っ 0 よ でが さ っ き た ち は か つ ば だ き 流わ のたた 。そ 妙 ん 動し ほ薬れ で 食ナ な す どだ はす をな 日 が でと お 聞 零 . 思肉中 も な っ汁尉 いよ ち に がて と 見 ま飲野 て め菜 も す ん で と て た ひ き 、ユ 蜂 な て と の く く め ス 羽 な れ を て な は ま お っ た 強せ の く 。引あ よ か も う マ わ り 巨星リン・カーターが描く 33

7. SFマガジン 1983年6月号

では、その結節点を見ることも認識することもできない 「だが、君は、その小さな結節点が何であるかが、わかっていると いうんだね ? 」 「わかっていると思う。私は、すでに一世紀半を隔てて振り返って いるという、有利な立場にいるからな。それは、シリウス星域のオ ーロラが、彼らの共同生活の中へ陽電子ロポットを導人することに ついての許可を、地球の中央政府から初めて得たときのことだっ たしいま振り返ってみれば、人間の労働にではなく口ポットの労働 に基礎を置く徹底的に機械化された社会の発展する道が、明らかに 開けたのだった。宇宙国家と地球との間の暗闘において、これまで も決定的要素であったし、これからもそうであるものは、この機械 化なのだ」 「そうなのか ? 」と生理学者は呟いた。「君たち歴史学者は、とて つもなく頭がまわるんだな。二度目に帝国が衰亡するのは、どこな のかね」 イ、ールドは、右の中指を軽く後ろへ反らせた。 「第二の時期は」フ 「専門家の目から見れば大きくて明白な道しるべが立てられるの で、洞察力を必要とするまでもなくそれとわかるのだ。しかも、そ の時点はすでに通過してしまったのだが、宇宙国家が地球に対して の移民割当てを初めて設けた時だ。地球が自分にとってこれほど不 利益な決定を阻止できなかったという事実は、誰の目にも明らかな 徴候であり、しかも、五十年前のことだった」 「ますますおもしろい。それで第三の時点とは ? 」 「第三の時点かね ? 」薬指が折られた。「これは最も重要性の薄い ものだ。この場合の道しるべは、″終結″と大きく書き記された壁 だ。終りが来たことを知るために必麥なものは、洞察力でも経験で アシモフが二十代を通し て書きつづけた〈ファウン ズは、 デーション〉シリ 1 、 ( ( 銀河帝国のアイデアを 」ジャンルに定着させた作品 として、あまりにも有名で ある。翻訳は『銀河帝国の 興亡』 ( 三部作 ) として出 ているが、実をいうとこの 邦題は正確ではない。 アウンデーション〉シリ ーズは、銀河帝国が亡びかけるところから 始まる物語で、″興″の部分はまったく関係がないからだ。アシモ フ未来史における銀河帝国興隆の時代は、彼のまた別のシリ 〈ロポット探偵〉ものを見なければならない。その意味で、ここに 紹介する「母なる地球」は、たいへん興味深い作品である。という のは、作者自身語るところによれば、本篇は「『鋼鉄都市』および 『裸の太陽』を生みだす予兆となった作品」であり、お読みになれ ここには〈ファウンデーション〉へとつながる銀 ばわかるように、 河帝国の揺籃期が描かれているからだ。アスタウンディング誌一九 四九年五月号が初出。多少古めかしくなってきたとはいえ、ここに ( 伊藤典夫 ) は四〇年代ならではの重厚な味わいがある。 8

8. SFマガジン 1983年6月号

「淋しいねえ」 「奇遇だ」 「淋しいねえ。ま、熱いのを一杯」 「えっ ? 」 原口氏は、ついで、うっとりと思い出をたどる目つきになった。 「なんてえ奇遇だろう。あたしやその洋館を知ってますよ。あたし 「私はあの、原つばのことを考えるとき必ず思い出すことがありまも実はその家に夢中だったんだ。同じ年ってだけじゃない、ご同郷 してねえ。うちはまあ、別にお邸ってわけでもなきや、スラムってだったとは」 「ええつ」 こともない、ごくふつうのしもたやがずっと並んでるあたりにあっ たもんで、なおさら珍しく感じたってこともあるのかもしれないけ「たぶん同じ家だと思うんだ。あんたの云われた町並とか、家のよ どーーその私の好きな、原つばってのは、まわりがビルとか、道とうすとか、そっくり同じだもの。白い二階建ての家 ! ー二つづつ、 かにかこまれてたんだけど、そのちょうどっきあたりのところに、張出窓があって、枯れた。ハラの鉢なんかおいてあったでしよう ? 一軒だけ、私の気をむしようにそそる家が建ってたんですよ。そう天窓があってーー」 ー白い洋館といや、きこえはいいけど、何十年か前にはしようし「おお ! あれを知ってるとは ! 」 やたる白亜の洋館だったんだろうな、という感じのがーー、あんな古原口氏の目に、現実に涙がうかぶのをみてぼくは少々唖然とし こ。・まくには、そんなにも大切な少年時代の追憶などなかった。 い建物、まわりには、ほかにひとつもなかったから、やつばりあれナー は戦災でやけのこった昔からの家だったんでしような。いかにも古「じゃもしかして、あなたもあれを・ー・ー」 ・ほけて、白いペンキなんかも火ぶくれになってるんだが、窓は張出「そう、そう、そう、そうなんです。あれでしよう ? あの洋館 窓になってて、木のプラインドがついて、四角の二階建でね。何かの、二階の右側の窓でしよう ? 」 「おおつ、やつばり、同じ家だ ! 」 こう、どこからどこまでまわりの、つまりわれわれの仲間の家とは ハイカラというか、ノスタルジアという原口氏は絶叫し、おじさんの手を握りしめた。 感じがちがっていて か、とにかく見ると何か映画の中みたいだなという気になるーー私「あなたもあの人を見たことがあるんですね ? あの二階の人を : ・ は、その家に気をひかれてたまんなかった。というのも : : : 」 原口氏は、そこまでいって、ふいにことばをきり、びつくりして「キレイな人でしたねえ」 男を見つめた。 「長い黒い髪の毛を、白い顔の両側にたらして、いつも白い服をき 「ど、どうかしたんですか、あんた」 て、本を手にもって : : : 」 「どこか淋しそうでーー・」 おじさんは、はずかしそうに、しかし非常な感動をこめて原口氏「青白い顔だった。私らは、あれはロウガイ病だといってました」 の手をつかんでにぎりしめた。 「そうそう、親にうつかりその話をしたやつがいて、ロウガイはう 0

9. SFマガジン 1983年6月号

では、と司法官は額の汗を拭っていった。論告はすでに終了れ、無効になるのである。これは、衆愚政治の危険を避けるため しました。たった今、「我々」の王にして被告みずからによる証言と、一時の熱狂や偏見を、最高立法府から排除するために設けられ と陳述も行なわれました。ェクレシアに召集された議員諸君、評決た政治的な安全装置であった。法廷もまたこの規定に準拠しなけれ に入っていただきたい。 ばならない。長老たちは無記銘の評決を利用してこの規定を逆手に 彼らは低い声で評議した。長い時間はかからなかった。 とり、王の有罪判決を回避しようとしたのである。 代表である元老院議長が立って司法官の演壇へ歩いた。広場は静傍聴席にざわめきが走った。チャイム。司法官は片手を上げて、 寂がおちている。ただ一人、緊張していないのは、高い椅子に座し皆の注視を集めた。 規定に従って、と彼はいった。王、ネロンに対する公訴につ て彼らを見下しているネロンだけだ。彼は、周囲の変成岩の柱や床 材から剥れた古代の海百合やヒトデの化石を掌の中でもてあそんで いての評決は無効であることを宣言します。しかしながらこの場 合、審議のやり直しは無意味でありましよう。なんとならば、真に 評決は ? 司法官が金属的な声できいた。 彼の有罪を信じる者は再度の評決でいかなる決定を下してよいか、 全員一致で、と元老院議長である老人は興奮と緊張でふるえすでにわからなくなっているからです。 る声で告げた。被告を有罪と認めます。 本官は、伝統あるエクレシアの境界内でこのような不合法が行な 全員一致で ? 司法官は身をのり出すように訊いた。議長、われたことを残念に思います。明らかに今日の評決を前に、被告の 間違いありませんね。 無罪を確信する人々はあらかじめ何らかの打ち合せをしていたこと は、どのように無垢な心を持った子供にも明らかなほど、その想像 間違いありません。老人は明確に応えた。全員一致です。 司法官は少し困惑した表情で人々を見わたした。彼がそのようなするにかたくないのであります。 しかしながら規定は規定として守らねばなりますまい。司法官の 結果を予想していなかったのは明らかであった。議長をはじめとし て元老院の長老格の議員たちには、王に対する絶対的な、信仰にほ権限により、こうした場合にとるべき一つの方法としての審議のや とんど近いまでの信任があって、青年層の議員と対立している。しり直しは、今いった理由から、不採といたします。もう一つの処置 かし長老たちの数は圧倒的に少なく、有罪の評決は賛成者多数で出は、よく知られているように、当ェクレシアの最高決定者にして監 されるはずだったのだ。彼らまでが有罪票に回ったのは明白な策謀督官である王その人の判断に審議をゆだねるものです。しかし、そ であった。 の罪の有無を裁判さるべき当人に判断を求めることは出来ません。 では、この評決は、と司法官は硬い調子で告げた。無効で ゆえに本官は本官に与えられた権限を行使いたします。すなわ す。 ち、擬制項目により、王に属する決定権を司法官に移されんことを ェクレシアの規定により、全員一致の議決はいかなる内容であ各位に要求する次第であります。議員諸君はこの動議の裁決を行な

10. SFマガジン 1983年6月号

scb-•aeiü% 、呼古の屯子日 波畆込、 今月はシンセサイザー以前に、 六果音の分野 い口 0 0 0 0 録りで夜中の一一時まで、さすがにそのあとさ らに嶋大輔のピア / とオルガン入れてくれと—:. 頼まれたけど断わってしまった。体持ちまへ んよ。こっちだって人間なんだから。ンド とアレンジャーとミュージシャンをかけ持ち してるからいけないんだろうけど、そのどれ 鬯か一つ欠けるだけで煮つまっちゃうだろうな あ。恐ろしい性格や。 さて今月号はまず訂正から。四月号でご紹 3 〈 = 介した「宇宙戦争」は三千枚限定ながら日本 盤が出ていた。門倉純一氏がレコード会社の 人に相談を受けて、限定でもいいからぜひ出 すべきだとすすめてやっと日の目をみたらし 。 O ソニーから鏡明氏の解説つきで出 されたこのレコード、すでに完売。欲しい人 は所蔵しているコレクターを狙うべし。 さて、今月は″シンセサエー以 ~ 、・」十 電子音楽や電子効果音の分野築いていっ・た・ 先駆者たちの紹介をしよう。 とうとう恐れていた三百号記念。僕が幼稚 小泉今日子、田原俊彦、世良公則 ( それそだいたい、芸術なるもの、の . 一園に通 0 ていた頃にはすでに刊行されていたれシグル、、シグル ) とア」ンジのめてみれば一目瞭然。過去のト影響 / 歴史と伝統ある本誌に長々とこのような連載仕事が増えてしまって、センス・オヴ・ワンけずにまったく突然変異で新し , 告〔がしま L ・・・・・・ - ・ ーワン ・バンドの旅先れることはあり得ないが、新、こと ' みを持っことは誇りでもあり同時に畏怖の念をダーや小林克也ナイハ うとする者はなんとかして既成のもを打ち も覚えるわけでありまして、三弦下がって編第のホテルで譜面を書く始末。他にも容赦なく 集長のべースを弾かずという世界がひろがっ村田和人、薬師丸ひろ子、大瀧詠一などのレ壊そうとする。 コーディングがビシビシ入ってくる。 芸術家Ⅱ表現者は過去の蓄積を、 ているわけであります。 おとついからきのうにかけてなんて地獄だか、それに何か一つつけ加えるか、 相変わらず多忙な日々広果てしなき流れの 果てまで続いており、 しいかげんストレスが ったよ。福岡で << と克也のジョイント・ せよ自己表現のため、或いは自己顕示ハ名 たまって爆発寸前。たまには気分転換に原稿 . コンサートやって、翌日飛行機でトンポ帰声欲・出世欲・金欲ーーそのどれかのたこ でも書こうか、となってしまうこの悲しき勤 = り、そのままビクターへすっとんでって小泉どちらかのコースを選ぶのだ。 ( 今日子の録音、そのあとすぐ田原俊彦二曲の だいたいにおいてぎまりや戒律の多い 勉性を怨むよ、ほんとに。 田 0