思う - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1983年7月号
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1. SFマガジン 1983年7月号

たいけどムリよ」とせきこんで云った。それにあの若造ーー・気にさ ロイからヴィジフォーンがかかってきたのは、休もおわろうと わる奴たった。もっとも、エレーヌが彼を気に入っているようだっ いうときでーーーその朝、私とエレーヌは珍しくけんかしたのだ。私 たから、これはあるいは私の嫉妬なのかもしれない。私がつい興に ーをとろうというのを、エレーヌがイヤだといっ のって宇宙の話をしだすのをいちいちさえぎり、何でも知っていま たからだ。私はあんまり彼女が理不尽だと思った。私は男なのた。 すよという顔をしてみせるのだ。 社会の動きについてゆかなくてはならない。ずっと休瑕でいるわけ こよ ついむっとして、「上に行ったこともないお前に何がわかる」と 冫ーいかないのだ。 どなりつけてしまった。奴はふんという顔をした。 「私を愛してないの ? 」 「自分だけが何もかも知っていると思ってるんだな。何も知らない エレーヌは叫び、わっと泣いて、家をとび出していってしまっ で : : : こう見えたって上ぐらい何回も行ってるんだ」 「ほおお、その年でね。どこまでだい、月かい、それとも人工衛星私があとを追いかけようかどうしようかと迷っているときツー かね ? 」 ツー、と妙な音がしはじめ 「失礼たな。ぼくは , ーー」 「よう、やっといたな」 「イアン」 画面にうかび出たロイをみて、私はギョッとした。 エレーヌの声は、これまで私にはつかったことのないようなひび 一体、ロイはどうしたというのだろう ? おそろしく惟忰し、目 きーー・、威厳にみちていた。若者は黙り、エレ 1 ヌは失礼な友人をつばかり光らせて : : : 私の知っていた、休瑕まえのロイとはおよそち れてきたことを何度もあやまって、そして二度と彼は私のまえに姿がった彼がそこにいナ をあらわさなかった。エレーヌはなんといい女だろうと、私は思っ 「ど、どうした、一体ーーー」 たものだ たしかに彼女は私を愛している。 「いっかけても彼女が出てきて、今いねえと云うからさ・ー , 、・もう、 幸せな夢のつづきのまま日々はすぎていった。幸福な夢の中の二直接待ちぶせるほかないかと思った」 ヶ月の休暇 「何だって」 それは私のいうことたった。クルーの誰一人として私が連絡しょ 私はクルーの誰とも会わす、話もしなかった。電話してもいつも うとしてもいたためしがない。 すれちがいたった。皆きっと忙しいのだろう、それぞれに。それに しても冷たい連中だが、それはそれでいいのだろうか。船乗りは海「そんなことはどうでもいいや。時間もそうあるわけじゃねえん で会えばいい。陸に上った船乗りなど、互いに会っても話もない。 二ヶ月が夢のようにすぎさろうとしていた。 ロイーー十年間私のとなりにいた男は、無精髭の中からぎろりと 私をにらみつけた。 こ 0

2. SFマガジン 1983年7月号

ふうつーー誰からともなく、申しあわせたように、私たちは深それからキャプテン、申しわけないのですが、私と同行していただ 、安堵の吐息をついていた。下らぬ想像、おびえ、不安がとけてけませんか。その いずれおわかりになると思うのですが、お出 3 ゆく 人って来たのは、宙港の制服を。ヒシッと着た、りゅうとしかけになったときから現在までに、社会状況に、かなりの変化がご た若い男だった。どこからみてもアンドロイドにはみえない。やれざいましてーーいずれ皆さんにもゆっくりとご説明申しあげます やれ、人間だ。地球はエ ーリアンにのっとられも、人類が全減してが、まず私の上司とキャ。フテンにお会いいただいてと : : : 」 もいなかったのだ。これまでのは要するに仰々しい手つづきにすぎ 「ーーーむろんです」 なかったのだろう。旅はおわった。われわれの、真の帰還がいまは おやじは、少し妙な顔をしたが、うなづいた。 じまる : 「むろん我々も、いまが百三十年後であるということはよくわきま 「お疲れ様でした、オデッセイ 7 の皆さん。 私は管制局のルイえているつもりです。われわれの価値基準をふりかざしたりしませ んよーー何といっても、われわれは、これから、あなたがたの時代 若い男は云った。抑揚のない、少々コンビュータ的な声。 に生きてゆくことになるわけですから」 ー、ルイ。いや、ただいま、かな。私がオデッセイのキャゾ 「けっこうです。 では、他の方々はもうしばらくお待ち下さ テン、プラウニングだ」 準備がととのいしだい、すぐにお迎えに参ります。そのーー・・」 ルイはためらい、それから云った。 「お目にかかれて光栄です、キャ。フテン。 いま地上では、皆さ んの歓迎準備がすすめられております。そのために、百三十年ぶり「私の父も、あなた方同様の宇宙飛行士でした。社会はかわって に地球に戻られた勇者たちをなかなか着陸させてさしあげられなかも、あなた方が英雄であることにかわりはない。私は、あなた方に ったことをおゆるし下さい。あと半日はお待たせしないと思いま最初にお目にかかれた人間であることを、光栄に思っています」 す。そのーーー何しろ、一世紀半近い年がたっているので、いろいろ ルイは船長に合図し、二人は立ちあがって出ていった。 事情も人もかわっていましてーーー皆さんについてのデータなども、 あとにのこされた私たちは、何となく、狐につままれたような気 そろえるのにてまどっていたので : : : 」 分だった。早速がやがやと取沙汰をはじめたが、その声もいささか 「わかります、ルイ。われわれは、今様リツ。フ・ヴァン・ウインクカがぬけていたのは疑えない。 ルというわけですからなーー・しかし、部ドたちをここで待たせてお何かが妙だったーー・しかしそれが何であるのか、はっきりこうと くのはかわいそうなので : : : 」 よ、つこ 0 指摘できるものは ロイでさえ し / 、カ / 「もうじきです」 ともかく、彼は私たちを歓迎する、会えて光栄に思う、とはっき ルイはあわてたように云った。 り云ったのだし、どうやら基本的に何もかわってはいないようだ。 「しきにすべての準備がととのいます。それまでもう少しだけ 社会が少しぐらいかわったといったって、むろん、われわれだって

3. SFマガジン 1983年7月号

そのぐらいのことは予期していた。むしろかわらない方がおかしいれたんで、そのーーーわしは、少しばかり疲れちまった」 船長は室のすみへゆき、いかにも疲れたらしくがつくりとすわり ではないかーーしかしあのルイは、われわれをよほど古代人と考え こむと、両手で頭をおおってじっとうずくまり、目をとじた。何た ていて、新しい社会のしくみについてゆけないと思って心配してい るのかもしれない。 か急に老けこんで、いくつも年をとったように見えた。 私たちは、そういうことを、いくぶん気のぬけた声で話しあっ私たちは顔を見あわせた。しかし、船長の気性は知っていたか た。ともかくあと半日すれば何もかもはっきりするのだろう。外へら、そのままにしておいた。見あわせた顔は互いに、ひそかな懸念 出て、この目で見れば , ーー十年もの月日を待って、あと半日が待てと疑惑をつのらせていた。何かあったのだろうかーーおやじをこん なに参らせるような、何かよほどわるいことが ? それとも、本当 ないことはないし、それに、私たちの帰りを首を長くして待ってい に、自分でいうとおり、彼は疲れてしまっただけだろうか ? る母や妻は、私たちの誰にもいやしないのだ。 おやじ カ二時間ぐらいして若いあ誰も、それ以上何も云い出せないでいるうちに、ドアがあいた。 船長はなかなか戻って来なかった。・、、 いそのいい二人の役人が、飲み物と軽食をもってきてくれ、いま大ルイと、それに数人のおえら方が入ってぎた。おえら方はみん な、満面にこ・ほれそうな笑みをたたえていた。 歓迎会の準備中ですとあいそのいいことを云った。それからさらに 「お待たせいたしました。ようやく、すべての準備がととのいまし 一時間ぐらいして、ようよう船長が一人で戻って来た。顔色が妙に た」 白く、浮き立たないようすだった。私たちは船長をとりまいた。 ルイは宣言した。おえら方が進み出た。 口々に、どうでした、何がどうかわってたんですか、ときくの 「お帰りなさい、オデッセイ 7 ーー全地球は英雄の帰還を心から歓 を、船長は手で制した。 迎します ! 」 「別に、大した問題じゃないよ」 船長は云った。 そう 「奴さんたちの方がとまどってるんだ。しかし、社会そのものはそ これが地球だった。これこそは地球だった。 うかわってないらしい。やはり統一党が与党だし、人口はふえつづ けてるーー・むろん、いろいろな点で変わってはいるらしいが : : : ま私たちのずっと思い描いていた地球ーー・私たちの夢見た地球。わ れわれのふるさと : ・ あ、待ってくれ」 いまやっとほんとうに帰ってきたのだという感慨が私たちをとら 船長は手をふった。 「少し休ませてくれ。もう歓迎パーティの準備がすんで、みんな待えていた。これが、私たちの思っていたものだった。おびただしい ってるよーーー国家首席やら、何やらね。 : : : すぐに呼びにくるだろ数の人びとが、エア・ポートのテラスに並び、旗をふっていた。巨 9 う。それまで、少し休ませてくれ。あまり急にいろんなことを云わ大な吹き流しーーー「お帰りなさいオテッセイ 7 」「お疲れさま」

4. SFマガジン 1983年7月号

ているーー″城″は、地上から二メートルばかり離れた空間で静止 「ここは、わたしたちの、土地なんだよ ! 」おふくろが言った、 していた。そして、突然、外側の漆喰がパラバラくずれはじめたー 「ちゃんと不動産屋さんを通して、買ったんだよ」 「はっー いや、くずれているのではない、空中に溶けはじめているのだ : ・ : ・城の鋭い尖塔はねしれ、たちまち蒸発していった。 女の方が鼻先で笑った。 城はすでに巨大な岩のかたまりにしか見えなかったーー・そして、 「そんなもん、どこにあんのよ ! 」 あるさ。ぼくらの頭の中に。銀行も、不動産屋も、町も。・ほくらそれがぜんぶ溶けきってしまうには、もう二分もかからないように は仕事をして、金をためて、信用をつくって、金を借りて、この土思われた。熱と轟音が渦巻いていた。 「シャーロット」 地をやっと手に入れた。 人間は、何か、規制をもうけて生きなければ、精神がふやけてしすべてが終わってから、ぼくはサチコに呼びかけた。 まうから。くたばるまで、どうしようもないわがまま娘だったサチ サチコはこたえた。 コは、こちらへきてから、世代も考え方もちがうおふくろと同居で「好きなのよ。あなた、こっちのほうがいい そう言って、彼女は自分の顔をエリザベス・テイラーに変えて見 きるようになった。 ここ , ーー死後の世界は、豊かだ。考えるだけで顔やスタイルを変せたが、うろお・ほえだったらしく、芸能時評の一コママンガよりひ どい出来だった。 えることも、無からものを取りだすこともできる。だから : ぼくらは、宇宙船家を、ばくらの土地の上にそっと置いた。そ 「そら、消えうせな ! 」 して大そうじをはじめた。おふくろはお隣りにあずけた貝割れ大根 女が、千年の恋も醒めるような悪声でわめいた。 次の瞬間、男がラジェンドラ人の姿を見つけた。男の表情が凍りつをとりもどしてきた。太った猫みたいに満足げだった。 それから、みんなでタめしをつくった。 いた ( やれやれ、表情が凍りついてたほうが、うんとハンサムたよ ) 。 友だちや家族といっしょにメシを喰うことほど、楽しいことはな 「行こう」 男が女の腕をひつばった。女は信じられないくらい素直にうなす ・ほくは何をつくったと思う ? いて、玄関 ( 城門 ? ) からとびだした。 豆腐とアポガドのサラダを山ほど。ェビをすりつぶし、わさびを 規制のない世界では、守るべきものすらなくなってしまう。そし てなにが美しくて、なにが美しくないのか、という価値基準すら失きかしたソースをどちゃとぶつかける。死ぬほどうまい。マスタ】 のカレーとくらべたって、遜色ないほど。 われてしまう。それはとても寂しいことだと思う。 サチコは、醜悪な″城〃を、思念のかたまりで、土地から持ち上「でも、早くうちがほしいわねえ」 おふくろがナ。フキンをたたみながら、言った。 げたーーーあの、ひかりにつつまれたオーラが、全身からたちの・ほっ 7 8

5. SFマガジン 1983年7月号

れロぐらいで参るようなャワな奴じゃない。底ぬけに陽気で楽天的海からもどって来られたのだ。 なのだ。そのビルでさえ、どうしたって、考えざるをえないのだろ「なあ、ロイーーー」 う。なっかしい地球、母なる星ーーー・長い長いオデッセイの放浪、そ私は、隣の席のロイ・ギルビーにそっと云った。 下りてから、さ : ののちの輝かしい帰遠。おお、だが、貞節なベネローゾは ? 彼女「あんた、もういっぺん、船にのるかい ? 「さあーーー」 ロイは片目をつぶる。 ・ヘネロープは死んでしまった。埋葬されて冷たい土の下ーーだが それは、云い寄る男をしりぞけて、貞節を守ったからじゃない。ど「きっと、乗らねえだろうと思うよ。好きな女でもできりゃあなー んなに貞節な妻さえもつれていってしまうただ一人の恋人ーー時ージェイは ? 」 が、彼女をつれていってしまった。いくら寿命がのびたといって「たぶん、乗らない。乗らないだろうと思うんだがーーわからな も、百三十年間生きる女はいない。 カ私のつぶやきをききつけたの いたとしたらそれに、事はもっと悲劇的だったかもしれないの それが正直なところだった。 : 、 キャ・フテン だ。地球港を出発したとき、私は二十二、ビルは二十八、他の連中は、思いがけず、おやじだった。 キャ・フテン 「おい、ジェイ。いかんそ、そんなことを云っちゃ。、、 : もおおむねそのあいだだった。おやじだけが、三十五だった。帰っ ししカ一度 てきていま、われわれはみな、壮年の、男ざかりのパイロット・こ。 : この旅かぎ で沢山だ。一度でじゅうぶんなんだ、こんなことは : だが恋人は百歳を五十もこえた老婆で : りで足を洗え。船をおりて、結婚できる女をさがし、かたぎに、地 コーレに・ スリー。フへ行った女もいた。しかし私はグンに、私を上でくらすんだ。大地に足をつけてなーーーおまえたち、みんなそう 忘れろと云ったのだった。もう、死んだものと思ってくれ。ぼくもだそ。一度だけなら、忘れられる。二度、三度となったらーーーおし まいよ。俺みたいにな : : : てめ工の年もわからなくなるんだ」 そう思うと。 地上にはや、わが父母も恋人も、いたものは子供や弟妹さえ、一 おやじは、四回も五回もクルーに入っている。肉体年齢は四十代 人として生きのこってはいない。 にしかすぎないが、生まれたのは百九十年前なのだ。その苦いこと だがそれはすべて承知の上だったのだ。われわれは、何もかも覚ばが胸にしみる。そんな思いをしてまで、何が男を宇宙にかりたて 悟の上で宇宙へ発っていった。いい さ、帰って来てもおれはまだ若る ? 恰好いいこともない、ヴィデオの宇宙活劇みたいなことは何 にもない。流星群、宇宙空間、エーテルの海、そんなものはみんな 。それから恋をし、子供をつくり、なんでもやり直せるのだ、と 少々気恥かしい、若さゆえのヒロイズム、使命感に酔いしれウソだ。あるのは来る日も来る日も四角い壁、とじこめられて、顔 て。宇宙のリツ・フ・ヴァン・ウインクル、でもいいじゃないか ? つきあわせて、何年も何年も , ーー・居心地のいい監獄、それがほんと こうして二十七人の仲間が、一人も欠けず、困難をきわめた長い航うのところなのだ。 4 っ 1

6. SFマガジン 1983年7月号

イ Sci'Fi Set ◎ こは、 バムが誕生した。 わどサい色気の漂う素敵な女性。食べるえと同じように「 = アで古本屋の ( シゴ ことがた好ぎで ( 一ただおいしいものを食べるが好きな男がいる」と聞いてはいたが、実際それが「 だけでは満足できず、その店へ人を連れて行に会ったのはこのときが初めてだった。 — Z X 」 ( 7 2 6 7 、キャニオン・レコ き、しかもその人が味に感動しないと気嫌が達郎を訪ねて楽屋口に現われたこの男を見 ード ) だ。 〇悪くなる。山ほど食べるのになんでそんなにるなり僕は紹介されてもいないのに、「あっ いわゆるアニメの声優のレコードでもな やせてるのかと尋ねたら、家へ帰ってからが この男が村松に違いない。い やこれはもう絶く、かといって歌手のレコードでもない、と 大変、お風呂でたつぶり汗をかいて美容体操対にそうに決まっている」と直感した。 いった不思議な魅力をもつアルバムだ。 もするのですと。女の子って、大変なのね。 絶対にミュージシャンがしないようなださ その成功の秘密は、平野文自身のプロデュ 生まれも育ちも東京は西荻窪。最近は仕事が いカッコで、・本当に古本屋のハシゴをしてる ースと村松邦男のサウンド・プロデュースの 終わったあとお酒が飲みたいので運転はあまマニアか文学青年のような雰囲気が濃厚コンビと、本人のキャラクターを生かしたア りせず、中央線で仕事に出かけるそうだ。こに漂っているではないか。このときの感動ををハム・コンセプトにある。 ういう顔の女の子に会ったら、その人が平野どう表現したらよいだろうか。ヤクザなミュ ラムのイメージにいたずらにひきまわされ 文ですよ。 ージシャンのたむろする楽屋口に、突然モノることなく、むしろ「走れ歌謡曲」などの さて、もう一人控えしは、以前「トラック リスが出現したような感じ、とでも書けばよとしてのキャリアと、 co チックなアイデ いだろうか。 ・ダウン」で紹介した村松邦男である。今回 アとの結合が、新たな魅力を作ったと見てい いだろう。 は、実に、平野文のファースト・アルバムの 当然すぐに僕らは仲良くなり、今ではお互 サウンド・。フロデューサーというエラソな立いのアレンジでスタジオに呼びつくらをする これは書くと怒られるかもしれないが、子 ようになっている。 場での登場となった。 役から始めてすでに十ン年、を始めて十 村松邦男といえば山下達郎、大貫妙子など どうだ。有難い話だろう。 ( 何のこっちゃ ) 年という芸歴が、こういうュニークなキャラ : いた栄光のシュガー・べイプのメイハーだ やつばり女と野球とマージャンとゴルフの クターを作り上げたのだろうと思う。 った。現在はギタリスト、作編曲家として、話しか出ないスタジオ・ミュージシャン界に シャネルズや早見優を手がけているほか、あって、ひとり黙々とラリイ・ニーヴンを読 のバッ バンドのメンバ ーとして、 んでいる姿はひときわ神々しいよ、ホント。 「俺たちひょうきん族」では女装までしたと てなわけで、ある日村松に呼ばれてスタ . ジ いう派手さかげんだが、以前は私同様暗かっオに行ったら平野文がいて、ヘッドホンのむ たのよ こうから「私、平野文といいます。声優で、 なにしろ、一番最初に会ったのが達郎のコ 『うる星やつら』のラムちゃんの声をやって ンサートの楽屋。今の達郎パンドのメイハー ます。こんど»-22-4 を出すことになりました。 の四代前のメイハー ( 坂本龍一と僕のツインよろしくお願いします」と囁かれたと思って ・キーポードに、 べース岡沢章、ドラム村上ごらんなさいよ、あなた。 ーミントの香りのするカラフル 村松の。〈鉙 ポンタ秀一、ギター松木恒秀、 = ーラス話 田美奈子という、今考えてみると当ーカな ・、・、、 - なプレ第ッ、平野文の個性ある声が「 ' チ い ) " ・きで、まえまえ、郎に「おま , して、効とく ( イテックなのにポップなアル 〇 ひけ FUMI 鬥旧 Af\l

7. SFマガジン 1983年7月号

ビルは何を考えてるのだろうと、私は思った。私は少なくとも、 「今日は、予定がないのかな」 地球に関してはいやが上にも楽しい予想をふくらませるだけ、何の 「ばかな。おれたちが出発した当時だって、毎日十便や二十便はー 心配もしていなかった。酒、女、べっぴんさん、青い海 ! 私が心 ーまして、その後、よけい便はふえてるはずだそ」 配していたのは、ひたすら自分自身だった。 「時間がたまたまあいてるときなんだ」 「おれは、さっきから三時間もずっと見てた。 それに、もう全 部のデータ計算は向うに伝えてあるのに、ここでぐるぐるまわって 「さあ、いよいよだそ ! 」 ろってのは : : : 要するに、宙港がこみあってるから順番待ちしろっ インタフォンから、おやじのでかい声がとび出して来た。われわてわけだろ ? だのにさ」 れは着陸体勢に入っていた。 ロイは、不安にかられているように見えた。ロイがこんなに神経 「キャプテン、地球の主管制局からのメッセージが入りました。読質とは思わなかったと、私は思った。それも、地球にもどってきた みあげますか ? 」 から 「頼む」 「それにーーおい、坊や、見ろよ」 ええと、『おでっせい 7 ノ無事帰還ヲ心力ラ歓迎ス ロイはスクリーンに指をつきつけた。私は見た。ふいにスクリー 貴船ノ着陸誘導 = デキウルカギリノ協力ヲスル。ソノマ「現在ンの上に、あざやかな白い光点がパッとひらめき、次の瞬間消え こ 0 ノ軌道上デで 1 たノ投入ヲ待テ』」 「また、コンビュータ野郎だ」 「何だい、それは」 私はビルがののしるのをきいた。 「知らん。さっきから、一時間おきにいくつか、こうやって光って 「何かこう 心がこもってね = な。管制局め気がきかねえ。こちるんだ」 とら、十年ぶりの、人間の声がききたくて苛々してんのに」 「人工衛星かな」 「ジェイ」 「ハ力な。こんな一瞬で消えちまう人工衛星があるか」 ロイが身をのり出していう。その青い目が、気のせいか少しくもそれでは何だと思っているのかと、私はロイにきいてみた。しか っていた。 し、ロイは答えなかった。妙に考えに沈むような目で、じっと光占 「妙じゃないか ? 」 が消えた、何本もの白い線がうかび出ているスクリーンを見つめな 「何が ? 」 がら、それきりもう、ロをきこうともしなかった。 「スクリーンをみろよ。全然ーーー宙港からとびたっ船の光跡がない 6 3

8. SFマガジン 1983年7月号

のである。 た。中国奥地は泥沼の悪路であった。 解説によると、その子がすがりついている足の主は、親でも兄弟実際、戦争は泥沼の深みにはまりつつあった。日本軍はどうしょ でもないということだった。その子の行く末を心配したのは、・ほく うも身動きのとれなくなった中国大陸に見切りをつけ、今度は南進 とサチコだけじゃなかったろう。だけど、ぼくらは、二時間後にはしはじめた。経済的なゆきづまりがその理由だった。南方への進出 もうすっかりその写真のことは忘れ、青山のロイヤルコペンハーゲは、アメリカの神経を逆撫でした。 ンで紅茶を飲んでいた。 ドイツがヨーロツ。ハをめちゃくちゃにしてしまったころ、日本 ぐずぐずしているひまはない。 は、太平洋戦争という有史以来未曾有の泥沼に両足をつつこんでい ばくらは家へ引き返しはじめた。 - 途中、ヘルダが一度だけ、こう言った。 その流れは、見事な一本の歴史のラインだった。 「人には不幸に見えてもね。その子はその道を歩むしかないんだ。 一九三一年の満州事変にはじまり、一九四五年の二発の原爆投下 その道をどういうふうに解釈して、どういうふうに歩くかは、そのにおわるまで、じつに十四年間、日本はその泥沼のなかにいた。ひ 子しだいなんだ」 とつだけ幸いだったのは、その泥沼が底なし沼ではなかったこと もちろん。よくわかってるつもりだよ、ヘルダ。 それに肉体は減びても、魂は残る。 これでよかったのかな。・ほくはあまり日本史は得意なほうしゃな そうだ、歴史の話をしよう。 かったから。 日本軍は破竹の勢いで勝ち進むかに見えた。 事実、南京をはじめ、多くの都市を手に入れ、中国人口の四割ま でを占領下においた。 ・ヘテルギウス人というのは、おかしな連中である。 けれども、この戦いは、中国側にとってみれば、祖国の存亡と民 ヘルダによると銀河一の鼻つまみ者ということらしいのだが、・よ 族の運命をかけた、ぎりぎりの戦争だったのた。一歩もあとにはひくは残念ながら宇宙時代の生まれじゃないから ( もちろん、今度は けなかった。彼らは、本気に怒っていたのだ。なにがなんでも、なそうかもしれないけどさ ) 、親しみも憎しみもおぼえない。 んとかしなけりやいけなかった。 連中は砂の中に卵を生むのである。 介石は次のような戦略をとった。 まあ、ラジェンドラ人をひとめ見たときから、世の中にはいろん 「空間をもって時間に変えよ」 なャツがいるもんだなあ、とは思ってたけど。 世界地図をひろげればわかるが、中国というところは信じられな 天敵がいないから、親はほっ。ほり出してゆく。 いくらい広い。中国軍は奥地へと敵をおびきよせ、消耗させていっ なぜ天敵がいないかというと、連中がみんな喰い殺して根絶やし こ 0

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予期しなかった単語が飛び出して来たので彼はまた反間せざるをらんになってからお会いになりますか ? 」 日よ、つこ。 / 倉ュ / 、刀ュ / 1 はいう。 「タトラ一アンこよよ 「すぐに会おう」 冫ーオいかたちの学校だそうです」 と、「ドラエテ・ COO ・エクド ートは、司政官が着任さ彼は返事をした。あぶなく苦笑が顔に出るところであった。 1 はまるでこちらをあやしながら誘導しようとしているみたいでは れる前にも二度、司政庁へ来ました。その第一回めに私は説明を聞 きました。ドラエテ・ O ・エクドートは、あたらしい司政官が来なしカ 「わかりました。それではドラエテ・ O ・エクドートを第八面会 られたら、自分の口からまた説明したいといいました。第二回めは 室に入れます」 あたらしい司政官がいっ来られるかをたすね、面会が出来るかどう は受けた。「第八面会室への司政官へのご案内は、 かを確認するために来たものです。私はドラエテ・ O ・エクドー トに、司政官の着任日を教えましたが、面会が可能か否かには、確がっとめます」 答を与えませんでした。お会いになるかならないかは、司政官の権「頼む」 限です。お会いになりますか ? 」 キタは反射的にそういってから、第八面会室なら知っている 会おう」 と、思った。 彼は答えた。 そう。 01 は、彼がそのドラエテ・ o ・エクドートと面会しても構連邦の学校の予備試験に合格し、タトラデンの司政庁へ渡航手続 というより、面会すべきたと判断しているようである。もきのために行ったあの日 : : ときの司政官のエクレル・ 3 っとはっきりいえば、言外に面会を要請しているのであった。情報・セイトは、むこうから彼に会ってくれたのだが : : : その部屋とい 官から話を聞いてある程度の覚悟はしていたし、きのうからきよう うのが、第八面会室だったのだ。彼はすっかり緊張して、部屋をろ にかけてのやりとりのうちにもうすうすと感じはしめていたことだ くに観察する余裕もなかったものの : : : そこが第八面会室という名 が、ここのは自信を持ちすぎるほど持っていて、こちらが思 たったことは、はっきりと記憶している。 うようにコントロールするには、苦心しなければならないようであ その第八面会室へ、今は司政官として入るのだと思うと : : : きの る。とはいうものの、きようのところは、の意向に沿ってみうからすっとつづいている無感動が、少しは波立つような気がする よう、と、彼は考えたのであった。 のだ。 「私は、ドラエテ・ co o ・エクドートの説明を要約して資料にして なぜだろう ( ) ありますが、直接話をお聞きになるほうが、疑問点も問いただせるそれは : : と、彼は、自分でも意地悪く考えた。乾いた心情がふ ので、有益と思惟します。すぐにお会いになりますか ? 資料を ) 」と揺れるのは、ひょっとしてタトラデンにいて、タトラデンに容れ 、、 0 0

10. SFマガジン 1983年7月号

4 小説の方も、久しぶりの梶尾真治氏や鏡明 かを考えてみた結果など、他の読者にも興味が 投稿歓迎 氏、クラーク、アシモフ、アンダースンなど、持てる。自分の評価する作品について。ヒントは 6 宛先は本誌てれぽーと係 ( 奥付参照 ) 久しぶりに、読みごたえのありそうな ( まだ全ずれのことを言 0 ているのに出会うと、それは 掲載分には文庫最新刊一冊進呈 部読んでないので、面白いかどうかはわかりまちがうと反論したくなり ( これがまた楽しい ) 、 せんが ) 人が大勢登場していて、久しぶりにの面白さについて誤解している ( と思え ″特大号″って気がします。 る ) 奴に対しては、とは何かについて論じ 最後に、最近「てれぼーと」がにぎやかにな たくもなる。 「 TJ マガジン」三〇〇号、おめでとうござい ってきていますね、私も議論大好き人間ですの くり返しになるが、独断でも貧弱な意見でも ます。 私が最初にマガジンを買ったのが、一九で大変面白く読んでいますが、「ファンとよいから、他人に伝える内容を持ったものを投 七四年の二月号。手塚治虫氏の「鳥人大系」とは」とかの漠然とした問題より、今度は作家論稿しようではないかということである。 ″日本人作家特集号″というのに引かれて、当とか作品論なんかを論じてみてはどうでしょ もう一つのことは、論 ( の必要性 ) につ 時としては大金の六百円を出して買ったのが地う。まあ、そう簡単にはいかないでしようけれいてである。に惹かれる人がの本質に ついて全然考えないことがあるのだろうか。 獄の始まり、それから、毎月の定期講読はもとど : ・ より、古本屋でバックナン・ハーを見つけるたびそれでは、マガジンが「世界で一番古い 「面白ければそれでいいので、無理にとい う言葉にこだわらなくてよい」などという意見 に、財政状況も考えずに、つい手をのばしてし歴史をもっ雑誌」になりますように。 まうという日々が続いています。しかしここ は一体どこから出てくるのたろうかというのが ( 川東京都三鷹市下連雀四丁目三ー一三 一、一一年は、大学も卒業し、昔ほど暇がなくな 吉田真美子 ) 私の感想である。ヴォネガットもクラークも星 った事もあって、習慣でマガジンを買って 新一も横順も同じように楽しめる人がいるとは はいるものの、読むのはコラムとその他少しだ 二つのことを書いてみたい。 思えない。私は ( 全作品とはとてもいかなし けという状態だったのですが、三百号を見てお 一つはこの「てれ。ほーと」欄のあり方につい が ) これらの作家はみんな好きで楽しませても どろきました。 てである。投稿にはやはりコミ ュニケ】トするらっているが、楽しみ方はそれそれ異なり、ま まず、表紙。編集後記などで「ずいぶん厚い内容が必要ではなかろうか。この欄を読んでい た、これらすべてがと呼ばれない小説の面 雑誌になるんだな」とは思っていたんですが、 て思うのは「ひとりごと」の類が多いことで、 白さともちがうものを持っているようにも思え 本屋で見つけて、思わず「エー : 手力につ これが ? 」と近況報告調 ( 忙しくてが読めない ) や感激る。こういう経験から、私はとよ可、 叫んでしまいました。今度の表紙は全体的に明調 ( 〇〇先生の x x を読んだ、キャー D ) が目 いて考えずにはいられないのだ。他人が私の意 るく、 ZC3 くなったみたいでいいんですが、立つ。こういうのは他人が読んでもそれほど面見に同調すべきだとは思わないし、また単に読 ロゴマークと背表紙も変ってしまっている。白いものではない。少くとも私には全然面白くんで楽しむだけでいいという人がいたって一向 マガジンと言えば、すぐにあのロゴマ 1 クが ( ホホえましく思わないでもないが ) にかまわない。ただ、論争などすべきでないと 思い浮かぶ私のような読者にとっては何たか少よい小説を読んで感激し、それを他人に話し いう意見にだけは反対である。 し奇妙な感じがします。 たくなる気持というのは私にも経験のあること 論争について言うと、私は排他性や偏狭は大 それに海外作家や、日本人の方々の祝辞。あで、実によくわかる。でも、それは自分の読書嫌いである。だいいち日本国憲法の精神に反す れだけ多くの人が祝辞を書いているなんて、そ日記や友人への手紙にでも書けばよいのだ。 る。といって、何でもかんでもみな、うる れだけで単純に「すごいな , ー」と思うし、それ ( 書いている本人を知っている人にとっては、 さいこと言いなさんなというのも困る。そう思 に、ノーマン・ス。ヒンラッドの書いていた「世こういうのは面白い ) う人はそれでいいが、一人静かにそう思ってい 界で四番目に古い歴史をもっ : ・ : 」という所を作品論なら大いに投稿すべきだ。一般ファンてほしい。「うるさいことを言うべきでない」 読んで、改めてマガジンというのはすごいの寄せるものだから完成された評論である必要などと言うべきでない。議論の芽をつみとって 雑誌なんだ。と感心してしまいました。 。ないが、自分の感激した作品の本質は何なのはいけないのだ。