年も七十年も前に書かれた『火星の。フリンなると、いかなる形の国家もこの地にはなプなどは、冗談とはいえ、ストルガッキー をソ連そのものと同列に扱ったりしてい かったこと、さらにほんの一億年前には、 セス』でも、タルス・タルカスはジョン・ カーターの戦友だった。全くの、本物の人類自体影も形もなかったこと、逆にいえる。アシモフや ( インラインやヴァン・ヴ ″別物″とだって共感しあえると主張したばあと、ものの二、三百年もすれば ( 核戦オクトをアメリカ国家そのものと同一視し て茶化すなどということは、、かに冗談で のがではなかったか。もちろん『ソラ争で人類が減亡していなかったら、だが ) 、 リス』のように逆のメッセージをもった現在あるような″国家″などおそらくどこあれ、発想としてさえかって一度もなかっ もあるが、これはもう次元がちがう。今にも存在せず、ほんの百万年もすれば、ホたのとは対照的だ。 ところで、他者への共感の欠如と、視野 の風潮は、実に反的といわざるをえなモ・サビエンスそのものが別の種にとって タ・「 - ー破壊を云々するなら、本物のタかわられているだろう、というファン狭窄的な " 国家〃へのこだわりは、前半に としての認識のイロハがないファンが実に書いた世界の破局的状況に対する日本国家 ・フー、たとえば天皇制に挑戦してみればい レーガン宇宙核戦 の切り札に他ならない。 。現に進行している世界中の戦争 ( カン多い ポジア紛争のように、日本政府が積極的に歴史地図帳というのが僕は大好きなのだ略への全面的従属、第三世界の反乱 ( 西側 加担している戦争がいくらでもあるのだ ) があれは無常の世界史をヴィジ = アルに見列強の特権の排除を含む ) に対する「国論 から目をそらすため、イメージの戦争としせてくれる。二〇世紀の日本国家など、・フ一致」による対処 ( 暴力的債権とりたて、 てのテレビマンガがあるとすれば、昨今のルグンド王国だの、後周だの、古代イング革命に対する対外出兵 0) 、そして資 弱者差別をめぐる、さまつなタ・フー論議ランドのマーシア王国だの、北アフリカの本の利潤追及のための環境破壊の続行 これら二〇世紀末の日本国家の主な行動を は、本物の巨大なタ・フ 1 を見ないようにすアルモラヴィード回教国だのと同様、あっ という間に、″歴史地図帳″に記されるだ支えるためにこそ、国民の想像力をつみと る煙幕として機能しているのではないか。 ることが必要なのだ。″国家″側のシナリ けの存在になっていくのだ。 そして、戦争アニメ世代 ( に限らない ところが現実はというと、ソ連のアフガオは、的メディアをも動員する形で進 が ) の想像力衰退を示すもう一つの傾向。 それは現在ある国家の固定的なとらえ方ニスタン軍事介入やら、レーガンの冷戦戦んでいる。だが本来は、こそ″国家″ だ。それは最悪の場合、″経済大国″日本略やらが出てくると、″日本国家の敵″とや、それが作り出す常識、支配的価値感に からめとられない柔軟な精神を育むものだ いうわけかソ連が売れなくなる。たと 国家の立場に立っというところまで落ち ごる。二〇世紀の後半における日本とその同えばストルガッキー兄弟のように、当局のったはずだ。 どうやら、今では自体が″戦場″に 盟国が″善″であり、仮想敵国が″悪″で監視と抑圧の中で何とか優れた作品を あるという前提。日本などという単一権力書き続けている作家を含め、ソ連のとなりつつあるようだ。果たして勝つのは、 5 9 国家は、ほんの百数十年前まではこの列島いうと、ソ連国家と直接結びつけて考えら″国家″か、想像力か。タイムリミットは 9 近づいている。 に存在さえせず、そしてほんの二千年前にれてしまう。ある半商業的映画製作グルー
完成近づく・・ 「光世紀の世界』石原藤夫著 近距離恒星界の大データ集 S F 的科学解説の頂点を目指す石原博士が、 8 年の歳月をかけ、多くの専門家 の協力を得て完成させた、近距離恒星群の精密かっ膨大なデータ集です。 販売 : 早川書房 制作 : 石原藤夫 〔箱入直販・ 10 月上旬完成予定〕 販価 ( 送料込 ) ・ 16 , 000 円 ( 予約特別価格・ 12 , 000 円 / 9 月末まで ) て眺める立体星図など、 SF 的に工夫された星図を満載しています ) 大な星図集で、さらに 30 万年過去から 50 万年未来までの星図や、レンズを利用し 全 66 図・・・ ( 《光世紀世界》全体図から各星域図までをさまざまな方法で三次元的に作図した膨 Ⅳ . 光世紀星図〔 A3 判〕 どの有用な補助データです ) 付表・・・・・・全 6 表・ ( 著名カタログの説明一覧、各種記号類の解説一覧、プログラムリストな 表を含んでいます ) ほか、太陽類似恒星、閃光星、白色矮星、将来太陽系に近づく星など興味深い星 表群です。約 35 万数字分という膨大なデータを含んでおり、全恒星の基本性質の 主表・・・・・・全 14 表 ( 表 1 「総合星表」のみで A 3 判二十葉以上よりなり、総計数十葉の大星 Ⅲ . 光世紀星表〔 A3 判〕 立体図で明示しており、直径 18 光年の宇宙を明確に把握することが出来ます。 宇宙全体と《光世紀世界》との関係および《光世紀世界》内の全 24 宙域・ 60 星域を 15 葉の Ⅱ . 宙域解説図〔 A3 判〕 です ) 図表・・、・・・ 45 図・ 8 表 ( 恒星の距離の測定法、地球型惑星の軌道計算法など、役にたっ資料 本文・・・・・・全 8 章 / 168 , 80 字 ( これのみでも天文学の一般向け解説書として有用です ) I . 《光世紀世界》総合解説〔 A4 判〕 振替口座番号《東京 6-47799 》 申込方法・・・・・・早川書房「光世紀の世界』係まで郵便振替または現金書留にて 販価 ( a ) 4.58 円 ( 予約特価 3 , 7 円 ) , ( b ) 4 , 750 円 ( 予約特価 3 , 950 円 ) , ( c ) 4 , 950 円 ( 予約特価 4 , 150 円 ) 〔⑩ ~ ( a ) のような書き方でご指定下さい。またご使用のディスク・ユニットの型式をお知らせ下さい〕 フロッピイ規格 5 in 2 D ( a ) , 5 in 2 DD ( b ) , 8 in ( c ) 9801F ( G ) / FM-7(H), FM-8( I ) 使用本体機器 PC-8001(A), 881m Ⅱ ( B ) , 8801 ( C ) , 01m Ⅱ ( D ) , 9801 ( E ) , 9801E ( F ) , ・星表・星図および各種プログラムは本体の他にパソコン用のフロッピイ・ディスクの形でも販売しています。
なのかもしれないが、これは間違いというもので ある。 別にその世界に関する説明が、作品中に必ず具 体的な形で顔を出さなければならない、などと言 っているのではない。只、君の頭の中には、その 世界がどんな形にしろ、つねに君独自の形できち んと形成されていなければ、面白い作品はなかな か書けないだろうと言いたいのだ。 これが出来ているかどうかは、キミ自身それを 感じるか否か別として、作品の骨組み自体にまで 大きな影響を及・ほすものだと考えておいたがい たとえばチャンドラーの〈銀河辺境シリーズ〉 の場合だが、ご承知のように彼は長年の間、商船 の船長をつとめていた人だから、その″地球の 海″での様々な体験をじかに宇宙空間へ持ちこ み、その知識をもとにして空間的、社会的に彼な らではの″宇宙の海″の世界をがっちりと形成し ているわけだが、それをあそこまでこまかく、隅 から隅まで設定してしまうのは、あまりにも彼個 人の趣味に傾き過ぎるとも言え、これは特殊な例 だとも言えるだろうが、それはそれ、学ぶべき点 は大いにある。一度は、そんな観点からあのシリ ーズに目を通してみるのは決して無駄ではないと 思う。 しかし、自分で創るその世界のことだが、ここ がまた難しい所、そしてまた、これこそスペース ・オ。ヘラにとって不可欠、最大の要件だと私は確 信しているのだが、もし、君の創ったその世界を 自分で覗いてみて、それが、もし、オレも住んで みたいなアと感じない世界だったならば、それは 断じてスペース・オペラの世界にはなり得ない。 : 111- ・ ング / / 0
よ押えようもなかった。 「わたしは船から来た」すがるような口調。 彼女はこの一言に、自分からやって来て真向いの席にかけた。娘 は中国系で、そのスリットの入った民族衣裳はなよやかな体の線を くつきりあらわし、大輪の菊花が重なるように散らしてあった。 「信して、本当にわからなかったの」彼女は言った。「でも眠でわ かるな : : : 船から来たって書いてある」かすかに身じろぎして、 「何か飲む ? 」 サリイはかぶりをふって、「いっしょにいてくれるだけでいし 気分はもちなおした。だがどうしたことか内側の声はこう語りか けてくる。「ほう、あんな目にあっても自分の時代に戻れば立ちな おれる、元の自分にかえれるというわけか ? 」声はくりかえしてそ の質問をつきつけて答えはいつも否に決っていた。あの経験は今も 彼の内部で増殖をつづけている。まるで癌腫のように。 「聞こえたわよ、あなたの船が実体化する時の音」中国娘は言っ た。「この近くに住んでいるのーーー・フキット・チマ 1 街ってご存 知 ? あの時はちょうど友達が来ていて窓のところでお喋りしてい た」 彼は想像する。目くらむような陽射し。脂身のジュウジュウ焼け るなっかしい匂い。やかましく行きかう人輪車の群。小さな屋根裏 部屋でお喋りに興じる娘と友人。そこにとどろく実体化した船の衝 撃音。途切れる会話。ーーしかし、すべてははるかな過去、世紀を 隔てた彼方の出来事。 「とんでもない音がするからな、航時船が時間の壁を突きやぶる時 「ニワトリがびつくりする」 プライアン・オール一ス Brian ゝミ i の抱える最大の矛盾は、作者個人はおろか人類全体が一度も 経験していないことを、あたかも見てきたかのようにリアルに書か なければいけないことだろう。しかし、そんなことが実際にはでき るわけはないので、作家たちは現在や過去を素材に、自己の想像力 をたつぶり活用しながら、現実世界の彼岸にあるものに形を与えて ゆく。嫌いの人間がを読んでシラけるのは、ほとんどの作 品が、生まれかけの雛のように、現在や過去という卵の殻をひきず って歩いているところにあるようだ。 それでも究極のというものは、理論的には考えられないわけ ではない。ただ、おそらくそれは誰にも理解できないものになるだ ろう、といったのはスタニスワフ・レムだったか。 ()n がほとんど 常に娯楽小説 ( エンターティンメント ) の体裁をとるのは、その方 向に骨身をけずる空しさを直感した作家たちの怠慢というより、 を″読める小説″として自立させる安全弁であるような気がして ならない。 今日いかにも未来的に見えたものが、明日には古びてしまうこの 世界で、あとに残るを書くのは容易なことではないだろう。オ ールディスのこの小説にも、いま指摘したような矛盾点はちらちら と見え隠れしている。発想のもとにあるのは、第二次大戦直後、東 南アジアを遍歴した生々しい経験と、ウエルズの「タイム・マシン」 だろうか。とくに前者をベースにした冒頭の描写は、違和感をおぼ えないでもないが、それが最終的に行きつくところにはオールディ スならではの世界がある。この短篇が、ニュ】 ・ウェー・フに先んじ ること十数年ーーー一九五六年、作者の最初期に書かれたものである と、あなたは信じられますか。 ( 伊藤典夫 ) 8 5
ぶれ果てた知識と技術の残骸なのだよ。それが、創世記神話と呼ば 身震いした。 ピルス れるものであり、そして、錬金術なのだ : : : 」 ミーラー・が続ける。 「待ってください、博半ーー」 「さあ、どうかね ? 錬金術とは、何なのかーーーそれを、知りたい ローヴァー・ 0 少佐が、たまりかねたように口をはさんた。 「どういうことです ? その、神話と錬金術に、一体、どんな関係 「もちろんです、博士ーー」 があるというんです : : : 」 少佐が、応じた。 「創世の神話とはーー」 「よろしい。だったら、聞く力しし ピル - ス ピルス ミ 1 ラー・»-a が、金星服を O の方に巡らすように動かし、 ミーラー・が、金星服の片方の腕を振り上げた。 出来の悪い生徒を前にした忍耐強い教師の口調で、説明した。 「創世記の神話と錬金術には、深いつながりがある。まずもって、 この世界が、いかにして生み出されたかを伝えようとするも それは、どちらもが、思想でも哲学でもない。実に、それらは、た 何故、そんなことに、古代人たちは だの記録、実際に当時知られていた事実、あるいは技術を伝えようのだ。しかし、何故だ としたものであったはずだーー・」 ? なぜ、あらゆる神話、伝説の伝承者たちは、こ こだわったのか 「事実ーーー ? 」 の世界がどのようにして創られたかを物語ることに、それほどの情 世界が、はじめから、 「技術とよ、 熱を傾けなくてはならなかったのか あるがままのものとして存在していたのだと、何故考えることがで アイリーンと少佐が、ほとんど同時に声を上げた。 ビルス きなかったのか が、ミーラー・»-äは、構わずに続ける。 「そうとも ! しかし、その記録者たちの表現力に、そもそも限界「それはーー」 があった。しかも、ロからロへ・ 粘土板から粘土板、パ。ヒルスか ロ】ヴァー・ (..5 0 が、とまどったように言い返した。 らパ。ヒルスへと写され、伝えられるごとに、それら事実と、とりわ「世界を認識するための、ひとつの手続きとして作られた : : : 」 違う ! 創世記神話とは、そんな、何かを納得しょ け技術の部分はほころび、失われ、その上に勝手な改変が加えられ「認識 ていった : : : 」 うと空想されただけの作り話なんかじゃない。そうじゃないんた ルー・風は、独りとりのこされていた。 「たとしたら 彼等の関心が、ますます遠く、見えなくなる。 しかし、それでも、彼は必死で、ヘルメットの中へ届いてくる声 アイリーン・が、声を張り上げた。 に、耳を澄ましていた。 「実際に世界が創造された時の、その記憶たとーー ? 」 「・ : ・ : 今、我等が目にできるのは、なれの果て : : : 破壊され、落ち「まさしく
海ー外一一 S し、徴兵を忌避して逃亡することを教えらすることによって、作家とその世代の救済に、 サイモンとガーファンクル、ジョ。フリ れた中産階級の子供たちの世代が、七〇年を、時代の呪縛からの解放をはからなけれ 代の作家になったのです。六〇年代の教訓ばならない必然性が存在することをおわかン、〈ンドリックスに、 ・、ツファロー・ スプリングフィ 1 ルド、 りいただけたでしようか。 から、何万人もの虐殺の瞬間がカメラにう っしだされる時代に、ペンで訴えるのは無さて、前おきが長くなりましたが、審査ローリング・スト】ンズに、 ーズ、ママズ & パ。ハズに、 ドアーズ、 意味である、状況に対して反応を示すため員の選ぶ世界幻想文学大賞に対し、大会に ドノヴァン、。ヒーター、ポー メラニ には全生活をかけて行動しなければならな集まるファンが選ぶという点で、ファンタ ジイ界のヒューゴー賞と見なされることもル & マリ 、と信じ、歴史や社会よりも解放された ムーディ・・フルース、モビー・グ 性の自由の中での″自己″のほうに大きなあるガンダルフ賞に今年選ばれたのが、ジ レープに、 価値を見いだす世代にとっ カントリー . ジョー & フィッンユ、。、 て、文学の価値や、文学の中 ル・リ・ヒアとレイダーズに、 で追求すべきものは失われて ・ホ・フ・デイラン、フィル・オクス、ジョ しまったのです。彼らはた 0 、ツチェルこ、 だ、自分たちの時代の空疎 マザーズ・オヴ・インヴェンション、ス さ、冷たさをくり返し表明す マザーズ・・フラザーズに、 るしかできない、というわけ 0 0 ホリーズ、・アソシェーション、ビーチ です。トム・ウルフのいう ッ ーマンとハ ・ポーイズ、おまけにハ ・ジェネレーション″ 0 0 ツにも、 の作家たちの悲劇がそこにあ クリーデンス・クリアウォーター・リヴ るのです。 アイヴァルに、 ョ 1 ジ・・・マーティンの『アーマゲ けれど、とディモットはつづけます。六 〇年代には民主的な文化の崩芽がかいま見ドン・ラグ』 The とミ g 。きで失われた無垢と、まばゆく輝く夢に、 えたはずだ、それを樶として作家は前進しす。ミステリとも、ホラーとも、ファンタ そして、とりわけパリスに、 ・ミ 1 一ージッ なければならない、というのです。いずれジイとも読める作品ではあるのですが、や アイ・ヒア・ザ ルッキング・アット・ユ きみを見ていると、音楽が聞こえてく にせよ、われわれはみな、六〇年代によっはりこれも六〇年代を体験した世代の苦悩 からの救済を意図した、八〇年代におけるる」という献辞を見てもわかるように、 て傷をうけているのだ、と評者はしめくく れは六〇年代のロックと今日を描いた作品 文学の試みとも読めるのです。 っています。 です。全部で二十八ある各章のはじめには 冒頭にあげた『再会の時』のように、私「ビートルズに、 「悲しき天使」 ( メリー・ホプキン ) 、「決 ェア。フレーン、ス。フ 1 ンフル、デッド 的ヴィジョンをメディアという客体に形に 、ー物よを 。第電麌 : 琳 8 :
いたことを思えば、ここ数年の日本大 まず一つは、他者〈の共感の衰退た。た我々「北側」の豊かな ( その質はここでは 会が、半ば″大会。フと化した一種の興 とえば冒頭にあげた第三世界の債務問題と論じない ) 消費社会が成り立 0 ている。 飢え。それらの問題が万一日本と全く関係 ( この消費という言葉こそ八〇年代日本の業ファンがシ = ー的な企画を見せ、残りの キーワードだろう。界においても。た参加者は見せられるだけ、という消費的な なく存在していたとしても、何千万という 構造になっていることは象徴的だ。六〇年 人間が今この瞬間も飢餓の果てに 代はじめは、国内の構造にいかに問題があ 死につつあること、債務支払いの っても、ともかく経済規模自体は、日本と ための政府の超緊縮政策のもと いう国の身の丈にあっていた、つまり、他 で、国民の半数以上が失業し、 国から利益を吸い上げるという民族的犯罪 ( メキシコ ) うまくいっても、麻 は犯していなかった、という小田実の言葉 薬工場くらいしか就職先がない を思い出す。それ以後の日本は、身の丈を ( ポリビア ) 状況においやられて はるかに超える消費大国へと転落してきた いるといったことに、日本人の一 わけだ。ファンダムの変質もこれに対応し 体何 % が心を動かされているか。 ているかのように見える。そんな中で、今 ところが、これらの問題は日本と 回のエゾコンⅡが、ファンの対話と交流の 関係ないどころか。現実には、わ 場をたつぶり保障する、いわば生産的な大 が国は、主要食糧の栽培から、金 会として企画されたことは画期的であり、 のための輸出作物の生産へと、第 これが来年以降のガタコン、ダイコンに 三世界の農業構造をかえさせて、 も基本的に受け継がれていくことを願って 現在の飢えの原因を作った「西側 いる ) 同盟の一員」であり、第三世界の 他者への共感といったものが、 支配層に無理に金を貸して、今度 ン・アズ・ナン・ハーワン症候群″の中で、 はその国民の犠牲のうえに、サラ ファンの心からも消えていったのだろ 考金よろしく、まさに暴力的なとり うか。実際、デーモン・ナイトの『黄金 たてを続けて、金利という甘い汁 とえば六〇年代から七〇年代はじめのファ律』や、キリル・フルイチョーフの『苦し を吸い続けている、世界金融の中 ンダムが、ふざけたり、真剣になったりしみをわかちあえ』の世界が、数の上では大 心の一つなのだ。 てワイワイガャガヤの中で、ともかくも何量の非共感型戦争アニメに圧倒され、前者 9 そして、こういった南北構造の中で、 かを生み出し、あるいは生み出そうとしては若いファンの頭の中に住みつくスペース 「南側」の人々の死と血の犠牲のうえに、
た「現実」。一九八四年、今やこの「現実」 「そうだ。世界はもう、狂ってしまってい困こそが、状況をさらに破局へ押しやる原 こそたぶんが格闘しなければならない るのだ。ゲル = カーーあの本がなぜ、あん因であるとするなら、にとって、それ 8 最も大きなテーマになっているのではない なに彼の心をとらえたのか、いまとなってこそがテーマであるともいえる。そういえ はかんたんなことだ。 ・カ - ば、環境破壊の行き着く先を描いたジャッ 我々は、この状況に対する側の回答ある晴れた日、もうとっくに戦場のまっク・ステルンべール『五月革命』も、破 の一つとして、『ゲルニカ 1984 年』ただ中にいながら、目をそむけ、現実を見減の責任を、天変地異でも偶発戦争でも宇 ( 槧本薫 ) をもっている。しかし、これはまいとし、戦争などはたとえはじまってい 宙人の侵略でもなく、人々の想像力の欠如 「」であろうか。少なくとも、キャンても海の向こうの出来事にすぎないと、自に帰している。ステルンペールも、オーウ ベルに従えば、の本質は、「現実を未分でもあやぶみつつ信じようとしていた人工ル同様、タイトルの年代に大した意味を 来にエクストラボレート」することであびと。平和など空の下のどこにもないのもたせてはおらず、単に六八年の。 ( リ五月 る。しかし『ゲルニカ 19 8 4 年』にエク に、平和をよそお、 しいつわりの生のよろ革命をひっくり返しただけだろう。しか ストラボレーションはない。ただひたすらこびとっくられた活気、見せかけの日常をし、完全な終末が近づきつつある、という 全世界で続けられる悲惨な戦争と、にもかあたかも唯一堅牢にしてゆるがぬ大地と信予感は八〇年代半ばの今、確実に広がりつ かわらずそれら現実の戦争と、さらには迫じて、夜のお茶を考え、肉を手に入れ、つつある。ついでだからもう一つ、「一九八 り来る核戦争から目をそらして、幻想のぎの日曜の睛れ着をぬい、来年の作付けの七年の南北戦争」という副題のついた近未 「平和」の中に生きる現代日本人の精神状計画をたて、婚約者と愛を語りあい、遠く来小説『大変動』もとりあげてみよう。著 況を、これでもかこれでもか、と書きつづでおこっている戦争をうれえ ( 中略 ) 者はウィリアム・クラーク。世界銀行の前 っているだけ、ともいえるのだ。しかし、 根拠のない自信。そうでなくては困るか 副総裁で、もちろん作家ではない。 だからこそこの作品は、そしてそれがらそうあるだろう、と考えるその強靱な精七〇年代に無理な高度成長政策をとった 専門誌に掲載されたことは、象徴的な意味神力。それこそはゲルニカの人びと、あの第三世界諸国は先進諸国の政府、民間銀行 をもつ。即ち、今や我々地球人には、エク朝までのゲルニカのものだった」 などから巨額の金を借りた。しかし二度に AJ い ) っ ストラボレートすべき未来がない、 わたる石油ショックを引き金にした世界不 ことなのだ。核と環境汚染、先進国の管理人々の想像力は、米ソ合わせて二万発の況のため、市場は縮小するばかりで、作っ 社会化と、後進国の構造的飢えーーーそれら核弾頭がさく裂したらどうなるかといった たものの買い手もない。残ったのは総額八 はもはやエクストラボレ 1 ションのテーマ方向には向かわず、この一触即発の核状況千億ドルという天文学的な数字の債務。も とさえなりえないレベルに つまり″終にありながら、平気で三十五年の住宅ロー ちろん第三世界諸国側だけでなく、この借 点″に近づいている。 ン契約を結ぶという「強靱な精神力」とし金にあたっては西側先進国の金融資本も、 て機能している。そして、この想像力の貧巨額の利子を吸い上げるため、金融の押し
トリツ。フ日自殺をしてしまう、という物語ないということが、今日のアメリカの苦悩ック再会コンサートなどが催されたのです が、その六〇年代がよみがえってしまうこ です。彼の友人だった主人公は、新しい時を象徴しています。マーティンは「 : : : た 代のはじまりに感謝しながらも、むかしのた一日の : : : 」の頃からたち直り、小説のとへの恐怖を描いたものです。この六〇年 アンピヴァレンツ 歌が失われてしまったことをたたひとつの価値も、描くべき対象をも見いだしたかの代への相反する感情は、はたして本書のハ ・エンドで真の救済を見いたしてい 心残りとする、というまさにティモットのようです。ス。ヒンラッドやディレイニ 1 が 指摘する七〇年代的な、受けみの小説では試みた、ロック的文体も、ここではより完るのでしようか ? 六〇年代は激動の時代でした。そして、 あったのですが、マーティンの真情のあふ成度を高めているようです。架空のパンド れる一種、転回点を形づくった佳作でした。の架空の曲も、いきいきと音をともなって時代が動いているとき、文明が、社会が変 ペ 1 ジからひびいてくるようです。 化の渦中にあることを作家が認識している このフォーク歌手の死んた恋人の名がサ とき、変革の文学としてのが登場して ンディなのです。ほかにも、この きます。一九七〇年代の前半までは、この 『アーマゲドン・ラグ』には、ナ ン動いている時代への意識を多くの作家が共 ズグルのヒット曲として「ダイイ 一有していました。けれど、社会が鎮静化し、 ング・オヴ・ザ・ライト」 Dying マ 権力のしめつけがきびしくなるにつれ、時 of the Light という名前がでて 代は変わりはしないのだというべシミズム きますが、これはマ 1 ティンの処 が界をも支配するようになりました。 女長篇 TJ のタイトルでもあるの みずからのカで世界を変えようとした世代 です。また、この処女長篇のオリ ジ 一は、科学技術のカで世界が変わる姿を描く ジナル・タイトルは『祭りのあ ジにとびつき、 ()0 の読者はふえまし と』メト、ミ・ the 、、ぎミというも た。けれど作家の力はどんどん弱まってき のでした。さまざまな形で六〇年 たのです。 代からの挫折、七〇年代の喪失感 マーティンにはやはり「追憶のメロデ マ 1 ティンは本書で、六〇年代という過 を描きつづけてきたマーティンにとって、 この新作が大きな意味をもっていたことイ」 "Remembering Me10dY" ( 一九八二 ) 去を清算しようとしています。そして、これ が、よくうかがえます。この小説の結末という短篇があります。すでに死んでいるは七〇年代の作家がすべて結着をつけなけ ・エンドでなけ六〇年代の仲間が、当時の友人たちの家をればならない問題なのでしよう。本書をハ ・、、私的な形でのハツ。ヒー ・エンドでしめくくったマーティン ればならなかったというのは、むしろ当然くり返し訪ねてくるというホラー作品で、 本書とかなり共通する部分の多い作品でしに、あの健全なアメリカを書かせてき のことだったのです。 プリング・・ハック・ザ・シ こうしたとはむしろ対極的な位置に た。一九七〇年代の後半、″六〇年代をもた伝統的なオプテイミズムと、変革への信 グスティーズ ある作品を、作家が書かなければならういちど″という運動があり、ウッドスト頼、決意はよみがえっているのでしようか。
ということか : ・ ( ネティの鍵 ) : : : その言葉が思い出された。 その文字のひとつを ″門″ではないかと空想してみただけだ。 ネティ : : : 冥界の番人 : : : その番人が持っ鍵 : そして : : : 鍵に相当するかもしれぬ文字を見つけ : : : そして、門 ル】・風の視線が、その″ を中心に、さまよい動いた。 を・ : : ・ ( 馬鹿な 閉ざされた門・ : ・ : それを開く鍵・・ : : 鍵・ : : ・鍵ーー 全ては、文字だ。いや、文字であるかどうかも分からぬ紋様にし ( あった ! ) かすぎぬ。 見つけたーー そして、ルー・風は、それを眺めているたけのはずだ。 ひとつの文字が、目に飛び込んできた。 鍵だ。まさしく、鍵だ。 それが、どうして、こんなところにいるのか レ ( いや、違う ! ) ・風の視線が、その文字をひろい上げた。 幻覚た。夢だ。 そして、門のところへ駆けもどった。 ( そうだ ! 早く、ここから、抜け出さなくては 瞬間 ルー・風は、振り向いた。 またも、門は、開いた。 そこに、厳めしい石造りの門があった。 そして、ルー・風は、思わず、それをくぐった。 そしてーーーその向こうに くぐり抜けた。 巨大な瞳が見えた。顔だ。顔が、門の向こうから、こちらを覗き そこに、世界が拡がっていた。 世界 : ・ : ・見たこともない世界だ : : : 見上げると、空は濃い紫色を込んでいた。 帯びていた。 それは ルー・風だった。 遙か遠くに、高い、先の尖った塔が霞んで見えた。 その覗き込む瞳の持ち主は、まぎれもなく、彼自身だった。 そして、その塔の先端めがけて鋭い雷光が、何度もひらめき落ち ( もどるんだ ! 向こうへ そう思って駆け出そうとした彼の目の前で、門がすさまじい勢い しばらくして、雷鳴が聞こえた。 で閉じた。 が、遠い : : : 遠い、雷鳴だった。 門の鉄の扉が、轟音とともに、閉ざされてしまったのである。 それが、微かに、しかし途切れることなく続いた。 ( 以下次号 ) : ここは : : : どこだろう : : : ) 思って、ルー・風は我に返った。 ( 馬鹿な 彼は、意味も分からぬ文字を眺めていただけだ。 こ 0