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1. SFマガジン 1984年11月号

っている文通相手が欲しいと思っています。 平日六時三十分より 投稿歓迎 どんな方でも結構です。大好き人間な 土曜二時より & 六時三十分より 宛先は本誌てれぽーと係 ( 奥付参照 ) 日曜二時より ら。身近にそういう風な人がいないんです。ア 会場平河町「砂防会館ホール」 ニメならいるんですけど。 掲載分には文庫最新刊一冊進呈 どうかでたまらない人、お手紙下さい。ま料金二千円 ( 全席自由席 ) ってます。 問合せ筒井康隆大一座 ( 265 ) 5 は爆発たあああ 私はを読むようになって、また五カ月で す。本当にいまからという時代になってまあ : 第八回みちのく祭り いりました。私が分野の物を読むようにな ( 兵庫県多可郡黒田庄町船町六七三 杉本典子 ) 「」開催のお知らせ ったのは、新井素子さんの『あたしの中の : ・ 企画がなくとも酒はある ! 恒例みちのく TJ : ・』を読んでからです。それまで、いや、 祭り、今回は盛岡にて <*ÄOOZ Ⅱを開催 小説という言葉を聞いただけではきけを催して いたします。 いた私。それがどうしてこうなったかと申しま 日時五月四、五日 ( 土、日 ) すと 会場「つなぎ旅館」盛岡市繋温泉 時は三月も終りに近づいてきたころ。「四月 参加費八千五百円 ( 一泊二食付 ) になると私も中三。小説ぐらい読まないとね」 第一回イナホコン参加者募集中ー ☆前号でもお知らせしましたが、、ミステ※ただし、高校生以下は七千五百円。 と思いつつ、本屋へかけこみ、手にしたのが、 『あたしの中の : : : 』でした。作者名は知ってリ、映画などなど″おもしろいこと″大好き人☆参加御希望の方は、返信用六十円切手同封の たんですけど、それが処女作とは知らなかっ間のためのコンペンションです。まだ多少余裕上、左記まで。 〒闡岩手県盛岡市西下台町四ー四五栄荘二号 た。手にした私は、そくざに金をはらって帰りがありますので、参加申込みはお早めに。 室青柳方実行委員会 ました。「さてと、少し読んでみようか」と思主催ワセダ・ミステリ・クラ・フ って読んでいくうちにーー。今にいたっていま日時十一月三日 ( 祝 ) ~ 十一月四日 ( 日 ) ー開催のお知らせ す。あの時の感動は忘れられません。 場所東京・本郷館 日時七月十三、十四日 ( 土、日 ) 次の日、またもや本屋へ行って新井さんの本参加費九千八百円 ( 一泊二食付 ) 場所福吉ビーチホテル ( 福岡県糸島郡一一丈町 読みあさりました。それから五カ月間のこづかゲスト ( 順不同敬称略・現在交渉中含む ) いは、全部本代にまわってしまい、私としては矢野徹、光瀬龍、中島梓、大原まり子、水見稜吉井 ) ひじようにびきつっております。中三というの☆詳細は左記へ。六十円切手を貼付した返信用参加費八千円 ( 宿泊費・朝食込み ) に、成績は二〇番もおちました。それでも封筒同封のうえ、お申込み下さい。おりかえし但し、十八歳未満の方の参加は受け付けられ ませんので予め御了承下さい 大好き人間です。 参加案内書をお送りします。 最近読んだのが、新井素子さんの『あなたに 〒練馬区田柄二ー三 八ー三四ホワイトパレゲスト梶尾真治 / 柴野拓美 / 田中芳樹 / とり ・みき / 野田昌宏 / 夢枕獏 ( 敬称略 ) ここにいて欲しい』。うーーよかった。私は新ス田柄一〇五柴尾方ワセダ・ミステリ・ク 井さんの感情表現が好きなんです。かたくるしラブ宛 ※参加申し込みをなされた先着百五十名の方に は特典が付きますのでお楽しみに ! さがないんです。あの、他の人の作品も読みま お申し込みは返信用封筒に六十円切手を貼付 したけど、新井さんほど感動が残るものってあ 第筒井康隆大一座公演のお知らせ の上左記まで。 りません。だんげんします。 「スイート・ホームズ探偵」「人間狩り」 〒福岡市中央区白金一丁目四ー二四今崎荘 そこで。私、本当にのことわかっていま ( 作筒井康隆 / 演出川和孝 ) 一五号松尾方「ー OOZN 実行委員会」事 せん ( すいません ) 。だから、のことを知日時九月二十六 ~ 三十日 円 6

2. SFマガジン 1984年11月号

たりは、いまのこの、理性と義務の板ばさみの状況で、正気な人間ンがはじめて檣頭の見張りに立ってから、まだこれほど晴れた日は よ、つこ 0 / ・カュ / ならどうするかを論じ合った。そんな議論の最中どこかで、ファロ 船のはるか上方、人間界から完全に抜け出て、海のうねりにつれ ンは日ごろの冷静を保つ能力をつい失うことがあった。 ファロンは檣頭当番を一種の逃避と考えるようになった。文字どてマストのてつべんで揺れ、海はまた彼のなめらかな呼吸に合わせ おりにも比喩的にも、自分がビ】クオド号の甲板から、いっときでてうごき、そんななかでファロンは恐怖を忘れた。自分自身をも忘 も抜きん出ることができると気づいたのは、その檣頭でだった。無れてしまうようだった。自分はだれなのだろう。商品仲買商社のア カ茫然の日々のあと、はじめて自分の意志を通したのもそこだっナリスト、パトリック・ファロン。いやいや、あれはなにかの幻影 とこか彼の内部で創造され、夢の た。彼はかりにも自分が、運よく白い鯨を発見しても、ぜったいに だったのだ。きっとあの世界は、。 しちどな なかで彼に押しつけられていたのだ。自分はピークオド号の水夫な 知らせてやるものかと思った。だが、ほかの小さな鯨は、、 らず大声で知らせた。鯨を見たときの胸の高鳴りは、偽りではなかのだ。なにかの本に出てくるような気もするが、しかしもう何年も っこ 0 本なんて読んだことがない。 もうひとつの世界の記憶は、いぜん消えなかった。はじめて女を 船は日本の東南、太平洋の穏やかな海上を進んでいた。最前レイ ー・トランス、彼女 チェル号に出会い、もたらされたニュ】スに興奮が乗組員のあいだ抱いたときの記憶ものこっている。相手はサリ ・テクに遭遇して仕止め損ね、ポート数艘の両親がミネソタにスキーに出かけて不在のとき、居間での出来事 を走った。モービイ。ィッ トが手のなかで割れ、掌を切ったこと と船長の息子を失ったという。ファロンの記憶が突きうごかされだった。野球をしていてパ。 た。小説の最後で、他の全員が死んだあと、イシメールを救いあも覚えている。掌のまんなかの傷跡は否定できない。 げるのがレイチェル号だった。 だれが否定できよう。アホウドリが一羽、頭上から舞いおりて、 ィートのところを滑空して トビウオをつかまえようと水上二、三フ デイライト号に出会ったのは、その甲板で水葬礼がおこなわれて ナたが、うまくいかなくて身をひるがえし、ゆっくりはばこい いる最中だった。メインマストの監視所からファロンは、ニイハ。フ とむこうの船長が大声で、また白い鯨をとらえ損なった話をするのて上昇して行った。その無意識のダンスには、リズムがあった。き をきいた。ハンモックに縫い込まれた死者が、海中に投じられるのようまでファロンは、それほど美しいものを見たことがなかった。 が見えた。 彼は腰をかこな丸枠の外に、両手をたらした。背中にじりじり焼け 雲のない、青い色濃い日だった。海は長いしずかなうねりを見せつく太陽と、自分をささえる鉄の輪を感じた。 これは現実の世界だ。彼はそれを信じた。それとは反する記億も ていた。ビークオド号は軟風をえて軽快に走り、デイライト号はや 信じた。おれ見る、おまえ見る、あいつ見る。自分の頭と心は、ふ がて後方に消え去った。大気は世界の果てまで爽やかに澄み渡り、 たつの相反するものを受け入れることができるのだろうか。する そのあたりでもっと濃い海に溶け込んでいるように見えた。ファロ 242

3. SFマガジン 1984年11月号

間なく院長がくり返した。「冷静に、みなさん。冷静に。なにも危うにして壁から十字架をむしり取った。 ! 」途端に院長が叱りつけた。そんな鋭い院長の声を、 険はありません」そして、誰かれなしに穏やかに名前で呼びかけ「シビード た。やがて、ふとい丸太が大扉に差し込まれる雷のような響き、人私は聞いたこともなかった。「それを戻しなさい。さもないと私は びとがいっせいに息を飲むと、事態はさらに難しくなった。そこはあなたをぶちますよ、さあ早く ! 」 もう階段のすぐそばだった。私は院長が奇妙な異国の言葉で、なに ・ハイキングの手にかかって殺される危険もかえりみないほど必死 になっていた若い女が、院長のわずか数発の平手打ちを恐れて引き か謝罪のようなことを言う声をきいた。たぶん、なにか「手間どっ て済みません」とでもいうような意味のことだ。そして、一時代かさがったとは、なんと奇妙なことだろう ? しかし、人間とはそう ・シビードは十字架を元の場所に戻し ( すぐ とも思われるような時が過ぎて、ようやく階段の人ごみにわずかなしたものだ。シスター 隙ができた頃、私は院長が群衆の扱いにくさという言葉で、なにをにソールフィンがそれを取った ) 、しくしく泣きながら修道女たち 言おうとしていたかを理解したのだ。それは人ごみにもまれた或るのなかにまぎれこんだ。「あの男は、わが主なる神の聖性を奪いま 男が、思わず武器を振りまわしたのだったかもしれない。さして遠した ! 」 くではなかった。あるいはもっと単純に、その男は誰かにつまずい 「ばかなことを ! 」院長が叱りつけた。「聖性を与えるのも奪うの て転倒し、頭を割ったのだったかもしれない。我々は彩色された木も、神のみのなされること、人間にそんな力はありません。あれは ただの金属のかけらです」 彫りの大きな十字架像と、もっと小さな真珠と金の十字架像のある 広間に入った。そこには金糸のぬいとりが施された緋色の壁布もあ ソールヴァルトが鋭くソールフィンに声をかけた。若者がゆっく って、私はよくあれで泥棒ごっこをしたものだ。真の泥棒がどんな と十字架を掛具に戻した。そのふてくされた顔は、どんな言葉よ 、恐ろしげな男たちの眼は、 ものかを知る以前に。それら背の高い りも雄弁に語っていた。どうせ、俺の欲しいものを俺にくれるやっ 私がどこの村にもあるのたろうと空想していた品々を見ると、物欲はいないのさ。その後は大広間でも院長の書斎でも、また貯蔵庫で にぎらぎらと輝いた。シスターの大多数がまだ大広間にとどまっても外の調理場でも、べつに取りたてて不具合なことは起きなかっ いたが、ノルド人が入っていくと人びとはみな壁ぎわに退ったのた。ノルド人たちは黙りこくって剣のつかから手を離さなかった で、室内はさほど混みあった感じもなかった。若い女たちが全員一 が、院長は冷静に二つの言葉を使いわけて喋りつづけた。我々に向 隅に身を寄せあって、怖そうにしていたーーまるで恐怖がその一隅 かって彼女はくり返した。「ね ? これで大丈夫なのですよ、でも から臭いたってくるように感じられたーーーやがて、例の若いソール みんな静かにしていなくてはなりません。神が私たちをお守りくだ フィンが黄金と真珠の小さな十字架に歩みよると、シスター ・シビさいます」その表情は沈着で、生き生きと明るかった。私は彼女が ・シビードとそ ードが甲高い悲鳴のような声で「それはわれらのキリストの肉体な聖女であると信じた。このときまで彼女はシスター のですよ ! 」と叫び、相手に手を伸すいとまも与えず、飛びつくよのほかの私たちを無事に救っていたのだ。 5 ′ 0

4. SFマガジン 1984年11月号

森へ入っていった。雨はしだいに烈しさを加え、足もとの地面はし だろうと思っていたのだが、きたならしい泥は自然に下に落ちて、 だいにぬかるみに変わっていった。村が見えない所まで来ると、すかれらの清潔な衣裳にはまったくなすり付かなかった。不思議な人 ぐにふたりのノルド人は遅れはじめたが、ソールヴァルトはそれにびとはまったく無言で、院長もなんの言葉も発しなかったーー・・そし 気づかない様子だった。私が振りかえってみると、一方の男はまるて、そのとき私は彼女がなんであるにせよ、まったく悪魔などでは で雁のように片足をあげてぬかるみに立ちつくし、もう一方の男もなかったのだと気づいたのだーーしかし、私にはまるで心のなかに 口をぼかんとあけて上を向いてつっ立っていた。雨がそのロに降り声が響いてくるように、かれらがお互い同志なにか話しているのが こんでいた。私たちは歩きつづけた。地面が我々の靴に吸いっき、感じられた。と言っても、どうやったらそんなことができるものか 全員がもうびしょ濡れだった。ソールヴァルトの長い髪がしつかり私にはわからないし、またかれらの話している内容も理解できなか と顔に張りつき、悪魔の古びた茶色のマントがからだにまとわり付った。奇妙なのは、もっと近くまで行ってみると、かれらが普通の いていた。やがて突然に悪魔の息づかいが荒くなり、叫び声をあげ人びとと違って、地面には立っていなかったことた。それよりもも て手を脇腹にあてた。それからマントが地面に落ち、悪魔はよろよ っと高い、輝きの内部にかれらは立っていて、それらの人々の白い ろと前方の濡れた樹々の間に入っていった。むせび泣くのではな ロー。フは我々のものとはまったく似ていなかった。と言うのは、ロ 、荒い息づかいの音をさせて。そのとき私は気づいた。どしゃぶ ープはしつかりからだにまとわり付いていて、足の形がそのまま足 りの雨を通して、前方の落葉した樹々の間でなにかが輝いているののあわせ目の所まで、女の場合にもそっくり見えていたのだ。しか が見えた。我々が近づいていくと、その輝きはいよいよはっきりとも、なかの数人は我々に似ていたが、大部分のものはもっと色が里 見えてきた。それは夜のかがり火のように燃えているものではなか かった。一部のものなど煤で汚れたみたいに真黒だったーー・後に知 った。まるで雲間から射す陽光のようにほのぼのと一様な明るさ、 ったことだが、この世界の遠い果てには、そのような人びとも住ん 年の初めにしばしばあるような、快くはあるが烈しくはない陽光にでいる、それがかれらの自然の色なのだーー・そしてまた、そこには 似た輝きだった。 院長の語っていた奇妙な目蓋をしたものもいたものだーーしかし、 そして、それから不意にその輝きのなかに人間があらわれた。男なによりも奇妙であった事柄を、いま私は諸君に語ろうとは思わな たちや女たち、みんな白い服をまとい、そしてかれらが我々に向か い。かれら全員を院長が抱きしめ、そして接吻すると、全員が涙を って腕をさし伸べ、悪魔が大声で叫び泣きながらかれらに駈け寄っ流した。すると彼女は振り返って、我々を見おろした。ソールヴァ たのだが、樹々の枝にまったく注意を払わなかったので、顔やからルトはまるでロー。フで縛られてでもいるように、しゃちほこ張って だに烈しく枝がぶつかった。幾度か悪魔は倒れたが、またすぐに立そこに立っていた。そして、私はと言えば恐怖心などすっかり失く ちあがった。そして、悪魔が向うへ行きつくと不思議な人びとは悪し、ただただ純粋な畏敬の念につつまれてこっそり忍び寄っていた 魔を抱きしめ、私はきたないガウンの泥でかれらの白い服が汚れるのだ。と言うのは、それらの人びとにはそれほどの歓ばしさが、ち

5. SFマガジン 1984年11月号

日ⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅧⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅧⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ も誰も聞きいれてくれないというテーマで ある。例としてはフレドリック・ブラウン の「さあ、気ちがいになりなさい」 "Come and Go Mad" ( 1949 ) があげられる。そ こでは巨大な知性をもつ ( アリの ) 集合精 神によって地球が支配されていることが判 明する。真実を暴いた主人公は容赦なく狂 気へと追いやられる。アメージング・スト ーリーズ誌は 1945 年から 47 年にかけ、ある 小説シリーズをのせることによって少なか らずその部数を伸ばした。リチャード・ S ・シェイヴァーによるそのシリーズとは、 事実に基づいていると称して、われわれが いかに地下の悪いロポットによって完全操 作されているかを明らかにしたものであ る。 シェイヴァー流の陰謀説は擬似科学の宣 伝者たちのあいだでは非常にポビュラー で、彼らの多くは科学者のあいだに自分た ちの発見をもみ消す陰謀があると信じてい る。それはマーティン・ガードナーの の〃 e Sc 化 ( 1952 ; 國異イ 5 れ d 記 c / い切 / ん 4 襯 Sc れ c 1957 ) や、後のジョン・スラデックの T んに cry 4 ( 1973 ) によって証明さ れている。スラデックの著作には擬似科学 そのものとパラノイアとのあいだの関連に ついて多くの興味深い観察がある。もっと ポビュラーな擬似科学教団の中には、われ われは秘かに空飛ぶ円盤によって監視され ていると信じるグループや、人間は異星人 の干渉の結果進歩したという、 ェーリヒ フォン・デニケンの信念に追従するグルー フ。もある。 誇大妄想と被害妄想をミックスした魅惑 的な SF のサフ・ジャンルには迫害されるス ーバーマンものがあり、特に A ・ E ・ヴァ ン・ヴォートと関わりが深い。彼の全作品 中に含まれる体系的な陰謀説は、おそらく 他のどんな SF 作家のそれよりも大量だろ VI Ⅱ う。著名な例として『スラン』 S れ ( 1940 ; 1946 ; 國 1951 ) そして『非 A の世界』 The 幵 % r 颪 ( 1945 ; 國 1948 ; 改 1970 ; 圜 The Ⅳの・研″ II - み ) があげられる。 後にヴァン・ヴォートは L ・ロン・ハバー ドのダイアネティックス運動に参加した が、その魅力の一端は誇大妄想と被害妄想 のミックスにある。 ド自身はパルフ。 S F の中でもっとも迫力のあるパラノイア 小説の一篇おどの・ ( 1940 ; 1957 ; 團厖 4 だ & 73 , て″の・に Sky の表題作の一 っとして 1951 ) を書いている。この小説は パラノイア的であり、同時にパラノイアを 扱ったものでもある。これは二通りに読む ことができる。精神病の殺人者の症例報告 と見てもよいし、また悪魔のあやつりの証 明ともとれる。どちらにしても、典型的なパ ルフ。雑誌文体の見かけの陳腐さを通して、 目を見はるほど恐ろしい幻想の連続が描か れている。 "Typewriter in the Sky" ( 194 のもまたパラノイア的幻想を扱った ものだが、こちらは楽しさに重点がおかれ ている。 もうーっの主要なパラノイア・テーマの 変型として、形を変えたりそれ自身寄生体 として人間に取り憑いたりする異星人の脅 威を描く小説がある。どちらにせよ、その 異星人がわれわれそっくりに見えるのが恐 怖である。これはパラノイアのまさに核心 から来たイメージである。友人、恋人、両親 さえも不可解な他人、憎しみに満ちた危険 人物に見え、殺さなければならないという 発想である。現実ではこのような幻想はし ばしば殺人を招くが、 SF においては気の 抜けるほどありきたりである。最も知られ た初期の例はジョン・ W ・キャンベル・ジ ュニアの「影が行く」 "Who Goes There ? " ( 1938 ) だが、この種の小説の全盛期は 50 年代である。これはいわゆる冷戦時代で、 アメリカ人は、共産主義者とホモセクシャ 264

6. SFマガジン 1984年11月号

なんとしても帰らなくては。眠れ、眠れ、このばか、と彼は自分のあいだを行き来し、端までくるとちょっと立ちどまっては、キッ を叱りつけた。笑いがこらえられなかった。胸にこみあけてきて、 と鋭い目をあげた。ファロンはその姿から目がはなせなかった。小 ナしふ老けていた。頭髪とひげはま ぎゅっとひきむすんだ口を割って出た。ファロンの笑いかたは、お説の記憶から想像したよりは、。こ : かしくてたまらぬ人よりは、息をあえがせている人の声だった。大だ黒々として、そのなかを白い線が一本走っているのは古い傷跡 声で笑い、喉の奥で笑い、ひきつれをしすめようとしては、あわてで、顔のいちばん下までつづいていた。だが、顔そのものは老いの やつれが著しく、目はしわのなかに深くく・ほんでいる。ファロンは て息を吸い込んだ。目に涙がたまり、まるでどこかの病棟でべッド きん に縛りつけられたみたいに、首を左右にふりたてた。もそもそう ) 」金取引場にいたタイグのことを思いだした。かっては金取引場きっ きだしてののしる男もいたが、最後のページで全員死んでしまう作ての切れ者だったが、いまは燃えっき人間と呼ばれていた。タイグ の目には、間違いなく自分を、自分だけを待ち受けている悲劇を、 品の一登場人物、ファロンは、とめどのない笑いに身をふるわせ、 わめきたてた。もう眠れないことはわかっていた。 どこか期待しているようなうつろな表情があったが、エイ ( ・フの目 がそれだった。だがファロンが、エイハ・フもあのタイグ同様、もは ゃなにもない空つぼの人間なのにちがいないと思い込んたあと、そ のエイハ・フが、歩く道筋の端まで行って立ちどまり、コンパスをの 不眠の夜の結果である病的に冴えた目で、翌朝ファロンはビークそいたり、マストに釘づけにされた金貨に見入るとき、まるで雷光 オド号の甲板を見た。まだすこしショックはのこっているが、頭にに打たれたように、なにかしら身をすくませる熱情にとらえられ しつかり手綱をかけておけば、疲労が思考をさまたげ、再度噴きだて、その姿が硬直するのだった。まるで太陽の全エネルギーを集東 そうと待ちかまえている苦悩を感じることもなさそうたった。塩酸する宇宙レンズみたいなものの焦点に立ったかのように、つぎの瞬 間ばっと燃えあがるのではないかと思われた。 入りのフラスコをはこぶ人のように、彼は自分の知識をそっと持ち はこんた。 ェイハプは金貨をひたとみつめてひとりごちた。その声は会話調 いずれは眠りが、そしておそらく眠りとともに脱出の時が、おとで、ファロンが想像していたよりかんだかかった。そんな彼を驚異 ずれるとわかっているから、彼は科学者の冷静さで観察した。前日と不安の面持ちでながめるのは、ファロンだけではなかった。 「山頂とか塔とか、すべて雄大で高峻なものには、きっと何か自我 の引き写しのような、明るく晴れ渡った日だった。船はきれいにな 三つの嶺々は悪魔の って、いつでもその仕事にとりかかれるようになっていた。帆もす主義なところがある。これを見るがよい いかめ べてととのい、あとは軽風を利用するばかりで、檣頭には見張りがように傲っておるじゃないか。厳しい塔、あれはエイ ( ・フた。噴火 ついていた。男たちは甲板をぶらついた。後甲板ではエイ ( ・フが、山、あれはエイ ( ブた。勇気凜々、威しのきかぬ勝利者然とした雄 義足の人とも思えぬしつかりした足どりで、羅針箱とメインマスト鶏、あいつもやはりエイハプだ。みなエイハプだ。そしてこの円い 5 きん おご

7. SFマガジン 1984年11月号

このアイデアはレイモンド・ジョーンズの れ 4 なれ ce ( 1944 ; 1951 圜盟 4 れ T30 Ⅳ 0 イのでストレートに使われ、またフ リツツ・ライバーが D お〃れ Ti ・ Three ( 1945 ; 1957 ) で歴史的な I F テー マと結合させて使ったが、より深く掘り下 げられたのは第二次大戦後のことである。 クリフォード・ D ・シマックは癶 g 4 れ d S ″れ ( 1953 ) の中で、人間が いないため植民化や開発が可能な一連の 地球を考え、また「埃まみれのゼフ・ラ」 "Dusty Zebra" ( 19 ) や「大きな前庭」 "The Big Front Yard" ( 1958 ) におい てパラレル・ワールド間の貿易を空想し た。アラン・ E ・ナースの「虎の尾をつか んだら」 "Tiger by the Tail ” ( 1951 ) も 同趣向の作品である 0 / くラレノレ・ワールド を諷刺を目的として使ったのはアーチボー ルド・マーシャルの U 第豆 do 4 ( 1915 ) だが、この手法を発展させたものにロイド ビッグルの "Esidarap Ot Pirt Dnuor ” ( 1960 ; "Round Trip to Esidarap ” ) がある。しかし L ・スフ。レイグ・ディ・キ ャンフ。は、それより早く 1940 年代のアンノ ウン・ワールズ誌に書いた多くのファンタ ジイでこの手法をユーモラスに利用してい た。ゴードン・ R ・ディクスンの D 4 豆 0 れ ア or ( 1955 、 "PerfectIy Adjusted" と して ; 匝 1961 ) には、たがいに相手が見え ない二つの社会が同時存在する都市を描い ている。 このテーマのよくある変型は、まったく 似通った世界一一すなわち重大な差異のな い I F の世界一一が、平行して多数存在し ているというアイデアである。これがスト レートに扱われているのはジャック・トマ スの "Next Door ” ( 1952 ) やロ / く一ト ドナルド・ロックの "Next Door, Next World ” ( 1961 ) だが、ロー ト・シルヴ ( 1974 ) において グの "Trips ” 267 も、副次テーマとして使われているこの作 品では、多元宇宙旅行者が、似ていたり似 ていなかったりする世界をあてもなくさま よう。キース・ローマーの長篇第一作『多 元宇宙の帝国』Ⅳ 0 み 1 襯観〃 ( 1962 ) では、無限連続するパラレル・ワ ールドが隣り合わせの世界ではごくささい な歴史的違いしかないが、、、距離″が広が ると大きな違いが生まれる。同じようなア イデアはリチャード・ C ・メレディスの こ the Na " 03 Passage ( 1973 ) とその 続篇である 0 お ro の・ , No d ( 197 ので使われている。 しかしパラレル・ワールドのテーマに大 きな革新がもたらされたのは、多かれ少な かれここ 10 年である。フ・ライアン・オール ディスの『世界 A の報告書』な on Pi ℃ 64 房〃り ( 1968 ) は、 / くラレノレ・ワ ールドの住人たちがお互いを熱心に観察し ているという超現実主義小説である。ラリ ーヴンの「時は分かれて果てもな 本源的な願望充足に、一方では本源的な恐 おり、それらパターンは、一方では人間の 依然として伝統的なパターンと結びついて は、ファンタジイと同様 S F においても、 しかし、このテーマを扱った小説の主流 引き離す過程を語る。 の世界を襲った、、宇宙的災害″が、両者を 界が同じ場所に存在する有様を描き、一つ 語を使って、異なる物質から成る二つの世 & の・ 5 ( 197 のは下位原子物理学の特殊用 る。ポフ・・ショウの幵ケ召んツ、 ーションとエネルギー交換を取り扱ってい かけ離れた平行世界のあいだのコミ ーマがもっとも細密に叙述された作品で、 T んの〃ん ( 1972 ) は、現在までこのテ ック・アジモフの『神々自身』 The Gods 心理学的な意味あいを扱っている。アイザ は、おそるおそるではあるが、多元宇宙の く」 " A11 the Myriad Ways" ( 1969 )

8. SFマガジン 1984年11月号

ンを劇的なものにしている。ストレートな 生物学的アナロジーは実際のところ小説の アイデアとしてはきわめて稀だが、フィリ ップ・ホセ・ファーマーの古典『恋人た ち』 The 0 膨 ( 1952 ; 1961 ) では、 "Discord ⅲ ScarIet ”で使われたジガノく チのアナロジーが効果を高めるため再使用 されている。こでは、幼虫が人間そっ くりの母親の体を食べ尽くす。ファーマ ーはまた「キャプテンの娘」 "Strange Compulsion ” ( 1953 ; "The Captain's Daughter ” ) で革新的な寄生の小説をもの 寄生というアイデアが平凡な状況から擬 似超自然なものにまで高まっていくという SF の中でよくある過程は、生物学テーマ の常習的な処理方法と歩調を合わせている ( 生物学 ) 。他の生命体 ( 異星人 ) に 関わる S F の歴史の一般的趨勢に対応し て、このテーマを取りあげる戦後の作品に は、重点のおき方に劇的な変化があらわれ た。すなわち、人類 / 異星人関係が、寄生 よりも共生と結びつけて描かれるようにな ったのである。 共生のコンセゾトは二、三のバルプ小説 で、異星の生命系を描く場合にストレート に使われている。著名な例がエリック・フ ランク・ラッセルの「共生」 "Symbiotica ” ( 1943 ) であり、この語が皮肉な意味に使 われた例には、生物兵器による防衛戦争を 描いたウイル・ F ・ジェンキンズ ( マレ イ・ラインスター ) の短篇 "Symbiosis ” ( 1947 ) がある。しかしながら、以来一般 化したこのアイデアの用例は、人類 / 異星 人関係に、吸血や悪魔憑きとは大いに異な る擬似超自然的な性格を求めたもので、中 には先行する暗喩システムに正面切ったイ デオロギー批判を加えた作品も多い。その もっとも明白な例はテッド・ホワイトの By 4 れ 0 ぉ ed ( 197 のだろう。 インラインの『人形つかい』のイデオロギ ー的返礼として書かれたこの作品は、同書 が暗にほのめかす外国人恐怖症に異議を唱 えている。これと似た小説、ジョージ・ R R ・マーティンの「ライアへの讃歌」 "A Song for Lya" ( 1974 ) では、宗教 的なイメージが前面に押しだされている。 共生を取りあげ、宗教性に通じるアイデア を提出した他の作品には、クリフォード・ D ・シマックの『再生の時』襯 and ga 切 ( 1951 ; 圜五立 He D たの、ポゾ ・ショウの 24Z4 化 0 工 E ″ ( 1969 ) が ある。精神的共生、つまり人間の脳を人と 異星人が分けあうさまを描いた作品では、 宗教的イメージにこそ欠けるが、作者の姿 勢は同じように肯定的である。例としてハ ル・クレメントの『 20 億の針』イ ( 1950 ; 0 Spac の、フ・ライ アン・スティフ・ルフォードの『ハルシオン ・ローレライ』記 00 の r び要 ( 1972 ) に始まる《宇宙飛行士グレンジャーの冒 険》シリーズ、そしてロジャー・ゼラズニ イの『砂のなかの扉』の 00 だ s Sand ( 1976 ) などがある。 この思弁領域は、生物学のアイデアが形 而上学的暗喩として持つ力のおそらくもっ とも明らかな例証であり、またそうした暗 喩による用法が、 S F における生物学的発 想の表現をいかに支配しているかをうかが わせるものでもあるだろう。 パーセク PARSEC 〔 BS 〕 視差 1 秒角 (parallax ・ second) のふっ う使われる短縮形で、イギリスの天文学者 ート・ホール・タウナー ( 1861 ー 193 のが導入した天文学的距離の単位。地 球が半年かかって太陽の一つの側から反対 側へ回るとき、 1 億 8600 万マイルの基線を きっちりと描く。従って夏と冬のあいだで 258

9. SFマガジン 1984年11月号

格子窓からななめにさす光が明るくなった。水の音とキャンヴァス の軋りがきこえ、 ハンモックの揺れはとまらず、周囲の男たちが身 じろぎしはじめた。その夢に似た穏やかさにひたっているうちに、 不意に、自分はいま船に乗っているのだと気づいた。 鐘が一つ、ついで二つ隝った。すでに大半の男は起き出して、ふ っふついいながらハンモックをかたづけていた。 「どうした、ファロン」だれかが大きな声でいった。「起きろ」 目を覚ますと、暗がりと、揺曳感と、大勢の人間の体臭があっ た。頭をもたげて・ヘッドの反対側へ手をのばそうとして、べッドに 2 寝ていないことに気がついた。キャンヴァスの ( ンモックに寝て、 他にたくさんハンモックの吊られた部屋で揺られているのだった。 「キャロル : : こまだ半睡状態でまわりを見まわしてから、これは彼の名はパトリック・ファロン。三十二歳、シカゴの穀物取引所 はっと気づいたら夢だったということになるのだろうと思いながのさる仲買商社に勤める取引員である。毎週火曜の晩は、アスレチ ら、また仰向けに寝た。よく夢のなかで経験する、あの自分自身かック・クラ・フでスカッシをやる。キャロル・・フーカティという女 らの距離感を感じた。だが、部屋はなくならず、汗と潮のにおい、 と暮らしている。 なにやらむっとくる油のにおいは、むしろ現実味をました。上方の前夜、彼は同業者の夫婦がひらいたパ 1 ティに、キャロルと出か われたた一人のがれて汝に告げんとて来たれり ョ・フ記 1 7 7 幻 5

10. SFマガジン 1984年11月号

「なあ、おまえ」 「なぜ」 彼は演奏を中断して妻にたずねた。 「あなたを失う可能性があるからです」 ( い、なんでしようか」 なるほど、もっともな心配だ。 「おまえたちは、何のために生きてるんだ」 「かまわん。できるかできないかだけ、答えてくれ」 「人間に仕えるためです」 「可能です」 「わかった、ありがとう」 「いや、わしのいいたいのは、そういう意味じゃないんだ」 このままでは、地球は何もしないままにおわってしまう。自分に彼は、妻が心配そうな顔で見つめているのに気づいた。 「あの、あなた」 とってもロポットにとっても、本当にそれで良いのだろうか。 「ん、なんだ」 「何を考えてらっしゃいますの」 彼は天井に向かって叫んだ。 「はは、心配しなくてもいいさ。わしだってもうそれほど元気では 「はい、なんでしようか」 ないよ」 「中央の資料センターにつないでくれ」 「良かった」 「かしこまりました」 「それよりも、これからいうことをみんなに伝えてくれないか。そ 彼はトーストをかじりながら返事を待つ。 う、なるべく多くのロポットに」 「こちら資料センターです。なんのご用でしようか」 「はい、わかりました」 彼は手を休めてたずねた。 「線号について教えてほしい」 彼は自分の考えていたことをじっくりと妻に説明した。妻はその どんなことを ? 」 ことばの一つ一つにうなずいていたが、やがて立ち上がって部屋を 「現在、線号はどうなっているか」 出て行った。彼女を見送りながら、再びヴァイオリンをとりあげて 彼は思う。 「解体され、すでに存在しません」 これでいい。 「ならば、もう一台同じ物を作ることはできるか」 大きな命令としては、これが最後のものにな る。その結果を見られないのは、ちょっと残念だが。たぶんこれ で、妖精たちも大人になれるにちがいない。 「どうした」 「その前に、 一つ申し上げねばなりません」 彼は、弓をそっと弦に当てる。流れる曲はマイ・レディ・グリー 「なんだ」 している。 ン・スリーヴス。外にはまだ、雨が降り続、 「仮にそれが可能であっても、われわれは実行しないでしよう」