ラジェンドラ - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1984年11月号
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1. SFマガジン 1984年11月号

「ラジェンドラめ、おれと同じつもりでいるんだぜ、おれの方が上〈単独です。戦闘空域から単機で離脱。強攻戦闘機か、偵察機でし ラジェンドラは機械のくせに よう〉 役たってのに、だいたい、 「ア。フロ、針路を変更しろ」 〈ア。フロは掃除機じゃないですか。お皿の掃除機、お鍋の掃除機、 ーティ会場の掃除機ーー〉 〈まにあわないと思います。気づかれました。ア。フロ、最適回避コ 「二人ともやめろ。まったく、まともなのはおれだけだーーという 】スを指示します〉 自信が揺らぐのだよな。実はおれは異常なのではなかろうかという 〈なんで ? そいつ、なにかおれに・フレゼントをくれるみたいだ。 なにか飛んでくる〉 気がしてくる。みんなおまえたち二人が悪い」 ア。フロはぶいと情報室を出てゆく。しばらくして、ラジェンドラ 「アホか、おまえ。ミサイルだ。餌じゃない。回避しろ」 の腹部から小型が発進。ラテルは情報室のスクリーンで見て〈ミサイルの機動能力が不明なので回避できるかどうかわかりませ いる。翼のない高機動航宙機だが、大気圏内で滑空できるよう、平ん〉ラジェンドラはそっけない。 〈命中した場合の被害予測も不 たい胴体に翼形をもたせてある。キヤノ。ヒはない。ア。フロの乗った 「ラジェンドラ、 O を 9 捕捉、吸引」 O は赤く輝きながら高速降下。 〈せつかく出ていったのにですか。だからやめておけばーー〉 「ラジェンドラ、追跡しろ」 「ラジェンドラ、急げ」 夜の側から昼の側へ向かう。金色の弓のように輝く昼の光が大き〈やってみますよ。少し時間がかかります〉 くなる。 〈大丈夫だ。のんびり飛んでくる〉 「青い惑星だ。海か ? 」 ア・フロの O は一気に二〇〇〇メートル上昇。ミサイルは突然 〈樹海でしよう〉 目標を失い、直進したのち、自爆。その直後、 O はラジェンド 「大自然に包まれている惑星のようだ。ここで人工的な戦闘だなんラの格納庫に強制帰艦させられている。 て信じられないな」 ラジェンドラの腹の中か。おも 〈わっ。いきなり夜になった。 〈ラテル、聞こえるか。もうじき昼の側に出る〉 しろくない〉ア。フロ、ぶつぶつ。〈もう一度出せよ〉 「了解。気をつけろよ、ア。フロ」 ラテルはアプロを無視する。 〈酒の海はなさそうだな〉 「ラジェンドラ、あの戦闘機を調べろ。この世界のことがなにかわ 〈警告〉ラジ = ンドラ、〈ア・フロ、前方より小型高速飛翔体接近かるかもしれん」 中。おそらく戦闘タイプ〉 ラジ = ンドラはア。フロの O が撮った影像をスクリ】ンに映 「一機か ? 」とラテル。 す。 ー 70

2. SFマガジン 1984年11月号

「どこに」 「ア・フロ、対生体爆弾だと ? 」 〈ラジェンドラ〉 「そうともさ」 「ラジェンドラ」ラテルはラジェンドラを呼ぶ。「ア・フロが爆弾を ア。フロは床にレンズ状のトロフィーをよいしよとおき、前足でコ 持ってそっちへ行く」 ッコッとたた。 〈爆弾ですか。そんな反応はキャッチしていません。もし本当な「これを熱してだな、この上で肉を焼くと、無力化される。さあラ ら、基地爆発物処理室へ行って下さい。わたしの方には来ないで下テル、どんどん焼こうぜ」 さい。危ないな〉 「焼いた肉はどうするんだ、ア・フロ」 「対生体爆弾だそうだ」 「きっとうまいにちがいない。肉はやつばり煙を出して焼かなくち ラテルはテー・フルの上の、 ーベキュー用に用意された大皿をかやな。。 ( ーティの、無煙ホット。フレートで焼いた肉なんか、うまく っさらうと、ア。フロを追って廊下にとび出した。ア。フロの姿はな ないもん」 ラテルは基地内緊急移動用フライに乗った。空中をすっとぶス ラテルは皿をコンソールにおき、素早くア。フロの尾をつかんでぶ ケートボード型のフライの上でパランスをとりながら、ラテルはラら下げる。 ジェンドラと交信。 「ラジェンドラ、こいつは生体爆弾じゃないかな、黒猫型をしてい 「ア。フロは」 るが」 〈接近中。ま、わたしに害がない爆弾なら、かまいませんが。いや「わっ、ラテル、放せよ。まちがいはだれにでもあるよ」 な予感がします〉 「なにがまちがいだ。くそ」ラテル、ア。フロを放り出す。「トロフ 「おれもだ。対生体爆弾だ ? アホか。爆弾はア。フロじゃないか」 ーの形がよくない。 フム。なるほど、こいつはジンギスカン鍋を 海賊がそのトロフィー内に爆弾を仕掛けることは十分に考えられ二つ合わせたような格好だものな。ラジ = ンドラ、引き返せ」 た。チーフ・ パスターも承知しているだろう、とラテルは思う。調「その前に焼き肉をーー・・・ラテル、レイガンで撃てよ、トロフィー べたはずだ。ラテルは肉や野菜の盛られた大皿を手にしてア。フロをを。レイガンで熱してーー」 追いかけている自分がばからしいと思ったが、それを投げ出したり「おまえな、おれを共犯にするつもりか」 はしなかった。ポート入口でフライを捨てて、ラジェンドラへの連「もう遅い」 絡シャフトに入り、ラジェンドラ内へ。 〈警告〉ラジェンドラの緊迫した声が二人の間に割り込んできた。 〈緊急発進します〉 〈正体不明の C 波動をキャッチ。発信源は不明。深宇宙からです。 ラジェンドラは基地ポートから発進。ラテルは大皿をかかえて、方位 0 4 7 、距離測定不能。なにかのコントロール波のようです。 戦闘情報室に入る。アプロがトロフィーをかかえて、につと笑う。第二波をキャッチ。 0 4 7 / 3 0 4 ギガ。 9 トレーサービームを同

3. SFマガジン 1984年11月号

ラジェンドラは、目標の左側の O > を接近させる。すると目標 フトウェアを効率よく実現するハードウェアがあるということだ。 ア。フロがラジ = ンドラのことを、 " 機械のくせに″というのは、戦術コンビータは、そちら側の敵機の脅威の方が高いと判断し、 ラジ = ンドラの ( ードに注目しての言葉だった。それに対してラジそちら側へ機動しようとする。そのとたん、ラジ = ンドラはその O = ンドラのア・フロに対する " あなたは掃除機だ。という発言は、皮 r-v> を遠ざけ、右側の脅威の度合を高める。ラジ = ンドラは 肉もこめられてはいるのだが、ア・フロの行動から、そんな行動機能それをマイクロセカンドで繰り返した。その結果、目標戦術コンビ 、ータは機動命令信号を発生させることができないでいるのだっ をもっハ ードは掃除機であるとラジェンドラの解析機能が判断した 結果だった。 ラジ = ンドラは目標右側のの電磁透明化を消去し、遠ざけ ラジェンドラは、戦闘機のパイロットのソフトに注目しよ、つ、と る。 言っているのたった。 「ラジェンドラ、おまえにまかせる」 〈。 ( イロットは右を肉眼でとらえたようです〉 ナカ ( イロットはそちらの O を無視した。戦術コン・ヒー ラジ = ンドラは二機のを無人で発進させる。目標戦闘機をタは論理発振状態から解放され、脅威の度合の高い、左側の 追跡し、両側から挾み込むように目標と並飛行。は機体を電 > 、目には見えないそれに向けてロールイン。 磁的に透明化している。電磁レーダーにも人間の肉眼でも見えな 「どうしてだ。受動気圧レーダーよりは、肉眼や電磁レーダーで捉 えたもののほうが確実なのに」 ラジェンド にもかかわらず、目標戦闘機は O の存在をキャッチした。 二機のの目標との距離はほとんど変わらない。 ラはそのようにを操る。目標戦闘機は幻のに向けてガ 〈発見されました〉 ン攻撃。命中しない。受動レーダーでは正確な目標位置が割り出せ 「見えないはずだ」 〈の超音速衝撃波をキャッチしたようです。の大気圏ないのだ。ラジ = ンドラは幻のを回避機動させる。そのわず かな機動の間に、実体化しているに向けて目標戦闘機は急激 内航行気圧補正機構はオフにしてありましたから〉 二機のは攻撃態勢をとる。目標戦闘機は機動せずに直進すなインメルマンターン。 〈この機動は戦術コンビータではなくセントラルコンビータの 〈目標は、左右どちらのを攻撃していいか判断がっかないで判断です〉 ラジェンドラはレーダー補捉された O を再び透明化させる。 いるのです。目標の戦術コンビュータは論理的発振状態にありま 戦闘機は発砲。短く。 〈受動レーダーでとらえた空間の、最大命中確率グリッド域を高速 「どういうことだ」 る。 こ 0 ー 73

4. SFマガジン 1984年11月号

青い惑星の昼の側、高高度に、きらりと輝く点としてあらわれた かったから、 ードウェアをそっくりコビーして造ることはできな それは、見るまに大きくなる。灰色の機体。双垂直尾翼。ア。フロは 。人間の脳を造るというわけこよ、 冫冫しかない。それでラジェンドラ 7 ここでを左に向ける。戦闘機は側方五キロをすれちが は、素材は無視して、情報の流れる回路を模倣する。ラジェンドラ う。その後、戦闘機は急旋回、一発のミサイルを発射。 の能力では再現できない回路もあり、そんなときは、等価の回路を 〈重力制御をしない、空力だけを制御している航空機です。航宙機複雑な手順で組むのだが、等価とはいえ、同じというわけにはいか ではありません〉 なかった。ラジェンドラには、このおれの、人間の悲しみという感 「あんなものが飛ぶなんて奇跡だな。・ハ ランスを崩したらあっとい情は理解できないだろうとラテルは思う。感情という複雑な現象を うまに堕ちる。だけど、きれいだな。危うい美しさがある」 ラジェンドラはシミュレートできるが、ラジェンドラがそれを実現 〈機体制御とは別のコンピ、ータを搭載しています。情報分析用かするには実に冗長な回路を組まなければならない。回路は等価でも と判断できます〉 組まれた回路の種類の違いによって、理解しやすい思念とそうでな いものがある。ラジェンドラのハ ードウェアは、悲しみというソフ 「解析できるか。できれば、この戦いの内容もわかりそうだ」 トウェアを走らすのは苦手だ。ラジェンドラはだから、泣かない。 〈構造がわたしたちのものと異なっています。わたしの仲間のよう , イロットとコンタクトし海賊課刑事などをやっていると、とラテルは思った。自分の脳の なのですが、コンタクト不能。ラテル、。、 構造そのものが変化していって、泣くことのできない人間になるか てみますか ? 〉 もしれない : 「なんて言うんだ ? 言葉が伝わったとしても、彼はおれの言うこ となど信じないだろう。彼を知るには、彼の脳を解析しないといけ「おれはマシンじゃない」ラテルはつぶやいた。「たぶん、あの。 ( イロットも人間なら、おれの気持ちがわかるだろうな」 ない」 異星体とコンタクトするには、その考え方を知る必要がある。人〈それはどうでしようか〉ラジ = ンドラが言った。〈気持ち、とい うのはソフトウェアに関わるものが多い。 ードに依存しないソフ 間には理解できないような思考でも、その思考を生む源である脳な カ人間だとしても、マシンではない どの ( ードウェアを知ると、なるほどと納得できることがある。宇トもあります。あの。 ( イロット : という証拠はどこにもありませんよ、ラテル〉 宙警察刑事のラテルは未知の異星体に対処する教育を受けていた。 たとえば未知の脳、それが有機系であろうとコンピュータであろう「やってみるか」 そのハ と、に出会ったとき、ラジェンドラにその構造を解析してもらい ードウェア構造体がどんなタイ。フかを知るには、ある問題 ラジ = ンドラの空いたメモリ空間に、似たような構造体を実際に組に対してそれがどのような行動をとるかを観察して予測する方法が んでやると、対象となる思考の流れをシミ、レートすることができある。考え方を、構造から知るのとは逆の手順だった。 ( ー ドの違 た。誤差がでるのはしかたがなかった。ラジェンドラは万能ではな いによって扱いやすいものとそうでないソフトがあるなら、あるソ

5. SFマガジン 1984年11月号

「できるかな、ア。フロ。たぶんここには海賊はいない。出てきて惰円形に歪んだ二連太陽を背景に、黒い惑星がスクリーンいつば ラジェンドラの一一 = ロうこ いに映る。 も、幻だ。幻を殺してもなんの意味もない。 とが本当だとすれば、この宇宙そのものが海賊だ。その世界で生き「連星系に惑星があるなんて珍しいな」 るおれたちは、海賊に操られる幻にすぎん」 〈人工惑星のようです。強力な磁場と放射能帯に包まれています。 「そんなことないよ」 人工電磁波をキャッチ。知的生命体が存在するようです〉 「降下」 「どうして ? 」 「おれは操られない自信がある」 〈ラジャー〉 「悪魔的自信だな」 ラジェンドラは未知の惑星の夜の側へ降下を開始する。 「一 = ロ葉やテレバシーや暴力や催幻機でおれを操ることはできないん〈着地しますか〉 、、。環境探査。昼の側へ向かえ。電波が だ。おれの母星には催幻能力を使って精神寄生する原始的な生き物「高度一〇〇キロほどでしし がいるけど、おれたちの種族はこれから自分を守る能力が発達して出ているなら、解析しろ」 いるんだ。人間やラジェンドラよりずっと高等なんだぜ」 〈ラジャ 1 〉 「高等なおまえが、なんで低能なおれのいる、火星で刑事なんかや「降りて食い物を探そうよ」 ってるんだ ? 」 「おまえだけ力。フセルで射出してやってもいいんだ・せ、ア。フロ。二 ア。フロは皿から生肉をつまみ、ぽいと口にいれて、もぐもぐとこ度ともどってこないと約東したらな」 たえた。 「いいよ。タクシーで帰るから。星間タクシーくらい、一人で乗れ る」 「残念にやことに、食い物は火星によにうが高級にやからにや」 「おまえ、なにか勘ちがいをーーー」 「この世はおまえに食いつぶされるかもしれんな」 「自信ある。ラテルに誉められるなんて初めてだ」 〈三種類の、まったく異なる電磁パターンをキャッチ。二種は意味 内容の解析はまだできませんが、他の一種は、わたしにもほぼわか 「誉めたんじゃない ! 」 ります。人間の声を変調したものです〉 「ちがうの ? なんだ、、つまらん」 「いったい、おまえの精神構造はーーーおまえの胃は、どうなってー 「人間だ ? 嘘だろう。こんな惑星、知らないそ」 「海賊鍋の中の鍋人間だよ、きっと」 〈未知の惑星圏に入りました〉・ 「ラジェンドラ、音声出力してみろ」 ラテルとア。フロはラジェンドラの外部ヴィジスクリーンに目をや〈ラジャー。なにかの通信のようです〉 8

6. SFマガジン 1984年11月号

「ファイア」 黒猫の姿が透明に色を変え、爆発的に情報室いつばいに広がっ 〈ファイア〉 空間をただようトロフィーの残骸は、マイクロ・フラスタ攻撃 を受け、原子レベルの破片もすべて時空のかなたへと飛散した。 「ア・フロ ! 」 : ラジェンドラ、環境探査」 まばたきしたラテルは、アプロがなんの変化もなく、大皿から肉「 : ・ 片をもう一つつまむのを、呆然と見つめている。なにが生じたのか〈火星圏です。通常空間〉 : ア。フロ、なに 「もどってきたらしいな。夢を見ていたようだ。・ ラテルにはわからなかった。 をした」 〈ラテル。ラテル〉 ラテルはラジェンドラの呼びかけに、われにかえる。 「別に。ただ」とア。フロはあくびをしながらこたえた。「海賊鍋 「なんだ」 の、おれたちを棄てたいという気分を増強しただけだ」 「気分、だって ? 」 〈トロフィーを発見。方位 054 、至近〉 「うん。あの鍋、もうおれたちの相手をするのに飽きたんだ。それ 「 O 用意」ラテルは叫ぶ。 だけのことだよ」 〈セット O 。レディ〉 「ファイア」 「なんだかよくわからないが」ラテルは真面目に言った。「ア。フ 〈ファイア〉 ロ、よくやった」 ヴィジスクリーンに、チーフ ハスターのトロフィー : カ映ってい 「それは新手の皮肉か ? 」 る。背後には黒い宇宙が広がっていた。トロフィーはコンビュータ 「いや。誉めたんだ」 破壊ビームの直撃を受ける。外形には異状はなかったが、内部の構 「人間はだから理解できないよ」 造体と信号流がラジェンドラの攻撃で吹きとばされた。 「ラジェンドラ、帰ろう」 「用意」 〈ラジャー〉 〈セット :.-Ä r-n 。レディ〉 「ーーあの世界はどうなったかな。鍋と一緒に破壊されたのか」 「ファイア」 「あれは、鍋の中のおれたちが幻だったように、幻だったと思う 〈ファイア〉 な。もし実体があるとすれば、どこか別のところにあるんだ。あの ラテル」 大出力レーザービームでトロフィーは瞬時に爆破、粉砕された。鍋はそれを映す鏡のようなものだったんだ。 「うん ? 」 「マイクロ・フラスタ用意」 「鍋、どうする ? 42 ブラスタで吹きとばしたなんてチーフに知 〈セット tn 。レディ〉 ロ 8

7. SFマガジン 1984年11月号

時キャッチ。このビーム。 ( ターンは、カーリ ー・ドウルガーのものがゴムのように伸びるのをラテルは見た。その直後、眼球が大きな に似ています。危険。そのトロフィーに反応あり。ラテル、危険で圧力を受けたように感じ、視力が失われた。ア。フロが壁にたたきっ 6 けたらしい物音を聞いた。ラテルは気を失った。 す〉 「海賊の・フレゼントか ? このトロフィーは偽物 ? 」ラテルはレイ 真っ暗な中で、なにやら平和な物音がしている。ラテルは頭をふ ガンを抜く。「しかし、こいつは爆発するかもーー・」 り、身を起こす。インターセ。フターを環境探査モードにする。イン 「ラテル、早く撃て。肉、肉を焼こう」 ターセ・フタ . ーのセンサ情報がラテルの腕に伝わる。ラテルは、ア。フ 〈トロフィー内部が構造化しています。これはある種のコン・ヒ、ー タの基だったのでしよう。いまの 9 波動で活性化したものと思われ口が野菜を食べている姿をインタ , ーセ。フターでとらえた。 「ア。フロ。ラジェンドラはどうしたんだ ? 暗くて肉眼ではなにも ます。第三波をキャッチ。ラテル 「お湯をかけると食えるようになるスードルみたいなものかしら見えないぞ」 ん」ア。フロ、トロフィーをつんつんと突く。「なにが入っているん「少し眠らせておいたほうがいいよ。うるさくなくて。気を失って いるよ」 だろう。この鍋、食えるのかしらん」 「海賊め。おれたちをまとめてどうにかしようとしていたんだ」 「なにがあったんだ。やはりあのトロフィーは爆弾だったのか、 ラテルはトロフィーを撃たず、ラジェンドラの外部投棄ロへ通じ「ちがうみたいだ。あれは海賊鍋じゃないかな」 るシューターへそれを投げ入れる。 ラテルはレイガンを抜き、精密射撃モードにした。腕のインター 「非常投棄」 セ・フターの擬似視覚を頼りに、情報室の感熱センサの一つに向けて 〈ラジャー〉 引金をしぼった。それが破壊される短い間に、感熱センサは最大出 「ほら、おれの考えていたとおりじゃないか」 力で警報信号を発生させる。火災警報が一瞬鳴って、すぐにゃん 〈警告。艦内空間に異常あり〉 だ。他のセンサは異常を感知せず、このセンサ群の誤差がなにによ 「早く棄てろ ! 」 って生じたものかを調べるためのモニタ・システムが作動。モニタ 〈不能。投棄システムに異常あり〉 ・システムはラジェンドラ中枢に向けて信号を送る。それでラジェ ンドラは目を覚ました。 「 0 ドライ・フ。最大出力で太陽圏を離脱」 情報室に光がもどる。ディス。フレイ群が輝きをとりもどす。 〈不能。 9 ドライ・ハに干渉あり。このトロフィーは一種のー↓ : ここはどこ、 〈警告。艦内に正体不明のスポット熱照射源あり : ラジェンドラの声がとぎれた。 ラテルの視界のラジ = ンドラ戦闘情報室のディス・フレイ群が奇妙わたしはだれ ? 〉 に歪んだ。ラテルは壁にとばされた。ア・フロが宙に浮かび、その姿「ラジェンドラ、おれだ。しつかりしろ」

8. SFマガジン 1984年11月号

「こいつら : : : おれたちがユキカゼにやったことと同じことをして ラテルはアゾロの首をつかんで振る。 しるのか ? 」 「この、猫、おまえ、それを早く言わんかい ! 」 〈その可能性はあります。が、この三目標は、わたしの ( ードその 「わっ、ラテル、目が、回る、やめて、くれ」 「おまえはいいやつだ。一番頼りになる。かわいい。もてる。すばものを探っているようです。彼らはわたしに似ている〉 「ラテル、あの中に、おれの感覚でとらえられる生体が乗っている らしい猫。餌をやる」 ラテルはア。フロを放す。アゾロは疑い深い目でラテルを見て、 「そいつが正体か。ラジ = ンドラ「ー一基を 9 回収、それから、 9 ド 「皮肉にしか聞こえないな」 ライ・フで空域離脱」 「それはおまえの耳が悪いんだ。頭かもしれん」 〈ラジャー〉 「そうかなあ。なんだか悪口のようにも聞こえるけどな」 「どうやって、出るんだ ? 」 ラジェンドラは一基のミサイルを隔離船倉に吸引収容した。 9 ド 「ちょっと言ってみただけでーーーおれにもよくわからん」 ライ・フで惑星の反対側へ飛ぶ。ラテルとア。フロは隔離船倉へ降り - 」 0 「・ : ・ : っ腹猫」 そのミサイルは、ミサイルというよりも、 O に似ていた。 〈警告。対衛星ミサイル接近中〉 「なんだ ? 」 「ア。フロ : : : 中のやっとコンタクトできるか」 「とまどっているようだ」 〈人間の敵側のミサイルです〉 ラテルはヴィジスクリーンに目をやる。ラジェンドラに向かって「精神凍結しろ。おれたちに敵意をもたないうちに」 三基のミサイルが接近中だった。 「うん」 「回避。ショート 9 ドライ・フ用意」 ラテルはレイガンを抜く。コク。ヒットらしいものが見当たらな 〈ラジャー〉 「まったく、この世界のやつら、未確認のものを確認せずにすぐに 「ラジェンドラ、透視できるか」 攻撃をしかけてくるんだな」 〈できます。ラテル、無駄ですよ。たしかに有機生命体に似た組織 が認められますが、それは他の組織とは分離できません。それは個 〈ラテル、あれは攻撃用ではありません。コンタクトを求めている ードの一部です。それは機械 体ではありません。そのミサイルのハ ようです〉 です。人間の脳に似せて造られたもののようです〉 「 0 ドライ・フ中止。どういうことだ」 ということはつまり、とラテルはレイガンをおさめて、思った。 ラジェンドラは高速で回避。ミサイルは並飛行している。一定の この異星体は、敵である人間の考え方を調べるために、人間の脳に 間隔を保つ。 よ」 ロ 5

9. SFマガジン 1984年11月号

で計算しています。再攻撃されたら危ない 右が発火。爆散する。 〈比較的高度なセントラルコンビ、ータですね。かなりの戦闘経験 があるものと思われます〉 「ユキカゼ、か。ラジェンドラを破壊できる武器を持っていたら、 「ラジェンドラのを撃墜する相手に出遇ったのは初めてだ : ・ 危うかったな : : : あんな戦闘機は海賊も持ってない」 : どんなパイロットだろう」 〈彼はセントラル = ンビータに " 攻撃せよ。の命令を出しただけラテルの知らない世界だった。一刻も早く出たかったが、ラテル です。彼はコンビータに命をたくしたのです。自分の肉眼よりもにはその方法がっかめない。 コンビータの判断を正しいと認めたのでしよう。彼はマシンで「 : : : ア。フロ、遅かったな。なにをしていたんだ」 「倉庫で鍋を探していたんだけど、なかった」 す。彼のその判断は的を得ていると思います〉 〈あたりまえです〉 「それではパイロットの乗っている意味がないじゃないか ? 」 〈おそらくあのセントラル「ンビータに実戦経験をイン。フ〉トし「ラジ = ンドラ、造れない ? 」 たのはあの・ ( イロ ' トです。シ。こレーシ ' ンだけでは、こんな戦〈や「てやれないことはありませんが〉 闘はできないでしよう。あのセントラル = ン。ヒ、ータには学習機能「ア・フそれどころじゃないだろうが。この世界はおれたちの空 司とまちがう」 があるようです。パイいットはそれに彼自身の戦闘勘を移したので「し 、しよ、つ % 感情を移したのではありません。戦闘マシンとしての能力「おれはべつにかまわないよ。うまいものがあれば、どこでも」 を抽出して、機械に与えたのです。あの戦闘機は有機的な人間の脳「言ってみればここは海賊空間だ。おれたちはこの空間では異端の 者だ」 をそなえたサイボーグと言えます〉 「いつでもどこでも、おれが主 : ラジェンドラ、 O 「そんな気はしないな」とアプロ。 「おれは、そんなふうにはなりたくない : 人公。これ、おれのモットーだよ」 を回収しろ」 「脳天猫」 〈ラジャー〉 残りの一機を回収する。そのは高解像度の視覚センサで戦「それ、誉め言葉か ? 」 闘機の姿を映し、ラジェンドラにもどってきた。戦闘機は大きく旋「いいや」 回し、脅威の消減を確認したのち、飛び去った。ラテルにはその戦「それは残念だな。誉めてくれたら、この海賊鍋から出してやった 闘機のパーソナルネームらしい文字が読めなかった。だがラジェンのに」 ドラのとらえたその通信を聞いている。 「なんだって ? 」 This is YUKIKAZE. l'm going home. FAB. Roger. 4

10. SFマガジン 1984年11月号

「ラジェンドラにも特技があるんだな」 れたらさ、減給ではすまないかも」 「ア。フロ、今度のトロフィーには異状はないな ? 」 : ラジェンドラ、あのトロフィ 「ない。返してこいよ。こっちが本物だ」 〈そして世は事もなし、ですね〉 「わかった」 「そういうことだ」 そのあと、一人と一匹と一個は、そのトロフィーで焼肉パーティ ラテルはア・フロと顔を見合わせて、笑った。 を開いた。 一人と一匹と一個は、おそるおそる火星ダイモス基地に帰った。 「うまい」とア。フロは言った。「絶対、コビー鍋で焼くよりうまい ーティはもう終わっていた。ラテルとア。フロはチーフ・バスタ ぜ」 ーのオフィスをのぞいた。。ハスターは二人を上機嫌で迎えた。 ラテルは思わず肉をのどにつまらせ、胸をたたいた。 コ一人とも、よくやった。あのトロフィーはやはり偽物だったよう 「アプロ ! 」 だな」 ・・ハスターはその後、インタビーを受けるときにはその 「そう、そうです」とラテル。 イ 背後にマースコム賞トロフィーをさりげなく置くのを忘れない。 「疑いぶかいんだから」とア。フロ。「つたく」 ハスターのオフィスに来るの ラテルはア・フロを足で小突き、ラジェンドラに造らせたコ。ヒートンタビーは直接記者たちがチ】フ・ ではなく、双方向性の映話システムによって行なわれるが、市民た ロフィーを背後に隠して、うなずいた。」 ちはスクリーンに映るそのトロフィーが実はコ。ヒーであることを知 「危うい目にあいましたよ、チーフ」 。ハスターはデスクの上のトロらない。 「ご苦労だった 9 これが」とチーフ・ ト・タイ。フ虹 " ラ フィ 1 を目でさした。「本物だ。忘れてゆくなんて、と言って記者本物は海賊課所属の対コン・ヒ , ータ・フリゲー クラ・フの人間が届けてくれたんだ。本物を破壊しなか 0 たのは海賊ジ = ンドラの戦闘情報司令室の正面壁に、少し焼肉の焦げ跡をつけ のミスだな。もっとも、木物を発見するころは、わたしらを消すこて、誇らしげに掛けてある。ありがとう。 とができていると思ったのかもしれん」 「それも爆弾かもしれない」 ア。フロは本物のトロフィーを両手でかかえて、廊下に出る。ラテ ルはあとずさりしてチーフのオフィスを出て、ア。フロを追った。 「見ろよ、ラテル」 ア・フロはラジェンドラの造ったコビーと本物を並べて、そっくり だと一一日った。 ーのコビーを造ろう」