, 霍ナノ ードを組んで、人間の戦略を予測しようとしているのではなた部分は、その主人によって造られたものである、ということで いか。この異星体にとって、人間はまったく理解不能の相手だったす。しかしシステムとしてみれば、両者にさほど違いはありませ 7 にちがいない。なぜそんな相手と戦うのだ ? こたえはひとっしかん〉 ない。彼らにとって人間は敵ではなかったのだ。彼らの狙う相手は ・ : なんてことだ。この戦いは泥沼化しているわけだ。この世界 人間とは別なものだろう、しかし戦ううちに人間が」 り込んできの人間はまったく無駄な戦いを始めたんだ。こうなったらーー・いず た。ゃななく彼らは人間を研究せざるを得なくなった。そんな彼られにせよ、負けるわけにはいかないだろうな。これはもう、ブライ がとった方法は、人間の感覚や感情や思考を調べる前に、まずそれ ドの問題だ。われこそこの世の主人公と主張するしかないだろう。 らを実現している、 ードウ = アをコ・ヒーしたのだ。それに対しその主張を押し通すには、この世界の人間は自らの精神構造をコン て、人間側は、戦いを仕掛けられたのは自分たちだと信じて疑わな 。ヒュータ化するしかない。そしてたぶん、そうなりつつあるんだ」 かった。異星体の ( ードが自分たちと同じレベルだと思い込み、そ「おれ、主人公」 ラジェンドラ、こいっ の行動だけをとらえて、攻撃されたと判断したのだろうーーもし人「わかった、わかった。ア。フロ、もういい。 間がこの異星体のハ ドを研究する時間があったら、異星体は自分を射出しろ」 たちを狙っているのではないことがわかったかもしれない。 しか〈ア。フロを、ですか〉 し、たとえわかっても、わかろうとしないかもしれないとラテルは 「そうしたいところだが、このミサイルだ。出してやれ。アプロ、 思う。人間は常に、相手を自分と同次元のハードで造られていると凍結を解け」 思いがちだ。言葉の通じない相手には、感情移入で対処する。それ「あいよ」 は人間らしい、ということだ。すべては神に創られたもの、という 一人と一匹は情報室にもどった。ラジェンドラは異星体ミサイル 見方をする。異星体に遭遇したことのない人間には、それがむしろを射出、ドライプで惑星から離れる。 あたりまえだ。が、この世には、まったく感情移入などできない、 「ラテル」 ラテルは海賊課刑事 異なる力によって創られたものもいるのだ コンソールチェアに疲れた顔で腰かけているラテルに、ア。フロが の修業時代にそれをいやになるほど頭にたたき込まれていた。 沈んだ声で言った。 「この異星体が狙っているのは、コン。ヒ、ータかもしれないな」 「つまらないな」 〈それは全体として、「一キカゼに似ていると言えます。「一キカゼ「腹が減ったなら一人で食えよ」 ・ ( イロットとコン。ヒ、ータの複合体であり、それも、有機脳と「ここにいるのはもう飽きた」 コンビュータの複合体です。差があるとすれば、ユキカゼのコンビ 「だから考えろよ、出る方法を」 = 1 タが人間に造られたものであるのに対して、そちらの人間に似「この界は海賊鍋だよ」
本物の人間 なんです あの娘は なんと ? ロポットでもない 私らのような ~ 凶、、、ソ、、こ十・の・ 人間でもありません 一百 % 全部 一人間そのものなんです ええ てすから 本物の人間 なんですよ : 鞏 6 さカ それはまた なんと : ー 35
「何を弾く ? 」 「マイ・レディ・グリーン・スリーヴス 雨の中に響く歌声。それはたぶん、見る者すべてに懐かしさを与 8 「よろしい。そういうと思ったよ」 える光景にちがいない。この街に住んでいる妖精たち。彼らもま 彼はゆっくりと弾きはじめた。もう何百回となく弾いている曲た、すぐれた電子頭脳と人間そっくりの姿を持っロポットなのだ。 だ。天井の電子頭脳がそっとその音をひろって、外へと導き出す。 そうすると、音はそのあたりにいる者ーー。道を行く妖精たちの耳に事の起こりはこうであった。 とどいて、歩みをとめさせるのだった。 ある日、正確には二三四二年の初め、一人の天文学者が太陽の輝 「マイ・レディ・グリーン・スリーヴスた」 線スペクトルのずれに気づく。核融合の条件が変化したのだ。すな 「本当だ。マイ・レディ・グリーン・スリーヴスだ」 わち、二三〇〇年代の終りまでには、太陽の表面温度が急上昇し、 「あの人はまだ大丈夫なんだな」 もとに戻るころ、地上には一部の植物と魚類ぐらいしか生き残って いないであろう。 彼の部屋の下には、何人もの妖精が集まってきて、その窓を見上 げた。妖精たちはみなそれそれの役目に合ったかっこうをしてい 混乱の中、それでもいくらかの対策が立てられた。しかしながら る。警官、学生、。 ( ン屋、だれもが彼の思い出を保存するためにそ結局は一部の人間しか救う事はできず、その彼らもまた、飢えと渇 の役わりを果たし、この東京の街に参加している。それが今は彼のきで死んでいった。そして、地上には天文学者の予言どおり、植物 部屋の下に集まって、雨にぬれるのもかまわずに、彼の音楽に聴きと水中の生物と、数百体のロポットだけが残されたのである。 入っているのだ。 ロポットたちがまずはじめたのは、当然生き残った人々をさがす そのとき、誰かが小さな声で歌い始めた。 ことだった。同時に、もし何人かでも見つけ出せたときのために、 住む所も作らねばならない。そのための機械も。だとすると、もっ グリーン・スリーヴスはわが命 と仲間が必要だ。 グリーン・スリーヴスはわが喜び 電子頭脳の衝動のままに、彼らは行動を開始した。さいわいにも 材料だけは豊富にある。ロポットはそれで仲間を作り、機械を作 すぐにまわりの者がそれに和し、あたりに静かな合唱が流れはじり、街を作った。数年後、地球上には再び文明の歯車が回りはじめ める。 たが、しかし人間を見つけることはできなかった。それでも作業は 続いていた。 そんなとき、大平洋の小さな島国、かって日本と呼ばれた所に行 った者が、耐熱壁でかこまれた資料保存室に、一つの記録を見つけ グリーン・スリーヴスはわが命 グリーン・スリーヴスはわが喜び
問の解決法は、印刷術です。たくさんのコ・ヒーを作ってばら撒け少なくともそのことだけは理解しておるつもじゃ」 ば、そのうちの以冊かは災害を生き延びることができるでしよう。 「議員、もしわたしが夫の才能から生まれた作品を永遠に保存する しかし、印刷とともに新しい考えが生まれました。芸術はとっぜっもりなら、人類の力を削ぐでしよう。あなたには、永遠の著作権 かんき ん、大きな需要を喚起し、そこに金がからんできたのです。作家がどのような意味をもっているのか、おわかりにならないのです は、自作をコ。ヒーする権利を有するべきだと考えました。著作権とか ? それは人類が永遠の記憶を持っということなのですよ ! こ いう考えが、生まれつつありました。 の法案は人類に象の記億力を与えることになります。あなたは元気 そして、過去五百五十年ばかりの間に、人類の記億にとって最大のいい象を見たことがありますか ? 」 の飛躍がやってきました。記録技術ですーー視覚的には、写真、映老人はしばらく黙っていた。やがて、ロを開くと、 画、ビデオ、ゼロックス、立体写真。聴覚的には、ロー 「まだ問題点がはっきりせん」 、イ・ファイ、 ステレオ、デジタル。そして、情報保存の究極的存「気分を悪くなさらないでくださし 、。問題は少なくともこの八年 在、コンビュ 、わたしたちの眠の前にぶらさがっておりました。そして、それ ータがあらわれます。こうした技術は、いにしえの芸 にほとんどの者が気づかなかったのです」 術形態を保存する新しい方法や新しい芸術形態を生みだしました。 それそれが著作権という考えの再評価を要求してきました。 「なぜだね ? 」 「大部分の人間には生まれつき数学的直感が備わっていないからだ 現在のシステムはご存じでしよう。二十世紀中葉から変わってい ません。著作権は著作権保持者の死後五十年で、消減します。しか と思います。われわれはかなり大きな数を無限と混同する傾向があ し、一九〇〇年代以来、人類の数は急激に増加しており、人間の寿ります」 命もまた伸びています。先進国の多くの人々の寿命は百二十歳で 「ふむ、八十五分の十以上の数は無限も同様じやからな」 す。あなたはもっとお年をめしていらっしやるでしよう。そして、 「なんですって ? 」 八九六号法案は、著作権を永遠に延長しようとしています」 「失礼ーーロをはさむつもりはなかった。宇宙のなかの原子の数と 「そうじゃ」上院議員がさえぎった。「そのどこがいかんのだね ? いったところが、いちばん適切な例じやろう。つづけてくれ」 息をするのをやめたからといって、作品までが存在をやめるべきだ ドロシイは話を本筋に戻そうとした。 ミセス・マーティン、あなただって、この法案が通過し「多くの人々は、ずっと少ない数を″無限〃と同一視してしまいま たら、大金持になれるんですぞ。お亡くなりになった旦那さまの才す。何百万年もの間、われわれは大洋を見ては、″これこそ無限だ。 能を放棄しようというのですか ? 」 海はわれわれのゴミを永遠に呑みこんでくれるだろう〃と言ってき ドロシイは我しらずたじろいだ。 ました。われわれは空を見て、″これこそ無限だ。空は無限の煙を 「無礼な言い方を許していただきたいが、あなたの立場について、呑みこむことができるだろう。と言ってきました。わたしたちは無
門を出ると、表の群衆は、来たときよりはぐっと減っていたもの うが司政官の身が危険だと見たのか、それともこういう訪問と退去 にさいしては、周囲の人々にいかにも司政官がしつかりと守られての、またかなりの人数がいて、彼が出てくるのを待ち構えていた。 いるとの印象を与えるため、こうした陣形を組んでいるのか : : : そ彼はその人々にしばらく手を振ってから、司政官機に乗った。 れは彼にはわからないことであった。 01 にまかせておくことな機が、ゆるゆるとすべりはじめた。 のであった。 人々が両側にむらがる道を抜ける。ケズベ通りをあとにした。 それに、ミア・・コートレオがあんなにだしぬけに走って来それでもまだ、ところどころに人がいて、司政官機が通りかかる たのも、いけないのだ。周囲の人間があんな急激な動作を示せば、 と、手をあげ、呻び声をあげるのだった。 護衛のロポットたちは反射的に行動に出るものなのである。まして が : : : そうした人たちもじきにすくなくなり、機は西方へ道をと それが、司政官めざして駈け寄るなどとなれば、なおさらだ。彼女った。 いよいよ、ジャクト家へと行くのである。 がもっとゆっくりと、しかるべき手順を踏んで歩み寄って来たのな 西北養育院からジャクト家まで、それほど遠いとはいえないもの ら、ロポットたちも道をあけたかも知れないのであった。 の、歩けば結構時間のかかる距離なのだ。彼の通った初級学校、中 まあ、これはこれで、仕方がない。 彼は門へと歩きながら、ふと思いついて振り返り、主棟の壁面を級学校もその方向にあり、学校からさらに十分ほど行「たところ に、ジャクト家の大邸宅があるのだった。 眺めた。壁面は、ここへ来たときよりさらに低くなった陽に、さら ミア・ e ・コートレオから渡された封筒の中身 今のうちに、 に黄ばんで照らし出されている。それは、訪問時に感じたような、 を、たしかめておこう。 この一瞬のはかない光輝をいつまでもとどめようというほどの強さ はなく、やがて光輝が失せることを知りつくしながら、乏しくな 0 彼はポケ ' トから封筒を出し、封を切「た。 て行く残光をひっそりと抱きかかえているかのようであった。 それは、彼の心の中で、ここへ来る前には知らなかったこの養育 院のいくつもの変化、、 しくつもの喪失の、そのことから細く湧きあ がって来る空しさと、二重写しになったのである。 今回の、このウイスボア州立西北養育院訪問は、たしかに帰還で はあった。帰還ではあったが、決してもう還って来ないものもある というのを、悟らされたといえる。いや : : : この喪失感はすでに自 分の胸のうちに定着してしまっているようた、と、彼は思ったので あった。 ( 以下次号 ) 9 2
「こいつら : : : おれたちがユキカゼにやったことと同じことをして ラテルはアゾロの首をつかんで振る。 しるのか ? 」 「この、猫、おまえ、それを早く言わんかい ! 」 〈その可能性はあります。が、この三目標は、わたしの ( ードその 「わっ、ラテル、目が、回る、やめて、くれ」 「おまえはいいやつだ。一番頼りになる。かわいい。もてる。すばものを探っているようです。彼らはわたしに似ている〉 「ラテル、あの中に、おれの感覚でとらえられる生体が乗っている らしい猫。餌をやる」 ラテルはア。フロを放す。アゾロは疑い深い目でラテルを見て、 「そいつが正体か。ラジ = ンドラ「ー一基を 9 回収、それから、 9 ド 「皮肉にしか聞こえないな」 ライ・フで空域離脱」 「それはおまえの耳が悪いんだ。頭かもしれん」 〈ラジャー〉 「そうかなあ。なんだか悪口のようにも聞こえるけどな」 「どうやって、出るんだ ? 」 ラジェンドラは一基のミサイルを隔離船倉に吸引収容した。 9 ド 「ちょっと言ってみただけでーーーおれにもよくわからん」 ライ・フで惑星の反対側へ飛ぶ。ラテルとア。フロは隔離船倉へ降り - 」 0 「・ : ・ : っ腹猫」 そのミサイルは、ミサイルというよりも、 O に似ていた。 〈警告。対衛星ミサイル接近中〉 「なんだ ? 」 「ア。フロ : : : 中のやっとコンタクトできるか」 「とまどっているようだ」 〈人間の敵側のミサイルです〉 ラテルはヴィジスクリーンに目をやる。ラジェンドラに向かって「精神凍結しろ。おれたちに敵意をもたないうちに」 三基のミサイルが接近中だった。 「うん」 「回避。ショート 9 ドライ・フ用意」 ラテルはレイガンを抜く。コク。ヒットらしいものが見当たらな 〈ラジャー〉 「まったく、この世界のやつら、未確認のものを確認せずにすぐに 「ラジェンドラ、透視できるか」 攻撃をしかけてくるんだな」 〈できます。ラテル、無駄ですよ。たしかに有機生命体に似た組織 が認められますが、それは他の組織とは分離できません。それは個 〈ラテル、あれは攻撃用ではありません。コンタクトを求めている ードの一部です。それは機械 体ではありません。そのミサイルのハ ようです〉 です。人間の脳に似せて造られたもののようです〉 「 0 ドライ・フ中止。どういうことだ」 ということはつまり、とラテルはレイガンをおさめて、思った。 ラジェンドラは高速で回避。ミサイルは並飛行している。一定の この異星体は、敵である人間の考え方を調べるために、人間の脳に 間隔を保つ。 よ」 ロ 5
ルがアメリカ的な暮らしをくつがえすた め、ひそかな企みを進めていると日常茶飯 的に信じこむよう奨励された。それはマッ カーシー聴問会と、主にビリー・グレアム が率いる福音主義的な信仰復興運動の時代 であった。パラノイアは充満していた。共 産主義者とホモセクシャルの決定的なとこ ろは、誰でも知っているように、彼らが見 かけはわれわれとまったく変わらないとい うことである。したがって人間そっくりの 異星人についての物語が先例のない人気を 博した。この傾向は映画において顕著であ り、次のような作品が含まれる。 C の 乃・。 0 S, ゑ 4 ( 1953 ) 、『惑星アド スペースモンスター襲来』 れ s 加 Mat ・ s ( 1953 ) 、『ポディ ・スナッチャー / 恐怖の街』。の / 。れ 6 お 0 イツ S れ 4 なん ( 1956 ) 、『宇宙船の 襲来』 1 Ma " たイ 4 加れ立の・℃襯 0 “ ( 1958 ) 等々。 ( 10 年たってそのテ ーマは『インペーダー』 T ん 04 ( 1967 ー 8 ) の形で TV に入ってきた ) 。書 物で一ばん良く知られた例は、ロ / く一ト A ・ハインラインの『人形つかい』 The 4 第第 M の ( 1951 ) である。 は異星人の集団精神と全体主義的なコミュ ニズムとのあいだのアナロジーは歴然とし ている。このテーマの興味深い変型とし て、ブライアン・ W ・オールディスの「外 ( 195 のがあり、そこ がわ」 "Outside ” では自身が本当は何であるかを理解してい ない一見人間風の異星人の視点から物語は 語られている。 姿を変えられるものは、今でも SF に存 在しているが、以前と同じような華々しさ はなく、同じほどの数もない。近年の職人 芸的な例は、ジョン・フ・ラナーの DO ″房ら D 。ん ( 1969 ) である。それにやや先が けた例としてはクリフォード・ D ・シマッ クの T んⅣ記々記 e Men ( 1962 ) が 263 こでは人間になりすました異星人 が、地球をすこしずつ買いとって資本主義 的侵略をなしとげようとする。しかしなが ら共産主義騒動は、もう一冊の冷戦時代の シマックの長篇沢切 g みだ 0 the & ( 1952 ) に、より明確に反映されている。 ただしここでは、作者は陰謀をたくらむ側 に共感しており、周囲の無知ゆえに迫害さ れる人間のミュータントたちが、人間の生 活に尊厳を取りもどそうとする過程が描か Ⅸ ての S F / 恐怖映画はパラノイアのカテゴ 眇礦 ( 1965 ) がそうである ( ほとんど全 ば映画『恐怖の怪奇惑星』 T げ尾〃。 以来幾度となく使われてきている。たとえ 船乗組員が乗っ取られる。このアイデアは 侵略をもくろむ異星の寄生体によって宇宙 は確かにその資格があろう。そこでは地球 しかし E ・ C ・タフ・のみ I ” ( 1954 ) イア小説の例は、アメリカほど多くない。 1950 年代以降のイギリスにおけるパラノ れている。 T んの , ーål をイんビ売〃 C ・ D ・シマック
青い惑星の昼の側、高高度に、きらりと輝く点としてあらわれた かったから、 ードウェアをそっくりコビーして造ることはできな それは、見るまに大きくなる。灰色の機体。双垂直尾翼。ア。フロは 。人間の脳を造るというわけこよ、 冫冫しかない。それでラジェンドラ 7 ここでを左に向ける。戦闘機は側方五キロをすれちが は、素材は無視して、情報の流れる回路を模倣する。ラジェンドラ う。その後、戦闘機は急旋回、一発のミサイルを発射。 の能力では再現できない回路もあり、そんなときは、等価の回路を 〈重力制御をしない、空力だけを制御している航空機です。航宙機複雑な手順で組むのだが、等価とはいえ、同じというわけにはいか ではありません〉 なかった。ラジェンドラには、このおれの、人間の悲しみという感 「あんなものが飛ぶなんて奇跡だな。・ハ ランスを崩したらあっとい情は理解できないだろうとラテルは思う。感情という複雑な現象を うまに堕ちる。だけど、きれいだな。危うい美しさがある」 ラジェンドラはシミュレートできるが、ラジェンドラがそれを実現 〈機体制御とは別のコンピ、ータを搭載しています。情報分析用かするには実に冗長な回路を組まなければならない。回路は等価でも と判断できます〉 組まれた回路の種類の違いによって、理解しやすい思念とそうでな いものがある。ラジェンドラのハ ードウェアは、悲しみというソフ 「解析できるか。できれば、この戦いの内容もわかりそうだ」 トウェアを走らすのは苦手だ。ラジェンドラはだから、泣かない。 〈構造がわたしたちのものと異なっています。わたしの仲間のよう , イロットとコンタクトし海賊課刑事などをやっていると、とラテルは思った。自分の脳の なのですが、コンタクト不能。ラテル、。、 構造そのものが変化していって、泣くことのできない人間になるか てみますか ? 〉 もしれない : 「なんて言うんだ ? 言葉が伝わったとしても、彼はおれの言うこ となど信じないだろう。彼を知るには、彼の脳を解析しないといけ「おれはマシンじゃない」ラテルはつぶやいた。「たぶん、あの。 ( イロットも人間なら、おれの気持ちがわかるだろうな」 ない」 異星体とコンタクトするには、その考え方を知る必要がある。人〈それはどうでしようか〉ラジ = ンドラが言った。〈気持ち、とい うのはソフトウェアに関わるものが多い。 ードに依存しないソフ 間には理解できないような思考でも、その思考を生む源である脳な カ人間だとしても、マシンではない どの ( ードウェアを知ると、なるほどと納得できることがある。宇トもあります。あの。 ( イロット : という証拠はどこにもありませんよ、ラテル〉 宙警察刑事のラテルは未知の異星体に対処する教育を受けていた。 たとえば未知の脳、それが有機系であろうとコンピュータであろう「やってみるか」 そのハ と、に出会ったとき、ラジェンドラにその構造を解析してもらい ードウェア構造体がどんなタイ。フかを知るには、ある問題 ラジ = ンドラの空いたメモリ空間に、似たような構造体を実際に組に対してそれがどのような行動をとるかを観察して予測する方法が んでやると、対象となる思考の流れをシミ、レートすることができある。考え方を、構造から知るのとは逆の手順だった。 ( ー ドの違 た。誤差がでるのはしかたがなかった。ラジェンドラは万能ではな いによって扱いやすいものとそうでないソフトがあるなら、あるソ
「できるかな、ア。フロ。たぶんここには海賊はいない。出てきて惰円形に歪んだ二連太陽を背景に、黒い惑星がスクリーンいつば ラジェンドラの一一 = ロうこ いに映る。 も、幻だ。幻を殺してもなんの意味もない。 とが本当だとすれば、この宇宙そのものが海賊だ。その世界で生き「連星系に惑星があるなんて珍しいな」 るおれたちは、海賊に操られる幻にすぎん」 〈人工惑星のようです。強力な磁場と放射能帯に包まれています。 「そんなことないよ」 人工電磁波をキャッチ。知的生命体が存在するようです〉 「降下」 「どうして ? 」 「おれは操られない自信がある」 〈ラジャー〉 「悪魔的自信だな」 ラジェンドラは未知の惑星の夜の側へ降下を開始する。 「一 = ロ葉やテレバシーや暴力や催幻機でおれを操ることはできないん〈着地しますか〉 、、。環境探査。昼の側へ向かえ。電波が だ。おれの母星には催幻能力を使って精神寄生する原始的な生き物「高度一〇〇キロほどでしし がいるけど、おれたちの種族はこれから自分を守る能力が発達して出ているなら、解析しろ」 いるんだ。人間やラジェンドラよりずっと高等なんだぜ」 〈ラジャ 1 〉 「高等なおまえが、なんで低能なおれのいる、火星で刑事なんかや「降りて食い物を探そうよ」 ってるんだ ? 」 「おまえだけ力。フセルで射出してやってもいいんだ・せ、ア。フロ。二 ア。フロは皿から生肉をつまみ、ぽいと口にいれて、もぐもぐとこ度ともどってこないと約東したらな」 たえた。 「いいよ。タクシーで帰るから。星間タクシーくらい、一人で乗れ る」 「残念にやことに、食い物は火星によにうが高級にやからにや」 「おまえ、なにか勘ちがいをーーー」 「この世はおまえに食いつぶされるかもしれんな」 「自信ある。ラテルに誉められるなんて初めてだ」 〈三種類の、まったく異なる電磁パターンをキャッチ。二種は意味 内容の解析はまだできませんが、他の一種は、わたしにもほぼわか 「誉めたんじゃない ! 」 ります。人間の声を変調したものです〉 「ちがうの ? なんだ、、つまらん」 「いったい、おまえの精神構造はーーーおまえの胃は、どうなってー 「人間だ ? 嘘だろう。こんな惑星、知らないそ」 「海賊鍋の中の鍋人間だよ、きっと」 〈未知の惑星圏に入りました〉・ 「ラジェンドラ、音声出力してみろ」 ラテルとア。フロはラジェンドラの外部ヴィジスクリーンに目をや〈ラジャー。なにかの通信のようです〉 8
のであって、どんな神のしわざでもない。あなたが私たちの凶運な りと両手で耳をふさぎながら。 ノーレヴァレト : 、、 ノ力しくらか不愉快そうな表情を浮べて言った。 のです、ソールヴァルト・アイナルソン。あなたがお仲間より悪人 「あんたたちのキリストには、それの治療はできんのかね ? 」 でないのは事実ですが。かれらが楽しみのために殺すのに対して、 あなたはいっさい無感動に、仕事として、穀物を刈る農夫のよう 「ええ」と院長。「もう一度、過去を作り直すしかありませんよ。 彼にもそれだけは無理なようですね。いま彼女は地獄にいます。すに、それをするのですからね。たぶん、あなたはきよう自分の刈り つかり忘れてしまうまでに、幾度となくそこへ戻るしかないでしょ取った穀物の一部をごらんになったことでしよう。あなたにもしも ・ハイキン 人間の魂があったとしたら、運がよかろうと悪かろうと、 「その女は奴隷には不向きだな」ノルド人が言い、ちらりとシスタグなどになった筈がありません。あなたの魂がそれよりもう少し大 ・シビードを見やった。彼女はもう黙りこんで、ふたたび前方をきかったら、あなたは仲間の舟人たちをとめようとしていた筈で 凝視していた。「安心しろ、もうその女を欲しがるやつなどおらんす。私はいま正直に、あなたのお怒りもかえり見すに申しあげてい さ」 るのですが、クリストス御自身が十字架に釘づけにされることを覚 悟で、真理を語られたように。あなたがもし獣であったら、あなた 「神は」とラーデグンデ院長。「慈悲ぶかくあらせられます」 ソールヴァルト・アイナルソンが言った。「院長、俺はなにも悪 には神の法をやぶることなどできなかった筈です。もしもあなたが 人じゃないぜ」 人間であったなら、あえてやぶろうとはしなかった筈です。しか 「善人にしては」とラーデグンデ。「驚くほど気質の悪いお仲間をし、あなたはそのどちらでもなく、そのためにあなたは一種の怪物 お持ちですね」 となって、ふれるものすべてを損ない、そしてその理由が自分では ノルド人が怒気もあらわに言った。「舟に乗りくむやつらは俺がわからないのです。だから私はあなたが人間となるまで、真の魂を もっ真の人間となるまで、けっしてあなたを許しはしません。ま 選んだ訳じゃない。俺はただ運がなかっただけだ ! 」 た、あなたのお友だちについては、ーー」 「私たちのほうが、もっと運が悪かったと思います」 「どっちみち運は運さ」とノルド人。そして、ぎゅっとこぶしを握ここまで来て、ソールヴァルト・アイナルソンは平手でラーデグ った。「めぐり合せでいいことも悪いこともある」 ンデの顔を打ち、地面に打ち倒した。シスター・ヘドウイクが恐怖 シビードがまた 「そう、あなたがたが私たちの所へやって来たように」ラーデグン に息をのむ声がきこえ、私たちの背後でシスター うめきはじめた。しかし、ラーデグンデ院長は頬をなでながら地面 デが穏やかに応じた。「それはそうかもしれませんね。ソールヴァ ルト・アイナルソン。確かに運命というのはトール神や、オーデン に坐ったきり、かすかに徴笑を浮べた。そして、やがてこう言った 神の悪戯なのだと、そう言ってしまって良いのかもしれません。しのだ。 かし、はっきり申しあげて、私たちの凶運はあなたがたのしわざな「おお、私の大切な人、また私はやってしまいました。私は自分が 7 7