作家 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1984年11月号
90件見つかりました。

1. SFマガジン 1984年11月号

り、多くの人が作曲家になりました。最近の作曲家がどんなものだ ーベルンゲンの指輪″だけで二十一時間です。ビートルズは、 か、ご存じですか ? 」 ふたりの作曲家がいましたが、た「た十年弱でオリジナルの作曲を 9 「何人かの作曲家と知り合いだよ」 十二時間分っくりました。過去の偉人たちはなぜ、こんなに多作だ 「まだ作曲している人は ? 」 ったのでしよう ? 「そうだな : : : 三人だ」 彼らの時代には、八十八の音の組み合わせがずっと楽に見つけら れたのです」 「彼らはどれくらいのペースで新曲を発表しますか ? 」 「なんということだ」議員がつぶやいた。 「平均して五年に一度ではないだろうか。フーム、そんなことはい 「また一九七〇年代に戻りましよう。″ルーツ″の剽窃事件を覚え ままで考えたこともなかったがー。ー」 ておいでですか ? そのあとに続いた十幾つもの似た事件は ? 同 「最近では、著作権局の音楽部門に申しこまれる著作権の五つにふしころ、ヴァン・ヴォートという作家が″ェイリアン〃という人気 たつは、第一段階のコンビ、ータ・サーチによって却下されること映画の製作者たちを訴えたことがありました。映画は、四十年前に 書かれた小説の剽窃だというのです。べン・ポーヴァとハ をご存じでしたか ? 」 老人の顔は驚きをしめさなくなっていた。芝居がかった目的からエリスンという作家もシリーズもののアイディアを盗まれたとテレ ではなく、一世紀以上前からそうなのだ。しかし、ドロシイにはわビ・スタジオを訴えました。 かっていたーー、自分が老人を茫然とさせたことを。 結局、著作権の設定はアイディアではなく言葉の配列に対してで きるのだ、という法的原則がうまれました。言葉の配列の数は有限 「いや、知らなかった」 「なぜ、ご存しなかったのです ? 誰かに教わらなかったのですですが、アイディアの数はもっと少ないからです。確かに、アイデ ィアは何度でも語りなおすことができます ′ウエスト・サイド か ? でも、それは事実なのです。もうひとつ、活動中の作曲家の ストーリ イ″は上手にできた″ロミオとジュリ ″の焼直し 数を勘定にいれると、著作権局への申し込みの率が明確に減少して かいしゃ です。でも、それは″ロミオとジュリ が人口に膾炙してい いるというのも事実です。有史以来最大の数の作曲家がいますが、 個人個人の作品数は減少しているのです。現存しているいちばん人たからこそ可能だったのです。語ることのできる物語の数は有限で 気のある作曲家は誰ですか ? 」 すが、そのうち一定の数の作品はひどい物語だということを覚えて おいてください。 「そうだな : : : ヴァチャンドラとかいう男ではないかね ? 」 「そうです。彼は五十年以上にわたって活動をつづけています。彼視覚芸術家については かって、八十一の色彩が区別できるこ がこれまでに作曲した曲をつづけて演奏しようとすると、十二時間とを研究で実証してみせた男がいました。それが上限だと思いま で演奏できます。ワーグナーは六十時間分の作曲をしました す。眼が吸収できる情報には限界があります。その大部分は雑音に

2. SFマガジン 1984年11月号

ト e 、 ~ マイクル・シェイ ました。一方では、スタイリストの系列のキらポール・ 0 ・ウィリアムズ、マイク・レ ベスト・ ノヴェラ「はなはだしく」 "Be- ム・スタンリー・ロビンスンのように七〇年ズニックら異色冒険作家が周辺ファン ) 「 ond AII Measure" カール・エドワー代のトーンを継承してゆく作家も着実とコアファンとの間の層をみたしてい ド・ワグナー に支持基盤をひろけているようです。逆にるのもわかります。ジャック・チョーカー 「年齢をあかせ」 "Confess the Sea ・七〇年代を代表する作家たちは、転機を迎や、。ヒアズ・アンソニイ、アラン・ディ えていることを意識してか、伸び悩んでい sons" チャールズ・・グラント ン・フォスターらの作品をベストセラーダ るようで、ヒューゴ へスト・ショートストーリイ ネビュラ両賞候補ムにのしあげているのが、これら平均的 n にもあまり顔をたしていません。ファファン層なのです。 「ゴーゴン」 "The Gorgon" タニス・リ 解 ン自体はさして若返りを迎えていないので新しい作家の世代は、この特集でも ベスト短篇集『悪夢の季節』 ~ をミミミすが、七〇年代作家たちがあきられはじめわかるように、やや小粒で、地味な作品し 特 Seasons O ・・グラント編 ていることはいなめません。その結果、七か発表できていません。こうした作家たち 〇年代作家もマーティンの様にホラーへのの処女長篇を集めてスタートしたテリイ・ ・エース・スペシャル〉 この結果を見てもわかるように、ビッグ傾斜を強めたり、とりあえず / ヴェライゼカー編の〈ニュー ハラー 1 ションの仕事を増して作家としてのエネも、新しい世代の誕生を宜一言するものとし 3 以外でも、ライ、、ハー ドらのペテラン作家の作品にはそれなりのルギーを貯えていこうとするヴィンジ、マては、ややおとなしい作品群となっている ッキンタイア、ヴァ 1 リイらの沈黙がこのようです。しかし、これらの作品の中にう ネ注目と敬意がはらわれています。ラス、ウ ィリス、チェリイ、アイゼンシュタイン、年の特長のひとつにあげられるでしよう。 かがえる新しい才能の芽は、次代を期待す ル・グイン、ティ。フトリーといった女流作 このように、コアとなるが求められるファンや編集者からの励ましにより、必 ゴ 家の活躍は、冒頭でもふれたように増加しる反面、真のコアがまだ形成されてゆく過ず近い将来開花するであろうと思わせるに つつある女性ファンの支持に負うところも程にある現状では、ユーモア色の強い作品 たるものです。それらの才能をはぐくむ努 大きいのですが、これら女性作家の中でもが逆に人気を集めていることも納得できる力をつづけているのが、 & であり、 オムニであり、アナログであり、エ 1 ス、 少しすっ世代交替が行なわれつつあることでしよう。ウォルドロップやスパイダー 年 ロビンスン、スチャリトクル、スラデック ・ハンタム、アー がうかがえます。 ハウスといった出版 世代交替がより進んでいるのが短篇のジといった作家までが注目を集めていること社なのです。採算を無視してすぐれた ャンルで、スターリング、ギ・フスン、・フリ に、過渡期のシーンの状況がよく反映をプロデュースしていこうとする編集者た ン、ザーン、ディレイニ スチャリトクされているといえるでしよう。 ちがいることは、、 ノートウエルの〈タイムス ルら、文体よりもアイディアや co らしさ 、クのジャンルでケー。フ・ブックス〉の打ちきり後の状況 をやや明るくしているといえるでしよう。 を重視する新しい世代が大量に進出してきは圧倒的に冒険が支持され、その中か 4

3. SFマガジン 1984年11月号

ゴー賞にノミネートされ、、、ミト e ミ ~ はホラー版の〈フアファー 転生』 TJ ミ 7 ヾミここ g きご・ 0 2 、 7 、き 0 e でヒュ メ r も大きな支持をうけましたが、こまたローカス賞ベスト処女長篇賞を獲得し & グレイマウザー〉とも、ヴァンスとホラ ーの結合したものとも呼ばれるみごとなデ れも『ヴァリス』など最近の一連の作品のました。 テーマを現代の中に描きこんだカ作でし人類学といえば、もうその代表的存ビュー作でした。ジョージ・・・マー 1 ・ドリーム』、・ v ミ た。ゼラズニイも再び神話世界への挑戦在となったマイクル・ビショップもまたカティンも『フィーヴァ 説 を、今回はインディアン説話を素材とした作『時だけが敵』 ~ 。ミミミ Time ミミで新たな吸血鬼解釈を生みだし、 解 ファンの期待にこたえました。 集『猫の目』、 c ミではたし、長いスでネビ = ラ賞を獲得しました。内宇宙での ーゴー両賞 タイム・トラヴェルとでもいうようなユニ では、以一「にネビュラ、ヒュ ラン。フから蘇ったと評判を呼びました。 新しいタイプのスペー の候補作と受賞作のリストを記します。ヒ ューゴーは順位も添えます。 ラ 女流作家群の中でも異色 の存在となりつつある O 演◎ネビラ賞 ・・チェリイは『シャヌ 講〈ベスト長篇〉 ネ 1 ルの誇り』。 p 「ミ。 受賞作『時だけが敵』ン「。 E ミ、こ、ミゴ・ の ミ・ C ミミ r というカ作 ミマイクル・ビショッ。フ フ モ を発表し、異星人の描写 候補作『ファウンデーションの彼方へ』ア シ ア の冴えを披露して、二年 イザック・アジモフ ・ << ・ハイン 連続でヒュ ーゴー賞の候 『フライデイ』ロ、、、 ライン 補作に選ばれました。異 星人および異星文明を民 『リクトルの剣』 T/ ミ第 vo ミ、 族学的、人類学的テーマをもって描くとい 1 クなアイディアで人類創世期と心理学的ト、ミ・ジーン・ウルフ うのも近年一つの流れを作りつつあるサブ 『ティモシー ・アーチャーの転生』 トラウマからの解放とをたくみに描いたこ ジャンルです。すでに五〇年代にデビュー 、 e ドききこ kr ミ of Ti ミ 0 メ ) の作品により、ビショッ。フは二年連続ネビ c ミ・フリ ィップ・・ディック しながら長年筆をたっていた遅れてきた新「一ラ賞作家となり、。フロの中での支持層の キングズベリは、『デュ 人ドナルド・ 大きさを示したのです。 〈ベスト・ノヴェラ〉 ン』を思わせる砂漠惑星を舞台に、異なる ホラー系の作品もすぐれたカ作を生みだ受賞作「他の孤児」ジョン・ケッセル 価値観、文化をもっ民族の衝突をダイナミ しています。世界幻想文学大賞に選ばれた候補作「不確かな手」 "Unsound Varia ・ tions" ジョージ・・長・マーティン ックに描いた『求愛の儀式』 C 。 ~ 、ミ廴 ~ きマイクル・シェイの『痩躯のニフト』ン「 ~ ・ 5 4

4. SFマガジン 1984年11月号

チもある : : : というわけで、要するに、いい意味の古き良き 作品なわけです。 藤子不一一雄、萩尾望都、吾妻ひでお、高橋留美子、宮崎駿、そ して、ふくやまけいこ : : : 手塚系列の作家達に、共通する力強さ を感じてしまうのは、・ほくだけではないでしよう。その力強さこ そ″ゴハン・ ーなのだと信じているのは・ほくだけかもしれ ませんけど : ・ で、対抗上、力強いお菓子。 ( ワーを挙げてみるならば、大友克 洋、高野文子、福山庸治、藤原カムイ : : といった系列になる のでしようか。 などと分類じみたことをしようとすると、抜け落ちてしま んだ ( メタモルフォーゼに定評のある手塚治虫は「ハンパイヤ』 う作家がドドドドッと出てしま い、ほとんど無意味な試みといっ で、この当り前の過程をキチンと描いています ) 、未来社会は突 た感じになってしまうので、先回りしてやめてしまいます。 然画一的なものになるのではなく現代の延長線上にあるんだ ( 『プ たた、いえるのは、らしさを感じさせてくれるマンガと レードランナー』 ) 、といった、いわれてみれば当然の盲点に気づ いたとたん、積極的な映像化が試みられます。もちろん、まだ、 は、基本的に、状況そのものがテーマになっている場合が多く、 短篇が中心です。逆に、キャラクター中心の展開のものは、超能力が発揮される時には目が光るとか ( 『ザ・キープ』 ) 、髪が AJ い、つより″ヒーロ : しかも、単に扇風機で前か ・コミック″と呼びたいようなもので、長逆立っ ( 『炎の少女チャーリ ら風が送られてますよと明らかにわかる形の ) といった手垢にま 篇型が多くなります。例えば『コプラ』とか。 みれた映像表現も数多く見られますけども。 しかし、どっちにしろ、いい作品というのは、″世界″がキチ 。ハサバサしたスイグルミを見慣れた目には体液があふれている ンと描かれているものです。ワープ、超能力、四次元、反重力と 『エイリアン』なんかも新鮮でしたし、ぶっちぎれた首から足が いった言葉が一般に普及するのに反比例して、的な感動は小 はえて歩き出す『遊星からの物体』もショックでしたねーーと さくなってきています。少女マンガでは、未だに新人はは描 いったことを思い起こしてみると、マンガでそういった嬉しい驚 かせてもらえない、という制約は、むしろもっと強くしてもい、 のではないかと思います。現代の学園をチャンと描けないものきを感じることが実に少くなったことに気がつくのです。 せつかくの巨大口ポットも、巨大口ポット同十で戦ってしまっ に、未来の地球が描けてたまるか ? なのです。 「絵にも描けない美しさ」といった表現は、マンガでは許されまては、等身大とかわらなくなってしまいます ( そばに ( イライト の箱を置いといてくれなくちゃ ) 。ワープや亜空間といった昔は せんから、視覚的にも納得のいく″世界″を作らなければならな いマンガはタイへンです。 新鮮だった言葉も、通勤快速とか、中二階といった言葉と大差な いイメージ喚起力しかなくなってしまいました。マンガではあり そういう意味では、最近の特撮映画の進歩の方に、目を見はる ものがあります。 ませんが、プログレッシヴ・ロックと呼ばれた音楽も、今では演 宇宙船だって使えば汚れるんだ、狼男は骨格から変身していく歌やカントリー & ウエスタンなどと同様の単なる一ジャンルでし △光文社刊、ジャスト・コミックス 「ななこ SOS 」① ~ ④、各 480 円

5. SFマガジン 1984年11月号

llllilllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll!!lllllllllllllllillllltllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll 12 歳までそこに住んだ。さしえ画家および 画家としての重要な作品は、 SF とファン タジイの分野ばかりでなくその外側でもよ く知られている。彼の長篇小説は本質的に はファンタジイである。三部作 T 43 G 加 ( 1946 ) 、 Go お襯劭 g 立 ( 1959 ) そ して Titus ス lo れ ( 削除版 1959 ; ラング ドン・ジョーンズによる元原稿からの修復 版 197 のは彼の最も有名な作品である。フ ァンタジイ用語が使われ、凝った濃厚な絵 画的ことばによって語られているが、主人 公タイタス・グローンのゴーメンガスト城 での誕生と幼年期の物語は、根本的には彼 のおとなへの脱皮の物語である。これは S F やファンタジイのジャンルにはまれなも ピルドウン / ス・戸マン の一一つまり本物の教養小説、一つの 魂の成長の物語である。ビークがこの作品 で創造したディテールの豊穣さは、この作 品をファンタジイ文学中もっとも濃厚に現 実化された I F の世界の一つにしている。 ただし、この方面におけるいちばん近いラ イバルたち、 J ・ R ・ R ・トールキンの 『指輪物語』 7 ' ん工。 the 切 gs ( 全 3 巻 1954 ーのや、フランク・ハーパー トの『デューン砂の惑星』 Du ( 1965 ) と比べると、スケールにはだいぶ開きがあ る。 T 〃みあは前二作に比べると密 度の薄い作品だが、それは必ずしもビーク の晩年を暗くした長い不治の病いのせいば かりでなく、物語の進行上必然的な幼年期 の喪失によるものである。ピークがオリジ ナル・アンソロジー『ありえざる伝説』 & 襯 e た・襯ら入を眦 r ( 図 1956 ) に寄稿した 作品はタイタスについてのもうーっの物語 「闇の中の少年」 "Boy in Darkness" で ある。ほかにもス ( 1953 ) という ファンタジイがある。たとえどんなレッテ ルを貼られようとも、ビークは一般に広く 通用する重要な作家である。 〔 J C/PN 〕 XVIII ペドラー、キット PEDLER, KIT イギリスの作家兼科学者、クリストフ ー・マグナス・′、ワード・ペドラー ア Christopher Magnus Howard Pedler ( 1927 ー ) が著述のために使う略名。医 学博士で、 1953 年よりおよそ 3 年間治療に 携わり、その後眼病の実験病理学の研究を 始め、二つめの博士号を取得した。ゲリー ・ディヴィスとともに、 1970 年 B B C の T V シリーズ D00 襯 34 なんを企画した。シリ ーズは 37 話から成るが、多くはペドラーと ディヴィスの作であり、また大半が人為的 な地球減亡の危機を乗りきるといった S F 的内容を含んでいる。ペドラーの最初の S F 長篇はゲリー・ディヴィスと共作の『ミ ュータント 59 』〕ー″地 59 : Thc la 立な Ea ( 1972 ) で、の 00 襯なん風の物 語を柱にしている。プラスチックを食べる ウイルスが研究所で作られるが、それが逃 げだし、プラスチックが溶けはじめるにつ れて大騒動が起きる。アイデアの展開は歯 切れが悪い。公害とエコロジーはつぎの二 つの共作『頭脳破壊』お切 c ん ( 197 の と『ダイ / スター破壊計画』 T んの加立“ “ e ( 197 ので使われたテーマであ り、どちらも充分に満足できる長篇ではな い。科学的アイデアに比べると、それらを 小説化する技術は見劣りがする。近年はェ コロジー問題を取りあげる TV やラジオ番 組への出演が多く、またこの方面で数本の TV 映画を制作している。〔 J C/PN 〕 〔次号につづく〕 254

6. SFマガジン 1984年11月号

ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢ聞ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢ リーに入る。『ラビッド』 , 1977 、 ん 0 工 t んれ , 切 g D イ , 1968 、『デ モン・シード』ののれ 0 れ Seed, 1977 は最近 の三つの例である。映画 ) 1950 年代のア メリカに戻ると、残る二人の代表的なパラ / イアの名手は、リチャード・マシスンと ト・シェクリイである。マシスンの 場合、作品のほとんどすべてはパラノイア 的であるが、そのなかには映画『縮みゆく 人間』 T んげ d 訪ん S んれん・れ g Ma 〃 ( 1957 ) や後の『激突 ! 』の″ ( 1972 ) 等のシナリオも含まれる。シェクリイの作 風はもっと哀しく皮肉つぼい彼はパラ / イアを笑いとばすが、その小説の大半は、 宇宙はわれわれを殺そうとしているという 彼の信念を歴然と表明したものであり、 ラノイアを呼び起こさすにはおかない。シ ェクリイこそはパラノイアのユーモア作家 の第一人者である。より真剣なタイフ。のパ ラノイアは奇妙な固定観念に発するもの で、これはフレデリック・ポールの単独作 または C ・ M ・コーンプルースとの共作の いくつかにあらわれる。その固定観念と は、きわめて老齢で我欲の強い、不死に近 い人間の小集団が、黒幕となってひそか に社会をあやつっているというものであ る。例としては共作の G 市 0 ル - ( 1955 ) やポール単独作の『 21 世紀の酔っ ばらい』の剛れの ' s Ⅳ記ん ( 1960 ) があ る。この二人は共作して『宇宙商人』 The 4 化 M なれお ( 1953 ) で広告代理店に よってあやつられる社会を、Ⅳ。ゲ ( 1959 ) で異星人によってあやつられる社 会を描き、ポール単独作『マン・プラス』 ユれ PIus ( 1976 ) では、人間がコンビュ ーターによって操作される社会を設定し た。ポールは草の根民主主義への支持を明 言しているが、それが彼にあまりにも懐擬 的な見通しを与えているといえるかも知れ ない。パラノイアはしばしば ( まあ幾らか の妥当性はあるのだろうが ) 、 SF と政治 を融合した小説の中に現われる。 パラノイアの実際的な働きを探った小説 としては、いまやほとんど忘れられている 二人のジャンル作家が、早い時期に、驚く ほど完成された作品を書いている。ビータ ・フィリッフ。スの「夢は神聖」 "Dreams are Sacred" ( 1948 ) では一人のテレバス が実際にパラノイア患者の精神に入り、そ の誇大妄想を根底から破壊しようとする。 ログ・フィリッフ。ス ( 前者と血縁はない ) の「黄色い錠剤」 "The Yellow Pill" ( 1958 ) はよくできたジョーク小説で、誰 が妄想を抱き、誰が現実を知覚しているの か、最後には読者にも登場人物たちにもわ からなくなる。しかし妄想大系を探る試み としてもっとも興味深いのは、ロバート リンドナーの『時間を駆ける男』扨 The り訊石ツ″〃 0 ″ r ( 1955 ; T んビ なぞ第 ell 記 Co “ん英 ) に、事実として 提出されている一篇だろう。これは自身は スペース・オペラの世界に生きていて、現 実はたんに夢だと信じている S F ファンの 症例研究である。 50 年代以降のパラノイア小説の詳しいリ こにはとても列挙する余地はな ストは、 い。もっとも、数は多いとはいえ、冷戦の 部分的な解消以来、ヒステリックな側面は 消えたといっていいようだ。この時期の群 を抜いて重要な作家はフィリッフ。・ K ・デ ィックである。彼の小説の多くにある根本 的な問いかけは、次のようなものである。 「パラノイア ( もしくは分裂症 ) 患者の見 る世界はどの程度まで妄想か、また現実 は、精神が見せかけの安定の中で正気を維 持するために防御的に作ったものであると すれば、じっさいどの程度までつくりもの なのか ? 」ディックの小説のいくつかは、 実際にパラノイア患者の意識が投影する I F の世界を舞台にしている。 パラノイア 262

7. SFマガジン 1984年11月号

ア的とわかる SF 小説 ( きわめて多数 ) を 区別することは明らかに必要である。パラ ノイアは「たとえば誇大妄想や、特に被害 妄想のような体系的妄想によって特徴づけ られた精神異常である」と定義されてい る。数多くの SF の背後に存在しているよ うに見える被害妄想は、かってアメリカ S F 作家協会で討議され、三つの論文が後に 一冊の小冊子として出版された。 ~ 4 加 の & 〃 0 に窺 / 0 〃 ( 1967 ) と題された それにはアレクセイ ・ / くンシン、ンエイ ムズ・ブリッシュ、ジョアンナ・ラスが寄 稿した。ラスは歴史的に見ると SF のパラ ノイア的要素は主としてゴシックを起源と するものだと論じているが、それはまった く正しい。人間はみな安全ではないという のがゴシックの基本である。つまり、宇宙 はもともといつでもわれわれを脅かす気ま ぐれな脅威を秘めているということであ る。そういった脅威は、たとえば工ドガー ・アラン・ポー、アーサー・マッケン、そ してアンプローズ・ビアスの小説で重要 な役割を演じている。ビアスの「怪物」 "The Damned Thing" はそのとりわけ 純粋な例で、目に見えない貪欲な怪物を描 いている。 ウィアード・テールズ誌をはじめとする バルプ雑誌や初期の S F 雑誌はこの種の小 説を好んた。 H ・ P ・ラヴクラフトはそう いった体系的パラノイア思想を表わす作家 としてほとんど完璧な例である。彼の作品 の基本アイデアは、怪神を崇拝するために 形成された身の毛もよだつような邪教の信 者たちが、全世界に陰謀を巡らせるという ものである。それらの神々を実体として呼 び戻そうとするのは、われわれを統治し、 われわれから養分を吸い上げるためであ る。スペクトラムの S F 側でもパラノイア 的作品には事欠かない。たいていの侵略も のは、外国人、異星人にかかわらずこのカ 265 テゴリーに入ってしまう。 しかしながら二つのことを留意せねばな ハフ / イアは必ずしも悪 らない。第一は いものではない″という古くからの定義で ある。侵略というのは結局のところ起こる ものだし、人々はときに迫害され、宇宙 は、ちょっと考えればわかるとおり、じっ さい脅威を秘めている。二つめに注意すべ きことは、小説がパラノイア型にあてはま るからといって、当の作家を事実狂人であ るとする説には、普通正当性がないという ことである。恐がらせることを目的とした 小説のマーケットはいつも巨大であった し、そしてこの仕事をする作家の方でもパ ラノイアなのは読者だと、同じように主張 することもできよう。 ジャンル雑誌における初期のパラノイア S F には、侵略してきた異星人がわれわれ に取り憑き思考を支配しようとする / ノレ・ヴィンセントの "Parasite ” ( 193 の がある。またエドモンド ・ハミルトンの "The Earth-Owners ” ( 1931 ) は、地球 がすでに変装した異星人によって侵略さ れ、操作されているという、後に S F で非 常にポヒ。ュラーになったテーマのもっとも 初期の例の一つである。あの疲れを知らぬ 不可解の探究者、チャールズ・フォートは このパラノイア的思いこみを簡潔な名言で 公式化した 人類は家畜である″。多 くの SF 作家はこの名言にヒントを得た。 『超生命ヴァイトン』 & 立お 4 なだ ( 1939 ; 1943 ; 國 1948 ) や D イ I Sa の ( 1948 ; 1951 ; 國 1963 ) におけ るエリック・フランク・ラッセルはその例 である。このテーマのよくある変型のひと つは、真性のパラノイア患者のあいだに S F の支持者を数多くつくったにちがいな い。すなわち、精神病院にいる患者の半数 は、彼らが真実を知ったがためにそこに収 容されているのであり、その陰謀を暴いて VII

8. SFマガジン 1984年11月号

篇を執筆中。受賞作は早川書房刊行予定。 ・ヒューゴー賞発表ーーープリンがトリプル・ ・ Why Read SF 7 ノヴェラのザーンは、アナログ誌の人気作 クラウン達成ー 家。昨年処女長篇を出し、これも好評だっ本誌四月号「世界情報」で″ファンタ 九月二日、ロサンジェルスで開催中のワー た。受賞作は、無数の並行世界の接点を利用ジイ汚染論が紹介されたが、関連してアメ ルドコンにおいて、一九八四年度のヒーゴして超空間を航行する宇宙船が別の宇宙に迷リカでは、の意義や現状についての議論 ー賞が発表された。 いこんで : : : というもの。 が盛んになっている ( そのいくつかを『 ノヴェレットよ、・ ヘアがネビュラとダ・フルの本』 6 号で紹介する予定です ) 。ここでは / 〈長篇〉『星の海、満ちゅく』 S 、ミミトえ ~ ・・ 、 ~ g ディヴィッド・ブリン C ハンタム社 ) 受賞し、中・短篇の名手としての力量を見せアジモフ誌にのったチャ】ルズ・プラット 〈ノヴェラ〉『分岐点』 "Cascade Point" つけた。 ( ファンタジイ批判派 ) とビアズ・アンソニ ンヨート・ス ティモシイ・ザーン ( アナログ誌 ) トーリイの・ハトラーは、数少イ ( 擁護派 ) の公開討論への読者の反応を一一 / 〈ノヴ = レット〉『血流音楽』 "B100d Mu ・ つほど紹介しよう。 ない黒人女流作家で、作品も強烈なテー sic" グレッグ・ペア ( アナログ誌 ) マ性をもったものが多い ( 本誌八〇年九月号まず、自営業の主婦から、客やセールスマ 〈ショート・ストーリイ〉コ一一口葉の響き』 「スキャナー」参照 ) 。が、地方大会のンの相手をし、金の計算をし、妻や母として "Speech Sounds" オクタ . ビア・・・ハト ゲストにもなったりして、それなりの人気はの義務をこなしたあげく「本を読む時にも、 ラー ( アジモフ誌 ) あるらしい。受賞作は、疫病によって″言また現実だなんてもうたくさん。他の惑星や 〈 / ンフィクション〉『 & ファンタジイ葉″が失われたアメリカを描いたもの。 次元へ逃げ出したいのです。・フロンズのドラ 百科事典・第三巻』ドナルド・・タック 以上、作品部門は全て若手が独占した。ま ゴンにのって飛びまわりたい : : : 」と。フラッ トへの反論 ( ? ) 。 / 〈ドラマ〉『スター・ウォーズ / ジ = ダイのた中・短篇の発表誌別では候補段階と同様、 復讐』 アナログ誌が優勢。 アンソニイに対しては、彼がファンタジイ 〈。フロ編集者〉ショーナ・マッカーシー ( ア ほか注目されるのが〈プロ編集者〉で、フ 小説と、白日夢のような単なる空想をごっち ジモフ誌 ) ア 1 マン誌 ) の四年連続受賞をマ やにしている、との疑問が寄せられている。 / 〈・フロ画家〉「イクル・ウィーラン ッカーシーがくいとめたこと。彼女が昨年か ・ Who Reads SF 7 〈セミプロジン〉ローカス紙 ら編集長となったアジモフ誌は、意欲作や若 〈ジョン・・キャンベル賞〉・ <t ・マカ手作家に広く門戸を開く方針をとって、作家 ローカス紙の読者調査によると、全読者の ヴォイ と読者の双方から大きな支持を得ている。一約四分の一にあたる千人の平均年齢は三十三 ゴ 長篇の・フリンは、ネビュラ・ヒュ 方、誌は、ネビ、ラ・ヒ , ーゴー両・五歳。十年前に比べて、三十歳以上の読者 ローカスの三賞独占。ネビュラ・ヒューゴー 賞とも受賞作を出せず沈滞気味。 が約三倍の六割に達したのに対し、二十一歳 のダ・フル受賞は『楽園の泉』以来四年ぶり、 キャンベル賞は、ネビュラ・ヒューゴー両以下は六分の一の四パーセントに減った。ア / トリ。フル受賞は『夢の蛇』以来五年ぶりのこ賞長篇部門候補ともなったマカヴォイが、順メージング誌が定期購読者の一部に行った調 とである。特にヒューゴーでは、アシモフ、 当に受賞。 査でも平均年齢は四〇・三歳。ファンの マキャフリイの二巨匠をおさえての受賞。書 なお、受賞の情報はワールドコン参加中の高齢化は進んでいるようだ。 評の中に「ファンが今もっとも望んでい 川隆氏から届いたもの。氏は作家たちにイ ( 山岸真 ) る作品」というのがあったが、あながち大げンタビ、ーしまくっているとのことなので、 さとも言えないようだ。プリンは現在、グレその成果をお楽しみに。 ゴリイ・ペンフォードと合作でハ ード長

9. SFマガジン 1984年11月号

オターニョはラ・フラタ・カトリック大学 品を許すはずがなかった。まして、タイトスク地方に、イニヤキは大研究所を建て、 ル自体が・ハスク語とあっては、政府にとっ ・ ( スク人やスク語を話す外人 ( 外人の中の数学部長をつとめる著名な学者でもある 8 にスペイン人を入れているところも痛快が、作者自身が・ハスクの血を引いているの ては不敵な挑戦と映ったことだろう。 だ。フランコ政府の役人の激怒が目に浮かかどうかは定かでない。 ハスク人である主人公のイニヤキ・は、アぶ ) の研究者三十人を結集し、シャビエル メリカに住んでいた伯父が死んだため、遺チョのタイムマシン計画を進める。ある日「宇宙飛行士」 EI Cosmonauta は、集中 ついにタイムマシンが完成、数百年ずつ過ただ一人のキュー・ハ人作家アンヘル・アラ 言で莫大な遺産を受けとることになった。 のというと、 ンゴの作品。キュー・ハ しかし、その使途はあくまで、自分たち、、ハ去をさかのぼっていくが、 ( このマシンの スク民族の起源の研究につながるものでな力は半径数百メートルに及び、一地域全体「えつ、キュー・ハにもがあるの ? 」と いうのと、「カルペンティエルはキュ くてはならない、という但し書きがついてが時間の中をとぶ ) 紀元前後までいっても、 あたりに住な・ハスク人の言葉はおどろくほ人ですよね」というのと、たぶん二通りの反 さて、ある娘と結婚したイニヤキは新婚ど変化がない。だが次のジャン。フでついに応があるように思う。然り、キュー 旅行中、水爆を積んだ飛行機の衝突事故現だれもいないところまできた。・ハスク人のはある。そしてそのは、カルペンテ イエルとは全く関係のない、完全なジャン 場の下にいて、夫婦そろって放射線を浴びうわさもきかない。だがそこでタイムマシ と ル g-4 としてかなりの水準にある。 てしまう。やがて長男シャビエルチョが生ンがどういうわけか動かなくなり、しかた いっても実は僕自身ゴールデンの例の一文 まれるが、これが放射能の影響で ( このあなく彼らはそこで生活を始めた : ・ 1 。ハにがあるとは を読むまえは、キュ たりは安易にすぎるが ) おどろくべき天才 ここまで書くともうネタはわれてしまうあまり考えていなかったのだが、先日『ポ になっていく。四カ月で言葉はペラベラ、 八歳で大学に入り、一年余りで博士号をとが、とにかく作中には、・ハスク語の単語がエミア ( ポヘミア ) 』という、キュー ってしまう。二人の間にはさらに六人の子頻出し、さながら民族主義小説。冒頭も雑誌を読んでいてびつくりした。何と、ペ タイノ・チ 供が生まれるが、全員が長男同様の大天才。「ハスク人 Cbaskos) には人種主義的なとストセラーリストのトツ・フに、・ ャビアーノ『愛の惑星』 Amoroso Planeta ころはない」という一文で始まるのだが、 シャビエルチョはその後ソ連、さらにアメ とあるのだ。チャビアーノという作家 スペイン ( カスティリヤ ) 語なら、「ハス リカに留学するが、両国とも彼のやりたい ク人ーは vascos と書くところだ。しかもは知らないが、とにかくカッコの中にはは テーマの研究をさせてくれない。そのテー マとは、タイムマシンの製造だった。そこ baskos の語には注がついていて、「これつきり「」と記されている。まちがい でイニヤキは考える。タイムマシンを使えが正しい書き方」とある。もっとも全体になく、キ = ー・ハでがベストセラーにな っているのだ。ラテンアメリカの出版社と ばパスク人の起源がわかるだろう、それなとぼけたユーモアがちりばめられていて、 いうのは、信じられないくらいいいかげん ら伯父の遺言に従うわけだから、遺産を使 ( オチ自体がそうだ ) 決して。フロバガンダ で、注文した本が手に入る可能性などゼロ うことができる。というわけで、故郷の・ハ る一「。 ( なっていない。

10. SFマガジン 1984年11月号

定本 ララフト全集 アーカム・ハウス社特約 七歳時の習作から死の直前のメモまですべてを 網羅。各巻に HPL についての詳細な評論およ び HPL 自身のェッセイ・共作作品等を併載。 資科篇として邦訳リスト・ H P L 年表等を付。 作品ならびに内外の H P L 資科を駆使して、今 世紀最大の怪奇作家ラヴクラフトの全体像を解 明せんとする愛好者必携の全集 . 〃 全 10 巻 〇矢野浩三郎編 / 監訳〇 S. T. ヨシ原典校訂 ①小説 1 〔℃ 7 ~ ' 幻〕②小説Ⅱ〔 ' 22 二 24 〕 3 小説Ⅲ〔 ' 25 ~ ' 26 〕 0 小説Ⅳ〔 ' 27 ~ ' 28 〕⑨小説 v 〔 ' 30 ~ ' 引〕⑥小説Ⅵ〔 ' 32 ~ ' 37 〕 ⑦詩・評論①科学記事・エッセイ⑨書簡 I ⑩書簡 II * 十月末より毎月一冊づっ配本 * 各巻定価 3200 円 函絵 = H. R. ギーガー 国書」イ丁 003 ( 917 ) 8287 振替・東京 5 ー 65209 * 小社の書籍は吊約・注文制です あ近くの書店にあ申し込み下さい