「なんなりとーーー」 女が、言った。 女が繰り返した。 「お申しつけくださいませ」 「このわたくしに、どうかお命じください」 確かに、聞こえた。 ルー・風は、逃げ道を捜す獣のような素早さで、あたりを見回し が、″声″ではなかった。女の声が、そう聞こえたわけではなか 女が、その口元を覆った布の陰で発した声は、ルー・風の耳に届そして、言った。 とこなんだ ? 」 「教えてくれ ! ここは、・ 女の瞳が、ひと回り大きく見開かれたように思えた。 それは甲高い、小鳥のさえずりのような声だった。 そして、小鳥のさえずりと同様、美しく音楽的ではあったが、そそして、小さなさえずりが聞こえてきた。 の意味を理解することはできなかった。 が、それは答ではなかった。 しかしー ルー・風の頭の中には、軽い笑いの気配が伝わってきただけだっ 女がそう発声したと同時に、その″意味″だけが別に、ルー・風た。 の頭の中に響いてきた。 と同時に、彼の立っ地面が、微かに震えたような気がした。 そう , ーーそれは、まさしく、純粋に″意味″だった。 震え : : : そう : : : その震えは、どこかなまめかしい、生き物の身 なんなりと」 じろぎのように感じられた。 ・風は、理解した。 ぞくり、とルー・風もまた背筋を震わせた。 「お申しつけくださいませ」 女の、布に包まれた頭部が、ゆるやかに揺れた。 女は、レ ・風に、そんな意味を届けてきたに違いなかった。 そして、歌うような声が、その動作に続いた。 そして、彼女は、またさえずった。 「・ : : ・なんなりと : ・・ : いずこへなりと : : : 」 「いずこへなりとーー」 「よし ! それならーー」 意味が、伝わってきた。 たまらず、ルー・風は叫び返した。 「あなたをご案内いたします」 「その門から、わたしを外へ出してくれ ! この世界の外へ、連れ てってくれ」 ルー・風は、よろりと一歩、後退った。 「外へ 「ーーおまえは ! 」 きれいなさえずりが、彼に応じた。 叫びかけて、彼は、続く言葉をいったん呑み下した。 「どうして ? ならば、なぜ、ここへいらしたのです ? 」 こ 0 ー 43
それが : : : その足りないものというのが、″風〃の文字にこめら : ・坊や ! 」 れているはずの意味なのたと気付いたのは、それから数時間も後の 声がした。 ことだったのである。 「 : : : どうしたの ? ねえ、どうしたのよ」 しかし そして、肩を揺すられた。 その時は、まだ、意識そのものが、奥深いところで痺れていた。 二度、三度と、ルー・風はまばたきを繰り返した。 「ちょっと 坊や、こっちをお向きなさい」 そして、顔を上げた。 アイリーン・の手がのびてきて、ル 1 ー・風の頗を両側からき つくはさんだ。 N 0 Z ー 4 そして、強引に、仰むけにされた。 それから、目蓋を押し上げられ、さらにはロの中をのそかれた。 目の前に、 〈エメラルド盤〉の・フリントがあった。 「どうやらーー . 」 それは妙な具合に歪み、一部分が濡れていた。 荒つぼい検診が終わると、彼女は、はっきりと疑わしげな口調 どうやら : で、ルー・風に告げた。 その上に顔を伏せていたようた。 「生きてはいるようね。でも、さっき、あなたは、半分死んでいた こすれて光っている液体は、ロの端から流れた唾液らしい わ。 いいえ、冗談なんかじゃない。本当に死にかけていたのよ。少 「どうしたっていうの ? 気分でも悪くなったの、ルー・風ーー」なくとも、あたしには、そう見えたわーー」 耳元で、アイリーン・の声がした。 ルー・風は黙っていた。 . レ 何をどう応えていいかが分からなかったからだ。 彼は、瞬間、その名前を思い出せなかった・ 「さあ 1 ー」 トール が、ふた呼吸ほどの後、やっとのことで、じわりと記億が蘇って やっと彼の身体から手を離して、アイリーン・は大きく息を きた。 つき、続けた。 . レ : そう : : これは、わたしの名前、だ : 「・ : ・ : 話してちょうだい。何があったの ? どんなことが、起こっ かぜ そして、またしばらくして、″風という文字を思い出した。 たの ? 」 ルー・風は、ゆっくりとかぶりを振った。 しかし : : : どうにも、しつくりとこない。 アイリーン・ Q に手荒に扱われたおかげで、かろうじて虚脱状 何かが足りないような気がしてならなかった。 態からは抜け出ていた。
「知るもんかーーー」 そもそも、女なのか ? 人間なのか ルー・風は喚いた。 ( ここは・ : : ・どこなんだ : : : ) 「この、わけの分からない夢から、早くわたしを覚ましてくれ ! 」 夢ですって ? 」 ルー・風は、もう一度、カなくその疑問を頭の片隅に浮かべてみ 女の大きな黒い瞳が、ぐるりと動いた。 すると女が、小さくうなずくような仕草をみせ、そして、さえず 「あなたは、夢から醒めることをお望みなの ? 」 りを洩らした。 女の、ルー・風に対する態度が、明らかに変化しはじめていた。 ・ここが、とこか・ しいえ、それを教えることはできない 最初の、奴隷的なまでにヘりくだった様子は、もはや消え、かわ「 : わ。なぜなら : : : あなたは、ここがどこかを知らないんですものね りに、言えば楽しげな、もて遊ぶような調子が表われている。 ルー・風は焦りを覚えた。 女は、意味の不思議な言葉を、歌うように続けた。 あがくような気持ちで、彼は言い返した。 「そうとも , これは、夢だ。だから、この夢の外へ、わたしを出「 : : : あなたは、何も知らずに、ここへ出てきてしまったというわ けね ? そう : : : あなたは、外へ出して欲しいとわたしに言った : してくれ ! その、門の外へー・ー今、すぐに : でも、それは反対 : : : ここが、外・ : ・ : あなたは内側から、ここへ 女が、笑った。 出てきてしまったんだわ」 今度は、はっきりと、笑った。 夢から醒めることがお望みなのね ? そしてーーそして、あ「なんだって : いいわ、おもどりなさい。それが望みだというなら : : : 夢の なたは、どうなさるおつもり ? 夢から醒めて、あなたがた人間「 : 中へ、お帰りなさい : は、生きていけるのかしら ? 」 女が、ゆっくりと身体を回した。 またも、地面が震えた。 ルー・風の足の下で、その奇妙に柔らかな地面が、ゆらりと波打そして「・ついと手をのばして、鉄の扉に触れようとした。 「待て 待ってくれ ! 」 思わず、ルー・風は声を上げた。 「夢の中へ、とはどういう意味だ ? わたしは、ここを出て、元の 現実にもどりたいんだ ! 」 ええ、もちろん、現実ですと。どう呼・ほう と、同じこと : : : あなたは、もう一度、その現実とやらの中へ閉じ っこ。 ルー・風は、唇を引き結んだ。 ( あなたがた人間 ) : : : そう、女は言った。 ( あなたがた : : : ) と、突き離すように呼んだのである。 だとしたらーーその女は、何なのか ? こ 0
ビやス ・前回までのあらすじ・ そこで、狂博士ミーラー・ \--äから渡された〈エメラルド盤〉 と称するものの接写。フリントを眺めていただけだ。 記録員であるルー・風は金星調査隊の欠員補充のために、金星の 衛星基地《ヴィーナスター》へと派遣される。だが、」 到着した彼を そして、偶然に、ひとつの紋様に注目した : : : それが、 待ち受けていたのは無人の発着ルームであった。彼は酷寒の発着ル 意味する文字ではないかと空想し、さらに、もうひとつ、″鍵〃に ームで内部への通路を探すうち、エレベーターを見つけるが、そこ 相当するのではないかと空想し得る文字を見つけて : ・ で白衣の女性アイリーン・に出会う。あまりの寒さに意識を失 ( しかし ったルー・風は彼女の部屋へ連れていかれ介抱され、彼は金星で撮 〃であり、″鍵で どうあれ、それは、ただ文字の上での、 ったといわれるあきらかに人造物を撮ったと思われる不思議な写真 を見せられる。その後ローヴァー・ (.50 少佐らと死んだ前任者であ あるに過ぎなかったはずではないか るカーリー・ のコ・ヒー・アンドロイドのところへ、情報の引き そんな、″文字″を″くぐる″とは、どういうことなのか 継ぎに行く。ルー・風らはカーリー・ の死に関係のある映像記 それよりも何よりも、その文字に似た紋様を″ ″と解したこと 録を受け取りそれを見るのだが、ミーラー・博士に邪魔をさ すら、実に、ルー・風の勝手な思い込みなのである。 れる。アイリーン・が博士を衝撃銃で倒し、ルー・風らは金星 ビルス へ降下しようとするが、またしてもミーラー・博士に行く手 にもかかわらず ドールジー′ビルス をはばまれる。博士を説得し、結局風、、 (.50 、の四人 そんな思い込みの内部に、彼はふと入り込み、そして閉じ込めら で金星へ降下する。降りたった一行は基地の試験坑道へと入り、 れてしまったというわけだ。 博士に文字らしきものの描かれた石盤を見せられ、話を聞く。 ( ーーー馬鹿な ! ) そして各自文字盤の解読をいいわたされるのだった : ・ 佃力が、根本的におかしい。狂っている。そうに違いなかった。 登場人物 そして、狂っているとしたら、それは、まずもって自分だ。これ ルー・風・ : : ・宇宙開発部隊所属の記録員。 らは全て、彼自身の頭の中での出来事に決まっている。 アイリーン・ : : : 国際宇宙連盟所属、中佐。 が、その″狂い″を意識の上で、どうしても納得できそうにない ローヴァー・ (.50 : ・・ : 部隊の先任士官、少佐。 どルス もどかしさが、やっとのことでルー・風を苦しめようとしはじめて ミーラー・ : ・・ : 連盟の嘱託研究員、惑星地質学者。 なんであれ なる物質によって形造られているのかを言い当てることはできなか それが現実であろうとなかろうと、彼の目の前には、閉ざされたった。 鉄の門と石の壁が立ちはだかっていた。 鉄のようではある。が、どこか : : たとえば、表面に浮いた錆の 鉄や石といった呼び方は、しかし、便宜的なものだ。 具合が異質だ。 その、見た目の質感が似ているというだけで、実際それらがいか あるいは、石壁と見えるものも、その肌が、妙に植物的だ。なん テー・フマノ ー 40
・ : 恐ろしい 彼女は、怒っている。 めずらしいことに、本気で、怒りだしたらしいのである。 「ーー恐ろしいプ・・何がです ? 」 「いけませんか ローヴァ 1 ・ (.50 が、ややムッとした風に説き返した。 ローヴァ 1 ・ 0 が、理解しかねる、といった風に唇を尖らせ、 「じゃあ、中佐は、 O O —が、あの〈エメラルド盤〉とやらを 解読するかもしれないと、本気でそうお考えになるんですね ? 」 肩をすくめた。 「 : : : 分からないわ」 「ーーーしかし、 O O —だって、いつばしの知性体じゃありませ んか。データなしでも、案外、その霊感法とやらを真似て、あれを彼女は答えた。 解読してくれるんじゃないかと : : : そんな風に思って : : : 」 「 : : : でも・ : : ・恐らく・ : : ・なら、なんとしても、あれを 「そうよ は、まぎれもなく、セラミックででき読み解こうとするはずだわ : : : どんなことをしてでも : : : そして、 た知性体よ。それも、我々が及びもっかないほどの類推と仮定思考その結果、どうなるか : : : 」 の能力を備えた超知能たわ」 アイリーン・が、ちらと視線を、ルー・風の方へ投げかけて 「たったら、な・せ : : : 」 きた。 「あなたは、霊感法って言ったわね。そうよ、は、まず ルー・風は、目を伏せた。 間違いなく、それに似た思考回路を使って〈エメラルド盤〉に取り ( : : : そう : : : 彼女の言う通りだ : : : ) 組むはずだわ。そして ああ、そして、もしも、それを解読彼は、ようやくにして、彼女の怒りを納得した。 してしまったらー。ー〈エメラルド盤〉の内容を、彼女が知ってしま ( : : : もしも : : : もしも、が、あの ったらーーー・そんなことになったら、どうなるか : : : あなたは、それそれをくぐったら : : : ) どうなるだろう を、想像しなかったの どうなるか、そこまでは想像できなかった。 すさまじい早ロで、アイリーン・ Q は続けた。 が、何かが起こることは、確かだ。 「ーーーしかも ! しかも、彼女は、今、普通の状態じゃないわ。狂 ヴィーナスターで、か : : : あるいは、この世界で、何かが : : : 起 っているのよ そんな、そんな彼女に 〈エメラルド盤〉 きる : : : かもしれない。 を与えたら . 冫カくりと肩を落とし「 : : : 仕方がない : : : 今さら、から〈エメラルド盤〉を さらに言いたてるかと思えた彼女が、急こ、 ; 取り上げるわけにもいかないでしようし : : : 」 ドール つぶやき、顎を引いて、アイリーン・はまた歩きだした。 そして、ゆっくりと首を振りながら、低くつぶやいた。 ジーク ルー・風とローヴァ】・ 0 が、後を追う。 「 : : : もう、遅いわ : : : 分からない : : : でも、あたしは、こわい : こ 0 〃を見つけて、
「うたた寝、ですっ・て は、とにかく何も話さない方がいい。分かるでしよう ? 」 彼女が、片方の眉を大きく上げた。 ルー・風は、うなずいた。 「あなたは、ここで、うたた寝をしていたっていうの ? 」 それは、確かだ。 「そうです」 言われるまでもなく、どんなことであろうと、もとより、彼に何 ルー・風は答えた。 かを告げる気にはなれるはずがない。 「プリントを眺めている内に、つい眠くなって : : : 」 「いいわ。じゃあ、出かけましよう」 「そしてー ー ? 夢を見たんじゃなくて ? 」 彼女が言った。 ルー・風は、ぎくりとした。一 「出かけるーー・ ? 」 ク声ス 彼女は知っているのだろうか 「そうよ。ランドリアン・ O を捜しにいくのよ。彼が持ってい 彼女もまた、あの″門 / / をくぐったことがあるのではなかろうかる〈ネティの鍵〉を取りもどすために そうだった。 しかし、そうは思ったものの、彼は慎重に否定の言葉を口にし そして、ルー・風は、記録員としての装備を整えてついてくるよ う命じられていたのだ。 、え : : : 見たかもしれません。でも、忘れました。何も : : : 覚 そのことを、やっと思い出した。 えていません : : : 」 しかし、〈ネティの鍵〉を″取りもどすとは、また勝手な言い 「そう : : : 」 ビルス アイリ 1 ・ン・は、不満そうに鼻を鳴らした。 それは、彼女のものでも、 n のものでもないのだ。 が、それ以上、彼を追求しようとはしなかった。 しかし、それをどうこう言っても仕方がない。 「いいわ。分かったわ。そういうことにしておきましようーーーこ 今の彼は、ともかく、彼等について歩くしか道がないのだ。 そして、ちょっと考えて、言葉を継いだ。 「でも、大丈夫なの ? 坊や : : : そんな様子で、出かけられる ? 」 「ーーーでも : : : そうね : : : もし、その、あなたが見たかもしれない アイリーン・が、本気で気遣っているかのような声を出し ビルス 夢を思い出したとしても、ミーラー・には話さないことね。 それと・ーー」 : ええ、なんとか」 ′ール 、アイリーン・は、唾液で汚れた〈エメラルド盤〉を爪の先で ・風は答え、立ち上がった。 弾くと、続けた。 足元が少しふらついたが、金星服に入ってしまえば、筋肉は休め ビルス ミ 1 ー一フ 「うたた寝の話も、まずいわ。 ・»-a TJ にていられる。 しいわね ? テーゾマ / ー 48
現実へと脱出できるーーそのはずだ。 らかの木材、あるいは、未成の化石木といったものかもしれなかっ そのためには : ルー・風は、、きなり立ち上がった。 それに : : : 彼が今、尻をついている、この大地 : : : その感触が、 また異様だった。 そして、振り向いた。 : そして、柔らかい。 じわり、と生暖かい : そこには 一体・ : : ・この感触は : ・ やはり、最初に目にした通りの世界が、彼方まで拡がって見え ルー・風は、自分の頭を、激しく左右に打ち振った。 微かな雷鳴が、あたりの空気を、神経質に震わせ続けている。 そんなことを思い悩んでみても仕方がないではないか。 門と壁が、何でできていようとーーそして、大地が気味の悪い弾 ( 空気 : : : ) この際、そんなことはどうでもいい。 ルー・風は思い出したように、はじめて、大きく息を吸い込んで 力を帯びていようと それらによって、切り離され、閉じ込められてしまっているこのみた。 : なるほど、ここには、ともかくも呼吸できる空気があった。 状態こそが、問題なのだ。 しかし、どこか、妙な感じのする空気だった。何かが、そこには ( しかし こ辿り着き、ぐいと目を欠けていた。 ルー・風は、またも、その根本的な疑い ! 、 しばらくして、ルー・風は、その″妙な感じ″の原因に気付い 与小しナ どこだ ! ) ( ここは そう ′匂い〃が無いのだ。 冫。いかなる臭気も含まれてはいなかったのである。 その空気こよ、 彼は再び、激しくかぶりを振った。 なんとも : : : 頼りない空気だった。 どこでもあるはずがない。 そして、その無臭の感覚が、何よりも大きな奥深い不安を、彼の ここは、自分の夢想の中だ。そうに決まっている。 自ら紡いだ妄想ーーー白日夢に、自分から捉えられてしまったの無意識に植えつけていたのである。 嗅覚 : : : それは、森林の闇の中を、鼻面だけ頼りに這いずり回っ ていた哺乳類の子孫たる人間にとって、何よりも原初的で、それだ だから けに支配的な認識の手段である。 醒めればいい。 人間は意識するしないにかかわらず、匂いを嗅ぐことで、絶え 醒めることで、ここから出られる。 こ 0 こ 0 こ 0
ビルス 少佐は、まだ、明らかに不服そうだ。 当然、ミーラー・も、とてつもない秘密を、それこそいく ( ーーわけが分からぬ ) といった目配せを、ルー・風の方に送ってらでも抱え込んでいるはすである。 くる。 それらが、いっか、出合うことがあるのだろうか ・ : ルー・風は、それに応えることができない。 それとも、積み重なった秘密が、自らの重みに耐えかねて、不意 メノーンドーム にはちきれたりするのではあるまいか 主気閘へ通じるハッチが見えてきた。 シャッター 「まったく ! おまえたちは、何をぐずぐずしておるんだ。こんな その遮蔽扉は、開かれたままになっている。 クロス クソッー・て その向こうで、人影が動いていた。 ことをしていて、 O に逃げられでもしたら ら ! 早くせんか ! 」 「ーー何をしておる ! 早く ! 走ってこい ビルス 叫び声が聞こえてきた。 ーラー・に追いたてられて、三人は地上車の発着場へ急 ピルス 待ちかねているミーラー・»-äだ。 ヴィーナスーツレッシ / ダルーム アイリーン・がそれに応じて足を早めながら、素早く振り向その向こうに、金星服の装着室がある。 いて言った。 記録員用の装備も、そこに揃っていた。 カートリッジ 「分かってるわね、少佐ーー〈エメラルド盤〉をに見せ新しい記録筒だけを、それに装鎭してやればいい。 たなんてことを、»-; に喋っちゃ駄目よ。ほのめかしてもいけな ルー・風は、早速、その作業に取りかかった いわね ? 」 「ところで、博士ーーー」 ヴィーナスーツ ビルス 「それは もちろん。分かってます」 金星服にもぐり込みながら、ローヴァ 1 ・ 0 が、 *-äに尋 が答える。 ねた。 しかし、彼は、分かっていない。 「ランドリアン・ O の居場所ははっきりしているんですか ? 自分が何をしたかを、理解した様子ではない。 もし、あちこち捜し回るのなら、予備の器材を用意しなくてはなり ( : : : それにしても ) ませんしーーーー , 一 ピルス ルー・風は、こっそりと溜め息を吐いた。 ミ 1 ラー・は、うめき声で、それに応した。 またも ″に話してはいけない″である。 「 : : : うむ、いや : : : それほど長い旅にはならんだろう。恐らく、 こうして、秘密だけが溜まっていく。 そう : : : 三時間もあれば、奴を追いつめられるはずだ」 グス にもかかわらず、何ひとつ、明らかにはなっていかない。 「追いつめる ? じゃあ、 O cn 教授は、どこか、このあたりを移 ( 一体 : : : どうなるのだろう ) 動中なんですか ? 」 ルー・風は思った。 「・ : ・ : うむ : ・・ : まあ、そんなところだ。とにかく、儂の指示通り テーブマン タロス ランにート 22
込められるのよ : : : 」 そして、女は、ふと思い付いたという風に、付け加えた。 「そう : : : あなたの、帰りたいという望みをかなえてあけるかわり ここへ、何かひとつ、置いていきなさい」 「置いていく ? 何を , ーー」 ルー・風は説き返した。 「言葉、よ」 女が言った。 「何か、言葉をひとっ : : : 言葉か、さもなければ名前をひとつ、わ たしにちょうだい。そうすれば、すぐに、 . この扉を開いてあげる」 女のさえずりは、そんな意味を、ル】・風にもたらした。 : コト 「そうよ。さもなければ、名前をーー」 「 : : : 名前 : : : ああ、名前なら・ : : ・」 麻痺した思考で、ルー・風は、無意識の内に答えていた。 「ルー・風 : : : わたしの名前は、ルー かぜ レ フ 1 は、風ね ? 」 女は、彼の名前にこめられている意味を、正確に言い当てた。 まあ、なんて、きれいな言葉 ! ありがと う、いただくわーーーこの、言葉を ! 」 叫ぶように繰り返しながら、女は、扉を押した。 徴動もするとは思えなかったその重々しい扉が、女のひと押しで あっさりと動いた。 そして、その向こうから 光が射し込んできた。 この世界の暗さに慣れていた網膜が、まぶしさに、瞬間、くらん 話の特集図書館 かぜ かぜ 1 0 月間日発売 定価 980 円 別冊・話の特集 BEST SELECTION 5000 * この秋、話の特集が贈る個性的プレゼ北方慊三 ( いい女と心優しき男のための 100 冊 ) ント。現代を疾走する各界の 50 名が独特内藤陳 ( 読まなくては生きていられない、読 のボジションガら選んだ 1 圓冊の本。総数もうとしない奴は生きていく値打もない本 ) 50 圓冊にあよぶあもしろ図書館。選者の椎名誠 ( 面白本 100 冊 ) なだいなだ ( 101 匹ワンちゃんの本 100 冊 ) メッセージと、傑作対談 10 篇も収録。 白石冬美 ( 猫好きの人に捧げる猫の本 100 冊 ) 赤川次郎 ( ューモア・ミステリの本 100 冊 ) 熊井明子 ( 香りをめぐる本 100 冊 ) 横田順彌 ( 名作 SF100 冊 ) 白井佳夫 ( 映画を楽しく見るための本 100 冊 ) 中山千夏 ( 女についてのいろいろな本 100 冊 ) 楠田枝里子 ( 0 歳から 99 歳向けの絵本 100 冊 ) 向田邦子 ( 食いしん坊に贈る本 100 冊 ) 天野祐吉 ( 現代を広告する本 100 冊 ) 山下洋輔 ( メッタメタ無差別摂取本 100 冊 ) ほか豪華執筆陣を満載 ー 45
い声そ自醒だ現こ と ル鼻 分め 孔れ も の最 しや でて 力、 ″も 覚直 はま はな 本 誰 そ的 にた 現て か 、る ま界 ばそ空役 り足 ずと てて は 狽や 力、 が い伝 しら たお 変し んれ 背 てな 。せ てを ル女 つふ たを な 瞳瞳 のず閉・ つ小 にて つか カ : し、 な なそ で込 り き一 そ巻者ナ 兀を たた なだ 大直 な感 のて細な まれ 鉄的 ずた か見 いか . 扉思 がせ 女か 背た 正 い ん風了だ ーこ . 彼 の 中 と の はた女 カく 聞 ん っ の 時にる で向ん あかだ は のめたずま の く っ き り と 瞳 布 ノレ っ に 。大目肌 、けま が う え したは か ら っ り 、素 る で て な た 実 る は ず が な い る の で世冫 あ界決 実 で は 。さ ら ーこ . と し ロ あ り を 同 布 の 方 の 覆 て そ う い る を ゆ 頭た柄 り 、と何 け い たた全 の な た い に 。身た つはで きかけ の 、そ た せ眼そ 目リ の 界 を 眺 め や っ て ル 風了 は 自 分 自 身 強 し か し れ 、は う と と そ文だ 字 な り 数 子 な 狼形面 味カ いをな だ し みなあ く い容は さ ま つ 。間 に そ に 、現 の ん な 時 の と ま ど い や を 出 て れ ば い だ そ の と カ : 逃 、げ た し、 の に ががて 、地み に い る 目 ら ん し ル感 し風ーは し 考 かみは れ う し た な さ も の 界 カ ; い 、た 、風了く の て能抜 の め 混 頼乱情 て ナこ し、 た を ぐ り け 気冫 たが立 に何な の も は し、 の 慌 て そ が ま る で 、た し、 し、 た そ う 君 っ る 小いた彼女女そ 。巨 の は し、 の じそ立 う 、め彼て に 。知も 全 ルい いそ たれナ ー 42 ん 0 し