第一外ー S ハードカヴァ 1 出版社はどうですか 2 ス〉の問題は、は大金を生みはしない タンドでの売りあげはおちています。 最近のアジモフ誌の誌面の向上をどうんです、少しのお金を生むだけです。大出の ( ードカヴァーをだしている出版 版社にとってはじゅうぶんなお金にならな社はとても少ないですよ。 お考えですか ? すばらしいことです。わたしは短篇小説いんです。。 ( ンタムも大出版社ですが、大アメリカで ( ードカヴァーを出版する上 は読まないんですが、あそこにはよそ以上出版社になるほどは成功しませんからでの問題は、大部数を売らないとペイしな いということです。一万部以上売らないと にいろいろなタイ。フの小説がのっていまね、心配しているんですよ。エースにし ークリーも小さいですいけないのに、ではそれだけ売れるも す。ショーナ・マッカーシイの功績ですろ、トーにしろ、・ハ し、小さい出版社ほどを売りやすいんのがほとんどないんです。むかしはもっと ね。彼女がヒュ】ゴ 1 賞をとったのには、 1 ドカヴァー出版社も多かったんです みんな納得していると思います が、いまは減っています。いまやっている よ。彼女は他人以上にスラエティ ック版のほうで採算 ところよ、ペ にとんだ小説が好きですからね。 をとっているんです。 ふしぎな小説がのっています。 ン ウ ハウスの路線 ( 注・シ 短篇小説の読者が求めているの レヴ . アーく ートウエルらを編集ス プ は驚きです。びつくりさせてもら ロビン タッフに加え、キム・スタンリー・ いたいんです。その点で彼女は成 スン、。フル 1 ス・スターリングら若手中心 功していると思いますよ。 ードカヴァーの出版計画を発表し ーー最近の出版社の変遷をど チている ) をどうお考えですか ? うお考えですか ? 〈タイムスケ うまくいかないでしようね。三、四冊だ ープ〉はつぶれましたが、 して売れないのでやめる、ということにな ような小出版社は成功しているよ ~ るでしよう。確信がありますよ ( 笑 ) 。 うですし、 ' ハンタムも路線に ダ・フルディはどうですフ 力をいれ、エースではプラウンさんのお友です。デルや、ワーナーや、フォーセット どちのテリ】・ ・スペシャといった大出版社でははほとんど成功ああ、部数は少ないですし、それも主に カ 1 の〈ニュー 図書館に売るだけです。大半がろくでもな していません。 ル〉をはじめましたし : い本で、アンソロジーを除けば読む価値な 界での大手出版社は、エース、 ああ、〈エース・スペシャル〉というの はとてもマイナーなものですよ。あまり売クリー、トー、デルⅡレイですが、すべてどないものばかりですね。五千部ずつ作っ 小出版社です。デルⅡレイは・ハランタインているんですが、金をかけずに作っていま れないんです。 でも、はとくに小出版社の中では拡という大手の子会社ですが、別会社で独立すからね。界にとって重要じゃありま 9 ードカヴァーで界に重要な本 大しています。〈タイムスケー。フ・ブック採算でやっています。
モンティ・・、 ノイソンかなにかのプラック・ とは思えなかった。 しようねえ、とか言っていたが、ガス・マスクを被っているので、 ューモアでも見ているような気がしてきた。 よく判らない。 そのとき、爆発音と阿鼻叫奐にまじって、テレビのスビーカーか 吉永の家や車も、完全に破壊されつくしてしまっていて、もう増 ら、吉永たちの叫び声が聞こえてくるのに気づいた。 殖はしていなかった。 4 / 亠に一」、つ 彼らは自衛隊の攻撃から逃げまどいつつ、大声で空に向かって叫政府は一週間たっても、なにも発表しなかった。 んでいるのだった。 いう事実があったということを述べるだけだった。科学者も、ひと 「三崎いしし 助けてくれえええ , ~ 5 。 いったい全体、これは ことも口をきかなかった。 何なんだ 4 ~ 」 しいかげんな 安つぼい科学評論家たちが、テレビの特別番組で、 おれはあわててテレビのスイッチを切り、耳を押さえて蹲った。 ことを言っていたが、聞く気もおきなかった。 政府も人々も、あまりにも意表をつき唐突に起きた出来事に呆然 としており、できたら、このままなにも言わずに避けて通って、う やむやにしてしまいましよう、ね、ね、それが一番いいよね、とい 廃墟と化した市に、累々と二百万以上の、吉永と友紀の死骸が うような考えでいるらしかった。 山のように積み重ねられていた。 もちろんおれもそれに大賛成だった。日本人はこれができるか ・フルド 1 ーザーが何台も出動していて、死骸をビラミッド型に積みら、強い あげてゆく。 夏なので早くも腐りはじめ、強烈な臭いを発散させていた。誰も がガス・マスクなしで市に近づくことはできないのだった。 そんなわけで、市の死体処理も、びつくりするぐらい早く済ん 火が点き、ぶすぶすと燻っている死体の山もある。分裂途中の死でしまい、わけのわからない、降って湧いたような冗談のような出 体が五十 % 以上だった。 来事も、ほとんど人々の頭から消えさってしまった。 彼らは、つまり吉永は、おれに助けを求めるために都心へ前進し あれからたった一カ月後だった。 てきたのだろうか ? そんな・ハ力な、と思い、おれは首を振った。 真赤なラングレーに乗っていたカーリー ・ヘアの女とも別れてし 自衛隊は、今度は全力をあげて死体の処理にあたっていたのであまったおれは、独り夜中に水割りを呑んでいた。 る。日本の自衛隊は後始末もちゃんとやるのだ。 吉永や彼の家や車や事件のことなどはまったく毛筋ほども思いだ テレビの画面には死体処理の様子が、のどかに映しだされてい さなかったが、吉永の妻の友紀のことだけは、ときおり思いだして た。アナウンサーが画面に向かって、これはいったい何だったんで 5
一 9 夢 第 9 回 S F のタイトルを つくってみよう ! 小説のタイトルを決めるという作業は、中味が出来上ってからにせよ、書 ( ーし力ないもの きはじめる ( 則にせよ、なかなか簡単こよ、 今月は、パ ソコンに勝手にタイトルをつけさせる という不精な人には うってつけのフログラムを作ってみた。 一〇月号て紹介した乱数の考えかたを基礎に、あらかじめデータとして入 力してあるさまざまな的な単語を組み合わせて一つのタイトルにするの てある。 紙面の都合、ここてはごく簡単なフログラムにしてあるが、それても結 構面白いものを作ることがてきる。 データの数をもっと増やし、文法的にも形容詞や動詞、助詞などを組み合 わせるようにすれば、より実用的なフロクラムになるだろう。 興味のある方は、もっとユニークなフログラムを考えていたたきたい。 内藤淳一郎 協力パード研究所 3 ソ 0 ソ・ウト第セ・ アク ? ノテンイ ソ 0 ソ◆ウトッ ト・ 0 トオトコ インツトカコ イコ・ 0 トヨル カ・トヨル カ・ノヨル オンナトセ , ツ メイトアス 第フト飛・ツ・ ツ・ , ン / リ 0 ーイ / 0 ・ト 0 , トト・を・ カ・ノイ とが ) トやト・ 0 ツ■ 0 メノ 0 0 ◆ト・ウィや セカイトツ・タ・イ イトセツ ト・トと物 ? オク と物クオクノ物異 0 トヤ と・クオクトナ・レ 、・クノわ 物 4 トイ ・墨 0 ノ・レ ・ト・メイ パソコンのつくった SF のタイトルの例 b パソコンのつくった SF のタイトルの例 a
その言葉をきいたとたん、背中に冷水を浴びせかけられたような 〈理由はなくても泣けるでしょ〉 気がした。 「泣く理由なんかないくせに」 どうしてだかわからない。 ョナは軽くため息をついた。 なにかで、突然、頭を殴られたような衝撃。 〈すみませんでした : : : あたしは機械よ。感情などないわ。意識的 に生きてるわけでもないわ。ただ、あなたを守ること。そしてあな まだ彼女と同居しはじめてから日が浅いせいだろうか、反応のパ ターンがよくつかめない。ほんとうに生きて息づいているような錯たを退屈させないことーーー・そうプログラムされているのよ〉 覚がフラッシュする。 「まあ」 ? だから、からかうの〉 息をひそめ、部屋のすみのほうに立っている少女の幻影が点減す〈退屈してるでしょ る。恐怖映画のワン・シーンのように。 「ま、それだけ ? 」 わたしのホッとした表情を見て、ヨナはクック、と笑った。 「あなた : : : 生きてるの ? : : : 」 〈いまのはウソよ〉 〈どういう意味 ? 〉 「なにが嘘なの ? 」 そう問われてハタと考えこんだ。 〈機械は生きてるの〉 生きているとはどういう意味なのかフ 「ウソよ」 「哲学者のような質問をするのね ? 」 〈意識もある。つらくされれば悲しいと思うわ〉 〈子どもは哲学者と同じ質問をするのよ〉 「ウソつき ! 」 ョナは秘めやかに笑った。 〈涙だって流すのよ〉 0 3 型知能の言語。フログラマーは、まさに天才だ。間とい わたしは気が転倒していた : 笑い声の感じといい 、受け答えと、 ししほんとに人間としか思 えない。 なにかのオカルト映画で見た、壁からドロドロと血が流れ出すシ ーンを思い出して、ノドがひきつった。 「あなた : : : 泣くことはある ? 」 音がするのた。 ョナは考えこむように数秒の間をおいた。・ 水の音だ。 〈 : : : ご期待にそうように答えましようか ? あたしに涙腺はな、 わたしは思わず本をとり落とし、立ち上がった。 「じゃ、つくってあげれば泣くの ? 泣ける ? 」 書斎は二階にある。 〈泣けるわ〉 わたしは深いじゅうたんの中を渡って窓ぎわへたどりついた。そ 「どうして ? 」 して中庭を見おろした。異様な寒気を覚えて部屋着の前をかき合わ セル・ブック 224
ローヴァー・ O 少佐と話させてください 「は、 (-50 少佐から、何かを送ってもらったと言っお願いです てました。 それと、エメラルドがどうかした、と : : : 」 「・ : ・ : 彼は、ここには、いないわ」 「なんですって 彼女の口調が一変したことに、しかし、興奮しきってしまった ドール キュイ 今度こそ、本当に、アイリーン・の声は跳ね上がった。 ン・は、しばらくの間気付けなかった。 「あなた、それを、もう誰かに話した ? じゃあ、どこにいるんです。いっしょではないん 「いない 「何故です - ーー ? 」 ですか ? 」 キュイ ロン・ O>A は問い返してやった。 いっしょだったわ。でも、今はいないのよ」 「中佐にも、何か、心当たりがおありなんですか ? 」 「どこへ行ったんです・ーー ! 」 「あろうとなかろうと、あなたには関係ないわ」 「 : : : 分からないわ : : : 行ってしまったのよ : : : もしかすると : ドール アイリーン・ Q は言い放った。 もう、もどってはこないかもしれない : その語調には、決して寄せつけはしない、 という決意のようなも「どこへです ・そんなに遠くまで、徒歩で出掛けられるはすが のすら感じられた。 ない。地上車が使用されていないことは、知っているんですよーー」 ( 知っているんだ・ : ・ : ) ・ : みんな : : : 」 「・ : ・ : 彼だけじゃない : キュイ キュイ ロン・ O>-{ は想った。 まるで、ロン・ O>A の声が聞こえていないかのように、彼女はっ ( この女も、 O O — *-Äの狂気に、一枚噛んでいるに違いないんだぶやきを続けていた。 ク戸ス ピルス : も : ・ランドリアン・ O も : : : そし 「 : : : 坊やも : 彼は、そう確信した。 て、ローヴも : : : みんな連れ去られてしまった : : : 」 ( よし それなら、それでいい : 「・ : : ・連れ去られて : ・ 「ローヴァー・ O 少佐は、どこです ? 教えてください」 やっとのことで、ロン・ O>H も、アイリーン・の様子がおか ロン・ O>-{ は言いつのった。 しいことに気が付いた。 「あとは、本人に話します。そして、尋ねてみます。あなた方が、 「ーーどういう意味です ? 誰が、どこへ、連れていったと言うん 隠れて何をしていようと構いはしない。しかし、 O O —の問題です ? 」 : ・恐らくは・ : ・ : ネティの仕業よ : : : 」 だけは別だ。彼女が本当に狂って何かをはじめたら、我々は、いと「 : も呆気なく全減するしかないんです。ここは、地球じゃない。我々は、 アイリーン・の声は、もう聞き取れぬほど低かった。 敵意しか持たぬ環境に包囲されて、やっとのことで生存を維持して「 : : : 冥界の門を、あたしたちは自分から開いてしまったんですも いるんです。そのことを、どうか、本気でお考えになってください。 ( 以下次号 ) キュイ ランド¥ート キュイ
初めて気づいたようにそう言った。 づけているのだった。 Q ・はカアッと羞恥を覚えた。凡人にはよくわからない感覚器 「私には、わかりません」 に、自分のからだを″見られた″と思った。 Q ・は本心からそう言った。 サン。フル群は、 << 群が失敗におわったのち、人類文明の存亡を「そんなつもりはなかったんだ。おまえ、名まえは ? Q ・は数秒おくれて、やっと答えた。 賭けて生み落とされた。 群を使用するか、しないか、結局は神官であるかれの決断が優「へス特殊部隊少佐です」 「ファ 1 スト・ネームは ? 」 先されるだろう。 「ダナです」 かれの顔がグラグラゆらいだ。細かな波の立っ水面を通して見て かれは明らかに驚いたようにべッド いるようだ。 「いずれにしろ : : : 虹号は捕獲するか、殺すかしなければならな「ダナ・ヘスか ! 」 「そうです」 かれの表情は読みとれなくても、空気の流れのようなものでわか かれの姿が激しく揺れた。そのまま、この空間から切れて、どこ るのだ。かれは殺す、という考えに耐えられないでいる。いやなのかへ飛ばされていくのではないかと思うほど激しい。 かれは咳込んだ。 高価なものを破壊することではなく、意志を秘めたものの未来を 咳の合い間に言った。 「 : : : おまえ、子どもを生むそ」 阻止することが耐えられないのだーー・は、かれの精神の高貴 さと脆弱さに同時に触れたような気がした。そして、さらに強く魅 Q ・は直立不動していることも危うくなってきた。床が実体を 失いかけている。 きつけられた。 「Ⅲ号の居場所はじきにわかる」 「このぼくを、生むのだ ! 直属の部下と結ばれて : : : 」 かれが断言するときは常に正しい かれは思念を強烈に集中させた。 Q ・はかれの判断を待った。 Q ・は、床がぐにやりと溶けて投げ出されたような気がした。 「ぼくが、おまえをそこへ送ってやろう」とかれは言った、「三十白い空間が一転して、暗黒へ突き落とされた。だが、かれがすぐそ 時間ほど未来になるが、かまわないか」 ばにいて、彼女の体をグングン加速させているのだ。 それは質問ではない。・は敬礼した。 ・は、なかば気を失いかけていた。 息子 ? ・カれカ ? : : 子ども ? : : : まさカ ? : ・ : かれが思念を集中させるために腕をふるのが見えた。 「・ : ・ : おまえ、女か」 視る : : : 時を : : : 飛ぶ : ・ : ・のだー の中で身を起こした。 力い れ、 は を 2 3 7
友紀が、。 せいぜいと荒い息をして倒れていたのだった。 と心底思った。 せめて一人でも残っていればなあ : 警察に追われている・ なんであんな美女の大群団を全滅させてしまったのだっ。彼女で「三崎つ。はやくドアを閉めてくれ : 地球が溢れかえったっていいじゃないかつ。美女で地球が減ぶのだ おれはドアを閉め、二人を部屋の中へつれて行った。 ったら、別にいいじゃないかつ。美女あっての地球である。美女あ 友紀は寝室へ抱いて行ってやさしく寝かせ、吉永は居間へ自分で っての人類である。 おれは酒に酔い、もんもんと友紀の顔を思いだして興奮し、ジー歩かせた。 吉永はラ・フ・チ = アにぐったり座った。そしておれの水割りを、 ンズの前を押さえて床をのたうちまわりはじめた。 いっきに呑み干した。 「やつばり・フスでもあの女と別れるんじゃなかった。爆発しそうだ よう」 おれは呆然として傍に突っ立っていた。 「おまえ、死んだんじゃ : おれはほとんど考えというものに節操がないのだ。 と、そのときだった。おれのマンションのドアを誰かが、ほとま 「へへ。おれと彼女だけは、自衛隊の猛攻撃をかいくぐって逃げた とと叩いたのである。 んだ。無事、おまえの所までたどりついてやった・せ」 別れたあの女かな ? とおれは即座に思った。 「おまえと彼女は本体なのか ? 」 時計を見ると午前一時過ぎである。こんな時間に、いきなりやっ 吉永はカなく首を横に振った。 てくるのは、あの女しかいない。 「いいやちがう。でも本体もなにもないんだ : : : 」 おまえ分裂は ? : : : 」 おれはジーンズの前を押さえ、喚声をあげガニ股で玄関へ向かっ 「し、しかし : こ 0 吉永はニャリと笑った。 「とにかく今夜は助かった ! 」 クかなにかで止まったらしい。一カ月間、全然分 「どうやらショッ 鉄製ドアの鍵をあわててはずし、ドアを開けると、いきなり人間裂していない , 「そうか」 が二人ころがり込んできた。 おれはホッとして吉永の傍に座った。 その浮浪者のような二人を見て、おれはヒェッと踊るようなかっ 「しかし、いったい、なにがどうなったのか、おれにはさつばり判 こうで仰天した。 らなかったよ : : : 」 「み、水をくれ三崎 : : : 」 おれがラークに火を点けて言うと、吉永は話し始めた。 拾ったらしいポロポロの服を着た吉永が、おれの左足にすがりつ いてきた。 「友紀は、この地球の人間じゃないらしいとは以前話したな」 「ああ。山の中で拾ったっていう : : : 」 そして、その隣には、やはり拾った物らしいシーツを体に巻いた 7 5
クト家へ行った。少し寒いけれども、空に斜めに雲がかかり、道やとである。かれらは、学校では頭のあがらない彼に対して、そうい 樹々が陽光をはね返す、あかるい日であった。 うしかたで、かれらにとっては軽い復讐をしたのかも知れなかっ 道の片側は途中から、高い白い塀になった。 「これ、全部、エステーヤの家なのよ ! 」 塀は、長かった。 ひとりの女の子が、彼に教えた。 ようやく門の前まで来たとき、彼は、見知らぬ国への入口を見た 「大きい家なんだな」 ような気分になったのだ。幅の広い、こまかい透かし彫りをほどこ 彼は答えた。しかし彼は、ただ大きいのだなと思ったばかりで、 した金属製の門扉と、その奥、樹々にはさまれて伸びる道 : : : さら それがジャクト家の財力とか勢威を示しているのだ、というような にかなたには、円柱を持つ大きな建物があったのた。 ことは、全く考えもしなかった。 エステーヤとその仲間は、何ということもないように、門の横の 塀のむこうには、樹々が茂っていた。樹枝が道に張り出している小さな戸を押しあけて入った。 ところもあった。そんな風に樹々ばかりなので、奥は窺い知ること「早く : : : 何をしてるの ? 」 が出来ないのである。 ニステーヤが引き返して来て、・ほんやり突っ立っている彼の手を 「家そのものは、この塀の中にあるのだろう ? 見えないじゃない 引っ張った。彼女の髪から甘い香りが流れてくるのを、彼は意識し こ 0 彼よ、、、 エステーヤは、くすっと笑って応じた。 「ーーーうん」 「だって : : : おうちはずっと奥だもの」 彼は手を引かれて、中に入った。 「そうか。ずっと奥なのか」 彼はたしかに、感動していたのだ。そのときの彼にはどう形容し 彼が繰り返すと、ほかの子供たちが笑いだした。 たらいいかわからなかったが、何か、堂々としている : : : でかいも 彼は、傷つけられたような気分になった。 のがそこにある、という感じだった。 「何がおかしい ? 」 中へ行き、正面の大きな建物を仰いだときに、その感じはさらに 彼はいった。 強くなった。 「だって、・ほくたちはこれまで、何回も行っているんだぜ」 大きな建物というのは、彼もそれまでにいろいろ見ていた。西北 ひとりの男の子が答え、それで彼はわかった気分になった。自分養育院の主棟だってそうであった。・、 カ : : : ジャクト家本館の、左右 が初めてで何も知らないのを笑ったのだ、と、納得したのである。 に二本ずつ計四本の白い円柱を有する、大きな窓の並んだ建物は、 ( それが本当はそれだけのものではなく、もっと陰湿な、金持ちの他とはどこか違っていたのだ。ことに、正面上方にとりつけられた 世界を知らない者に対しての嘲笑だったと気づいたのは、あとのこ 三つの金色の星印 ( それがジャクト家の紋章の三連星たったのだ か」
〈走れやしないわ ! : : : 赤ん坊みたいにころがるわ ! 殺されるわらふりかかってきた。 かれは祈った。 あれに祈った。 かれはラマダの舌が思いのほか精巧なのを知って、言の葉をとと のえ、発声した。 かれに生命を与えたものに祈った。 スマナイ かれの人口知能を突き動かした存在に。 どうかョナを守ってください。それから : : : 考えがうまくまとま 巨大な汽笛のようなその声は、家全体を震憾させた。 らない とにかく、うまくいきますようにー ョナは動揺していた。 みんな、そうやって自分を置き去りにしていってしまうのだと思 かれは壁をつき破り、家の外へ踊り出た。 その姿はまるで、地上の生きとし生けるものを減・ほすために天か った。自尊心だけでかろうじて形を保っていた自我が、さびしさに 打ちひしがれ、初めて他人にむかって開かれようとしていた。 ら降ってきたという、伝説の黒い馬のようだった。 〈やめて , : いかないでー かれは足踏みし、首をふった。 「いやな予感がするな」 シノハラ中尉がつぶやいた。 ョナは、かたく扉を閉ざしていた。 かれは、長らく遊んた友だちのうちに別れを告げるような気分だ Q ・はかれが予言したことを考えていた。あれはおそらく予言 った。ョナが好きだった。彼女の母親の記憶を掘りおこしてからではない。真実なのだ。 は、なんとかなぐさめてやりたいと思った。 ・は青い光の中に浮かぶ中尉の端正な横顔を、初めて意識的 それはうまくいかなかったけれども、かれはこの家を出て行こうに観察した。非常に優秀な部下だ。上官の意志を半歩先に読みと と思った。自分さえ出ていけば、ヨナのからだをこれ以上破壊せずり、実行者としても有能な、頼りになる男だ。 にすむだろう。無骨な者には、それくらいのことしかできない。 結ばれる : : : のか。 自分の気持ちをうまく言葉にすることもできず、まるでロのない そしてかれを : ・ ダダジムのように立ち去るのだ 三百代っづいたと俗謡に歌われるくらいの名門へス家の血と、今 〈いかないで ! 〉 は衰退しているとはいえ、やはり特異な遺伝形質を残すシノハラ家 かれが首をひとふりすると玄関の上の壁を・フチ抜いた。 の末裔が、結ばれるのか : ョナはかたく扉を閉ざしていたけれども、どうせ扉は小さすぎて そしてかれが : : : 生まれる。 出られなかった。 自分が、生み落とすのだ ! かれは玄関に体ごとぶつかっていった。 ・は記憶の糸をたぐってかれの姿を思い出そうとしたが、つ ハリバリバリ : : : という世界が崩壊するような音が始まった。壁かまりそうでつかまらない。白い雲一色のべッドの記憶しかないの がクラッカーのように裂けて、くだけたカスが。ハラバラと煙の中か 246
ヘビー やスキン・ヘッド、 あの糞いまいましい女め。 ・メタルの連中のほうがよく働く。 しかし何といっても最大の労働力は″人質だ。怠け放題のこい 油断も隙もあったもんじゃない。 つらに食糧や日用品を供給しているのは、結局″人質″であるはず 一足先にしつかりリュックの中身を調べていやがった。奴さん元 だ。いったいどれくらいの″外地人〃がっかまっているのだろう。通りにしたつもりらしいが、元来がさつな性質とみえ、きっちりと スラム化しているとはいえ、これだけの巨大都市を維持していく 締まっていたはずのリュックのファスナーが半開きになっている。 だけでも大変だ。そういう面倒なことはすべて″人質″にやらしとそうか、さっき、こっちがトイレに立っている間に、飯の支度をす る手を止めて、あの女もすばやく同じようなことをコソコソやって きゃいいという考えなんだろう。 だから、連中にとっては″職″も″儀式″と似た通過儀礼の一種たってわけか。 もう、これで正体もばれてしまった。 と考えて差し支えない。ヘッドから与えられる労働は、苦痛ではな く、むしろ名誉なことなのだ。 潜入した夜はあんなに怯えていたのに、今は嘘のように落ち着い それにしても、ヘッドのあのキャラクターはいただけねえ。″外ている。 地人〃は、もっと容貌魁偉な、暗黙の支配煮外道たちの大ポスに結局、いつもと同じだ。 もうどうにでもなれ、という開き直りだ。 ふさわしい人物と信じこんでいる。 これまでも随分危ない橋を渡ってきた。死にかけたことも一度や ″亡命者″たちは、決してヘッドの似顔絵を描こうとはしなかった 二度ではない。 し、この人物についても多くを語ろうとはしなかった。 ただ、こんなことを告白した奴がいた。 しかし、どうにか無事に生き延びてこれた。 自分で運の強い男なのだ、と自分に思いこませてきた。」 ヘッドは俺たちの頭に直接話しかけてくるんだ だから、今度も大丈夫だろう。 本当かもしれないな、と思う。 きのう 不安がないと言えば嘘になる。 昨日、あの・ハナナ・カットの大集会の異様な雰囲気を目の当りに けど、やるしかない。 したせいだ。 これが自分の選んだ仕事だ。 外見上は何のとりえもないあの男がヘッドと呼ばれている理由 女がトイレから出てきても、気がっかなかったような振りをして は、そのくらいしか考えられない。 いよう。むこうがそうしている限り、こちらもそうすべきだ。 つまり、何らかの超能力を使うってことだ。 しかし、超能力者だか何だか知らないが、あれじゃあなあ。 「きようも何か面白えこと、あんのか ? 」 飯のあと、女がトイレに立った隙にリュックを開け、脱出装備の女はフンと鼻を鳴らせて、殺してやりたくなるほど生意気な口調 7 で言った。 点検をしようとして初めて気づいた。、 まあた やっこ