イシュトヴァーンはカなく云った。 「五タルザン、五タルザン休ましてくれ。さっきから、何ザンもぶ つつづけじゃねえか。頭がやけ切れてぶっとびそうだぜ」 「しようがないな。じゃしかたない、五タルザンですよ」 イシュトヴァーンはやっと少しほっとして、草の上に足を投げ出 「やれやれ。なんで、人はこんなややこしいことを考えっきやがっ たんだ」 「それはね、知恵を伝達するためですよ。じゃ、このあとは、ヤヌ スの十二条法文はいったんおいて、ルーン語のアルファベットにも どりましよう。覚えてきたでしようね」 「まさか、みんな忘れた、なんていわないでしようね」 「ルーン、ガンダルーン、ヴォダルーン、アルーン」 イシュトヴァーンは従順にいっこ。 「アポロ、フアオ、。フシ、アポー」 「ルーン、ヴォダルーン、ガンダルーン、です」 んじゅうだった。 ョナはきびしく、 「おおつ、こいつは、ありがてえ。ョナ公、気がきくぜ。ちゃんと 「アポロじゃなくア。フロ。アポーでなくてアボア」 ひるめしは食ったのに腹がへって腹がへって、死にそうた。勉強っ 「うーっ」 てな、ずいぶんと腹のヘるもんじゃねえかい、ええ」 「まあ、いいでしよう。どうですか、そろそろ、お腹がすいたんじ「そうですね。たしかにーーあ、酒も少しありますよ」 ゃありませんか」 「てへつ、おめえよ、 ( いいガキだぜ」 ョナは一転して、につこりとかわいらしく笑って、草むらにおい いままでの苦衷をわすれたように、イシ、トヴァーンは満面をほ ころばせた。 てあった物入れ袋をびきよせた。 魔法のように、その中からあらわれたのは、焼き肉と、冷たいま「気がきくといったら。ー・・・どれ、よこせよ」 ヴァラキアのイシュトヴァーン、彼は十六歳にしてすでに大の男 顔負けのばくち打ちとして、天才の名を欲しいままにしていた。 ある日、いつものように賭場から朝帰りをしていたイシュトヴァ ーンの前に、「助けて ! 」という悲鳴と共に一人の少年が現れた。 聞いてみると父親のばくちのかたとして、姉が遊郭に売りとばさ れ、今またこの少年までも連れ去られようとしているという。不本 意ながらもイシュトヴァーンは、この父子を助けることになってし まう。 少年の名はヨナ。十二歳の子供である。イシュトヴァーンを有名 なばくち打ちと知ったヨナは、姉を救うため彼にばくちを教えてほ しいと頼む。ョナの年に似合わぬ聡明さに感心したイシュトヴァー ンは、彼に読み書きを教えてもらうことを条件に、ヨナに力を貸す ことを約東し、二人は義兄弟の絆を結ぶ。 ョナの教えの激しさに疲れたイシュトヴァーンは、息ぬきのため 行きつけのチチア遊郭にある居酒屋「ウミネコ亭」を訪れる。そこ で彼は、ヨナと姉のルキアをめぐる港湾大臣までもがからんだ陰謀 の臭いをかぎつける。 脚 8
イシュトヴァーンは考えて、 かいいんだから」 「ほんとかよ」 「しかし何だな。ふつうのことばはともかく、そのルーン語なんて 5 「とても、いし 、ですよ。すぐ、覚えたじゃないですか、きのうのとやつが、じっさい、必要になることってのはあるもんかね。ルーン 語ってのは、魔道とかそっちの方でつかうやくたいもねえことば こも。ふつうだと、なかなかああは覚えないです」 で、じっさいにそいつでしゃべくるのは、魔道師どもだけなんだ 「ほんとかよ。てへつ」 ろ」 イシュトヴァーンは現金に、たちまち元気をとりもどして、 「いやあ、実は、おれも、そうじゃねえかとは、思ってたんだけど「ルーン語は古代カナンのことばから出たといわれています」 、っていうしさ、そ ~ ・かいし ョナ少年は説明した。 よーーーみんな、おれのこと、頭がいい れにコロのことはあんなに覚えがはやかったのに、まんざらわるい 「もとよりパロス語も同じです。中原諸民族はパロをはじめとし わけもねえと思ってさーーそうかあ、てへへへ。やつばし、おいらて、そのほとんどがカナン大帝国の版図から発したのですから。し は、頭がいいのか。顔はいいし、腕は立っし、云うことねえな、そかし、そののちどうしてルーン語とパロス語にわかれたかという れじゃあ」 と、やはり魔道師たちの存在が大きいようです。それと学者たちと 「そうですとも」 かれらによって、ルーン語は、一般人にはわからない高度な学 ョナはわらいもせずに、生まじめに賛成した。、 術用語、及び神学、魔道学のみに属することばとしてととのえられ 「イシュトはとてもかっこいいです」 てゆき、いつぼうパロス語は、まず中原全域、草原、沿海州、つま 「かっこいいだろう」 りキレノア大陸の、ケス河以西全域に共通語としてひろまり、その ひとがきいていたら、十六と十二の二人の少年のこの会話に、思あと各国、各地によっていくぶん、固有の云いまわし、なまりをも わず吹き出したかもしれない。 つように分化してゆきました。いまではたとえば、モンゴールなま が、イシュトヴァ 1 ンも、ヨナも、大まじめである。 りと、ヤガ周辺のなまりとでは、ちょっときくと、異った言語にき 「しかし一年はしんどいな。もうちっと、まけてくれんかな。せめこえかねないくらい、分化していますが、なれれば十分意志の疎通 て半年」 ができます。いつぼう、主として、パロ王家及びパロにあつまる各 「半年じゃ、ルーン語まではちょっとムリですね」 国からの学者の手によって、パロス語の標準語がわかりやすく整理 「ムリか。十ヶ月でどうだ」 され、いまの書きことばが生まれました。しかしこれは、日常会話 「そうですねえ、精進しだいですけれどね。どのくらい、自分で予を主体としたことばですから、公用語、公式文書には、いまだにル とされていま 習復習をするかで」 1 ン語の表記の方が正式かっ由緒正しく格式たかい、 「うーん」 す。一般人はそのつもりになれば、一生、ルーン語のよみかき、発
声、そんなものの存在すら知らずにくらしてゆけますが、王や高位ちの三分の二は、おいらにゃあ、イグレックの帽子だ。ちんの、ぶ の貴族、神官、魔道師、といった支配階級にとっては、ル 1 ン語のんの、かんだぜ、え」 よみかきは必須教養です。な・せなら、さっきいったようにルーン語「そのうち、そういうことばがみなすらすらわかるようになるので してす、面白いですよ。この世に学問くらい、やり が用いられ , ーー少くとも併記されていないと、その文書は、中原のす。学問は、い : 慣習として公式のものと認められないし、それらの書類への署名がいのあることはありませんよ。さあ、じゃ、また、はじめましょ も、ことに身分のあるものは、本名を知られるとわるいことがおこうか」 る、という考えかたから、すべての本名を書くときにはルーン語を「ちょ、ちょっと、待ってくれよ」 用いるのが慣例だからです。とはいえ、そうしたところで用いられあわてて、イシュトヴァ 1 ンは云った。 ているのは言語的にはすなわち初級ルーン語にすぎません。上級ル「何です」 「ちっと、ききたいことがあるんだ」 1 ン語、さらにその上の、俗にルーン・ジェネリットとよばれてい ることば、これとなると、まったくの、魔道の奥儀に属するものと「いいですよ。何でも」 なります。上級ルーン語を自在にあやつれれば、魔道師の一級試験「な、おい、おめえのあねさんだがーーー男、知ってるのか。おっ に合格し、魔道の奥儀書をよむことがゆるされます。そして最も難と、ふくれんなよ、大事なことなんだよ」 「 : : : 大事だというなら、お答えしますが、本来は、あまり答える しい、ル 1 ン・ジェネリット、これはもう、神々をよび出す呪文、 魔道の高度の技、それらのみにつかわれる、神々に属することばとをいさぎよしとしないたぐいのことですよ。ばくは、そういう家族 なるのです。 , ・ーーそこまで、ふつうの人間には、やるいわれも、やの個人的な秘密に属することを、かれこれしゃべりあう趣味はない んです」 るすべもないのですが、しかしやはり王になろうというからには、 ョナはむつつりと、 自分の名くらいは初級ルーン語でよみ、かき、かんたんな文書はよ でないと、諸国の王、支配「もちろん、姉は、清い身です。うちは、ふしだらな家ではありま めるというのが、必須条件ですね。 せんからね」 者どうしのつきあいがまったくできません」 「十七でね。二十そこそこで、男をチチアに買いにこようって玉も 「ふ、ふーん。いやあ、まったく」 るのに」 イシュトヴァーンは、まったく煙にまかれてきいていたが、がしい イシュトヴァーンは云った。 がしと頭をかいた。 「ちびのくせに、おめえときたら、ほんっとに、寺子屋の先公に生「云いかわした男は、いねえのか。そんな、おめえのいうとおりの シャンなら、恋人はいるだろう」 まれついてるみてえなやつだな。おまけに難しいことをいうといっ たら、いまおめえはたっぷり十タルザンはしゃべってたが、そのう「いません。姉は、身もちのかたいひとだし、ずっと働いて、働き
ぐっとっ・ほからのんで、ふーと息をつく。 「重かったろう、ここまで、そのちっこいからだでひつばってくる「ヘンなこと、きくけどよ・ーー」 「いいですよ。何でも、きいて下さい」 のはよ」 「いえ、何でもないです。ぼく、なりは小さいですけど、石屋のせ「ちょっと、ききてえんだけどさ。おいら、字、本当によめるよう がれで、石をはこぶのをいつも手伝うので、カはとてもあるんです」になるかなあ」 「なりますよ。もちろんじゃないですか」 「そうかい。また、けなげなことをいうぜ」 びつくりしたように、ヨナがいう。 イシュトヴァーンはすっかりくつろいで、酒をのみ、ヨナの心づ 「どんな人でも、よめるようになりますよ。ことにルーン語はむず くしの弁当をほおばった。体つきはほっそりしているが、食べざか ノロス語は一字一字、ゆっくりとならも りの上に、朝から晩まであばれまわっているから、かれは飢えた狼かしいけど、イシ = トは、く ともともうよめるんだから。ただ、もう少しなれてくると、もっと のようこ、 ~ たいていの人が仰天するくらい食べる。 ョナは、感じ入ったように見つめていたが、かれの分の袋から一すらすらよめるようになるし、ルーン語も、ものの一年もやればよ めますよ」 っパンをとり出すと、あとをさし出した。 「よかったら、ぼくの分もたべて下さい。ぼくはひるをたべてきま「一年 ! 」 イシュトヴァーンはそっと叫んだ。 したから」 「そこまで、もっかな。おいらの頭は」 「いいのか、おめえ。みんな、食っちまうぞ」 「大丈夫ですよ」 「いいです。ぼく、どっちみち、そうたくさんたべないんです」 ョナは保証した。 「おれより若いのにいけねえな。そんなこっちゃ、大きくなれない 「イシュトは、すぐによめるようになりますよ」 ・せ、ヨナ公。じゃ、もらうよ」 「ほんとかよ。いやさ、二、三回、やってみて、こーんな物覚えの イシュトヴァーンはヨナの分をうけとると、それもまたたくまに わるい、石頭のやつが、よみかきなんていくらやったとこでムダな ペろりとたべてしまった。 やっと少し、平和な気分になったらしく、腹をさすり、ベルトをこったって、おめえに、あいそづかしされるんじゃねえかとさ : 心配になって」 ゆるめ、のこり惜しそうに火酒のつぼからすすっていたが、ふい イシュトヴァーンは、上目づかいでヨナをみた。 に、ためらいがちにヨナの方を見た。 ョナはびつくりしたようだった。 「なあ、ヨナ公」 「とんでもない。そんなことを、考えていたんですか。 「何ですか」 大丈夫協 ョナはちびちびととうもろこしの粉でやいた固い。 ( ンをかじってですったら。すぐ馴れますよ。イシ = トはもともと、とっても頭
い竹のムチをとりあげ、ビシリとイシトヴァーンのひざを叩い すだれの向うから、もれていた。 こ 0 とても : : : 」 「あ : : : あんた、素敵だわ。ああ、イシュト 「あんたも、とてもすてきだぜ。ほんとに : 「さあ、さっさと読んで。ほら、ルーン、ヴォダルーン、ガンダル しずかに女のあついあえぎがたかまり、それに、若い、けものの : えらいことになりやがっ息づかいが混った。 ルーン。ヴォダルーン : 「ル 「あ、あ、あ : : : イシュト たあ。ガ どこかで、まだ、キタラひきの歌声がつづいている。 「ガンダルーン ! まだ、覚えないのか、この、石頭 ! 」 「イシュト 白い航跡をひいて、白い快速艇がヴァラキア港を出てゆく。 ガル鳥が何羽か船のあとを慕ってとんでゆく。ヴァラキアの午後うす闇の中に、白い裸身が立ちあがり、すだれをまきあげると、 は、潮と、草と、糖蜜との入りまじった匂いがした。 青白い月の光が室内にみちた。 立っている女はまだ若い。しなやかなからだに、うすぎぬ一枚を はおり、長い黒髪はといて、背にだらりと流している。すごい美 人、というにどでもないが、みにくくもない。 . 」 どこかで、吟遊詩人のうたう、「サリアの娘」の一節がきこえて「よかったかい、ええ ? 」 の上に、片ひじをついて上体をおこした、浅黒い肌の 籐のペッド 夜が訪れると、ヴァラキアは、急に涼しく、しのぎやすくなって少年も、いつもはうしろでたばねている髪をといていた。若々し はりつめた肌にべっとりと、汗がういている。 くる。 人々は、籐編みの戸をあけ放ち、石畳の道に、木のべンチをもち「すてきだわ。イシ = トーー」 出して、タすずみをし、夜のさいしょの一杯をのみ、また、道ばた女はふりむいて、ペッドにもどり、イシ、トヴァーンのロにくち づけた。 でやっている・ホッカ将棋に金をかける。ひるまの、ヴァラキアは、 「じゃ これ。ね、また、会ってくれる・ : : う 女たちの町だが、夜になると港から男たちがかえってくる。急に、 「商売だからね。金さえ出してくれりや」 下ヴァラキア全体が、男くさくさえ、なるかのようだ。 「まだ、若いのね、そんなところが。ほんとの商売人は、商売だ そして、また と、感じさせないようにいちばん気をつけるのよ」 夜は、ヴァラキア市の、恋をする時刻であった。・ 「そうかね」 「ああーーああ、イシュト いくっ ? とっても、物馴れてるけど」 かすかなあえぎ声、うめく声、甘いしのび笑いが、まきおろした「ね、あなた レ ー 55
な 「わがゆくところにゆき、わが為すが如く」 「そうそう、そのなすをせよ : : : 」 「なすをせよ、じゃなくて、なすが如くせよ」 「なすーーーなすが如く : : : 」 ふいにイシュトヴァーンは手にしていた、羊皮紙の巻物を放り出 そして、また。 「わあっ、もう、頭がクチャクチャになる ! ナスだろうが、カボ 再び、ヴァラキア港を見おろす、ルーナの丘である。 「ヤヌスその如く云いたまうはーーーわがゆくところにゆき、わがなチャだろうが、知るもんか ! もっとやさしいのを教えやがれ。こ んなことやって、一体、よみかきに何かの役に立つのかよ ! え すが如くせよ。さらば汝はわが民となり、わが光汝が上に及ばん。 しからずんば汝は永遠に暗き淵にわだかまり、出ることあたわざらえ、おい、ヨナ公 ! 」 ん。アンドロス応えていわく、わが硬わが光、われ君のゆくとこ「立ちますとも」 少年は、おちつき払っていた。 ろにおもむき、君のなすをまねぶなりと」 「ヤヌス十二条法文さえ、覚えてしまえば、もうどんな難しい字で 澄んだきれいな声が、今日も青く晴れたヴァラキアの空に、ひび いていた。 もよめますよ。 ハロス語ってのは、ルーン語にくら・ヘてずっとやさ 「さ、もう一回」 しいし、ヤヌス十二条が、パ ロス語でかかれたいちばん難しい文章 「ヤーー・ヤーーヤヌス、その如く : : : 云いたまーーーたまうはーー・わなんだから。さあ、もう一度ー 「ううつ」 「人グイン・サーガ外伝〉 第二話男盗女館 とわ 7
へ戻らねえでよ、おれんとこに、じっとしててくれねえか。いやな ョナは大きく目を見はって、イシュトヴァーンを見つめた。 「ほ、ほんとに ?. イシュトカ ・ : ばくに、ばくちを教えるかわりに 用心にこしたことはねえからさ、どうせおめえは、夜は外に出 5 ねえでいい子にねんねしてるし、おいらは夜、うちにいたことなん 「おれがおめえのかわりに《黒のプルカス》とさしで勝負して、証ざねえ。たがいのさわりにゃならないと思うぜ」 文をとりかえしてやろうって、いってんのさ」 「イシュトの、うちへーー・ですか ? 」 「ええつ、でもーー・」 少年の、大人顔まけの聡明な瞳が、じっとイシュトヴァーンにす えられた。 「心配すんな、おれはいまだかって、負けたことがねえんだ」 そして、何を思いあたったのか、ヨナはにつこりほほえんだ。 「いえ、そ、そうじゃなくて、あの、もしイシュトに、迷惑がー しいですか。じゃ、よせてもらいます」 「お世話になっても、 かれはしずかに、考えぶかげに云った。 「しいってこった。海の兄弟だぜ。そうだろ」 「じゃ、今日の夕方、うちへいって、ちょっとお父さんにその 「でも、あの、・ほくー・・ー」 よそへ、友達のところへとまる、と、それと、本とか少し、もって 「でも、あの、・ほくじゃねえ。そういうふうにウジウジしてつか ら、ばくちにや向かねえ、つってんだ。なーに、それにおいらもきたいものがあるので、あと着がえと : : : それは、とりにいって しいですか ? 」 な、いっぺんその・フルカスってえやろうとは、さしでケリをつけても、 みたかったのよ。おいらのよくコロをふる。ヒットの賭場は、正直よ オ「いいとも」 胴元で、かたぎさんを遊ばせてやってる。が、・フルカスんとこのサ 「じゃ、そうさせてもらいます。でも、イシュト」 イスの賭場のやりくちは、しろうとをひつばりこんじやオケラにす「え ? 」 る、そのやりかたが、前々から気にくわなかったしーー・あっちは黒「それと、これとは別ですからね。いや、そんなこととなったら、 の・フルカス、こっちは赤のイシュトヴァーン、両雄並び立たずって かわりにばくちをやってもらうお礼のかわりです。・ほくにできるか やつで、いずれはどっちがいし 、コロ師か、ケリをつけずにやおかねぎり、目いつばいビシビシとしごいて、できうるかぎり早く、イシ えところだったからな。気にすんなって、こっちも、趣味と実益っ ュトがよみかきのできるようにするのがぼくのいちばんの義務です てことよ」 ね。さ、ずいぶん、時間をムダにしてしまった。日のあるうちに、 イシュト : 「イシュト きようはルーン文字三十六文字をぜんぶ覚えましよう。さあ、本を びらいて。ぐずぐず、してちゃだめだ」 「何でえ、泣くな、ば : それと、な」 「ひええ」 イシュトヴァーンはなさけない声で叫んだ。かまわず、ヨナは細 「ちっと、たのみがあるんだが、しばらくうちへーーーカルアのうち
「へえ」 ひらりととびおり、服を身につけはじめた。 「それに、賭場へ、客のもてなしに出たりしたとき、よくあんたの 「ありがとよ。モアラ」 「ねえ、あんた、もめごとはよしなよ。そうでなくたって、チチア うわさをきくわ。すごい美少年の、すごい腕のコロ師だってーーヨ ウイスの民じゃないかって。サイスとつつあんは、あんたを、雇いにはいつも、いやってほどもめごとはあまってんじゃないの」 たがってるわ。看板になるものね。それで、うちのおとつつあん「おめえの知ったことじゃねえよ」 は、あんたのこと、よく思ってないと思うわ。こんなとこにきて、 イシュトヴァーンはさいごに、ふさのついた皮ひもをひろいあげ 大丈夫なの。あんたとバレたら、おとつつあんにつかまって、よっると、きゅっと髪を首のうしろでたばねあげた。きりつと目のつり てたかってひどい目にあうわよ」 あがった、きつい顔が、両側からひつばられて、なおきつい感じに よっこ 0 「十六にや見えねえんだろ ? 」 イシュトヴァーンはっと手をのばし、愛撫するように、モアラの 「いいか、おれのことを、誰かにパラしたら、必ずもどってきてて のどをまさぐり、ふいに、身を入れかえて、いなづまのように、モめえの耳と鼻をそいじまってやる。おれにや、ダチがいつよる アラの上におおいかぶさり、のどをしめる手に力を入れた。 んだからな。黙っててくれたら、また近いうちにおめえを買って、 ヒッと、モアラののどが鳴った。 きようよりもっといい思いをさしてやる。 いいか、覚えてろよ、そ 「な、何すんのよ : : : 」 れを」 「誰にも、いうんじゃねえ、おれの素性を。云ったらきさまをバラ 「もう行くの ? 」 すぜ。おらあ、人殺しなんざ、馴れつこだからな」 「ああ。おらあ、忙しいのよ」 「何だか、知らないけどーーー気をつけてね」 「ひいつ、苦しい。はなして、はなしてよ。誰にもいわないわよ : モアラはささやくように、、、 チチアの娼婦のよくやる、災厄よ 「きっとだな ? おらあ、十九の水夫だ。そう覚えとけ」 けのルーンのまじないを指で描いた。 「わーーわかったわよ。わかったわよ」 裸のまま、ペッドからすべりおりて、つとイシュトヴァ】ンの背 モアラは、一瞬、おもても向けられぬすさまじさで燃えあがつに頬をよせる。 た、イシュトヴァーンの殺気に、すっかりうちひしがれたように、 「あんたみたいな子、見たこともないわ」 「悪魔っ子ーーほんとに、どうしてそう呼ばれてるか、イヤというそっと、彼女はささやいた。 ほどわかるよ。ほんとにほんとに十六なの ? 」 「あたしの知ってる、どんなやっとも、少しも似てないわ。あんた 「魂は、百歳にゃなってらあ」 って、火か、風か、ラトナ山の狼みたい。 見てるだけで、息が佑 イシ = トヴプ朝ンはとびきり気取って云った。そして、寝台からつまりそう。いつもいそんなふうなの
ビ 1 グルについては、もうほとんど知り 尽くしているという感じがしていたのたけ れども、やつばり思っていたとおりの人で ピーター・・ビークル した。物静かで、相手に気を使って、おだ やかに語る。でも、けっこう、きついとこ ろがあって、このときだったかな、後でい っしょに食事をしたときだったかな、「作 鏡明 会見記 家に、過去の作品のこと、聞いちゃいけな いよ」なんて、言われたことがあった。 で、尋ねてみたこと。 ・ビーグ い ) とか、翻訳家の黒丸尚にを頼ん 小社編集部宛に、突如ビーター ルと名乗る人物から、いま日本にいるのだ手前、何か話さなきゃいけないんだけもう、何年も新作が出るのを待っている ど、ねえ、もう二十年近くも前にファンにんですが : で会いたい、と電話があるました。そう です、あの『最後のユニコーン』の著なって、大好きだから、翻訳もして、その「新作が出るのに、こんなに時間がかかっ 者、ビ 1 ター・・ビーグルです。そこままずっとファンのままでいた相手が、目てしまって、弁解の余地はありません。十 年前に三部作の小説を書こうとしたんです で、ビ】グル氏の大ファンであり、『最の前にいて、話なんてできやしない。 後のユニコーン』の訳者でもある鏡明氏場所は、東京のホテル・ニ、ー・オータが、うまくいかなくて、映画のシナリオを 書いたり、ぶらぶらしていたんです。で ニのガ】デン・ラウンジ。約東の時間か に、さっそくインタビュウをお願いしま した。 ら、二十分近くも遅れちまったのかな、仕も、あと三章で、新作が完成します。出来 については、まだ私にはわからないけれど 事のせいです。ひげをはやして、ネクタイ ビ 1 ター・・ビーグルに会ってしまつをちゃんと締めた、ちょっと太り気味のおも」 コリーンが、ちょっと合の手を入れる。 じさん。それが、ビ】グル。そのとなり 「いい出来よ ! 」 ビーグルが、日本に来ている。そんな知に、やたら目に活気のある黒人の女性。ビ コリーンは、ビーグルの言葉にいつも耳 1 グルの創作上の、そして私生活でのパー らせを受けたときには、びつくりしたけれ トナー、コリーン・マッケロイ。後で、詩を傾けていて、色々な形で補足してくれ ども、自分が実際に、当人に会ってしまっ 集をアメリカから送ってもらったのでわかる。二人三脚。まるで自分の作品のよう たことには、もっとびつくりしている。 もう、会っただけで、充分。通訳がわりったけれども、詩人。そのときは、大学でに、ビーグルの作品を語ってくれる。彼女 に、早川書房の浜口さん ( 女性、しかも若小説の講座を持っている先生という話だつの話だけでも充分に面白いんだけど、とり こ 0 こ 0 2
血 i 吶 PRODUCED BY GERRY ANDERSON DIRECTED BY ALAN PÅTTILLO. DÅⅥ 0 LANE DESMOND SAUNDERS. DA Ⅵ 0 ELLIOTT BRIÅN BURGESS. DIRECTOR 0F PHOTOGRAPHY:JOHN READ CHARÅCTOR VISUÅLISATION:SYLVIÅ ANDERSON ÅRT DIRECTOR:BOB BELL SUPER SPECIAL EFFECTS DIRECTOR: DEREK MEDDINGS PUPPETRY SUPERVISION: CHRISTINE GLANVILLE. MARY TURNER 削 S COMPOSED AN0 DIRECTED BY BARRY GRÅY NEWS / ーア C 作品がレンタルオープン / 工モーションから発売されている ITC シ リーズのピデオ作品が 8 月 1 日よりレン タルがオープンとなります。レンタル対 象作品は以下の通り。まだご覧になって いない作品がありましたら、この期に急 いでレンタル店へ。 なお、海賊版にはご注意ください。 くレンタル対象作品〉 ・サンダーパード ・宇宙船 XL ー 5 ・謎の円盤 UFO ・スペース 1999 ・スーパーカー ・ジョ 9 0 ・コンプリート・サンダーバード ・海底大戦争 ( スティングレイ ) ・キャプテンスカーレット ・プリズナー No. 6 明 2 旧発売予定の新作アイテム コンプリート・サンターバード ( 日本 VIDEO ・ TV 放映全 32 話の中から、特に注目すべき名場面をビッ プリズナー 6 ⑤カラー 100 分 \ 13 田閲 クアップ。国際救助隊メカの発進プロセス、全フォルム サンダーバード ( 日本語版 ) カラー 100 分 \ 13.800 ディテール。また、ゲストメカ、コンテナメカ等も徹底 アニメサウファンタジーカラー 4 吩① \ ん 800 収録。さらに、爆発、崩壊等のスペクタクル特撮シーン キャプテンスカーレ、外カラー 105 分 \ 9.8 や、人形キャラクター、感動の名シーンも完全綱羅。構 ファンタスティ巧プラカラー 72 分① \ 1 気 000 成・演出は、「マクロス」、「ナウシカ」でその手腕を発揮し カラー 90 分① \ 1 000 タロス・ス′もャル た人気アニメーター庵野秀明。日本語版フィルム、タイ トルを使用。詳細な解説書付き・・・・・・といった超豪華版。 ・おわ” ( 03 ) 468 ・ 8211 ・売代匈 / 株式会社 A E 企画 こ期待下さい。 ・第売元 / パンダイグループ カラー 90 分モノラル Hifi ① \ 12 , 800 的 BES ・ 124 BEB ・ 124 ネットワ - ク・フロンティア事業部 0 東北新社 東京都渋谷区神山町 10-3 〒 150