レイラは病院へ行き、腹の中の胎児が化石化していることを知ら「わたしのお腹の変化もそれとは無縁ではないわ。きっと : : : 効果 があらわれてきているのよ」 された。レイラには覚えのない子供だった。これは自分の子ではな 、得体の知れぬ侵入者だと彼女は思った。 「しつかりしてくれ」 「どこから来たんだろう」 「優しいのね」 「わからない。たぶん過去からでしよう」 レイラの足はむくんで紫色に変わっていた。宥現は静かにマッサ」 ージしたが、 レイラはもうべッドから起き上がれなかった。 病院のペッドで宥現はレイラの腹部に触れてみる。レイラの腹に いる胎児は生きてはいなかった。だがレイラはその子に生命を吸わ「わたしもね、あなたと同じことを考えて、「未来を呼んでいた の。だけどだめなようだわ。この街はあなたの時間域に侵略されよ れるように衰弱していった。 うとしているのかもしれない。つまり、あなたはもうじき幻の世界 「エリクサーを倍飲むようにと言われたけれど : ・ : ・こわいわ」 から出られると思う」 「大丈夫。どのみちわたしたちは死んでいるんだから」 「わたしはここでは生まれてはいないのよ。この姿は未来から投影「きみは : : : どうなるんだ ? 」 された幻の肉体だわ。この身体に過去が干渉している。 ・ : あなた「わからない。でも : : : わたしは帰りたい」 が呼んだのね」 「エリクサーを飲むか」 「わたしが ? 」 ペッドの上でレイラは首を横に振った。一 「あなたがなにをしているか、知っているわ」 「赤ちゃんをあなたにあげるわ。チリクサーを飲なのをやめれば、 宥現はレイラの時間理論を聞いたあと、自分の顔と姿を映した写化石ではなく育ちはじめると思うの」 真を空中に向けて電送していた。映話機を改造し、周波数を変え「きみは死んでしまう」 て、符号化した自分の姿をくり返し発信した。 「どっちみち、わたしはこの世界ではまだ生まれてはいないのよ。 それは、自分はここにいる、というメッセージだった。 わたしが動けなくなってまだ形があったら : : : 墓にもどして」 宥現が呼んでいるのは「過去」だった。 : レイラ」 「 : : : そう、わたしは、わたしを追いかけていた戦車を呼んでいる レイラが床に伏しエリクサーを拒否して三日目の朝、宥現はレイ んだ。あいつは遺跡から出現した。まったく錆びていなかった : ・ ラの手が冷くなっているのに気づいた。・ヘッドのわきでレイラの手 あいつはいまもわたしの追跡をあきらめてはいないだろう。あいつを握りしめて、膝を床につけ頭をベッドにのせてうとうとしていた はわたしを殺そうとしている。だけど、いまはそれが役に立っと思宥現はレイラの異変に気づいて顔を上げた。」 う。あいつは、現代によみがえった過去なんだ。過去の使者なん レイラは透明のゼリー体になっていた。 宥現は布団をはねのけた。レイラの着ているものをとると、その 0 7
「だめだろうな、たぶん」 腹部に健康な赤ん坊が身を縮めて眠っていた。 「あなたのものよ」レイラはほとんど聞きとれない声で言った。 「時間はたっぷりありますから、気をおとさないで待っことです 「抱き上げなさい。その子はエリクサーなしで育つはずよ。その子よ」 は現実そのものだわ」 「ああ、わかってる」 宥現はレイラのゼリー状の腹部から赤ん坊を取り上げた。半透明家へもどって、隣の家のドアを / ックすると、未亡人がレイラの のへその緒は蒸発した。 生んだ赤ん坊を抱いて、おろおろした様子で言った。 レイラの身体は硬化し、ガラスのようになった。 「どんどん大きくなるみたい」 「レイラ : 「機嫌がわるそうですね。空腹なのかな」 ガラス人形になったレイラは返事をしなかった。宥現がどんなに女の子だった。火がついたように泣きじゃくるその子を抱きとめ 呼んでも。 る。 「ミルクを飲ませたんだけれど吐いちゃうし。お風呂に入れればい やがるし : ・ : ・こまったわ」 宥現の腕の中で赤ん坊はミルクを吐き出した。 「あらまあ、たいへん」 過去は創造し、未来は破壊する。 宥現はそんな気がした。この世界では特異な自分の存在に対し未亡人はタオルをもってきて宥現に手渡した。それを使ってミル て、過去がレイラという女を未来から引き寄せて事実を知らせようクをふいた宥現は、そのミルクが液体ではなく砂のような感触なの に気づいた。 としているのかもしれないと宥現は思った。 「 : : : なんてことだ」 宥現は赤ん坊を隣りの未亡人にあずけてレイラを柩に納めると、 「どこへ行くの、刑事さん、待ちなさい」 第七霊園へ行き、葬った。レイラはまだ生まれてはいないのだっ た。数年か、数百年か、数千年か、そんな未来に生まれることにな宥現はジー。フにとび乗った。赤ん坊をかかえて。 るのだ。 この世界の水は、水ではなく砂なのだ。」 宥現はジープを浜へ向かって走らせた。一 「恋人ですか」 「いや、妻だ」 海に見えているそれは、砂にちがいなかった。海ではなく砂漠な 三カ月前とは別の墓守りに宥現はこたえた。 のだ。 「そうですか。お気の毒です。再結申請をなされば、そのうちに超砂丘から海を見下ろせるところでジー・フを止める。助手席にちょ 腐処理されますよ」 こんと座わっている三歳ほどの女の子に宥現は言う。 ひろみ 7
「どっちみち死んでいるんだ」 「そう」 「驚かないのか」 宥現は # 54 を穴に入れ、砂をかけた。 ジー。フに女を乗せて霊園を後にした。 「時間の檻から解放してもらって、ありがとう。どのくらいたって いるのかしら」 6 穴をきれいに埋めてスコツ。フを砂に刺し、宥現はあらためて女に 訊いた。 「きみはどこから来た」 墓から出てきた女レイラは宥現と同じようにこの街の実体を調べ 「一〇三四年に、わたしは時間刑を執行されたの」 はじめた。 「犯罪者なのか」 レイラは昼間は外に出ていたから、宥現が彼女と話しができるの ・ : なんだかは夜か早朝のペッドだけだった。 「ちょっと宇宙船を乗っ取ろうとしただけよ。ここは : 大昔の世界みたい。退行しちゃったのかしら」 レイラは料理は苦手だった。 「家へ案内しよう」 「だって」とレイラは言った。「わたしの時代には完璧な料理ロポ ットがいたもの」 「そうね」 「あ、少し待ってくれないか」 宥現はうまい料理をつくる自信はあった。宥現はなんでも一人で 首にかけたヘッドセットがコールサインを出した。 やり生きぬいてきたから、レイラがなにもしなくても不便は感じな っこ 0 、刀十ー 「なあに ? 」 「仕事だ」 レイラは外で食事をし、宥現は材料を買い込んで自分の食べるも 宥現は仕事の指令を受けた。霊園管理人 # 54 を射て、という命のは自分でこしらえた。レストランの料理に毒が入っているとは思 令だった。 わなかったが、少しでもその危険を小さくしたかった。旅賊として # 5 4 は、自分の掘った墓穴がだれのためのものか、刑事がちょ生きていたころの習慣だった。 食事も別別にとる生活は、宥現が想像していた甘い新婚生活とは っと来てくれと言い、その墓穴の前で拳銃を抜いたとき、悟った。 まるでちがっていた。宥現は甘い生活を期待してはいなかった。新 「やめてくれ。わたしにはー・ー」 宥現は # 54 に最後まで言わせず、拳銃を射った。ためらうこと婚生活についての想像はレイラとの生活ではなく、一般的な新婚夫 婦についてであって、自分自身とは別のものだった。だから宥現は もなかった。 裏切られた気持は抱かなかった。偽りの甘い関係をレイラと結ぶつ」 「なんてこと」 もりもなかった。 レイラという女は叫んだ。 ひろみ 6 6
いうのは二つの領域に狭まれて危うく成立している一種の幻にすぎ レイラが宥現の作った食事を初めて口にしたのは、彼女が墓から 掘り出されて三カ月たったタ暮れだった。 ない」 無言で食事をとったレイラは、後片付けをはじめる宥現に、手伝「そのように考えたことはあるよ。でも過去というのは決定されて おうかと言った。 いるんだろう ? 」 「未来と同じように不確定、というのがわたしの世界での考え方だ レイラは足を組み、煙草に火を着けた。 ったわ。不確定な過去を固定しようとする力が地球をおかしくして 「きようは落ち着いているな」 しまった。銀色の小さなアンドロイドのようなものがいたわ。正体 「疲れたわ」 不明のー 「エリクサー入りの煙草か」 「銀妖子だ」 「知らない。わたしの時代にはこんなものはなかった」 「あなたの世界にもいたのね」 宥現は皿を流しにおいてテープルにもどり、レイラの吸う煙草の 「いた。きみの世界も滅びようとしていたのか」 箱を見た。 「銀妖子は宇宙人だとも言われていたけど、最近になって、わたし 「コスモスか。わたしの生前にもなかった」 の時間感覚で最近、なのだけれど、あれは遠未来の、過去領域のカ 「生前、か。おかしいわね。、、 ししえ、煙草というものがなかったのに対抗する力が具象化したものだと考えられるようになった。過去 よ。わたしはたぶん、未来から来たんだわ」 という力が未来に侵略をはじめたために、未来が過去に対抗してい 「どういうことだ ? 」 るのだと。その逆かもしれないけれど。未来と過去がおとなしく動 宥現は腰をおろした。レイラが自分について話をするのははじめかず、時間線というものが未来と過去のきれいな境界をすべるよう てだった。 に動くなら時間の流れは一定だけど、その境界線がゆらぐとなる 「未来というのは正しくないかもしれないけれど。スカルⅡがいると、現実もゆらぐ」 のよね。低級ロポットの」 「よくわからないな」 「骸骨ロポット ? 「正確な理屈はわたしにもわからないけれど」 「あれはわたしの時代にもいたわ。でも煙草はなかっ . たし、家や街レイラは煙草を消して、テー・フルに図を書いた。 「たぶん、こういうことよ」 は大昔のものよ。この街は未来と過去の交点のようたわ」 「現在というのは常にそうだろう」 「真の時間はわたしたちの感覚とは九十度ずれた、 X 方向へ、過去 「現在というのは過去領域と未来領域の境界のことよ。過去にも未領域へ向かって流れているとも考えられる。時間線は方向へ移動 7 来にもあらゆる可能性があるでしよう。だから実現している現在とするの。過去と未来にはあらゆることが起こり得るわけで、現在が
「二十五だ」 「抽象的だな」 「人間には理解できないかもしれない。なにしろわたしたちは、そ「そうは思えないわ。わたしは三十六だけど、一人前という気がし の二つのカの干渉縞のような存在なんだから。少しその角度が変化ない」 すればとらえられる感覚も考え方もがらりと変わってしまって、そ「年など関係ないだろう。こういう状態なら、なおのことだ。時間 の変化を意識することもないでしよう。エリクサーはその変化を感には意味がないんだから」 じさせる固定力をもっているのかもしれないわね」 「そうね」 レイラはうつむき、口元をおさえた。 「銀妖子の仕業かな」 「どうした ? 」 「わからないわ」 「空間的にはどうなんだ。この現象はこの街に局地的に起こってい 「ちょっと気分がわるい。吐き気がする」 るのか」 「料理がわるかったかな」 「そうじゃないわ。おいしかった。過労だと思う」 「それも、わからない。空間論も考慮して研究されていたみたいだ けれど、わたしは専門家じゃないもの」 「早く休んだほうがいい 。わたしはソフアで休むからー 「ハイジャッカーだものな」 「優しいのね。あなたにとってわたしは敵かもしれないのに」 「地球から出たかったのよ」 「きみは妻だ」 「地球だけの現象だと考えたのか ? それなら局地的なものだろ レイラは妊娠していた。隣りの未亡人がそれに気づいた。だがレ イラが身に宿しているその子は死んでいた。 「きみは」と宥現は訊いた。「透明ケースに封じ込められる前に妊 「恋人のところに行きたかっただけよ」 娠していたのか」 「ワー。フ航法はできたのか。その宇宙船」 「ワー。フ ? ああ、そうね。時空をとびこえることはできたわ。正「ちがうわ」 確にはどうなっているのかわからないけど」 「すると、その子はーー」 「地球をおかしくしたのはそのせいじゃないのか。責任はきみたち「ちがうと思う。あなたの子じゃない。そしてたぶん、わたしの子 未来人、わたしにとっての未来人にあるんじゃないかな」 でもないわ」 「もしそうなら、どうする ? 」 「隣りの奥さんに、それはおめでただと言われたときは信じられな 「どうにもならない。わたしの立場では、もしそうなら、過去に味かったけど」 この世界では新 9 「彼女は信じられなくて目を丸くしてたじゃない。 方し、未来の干渉を防ぐために戦うしかないたろう」 「あなた、いくっ ? 」 しい生命など生まれるはずないんだから」
「動く屍体を相手に戦争か。魔姫、過去を呼んでくれ。百年は待て 「魔姫 : : : 魔姫だな」 ない」 女の子はきよとんとした表情で宥現を見ている。 エリクサーを捨てる。水死体になるのと、殺されるのと、幻から 「きみは魔姫だ。思い出せ」 出られるのと、どれが早いだろうかと宥現は思う。 宥現は叫び、ジー。フをスタートさせた。 「この世界から出たら : : : ぼくはミイラに、きみも砂になってしま 海へ向かって突っ込む。水だった。ジー・フは海水を浴びて止まっ うかもしれないな」 墓から来て墓へもどっていったレイラは幸せだったろうか。レイ 女の子は泣き叫んだ。宥現は女の子を抱いて岸に泳ぎもどった。 ラは魔姫と鏡面関係にあるのかもしれないと宥現は考えた。魔姫は 「 : : : 魔姫、ばくを思い出してくれ。幻を消せるのはたぶんきみだ レイラとは反対に過去から来て、母体から来て母体へもどるのでは けだ」 、、 0 チーも、刀 宥現はその子を魔姫と信じた。 宥現が会ったとき魔姫は百歳をこえていると言った。まだ若い女宥現は魔姫の手を引き、ジープを捜すために署から出た。 だったが、おそらくそれは事実だと宥現は思った。時間のスケール偽りの世界はもうごめんだった。 いま自分が死んでいるなら、と宥現は思った。偽りの死ではなく は意味がなく、生も死もたぶん意味がない。 正常な死を望むべきだ。 宥現は魔姫をつれて街にもどり、魔姫を医師に診せた。 エリクサーも飲まずにちゃんと息をしている女の子を医師は不思 それは生きていた。撃破すべぎ目標を忘れてはいなかった。 議だと言った。 「これは行政局に知らせたほうがいいでしような」 それは宥現の世界で修理されていたが、修理した研究者たちはそ 宥現は医師を頼ったのは誤りだったと気づいた。 れ、その戦車が生きているとは思わなかった。 エリクサーにとってそれを必要としない存在は敵なのだ。 それの中枢コンビュータは彼らには解析不能だった。どうやって 「あ、いや、その必要はないでしよう」 動かすのか、それの動力系統の修復に成功したものの、彼らにはわ 宥現はそう言って、魔姫の手を引き、病院を出た。刑事の身分証からなかった。人の乗る場所はなかった。 それの正体は不明だった。彼らはそれに関する資料を持っていな とヘッドセットを捨てる。魔姫は五歳ほどになっていた。 警察署へ行き、武器の保管室に入ってオートライフルを取り、実かった。戦車らしいことはわかったが、いつだれがこんなものを造 ったのかという手がかりはなかった。 砲をポケットに入れる。 刑事の一人がなにも知らずに入ってくるのを、宥現はためらわずそれは動かなかった。 動かすこともできなかったので研究者たちはそれを倉庫に入れて に射殺した。 こ 0 2 7
発するのかもしれなかった。もともとその墓石は単純な直方体の透 明な柱で、それがなにかの拍子に砕かれて現在のような錢い形にな スコツ。フの先に硬いものが触れたのは、宥現が掘りはしめてから 6 ったのだと # 5 4 は考えていた。 二十分ほどだった。深さは時間の割にはさほどではなかった。膝よ り少し深いくらいのごく浅いところに、墓石の素材と同じ透明な柩 「どれかわかるか」 が姿を現わした。 「わかります」 宥現はス . コップを投げ出し、手で柩の砂をはらった。 「案内してくれないかー 「いいですが、その墓とあなたの奥さんと、どういう関係があるん透明な柩に白いドレスの女が納められていた。納められているの ではなく透明プラスチックに封じ込められているのだった。その素 材は硬く、スコツ。フの先が当たったところにも傷一つついていなか 「まだ妻ではない。妻になるんだ」 「婚約された方の、墓参にこられたのですか」 エリクサーを吹きつけようにも、この透明ケースから女を出すこ 「妻になる女がそこにいるんだ。墓の下に。過去形ではない、未来 とはできそうになかったが、宥現はためしにポケットから出したエ の話だ。その女は妻になるはずだったのではない、なるんだ」 リクサース。フレ】をその透明ケースに噴射してみた。ケースが溶け 「そうか」 # 54 はようやく気づいた。「結婚されるわけですね。 出した。溶けるはしから蒸発してゆく。主リクサース。フレーが空に 超腐処理で」 なるころ、ケースは消え、墓の底に宥現の妻が横たわっていた。 「そうだ」 「最初からそうおっしゃればよかったのに。しかしこの霊園では初腐乱した屍体を予想していた宥現は、ケースを失った女が見てい めてですよ。わたしがここに来てから初めてだ。この墓地はわたしるまにそうなるのではないかと思った。だが女は腐らず、青白か が生きていたころのものとはどこか異質です : : : いつの時代のものた顔に血の色がさしていた。そして女が目を開いた。 かよくわからない」 「いまは何年なの」 女の最初の言葉たった。宥現はわからないとこたえた。 「案内してくれ」 「わかりました。ですが掘る手伝いはできません。きようここで理「あなたは ? 」 「本海宥現。きみは」 葬があるんです。それも初めてのことなのですが。わたしはここに いないと」 「名を失う前は、レイラ」 宥現は女が穴から出るのに手を貸し、穴をもとどおりに埋めた。」 「わかった。一人でやる」 「あなたは何者なの」 # 54 は管理舎から出てスコツ・フを男に手渡し、墓へ案内した。 そしてもどった。男は一人で墓を掘りはじめた。 「刑事だ。きみの夫さー びろみ
半ば忘れた。 追跡不能の状態になってから八年目に、それは目標の手がかりを それは生きていた。 得た。その手がかりは目標の名ではなかった。暗号波のようだった が、その信号を解析すると、目標の顔になった。偶然そのような歉 全地球へ探査範囲を広げて、目標の手がかりを探していた。 になる確率はゼロではなかったが、ほとんど無限小だった。 それは移動探査を放棄し、手がかりを人工電磁波に求めていた。 頭上には、地上の人間たちが忘れてしまった過去の高高度地上探査それは修理されてはじめて、戦闘用タービンエンジンを始動し 衛星がまだいくつか落下せずに生き残っていたし、静止軌道にも地た。 上目標追跡衛星が作動していた。それは積極的にそれらを動かすこ探索コン・ヒュータは目標の絵を発信している発信源の位置を割り とはできなかったが、それらの情報を利用する能力はあった。だが出した。 それらの送信波には指向性があり、どこでも利用できるというわけ八年を経て、それは目標追跡のための移動を再開した。目標まで ではなかった。目標が人間というのでは、分解能のせいでほとんどのルートを衛星の地表探査情報を利用して設定する。直線距離で二 役に立たなかった。だが、地上から出されている電波を自動傍受し百八十キロ、ルート長は平面上で六百キロ以上だった。それにとっ 地上へ暗号中継する能力のあるスパイ衛星は役に立っとそれは判断てはたいした距離ではなかった。 していた。それらの放送電波の中に、目標の手がかりがあるかもしそれは倉庫の壁を突きやぶって砂漠へ出た。倉庫番をしていた小 れなかった。だからそれは上空の衛星へ向けて極短波用アンテナのさな戦車タイ。フの警備ロポットが威嚇射撃をすると、それは主砲で 狙いをつけ、付近の電波とともに、それら地球の裏側からの情報も反撃した。警備ロポットは緊急信号を発するまもなく吹き飛んだ。 もらさず捉えていた。暗号波の解析能力はあった。 それは飽きることも疲れることも知らなかった。それは目標の姿日が暮れようとしていた。・ や顔を覚えていたし、高度なパターン認識用光コンビ、ータで目標宥現は第七霊園近くに来てジー。フを捨てた。追ってきた刑事たち が歳をとったときの顔を予想することもできた。それは、目標がなとの銃撃戦で左腕を負傷していた。霊園の鉄の門は閉まっていた んと呼ばれているかも知っていた。宥現と魔姫。それが目標の名だ が、宥現はライフルでこじあけて内に入った。 自分の墓を掘るべき状況だと宥現は思った。 目標の生死は不明だった。しかし生きている可能性がある以上宥現はレイラの墓のとなりに、右腕で墓穴を掘りはじめた。 は、追跡をやめるわけこよ ~ 。いかなかった。それはそのように造られ空は曇っていた。低く垂れこめた黒雲から大粒の雨が降りはじめ ていた。少なくとも捜索開始時点から百年は追跡す。へきだとそれはた。雷光が閃いている。宥現はかまわず掘りつづけた。 計算していた。百年をすぎれば、目標が生きている確率はほとんど魔姫が泣き出した。宥現はスコツ・フを捨てて右腕に抱き上げた。 なかった。人間の寿命はそのくらいだとそれは教えられていた。 「わかったよ、魔姫。わたしはどうやら墓とは無縁らしい」 ひろみ 3 7
シンティック シリル・ M ・コーンプルース千ー・駅 ズムはやはりヒーローとしての資格充分。細 、にごっすだがとい見どっ語す かなアイディアだが、オーヴァードライプで ~ ( 前かしま刊たた追にな帰英ま 航行中に人間の主観的な健康のためにノイズ 円 のとをみ新しえも者と のような。ハックグラウンド・テー。フを流すと 、棚 >< 点でのまおてけ ! おとい 、のと焦ん目いしつ怠いし界て いうのも、実に気がきいている。こうした心 ク < の読冊て訳たとつお世し くばりが作品を生かしてくるのだ。それにあ ッと目を 8 っ冊でんあしの訳 てトの知ーまうぶて らためて気がついたのは、本シリーズの構成 一にしッスはとつはたつ造っね が「シェーン」に代表される流れ者を主人公 / 中とペンのつい者ま買創ば 、つさし在つら。ほ。。、 とするウエスタンのパターンをとっているこ ( んさ 、た一のつアザるや、訳もを よだま存らわい 、くし的かかさししペ目はフのれ。ら、れ刊像がだ とと、思いのほかアクション・・シーンが多い とソ 目てせ法ぎいだ渡ま、然。ルイさたでこ新想 ン ことだ。前作ではテ 1 マばかりに目がいって たよ . も士冗 一三ロ 冊いた魔つあくをきて突たアニ行 ~ っ勉 しまっていたが、このシリーズの魅力はいろ 4 て待ら 、み稿行い 、しだソ刊はま勤んつかっ愛 し「子 いろなところに潜んでいる。やはりラインス 訳北原ズ待に法らい楽のんのるき並ア目るてりうきもしも ターはパルプ・マガジンで鍛えられてずっと く闘と 一。当魔やてお目さもいでと・冊すえかや 現役作家だっただけ、タダ者ではない。 な苦後 つの田リた本、虹 0 ぞ冊屋場てん然ズ 8 陸増ばー シし、てやづう四本売めこ整アん上冊者かっし戦今 や山 まんっ海つどスて書がびはビろにー作いさて悪 ス 『クリスマス・イヴ』以来、ということはも なく。はにズ きさよやを。ンし洋なと度がち本た ン う二十年以上たったわけだが、ソロ長篇とし でなに砂話さザとりとと今れも日ま ! やっすのと一 じぶまイびリ けみ例、しかに々おつつ ては久々の紹介になる O ・・コーンプルー どのもらしや日嬉とうやせとす々になうでりニ遊シ スの『シンディック』。著者自身が「病める」 と者回や楽ぎ x てのばちわんで早のしま内あソば本 本と呼び、本の帯にはディストビア小説とあ・ , 、 ' お読今のとに月しも、こ合なのもなやしのでンと た。もへの X とっちゃー 、たうろきて胸のアこで るが、もっと素直に読める作品だ。ある未一 ) を のの やったのぎずつい立ちかとっここっえとた 来、北アメリカ大陸はマフィアのごときイタ リア人のシンジケートが忠誠心をよりどころ として生活するシンディックと、アンとから、『宇宙商人』の構成にも似て、その会を設定することで、いかなる社会体制も人 と訴えかけてく ′い、グ。サクソンのギャングが民衆をギ世界を遍歴することになり、その荒廃した社間を救うことはできない、 る。登場人物のフランク・・テイラーが長 会が浮かびあがる物語となっている。 ルド的に分割し物欲で支配するモプに ートビア小説、ある長と語る社会観こそ、コーンプルースのもの だがそこで、多くのユ 東西に二分され、官僚と軍隊のファシ ズム的旧「政府」はアイスランドに本いはディストビア小説がプロ。 ( ガンダや警鐘だ。鼓腹撃壌的な中国的治政観、なにもしな いことこそ最良という考え方。シンディック /. 拠を置き、他の国々は原始状態にな「の書となるような「ネを、「ーイフルースは という社会は、理想へとむかう現実であり、 ーのしない。抱きしめたいほど、人間を愛し人間 た世界。シンディックのファミリ 一員である主人公が、命を狙われたこを信じるコーンプルースは、こうした未来社それはいっしか自由という言葉と同義語とな のし