ているのだ。同じように、チチアの賭場、娼家も、どこであれ、ど・「ふんー 「おい、金ならもってんだ・せ。遊ばせるのか、ばせねえのか、どっ こかしら、似かよった空気を漂わせている。 ちだ」 「いらっしゃー 。あら」 とやかましい」 「何だ、・ 一軒のかなり大きな娼家の戸口で、入って来た客を迎えようと、 ツメにクラディア花の液をぬ 0 ていたのから顔をあげた、あぶれ妓奥に通じる、入口にかけてある玉すだれをかきわけて、ぬうとク ジラが姿をあらわした。 が、一目あいてをみて、頓狂な声をあげた。 いや、それは、びかびか光る黒いうすものをきた、五十がらみの 「何か用、あんた。誰かに、おっかい」 くじら 女だった。もっとも、見かけは、女より、ガトウーの方に近かっ 「おい、あねさん、客にむかってそいつはねえだろう」 ずい、と「女神亭」とでかでか書かれた戸口をくぐ 0 て、広い土た。少くとも、イシ、トヴァーンの三倍は、体重があるにちがいな 間に入った、黒い髪をうしろでたばねたすらりとした少年は、唇を ( こいつが、ヨビスのいってたトド婆あだな。一目でわからあ ) つき出した。 イシュトヴァーンはロの中で呟いた。腹も胸も首も、脂肪のかた 「こうみえても、遊ばしてもらいに来たんだぜ」 まりだ。ほほからたれさがった肉が、ぶるん、ぶるんとふるえてい 「へええ」 さしもチチアで有名人のヴ = ントのイシ = トヴァーンも、ほとんる。うすい赤毛をひ 0 つめて、てつべんにまげにしたさまは、まる ど娼家から外〈出ない、娼婦あいてでは、顔の知られようがないとで白い巨大な団子に、小さい赤い団子をかざりにのせたようだ。 うわさに高いライゴールの《蛙神》アンダヌス評議長もかくやと みえた。 いう、巨大な生ける肉塊であった。 ことにこの「女神亭」のあるのはニンフ通りの横町、もう、男娼 「あんたがここの差配かい、べっぴん。このスペタが、おれの年が 窟の多い東チチアの一画だ。イシュトヴァーンの縄張り、ヴェン いかねえから、女は売れねえとぬかしやがるんだ。この店じゃ、と ト、ウミネコ通りかいわいは西チチア、ここからは反対側である。 若くたって、自慢のトートの矢で、これ 「あんたが遊ぶの。それとも、買ってくれる客をさがしてもらいにしで客をえるのかい。 まで百じやきかねえ女を泣かせてるんだがね。お疑いなら、見せて きたのかい」 やろうか」 「おれが、遊ぶのよ。悪いかよ」 イシュトヴァーンはチュニックをまくりあげ、足通しに手をかけ 「また、ガ ・ - キじゃないか。 トートの矢のつかいかたを、知ってんの る。 どうも、育ちが育ちであるだけ、やることなすこと、品に トートの矢はもう人並みに育ってんのかい」 かい。第一、 「よしやがれ。試してみやがれといいてえが、おめえ相手じゃ矢も欠けるのはやむを得ぬ。 「おお、目の毒、目の毒」 ふるわねえや」
へ戻らねえでよ、おれんとこに、じっとしててくれねえか。いやな ョナは大きく目を見はって、イシュトヴァーンを見つめた。 「ほ、ほんとに ?. イシュトカ ・ : ばくに、ばくちを教えるかわりに 用心にこしたことはねえからさ、どうせおめえは、夜は外に出 5 ねえでいい子にねんねしてるし、おいらは夜、うちにいたことなん 「おれがおめえのかわりに《黒のプルカス》とさしで勝負して、証ざねえ。たがいのさわりにゃならないと思うぜ」 文をとりかえしてやろうって、いってんのさ」 「イシュトの、うちへーー・ですか ? 」 「ええつ、でもーー・」 少年の、大人顔まけの聡明な瞳が、じっとイシュトヴァーンにす えられた。 「心配すんな、おれはいまだかって、負けたことがねえんだ」 そして、何を思いあたったのか、ヨナはにつこりほほえんだ。 「いえ、そ、そうじゃなくて、あの、もしイシュトに、迷惑がー しいですか。じゃ、よせてもらいます」 「お世話になっても、 かれはしずかに、考えぶかげに云った。 「しいってこった。海の兄弟だぜ。そうだろ」 「じゃ、今日の夕方、うちへいって、ちょっとお父さんにその 「でも、あの、・ほくー・・ー」 よそへ、友達のところへとまる、と、それと、本とか少し、もって 「でも、あの、・ほくじゃねえ。そういうふうにウジウジしてつか ら、ばくちにや向かねえ、つってんだ。なーに、それにおいらもきたいものがあるので、あと着がえと : : : それは、とりにいって しいですか ? 」 な、いっぺんその・フルカスってえやろうとは、さしでケリをつけても、 みたかったのよ。おいらのよくコロをふる。ヒットの賭場は、正直よ オ「いいとも」 胴元で、かたぎさんを遊ばせてやってる。が、・フルカスんとこのサ 「じゃ、そうさせてもらいます。でも、イシュト」 イスの賭場のやりくちは、しろうとをひつばりこんじやオケラにす「え ? 」 る、そのやりかたが、前々から気にくわなかったしーー・あっちは黒「それと、これとは別ですからね。いや、そんなこととなったら、 の・フルカス、こっちは赤のイシュトヴァーン、両雄並び立たずって かわりにばくちをやってもらうお礼のかわりです。・ほくにできるか やつで、いずれはどっちがいし 、コロ師か、ケリをつけずにやおかねぎり、目いつばいビシビシとしごいて、できうるかぎり早く、イシ えところだったからな。気にすんなって、こっちも、趣味と実益っ ュトがよみかきのできるようにするのがぼくのいちばんの義務です てことよ」 ね。さ、ずいぶん、時間をムダにしてしまった。日のあるうちに、 イシュト : 「イシュト きようはルーン文字三十六文字をぜんぶ覚えましよう。さあ、本を びらいて。ぐずぐず、してちゃだめだ」 「何でえ、泣くな、ば : それと、な」 「ひええ」 イシュトヴァーンはなさけない声で叫んだ。かまわず、ヨナは細 「ちっと、たのみがあるんだが、しばらくうちへーーーカルアのうち
人工知能という言葉か急速にクローズ・アップ されている。いまやの専売特許ではなくな った″本物〃の人工知能を見ようと、本誌編集ム テ 部は機械神アスラ』はじめ人工知能の登場すス るを書いている大原まり子さんと共に七月ト 一日から四日にかけて東京流通センターで開催 された「人工知能 ( ) 展」を取材してきた。 ) ①会場 大か るの する をを ン何 A 飛行機の便を選ふ相談に乗ってくれるのこ エキスパートシステム さ OLOG による 4 ℃ AL PROC•RAM 所ン呆て、 ロヒ。然はだ ボ、ユ とかがそ , - ンネそそな が展ににの チ示あしだ ョばるてろ コかのもう 的うせとテ仕・のれタなヒ。パ マりはど い目ク事・大ず少りュー人 とにな カ とふ当をははオ葉ださ産の人、年、一ソ工 動と然ど取まドかろれ業世たビのいタナ知 い見のう材っロらうてに界ちジ姿わ・ル能 てるこ見班たオ連。いとだのネはゆシ・展 いととよのくド想人るつつひスほるヨユ 、なう予な口さ工分てたし とコーーの る 。めスんンなス会 プたがか想かしれ知野 ーだらとどっさる能て、成ハき一どヒ。どの場△さあて、どこを見よーかしら ? おたは S とあ長イあツみュとコは ス がカコ瞬り 。そ F いる株・う姿ら一異ン 0 1
「はあ : 。尚子と、どういう御関係で ? 」 「どうした中沢。落ち着け ! 」 「どういうって : 。お、お夫じゃないですか ! 」 おれはごくりと唾を呑み込んでから保崎に訊いた。 「は ? 夫 ? 」 「おれの女房の名は今日子か ? 」 尚子の母親はしまいにケラケラと笑いだした。 保崎はポカンと口を開ける。煙草が唇の端にくつついていた。 おれは腹が立ち、わけがわからず電話を切った。 「なんだ中沢、おまえ、自分の女房の名前を忘れちまったのかに」 なんだこれは ? おれは保崎につめよった。 机の上の灰色の電話を見つめた。 「たのむ ! 言ってくれ。おれの女房は誰だ ? 」 「どうした中沢」 おれのひっしの形相にびくついて保崎は答えた。 隣の机に座り、煙草を吸っていた同僚の保崎が訊いた。 おれ結婚式にでたし、三回ほどお前 「今日子さんじゃないか : おれは保崎を見て、ロを開けたが、なんと言っていいのか判らなのマンション行ったし、いつもおまえ、うちの今日子が今日子がっ っこ 0 、刀 0 ノ 尚子がポストンへ夫と行っちまっているって 2: て、言ってるじゃないか : : : 」 「中沢。あれだろ。おまえついにやったな」 「え ? 」 「こう、おかつば頭で、背が低くてぼっちやりしてて、素敵な奥さ んじゃないか」 保崎は煙草をくわえ、指を x 印にしてみせる。 尚子は髪が胸まであり、体もスリムだった。背も、おれとほとん 「大も食わないってやっさ。ーー結婚一年半にしてついにだな。お どかわらない。 れのところなんそ、三日めからやったけどな」 いや、そうじゃ 保崎は、呆然としているおれの顔の前で、手をひらひらやってみ 「今日子さんを泣かすなよ。おまえには、もったいない、いい 奥させた。 「ほら、おまえのナコードをしてくれた課長が、こっち見てるぜ」 んだぜ」 ぎくりとして、おれは保崎を見た。 おれはしかたなく椅子に座った。そして頭を抱えた。 「おまえ、今なんて言った ? 」 「なんだ二日酔いか ? 」 「え ? おまえにはもったい 保崎が言った。 「そうじゃなくてつ ! 」 その後、おれは会社中の知っている人間に、自分の妻の名を確か 「えと、今日子さんを泣かすなよって : : : 」 めた。ーー課長をはじめ、受付けの女の子までに訊いた。 「今日子だって みんな、おれの妻の名を今日子と言った。 おれは椅子から立ちあがった。保崎はあわてる。 マンションに電話してみると、今日子がでた。まだいるのだ。 5 8
ぐっとっ・ほからのんで、ふーと息をつく。 「重かったろう、ここまで、そのちっこいからだでひつばってくる「ヘンなこと、きくけどよ・ーー」 「いいですよ。何でも、きいて下さい」 のはよ」 「いえ、何でもないです。ぼく、なりは小さいですけど、石屋のせ「ちょっと、ききてえんだけどさ。おいら、字、本当によめるよう がれで、石をはこぶのをいつも手伝うので、カはとてもあるんです」になるかなあ」 「なりますよ。もちろんじゃないですか」 「そうかい。また、けなげなことをいうぜ」 びつくりしたように、ヨナがいう。 イシュトヴァーンはすっかりくつろいで、酒をのみ、ヨナの心づ 「どんな人でも、よめるようになりますよ。ことにルーン語はむず くしの弁当をほおばった。体つきはほっそりしているが、食べざか ノロス語は一字一字、ゆっくりとならも りの上に、朝から晩まであばれまわっているから、かれは飢えた狼かしいけど、イシ = トは、く ともともうよめるんだから。ただ、もう少しなれてくると、もっと のようこ、 ~ たいていの人が仰天するくらい食べる。 ョナは、感じ入ったように見つめていたが、かれの分の袋から一すらすらよめるようになるし、ルーン語も、ものの一年もやればよ めますよ」 っパンをとり出すと、あとをさし出した。 「よかったら、ぼくの分もたべて下さい。ぼくはひるをたべてきま「一年 ! 」 イシュトヴァーンはそっと叫んだ。 したから」 「そこまで、もっかな。おいらの頭は」 「いいのか、おめえ。みんな、食っちまうぞ」 「大丈夫ですよ」 「いいです。ぼく、どっちみち、そうたくさんたべないんです」 ョナは保証した。 「おれより若いのにいけねえな。そんなこっちゃ、大きくなれない 「イシュトは、すぐによめるようになりますよ」 ・せ、ヨナ公。じゃ、もらうよ」 「ほんとかよ。いやさ、二、三回、やってみて、こーんな物覚えの イシュトヴァーンはヨナの分をうけとると、それもまたたくまに わるい、石頭のやつが、よみかきなんていくらやったとこでムダな ペろりとたべてしまった。 やっと少し、平和な気分になったらしく、腹をさすり、ベルトをこったって、おめえに、あいそづかしされるんじゃねえかとさ : 心配になって」 ゆるめ、のこり惜しそうに火酒のつぼからすすっていたが、ふい イシュトヴァーンは、上目づかいでヨナをみた。 に、ためらいがちにヨナの方を見た。 ョナはびつくりしたようだった。 「なあ、ヨナ公」 「とんでもない。そんなことを、考えていたんですか。 「何ですか」 大丈夫協 ョナはちびちびととうもろこしの粉でやいた固い。 ( ンをかじってですったら。すぐ馴れますよ。イシ = トはもともと、とっても頭
イシュトヴァーンは片目をつぶり、ベストを肩からひっかけた。 シャ果をもっていきな」 「当座あいつ一人にしばってやらあ。そのつもりで、しこたま、サ 「五つで五ターラン、それ以上は出さねえぞ」 1 ビスしといたから、すっかり夢中さ、助平女」 ハスの子め。もってきな、そら」 「すげえなあ ! 」 「おつ、と」 ヨームはうっとりと、 投げられた袋を空中でうけとめ、ヴァシャ果をひとっとり出し 「カッコいいなあ ! 」 て、かじりながら歩いてゆく。せまいチチアの路地を、女の肩を抱 「当り前だ。おまけに、字まで、よめるんだぞ。 いた酔漢、柄のわるい水夫、外国の船乗りがすれちがう。 石畳にうずくまって、酔いつぶれているもの。半ばひらいた戸の 「あいよ」 内からもれてくる女の嬌声、煙、酔客の声。キタラのしらべ。 「先に、ビットのとこにいってろ。ョビスかルハスがいたら、あと イシュトヴァーンは、ふかぶかと深呼吸をした。この放埒で、し かし華かな、・ とこか哀愁をおびたチチアの夜、港町の遊廓の夜をふ でちっと用があるって : : : おいら、寄るとこがある」 かく体じゅうに味わい、吸いこむかのように。 「わかったよ」 「おい、タムにいっとけ。あの女に、おいらの本当の年を、、・ハラすかれは、ここで生まれ、こうしたなかで育ってきたのだ。それ んじゃねえそってな」 は、男盗女娼、ゆだんもすきもない、しかし独特の親しみも猥雑な 気炎をあげておいて、角をまがってかけ出す。若い狼、全身かぬくもりもふんだんにある、だましだまされのド 1 ルの版図であっ ら、若さと精気と生命とが、白い炎になって、ほとばしるかのよう イシュトヴァーンは、そこで生まれ、育ってきたのみならず、そ かれはいつも、ヴァラキアの夜をかけぬける、若い、浅黒い肌のれをとても好きだった。かれの血管の中にはチチアの酒場女ののこ 狼だった。チチアの夜はようやくたけなわーーー空にはばつりと、白した、放縦でけだるい南の海辺の血が流れている。それは夜の中で いイリスが少し細ってきたすがたをさらす。とおく、潮騒が耳の底もっともかれをあやしく輝かせ、生き生きとさせ、悪の王子の戴冠 に鳴るが、それはたちまち廓の喧騒にのまれてゆく。 をさせる、そんな血であったのだ。 「よう、イシュト」 鼻うたまじりに遊廓をぬけ、またねぐらへ彼はもどってきた。戸 のすきまから、あかりがもれている。 「よう、あねさん、いま帰りかい」 「おや、イシュティじゃないの」 「ようつ、ヨナ公、まだ起きてるかい」 「おツ、ガナ、今夜はあぶれかよ」 陽気に云いながら入ってゆこうとして、はっと、イシュトヴァ】 「よう、イシュト、のこってるから、安くしとくよ。のこりのヴァ ンは立ちどまった。 おい、ヨー こ 0 8
シンティック シリル・ M ・コーンプルース千ー・駅 ズムはやはりヒーローとしての資格充分。細 、にごっすだがとい見どっ語す かなアイディアだが、オーヴァードライプで ~ ( 前かしま刊たた追にな帰英ま 航行中に人間の主観的な健康のためにノイズ 円 のとをみ新しえも者と のような。ハックグラウンド・テー。フを流すと 、棚 >< 点でのまおてけ ! おとい 、のと焦ん目いしつ怠いし界て いうのも、実に気がきいている。こうした心 ク < の読冊て訳たとつお世し くばりが作品を生かしてくるのだ。それにあ ッと目を 8 っ冊でんあしの訳 てトの知ーまうぶて らためて気がついたのは、本シリーズの構成 一にしッスはとつはたつ造っね が「シェーン」に代表される流れ者を主人公 / 中とペンのつい者ま買創ば 、つさし在つら。ほ。。、 とするウエスタンのパターンをとっているこ ( んさ 、た一のつアザるや、訳もを よだま存らわい 、くし的かかさししペ目はフのれ。ら、れ刊像がだ とと、思いのほかアクション・・シーンが多い とソ 目てせ法ぎいだ渡ま、然。ルイさたでこ新想 ン ことだ。前作ではテ 1 マばかりに目がいって たよ . も士冗 一三ロ 冊いた魔つあくをきて突たアニ行 ~ っ勉 しまっていたが、このシリーズの魅力はいろ 4 て待ら 、み稿行い 、しだソ刊はま勤んつかっ愛 し「子 いろなところに潜んでいる。やはりラインス 訳北原ズ待に法らい楽のんのるき並ア目るてりうきもしも ターはパルプ・マガジンで鍛えられてずっと く闘と 一。当魔やてお目さもいでと・冊すえかや 現役作家だっただけ、タダ者ではない。 な苦後 つの田リた本、虹 0 ぞ冊屋場てん然ズ 8 陸増ばー シし、てやづう四本売めこ整アん上冊者かっし戦今 や山 まんっ海つどスて書がびはビろにー作いさて悪 ス 『クリスマス・イヴ』以来、ということはも なく。はにズ きさよやを。ンし洋なと度がち本た ン う二十年以上たったわけだが、ソロ長篇とし でなに砂話さザとりとと今れも日ま ! やっすのと一 じぶまイびリ けみ例、しかに々おつつ ては久々の紹介になる O ・・コーンプルー どのもらしや日嬉とうやせとす々になうでりニ遊シ スの『シンディック』。著者自身が「病める」 と者回や楽ぎ x てのばちわんで早のしま内あソば本 本と呼び、本の帯にはディストビア小説とあ・ , 、 ' お読今のとに月しも、こ合なのもなやしのでンと た。もへの X とっちゃー 、たうろきて胸のアこで るが、もっと素直に読める作品だ。ある未一 ) を のの やったのぎずつい立ちかとっここっえとた 来、北アメリカ大陸はマフィアのごときイタ リア人のシンジケートが忠誠心をよりどころ として生活するシンディックと、アンとから、『宇宙商人』の構成にも似て、その会を設定することで、いかなる社会体制も人 と訴えかけてく ′い、グ。サクソンのギャングが民衆をギ世界を遍歴することになり、その荒廃した社間を救うことはできない、 る。登場人物のフランク・・テイラーが長 会が浮かびあがる物語となっている。 ルド的に分割し物欲で支配するモプに ートビア小説、ある長と語る社会観こそ、コーンプルースのもの だがそこで、多くのユ 東西に二分され、官僚と軍隊のファシ ズム的旧「政府」はアイスランドに本いはディストビア小説がプロ。 ( ガンダや警鐘だ。鼓腹撃壌的な中国的治政観、なにもしな いことこそ最良という考え方。シンディック /. 拠を置き、他の国々は原始状態にな「の書となるような「ネを、「ーイフルースは という社会は、理想へとむかう現実であり、 ーのしない。抱きしめたいほど、人間を愛し人間 た世界。シンディックのファミリ 一員である主人公が、命を狙われたこを信じるコーンプルースは、こうした未来社それはいっしか自由という言葉と同義語とな のし
とさらチチアのものは、独特の服装、匂い、ものごしをもってい って、汁のしたたるのを上手にロでうけてかぶりつきながら、イシ ュトヴァーンは家路をたどった。 る。見るからに不良少年然としたイシュトヴァーンなどが、上ヴァ ラキアの町なかをうろついたら、それだけであやしまれて、護民兵 「おツ、起きてる、起きてる」 によびとめられ、不審尋問をされるだろう。 肩でおすようにしてドアをあける。ずっと、いつものようにひと 「といって、いかなおいらでも、上ヴァラキアに住んでるようなダ りで大人しく、勉強をしていた、と思いのほか。 ああ、イシュト チはいねえし : : : ま、カンドスの邸のありかぐらいは、出人りの縫「イシュトー いきなり戸は内からひきあけられ、やせた小さいからだがぶつか い子、料理女、洗たく女でもさがしあてて、きき出せるだろうがよ」 イシュトヴァーンは、あれか、これか、と考えふけりながら歩いるようにしがみついてきた。 ていった。もう、そうこうするうちにようやくチチアは深更をまわ「あツ、わあ、びつくりした。ど、・ とうしたい、 ョナ公」 り、かなり、人通りも少くはなってきている。が、どんな深夜で せつかくのみやげをとりおとしかけて、イシュトヴァーンはあわ も、完全には人通りのたえることのない遊廓のこと、まだ寝しずまてる。 るにはほどとおい が、ヨナの顔をみて、はっと胸をつかれた。あの冷静な、かわい 「カンドスのとこに、つれていかれてるとすると たぶんもう、 いおちつき払ったヨナ少年の顔が、くしやくしやにゆがみ、涙に汚 ルキアは帰ってきたときにや、ゼアってわけにはいかねえだろうれているのだ。 おいらにとっちゃ、どんな女にもおそかれ早かれ一 「ど、どうした。何か、あったのか ! 」 度は来ること、べつだんたいへんとも思えねえんだが、身もちの固「イシ、ト、 いつ、かえってくるのかと思って、・ほくーーー・外へさが えってのは、難儀なこったな。また、そいつをョナ公に、どう話すしにゆこうかと思ったけど、絶対、外へ出てはいけないといわれて たしーーー」 イシュトヴァーンはふと、足をとめた。 「どうしたんだよ、ちび公」 「ヨナ公っていやあ、きようもどうせ、おそくまで、せっせと勉強イシュトヴァーンは、そういえば、この少年とはじめて会ったと してやがるんだろうぜ。おい、そいつを三つ、包んでくれー きも、泣きながら、二階からおっこちてきたのだ、とおかしくなり 石畳に、屋台を出している、ムールー屋に声をかけ、三つ、包まながら、ヨナの肩を抱いてやった。」 せた。ムールーは、ヴァラキア名物、貝やさかなをぶっ切りにし「お父さんがーーーお父さんが : : : 」 て、トマトと煮こんでガティのまんじゅうに入れた、海の幸の料理「泣いてちゃ、わからねえ。とつつあんがどうした」 である。 いかに、しつかりしているようにみえても、そこはさすがに十二 それを、夜食にもっていってやろうと、包みをもち、もう一つ買歳の少年で、ヨナはひとしきり泣きじゃくっていたが、ようやく少 ロ 4
「なんてーーー激しい なんて、若い ! なんて、あんたは、まる 「ああ。おらあ、いつも同じだ」 「そう。 でーーーまるで : : : 」 : ねえ、イシュトヴァーン」 どこからか流れてくる、けだるげなキタラのひびきが、ささやき 「みんながおれをイシュトとかイシュティとかって呼ぶ。おまえ をおおいかくした。 も、イシュトと呼びな」 「ええ。 イシュト、気をつけてね。あたしはやつばりあんたよ イシュトヴァーンのほうは、トド婆あに金を払うと、また例によ り十も長く生きてるわ。いろんなことも、その分、知ってるわ。 ーねえ。 トトの矢だけじゃなく、あんまり生きるのにいそぎすぎって、ムダ話をしながら、ご機嫌で出てゆこうとした。 る人間は、早くにいのちの寿命を、つかいはたしちまう、という「気に入ったら、またおいで、息子や」 「来るさあ、おっ母さん。ちゃんと、モアラをとっといてくれよ」 わ。あんまり、急がないで」 少し、チップをはずんで、入口の戸に手をかけたとき、その戸 イシ = トヴァーンは、ふりむいた。一瞬、ひどく奇妙な、異様なは、反対側からひょいとひきあけられた。 「わ」 かぎろいをすらうかべた妖しい目で、チチアの娼婦を見おろした。 ぶつかりそうになって、イシュトヴァーンはあわててうしろにと 「その方がーーー急いで、急いで、もえっきた方が、ずっとマシさ」 びすさる。 かれは荒々しく、ささやくように、吐きすてた。 「こんな汚らしいとこで、チチアのどぶねずみみてえに、ワルども「で、でけえ」 目のまえに、うわさにきく東方の妖怪「生ける壁」が立ったみた のおあまりをあさって、こそこそ生きてくくらいなら、その方が、 、やこっこ 0 」し / ノ どれだけマシだか、知れねえさ。 おれは、このままおわるくら いなら、チチアに火をつけて、その火の中でやけ死んでやる」 「なんて、でつけえ男だ」 「イシュト ひそかに、イシュトヴァーンは舌をまく。目のまえが何も見えな くなったかのような、横も、たても、イシュトヴァーンの優に二倍 恐怖にかられたようにモアラが両手をさしあげる。イシュトヴァ はありそうな、水夫のなりをした大男である。 1 ンは、片手をあげた。 頭をくるくるにそりあげて、相当に人相がわるい。鼻も耳もつぶ 「あばよ、モアラ。達者でな」 れている。 云いすてるなり、もう、あとも見ず、室を出ていった。 モアラは、ドアの・ハタンとしまったあと、身じろぎもせず、じっ このまえ、ウミネコ亭でかいまみた、サイスの用人棒、海坊主の サムであった。が、あのときは、すわっていたから、ただ大きいと とイシュトヴァーンの去った方を見つめ、両手をくみあわせて立っ ていた。その口から、ひくいつぶやきがもれた。 思っても、ここまででかいとは、思わなかったのだ。 ー 70
外へ出しているあいだ、いつもこうやって見はっている。 少女は、何かの負荷に耐えるために、息を殺した。 もう一匹の白黒・フチが見あたらない。 「あなたの : : : お母さんね ? : : : 」 ばくは柵に手をかけ鉄棒のように体を持ちあげて、下を見おろし 青年は枕の中でうなずいた。 「それで ? 」少女はうながす、「いつ、誰も来てくれなかったの ? そのとき、ペランダの片すみで物音がした。たくさん並んでいる 植木の上を白黒プチのウサギがのぼって、さらに柵の上へのぼろう やがて青年は、低い声で語りはじめた。 庭の松の枝の高いところに、すずめの親子がとまってた。ずっととしているのだった。 と思った瞬間、身をのりだした体勢のまま、落ちそ 昔、裸の電線で遊んでいた子すずめが、いきなり足もとに三羽も落あぶないー うになったウサギに手をのばそうとした。 ちてきたことがある。 そして、・ほくは二階のペ・ランダから落ちた。頭から落下していつ」 アスファルトの歩道の上にひっくり返った小さな驅を、親すずめ たのだ。 は空の高いところから、はたして見わけられるんだろうか ? : : : とんでもなく長い時が流れたあと、・ほくは、敷石と敷石のあいだ ぼくは二階のペランダから庭を見わたしていた。 九月の空は、星座の神々の住まう大気圏外まで突き抜けるようの狭い土に後頭部をうずめて、仰向けに倒れていた。 からだが三回・ ( ウンドするあいだに、舌とロの中を切って歯がま な、すみきったプルーだった。 っ赤になった。タラタラとロの端からあふれて土を濡らした。 木々のこずえは金いろの光をふくんで、豊かな緑を輝かせてい 内臓を打った痛みで叫ぶことさえできなかった。 やがて、すずめたちは松の枝を渡り歩くのに飽きて、・ ( アッと大体じゅうに圧搾空気がたまって破裂したような激痛だ「た。 空へ舞い上が 0 ていった。それを目で追いつづけると、ふいに視界肺に入ってくる血にむせびながら、じ「と待 0 ていた。 植えこみの向こう側を、女学生たちが楽しげにおしゃべりしなが に太陽が入って光があふれた。目が痛くて涙があふれた : ら通りすぎていった。 ぼくはその頃ウサギを飼っていた。 向かい側の家の受験生は、二階で、窓をあけはなしたまま机に向 露店商のおじさんは絶対に大きくならないと言ったのに、二匹の かっていた。倒れているぼくを見つけても何も気づかなかった。 ウサギはみるみる育ってしまって、子どもの腕だと少し重いくらい ・こっこ 0 白いウサギの影が遠くでチラと動いた。 どこかのラジオから、オリビア・ニ = ートンジョンの″フィジカ 短く刈り込まれた芝生の上で、白ウサギが遊んでいた。ちょっと ル″が流れていた。 ・ヒョンとはねては、じっと花や草の匂いをかぐ。そしてまた跳びは ばくは待っていた。声も出せず、動くこともできず、ただじっと ねる : : : 近所の野良猫の通り道になっているから、ぼくはウサギを こ 0 円 5