前 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1985年10月号
268件見つかりました。

1. SFマガジン 1985年10月号

う。ちゃんと食べなさい」 場に急行せよ、署につめている必要はないという指示を受けた : パトロール用とは言われなかったが一台のジー。フを自由に使うこ「死ぬ前、とはいつのことです」 「生きていたころさ」 とができた。 宥現は白と黒に塗りわけられたジープで街を見て回った。二又に「いっ ? 」 分かれた大きな河に囲まれた街だった。河には橋がかかっていなく「時間はあまり意味がない」 「わたしは海で溺れ死んだらしいです。あなた方はどんな死に方を てその対岸に行けないという点で、この街は島といってもよかっ た。対岸はいつも霧がかかっていてよく見えなかったが、こちら岸したんですか」 の付近は街というよりは、朽ちかけた無人の木造家屋がぼつんぼつ「核爆撃だった。らしい。よくわからない。白い閃光。それでおし んと建つゴーストタウンの雰囲気で、対岸も同じような廃墟が続いまいだ」 「 : : : 三百年前だな。空白時代に突入した時間だ」 ているらしかった。 エリクサー栽培地にいたような不思議な顔の人間は街では見かけ「なにが起こっているのかよくわからなかった。核戦争の危機を感 よ、つこ 0 じていた時代だったが。六日で地球は減びたようだ。なにかが侵入 を開始した。しかし敵が何者なのかはわからなかった」 高層アパートの隣人たちは宥現に親切だった。 特に隣の中年夫婦は一人ではなにかと不便だろうからとタ食にと「あなたは日本人ですか」 「死ぬ前はそうだった」 きおり招待してくれた。 「敵とは、たとえばソビエトとか中国とか、アメリカではないので 「あなたも死んでいるわけですか」 と宥現は家庭の和やかな雰囲気のなかで、しかし自分はここではすか」 場ちがいな存在だと意識しつつ訊いた。」 「戦争が始まったのはたしからしい。しかし情報網はまっさきに破 壊され、あとはデマと混乱の世界さ。わたしたちは日本軍ではなく 「そうだ」 と主人は言い、もっと肉はどうかね、と宥現の返事を待たず妻に国連軍ーー実動部隊は日本陸軍だったがーーの誘導で避難させられ 目くばせをした。焼きたてのステーキが追加され、宥現はさほど食たが、逃げ場などどこにもなかった。核シュルターは満員で入れ べたくはなかったが、話をきく時間を延ばすためにそれを口にはこず、入ろうとして殺し合いがあった。民間のシェルター、たとえば んだ。 大きなホテルのそれなどは金持ちたちのものになった。貨幣など通 四、五歳の一人息子が食事に飽きてぐずりはじめると母親は厳し用しない。貴金属宝石類が、彼らといっしょに蒸発したろう。蒸し い声で叱った。 焼きにされた。ようするにシェルターなどあまり役に立たなかった 「死ぬ前はこんなに食べたいと言っても食べられなかったでしよ、んだ。六日で世界は終わった。この六日で過去六千年ほどの変化は 4 5

2. SFマガジン 1985年10月号

と伝えさせい」 が、憶えておくがいし 。自分の利害や安全がからむと、咒法師の霊 「わしがまいりましよう」とハイン・フスは答え、コマンドアに向感はあてにならなくなる。いたるところに罠が見え、自分にそれを きなおった。「よければ、あの生きのいい若いのを貸してもらえん見せているのが千里眼なのか恐怖なのかわからなくなるのだ。だか か。ひとつ手がらをたてさせてやろうと思う」 らこういう場合は、わしの心などより槍のほうがよっ。ほど頼りにな 「あれがへまをして罠に引っかかれば、はじめて人の役にたっことるのさ」 をしたことになる」 サム・サラザールはわかったというしぐさをすると、前に進みだ コマンドアがサム・サラザールに合図をすると、若者はしぶしぶした。そのあとから、ハイン・フスがどすんどすんと体をゆすって の体で前に進み出た。 進んだ。はじめのうち、サム・サラザールは用心深く地面を探り、 「一 ~ 法師長 ( イ・が罠に落ちたり大鎌に襲われたりせぬよふた 0 の罠を見 0 けたが、やがてあまり気にしなくな「て、ずんず ん進みはじめた。あまり速いので、フスは怒って怒鳴った。「気を う彼の前を歩け。苔のなかを探る道具を持っていくがいい」 つけろ、そんなに死に急ぎたいか ! 」 いかにもいやそうな態度で、サム・サラザールは徒士のひとりか ら槍を借り受けた。そしてフスの前に立ち、かっては北と南の原生サム・サラザールはしぶしぶ速度を落とした。「たしかにそこら 林を隔てていた低い丘に向かって歩きだした。ところどころに、苔じゅうに罠は仕掛けてありますが、もうその。 ( ターンは見えまし の絨毯を突き破って、岩が露出している。そして、ヤマモモの木た。いえその、見えたと思います」 や、タール樹、生姜茶、薔薇などの茂みが散在している。 「ハッハア、おまえがか ? よければ、このわしに教えてもらえん 森から半マイルまで近づいたところで、フスは立ちどまった。 か。わしはただの咒法師長で、なにもものを知らんでな」 「さて、これからは気をつけねばならん。罠が仕掛けられているの「見てください、胞子嚢がとりさられたばかりのところを通れば、 はこのあたりからだからな、地面の盛りあがったところは避けて通罠は仕掛けられてないんです」 ハイン・フスはうなった。「それならさっさと進め。なにをぐず れ。ああいうところにはよく大鎌が仕掛けられているものだ。苔が 退せた青色になっているところへは近づくな。色が変わるのは枯れぐずしとる ? 今日のうちにパラント城に戦さをしかけねばならん かけたか腐りかけたかしているしるしで、その下には落とし穴や酸のだそ」 もう二百ャード進んだところで、サム・サラザールが急に立ちど の壺が仕掛けてあることもある」 「千里眼で罠の位置を突きとめたらどうです ? ーサム・サラザールまった。「進め、若いの ! 進まんか ! 」うなるように ( イン・フ が少しふきげんな声で訊ねた。「こんなときこそ、その力を使う絶スが言う。 5 「野蛮人どもが威嚇してるんです。ほら、森のすぐ内側に連中 : 、 4 好の機会じゃありませんか」 「そう思うのも無理はないがな」と落ちつきはらってフス。「だるのが見えるでしよう。やつらが持っている筒は、こちらを狙って

3. SFマガジン 1985年10月号

俺は : あんたみたいな / ~ ) 友達がほし かったよ あんたともっと ずっと前に 知・り人口い 4 に かったよ あんな事は ーしなくてすんだ ・当に違いないんだ : 、、そうだ : そうしたら きっと :

4. SFマガジン 1985年10月号

用されないにちがいない。カーティスもグッドも、うっとりして見 入っているようだった。 やがて将校にうながされ、かれらの正面へと進んだ。そこにはか んたんな高壇が設けられており、その前にはルーファスやタロスな どの高級将校たちが、兵士に向かい合うかたちで並んでいる。兵士 の各列の前冫 ~ こよ、百人長、あるいは十人長といった小指揮官たちが それそれに立っていた。 : ・ナーガ軍は古代ローマ式の軍隊制度を 敷いているらしい。将軍に相当する指揮官がいないらしいのはふし ぎだが、女王の権限と指揮能力がきわめて高く、その地位を兼ねて いるのだろう。 私達がその高壇の前に立ったとき、数人の扈従の者にかこまれて : ゅうべのようになまめ 女王が反対側から広場へと入って来た。 かしい姿ではなかった。金色の甲胄を身につけ、やはり真紅の羽根 飾りをなびかせた黄金のかぶとをかぶっている。腰には、やはり黄 金づくりの剣を帯びていた。 小柄ではあるが、まことにりりしい。ナーガ軍の最高指揮官とし ての貫禄がじゅうぶんだった。 女王はひとりで高壇の上に立っと、私達をさし招いた。 「さあ、こちらへ : : : わたくしが支配する者たちの力と偉容を見て いただこう」 カーティスを先頭に私たちはそこに上がった。女王をはさんで立 っこ 0 タロスが女王を見返ると、スラリと剣を引き抜き、全軍に向かっ ⅢⅢ川ⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅱⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ川ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ アラン、ヘンリー 、ジョンの三人は、彼らの援助で僣王を倒し、 王座についたククアナ王イグノシからの救援の声に応じてククアナ へ向かった。その途上で、ソロモンの秘宝を得るために鉱山技師の トム・アダムスをやとい入れ、さらに土民に襲われていた宣教師の 娘リーサ、そして彼らを助けてくれたウムスロポガースを一行に加 える。ようやくククアナに至った一行の前にタロスと名乗る白人の 男が現れ、アラン、カーティス、グッドの三人を女王の客として迎 えに来たという。ククアナは女王の率いる国ナーガに減されていた のだ。他の者をその場に残してククアナの都ルーへ赴いたアランた ちだが、女王は不在だった。そして、女王の帰りを待っ間に彼らは ナーガ軍団の猿人ジャガ族とトラ・フルを起こしてしまい、残された 者たちが猿人の襲撃を受け、リーサがさらわれてしまうのだった。 ただちにリーサ救出に向かう彼らは、ジャガ族の村で絶体絶命のビ ンチに陥る。しかし、そこについに女王が現れ、彼らを救いだすの だった。彼らは女王とともにルーの街に戻り、彼女のもてなしを受 けるのだった。だが、そこで彼らは驚くべき話を聞かされる。かっ てシ・ハの女王の時代の悲恋の主人公ヒヤミムが実は女王であり、そ の相手であるアスタルの生まれ変わりがカーティスだというのだ。 しかも、女王は二人が結婚をすることに決めてしまっているのだが 登場人物 アラン・クオ 1 ターメン : : ジョン・フル気質のアフリカ冒険家。 ヘンリー・カーティス : : : 冒険心に富んだイギリス貴族。 ジョン・グッド : : ・快活で義侠心に富み、ただし女性に弱いイギリ ス海軍士官。 アイシャ : : : ナーガの女王 トム ( トマス ) ・アダムス : : : アイルランド人の鉱山技師。 ーサ・ヴァン・リー ペック : : : 宣教師の父の遺志を継いでアラン 一行に加わった女性。 ウムスロポガース : : : アランと旧知のズール戦士。 ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ川ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢ「 00 9

5. SFマガジン 1985年10月号

ビ 1 グルについては、もうほとんど知り 尽くしているという感じがしていたのたけ れども、やつばり思っていたとおりの人で ピーター・・ビークル した。物静かで、相手に気を使って、おだ やかに語る。でも、けっこう、きついとこ ろがあって、このときだったかな、後でい っしょに食事をしたときだったかな、「作 鏡明 会見記 家に、過去の作品のこと、聞いちゃいけな いよ」なんて、言われたことがあった。 で、尋ねてみたこと。 ・ビーグ い ) とか、翻訳家の黒丸尚にを頼ん 小社編集部宛に、突如ビーター ルと名乗る人物から、いま日本にいるのだ手前、何か話さなきゃいけないんだけもう、何年も新作が出るのを待っている ど、ねえ、もう二十年近くも前にファンにんですが : で会いたい、と電話があるました。そう です、あの『最後のユニコーン』の著なって、大好きだから、翻訳もして、その「新作が出るのに、こんなに時間がかかっ 者、ビ 1 ター・・ビーグルです。そこままずっとファンのままでいた相手が、目てしまって、弁解の余地はありません。十 年前に三部作の小説を書こうとしたんです で、ビ】グル氏の大ファンであり、『最の前にいて、話なんてできやしない。 後のユニコーン』の訳者でもある鏡明氏場所は、東京のホテル・ニ、ー・オータが、うまくいかなくて、映画のシナリオを 書いたり、ぶらぶらしていたんです。で ニのガ】デン・ラウンジ。約東の時間か に、さっそくインタビュウをお願いしま した。 ら、二十分近くも遅れちまったのかな、仕も、あと三章で、新作が完成します。出来 については、まだ私にはわからないけれど 事のせいです。ひげをはやして、ネクタイ ビ 1 ター・・ビーグルに会ってしまつをちゃんと締めた、ちょっと太り気味のおも」 コリーンが、ちょっと合の手を入れる。 じさん。それが、ビ】グル。そのとなり 「いい出来よ ! 」 ビーグルが、日本に来ている。そんな知に、やたら目に活気のある黒人の女性。ビ コリーンは、ビーグルの言葉にいつも耳 1 グルの創作上の、そして私生活でのパー らせを受けたときには、びつくりしたけれ トナー、コリーン・マッケロイ。後で、詩を傾けていて、色々な形で補足してくれ ども、自分が実際に、当人に会ってしまっ 集をアメリカから送ってもらったのでわかる。二人三脚。まるで自分の作品のよう たことには、もっとびつくりしている。 もう、会っただけで、充分。通訳がわりったけれども、詩人。そのときは、大学でに、ビーグルの作品を語ってくれる。彼女 に、早川書房の浜口さん ( 女性、しかも若小説の講座を持っている先生という話だつの話だけでも充分に面白いんだけど、とり こ 0 こ 0 2

6. SFマガジン 1985年10月号

いていたが、やがて尾を引いて上へ向って走っていった。 ばあちゃんの夢。ささやかだけど、確かに実を結んだ夢。そ のひとつが、今、昇天した。 夢の行方を目で追っていた僕は、視線を箱の中へ戻した。箱 の中では、残りの球が次々とはじけ、次々と昇天していた。急 に視界がにじんだ。涙が出て来たのだ。 僕はばあちゃんから思いのありったけを込めた箱を渡され た。ばあちゃんの思いは、ばあちゃんを追って行った。空にな : ばあちゃんは、この事を見越 った箱が僕の手元に残った。・ していたのだろうか。 僕は涙をぬぐって、箱に蓋をした。 これから僕が、この空箱に自分の夢を入れなくちゃいけな 。それがこの箱を持った人の義務だ。どれだけ入れられるか わからない。でもばあちゃんより少しでも多くの夢を入れて、 いた。開けようー ひとつでも多くの夢を実らせたい。僕はそう思った。 そっと蓋を取る。すうっと目の前が白くなった。えリ 僕が・ほかんとしていると、どこからか声が聞こえてきた。女軽くなった箱に少しだけ重さが戻ってきた、そんな気がした。 の子の笑い声だった。と、目の前に女の子の姿が浮かんだ。女 の子はいろいろと表情を変え、姿を変えていった。 応募規定 これは、ばあちゃんの過去だーー僕は直感した。 0 応募資格一切制限なし。ただ -3' 作品は商業誌に未発表 子供のばあちゃんは、泣き、笑いながら、成長していった。 の創作に限ります。 おさげ髪が似合う娘になり、花嫁になり、どんどん年を重ねて 0 枚数四 0 〇字詰原稿用紙八枚程度。必すタテ書きのこと。 いった。腕に子供を抱き、顔に皺が刻まれて : : : どんどん、僕 鉛第書きは不可。 の知ってるばあちゃんになっていった。 〇原稿に住所・電話番号・氏名・年爺・職業を明記 -3' 封同 に「リーダーズ・ストーリイ応募」と朱の上、郵送のこ ふと、手元に視線を移すと、箱の中に直径二センチメートル と ( 宛先は奥付参照 ) 。ペンネームの場合も本名を併記して ほどの球がいくつもころがっていた。色はそれぞれ、少しづっ 下さい。な応募原稿は一切返却いたしません。 違った。そのうちのびとつをそっとつまむと、目の前へ持って 0 賞金金一封 ながめた。 〇掲載作品の版権および隣接早川書房に帰属いたします。 突然、球がはじけた。しばらく僕の指のまわりにまとわりつ 0 0 207

7. SFマガジン 1985年10月号

て喉も裂けよと叫んだ。 : しか 知らせにも熱狂的な歓呼の声が上がると私は信じていた。 「ナーガのつわものどもよ ! われらの統領であり、カの源であるしその予測は外れた。数千のナーガの兵士は、ただあっけに取られ かがやかしき女王に挨拶を ! 」 たように静まり返っているばかりだった。 おう ! と全軍がどよめいた。い 「どうしたのじゃ、わが子らよ」 っせいに抜き放った剣が無数の 針のように日にきらめいた。文字どおり秋霜のきらめきだった。そ女王はふたたびほほえみながらいった。 の剣で盾を叩く音が雷鳴のようにひびきわたった。かれらは女王を「わたくしの婚約をことほいではくれぬのか ? 」 しかしまだナーガ人は異様な沈黙を守っているばかりだ。ややあ たたえ、彼女のためなら身を投げ出すこともいとわないことを、そ ってひとつの声が叫んだ。 の身振りで表しているのだった。 「掟をお忘れになったのか、女王よ。ナーガの女王の伴侶は、ナー 女王はほほえみを浮かべながらその音に聞き入っていたが、やが ガ人より選ぶ決まりがありますそ ! 」 て優雅に右手を上げると、その音は潮が引くように静まっていっ おうっと、同意のどよめきが上がった。 「わが忠実なるナーガの兵士たちょ。そなたたちに伝えるべきうれ「たれじゃ、いま叫んだ者は ? 」 しい知らせがある。 ・ : わたくしの伴侶にして、そなたらの総指揮女王は文字どおり柳眉を逆立てた。すさまじい怒りの形相になる 官たる真のナーガの支配者が定まったのしゃ。われらが結ばれること叫んだ。 とは三千年前から定まっておった。ふしぎな宿命のみちびきによ「前に出よ ! 」 り、ついにそのおかたははるかなる海を越え、わたくしの前に姿を 正面に近い列のひとつがざわめくと、ひとりの兵士が同僚をかき 現したのじゃ。 分けながら歩み出てきた。おびえた色も見せていない。堂々たる長 皆の者。いにしえより定められていたわたくしの伴侶にして、ま身の兵士だった。 ことの勇者 : : : ソロモン王にも比すべき偉大なる知者 : : : この世で「女王の伴侶は女王自身の意志で定まる。そのこともナーガの掟じ の名はヘンリー ・カーティス、しかしまことの名はアスタル・ ・ : そのことを忘れたのか ・ : わや。女王の意志はすなわち法なのじゃ。 が背の君となるべきおひとを紹介しよう」 女王は右手をさしのべると、カーティスをおのれのかたわらに立女王は怒りをけんめいにおさえるかのようにその兵士に語りかけ たせた。ソロモン王に並べられてはカーティスもいささか面映かっ たと思うが、女王としてはもちろん自分の選んだ相手を出来る限り「もとより忘れてはおりませぬ」 ふかく民に印象づけなければならなかったわけだ。 兵士は堂々と答えた。 最前の、女王に対する熱狂的な挨拶ぶりから見て、このめでたい 「しかしとっ・せん異国から現れた、われらには素性も知れぬその男 9

8. SFマガジン 1985年10月号

ほんとに、どうしちゃったの ? 酔って おれは結婚するまで、尚子と同時に、この今日子とも、ずっとつ「あなた。克夫さん。 いるにしても、ひどすぎるわ」 きあっていたのだ。 おれは尚子と今日子の両方を、ほぼ一年間ほど同時に愛し、そし今日子は笑い声をあげる。 おれはわけがわからず肩を竦めてみせる。一 て最終的に尚子を選んで結婚したのである。 今日子は、おれの別れ話を、なんとか受けとめてくれた。そして「豊橋じゃ、うまくいってるんだろ ? あの見合いの相手と」 その後、田舎へ帰って見合い結婚をして、幸せに暮らしているはず「見合いの相手 ? 」 ! 」っこ 0 今日子はまた吹きだす おれと別れた後、今日子は、親がかねてから強力にすすめていた なのに、その今日子が、なぜ今ここにいるのだっ・・ 豊橋に住な資産家の長男と結婚し、今でも幸せに暮らしているはず 「なあ今日子」 だった。おれと今日子がっきあっているときも、その見合いの話 おれは泣いている今日子に、やさしく言った。 は、ずっとあったのだ。 「もう一度訊くが、尚子はどこへ行ったんだ ? おしえてくれ」 もしかしたら、あたしたちが結婚す 「なに言ってるのあなた。 すると今日子はキッと顔をあげておれを睨んだ。 「さっきからナオコ、ナオコって。そんな人知らないって言ってるる前、あたしが親にすすめられていたお見合いのことを言っている でしょ ! 」 怒りながら、またティシュで眼頭を押さえる。 今日子はわざとらしくクスクス笑う。 「あたしたちが結婚する前だって ? 」 だめだ、こりや。とおれは溜息をついた。 おれはきよとんとした。 おそらく妻の尚子は、おれの昔の恋人だった今日子が尋ねてきた ため、怒ってどこかへ行ってしまったのだろう。実家へ帰ったのか「そうよ。あたしたち、一年半前、やっと親の反対を押し切って結 もしれない。尚子の実家は都内なのだ。 婚して、こうしてここに住んでいるんじゃないの。・ハ力なこと言わ 「それにしても今日子、ひさしぶりだな。おまえ、あの頃とちっとせないで」 も変わってないな」 今日子は椅子から立ちあがり、ガスレンジの火を消した。シチュ おれは尚子のことを訊くのを、あきらめた。 ーは煮たっていた。キッチンにはシチューの臭いがこもってしまっ」 ている。 「ひさしぶりですって ! 」 今日子はまたキッと顔をあげ、おれを睨むように見ていたが、突「くだらない冗談はもうやめにして、シャワーでも浴びてきたらこ 然なにかの糸が切れたように吹きたしてヒステリックに笑いはじめまだスーツも脱いでないじゃない」 今日子は笑顔だったが、眼尻にたまった涙をぬぐっていた。 こ 0 2 8

9. SFマガジン 1985年10月号

・劣和ーき 、・ゞ驫冫 征服に血道をあげる城主のもとで活躍する咒法師たち。鬼才が描く絢爛たる異世界 ! 奇跡なす者たち く前篇〉 ジャック・ウテンス 酒井昭伸訳 イラストレ→ョン岩淵慶造 004 0 ・し The 1 石 racl ( 帰法 ( ) 234

10. SFマガジン 1985年10月号

二第蛬をヾ 薬なんか 飲まないで 眠らなくちゃ また何も 食ってない あ・ : サプ 俺だよ 三郎だよ くれよ - っ 薬は ? 薬を くれよ こ・ : こわいんだよ 、ゞい眠るのがいやなんだ 2 イ′虫がいつばい来て : 《を一虫がいるんだ 夢を : ・ あいつが夢に 出て来るんだよ 、、、 ) あの子が 一年位前から お力しくて : ・ だんだんひどく なっていくんだ 乱暴するんで おくさんも 赤ちゃんをつれて 出て行っちゃった