女 - みる会図書館


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1. SFマガジン 1985年11月号

いさわぎの中で、無造作に、・フルカスのまえの札をすべてかきよせ台の上にあける。 「千ラン金貨と、砂金に」 とう少一く そこにつみあげられた札は、・ 平然と、女はいった。 ・フルカスが、椅子をけって突っ立った。 見つもっても、十万ランはあったであろう。 「いかさまだ」 一つの賭場が、丸々買いとれるほどの、金額であった。 彼はのどが苦しいかのように、片手で太いのどをつかんでわめい こ 0 「待ってくれ」 サイスが金切声をあげた : 「いかさまだ」 「そ、そんな金の用意はない。あすの夜、ひきかえる。それまで、 女は平然と、・フルカスを見かえした。サイも、コロ入れも、この 待ってくれ」 賭場のものだし、いかさま改めも正しくおえている。まったく、い 「今夜をすぎたら、この町にいない」 かさま呼ばわりする理由は、・フルカスにはない。 ただ、あまりに、劇的すぎるなりゆきに、賭博師としてのゾルカ女はものうい声でいう。 「いま払うか、一ザンで、調達してほしい。さもないと、サイスの スの血が、承服しかねるだけなのだ。 賭場であったことを、歌にして、沿海州じゅうにふれあるく」 「す、すげえツ」 「ちょっと、待ってくれ。ちょっと。金倉をみてくる」 「なんて、勝負だ」 ころげるようにしてサイスは台をおりると、奥へ逃げこんだ。い 「さいごのさいごで《ャススの手》だと」 「なんてーーーなんてーーーまるで : : : 」 くらかっかませて、ごまかす気であったろう。 女はおちつき払って、札をあつめ、かさねて、ストールのすそに 「まるでーーー」 入れた。 まだ、人々のたかぶりはやまない。 満場の人々の、目の玉のとび出さんばかりの注視の中で、悠々 「そうだ、まるで、あの伝説の大勝負師だ」 「コルドだ。コルドそっくりだ」 と、胴元台にすすむ。 「片目のコレド・ : ノ力銀狐の賭場を、つぶしたときみたいだ : : : 」 「まるでーーそうだ、おらあ、誰かを思い出すぜ。あの、度胸 ひとたび、その名が、ロにされたとたん あの、かけつぶり、おちつきよう : : : 」 わあっ、わあっ、という鯨波の中で、誰かが、のどをからして叫コルドだ、コルドだ、コルドそっくりの打ちっぷりだ、というさ んでいた。 さやきは、ざわざわ、ざわざわ、あたかもハイランドの山々に木霊 しあう、風の声にも似て、ロからロへ、こだまのようにひろがって 5 「まるでーー」 っこ 0 女は、胴元台のまえに立った。・ハ ラ・ハラと、ストールから、札を

2. SFマガジン 1985年11月号

ⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ ! ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ 引ⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅡⅢⅢⅢ : ⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢ盟ⅢⅢⅢⅢ : ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ第ⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢド は、探偵をしている。私の住むネオⅡトー 婚同化に反対するモノリストだったため、ヒー ・最終候補作品のあらすじ スとリサが結婚する。そして同化した二人だっウは亡命者たちの街で人口過剰のためにごった ( 順不同・敬称略 ) たが事故のためリサの意識が死んでしまう。ヒ返している。私は中性体で、ヘザー ( 女性 ) と 、、ジェフ ( 男性 ) 、ハル ( 男性 ) らと ースは悲しのあまり、死んだのはヒースとい付き合し つわり、リサとして振舞っていく。アロイーズ同棲した過去を持つ。そんな私のもとへ財界の は自分の作品である少女の人形ガーダをヒース大物カシワギから依頼がある。失踪した彼の息 「彼には永遠の」 ( 一二四枚 ) 美麻委佐子 ( 岐阜県 ) のもとへ寄越す。悲しみのなかでガーダに愛情子ミメイの捜索だった。手がかりは殆どなかっ を注ぐヒースだったが、アロイーズにガーダをたが、中国大陸への関心が深いこと、また彼の 母トウリの墓が上海にあることから私は中国へ 人類世界の辺境にあるステーションで、常駐破壊され、逆上して正体を明してしまう。 行く。そしてミメイの足取りを辿るうちに中国 要員のケニ 1 ほか二人は、異星の宇宙船と出会 奥地へ行きついにミメイを発見する。彼は遺伝 う。異星人は友好的で、ようやくコミュニケー参考作「竜の降りる夜」 ( 九六枚 ) 中井紀夫 ( 東京都 ) 子操作による鳥人たちの村におり、彼自身が、 ションが成立してゆくが、その時、隕石の直撃 また彼の母もまた鳥人だったのだ。そして彼ら を受けた異星船がステーションと衝突、ケニ】 の仲間の一人は行方不明となり、もう一人もやくじゃく座ガンマ星系の宇宙空間を遊弋するは新たな未来を目指してさらに奥地へと行く。 がて倒れる。酸素も不足してきたケニーは異星竜からはモノボール、ミニ・・フラックホールが 参考作「半人娼婦」 ( 六一枚 ) 船内部の探検に行き、そこがほ・ほ同様の大気にとれるため、捕童産業が発達していた。 江黒基 ( 東京都 ) 満たされていることを知る。また、不定形の体力ハル・トヨンは相棒のムニダジと共に小艇 を持っ異星人と出会い、友情を結ぶ。やがて地で竜を追うが、彼は自分の背にある鱗により竜 球の救助隊が来るが、彼らは発見した異星人をに近づくと劇痛を感じるため、事故を起こして霧深い港町に来た私は、そこで半人だという 射殺する。ケニーは異星人との出会いを黙ってしまう。だが、その損害をつぐなうために、竜娼婦と出会う。この町のポスの持っ機械によっ いたが、やがて彼の前にある種の分裂によっての生け捕りという仕事を捕竜会社より強制されて二人の人間に分離され、片われはポスのもと 生き永らえていた異星人が現れる。彼は救助隊る。竜の大群に出会った彼は、またも事故に会にいるというのだ。その娼婦に心をびかれてい から異星人をかばい、逃がしてやるのだった。 、しかも次元を越えて逃げる竜のために彼もった私は、ポスの家に忍び込み女の半分を救出 見知らぬ惑星に出現する。そこで一人の女に助する。しかし、その際侵入に都合のよいように 「メイル・サイド」 ( 九一枚 ) けられた彼は、女との間に一児をもうけ、やが私自身半人となったのだが、私の一人は殺され る。半人となった私には合体した女の存在は重 河野輝幸 ( 東京都 ) て宇宙で失踪するが : : : その子は実はカハル・ トヨンであり、彼は閉じた円環の時に捕えられすぎた。しかもポスの手下は女と私をつけ狙 う。私はポスに殺されるのを覚悟で街を出よう 結婚と同時に、夫婦は一人の体に二人の意識ていたのだった。 とするが、それを知った女は再び半人となり、 を住まわせるという結婚同化制度の行われてい 片われがポスを殺し、そして手下に殺される。 る未来。画学生ヒースは女性プログラマーのリ「西から東」 ( 五四枚 ) 大崎悦子 ( 東京都 ) 半人同士となった私と女は体を重ね合体をして サと知り会う。しかし、リサに思いを寄せるの ゆくが、そこでついに、私の長年のむなしさが は彼ばかりではなく、高度なアンドロイドを作 る動造形芸術家アロイーズもいた。だが彼は結遣伝子操作の大流行期の生き残りである″私すっかり埋められるのを感じるのだった。 9

3. SFマガジン 1985年11月号

片岡の幸福 ( 話題の本 ) 心さまよう孤独な男たち、女たちー 私立探偵マッケルウェイ登場一、 ミス・リクビー 幻歳の私立探偵アーロン・マッケルウ、イのもとへ現われる、心さ まよう孤独な男たち、女たち。カリフォル = アの光と影の中に浮び一フ 訳 上がる心象風景を、ミステリタッチで鮮やかに描き出す連作短篇集よ 定価九五〇円 昌 0 とな 中一険 田価リ危 定 黒柳徹子が贈る子供たちの . 険 、 > ャン 危のノ ド z チ一 ノ庫 , 文 " ー コワ幹イ おねが譴第気男を 地球を殺さないで ~ 一第 「ばくは小さいけど核戦争のことがすごく心配です」「字宙飛行十 さま。こんど月へいくとき核爆弾をすててきて下さい」人のアメ リカの子供たちが送る、核戦争反対のメッセージ ! イラスト入り 定価八八〇円 9 月田日映画公開 ( 日本、 , ルド映画配給 )

4. SFマガジン 1985年11月号

? この求愛はルーファスのほう また、こころをひるがえしたのか からおこなわれたのか ? それとも・ : 私は胸さわぎを覚えた。たとえリーサがアダムスからルーファス に心を移したとしても、他人が口をはさむ筋合ではない。しかし彼翌朝の朝はやく、私達は女王に呼ばれた。女王の居室に入「て行 女の本性がこのように多情な女であ「たとはとても考えられないのくと、めずらしく黒衣をまと 0 た女王に迎えられた。、 「いよいよ出立のときが参りました : : : 」 だ。どこか不自然なにおいがする。アダムスはこのことを知ってい 女王はひどく疲れているようであり、やつれのあまり妻艶といっ るのか ? い 0 ぼうルーファスのほうにも問題はある。女王が臣下の規律にてもいい表情にな 0 ていたが、それでもやさしい笑顔をカーティス に向けていった。 はきびしい支配者であることは疑いない。おのれ自身の恋はべっと 「月も満ち、大地にひそむものの気息もととのいましたゆえにな。・ して、臣下の将校が異国の女との情事にうつつを抜かすことなど、 許すはずはないと思われる。かれらがこのような夜更けに人目しのわれらの結婚の準備をなすべきときが来たのですそして、マクマ んで会っているということが、その証拠であろう。女王がこの数日ザーン、ポーグワンよ」 、部屋に閉じこも「ていたので、そのようなことが可能だったと女王はククアナ人が私達につけた名を呼び、ほほえみかけた。 「そなたたちへの約東も果たすときが来ました。あの蛮人の王にも も思われる。 会わせてあげようし、ダイヤ鉱山へも案内して進ぜましよう。これ ーサが長身のもすべてわれらが結婚をことほぐためです」 私が見守るうちにふたりはふたたび抱きあった。リ ・ : そ私は女王の奇妙なおだやかさが気にかかった。女王はいつものあ ルーファスの首を引き寄せるようにしてはげしく接吻した。 の瞬間、私はさと「た。この恋をしかけたのはリーサだ。どのようの威厳、峻烈さをす「かり忘れてしま 0 たかに見える。幸福なのは な思惑があるのかは知らないが、彼女がナーガ人の士官を誘惑した分かるが、彼女を彼女たらしめていたあの活気が、女らしい優しさ : この五日間の にすっかり置き換えられてしまったようなのだ。・ ことは間違いないだろう。 いったいどんなものだったのだろうか ? 私はひっそりときびすを返した。たとえどのような仲であれ、ふ行とは、 たりには邪魔されぬ権利があると思えたからだ。恋というものはし「ルーファスと二十人程の者を供に通れて行きます。そなたたちも よせん不条理なものだ。この老いぼれの狩人の理解を絶していると支度するがよい」 いえたかも知れないからだ。 支度といっても、べつだんたいしたことはない。アスカリたちと 9 アラビア人たち、そしてカファー老人もガトリング銃とその装備と

5. SFマガジン 1985年11月号

行った。するととっぜんやみのなかから悪魔のように飛びかか 0 て「イグノシ王が生きていることはあんたも知っているな。女王の話 ではあのダイヤ鉱山のどこかに幽閉されているらしい。われわれ ・ : それがこの男たちだ」 来た者たちがいた。 ウムスロポガースはたき火の回りに集まって来たククアナの戦士は、かれを救い出しにいくとちゅうだったのだ」 「おお、マクマザーン ! 星から来た勇者たちょ ! 」 たちを見回した。 インフアドーズは文字通り感涙にむせぶばかりになった。 「わしは力いつばい戦ったが、なにしろ多勢に無勢だったのでつい 「そなたたちが、かならず来てくれるものとわしは信じていたよ」 に組み伏せられてしまった。縛られるとこのインフアドーズのとこ 「 : : : わしは、あの娘のことが気にかかる」 ろへ連れて行かれたのだ」 ウムスロポガースがアダムスを見つめながらつぶやくようにいっ 「わしらはだいぶまえからあの一隊の跡を尾けていた。ナーガ人で こ 0 はない白人がいっしよなので、ふしぎに思ったのじゃ」 「わしは女は殺さない主義だ。女は殺すよりもかわいがったほうが インフアドーズが引き取った。 インコシャース わしを裏切った女房の首をこの″女族長″で切り落とした 「そのうち、わしらによく似た男がひとり交じっていることに気づ ・ : あの白人の娘はなぜ気が狂ったのだ ? 気が ことがあるがな。 : その男をとらえ、尋ねてみればすべてが分かると思っ つよいが、とても美しい小鳩だったが : : : 」 て、かれを捕らえるようはかったのじゃ。その男は砂漠のかなたに すむズールという種族の戦士で、わしらと血がつながっていること「すべて、おまえが野営地を去ったあとから始まったのだ、ウムス が分かった。わしらが置かれている立場を話すと、わしらにカ添えロポガース」 私はいった。 ・ : そしてその男の口から、マクマザー して戦うといってくれた。・ ン、あんたが戻って来てくれたことを知ったのじゃ。しかしあんた「ジャガ族のことはおまえも覚えているだろう ? やつらが野営地 ・、たはナーガ人とは敵対関係にはなく、かれらの女王に会いにルー を襲撃した。森のなかのやつらの本拠地にかれらを連れて行ったの の町へと出向いたことを知った。 ーサがいかにしてカー わしらはルーを攻めるほどの戦力はない。じゃが、そなたたちが私はそこで何が起こったかを説明した。リ ティスを憎むようになったかを : : : カーティスと女王とのかかわり かならずまたあのダイヤ鉱山に向かうと考えた。それで、このソロ も。そこから悲劇は始まったのだということを。 モン街道のかたわらで待ち構えていたのじゃ」 「だが自分を責めることはない、ウムスロポガース。す・ヘては運命 : 礼をいうぞ、イン 「そしてわれわれを危難から救ってくれた。 だ。おまえがいてもいなくても、同じことが起こったにちがいな フアドーズ」 : ・あの娘は、このような奥地に来るには神経が過敏すぎたの 私はククアナの老戦士の手をかたく握り、かれもまた握り返して ( 以下次号 ) 来た。 、、 0

6. SFマガジン 1985年11月号

「そんなーーーそれじゃ、あんまりじゃねえか : : : おらあいったい、 決めていた。服も、宝石も、家もーーー親だって貧乏ぐらしをせずと ョナ公にーーちび公に何ていやあいいんだよ : : : そんな、そんなこもよくなる。その弟だって、学問がしたいというならできる身の上 になろうし、何なら、ルキアを正式に、妻に迎えたってよいとさ とが云えるかよーーーそんなことがおれの口からあのかあいいやつに え、思っておったのだ。わしは、あれの母親が好きだった。あれら 云えるかよッ ! 」 いい、貴族の、トレヴァン一族にも血のつ ひざががくがくふるえ、泣くまいとくちびるをかんだが、こらえの母親は、イリシア姫と きれず、熱いものがっきあげた。 ながりのあるたいそういい家柄の姫だった。美しくて、上ヴァラキ 「何だってそんなーー」 アでも名高い美人だった。わしは彼女を妻にほしいと思っておった のに、彼女は、こともあろうにいやしい庭師とかけおちしてしまっ 思わず、うめくような声がもれた。 「ばかなーーーそんなことぐらいで、自殺だなんてーー信じられねた。前代未聞の醜聞だった。上ヴァラキアの、貴族の姫が、下ヴァ ラキアの男と。 え。そんなこって、チチアで生きられるかよーーー・そんな頓狂なこと 姫の家では烈火の如く怒ったが、ミロク教徒の 云ってたらーーー一人だって、チチアで生きのびるやつなんざいやし家だったので、あきらめてしまった。他の貴族の家なら、男は殺さ ねえよ。どうして・ー・ーー」 れ、女はつれ戻されて幽閉されておったろうに。そのあと、イリシ 拳で横なぐりに目をこすってつぶやいた。 ア姫のことは誰からも忘れられていたが、わしは、川遊びにいっ 「どうしてーーあいつらは、姉貴といい弟といし ああ頓狂なんて、イリシアそっくりの美しい若いせんたく女をみた。それがー だ ? どうして、おいらと、こんなにちがうんだよーーーどうして : 「それが、ルキアだったのか」 ふいに、また、それが彼の特長である、すばらしい回復力でもっ 「そうだ。それをみたとたん、わしは、自分がずっとイリシア以外 て、力を完全にとりもどして、カンドスにおどりかかり、ひきおこのものなど一回も求めてはおらなかったことを知った。だから、ル キアの家をさがしあて、家にひきとろう、それとも侍女に上ってく ミロク教のおしえだ れるか、正式に妻か愛妾にと申しこんだのに、 「うそをついてるんじゃねえだろうな。つまんねえうそをつくとー とたてにとってーーあの教えに従うものは、純潔でなくてはならぬ ーかどわかしだけか、それじやきさまは立派な人殺しだぞ」 胸ぐらをつかんで、どなりつける。 のだそうだ。わけのわからんことをーーーわしは、十七やそこらの娘 が、何も知らず云うことなど、あいてにできぬと思った。まさか、 「わしが殺したわけじゃない」 死ぬほど思いつめていようとはーーわしにはわからん。なんで、そ 口を血まみれにして、しぶとく、カンドスは云った。 「わしは、そりや、手に入れるには少しは不正なところもあったかんなことで死ななくてはならんのだ。女なら、おそかれ早かれ、誰 7 もしらんが、手いけにした上は、どんなにでも、よくしてやろうとにでもあることではないか。それでいちいち死んでいては、世界に

7. SFマガジン 1985年11月号

= 腕きき日本人女探偵の痛快な半生記ー ン 0 ョ シ ク イ 0 れ内内 ン ノ いリカる ワ ャ デーヴィッド・アテンポロー 地球の生きものたち定価四八 8 円 。、ール・コリンウォー 猛獣はなぜ数が少ないか定価一 , 8 円 一浅草生まれの日舞の名取が、ひょ スティーヴン・¯) ・グールド んなことからアメリカに渡り女私 ターウイン以来 ( 上・下 ) 各定価一 = 8 円 . 立探偵に変身 ! 以来二十余年、 ジョン・マキノン 数々の難事件を手がけ、 いまやカ 日 わが内なる類人猿 リフォルニアきっての腕っこきに なるまでをつづった痛快な半生記チャールズ・マクドウーガル 滅びゆく森の王者定価一八 8 円 アラン・ムーアヘッド ターウインとビーグル号定価七〇 8 円 ヒト一フーの金脈 コンラート・ローレンツ ジェイムズ & スサンヌ・プール / 関口英男訳①定価 = 五〇〇円ソロモンの指環 ヒトラーが政権を獲得するには巨額の金が必要だった。その金をど プライアン・パートラム こから手に入れたのか ? ・ : 多くの関係者との面談、その他厖大な ライオン草原に生きる定価一三 8 円 文献資料を渉猟し、 " 政治権力と金。をテーマにえがく話題作ー ンヨン・ペイリング イヌとネコがやってきた定価一六 8 円 モーリス・・ハートン ウィリアム。サローン戯曲集 動物に愛はあるか定価一六〇〇円 改 加藤道夫・〈回健訳①定価ニ〇〇〇円 0 をへを新 20 To ャング・マサコ 定価七八〇円 ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス 定価一八〇〇円 定価九五〇円

8. SFマガジン 1985年11月号

、こ。貴族たちの頭上たかく飛ぶアジャンには岩や に彩色したものであることに気づナ 植物、擬装したついたてなどで仕切られたいくつもの箱庭を見わたすことができた。 やがて、アジャンは木の葉のかげにほとんどかくれた建物から大きくはりだしたテ 並の鳥の倍以上で売れる。 アジャンは操縦桿をひざで固定し、両手で微妙なフック操作をする。フックは鳥の 首をつかんで主人から引き離す。ほとんど抵抗しない貴族の女から離れ、鳥を吊った 飛行機は出口を求めて速度をあげる。 クリスタルバレス 水晶宮を脱出したアジャンは、心ゆくまで飛行を楽しんだ。

9. SFマガジン 1985年11月号

公と他の二人の関係が不明瞭な点に筆力不は、もう一つそこに説明が必要である。・一②ストーリーに、展開というものがまるで 太陽は銀河の岸辺でひときわ明るい 無い。何かを言っているつもりなのだろう 足を感じた。 ②話は一応つながっているのだが、極めてとあるが、太陽は平凡な星で、そんなに明が、それが一人よがりになってしまってい て、よほどの「推理読み」をしないかぎ 平凡・かっ退屈。そして、無理がある。たるくはない。 とえば、最初に報告すべき異星人との遭遇⑥最初はファースト・コンタクト・テーマり、読者には、何をいうつもりなのか、わ を救助隊に報告していない、主人公と異星かと思ったが、その方面の古典『宇宙翔けからないままに終わる。 人とのコンタクトが簡単にとれすぎる ( 二るもの』よりも一歩も二歩も後退してい③ほとんどない。 〇年代の娯楽ではあるまいし ) 、などる。と思って読んでいるうちに、話の興味④極徴。 は「不定型で先祖の記檍を受け継いで増殖⑤科学とは関係のない話。 する」異星人の生態にうつる。かと思うと⑥男と女は結婚するとどちらかの身体が選 ③といえないこともない。 終わりの方では、人間の愚かさを描こうとばれ、精神がその単一の身体に同居すると ④極徴。 しているようにも見える。 いう世界。この話では結婚後に女の心が消 ⑤通信用らしい電波をいきなりスビーカー これらが結合して一つになっているのな失し、男が残るが、その男が女を演じる。 につなぐとは、考えられない。電波が何を 、ラ。ハラで終わってしまう。 それと、三角関係が絡んでいるのだが、何 どのような方式で搬送しているかが分からら良いが、ノ なければ、ス。ヒーカーにつないでも無意という訳で、作者が何を訴えようとした処に重点を置いて何を言うつもりなのか、 味。 のか、よく分からなかった。 曖昧なままに終わる。テーマの深まりが感 それにしても、主人公が善玉で異星人とじられない。いー卩 わ、題意識のない思春 先方からのプレゼントをやりすごすと、 なぜ落下するのか ? 力学的にいって、落仲良くなり、救助隊が興味本位に異星人を期童話とでも言おうか : 扱おうとして葛藤のおこる。ハターンは、古ただし、五人の中では最年少であり、同 下するはずはないのでは ? ( 人工衛星から惑星に向けて物を落とすーすぎる。作者には悪いが、鉄腕アトムより世代の読者をもっとも多くもっている作者 なので、理屈をこえて共感するファンが多 ーという行為のナンセンス性は、大昔にク昔に戻った感じがした。 いかもしれず、そういう意味では、順位は ラークなどがユーモアじたてで皮肉っ 高いのかもしれない。 ている。宇宙時代以前の古典ですでに『メイル・サイド』 ( 二〇歳 ) 常識となっていることなのに、いまだに間①時間順序が錯綜しているが、それをこな 違える人がいる ) すだけの筆力がないので、混乱する。しか 0 『竜の降りる夜』 ( 三二歳 ) 物体が光より速く移動できるのに通信はし文章それ自体は、読みやすい。誤字もあ①五篇の中では一番固く、リズム感に乏し 。妙な描写も多い。誤字も五篇中もっと 光より速く出来ないというのは、やはりおるが、少ない。年齢のことを考えると立派 かしい。これをおかしくなくするためにである。 も多い ( 「源初的」「修善」「うなづく」

10. SFマガジン 1985年11月号

カンでまきあげた翌日、右手を叩きつぶされ、目をえぐられて、ヴにスカーフをまきつけ、目だけ出して、耳の上でとめたうすものの アラキア港に、縛られて浮かんだのだった。失った片目も、同じよスカーフでロをかくしている。ひたいには、赤い星がしるされてい うなことで若いころになくしたのだという。 る。手首、足首につけた銅の輪がじゃらじゃらと鳴る。 その、ドライドン賭博は、ことにヴァラキアでは人気のあるゲー このぼろのかたまりの間からのぞく、きつくつりあがった黒い目 ムである。 この異様なふうていは、 と、浅黒い肌のいろとを見るまでもない。 船乗り、水夫、傭兵、娼婦のあつまる港町の、あらくれた気性、ひと目でそれと知られる《ョウイスの民》の女であゑ髪を垂らし 射幸心のつよさに、 この危険なゲームがびったりとあっているのているのは、夫持ちでない証拠だ。 だ。何回か、ヴァラキア公からも、また沿海州会議の名において人々は興味しんしんで、じろじろと、この珍客を見つめた。ョウ も、ドライドン賭博の禁令が出されていたが、ヴァラキアの公弟でイ スの民は、山から山、高原をわたり歩き、めったに人里へすがた さえこのゲームの熱狂的な愛好者であるというのに、その流行をとをあらわさぬ。あらわすときは、祭りの日や、商売で、広場に馬車 どめられようはずもなかった。 ごとやってきて舞台をしつらえ、独特の歌とおどりをみせ、うらな その、賭場をぎっしりと埋めた人々の三分の二は、自分の張り札 いやまじないをして、金をとる。 を汗ばんだ手ににぎりしめ、コロ師の声、胴師のよみあげる声のほ かれらは、南方の古代民族の生きのこりであるといい、風俗もこ か何も耳に入らず、黒びろうどの台の上にあらわれる、白い象牙のとばも独特で、ほとんどふつうの人まじわりをしない。ましてや、 四つのサイの目しか目に入らない。 仲間をはなれて、一人で里へ出てくることなどまずないといってよ が、他のものは、 いまやざわざわと風に吹きなびく草原のよう ョウイスの民は仲間からはなれては、生きられないのだ。 に、ささやきかわし、互いを肘でつつきながら、ある一ヶ所を見や こうした謎の民によくあるように、かれらもまたさまざまな伝説 っていた。 に包まれ、その実体は、ほとんど知られておらぬのが、正直なとこ そこに、一人の若い女がいた。 ろだったが、このたくさんの伝説の中でいちばん根づよいのは、ヨ の相手として最高に素晴しく、匹敵す すらっとした骨細の、黒髪の女である。まだごく若そうだ。色とウイスの民の男女は、べッド りどりの布をはぎあわせた長いスカート、太い黒いサッシュベルトるのはクムの最高級の娼婦だけであろう、といううわさであった。 を、長くその上にたらし、手首まであるふくらんだ・フラウス、やはその実、じっさいにヨウイスの民と、ペッドを共にしたというも ・、いたためしがないのだったが、元来が亨楽的なヴァラキア りはぎあわせの大きなストールに、すつぼりからだをつつみ、頭かのなと に限らぬ沿海州の人びとにとっては、ヨウイスの民、というだ らかぶり、前でかきあわせている。 ストールから、ななめ前に垂らした黒い髪は、ぼろを編みこんでけで、じゅうぶんな好奇心とあこがれをかきたてる対象であったの 三つあみにし、さきを布の中にかくし、ひたいにもター。ハンのようである。