ジャクト - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1985年11月号
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1. SFマガジン 1985年11月号

植民者社会の運営にはおそらく携わることは許されないと見て取っ ロイジャ家は、前にも述べたようにウイスボア州の、ジャクト家 たからこそ、関係のない分野の研究をし、学校にも残ったといえる 2 と場合によっては肩を並べることもある名家で、ト。ハネットはその のである。ロイジャ家ではそれで良しと見ていたのかも知れない。 当主から見てだいぶ離れたーー従兄弟よりまだ遠い親戚に位置して そのトバネットがジャクト家のエステーヤと結ばれ、やがて州の自 いた。きつ、 しいいかたをすれば、辛うじてロイジャの姓を名乗れる 治委員になってきたのは、ひょっとするとロイジャ家にとって誤算 という家柄らしい。この点、キタがはじめ想定したよりもずっと傍 だったかもわからないのである。行政と畑違いのそんな研究をして 流なのである。 いたト・ハネットが、どういうかたち、どういうやりかたで自治委員 トバネットはどうやら、地道な学者としてのコースをたどってき 会に寄与しているのか、キタには窺い知るこ・とができず、も たらしい。最上級校を出たあとも学校に残り、研究をつづけたよう 詳しいデータを持っていないからわからないにせよ、とにかくト・ハ である。は正確につかんだわけではないのだが、研究という ネットは自治委員の座を保ちつづけているのだ。 のは遺伝と環境の相関といったものだったようだ。むろん遺伝と環 となると : トパネットのロイジ : これはキタの単なる推測だが、 境の相関というからには、遺伝子操作やタトラデン以外の諸世界の ャ家における立場は、ジャクト家がらみの、かなり微妙なものにな 環境といった相互連関性のある複雑なテーマに取り組まざるを得な っているのではあるまいか ? ひいてはロイジャ家とジャクト家の かったのだろうとキタは推察したりもしたのであるが : : : それはと 間柄がぎくしやくしているとの想像もできる。 もかく、研究室勤務となってしばしば講義も行うようになった頃、 あるいは事実はその逆で、両家はトバネットを軸として、固く結 州の自治委員に任命されたのである。この人事にエイゲル・・ ジャクトの働きかけと説得があったのは想像に難くない。というのびついているのかも知れない。 この彼の推察に対して、 cOr-€はしかとした返答を出さなかった。 は、ロイジャとエステーヤの結婚がそのだいぶ前になされているか らだ。きっとエイゲルは、義弟の資質に期待するところがあって、 名家どうしは一般的に相応のつながりや反目があるものだが、数字 州の自治委員に引っ張り出したのに違いなかった。 の上では取引量とか業務提携といった事柄から推測するしかないの そしてトバネットは、エイゲルの庇護もあるのだろうが、自治委だ。によれば、数字で見る限り両家の関係は年ごとに多少の出 員の仕事をちゃんとこなしているようである。何期にもわたる重任入りはあるものの、同様の調子で推移しているから、何とも判断しょ うがないというのであった。これはジャクト家とポドニエル家の提 がそのことを示していた。 携強化にくらべると、変化がなさ過ぎるともいえようが、元来、同じ もともとトバネットが学問の道を志したというのも、本人が勉強 ウイスボア州にあるジャクト家とロイジャ家の ( 反目をも含めての ) が好きでそれだけの能力があったためであろうけれども、見方を変 つながりは、ロクトン州のポドニエル家よりはすっと密接だったの えればトスネットのような傍流では、ロイジャ家の中枢で腕をふる である。近年ジャクト家とポドニエルの提携が強化されたといって うのは見込み薄との事情も働いていたのではあるまいか ? 家とか

2. SFマガジン 1985年11月号

し : : : 中途でやめる理由もなく、また彼にはこれは純粋に nOb-* の それでいてズイ・・ヘイトリイは、このクラスの人間が往々 4 意見を聞きたいとの気持ちがあって、あとの人々に関しても対話をにして押しつけられる名誉職や雑多な団体・組織の長や委員といっ 2 つづけたのである。 た肩書きを何ひとっ有していなかった。 01 の調べたところでは そうだというのである。 あとの人たちというのは、四名たった。 ズイ・・ヘイトリイ、ニサイア・ tn << ・ポドニエル、エステ「私はズイ・・ヘイトリイは、現在の職務に全力をあげている ーヤ・・ロイジャ、トネット・・ロイジャである。 ため、他の仕事を引き受ける余裕がないのだと考えます」 対話はそれなりに有益たった。はこの四人についても司政と、はいったが、それが多分真実を射抜いているのだろ う。余計なことをせすにジャクト家、さらにはジャクト家が関与し 機構の手の及ぶ範囲で調査したデータを保持していたから参考にな ったし、ときには彼が受けた印象や彼自身の思い込みをの意動かすウイスボア州やパ・フォ大陸・州連合体のことに全力傾注して 見と突き合わせて考量することで、当初の認識を補強したり修正しい るのに違いな、。 たりできたのだ。 有能で、自己の目的をしつかりとっかんでいる男なのだ。キタに ズイ・・ヘイトリイが抜群の切れ者でありエイゲルの懐刀的接したとき、物腰もやわらかだった。こんな人物こそ、味方として 存在ではないかとしたキタの想像は的中していたようであった。キは心強いが敵に廻すと厄介なのである。 タは相手の風貌や、パ・フォ大陸・州連合体書記局長の肩書き、さら だがキタは、早晩名家や名家が象徴する勢力と対峙し格闘しなけ にタトラデンではよくある平凡な姓のヘイトリイが姓ではないかとればなるまいと覚悟していた。そのときズイ・・ヘイトリイは いった事柄を総合してそう判断したのであるが : : の調べはありとあらゆる手を打ってくるはずなのだ。このことを心にとどめ それを裏付けていたのだ。 ておく必要があった。 ズイ・・ヘイトリイは、ズイが名でヘイトリイが姓である。 ニサイア・・ポドニエルは、彼が名前を聞いたとたんに悟っ のミドルネームからわかるように、名家とは縁のない出身であた通り、ロクトン州の名家ポドニエル家の人間である。ロクトン州 るけれども、記録によれば上級学校を卒業してジャクト家系列の比では大小さまざまな名家のうち三家がずば抜けていた。三家のどこ 較的小型の企業に入り、数年のうちに頭角を現して経営陣に加わっ がトップと決められないのは、基準のとり方で順位が違ってくるか たらしい。その後ウイスボア州自治委員会の事務局長、ついで自治らなのだが : : : ポドニエル家はその三家のひとつなのであった。 委員を務め、二年前から州連合体の書記局長ーー・という経歴の持ち によれば、ニサイアはポドニエル家当主の直系の孫らし 主であった。しかも一方ではジャクト家系列企業群の経営参与も兼 ポドニエル家の当主はすでに高齢で、実質的にはこれも相当な ねている。となれば実務面でジャクト家を支えているひとりである年配の長男が家をとりしきっているようだが、ニサイアはその長男 ばかりか、エイゲル・・ジャクトの優秀な幕僚でもあるのたろう。の三人の子ーー一男二女の真ん中にあたる姉娘だとのことであっ

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たな。ホシジカ自身も否定しなかったが : : : そう考えてもいいのだ彼はつづけた。「私はそれがどんなかたちになるべきであるかに ついて、タトラデンの司政官としての見方と基準をトーエル・ ()0 ろうな」 ジャクトに述べた。だがトーエル・・ジャクトは、自分が知 っている星間交流会議はそんなものではないと言明した。それから 「そのご推測を否定する論拠を、私は持ち合わせておりません」 トーエル・・ジャクト自身の意見を喋りは 「ただし星間連植民世界についての は用心深げに肯定した上で、つけ加えた。 1 エルが自己に都合のいい偏見を持ち、植民世界に 絡委員という職は連邦にはありませんし、タトラデン植民者社会にじめたのだ。ト も設けられていないと記億します。タトラデン以外の植民者社会でついても根本的に間違った考え方をしているとしても、星間交流会 議がトーエル・・ジャクトの目から見て、私が期待しているよ 用いられている職名と思惟します」 うなものとはことなるのではないかとの疑念はどうしても残るとは 「そうかも知れない」 いえないか ? 」 彼はとりあえす同意した。実はタトラデン植民者社会にもそんな 「あり得ることです。しかし植民者たちがみすからの自主性と責任 職があるのかもわからず、あったとしてもあえて司政庁に届け出た 冫いかなる会議を持とうとも、司政機構は容喙すべきではあ り報告したりしないでいるーーーとの可能性もあるのだが、指摘はしのもとこ りません」 なかったのだ。 01 の、自分の関知するところではないといいた げな調子から、そんなことをするのは拙いと悟ったのであった。と は答える。 なれば、ザラエンのデントニシもまた自世界の星間連絡委員かそ原則通りの答であった。 れに準じる立場にあるのではないか、との質問も控えるほうがい 「ただ、もしもその会議で決定され実行に移される事柄のうち、タ い。彼はそのあたりを飛ばして次の問いを発した。 トラデン司政に重大な障害を来すものがあると認められるときは、 「とにかくハクシエヌンのホシジカは星間連絡委員として、ザラエ こちらとしては制止あるいは制限をしなければならない」 ンのデントニシュはどんな資格でかは不明だが、 彼はいった。 ジャクトのロ吻から察すると、ふたりとも星間交流会議に出席する 彼がいったのも、司政原則の通りなのである。 ように私には思えたが、どうだろう」 「仰せの通りです」 「確率はきわめて高いと考えます」 は肯定した。 はあっさり答えた。そっけなくと形容したほうが良さそう ともかくこれだけでも念を押しておけば良い、と、彼は思った。 であった。 今のこの段階では、これは Q 1 にとってわかり切った問答といえ 「星間交流会議では、七つの植民世界の代表者たちが交流を深めるる。 ( そんなわかり切った問答をなぜ司政官が試みたのか、と、 とのことた」 が不審がるおそれは、まずないであろう。、とりわけタ 2

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1 パ 1 なら、いってみれば会議を監視する格好になるのだから、連 邦経営機構は内心歓迎しつつ黙認の態度をとるだろうし、会議のほ うとしても内情を探らせることなく体裁を作ることになるわけで、 必ずしもマイナスとはいえないはずなのである。キタは星間交流会 議について、例のジャクト家での談話会で何らかの情報を入手し得 るのではないかと期待していたし、他にも調査の方策を講じつつあ ったものの、やはり会議自体から探り出すのが一番の早道と考えて いたのだ。 とはいえ、このことをに真正面から告げるわけこよ、 い。たびたび繰り返したようにはタトラデン世界司政のため のロポットの総帥という自意識にこり固まっており、星間交流会議 などというものがタトラデン上でなされたとしても、それは軍の管 轄下のエス亜大陸上で行われる他世界との交流に過ぎず、こちらか ら余計な口出しをしたり干渉したりすべきではない、かかわりを持 と、信じているのだ。 O つにしても最小限でなければならない、 1 にとっては守備範囲外の事柄なのである。 それはわかっていた。 わかっていたが : : : そして、どのように 1 を説得するかの方 法も用意してはいたが、今後のために、彼は一応押すべきところだ けは押しておくことにした。この件では今しがたの司政官の地位低 下の問題に触れずに済むため、さほどの危険はないと考えたのであ る。そして、当然ながら彼は、星間交流会議のほうからではなく、 舞踏会の出席者であるホシジカとデントニシュに即して話を進めな ければならなかった。 「ハクシエヌンのホシジカとザラエンのデントニシュだが、たしか ーエル・・ジャクトは、ホシジカを星間連絡委員と呼んでい こⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅱⅢⅢⅢⅱⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ川ⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅱⅢⅢⅱⅢⅢⅢ日Ⅲ日ⅢⅢ日ⅢⅱⅱⅢⅢ日Ⅲ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢ日日ⅢⅢ 引ⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ li 日ⅢⅢⅢ日ⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ日日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢ ll 日 ll Ⅲ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ 異例にも出身惑星であるタトラデンを任地として与えられたキタ への任務は、さらに異例なものだった。タトラデンが中心となって いる第四五星区プロック化を阻止ぜよというのだ。着任後、彼は名 家の圧力に抗し学校開設をはかるエクドート、タトラデンの原住種 族プ ' ハオヌの保護を訴える科学センターの男らと会い、また、旧知 の名家の男ェイゲルから舞踏会の招待状を受けとる。そして手はじ ハビヤという・フ・ハオヌの仮設都市を訪れ、ついでウイスボア 市へ向かった。そして彼は、第一の目的地、彼の育ったウイスボア 州立西北養育院を訪れた。彼はそこで、いまは職員として勤務して いるかっての後輩、ダノンに出会った。養育院を出たキタはただち にジャクト家へ向かう。彼はそこで開かれている舞踏会の会場でエ イゲルと再会し、また、・ハ・フォ海洋クラブ代表のトーエルという男 の紹介で、タトラデン外からの舞踏会参加者、ハクシェンヌのホシ ジカ・エスカケとザラエンのデントニシュという人物に会う。トー エルをまじえた二人との会話から、タトラデンと異世界との関係を お・ほろにつかんでいくキタだったが、再び彼はエイゲルに呼ばれ私 的な談話会へさそわれる。その後で彼はダンスの妙技を披露し、会 場の人気をさらうのだった。司政庁へ戻ったキタは、とウィ スボア行について議論を闘わすが、その中でキタはに彼のも くろみを納得させる布石を打つのだった。そして、ついに議論は核 心に近づくが : 登場人物 キタ・ 4 ・カノ日ビア : : : タトラデン出身の司政官。 ェイゲル・・ジャクト : : : 初級・中級学校時代のキタの同級生 の兄。ジャクト家の男。 エステーヤ・ロイジャ : : ェイゲルの妹。かってのキタの同級生。 ト・ハネット・ロイジャ・ : エステーヤの夫。 ーエル・・ジャクト : パ・フォ海洋スポーックラブ代表。 0 2

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を持っていそうだったエステーヤが、格別何をなすでもなく平凡な 境遇に落ち着いてしまうとは、どうにも考えられないのだった。妙 な違和感があるのだ。それが人間であり人生なのかも知れないと思 いつつ、彼女には隠れた一面があるのではないかと、感じてしまう のである。はっきりしたかたちでは表れていないが、彼女はジャク ト家のため、あるいはそのほかの何かのために、何事かをなし、現 在もなしつづけているのではあるまいか ? ( でなければかってあ る意味でエステーヤど張り合った自分の立っ瀬がないではないか、 と、彼がふと考えたことは否定できない。そんな、何もしない人間 相手に対抗心を燃やし、さらには親しくなったのだったら、どこか 空しいではないか、との気分が生れかかったのだが : : : しかしそん な感覚はおのれのエゴであるのも彼は承知しており、踏みつけるよ うにして消したのである ) 彼はその気持ちを、推量を求めるいいか たで、 01 にぶつけてみた。 「データとしてはそれしかないにしても、エステーヤ・・ジャ クトが、裏面でジャクト家なりタトラデン植民者社会なりの動向に 力を貸しているということは考えられないだろうか ? 」 と、彼は説いたのである。 「その証拠は何もありません。私には何ともいえません」 というのが、 01 の返事であった。 そうなのだろうか ? それだけなのだろうか ? が : : : 疑問は疑問のままに、今はそう受けとめておくしかないの であった。 ト。ハネット・ << ・ロイジャに関しては、はエステーヤに ついてよりもずっと多くの情報を保有していた。 日 00K 与 OL 0 0 ササハラ三条東店 ( 〒新新潟県三条市東三条一ー二ー マガジンの読者のみなさんこんにちは。私たちの店「 ササハラ」は新潟県のほ・ほまん中にある一一一条市に存在していま す。七十五坪の当店は約五万五千冊の本と平松店長以下六名のユニ ーマンと学生を中心に子供から年配 ークなスタッフ、そしてサラリ の方までの幅広いお客様に支えられ、今年でオ】ブン三年目になり ます。そんななかで ( ャカワ文庫は三条市周辺では類を見ない在庫 量です。 ( これにはけっこう店長の個人的な趣味で置いてるところ もあります。ちなみに写真は店長ではなく文庫担当の武石君です ) 。 突然ですが、「八月三・四日のガタコン釦夏まつりのときはどう もありがとうございました」遅くなりましたが先日弥彦での日本 大会で当店の売店ご利用のお客様へこの誌面を借りてお礼を申し 上げます。これからもイベン トには積極的に参加し、また 独自に企画したりして、 ファンのみならず本の好きな 人たちへのユニークな情報発 信集団を目指してます。県内 方もぜひ機会がありましたら 立ち寄ってみて下さい。 ( 本 誌持参の方には、なんとー コーヒーを無料サービスいた しましようリ ) 。 第ぎ ::: : 義ミ : : い みんなの主食ハヤカワ文庫 ロ BOOK 7

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た。ェイゲルと結婚すればジャクト家の人間になるので、よほどのこれといった実績は残せなかったようだが、そのへんの選手とは比 ことがなければポドニエル家を嗣ぐとは考えられないものの、とに較にならないのはたしかであった。となれば、スポーツ以外のこと 2 かくボドニエル家直系には違いないのだ。 にやたらに時間を割くなんて、到底無理であろう。 r.nOb* によれば そのニサイアがどうしてエイゲルと婚約することになったのかに ニサイアはこの一、二年、競技会に顔を出していないとのことだか ついては、は確実な材料を何ひとっ持っていなかった。ら、選手としては引退したのかも知れないけれども、運動神経は際 1 にとってはいくら有力な植民者どうしの結びつきでもそんなもの立っているはすで : : : 何をやらせてもみごとにこなすのではあるま は本来守備範囲外の事項だし、得手でもないのである。ただ いか。彼は舞踏会での彼女の踊りを想起して、さもありなんという は、ジャクト家とポドニエル家が企業レベルでかなり強い提携をな気がしたのであった。 しつつあることは、数字としてとらえていた。だからエイゲルとニ ただ、彼女の内面がどうなのか、今後どんな役割を果たすことに サイアの婚約・結婚が両家に有利であるのはたしかである。が、だ なるのか については、何もわからない。それはこれから見えて からといってこれが全くの政略的なものなのか、ふたりの間にロマくるのだと思うしかなかった。 ンチックな出会いがあったのかは、キタにも何ともいいようがない つづいて、エステーヤである。 のであった。 エステーヤ・・ロイジャ。 01 の調べでは、ニサイア・ << ・ポドニエルは、これまでほ 彼がエステーヤについて思い出を持ち、エステーヤのことを過去 とんど家なり企業なりの役職に就いたことがない。ほんの名目的として位置づけるためにおのれの心をそれなりに操作しなければな な、ポド = = ル家主催の行事の代表などにはな 0 たことがあ「てらなか「たわりには、はあまり = ステーヤのデータを持た も、本格的な実務に携 0 た記録はなさそうであ 0 た。ま、これは記ず、関心もないようであ 0 た。 録としての話だから、実際には表面に出ることなく動いたという可 エステーヤはのデータで見る限り、順調に成人し、順調に 能性も考えられるが : : : そんな暇はまずなかっただろう、と、キタ トネット・・ロイジャと結婚したようである。結婚するまで は思った。というのも、ニサイアはアマチ = アスポーツの世界で活 はデータらしいデータは何もないのだった。ト・ハネットとエステー 躍していたらしいからだ。がタトラデンのマスコミの記事を ヤの間にはふたりの男の子があるというーーーそれきりなのだ。 部下に調べさせたところでは、さまざまな種目に選手として顔を出 1 にしてもトバネ ット・・ロイジャの妻でありふたりの子の母 していたらしい。万能選手ともいうべき存在だったのだ。うちタト親であるというたけの = ステーヤには関心の抱きようがなかったで ラデンでは女性の間にさかんなリーランという球技では一回、 あろう。 ランの小型屋内種目ともいえるメリーランでは二回、ロクトン州で しかし、と、彼はどうしても釈然としないのである。あの頭の廻 の優勝者になっている。残念ながら全。 ( ブオ大陸レベルの大会では転の速か「た少女、ジャクト家の令嬢という以外にも大きな可能性

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も、総体として見るならば、まだまだ大したことはなかったのだ。 しかし、いずれにせよ、キタがジャクト家なり口イジャ家なりに 何らかの工作をしなければならぬときが来るとすれば、ト・ ( ネット の存在を抜きにして考えることはできない。それだけは間違いがな いのであった。 以上が、ウイスボア市から司政庁に帰着した翌日の、 との対話のあらましなのである。終了したとき、彼の神経はくたく たになっていた。 そう。 あの対話が、の意識の深いところの何かを変えたかも知れ ぬ、と、キタは第一橋を渡りながら思った。 あるいは、何ひとっ変えなかったかも知れぬ。 自分は、踏み込み過ぎたかとひやりとしたが : : : つまりはそれだ けが頑強だったということではないのだろうか。 しかし : : : ほんの僅かでも何かがおこったかもわからない。その ことに望みを持っしかないのだ。 表面的には何の変化もないようであっても : : : そうと期待するほ かないのだ。 その期待が心底にあるからこそ、自分はこの十日ばかり、やろう と決めた総花主義による前進をやって来た。と自分との思惑 が違っているのを承知の上で、さまざまな口実でを説得し納 得させ、全施策の実行に入ったのである。 動き出しているのだ。 動き出した以上、推し進めるだけなのだ。 眉村卓の文庫本 幻影の構成定価三六 0 円 定価四二〇円 定価三二〇円 重力地獄 産業士官候補生定価三四〇円 サロンは終った定価三三〇円 定価三六〇円 寄妙な妻 らざる空定価三四 0 円ロ 定価三八〇円 司政官 定価三〇〇円 影の影 枯れた時間定価二八〇円 消減の光輪田定価三八〇円 消減の光輪定価四〇〇円 , 消減の光輪刪定価四〇〇円 定価四〇〇円 泉鏡花文学賞受賞作 9 2

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トラデンの 01 の性格からすれば、基本的事項をたしかめるとい 「あり得ることと思惟します」 うのは、むしろ望むべき作業のはずなのだ ) 彼としては、いずれあ が返事をするのを待って、彼は提案した。 まり遠くない将来、星間交流会議が主軸になるかも知れぬ第四五星「だったら、積極的に会議場で情報を収集してもいいのではない 区・フロック化に、何らかのかたちで待ったをかけなければならず、か ? むろん先方が了承した上の話だが」 そのさいにがこの問答を想起してくれることを望みたかった「試みてしかるべきだと存じます」 のである。 と、 01 。 これだけ押しておけばよかろう。 「こちらから、オ・フザー ーを出すわけこよ、 冫冫しカオいかな。星日交 「ところで、ハクシェスンのホシジカにしろザラエンのデントニシ流会議に打診してみたらどうだろう」 にしろ、ジャクト家の舞踏会に出席したことだし : : : 他の世界か「試みてしかるべきだと存じます。そのようにご指示なさいますか ら来た人間の観点から、いろいろタトラデンを観察しているのだろ うな」 「そうして欲しいね」 キタは、司政庁側からオ・フザー ーを出すための説得にかかっ 「了解しました。そのように取り計らいます」 た。「星間交流会議において、ふたりは、会議の席かでなければ議「何なら、私自身が出掛けてもいい」 場の外で、タトラデンの現状や司政についての感想を洩らすかも知話が順調に進んだので、彼はロにしたのである。できるならそう れない。このふたりだけでなく、ほかにも他世界から多くの人々がしたいのが彼の本心だ「たのだ。 来るわけで、かれらもそれそれタトラデンについての所感があるは しかし、 TJ 1 はやはり 01 であった。いくらタトラデンの現 ずだ。そうした人たちは植民者といっても代表である以上、自己の 状や司政に対する他世界の人々の感想や意見を聞きたいといって 世界とタトラデンをかなり的確にとらえ、比較するのではないか ? も、それはにとって必要不可欠な重要事というわけではな かれらの意見を収集すれば、タトラデン司政に役立っ示唆を得られ い。司政官の仕事やその身の安全確保といった本来の第一義的な事 る可能性があるのではないかな。何もなくても、もともとなのだ」柄とは、まるで性質がことなるのであった。もしもが星間交 いってみれば、これは餌である。はおのれの司政をはたが流会議の意味を彼のようにとらえ、星間交流会議について彼と同じ どう評価しているか、結構関心を持っている。司政官である彼にウ目的意識を持っていたのなら話は全く別であったろうが : ・ : ・致し方 イスボアの市街をどう思うかと質問したことでも、それは証明済みのないことである。 なのだ。植民者といっても他世界の代表の感想とあれば、聞きたい 「司政官ご自身がお出掛けになる必要はないと私は思料します」 に相違ないと、彼は見て取っていたのであった。 と、は反対したのだ。「司政官が、星間交流会議の正規の は乗ってきた。 メン・ハーとしてではなく、単なるオ・フザー 1 として出向かれるの っ ~ 2

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は、司政官の権威という観点からも賛成できません。それに司政官めそのロポットに、こちらの求める種類のデータをも拾ってこさせ るよう、に依頼し承諾させる機会たって到来しないとは限ら には、もっと優先度の高い仕事をして頂かなければなりませんし、 軍管轄下のエス亜大陸というような土地では、司政官の身辺の警戒ないではないか。とにかく司政庁側の誰かが現地へ赴き現地を踏む に万全を期することが困難になります。かりに星間交流会議に打診というのは、そうしないよりも遙かにいいのである。 ホシジカとデントニシュを手がかりにした彼の 01 への働きか の結果オ・フザー ーを出すことになったとしても、私の部下のロポ トで事足りると考えます。私の部下のロポットは、持てる能力のけは、ひとまずそういうかたちで結着した。 範囲内で情報を収集するにとどまるでしようが、それで充分と思惟実は、彼がとの話し合いで何らかの効果を狙っていたの は、そこまでであった。が作成した表にはまだ名前が並んで します。司政官ご自身が出向かれるほどのこととは思えませんー いたが、あとの人々についてはすくなくとも当面、彼のゆさ 「わかった」 心中苦笑しつつ、彼はいうしかなかった。が反対の意向をぶりや自分のもくろみの材料にするのはなっかしかったのだ。しか ・示した瞬間に、彼はそれ以上いわないほうがいいと判断して、諦め たのた。ト ーエル・ <t ・ジャクトにからんださきのやりとりで、 ″くるまの本フェア 少し踏み込み過ぎたかという気がしており、無理押しはやめること 月日火斗料月日阯・グランデ 5 階 にしていたのである。が、それにしても 01 がこう理由を並べ立 てるとは予期していなかったのであった。 スポーツ関係雑誌 だがまあ、自分自身は行けないにしても、オ・フザ 1 ーの出席打 《バックナンバーフェア》 診を承知させたたけでよしとしなければなるまい。もしも星間交流 間月 1 日火間月日休・ブックマート 4 階 会議にロポット官僚が出掛けて情報を得るとしても、その大部分は 学 彼の求める種類のデータではないだろうが : : : すくなくとも当のロ 代 尹築化職会庫童 趣演ア ポットは星間交流会議なるものを実際に見聞きするのである。 建理就社文児 型行ド画フ一 1 に報告する以外にも、ある程度の事柄は記憶にとどめるであろ新ク 0 ~ 映書総 - フ参械物斉庭 学機生経教詩家 う。に対する持って行きようしだいでは、そこから有用なも 0. ンク噺「、グ 田 3 典気学律学学術 の のを引き出せるかも知れないのだ。ひょっとしたらそんな苦労をし 泉、 ~ 「文文泉」辞電医法哲文 ~ 「 人 田町皆階階階階階階 なくとも、思いがけない情報を告げられる結果になる場合だって考 「書 千 6 5 4 3 21 地 えられる。それに、これからの状況の推移ととの話し合いに よっては、事後のそうした事態に望みをつながなくても、あらかじ 3 2

10. SFマガジン 1985年11月号

、く / 帛 オ / 長篇 2 8 0 円 / 集英社 / 文庫 / 長篇 銀河乞食軍団外伝①木枯郡山猫街道 8 番 地著Ⅱ野田昌宏 / 284 頁 / 7 ・引刊 / ⑩異端の黒譜著日志茂田景樹 / 350 頁 / オーディーン光子帆船スターライト原案 380 円 / 早川書房 / 文庫 / 短篇集 / 解Ⅱ 9 ・ 1 刊 / 4 4 0 円 / 祥伝社 / 文庫 / 長篇 Ⅱ西崎義展 / 文Ⅱ鳴海丈 / 2 5 4 頁 / 8 ・ 竹内伸介 刊 / 3 4 0 円 / 集英社 / 文庫 / 長篇 銀河侵攻計画 (PERRY 、 HO し」 4 ~. ・ ⑩宇宙から来た遺跡著Ⅱ南山宏 / 222 頁⑩オーメン (The 0 ミき . 、 976 ) 著Ⅱデヴ ゝミ ~ 、 e 、 ~ Gegen し 7 きトミ、 ~ ・ミ、 ~. 、 9 敬 / 8 ・刊 / 4 8 0 円 / 講談社 / 文庫 / ノ ・セルツアー / 訳日中田耕治 / 2 9 68 ) 著日エーヴェルス & ダールトン / 訳 ンフィクション 0 頁 / 8 ・ 4 刊 / 5 0 0 円 / 河出書房新社 Ⅱ松谷健一一 / 274 頁 / 8 ・刊 / 360 ー星 / 文庫 / 長篇 円 / 早川書房 / 文庫 / 長篇 / 宇宙英雄ロー 宇宙船。ハオロンを消せ著Ⅱ斎藤英一朗 / 2 ダン ( 襯 ) 18 頁 / 7 ・訂刊 / 370 円 / 朝日ソノラ顔のない神々上著日山田正紀 / 336 頁 マ / 文庫 / 長篇 / ハイス。ヒード・ジェシー / 7 ・刊 / 680 円 / 角川書店 / 新書ノ一クトウルーⅥ幻妖の創造著・ア・ラ ③ 長篇 ヴクラフト・他 / 編 " 大瀧啓裕 / 2 8-6 頁 / 7 ・刊 / 1600 円 / 青心社 / アンソ 宇宙皇子 7 まほろばに熱き轍を著日藤川顔のない神々下著日山田正紀 / 290 頁 桂介 / 2 5 2 頁 / 7 ・刊 / 6 8 0 円 / 角 / 7 ・刊 / 6 8 0 円 / 角川書店 / 新書 / 川書店 / 新書 / 長篇 長篇 玄笑地帯著日筒井康隆 / 150 頁 / 8 ( ・川 刊 / 650 円 / 新潮社 / ェッセイ集 映画の世界完全版 4 著Ⅱ中子真治切り裂き街のジャック著日菊地秀行 / 31 / 19 2 頁 / 7 ・四刊 / 5 8 0 円 / 講談社 8 頁 / 8 ・引刊 / 400 円 / 早川書房 / 文サイエンス・スクランプル著日大宮信光・ / 文庫 / 資料集 庫 / 長濡 他 / 2 84 頁 / 7 ・ % 刊 / 360 円 / 新潮 社 / 文庫 / 科学解説集 ⑩エヌ氏の遊園地著Ⅱ星新一 / 2 8 2 頁 / 7 ・刊 / 3 2 0 円 / 新潮社 / 文庫 / 短篇 獅子の門群狼編著Ⅱ夢枕獏 / 248 頁 / 集 / 解Ⅱ横田順彌 8 ・燔刊 / 6 8 。円 / 光文社 / 新書 エメラルド・フォレスト (The E 、、ミ、ミ ld ⑩灼熱の水平線著Ⅱ田中光二 / 282 頁 / 、 0 st. 、 985 ) 著Ⅱ・ホールドストッ 8 ・燔刊 / 4 0 0 円 / 徳間書店 / 文庫 / 長 ク / 訳日黒丸尚 / 3 5 6 頁 / 7 ・刊 / 4 篇 / 解Ⅱ井家上隆幸 8 0 円 / 新潮社 / 文庫 / 長篇 / 解Ⅱ黒丸尚 城砦都市カーレ ( Kh ミ 0 、。 r 、ミ・ 黄金の空隙高野山秘宝伝説著Ⅱ清水義範 T 、ミ . 、 98 ) 著日スティープ・ジャクソ 刀 26 ◎→ 8 / 24 ① プアイル