百億という人間を宇宙船で他の恒星系へと送りだした。 なかったのです」 植民星は地球連邦の委任統治領となり、連邦政府の委任する総督 「うんうん」 この辺はよく知ってることだけど、あたしは表情もしぐさも熱心が置かれた。 植民は初め、地球型の惑星を選んでおこなわれた。だが、いくら に、大きくうなずいてみせた。 「しかし、その決定を一人の企業家がくつがえしました。初代のド銀河系が広大とはいえ、人類の生存に適した惑星がそうほこほこと ルロイ総督、ノボ・カネーク・シ = アです。シ = アは、海底の資源あるわけもない。大気組成や地質などが、ほんのちょっとだけ人類 を利用して精密機械工業を推進すれば、たとえ植民の数が規定に満に合わなかったりするのだ。そして、問題は、そのほんのちょっと たなくても、ドルロイの改造資金は回収できると主張しました。そにあった。 して、開発計画書を作成し、議会に提出したのです。計画書は詳細惑星改造技術があらたに研究された。火星や金星など、ソル太陽 を極め、その構想は雄大でフロンティア精神に富んでいました。連系の惑星を開発した経験がものを言った。クラッシャ 1 という、惑 邦政府議会はシ = アの情熱にうたれたのでしよう。二一二八年、シ星改造や浮遊宇宙塵塊の破壊を専門に請負うスペシャリストの集団 も生まれた。 ニアが総督として就任することを条件に、前の決定を撤回し、ドル 植民星は飛躍的に増え、そのうちのいくつかは、地球連邦に対し ロイの改造と植民を承認したのです」 て独立を宣言した。独立した植民星は惑星国家と呼ばれた。二一三 十三年前のことである。あたしは六歳だった。 ドルロイは二一二九年から、二年がかりで改造された。改造に四年に惑星国家が結集して銀河連合が設立されたとき、銀河系に存 は、それ専門の訓練を受けたクラッシャーと呼ばれる宇宙生活者が在する惑星国家の数はすでに三千を越えていた。 あたった。なんて名前のクラッシャーのチームが指揮をとったのか「植民から八年ほどは、ドルロイも順調に発展しました」クラーケ ンは言を継いだ。 は知らないが、延べで一千人近いクラッシャーがドルロイの改造に は参加したという。 「シニアのプランは十年が一単位になっており、十年目の二一四〇 改造が完了すると、ドルロイは地球連邦の委任統治領となった。年に憲法を制定し、国民議会を設立して、地球連邦に惑星国家とし ての独立申請を提出する。そんな段取りが盛りこまれていました」 二一四〇年とは、去年のことである。しかし、ドルロイはいまだ 人類は、念願のワープ装置を完成させた。 に委任統治領で、独自の憲法も議会も有していない。むろん独立申 完成と同時に、巨大な移民用宇宙船の建造が開始された。 ソル太陽系は、その頃パンク寸前であった。爆発的に増加する人請も提出されてはいない。 9 「二一三九年に、思いもかけない不幸がドルロイを見舞いました」 口を支えきれなくなり、資源も土地も底をついていた。 4 そこへ、この朗報だ。地球連邦は銀河系全域への進出を図り、何クラーケンは言う。
目をこらすと、森と見えたのは宇宙船の残骸に繁茂した植物群だ はふわふわで白い。古式ゆかしい視力矯正レンズを一対、鼻の上に った。移民用の大型個人宇宙船らしかったが、風化がひどい のせていて、そのむこうにぎよろ目があった。 「あれは ? 」 「あんたはむこうから来なすったんじやろ ? 」 プリザウーン 「わしの船さ。遭難したんじゃ」 「呪界」 「救助は ? ここの航宙保安機構はどうしたんだ」 「それさ」 老人は目を細めてわらった。上の前歯が一本欠けている。それを「保安機構 ? ひやひや。アグアス・フレスカスの住民はあんたと 見て、万丈はわけもなく嫌な予感がした。フアフナーの引きあわせわしの二人だけさ。ほかには誰もおらんよ。田舎じやからな」 万丈は座席に沈みこんだ。住民呼ばわりされたことに反論する元 には気をつけておくにこしたことはないのだ。先だってもマッド・ サイエンティストにひっかかりひどい目にあっていた。そいつは万気もなかった。回廊は使えない。宇宙港もない。脱力感のあまり、 丈に″モラル・マルチ。フレックス。なる思考システムを催眠法で身体がとけてシートカ・ ( ーにしみこんでしまいそうだった。 「心配はいらんよ。わしに任せておきたまえ」 学習させた。旅行者が異邦で出くわす最大の障害は文化規範の違い 、「はは、ありがとうミスタ・ : ・ : ええと」 た。たが″モラル・コン・フレックス″のひとセットは主要な五十 / ハワーズ」 「わしはパワーズ。アダム・ 万通りの文化フォーマットを網羅しており、対面した相手の近似モ の上老人は笑みで頬をふくらませた。 ラルを察知すると、使用者の全知識・体験はそのフォーマット 「哲学者じゃ」 ンヨックよさようならーーーという に並べかえられる。カルチャー 万丈は己れの不運を呪った。 ふれこみだ。うかうかと乗せられた万丈も・ハ力だった。少し考えれ ばわかることなのだが、モラル・マルチ。フレックスは使用者よりも 相手の方に都合のいい状態を生みだすだけで、万丈はいわば文化人 類学的お人好しに仕立てられたわけだった。 パワーズの庵は、宇宙船の居住区だった部分をきりはなし、そこ 大枚はらって別の医者に消し込みをやってはもらったのたが、そを中心に築かれていた。オアシスから引いた水路をまわりにめぐら れは消去というより塗りつぶすと言った方が正しかった。後遺症がし、野菜や香草、果樹が植えられている。三十メートル以上に成長 残るだろうとも言われた。さんざんだった。以来、万丈はその手のしたタビビトノキがひときわ目についた。見あげると首が痛くなる ムードには過敏なのだ。 ほどだった。びかびかの銅貨みたいなタ日が落ちると、庭にしつら コクビットがさっと明るくなった。老人がキヤノビを透明にしたえられた炉のうえで大きな肉のかたまりがあぶられた。とっておき のだった。オアシスが見えた。水と緑があざやかに目にしみる。 の炭は威勢よくおこって、青い夜に映えた。透明な脂がしたたり香 「あれがわしの庵じゃ」 ハワーズはそれを器用にとりわ ばしい匂いがひろがりはじめると、 266
たいにして執筆生活を送っていることに関いのだ。単なる興味から出かけることにな 「 3 0 0 【 1 』という作品を御存じだろう った地球旅行だが、地球への行路はスペー か ? 今はなきハヤカワシリーズで一係があるのだろう。 雄 望 スウェイズという会社が独占しており、し 九六〇年に ( なんと一一十五年前 ! ) 刊行さ ラム・ / ノー ・、レレよ宇宙船を流れ歩くスペー かも観光できる場所は、キュー・ハ、マルタ、 寸れた作品だ。就道異変により破減を迎える シェトランド、 ハワイ、サハラ、ロシア、 木ことになった地球は、人類の種を救うためスマンだった。流れ流れて一財産かせいだ 0 に地球にあるすべての宇宙船で火星植民を彼は、行楽星パラデイソに降り立つ。このチベットの七か所で、いずれも人里離れた 計画する。三〇〇【一はその植民船に乗り平和な宇宙には彼を満足させてくれるようところばかり。そして地球人と接触するの なことは起こりそうもない。いつものようは厳禁という規則。 こめる割合なのだ。すなわち三〇〇人に一 人が宇宙船に乗ることができ、災厄から助に彼は女漁りに出かける。。フール脇で読書ツアーから抜け出して地球人と接触して やろうと腹を決めたパレルは、・フール脇で かるのである。しかし宇 会った女性、ロ・ハータ・マードックと偶然い 宙船の破壊などでこの割 っしょになる。彼女は学生時代からの地球 合はもっと大きく、一〇 への興味がこうじてこの旅行に参加したの 〇〇】一になり、そして だった。二人はシェトランドで船を盗んで そうやって選ばれた数少 逃げ出す。エジン・ハラにたどり着いた彼ら ない人々でさえ、到着し は、地球人がひどく弱々しく覇気がないこ た火星の苛酷な自然の中 とに気づく。元気のいいのは子供たちばか で生存のための苦しい戦 り。それもそのはずで、二十一歳になると いを始めなければならな 活力のある者たちは宇宙に送り出されてし かったのだ : ・ 。この作 シ まうのだ。いまだに植民時代の慣例が行わ 者が今回紹介するマッキ ントッシュである ( なかなかおもしろそうをしている若い女性に目をつけ、声をかけれているのだ。そしてそれを牛耳っている でしょ ) 。そしてまぎれもなく五〇年代作るがあっさりとふられてしまう。このフリのがスペ , ースウ = イズなのである。地球を 1 セックス時代ではおかしなことだった鎖国状態にして疲弊させ、最終的に地球を 家なのである。 が、彼は気にもとめずほかの女性を物色し手に入れようと企んでいた。それに反対す マッキントッシュは、五〇年にデビュー こ上 にいく。そういうふうな毎日を送っていたる組織と接触した・ハレルとロ・ハータは、地 して以来、作品を着実に書き続けている。 が、ある日、地球への旅行に出かけること球を解放するために動き出す・ : 彼の書くのは主に長篇で、短篇については 不屈の主人公が敢然と大組織に挑戦し、 五、六〇年代に数多く書かれたが、いまだを思いつく。地球は人類発祥の星でありな に一冊の短篇集も編まれていない。 このあがら、今ではかすんでしまった存在で、思っいには成功するという、いつもどおりの たりは彼がスコットランドにとじこもるみ いのほかその情報については知られていなマッキントッシュではあることよな。 齏 eWo
ロロ石原博士の SF 研究室ロロ . 隣のお姉さんタイプ ハート・研サクラ . ほっとした笑顔 ハード研 . ・ SF 以外の ことを全て とりしきって くれる自誘 先生 写っていない がハード研総 務の斉京君 . が大学院に残ってくれたので、あるた。 ( そういう前半の場面の科学性が従前の n 意味では強力と一一一一口えないこともない 映画とは一線を画していたので、われわ ラ士 ( ちなみにこの坂本君、大学院は無れはあの映画に感激し、その後にくる人間 原理じゃないかという導もあ「たのだと = ンビ = ータという未来的問題、人間と 宇宙の関係を示す幻想的なシーンに、素直 るカノ ード研の雄・須賀隆君にちょ っと教えてもらったら、たちまち成に没人し、感動することが出来たのだ ) し績向上、悠々と合格して、他の先生『 2001 夜物語』の中でも冒頭の章はも つを驚かせた。やつばりハ ード研は妻っとも科学的誤りの少ない部分だが、それ でも、一〇〇〇万年前の生物と六〇〇〇万 ロい ) 年前の生物と香山滋にしか出てこないよう て石原博士はもともと漫画が好きな生物とがハチャハチャに入り乱れるとい 業で、大学二年のころまでは漫画家にう凄い場面があって、あの有名な棒をぶん となる夢を捨てきれないでいたほどだ投げると宇宙船に変わるシーンに続く。 出現した宇宙船はアトラスだが、これま 、刀 ハードファンの一部に、 や 強烈なマンガ批判があることにた凄いリ アトラスでチンパンジーを打ち上げたと っいては、ちょっと疑問に思ってい 一研たのだが、例の『 2001 夜物語』 いうのも首を傾げるが、それはまあ、ここ のを見直してみて、その意見ももっとに書かれている年代そのものが歴史と違っ ているので、架空のものとして認めるとし 昨もだと思うようになった。 ても、あの強力な推進力で有名なアトラス とにかく凄いのだ・ 真まずカ・ ( ー画だが、これは加速のの・フースターを、ロケット全体が軌道にの 向きが完全に逆であり、これではったあとで切り離し、しかも、いったん噴 「宇宙特攻隊」になってしまう。射を中止していたサステーナが、・フースタ 『二〇〇一年宇宙の旅』において 1 切り離しの後、改めて火を噴き始めると いう、奇想天外な推進方法を使っている。 は、これに似た場面では、シャトル は主エンジンを完全に切って、しずこれそまさしく、 『超能力、ニ、ートンカ学破りリ』 しずとステーションに接近してい 203
SØNNER—-• 黒い痕跡を追え ! 物記 セルゲイ・バヴロフ C 挈 2 ″ , 2 囲 この作品は「海外事情」で触れた、 が頻々と現れるようになった。原因不明の救助隊の隊長ノートンのようであり、変装 、早八十五年度 ( ア = リータ賞 ) 受賞作の第一まま、異常の種類によって彼らは地球の各するか化粧をしているらしいことがわか る。 部 ( 原題 ) 、『〈月の虹〉号』。 地に隔離されている。 冥王星の第四衛星オペロンで地質調査に だが、彼はオペロンでの任務を完了した ・フランクは暗渠を抜けた。だが、さ従事していた学者たちの体に変調が起こ後、他の三名の優秀な隊員とともに、任期 見 まざまな危険を潜り抜けて前進をつづけり、命に別状はないものの体が蛸のように満了前に退職してしまっていることがわか る。古代の城壁に似た砲塔から銃撃された ぐにやぐにやになってしまう異常な事件った。彼らになんら異常が認められなかっ り、クモの巣のような奇妙な生物に襲われが、ことの起こりであった。 たので、あっさりと退職を認められてい たりしながらも無事に危機を脱して、もやところが、捜査部の調査が進むにつれた。だが、その後各地に散った彼らに異常 に包まれた貯水池に行き着く。水面のはるて、異変は救援にむかった宇宙船〈月のが認められるようになる。いわゆる〈黒い か高いところに上下一一本の鎖 痕跡〉現象がそれだ。だが、ノートンだけ が伸びているが、対岸はもや はまったく正常だった。謎を解く鍵は彼に あった。 につつまれて見えない。だ が、ここを脱出するにはそれ フランクは、ノートンの義弟でもあった を渡るしかないのだ。途中ま ため、事件の解明にあたる〈黒い痕跡〉作 で渡ったところで、鎖が激し 戦の要員として任務にあたることになった く揺れはじめ、水の中に振り のだ。 落とされてしまう。必死で泳 アメリカの片田舎で引退生活を送ってい ごうとするが渦に巻きこま るノートンは、夜な夜な異様な行動をと れ、貯水池の底にある円錐状 る。やはり彼は超能力者だったのだ。それ の排水口に吸いこまれてい 畳を世間に知られないように、ひた隠しにし く、もはや絶対絶命の窮地に もて暮らしていた。だが、己の力をもてあま 立たされた・ : し、夜中に、飼い慣らした野獣を相手に途 気がつくと、そこは・フール ・・一」方もない能力を発揮して、うさばらしをし の縁だった。それはシミュレ ていた。だが、かっては宇宙救助隊の隊長 1 ションによる訓練だったのだ。宇宙安全虹〉号ですでに始まっていたことが判明しであったかれは、ことの重大さを充分認識 保障局国際捜査部の部員は、宇宙空間で遭た。報告によると、船内で計器類のディスしており、己の超能力を観察し、それを克 遇する思いがけない事態に冷静に対処でき・フレイが破壊されるという事件が続発し、 明に日記に記録していた。 るよう、そうした訓練をうけて宇宙の任地幽霊が出没するという噂がたったという。 姉を訪ねるというロ実をもうけて、やっ に送り出されていく。彼は抜群の成績でテ用度装備員が偶然現場を目撃した。犯人はてきたフランクはノートンの留守中に彼の ストに合格し、新たな任務が与えられる。救助隊員の服装をしているのに、まったく書斎で日記を見つけだし、捜査部の推測が だが意外なことに、それは〈黒い痕跡〉と見覚えのない顔であった。しかも止めよう正しかったことを確認する。そしてつい 称される地球上での作戦であった。 とすると、異常な力で反撃されて、逃げらに、帰宅した彼と対決することになった・ : かなり前から、宇宙開発に従事しているれてしまった。傷の手当をした船医と彼は 科学者や宇宙船の乗組員の体に奇妙な現象ひそかに調査を開始した。やがて、犯人は 、二 0 ; 物第第 0 を、
いている。ビラを配り、行き交う人に署名を求めている連中もい ルロイの宇宙港はすごく狭い。十隻も降りたら、離着床は全部埋ま ってしまう。航空機みたいになっている水平型の宇宙船なら滑走路た。 「こんなとこで、デモ , に降りて格納庫に入れてもらえばいいけど、あたしたちの〈ラ・フリ ュリがあきれて目を丸くしている。 ーエンゼル〉は全長八十メートルの垂直型外洋宇宙船。専用の離着 床がなかったら、どこにも降りらんない。 あたしも開いたロがふさがんない。 あによ、これ。邪魔くさい。事情をよく知らなかったあたしは、 しようがないからロビーで時間をつぶそうと、あたしたちはカー トを捨てた。お船に戻っても良かったんだけど、ユリと二人で ( ムむかっ腹を立てた。第一、これじゃ、かあいい子もおじさまも逃げ ギもいるけど ) 窮屈な船内で顔つきあわせているのも芸がない。そてっちゃう。 れにロビーなんかをぶらついていれば、うまそーな坊やに接近遭遇「抗議しようよ、ケイ ! 」 する可能性だって生まれる。もちろん、大金持ちのすてきなおじさ 口をとがらせて、ユリが言った。抗議の理由は、あたしのそれと まだって構わない。あたしゃ贅沢は言わないんだ。富と美貌さえ、大差ないらしい。目の色でわかる。 規定のレベルに達していれば、年齢なんて無視してあげる。 けど、抗議ったって、誰にどう言やいいのさ。中継ステーション なんて野望を胸に秘めて、あたしたちはロビーにでた。 のロビーでデモだなんて、前代未聞だよ。合法的かどうかも判断が ところが。 つかない。 そこに待っていたのは。 「あたし言ってくる」 目を疑うような光景。 ためらっているあたしを見て、ユリが身をひるがえした。たくも うまそーな坊やじゃない。 う、ユリってば、いつもは優柔不断でぐずぐずと迷ってるくせに、 すてきなおじさまもいない。 いうことになると、さっさと動きだす。 最初に視野に飛びこんできたのは、ばかでかい垂れ幕だった : 「ちょっと待ってよ」 『ドルロイに国民議会を ! 』って書いてある。 あたしは腕を握り、ユリを止めようとした。 『憲法を制定しよう ! 』なんて垂れ幕もある。 そのときだった。 そして、耳をつんざく演説の声。 デモ隊の中から、悲鳴があがった。 これは、つまり。 すさまじい悲鳴だった。一人の声じゃない。何人もの絶叫が重な デモではないか。 っている。源は、よくわかんない。デモ隊のあっちの方。ロビーの 四、五十人はいるだろうか。ロビーを一群の若者が占拠してい反対側らしい。 デモ隊の列が崩れた。左右に割れ、逃げまどうように、横に広が る。手に手に垂れ幕やら。フラカードやらを持ち、列をなして練り歩 4 3
だ。しかし大地は依然かわきききって石のように固く、しめりけひの身体のリズムが同期しはじめる。偉丈夫は、宇宙が自分の左肩を とつなかった。気温は目に見えて上昇していた。熱気が光景をゆら中心に回転しているような気がした。いつもの感覚だ。この気分が 6 2 ゆらとゆがめた。 高まり最高潮に達するとき、回転の中心がすぼっと抜ける。そうし て宇宙のやわらかな層に穿れた回廊へと降下していくのだ。偉丈夫 男の顔が険しくなった。 は周囲の空間がかれらのリズムにあわせてうねるのを感じながら、 「フアフナー ! 」 竜は瞬膜を上げようとしなかった。ふてているのではない。たたその時が来るのを目を閉じて待った。だが、やがてうねりは減衰 傷つきたくない一心なのだ。だが靴ごしに地面がどんどん熱くなるし、いったん高まった気分はゆるやかにほどけて四散した。共感不 のがわかるような場合、気を使うのが最善でないこともある。偉丈全の不快な孤独感がむくむくとわきあがる。 夫は正しい道を選んだ。竜のきやしゃな頸を、きゅっとしめあげた「フアフナー ? のだ。 竜はまるで舌うちするように尾を鳴らし、今度は目蓋を閉じた。 「ぐずぐずしていられない。水寄せがうまくいかないんだ。今すぐ「まさか、おい、それだけはよしてくれ」 回廊に引き返そう」 かれはザックをかきまわしてソーラー・ゲージをひつばり出し 竜はきな臭い煙を鼻から吹いて抗議した。 た。センサを今や白熱した太陽にむけオートで検索させると、太陽 「追っ手のことなら気にしなくていい。 回廊は広いんだ。見つかるのインデックス・ナン・ハーがわかる。小さな。フリンタは、しかし白 ものか。暑いのはべつに嫌いな方じゃないけど、ここはいやなん紙をうちだした。偉丈夫はまっさおになった。この星系は呪界の外 インダーチェンジ だ。わかるだろ ? 」 にある ! 呪界の外側の恒星はメモリにないのだ。結節点を通過 偉丈夫は竜の目をみつめた。竜はあくびをした。あくびは炎になしたときのいやなショックをかれは思い出した。あのとき加速の方 って男の頬をかすめたが、かれは辛抱づよかった。結局、先に顔を向を誤ってはじきとばされたに違いない。道理で浮上のときの衝撃 そらしたのはフアフナーの方だった。自分のせいで男がこうむったが大きかったはずだ。かれは思いだしたように、頭の砂をはらった。 数々の災難を思い出したのかもしれなかった。竜は瞬膜をあげた。 偉丈夫はしやがみこむと、ひどいため息をついた。竜にあたるこ 「そうこなくちゃ」偉丈夫は白い歯を見せ、傍に落ちていたザックとさえ忘れていた。無理もない。なにしろ回廊へ降下することがで おさら きるのは呪界の中だけなのだ。呪界へ戻るにはもちろん宇宙船が必 を肩にかけた。「さあ、銀河の反対側へ連れてってくれ」 フアフナーは翼をひろげ、首を前につきだして空の一点を凝視し要だった。つまり と・かれはひとりごちたー・ーっまりおれはどこ た。空間の織り目を読んでいるのだ。回廊が縦横無尽にからみあか一番近い宇宙港までてくてく歩いていかなきゃならないわけだ。 う、宇宙の下部構造へ降りていくために。 偉丈夫は覚悟を決めた。二の腕に巻いていた革帯をはちまき代わ フアフナーの呼吸がゆるやかに、そして深くなっていき、竜と男りにきりりとしめ、大きな遮熱シートを頭からすつぼりかぶって太
「だといいけどね」 すぐにその意味を理解した。 「待ってたんだ。来るのを」 あたしは宇宙港からのビーコンの映像をメインスクリーンに入れ 「ステーションでの事件、聞いてる ? 」 あたしは尋ねた。 それから宇宙港を呼びだした。 驚いたことに。 「聞いた。巻きこまれたのか」 「ワーニヤって子を乗せてるの。重傷を負ってるわ。どうしたらい 離着床があいていた 「クラーケンてば、やるじゃない」 「ワーニヤが、そこに ? 」 あいてるってことは、一隻飛ばしたっていうことだ。どんな船を 「至急、入院させないと危険たわ」 飛ばしたのか知らないが、使った時間からみて電話一本で船長に緊 急移動を承知させたに違いない。船長や船主に、よほど信頼されて 「宇宙港に降りてくれ。迎えに行く」 いないとできない離れ技である。 「離着床が埋まってるのよ」 宇宙港の上空に到達した。 「あけさせる。構わないから、そのまま向かうんだ。でも、絶対に 前にも言ったけど、島一つを削ってつくった宇宙港だ。たしかに ミストボリスの病院には入れないように」 狭い。ったく、こんな海ばっかりの星。どうして開発する気になっ 「ワーニヤも同じことを言ってたわ」 たんだろう。地球連邦が、よく移民を承知したもんだ。これじゃ、 「わけありなんだ。ステーションでの一件もそれがからんでいる。 植民規模が開発経費に見合わないよ。改造も楽じゃなかったろう 提訴したのもそうた。事情はあとで話す」 し、やったやつの顔が見たいね 1 「それがいいわね」あたしは言った。 着陸 0 のサインがきた。 「もう通信は切るわ。宇宙港で会いましよう」 ュリが、まじな表情してレ・ハーを操作する。なんたって、救急車 「ワーニヤを頼む」 をやっているんだ。そっと降りなきや、やばい。 「任せといて」 垂直降下態勢にはいった。 オフにした。 高度を下げる。噴射よめ、つゼ、。 。し。しこの際、省エネルギーはなし。 「なんか、反応は ? 」 あたしはユリに訊いた 1 ランディング・ギャをだした。サブスクリーンに、宇宙港から送 「大丈夫ね」ュリは計器をチェックした。 られてくる〈ラ・フリ ーエンゼル〉の映像を入れた。鮮やかな蒼空 の船体がくつきりと浮かんでいる。きゅっとウェ 「作為的な割りこみはなし。あれだけ指向性を持たせたんだし、傍に、スカーレット 受もなかったんじゃないかしら」 ストがくびれた紡錘形のフォルムが、なかなかセクシー。大小四枚 こ 0
space 】超空 超光速飛行の 際、宇宙船が 史ば始と境れ思な態行の L.L 性で 通る空間のこ お歴呼と本をそとか形刊本要の にのとはつ行年、うほ版と行、重 ハラレル・ワー 史誌作場。ば単引がもむ出々単れ的し 【 parallel 歴雑名のすっし、す読読の続しつ史で の。在表でほろはでをを。こ、ろに wo ュ d 】多元 u- ん現発のら下態の誌す ) 下すら 宇宙、平行宇 せま、のたかき形る雑で降なき増っ薄 宙などと呼ば 、ままで初っ頃書版す、 I-L の以と書が持に れ、われわれ がきのど最だ年、出増はた年流る性の々 史 が生活してい たでそほ、誌団るう急でばっ主れ要誌徐 も雑まいにまえか はさ重雑はす る宇宙のほか に多数併存す の れこ史え作 る、次元を異 士触る歴かる にした宇宙の こと。「発 雑少視して 狂した宇宙』 L.L も無さ得 ゞ。 ぐ ) でを力もを パルサー【 pulsar 】自転し、 規則正しい周期て電波の。ハ ~ 不講存メえ読 ルスを発している中性子星。 ののアかの マイに 「竜の卵』 回誌にい パルスーム【 Barsoom 】・ 前雑特い多 てとれ パローズが創造した火 星の別名。 る現象。 ハルマケドン【 armageddon 】 行によって引き起こされるテラ【 terra 】土地を意味する 聖書に書かれた、神と悪魔 因果律の混乱のこと。 ラテン語。宇宙を舞台にし の最後の戦いのこと。 co 太陽風太陽から流れ出して たて地球をさす場合に ては、人類を破滅させる最 いる、イオン化した水素や使われることが多い 終戦争を意味する。 ヘリウムて構成された気体ニュー・ウェーヴ【 newwave 】ヒューマノイド【 humanoid 】 の超音速流。「太陽から 一九六〇年代イギリスて、 地球人類の姿に似た異星人 の風」 ニュー・ワールズ誌を中心 やロポットをさす場合に使 超新星スー ・ノヴァ。 にまきおこった r-.O の新し われる言葉。 恒星の進化の最終段階て爆 ヒロイック・ファンタジイ 発的にエネルギーを放出す スペース【 hyper ・ 【 heroic fantasy 】西洋型 0 0 SF 大会行ってみた ? S F ファンというものは、どうも群れ たがる傾向があるようです。そしてまた 群れると、ところかまわず S F の話で盛 り上がるというのが、その実態のように 思われます。 でした。 これを大がかりにしたものが、 S F 大 内容はここ数年定着しており、メイン 会というわけで、はやい話が S F ファン ホール企画を中心にさまざまな分科会か のお祭りと考えていただければいいでし並行して行なわれ、夜は合宿というかた ちが主流です。 コン」と愛称がつきま 大会には「 星雲賞発表やコスチューム・ショーな すが、これは、、どこそこで行なわれるコ どの恒例企画に加えて、思いつくかぎり ンペンション " の意味で、「地名十コン」の企画がつめこまれており、 S F ファン となっておるわけです。今年の日本 S F なら一度くらい行ってみて損にはならな 大会は新潟で開催されたので「ガタコン」 いでしよう。
意味か ? : ・ ) 。しかし、誤字・誤表記のることがはっきりしている ) 。 「器管」・ 問題は、今年は全般にレベルが高く、最悪通常は、最終章で、それまでの伏線が収「閃光が、回路内の電子のような素早さで のこの作品でも、この数年の平均よりは良東 ( そして新たな発展を暗示 ) してくれる走りまわっている」 : : : 光の方が電子より 速い筈だが ? 好であると言える。これまで毎年、うるさのだが、この作品では、それが無い。 いぐらい誤字・誤表記の問題を取り上げて何を言おうとしているのか、分からなく統一場理論で ( ? ) 竜飛 ( ワープ ? ) す ることが出来る竜を捕らえるのに、 なるのだ。 きたが、ここまでくればもう何も云わなく トンカ学で飛ぶ宇宙艇で爆薬を仕掛けたり ③極徴。 とも大丈夫であろう。 この作品の文章の一つの特色は、故意か④極微。というよりも、松谷みよこ氏の名銛を撃 0 たりするのは、どうも非科学的す 自然か、古風な単語が並んであることであ作『龍の子太郎』 ( それにやはり氏の名作ぎるのではないか ? 舞台は太陽系から二 る。「計算機」「旅館街」「キ、ービー人『ふたりのイーダ』の雰囲気を加えたも八光年先の星だから、そこへ移民するだけ でも、相当な科学文明をもった人類である 形」「懐中時計」「盥」「電話」「田舎町の ) を連想する。 ⑤性が無いので、科学的間違いを指摘筈だが : の床屋」など : ・ ただし、小説家になるポテンシャルは感するのは無意味かもしれないが、純ファン竜の身体にミ = ・プラックホールやモ / タジーなら、かえって言わない方が良い妙ポールがどうして存在しうるのか ? とく じられる。それだけの筆力はあると思う。 ミニ・・フラックホールを身体に蓄える な表現が多いので、あえて指摘しておきた ②なかほどで退屈してくるが、とにかく、 ような超能力生命が、なぜ原始的な銛など ところい。 終わりちかくまでは、破綻はない。 が、最終場面で、突然「無間地獄」が出て「統一場理論で飛んでいる」とはどういうで捕まってしまうのか ? 銛をつかうよう な原始的な人たちが、どうやってミニ・・フ きて、その所で、それまでの竜の役割がまーま , ラックホールを採取・処理できるのか ? ったく希薄になってしまっている。 ( モノボールなら原始人にも扱えるだろう つまり、鱗を持った主人公は一見竜の子 が・フラックホールはとうてい無理だと思 供か生まれかわりか化身のように思えるの だが、終わりまで読んで振り返ると、じっ 宇宙空間なのに、完全な上下関係があ は、竜と主人公の接点は「竜飛」に巻き込「 る。「上を飛ぶ」「投下する」「裏返る」 という個所だけで、よほど深読 まれた など、この作者には宇宙というものの本質 みしないかぎり、竜は竜、主人公は主人公 がまったく分かっていないのではないか ? でクローズドされた存在でしかないのだ なぜ小型の短艇などで竜狩りに行くの ( あとで述べる『龍の子太郎』において か ? 竜よりも大きな宇宙船などいくらで は、竜と鱗をもっ太郎の関係は母と子であ