たのだが、人々のクレアポャンス能力が上達しはじめると用をなさ大切な友人なのだ。他の友人はみな、信之のもとを去 0 てい「た。 なくなってしま 0 た。衣服の装飾性は意味がなくなり、夏を迎えた彼とっき合 0 ていても得るものはない、そう考えてのことだろう。 信之は脳天気な男だった。 が最先端の流行となった。もちろん夏が去れば衣服 日本ではヌード が、少なくとも現実を直視する能力はあるし、そうそうのんきで も戻ってくるのだろうが、おそらくはきわめて没個性的な、空中で はいられないことを判断することもできた。 の行動のしやすさだけを求めたものになるだろう。 ( おれはいわゆる、クズなんだな ) 信之は思った。 装飾性といえば、ガラス建築も少なくなった。事実、建設中のい ″そんなことないよ ! ″須見の思考が微弱ながら入ってくる。最後 くつかの高層ビルはのつべらぼうだ。ショーウインドも減少しつつ にかかった型は、まだ完全に治りきっていない。 ある。 肉眼で見た街は、ひたすら殺風景だ。いや、裸体の男女が飛びゅ信之は須見を睨んだ。「またおれの心を読んだな ! 」 : 。だけどおまえ、これくらいのことには慣れて 「あ : : : ごめん : くそのながめは、殺風景を通りこしてシ = ールレアリスムの絵画の おかないと、これからの社会には適応できないぜ。プライ・ハシーは ようだ。 ないに等しいんだ」 だが、空気は旨くなった。排気ガスの発生源はすべて姿を消した のだ。週末に車を駆 0 て海へ行 0 ていた若者たちは、身体の周囲に信之は苦々しげな表情にな 0 て目をそらした。「わか「てるさ : 。わかってるけど、おれは : : : おれはクズなんだ ! もう人の役 空気の膜を作って超音速で太平洋を横断することに熱をあげてい る。力のあるものは地球を飛び出して月までも行く。人々は宇宙へに立っことなんてできやしないんだ ! 」 「そんなことないったら。まわりを見てみろよ、超能力にたよるば も目を向け始めたのだ。先日も、人類初の恒久宇宙ステーションが 人力で打ち上げられたばかりだ。の予定はすべて、十年づかりで筋肉を使わなくな 0 ちま 0 たもんだから、どいつもこいつも ブョブョ太りやがって。おれだって、おまえとっき合ってるから気 っ繰り上げられた。 を付けてるけど、それでも十キロ以上太っちまった。おまえの鍛え しかし。 信之の足どりは重か 0 た。彼は道を歩いていた。 0 ンクリートの上げられた身体は、うーん、なんつうか、そう、美しいよ ! 」 、よ。ウェイト・トレーニングを続けてるのはただの 「気休めはいし 向こう側にあるショーウインドも見られなかった。友人の考えてい 意地なんだ。なんの役にも立ちゃしない : ることが読めなかった。 「そんなに気を落とすなって」須見は信之の肩に手を置いた。「そ 彼の超能力病は治癒してしまったのだ。 うだ。フランスだっけな、超能力病の治った人たちだけの村を作ろ 「ほんっとに運が悪いよ」 うって動きがあるんだってさ。日本にだって何人もいるんだから : 同情的な須見の言葉も、どこか小馬鹿にしているように感じる。 だが、須見のことは責められなかった。彼は、たったひとり残った 7 7
( ただひとつの例外は避妊器具のメーカーだった。サイコキネシス サイコキネシスによる輸送方法の確立により航空界がいかに大きな 打撃を受けているかを訴えたあと、先日、月まで行って帰ってきたを使った百パーセント確実な避妊法は、人類の出生率を減少させる ある天文学者の例をあげ、輸送手段の進歩は即ち科学の進歩であことすら可能にしてしまっていたのだ ) 。 だが、彼らは今、単なる敗残者にすぎなかった。もともと身軽な 、来たるべき超能力社会はその存在自体が科学への冒濱であり、 中小企業は、早々に超能力産業に転向して着実に成長しているのに かならず衰退するであろうと述べた。 比べ、大企業はその大きさゆえに身動きがとれなくなってしまった 隣の某自動車メーカーの役員が賛同の意を表した。 ( ま「たく男って生き物は ) とミス・タムラは、心を慎重にロックのだ。世の中の流れを思うがままに作り出していた彼らは、初めて しながら考えていた。 ( そんなことは、わざわざいわれなくてもわ世の中から急転回を要求されて慌てふためいていた。 、、ス・タムラが物思いにふけっている間に、会議は超能力病の責 かっているわ。いちいち現状報告をしてからではないと本題に入れ ない無能者ども ! 物ごとを解決する能力はないくせに、会議を長任の所在についての話へと脱線していた。 「日本に落ちた隕石が原因だというじゃないか。宇宙細菌の侵入を びかせることだけは得意なんだから ) : ええと : : こういう責任は誰がとるんだ ? 」 、、ス・マリア・タムラは世界的に著名な大超能力者だった。以防げなかった : 前、超能力者ばかりを集めた秘密ス・ ( イ組織に所属していた頃に知「ちょっと待ってくれ、落下地点には細菌研究所があったというじ り合って結婚した。やはり超能力者の夫を十数年前に事故で失ってやないか。遺伝子操作の結果によるものだとしたら、賠償責任は日 以来、未亡人で通している。最愛の夫と死別した彼女は組織を抜本政府にある」 け、世界中に埋もれていた超能力者たちを日の当たる場所に引き出「馬鹿な ! あそこは純粋に平和目的で作られた研究施設でーー」 し、国際超能力者擁護団体を設立、マスコミに売り出して着々と力「わかるものか。日本が細菌兵器を使って、また戦争をおつばじめ をつけた。 る気じゃなかったと誰がいえるんだ」 しかし、超能力病がそのすべてを打ちくだいた。超能力を売り物「そんなことより、アメリカがをソ連向けなんかじゃなく、 にした商売はできなくなったのだ。 宇宙侵略を対象にしてだなーー」 超能力者たちは途方に暮れた。 「くだらん。宇宙細菌がこうもたやすく人体に侵入できるはずがな このウイルスは地球上のものだ」 ミス・タムラは、超能力病によって打撃を受けた人々が先天的超 能力者に限らないことに目をつけ、今では政界、財界にまで及ぶそ「なにをいうか ! 生命は彗星に乗ってきたという学説がまじめに の発言力を使って、この被害者会議を召集したのだ。会議には、知取り上げられる時代だそ。第一、地球上には人の精神に働きかける る人が見たら驚いて腰を抜かすくらいの大物が、ずらりと顔をそろウイルスなどーー」 「存在しないといいきれるのか ! 」 えていた。ただし、それは交通、情報関係に職種が限られていた。 5 7
超能力を制禦できなくなった人々は、縦横無尽に飛びまわり、あ に膨らむのを見て、自分の目を疑った。 る者は地表に激突し、ある者は他の患者と衝突し合って命を落とし 風船はどんどん膨張し、そして、派手な音をたてて割れた。 た。そして、多くの人々は地球の重力を振り切り、無限の空間へ飛 「なに卩」 目の前でビルがはじけたのだ。信之は慌てて両手で頭を抱えて道び出し、二度と帰ることはなか 0 た。 こうして、地球上をわがもの顏に闊歩していたホモ・サビエンス 路にうずくまり、全身を緊張させた。 飛び散るビルの破片が、地面をゆさぶるほどの大きな音をたてての姿は消え去 0 た。 後には、それがかって存在したことを示す瓦礫の山が、ただただ 落下する。 無表情に続いているだけだった。 信之はビルからかなり離れていたので、大きな破片は届かず、 さなものも、鋼のような筋肉にはじき飛ばされてしまう。 ェビローグ 街にふたたび静寂が戻ると、信之はおそるおそる立ち上がり、病 院を見た。ビルの中ほどから上は、木端徴塵に吹き飛んでいて、鉄 骨さえもほとんど見えなかった。 瓦礫の山の下から、立ち上がった人々がいた。 そして、ビルの上半分があったあたりに、ひとりの人間が浮いて超能力病に感染しなかった超能力者たちと、強靱な精神力で病気 いるのを、信之は確認した。 に打ち勝った人々だ。複雑な現代社会のストレスに耐え、超能力病 ( とにかく行ってみよう。怪我人がいるかも知れない ) 患者からの差別、迫害を受けてもくじけなかった、真に強い人々だ 信之がビルに向かって歩き出したそのとき、すぐわきに何かが落った。 ( ングリー精神のボクサーがいた。ヒマラヤ山中で修業に励むョ 下した。白い布に包まれたそれを手に取った信之は、「うわっ」と ガの行者たちがいた。上司のいびりに耐え続けた O* や、忍耐強く 叫んで放り投げた。 それは、人間の腕だった。 子供たちの相手をしてきた幼稚園の先生もいた。 人々の中には、あのウェイト・トレーニング少年・篠田信之の姿 超能力病の末期症状は、その病気が広まるのと同じくらいの速さも見えた。彼の顔は、動乱を切り抜けてきた自信に満ちていた。 人類は新しい時代を迎えたのだ。 で、全世界に現われた。 ミス・マリア・タムラが先頭に立った。一 テレバシーの絶叫がこだまする中、実質的に盲目となった人々〕 人々の内には、真の超能力が芽生え始めていた。 が、超音速で飛び交う。 その衝撃波によって、家々は薙ぎ倒され、山肌はえぐり取られた。 人類は、その軟弱な文化基盤を、切り捨てることに成功したのだ。 高層ビルはひしやげ、折れた。街並は燃え上がった。 8
「はあ ? 」 「な、なんですか ? 」 「ちょうどあんたが寝込んどる頃から話題になっとったんだが : 「おれにもうっしてくれよ、その o 型 : : : 」 テレビ見ちよらんだのか ? 」 「え、ああ、テレビはひと月ほど前から故障してまして : ・ : ・」 4 被害者たち 「じゃあ説明してやる。超能力病は、発病後高熱を出して三日ほ どで、そのあと三つの型に応じた症状ちゅうか、いわゆる超能力が どこからともなく現れた奇病ーーー伝染性ウイルス疾患は、 発現する。型はサイコキネシス、型はテレバシーで、あんたの またたく間に全世界に拡がった。そのスピードは不自然なほどであ かかっとる O 型はクレアポャンスとなっちよる」 り、実際に不自然だった。つまり、人為的にウイルスが伝播された 「クレ : ・ : なんですって ? 」 ということだ。人々の内には潜在的な超能力願望があり、折からの 「クレアポャンス。透視能力だ」そして、信じられないとい「た表オカルト・ムーヴメントがそれを煽「ていたところへの発生であ 情の今野を見てからつけ足した。「ちなみにおれは今、ちゃんと 月る。関心は必然的に「超能力病」へと向けられた。 を着て、頭から毛布をかぶっちよる。そう信じれば見えるはずぞ」 良心的な警告は無視され、煽動的な情報が入り乱れた。 今野は目を凝らし、そして「あっ」と声をあげた。 かくして超能力病は、大多数の人類に喜んで迎え入れられたので 男の身体をぼんやりと灰色の影が覆いつくし、次の瞬間にはすつある。 ぼりと毛布にくるまったみすぼらしい男が現れたのだ。 しかし、一方では現代社会の崩壊を招いていることも確かではあ 毛布の中の男はいった。「しかし、 o 型は自分で意識せんと透視った : でけんはず・ : : 。、きなり世界中が裸に見えたっちゅうことはあん た、まじめな顔しとってもかなりの : : : 」 、、ス・マリア・タムラはいらだたしげに爪を噛んでいた。 「ち、ちがいますよ ! 」今野は慌てて否定した。「実はぼく、大学円形に並べられたテー・フルの向こう側では、ひとりの男が立ち上 で考古人類学を研究してまして、人間の本来あるべき結婚形態は雑がって発言していた。男は電信電話会社の重役で、テレバシーの全 婚だと、それを妨げているのは衣服の存在に他ならないという仮説国的な普及の結果ほとんどの電話回線が使用されなくなり、クレア をもとにですね : : : 」 ポャンスとの組み合わせによる「地球貫通通信方式」の発見によっ 男が下品な笑い声をあげたので、今野のしどろもどろのいいわけて衛星通信も、その半分の回線が未使用の状態にあると述べた上 は打ち切られた。 で、このままでは主観的通信にその多くを頼っている電々業は現在 「ま、男は誰でもスケベっちゅうことや。それよりな、兄さん」男の十分の一に縮少せざるを得なくなるだろうといった。 はニャニヤと笑いかけた。 続いて立ち上がったのは、ある大手航空会社の社長だった。彼は 4 7
強要した。 ″お黙りリ 、、ス・タムラは、業を煮やして強烈なテレ・ ( シーで怒鳴 0 た。生「えー、き、きのう、型ウイルスの純粋培養に成功しました。、祐 まれつきの超能力者である彼女のテレ・ ( シーは、巷にあふれる即席 O 型もまもなくです。これで、ワクチンの製造が可能になり : : : 」 ミス・タムラが立ち上がった。「すばらしいわ ! すぐにワクチ エス・ハーのものとは格がちがう。老齢の出席者たちの幾人かは心臓 発作でかつぎ出された。 ンの大量生産。フラントをつくらせましよう。いつごろから生産が可 騒ぎがおさまったあと、彼女はロを開いた。「くだらない現状報能かしら ? 」 告や、責任所在の議論なんかたくさんだわ。今のわれわれに必要な「あ、いや、その : : : だめなのです : : : 」 のは、このどうにもならない現状を打破する良い解決案をひねり出「だめ ? なぜよ」 ドクター 、、ス・タムラは、藤川の意識の中に強引に割り込んで解答を引き 十こ」とよ。 ・フジカワ、報告があると聞きましたが ? 」 指名された藤川博士は、頭のはげあがったさえない男だった。彼ずり出した。 そして、へなへなと座り込んだ。一 はのろのろと立ち上がると口を開いた。「えー この伝染性 ″ワクチンを打ちたがる者など、いるわけないじゃないか、この間 ウイルス疾患には三つの型があり、まずーー」 抜け〃藤川は考えていた。 「必要なことだけ話しなさい ! 」ミス・タムラの叱咤がとぶ。内 藤川は蒼くなった。額に浮いた汗をぬぐうため、無意識にサイコ キネシスを使って、胸のポケットからハンカチを取り出した。 5 迫害 ″おやめ ! いきなりハンカチが白熱を発して燃え上がった。ミス・タムラの 日本の夏は、裸に限る。 得意技、念カ放火である。 篠田信之には、少なくともそう考えるくらいの余裕はあった。 彼女は、一般人が超能力を使うのを見ることを極端に嫌ってい 「おまえも運が悪いよな」隣を行くのは友人の須見だ。「日頃の鍛 た。それは今までの優等感情を損なうだけでなく、劣等感にすりか練が裏目に出ちまうんだから」 えることでもあるからだ。先天的な超能力者はどういうわけか、す「ああ : : : 」信之の声には失望の色がありありと表われていた。 べての型の超能力病に対して免疫だった。だから、テレ・ハシーやサ 力なく歩きながら街をゆく信之の目には、異様なほど変わりはて イコキネシスはあっても、クレアポャンスのない彼女は、患者たちた世界がうつる。 から見ればはなはだ不完全な存在なのである。 路上にはほとんど誰もいない。空中を軽やかに飛ぶ人々は、誰ひ 藤川博士の頭皮は赤くただれ、わずかな髪の毛の焦げる臭いがあとり衣服を身につけていなかった。 たりに漂った。それでもミス・タムラは、彼に報告を続けることを超能力病の発生当時には、鉛を織り込んだ下着なども売り出され
「ね ! そうでしよ。じゃ、決まったわ、遊ぼ ! 」 信之は顔をあげた。 「えっ ? 」 周囲にはすでに、人影がなくなっていた。 少女はいきなり信之の手を取ると、飛び上がった。 ( これは : : : 淘汰 : : : 自然淘汰ではないのか ? 超能力病にかかり だが、信之が飛べるはずもなく、少女の手を引き戻す形となる。 やすい体質の個体だけが繁栄し、そうでない個体は子孫すら残せな 「やんつ。もう、ちゃんとついてきてよ ! まさか、型にもかか い。これが淘汰でなくてなんなのだ ) ってないなんていうんじゃない あっ」少女は、その可能性に気 遺伝子を運んでまわるレトロウイルス。ラマルクの用不用説 の復活をもくろむ学者たち。分子駆動。変わるべくして変わるー 付いた。「まさか、あなた : : : 0 型なんじゃないでしようね ? 」 。進化論の講義で聞いた言葉の数々が、めまぐるしく、そして無 0 型とは「ゼロ型」の意であり、超能力病のどの型も持っていな 表情に信之の脳裏を横切ってゆく。 い人々のことを指す蔑称だ。差別用語といってもいい。 ( これは、人類の進化なのか ? ウイルスを得て、新しい一 少女の声に、街を行く人々も振り返った。 歩を人類は踏み出そうとしているのか ? たった一種のウイルス 信之は蒼くなって周囲を見まわした。 そして、おれは、進化の波に乗りそこねた、落ちこ・ほれに 人々は、一様におびえたような表情になって、信之から遠ざかつで てゆく。 0 型はうつるー、、・この墫はこれほどまでに浸透していすぎないのか ? ) 信之は道路の真ん中に座り込んで、少女がその向こう側に姿を消 るのだろうか ? 少女はまるで汚いものにでも触れたかのように、すばやく手を離した大学病院のビルを、ぼんやりと眺めていた。 っこ 0 すと、 。あた 「まさか : : : 街中に 0 型がいるなんて : : : そんなのって : 6 末期症状 し、もう : : : 」 その声は涙ぐんでいた。 ″先生、こちらです ! 信之は無理に微笑んでみせた。「 O 型なんていい方はないだろ先生と呼ばれた白衣の男は、キョロキョロしながら、その男のあ う。せめて、超能力に不自由な人、とか : : : 」少女に手を伸ばす。とをついてゆく。 「いや ! 触らないで ! 」 ″こちらといったって、ここは精神科じゃないかね″ 少女は飛びのくように数メートル浮き上がると、くるりとうしろ ″ええ、いい部屋がないんです。ここには超能力で暴れる患者を隔 を向いて飛び去った。 離するための、厚さ五十センチの鉛で囲まれた部屋があるんですよ″ このままじゃ ( そんな : : : 女の子にももてなくなるなんて : ″そんなにひどいのか ? ″「先生」は尋ねた。 あ、結婚もできなくて子供もっくれなくて : : : あ ! ) ″ひどいなんてものじゃありませんよ。すでにその部屋は用をなさ 9 7
ロロ石原博士の SF 研究室ロロ . 隣のお姉さんタイプ ハート・研サクラ . ほっとした笑顔 ハード研 . ・ SF 以外の ことを全て とりしきって くれる自誘 先生 写っていない がハード研総 務の斉京君 . が大学院に残ってくれたので、あるた。 ( そういう前半の場面の科学性が従前の n 意味では強力と一一一一口えないこともない 映画とは一線を画していたので、われわ ラ士 ( ちなみにこの坂本君、大学院は無れはあの映画に感激し、その後にくる人間 原理じゃないかという導もあ「たのだと = ンビ = ータという未来的問題、人間と 宇宙の関係を示す幻想的なシーンに、素直 るカノ ード研の雄・須賀隆君にちょ っと教えてもらったら、たちまち成に没人し、感動することが出来たのだ ) し績向上、悠々と合格して、他の先生『 2001 夜物語』の中でも冒頭の章はも つを驚かせた。やつばりハ ード研は妻っとも科学的誤りの少ない部分だが、それ でも、一〇〇〇万年前の生物と六〇〇〇万 ロい ) 年前の生物と香山滋にしか出てこないよう て石原博士はもともと漫画が好きな生物とがハチャハチャに入り乱れるとい 業で、大学二年のころまでは漫画家にう凄い場面があって、あの有名な棒をぶん となる夢を捨てきれないでいたほどだ投げると宇宙船に変わるシーンに続く。 出現した宇宙船はアトラスだが、これま 、刀 ハードファンの一部に、 や 強烈なマンガ批判があることにた凄いリ アトラスでチンパンジーを打ち上げたと っいては、ちょっと疑問に思ってい 一研たのだが、例の『 2001 夜物語』 いうのも首を傾げるが、それはまあ、ここ のを見直してみて、その意見ももっとに書かれている年代そのものが歴史と違っ ているので、架空のものとして認めるとし 昨もだと思うようになった。 ても、あの強力な推進力で有名なアトラス とにかく凄いのだ・ 真まずカ・ ( ー画だが、これは加速のの・フースターを、ロケット全体が軌道にの 向きが完全に逆であり、これではったあとで切り離し、しかも、いったん噴 「宇宙特攻隊」になってしまう。射を中止していたサステーナが、・フースタ 『二〇〇一年宇宙の旅』において 1 切り離しの後、改めて火を噴き始めると いう、奇想天外な推進方法を使っている。 は、これに似た場面では、シャトル は主エンジンを完全に切って、しずこれそまさしく、 『超能力、ニ、ートンカ学破りリ』 しずとステーションに接近してい 203
ハイン・フスはどことなく居心地の悪そうなようすで、「殿のおとができんのです」 ファイド卿は陰気な目でハイン・フスを見すえた。ハイン・フス 3 心に驚きが見える。やる気のないやっ、無責任なやつだと考えてお 2 いでなのでしよう。そうではありません。〈先人〉が殿を打ち破っは例の深く轟くような笑い声をあげ、「こんな話をして、殿をごま かそうとしていると思っておいでですな ? そうではありません。 た以上、われわれとて憂き目を見るのは同じです」 「当然だ」とそっけなくファイド卿。「そなたたちも飢え死にするこれは殿を啓発する下準備ですわい」 彼は卿の前にもどってくると、ひとつうめいて巨体を椅子に沈め ことになるのだ」 「それでも、咒法師は殿のお役にはたてんのです」ハイン・フスはさせた。「それでは、慣れぬことながら、ことの詳細をお話ししま しようか。その前に、われわれ咒法師にできることとできないこと 椅子から巨体を押しあげると、ドアに向かいかけた。 「すわれ」とファイド卿。「この件を掘り下げて話さねばならん」をご理解いただかねばなりますまい ハイン・フスはふりかえり、水晶のように澄んだ柔和な目でこち だいいちに、古代の魔法使いとちがって、われわれは現実的な人 らを見た。その目がファイド卿の視線と会った。ハイン・フスは重間であるということです。当然、われわれと彼らの力にはちがいが 重しくため息をついた。「どうやらわが咒法の戒律を無視し、生涯あります。最高の咒法師とは、強力なテレ・ ( シー能力と、圧倒的な 咒力、同胞である人間への深い知識を合わせ持っており、かつ人の の習慣を破らねばならんようですな。ご説明するとしましよう」 彼は巨体を壁の前に持っていくと、銃架の携帯兵器をなでさす行ない、動機、欲望、恐怖などを知りつくしている者でなければな りません。そして、それらをもっとも端的に現わすシンポルを理解 り、初代ファイドの肖像にじっと見入った。「古代の奇跡なす者た ちーー残念ながら、われわれには彼らの魔法が使えません ! このしていなければなりません。咒法の主体は骨折り仕事ですーー。それ ファイド城にもひけをとらないほは危険と困難をともなう実際的な作業でありーー。敵を混乱に陥れる 宇宙船の巨体をごらんなさいー さいに用いる手順を除けば、神秘性などはひとかけらもありませ とだ」 フスはテー・フルの上に視線を移し、大燭台を二、三インチにどテん」 ハイン・フスはファイド卿を見やり、やはり陰気な視線と出くわ レポートさせた。「これを動かすよりも遙かに少ない労力で、彼ら はこの宇宙船をとてつもない速さで動かすことができましたーーー彼した。「ハッハア ! わしはまだなんにも肝心なことは話しており ら自身、仮想的で不合理だと承知していた概念やカを用いて。むろませんよ。なぜ〈先人〉を混乱させられないかについては、まだま んのこと、われわれもそれ以来進歩しています。われわれはもはやだたんと説明することがあります。ご辛抱を」 神秘に頼ることも、不可解な建築物を建てることも、非人間的な荒「つづけろ」とファイド卿。 ぶる力を用いることもありません。われわれは合理的かっ現実的で「ではお聞き願いましよう。わしが人に咒いをかけるときはどうす す , ー , ーそれでいながら、われわれには古代の魔法使いの力を得るこるか ? まず、テレバシーによって相手の心に入りこみます。働き
ゼがなおった人に不思議な能力が身につくという現象。これは何かの前兆か ? 妙な選別ン い多田 1 正司 4 / 獪 67 つ 0
SØNNER—-• 黒い痕跡を追え ! 物記 セルゲイ・バヴロフ C 挈 2 ″ , 2 囲 この作品は「海外事情」で触れた、 が頻々と現れるようになった。原因不明の救助隊の隊長ノートンのようであり、変装 、早八十五年度 ( ア = リータ賞 ) 受賞作の第一まま、異常の種類によって彼らは地球の各するか化粧をしているらしいことがわか る。 部 ( 原題 ) 、『〈月の虹〉号』。 地に隔離されている。 冥王星の第四衛星オペロンで地質調査に だが、彼はオペロンでの任務を完了した ・フランクは暗渠を抜けた。だが、さ従事していた学者たちの体に変調が起こ後、他の三名の優秀な隊員とともに、任期 見 まざまな危険を潜り抜けて前進をつづけり、命に別状はないものの体が蛸のように満了前に退職してしまっていることがわか る。古代の城壁に似た砲塔から銃撃された ぐにやぐにやになってしまう異常な事件った。彼らになんら異常が認められなかっ り、クモの巣のような奇妙な生物に襲われが、ことの起こりであった。 たので、あっさりと退職を認められてい たりしながらも無事に危機を脱して、もやところが、捜査部の調査が進むにつれた。だが、その後各地に散った彼らに異常 に包まれた貯水池に行き着く。水面のはるて、異変は救援にむかった宇宙船〈月のが認められるようになる。いわゆる〈黒い か高いところに上下一一本の鎖 痕跡〉現象がそれだ。だが、ノートンだけ が伸びているが、対岸はもや はまったく正常だった。謎を解く鍵は彼に あった。 につつまれて見えない。だ が、ここを脱出するにはそれ フランクは、ノートンの義弟でもあった を渡るしかないのだ。途中ま ため、事件の解明にあたる〈黒い痕跡〉作 で渡ったところで、鎖が激し 戦の要員として任務にあたることになった く揺れはじめ、水の中に振り のだ。 落とされてしまう。必死で泳 アメリカの片田舎で引退生活を送ってい ごうとするが渦に巻きこま るノートンは、夜な夜な異様な行動をと れ、貯水池の底にある円錐状 る。やはり彼は超能力者だったのだ。それ の排水口に吸いこまれてい 畳を世間に知られないように、ひた隠しにし く、もはや絶対絶命の窮地に もて暮らしていた。だが、己の力をもてあま 立たされた・ : し、夜中に、飼い慣らした野獣を相手に途 気がつくと、そこは・フール ・・一」方もない能力を発揮して、うさばらしをし の縁だった。それはシミュレ ていた。だが、かっては宇宙救助隊の隊長 1 ションによる訓練だったのだ。宇宙安全虹〉号ですでに始まっていたことが判明しであったかれは、ことの重大さを充分認識 保障局国際捜査部の部員は、宇宙空間で遭た。報告によると、船内で計器類のディスしており、己の超能力を観察し、それを克 遇する思いがけない事態に冷静に対処でき・フレイが破壊されるという事件が続発し、 明に日記に記録していた。 るよう、そうした訓練をうけて宇宙の任地幽霊が出没するという噂がたったという。 姉を訪ねるというロ実をもうけて、やっ に送り出されていく。彼は抜群の成績でテ用度装備員が偶然現場を目撃した。犯人はてきたフランクはノートンの留守中に彼の ストに合格し、新たな任務が与えられる。救助隊員の服装をしているのに、まったく書斎で日記を見つけだし、捜査部の推測が だが意外なことに、それは〈黒い痕跡〉と見覚えのない顔であった。しかも止めよう正しかったことを確認する。そしてつい 称される地球上での作戦であった。 とすると、異常な力で反撃されて、逃げらに、帰宅した彼と対決することになった・ : かなり前から、宇宙開発に従事しているれてしまった。傷の手当をした船医と彼は 科学者や宇宙船の乗組員の体に奇妙な現象ひそかに調査を開始した。やがて、犯人は 、二 0 ; 物第第 0 を、