ー・リノ・イ 「おまえと同じことだ、子ども。あのおぞましいイ そこにまたしても、異形のものがいた。上半身しかない、一人の 男であった。 と私は、もともとが術の研鑽をきそいあう、好敵手どうしとして、 いや、下半身は、土の中に、埋めこまれているのだ。そのせい はるかなキタイの都ホータンで知られた存在だったのだが、イー で、まるで、土から人が生えているかのようにみえる。やせた長身リン・イーの心がよくないことがしだいに人々に知られ、人々は私 ー・リン・イーはそれ 少くとも腰から上は長身らしくみえる男で、東方系の顔立ちをのところへ頼みに来るようになったのだ。イ し、なかなか賢そうだが、その目は白くにごっており、そしてそのを心よく思わなかった。そしてねたみと苛立ちとでみたされた彼 両手は両側に大きくひらかれて、手首に奇妙な、ツタのようなものは、ついにおのが魂を暗き神々に売りわたすことを決意し、それに がまきついてそれが彼の両手を上方にいましめているのだった。 よって、これまでとは比較にならぬ強大な力を得ることをえたの それはさっきからの怪物どもにくらべれば、ずいぶんと人間らしだ。むろんそれはイ ー・リン・イー本人の力なのではなく、イー かったとはいえ、それゆえにかえってぞっとするむざんさで少年のリン・イーが暗黒の書により、暗き神々をうごかして、ゆるすべか 目をひいた。少年は息をのみ、立ちつくしてこのようすを見つめてらざるその暗黒の力をかりている、というだけのことにすぎぬが。 ー・リン・イーは私をだまし、宴に招 そして、頃はよしとみて、イ そのとき、岩壁の中の男のロが開いたのである。 待した。イ ー・リン・イーの私へのうらみとにくしみが実はどれほ 「人の気配がする」 どのものであったのか知るす・ヘもなく、またこともあろうに神聖な ヴァレリウスの頭の中に、直接語りかけるような、くぐもった声魔道十二条のちかいをとくに彼が破り、破戒者となっていたことを 、力し十ー ー・リン・イーのにくしみがとけたこ 知るよしもなかった私は、イ 「珍しいことだ。この呪われた洞窟に、怪物と奴隷以外の存在が、 とをよろこび、彼の家へとやってきた。その私を、彼はドールのカ 誰かいるのか ? 」 をかりてとらえ、魔力によって結界に封じこめ、手足をいましめ、 「お、おーーーおいらヴァレリウスっていうんだ」 視力すらうばってしまったのだ。そうしてみじめなすがたにとらわ 恐しさよりも、好奇心の方がつよくなって、ヴァレリウスは叫んれた私を、こうしていつまでもなぶりものにしておいて楽しむため にな」 「あのイー・リン・イーにだまされて、出られなくなっちまったん「へええツ」 だよ。おっさんは、何だい」 ヴァレリウスは感心して叫んだ。 「私か。私はメイ・ファンという魔道師だよ」 そん 「魔道師ってな、みんな、よく喋るんだねえ、オッサン。 「メイ・フツン ? 知らないや。どうしてこんなとこにいるんだ なにべらべら喋れたら、サーガをうたって飯をくえるねえ」 「下らぬことを云っていないで、私に手をかしてくれ、子ども」 5
ですけど ? 」 「そいつあ、苦労ですなあ」 「はあ」 林医師はのんびりとそう言った」 馨はしゃぶられつつある目玉を気味悪そうに見上げながら、もそ 「んなんじゃ、ちょっと悪さしようったってままなりませんでしもそと言った。 う ? 」 「どうも、・ほくが隆子に相応しい男かどうか、真面目に節制してい 「その通りです」 るかどうか、観察してるらしいです。からだとこころを鍛えさせら 「なんなら、ひとりくらいウチにまわしてくれませんか ? ウチのれます。空も飛べなきや変身もできない甲斐性なし甲斐性なし、つ こつつ。・よ 研究にご協力いただけるような、ウ・フで美人で気立てのいい霊ちゃて : : : それはもう、厳しい訓練が時を選ばず否応なく : ・ ん、おられません ? 」 くは平凡な人間なのに。ス。フーン一本だって曲げられるもんかリ」 「ちょっと待ってください」 「ス。フーンって、あんなものが曲げられないひとがいるんですか ? 」 馨は目を瞑ると、・フツ・フッ何やらつぶやきながら、揃えた膝の上 言ったかと思うと、林医師の髪がいっせいに逆立ち始め、やまあ らしのようになった。 でソロ・ハンを弾くようにした。 「えーとね。五代前の父方のお祖母さん、神田小町で有名だったひ「わし、両手で六本、両足で六本、ロに加えて三本、耳の上に乗せ とですが、びらがななら書けます。魚の目玉に目がないんで月々五て二本、合計十七本まではいっぺんに曲げられまっせ。うちの家内 匹分管理費コミ、敷金二、礼金二の二年契約ってとこで、どうでしなそ : : : オーイ」 「そりやちょうどいし うちはよく魚食いますよ。おい、手付け流しのそばで、コトコトと青菜を刻んでいた若妻がにこやかにふ だ」 りかえった。 「ちょっと、あれをやってみせんか、ほれ、あれを」 流しのところにいた若妻が、煮魚の目をひとつ小皿に乗せて来る「またですか ? もう。そんなにめずらしいもんじゃないでしよう」 つぶらな瞳を細めながら、若妻はびゅん、とおタマを振った。 と、それはたちまち宙に浮き、チュ。 ( チュバとしゃぶる音が響い おタマの先から、なにやらキラキラと大量の粉が舞い飛んだかと 思うと、ダイニングの中央に直径一メートルばかりの金色の虹がか 「しかしまた」 っこ 0 と林医師。 、刀守 ~ 「普通守護霊っていうのは、守護する本人に憑くもんでしよう。お「みごとなもんですねえ」 話を伺ってると、なんかおたくのほうにとっ憑いちまってるみたい サラサラこぼれる金の砂時計を両手に受けながら、馨はつくづく ー 02
ずぶ濡れの裸で噴水の下に横たわる男を、全員が輪をつくって見吸い込まれて行ったのだった。 0 おろした。 が、二分もたたないうちに、パジャマの男も、入口からペッと噴 4 水の池めがけて吐きだされた。 いったいなにがあったんだ」 「大丈夫かっ 、と両手をぶんぶん 裸に超合金貞操帯だけの男は、ア 3 くレ パジャマ姿の男が裸の男の体を揺すった。 振りまわして池に頭から落ちた。 「・ : ・ : お、おしたおし : ・ 。負けた」 苦し気な表情で男は空中をつかむような仕種をし、ガクリと気絶男は、 「う、うわてなげ : : : 」 した。 そう呟いて気絶した。 「おいつ、しつかりしろっ ! ちゃんとお勤めは果したのかっ」 パジャマの男が激しく揺すったが、男は笑顔のような表情で気絶男の超合金貞操帯も。 ( カンと割れた。 男はマグナムどころか、デリンジャーだっこ。 したままだった。 そして、男の超合金貞操帯が、バカッと音をたてて割れ、はずれ たのだった。 男の物は矢印のように天を向いていた。 きや、と麻美が顔をそむけた。 男たちは次から次へとスポット・ライトのチュー・フの中を透明宇 二十八人の男たちは両手を握りしめ無言で男の下半身を見おろし 宙船の入口へと吸い込まれ、一、二分でペッペッと噴水の池に吐き だされて行ったのだった。 「そうか。おまえはダメだったのか。なさけない男だ : あれよあれよというまに二十八人めが入口に吸い込まれ、彼は十 地球の男の恥だぜ」 二秒というおそろしい速さで噴水の池の中へ吐きだされた。 パジャマの男が吐き捨てるように呟いた。 そのとき、空中の入口から杉山が顔をだして言った。 裸で気を失った男たちが、噴水のまわりや池の中で呻いていた。 「二番目めの人、どうそん。カスさんが早くしろとイラついてるよ口々に、したてなげ、とか、よりきり、とか妙なことを呟いている。 ん」 ひさしは何度も唾を呑み込み、男たちを見、そして空中の入口を パジャマの男はキッと入口を見あげた。クリント・イ 1 ストウッ交互に見あげた。 ドのようにニヒルな片頬だけの笑みを漏らし、 「の、残るはおれ一人になっちまった : : : 」 「おれが二番だぜ。まかしときな・ : マグナム一発、ズドンとき「だめつ ! ひさしさんは行っちゃだめつ ! 」 めてくるぜ」 麻美がしがみついてきた。 ふつふつふ、と笑いながらスポット・ライトの中に入り、入口に 「わかっている。行かないよ。おれは麻美以外の誰も愛しはしな やっ
むっとしたように、メイ・ファンは云った。 「むろんだ。私は白魔道師だ。イ ー・リン・イーの暴虐を、この上 「おまえは、ここから出たいのだろう。イ ー・リン・イーはドール見のがしておくわけにはゆかぬ」 に魂をささげた魔道師だ。その《暗黒の十二条》には、こうあるの「本当に、手がとけちまったり、しないんだろうな 1 ・リノ だぞ。たとえどのようなささいないけにえといえど、ドールにささ「とけはせん。早くしてくれ。いま私は結界をはってイ げる機会を逃すまじいこと。つまり、せつかく迷いこんだのだか ィーの目をふさいでいるのだ。しかし長い幽閉でその力はもうかな ら、ちょっとした退屈しのぎにでも、十分おまえをなぶりものにしり弱っている。気づこうものなら、イ ー・リン・イーはただちにや た上で、殺すなり、もっと悲惨な運命なりにあわせてやろうというってきて、そしてわれわれを生まれもっかぬすがたにかえてしまう ことだぞ」 ぞ」 「ど、どうして。おいら何もしていないよ。そんな、ひどい 「ひえツ、やるよ、やるよ」 「黒魔道とはそうしたものだからだ。どれ、子ども、ちょっと手を「それは吸血ヅタだ。じかに手でさわると危い。 私の服をひきさい かしてくれ」 て、それで手をつつんでひきぬきなさい」 「て、て、手つて・ : : ・」 「わ、わかったよ」 「私を、ここから出してくれるのだ。そのためにおまえの力が必要ヴァレリウスはロの中でヤーンの名をとなえた。そして思い切っ て、半透明の壁の中にぐいと手をつつこんだ。 「そんな、おいら、何もできないよ : : : 」 巨大などろどろとしたくずの中に手をつつこんだような、妙な手 「何も、できないことをしてくれ、などとはいっておらん」 ごたえに総毛立ちながら、肩までズボリと壁につつこみ、まずメイ メイ・フプンは云った。 ・ファンの黒い道服をひきちぎると両手にまきつけ、吸血ヅタをひ 「この壁に手をつつこみ、このいまいましい吸血ヅタめを、ひきちきはがしにかかった。 ぎってくれ。とりあえずそうしてくれればいい」 ッタはしつかりとメイ・ファンの手首をいましめており、なかな 「ひえツ、 このヘンなプョ・フョの中へ ? イヤだ、イヤだよ、おい かはなそうとはしなかった。 ら」 「このナイフで切りなさい、子ども」 「えい、わからぬことを。これは何も害はない。ここから出たくは ふいに、どこにもなかったはずのナイフがひょいと空中にあらわ ないのか」 れた。大あわてでそれをつかみとって、ツタを叩き切るなりヴァレ 「そ、そりや、出たいけど : : : 」 リウスはとびすさった。ッタが苦しげにつるをよじらせて、こっち ヴァレリウスは喘ぎ、それからなさけなさそうに目をつぶった。 へおそいかかって来ようとしたからだ。 あわてて両手をひきぬいたが、肩から手さきまで、ぶるぶるする 当「そうもたら必ずことら出てくれるのかい」 6
光があった。 にそりましよう。もう一度前屈するとお、今度は、は、。さっきょ りもよく曲がりますねえ : 「どうもねー、これ、光で会話する生物らしいんですわー 一瞬ひるんだ馨だったが、愛の力は偉大であった。 手を翳し、緑色の残像の残るまぶたを、パチパチごまかしながら馨の脇の下から、林医師が首を突き出した。 何とかのぞき見ると、部屋はチカチカいかがわしく七色に点減して「何を言っても聞きやせんのですが、電気を見ると異常に興奮しま してな。天井に飛び上がろうってまー、どたんどたん大騒ぎで。下 の家から文句言われると困るんで、とりあえず、動かせるかぎりの 目が慣れるまでには、しばらくかかった 部屋のほとんどを埋めている巨大なダ・フルペッド の上に、隆子光るもんをありったけ持たせたんだけど、テレビがいっちゃん気に いってるね」 は、手足を縮めてうずくまっていた。 いっしょにペッドに乗っている巨大なテレビを、まるで庇うよう「 : : : わかりました」 ッく に背後に隠し、長さ二メートル近くもあるア ーライトを槍のよ馨はぶるぶる震える拳を、なんとか下ろした。 うに構えて、こっちに向けている。頬を紅潮させ髪をふりみだし、 「おかげさまで、非常に貴重な体験をさせてもらいました。もうけ っこうですから、はやく、その催眠術とやらを解いて、もとに戻し 、 1 ・ : ットライトに照りはえて、なんと 見えそうで見えない胸の谷カセ てやってください」 もあだつぼかったが、瞳は、はっきり、飛んでいた。 「だって、せつかくの実験材料 : : : 」 「・ : : ・なんだってんだ : : : 」 馨は呻いた。 馨が睨むと、医師はふつ、と膨れた。 ーですよ。そーやって、ひとを悪者にすれば。わしが その間テレビは、 「はい、大きくひねってえ、いっちにつ、さんっし、こ 冫いにつ、さんし」せつかく、なんとかこの事態を建設的に明るく捕らえようって、そ う思って言ってるのに ! 」 明るい声で体操番組を流していた。 馨がそのまま立ち尽くしていると、隆子はふつ、と視線をそら「 : : : は : 「だからね。もどんないの。きかないもん。催眠術。言ったろ、こ し、・フラウン管に向き直り、 とばが通じないの。あのひとンとこの光ことばで『手を打っとあな 「おーおきく息を吸ってえ、は、、気持ちよく前屈しましよう。い たは目が覚める』ってどー言えばいいのか、あんた、わかる ? 」 っちつ、さんしつ」 ーライトと「 : : : んな・ : : ・んな無責任な・ : ・ : 」 体操番組に向かって、真剣な顔で両手に抱えたアッパ 「はい、それでは元気良く、しあわせ体操第一「ようーい」 ゼットライトを交互に。ヒカビカさせている。 「両手が床につきますか ? 届かなしカナ。 、、こよあ、はい、大きく後ろ隆子は、揃いのレオタードを着た女性たちがマネキンのようにに 9- 8
ならえっ ! 」 「小さく前へ ゴソゴソ列を縮めて小さく前へならう。 「休めつ ! 」 全員後ろに手を組んで休めの姿勢になった。 一一 = ロう ひさしたちは杉山の言うことをきくしかないのだった。 ことをきかなかったり、逃げようとすると超合金貞操帯が猛烈に締 めあげてくるのだった。ひさしが杉山から奪い取ったコントロール ・ポックスはもはや役に立たなかった。ダイヤルを回しても自分た 「わたしは今とっても燃えているの。一生に一度の発情期がついに ちが痛くなるだけなのだ。杉山は気絶しているのでなにも感じない わたしにもやってきたのだわ」 らしかった。 スボ、ツト・ライトの中、カスは九十センチ Q カツ・フの乳房を下か 「では再び枚長先生じゃなかったカスさんのお話を聞くようにね ら持ちあげるようにして身をくねらせて言った。 ん」 唇を舌でなまめかしく湿し、ジュラクよん、とわけのわからない そのとき、ひさしの背後でジーンズ姿の一人が手をあげた。 ことを呟く おお、とひさしと二十九人の男たちは、すさまじいセクシ 1 さに「陽一君、どしたのん」 杉山が訊く。よく白眼で物が見えるものだ。 、圧倒され、どよめいた。皆、股間を両手で押さえ痛さに表情を歪め ていた。 「気分が悪いんです。ぼく朝礼のときゃなんか、すぐ気分悪くなる 「こらこらつ。列を乱しちゃいかんよん。きちんと三列に並んで並んです」 「しやがんでもいいから、がまんしなさいん。ひ弱な子ねん」 んでん」 杉山が白眼をむいたままえらそうに言い、ポケットからだした笛杉山は白眼の顔をスポット・ライトの中のカスに向けた。 をビリビリ吹いた。どうやら杉山はカスに完全にあやつられている カスはわかったと頷き、ひさしたちに向かって嫣然と徴笑した。 らしい そしてマリリン・モシローのようにセクシーにしゃべりだした。 ひさしたちは噴水の前に朝礼のように三列に並ばされていたのだ「わたしはあなたたちの知らないアターミ星雲のジ = ラク星からや ってきたカスことキャサリンよ。今日はあなたたちから子種を提供 った。麻美もなぜかひさしの右横の先頭についでに並んでいる。 していだこうと、ん十万光年のかなたから、イスカンダルじゃなか 「はいつ。前へーならえっ ! 」 わたしたちのジュラク星で 7 った地球をめざしてやってきたの。 杉山が体育教師のように言った。ーー全員サッと両手をあげて前 3 は、いつのまにか女性しか生まれなくなってしまい、一生に一度の へならった。 さっそくあたしと子づくりをしましよ。時間がないのよ」 一瞬ひさしたちはポカンとした。が、すぐ我にかえり、股間を押 さえて、わあわあそこら中を走りまわったのだった。 麻美はロをへの字にしてカスを睨みつけていた。
「そ、それじゃ・ほっくは、お仕事に戻ろうっと」 額の鉢巻きには角のように二本鉛筆を差し込んでいた。あいつは ひさしたちを見ていた課長と係長に、杉山は投げキッスを送って 八つ墓村かっー から両手をひらひらさせ、自分の席に白鳥の湖のようにツツツッと また、あいつだ、とひさしは思った。 純合金貞操帯がひさしの股間を締めつけてきたのは朝からこれで戻って行った。 課長と係長は椅子からずつこけた。 五回めぐらいだが、そのたびにすぐ近くに杉山がいて、あの暗あい びさしも自分の席につき、横眼で杉山を睨み続けた。 眼付きで、じいいっとひさしを見つめていたのである。 ひさしと視線が合うと杉山は、あわてて仕事をするふりをした。 と、締めつけていた超合金貞操帯が、ふいにゴムのようにゆるん 妙にびくついていた。 おれの超合金貞操帯とそっくりの金属の輪を杉山は額につけてい ひさしはヘなへなと床に座りそうになったが、ぐっとこらえた。 この超合金貞操帯 た。あやしいっ ! 絶対あいつがあやしいっー 暗い顔をしていた杉山が・ ( ッと明るい表情になり、手にしていた ひさしは確信し とあの変態杉山と、絶対なにか関係があるつ , なにかを素早くボケットにしまってから、ひさしの傍ヘッツツッと 爪先だけで歩いてやってきた。こいつは・ハレリーナかっー 「セーキ君。どうしたのん ? 気軽に女子社員なんかに優しくしち やだめだよん。あいつら、すにぐっけあがるんだから」 ししいっと杉山を見た。 ひさしはじ、 「ど、どうしたの ? そんな犯罪者を見るような眼で・ほくを見て「ど、どしたのセッキ君。そんな鬼のような眼をしてつ」 杉山は両手を前にあげて及び腰になり、じりじりと後ずさってい た。声が裏がえっていた。 「杉山さん」 ひさしは狼のように歯をむきだしにして杉山にせまって行く。体 のまわりにメラメラとオーラの炎が燃えていた 「頭の鉢巻きがずれてますよ」 中央に⑩と書かれた真赤な鉢巻きが下にずれていた。そして、鉢あたりには饐えたような異臭が漂「ていた。 巻きの下から幅三センチほどの金属製の黄金色の輪のような物が見ひさしと杉山がいるのは雑居ビルの裏の袋小路だ「た。ー・、・すで にあたりは薄暗くなりはじめていた。 えていたのである。 二人とも会社帰りだった。どちらもきちんとスーツを着ている。 じ、 、つとひさしは杉山の額の黄金色の輪を見つめた。 ひさしは就業時間が終るとすぐ、話があるからと言って杉山を、 , 3 杉山はあわてて鉢巻きを上にあげてそれを隠した。ひどくおどお っ宀 強引に会社近くにある雑居ビルの裏へつれ込んだのだった。 どしていた。 こ 0
ひさしがチラチラ杉山の方を見るのと同様に、杉山もひさしの方あがった。 「ご、ごめんなさいっ ! 」 をチラチラ見ていた。 ひさしと視線が合うと杉山は > サインを送り、チュッチュッと投「あちち、あちちっ ! 」 ひさしはスラックスの裾をつまみガニ股でビョンビョン床をとび げキッスまでしてきた。 まわった。幸い、超合金只操帯のためにひさしにとっても麻美にと 「あ、あの・ハ力が : : : 」 っても一番大切な部分は火傷をまぬがれた。 ひさしは頭を抱えた。 そのとき、女子社員がお茶を運んできた。ーー・ - ・朝と午後三時に十女子社員は ( ンカチをだし、ごめんなさい、ごめんなさいとひさ 人以上いる経理課の社員全員にお茶を運んでくるのである。なかなしのスラックスをパタバタと拭ってくれる。 「どうしようどうしようセッキ君 ! ぼく、やりすぎちゃったん か女子社員も大変だ。 ひさしの机の傍まできたプロックそっくりのザラザラの肌と四角 ! 」 杉山がエイトマンのようにすっとんできて、やはりハンカチをだ い顔をした若い女子社員が、盆から湯気のたっ湯呑を取ってひさし してひさしのスラックスをパタバタ拭った。キティちゃんの絵がプ の机の上に置いてくれようとした。 リントされたビンク色のハンカチで、集中的に股間のみを杉山は拭 女子社員の右腕がひさしの左肩に触れた。 っこ 0 そのとたんだ。 またまた超合金貞操帯が、いきなりぐぐっと 縮まり、ひさしのデリケートな部分を強烈に締めつけてきたではな女子社員と杉山が、ガ = 股で立ったひさしの前に膝まずくように してスラックスを拭っていた。 「あんたはどいてつ。このどじ娘 ! 」 「あぐっ」 杉山は女子社員を肩で押しのけた。女子社員は横にはじきとばさ ひさしはあわてて股間を押さえた。 れて床に尻もちをついた。みるみる泣き顔になって行く。・フロック そのひょうしに女子社員の右腕に肩が強くぶつかった。 に皺が寄って行くような感じだ。 「きゃん ! 」 ひさしはあわてた。 湯呑が女子社員の手をすべった。 「あ、大丈夫だよ。なんともないから。たいして熱くなかったか 湯呑はひさしの股間めがけて落下した。 それに、ぼくが君にぶつかったから悪いんだ」 湯呑はバカンと音をたてて割れ、熱い茶がひさしの股間にかかっ こ 0 女子社員はべったり床に尻をつき、両手を眼尻にあてた。 「ごめんなさい、火傷で変なになっちゃって関さんがお婿さんに行 「どあちちちちいっ ! 」 ひさしは両手でスラックスをつまみ、椅子から二メートルもとびけなくなったら、あたしがめんどうみてあげわ」 、、 0 2
ョフ一 ということも、知らないんじゃないかな」 おれは、、・ / テス老の、不思議に若々しい ・フルーの瞳を見つめ た。知っていた。だから、興味をひかれて、ここまで来たのだ。 「わしは最初、大学から派遣されてここに来た。遺跡調査のために な。調査はあまり実りあるものじゃなかったから、大学は半年で手 を引いた。しかし、わしは帰らなかった。ここが気に入っていた し、大学は気に入っていなかったからな。それに ハデス老は、べっと唾を吐いた。それは、大学教授らしからぬ仕 種たった。 「女房と娘が、向こうの谷間に眠っている。グライダーの事故たっ 老人は、粘土のかけらを投げ捨て、ズボンの尻で両手をはたい 「陳腐だったか ? 」 「確かにね」 おれは、ポケットから煙草を出し、発火シールをひきむしった。 老人が手を出したので、 ッケージごと渡してやる。ハデス老は、 目を細めて煙を吸い込んだ。 「カメラ持ってるかい ? 事件屋さん」 「ハギーに置いてありますよ」 おれは、ちょっと戸惑って答えた。 「記念撮影でもするんですか ? 」 ( デス老は、煙草を投げ捨て、あいまいに首を振った。 「そんなとこだが、・ ( ギーまで戻っては、間に合わんだろう。あれ を見ろ」 老人は、澄み切った青空を指差した。おれは目を細めた。スゾラ
ポッと垂直にでてきて、気絶した杉山にあたった。 うにして走ってくるのだった。 6 「そうか ! あいつらは杉山が夜な夜な忍び込んで超合金貞操帯を杉山はあやつり人形のように白眼むきだしの気絶した状態のま 3 おお、とひさしたちゃ起きあがっ ま、ひょいと立ちあがった。 つけた独身美青年たちかっ ! 」 悲鳴をあげながら、二十九人の独身美青年たちが、たちまちのうた独身美青年たちが後ずさる。 ちにひさしたちのいる噴水の傍まで走ってきて、カつきて次々と倒そして、その直径三メートルのスポット・ライトの中を、頭上の ェイリアン 入口から異星人が、ふわふわと足から降りてきたのであった。 れていった。 ェイリアン パジャマを着ている者、きちんと服を着ている者、風呂にでも入異星人は見えない糸につるされたように気絶したまま立っている っていたのかシャン。フーしながら裸で走ってきた者、毛布を引きず杉山の横に、ふわりと爪先から降り立った。 ってきた者、歯をみがきながら走ってきた者、茶碗と箸を持ったま「おおっ ! 」 ひさしをはじめ二十九人の男たちは、一斉に両眼を D 型にして息 まの者、キリンのぬいぐるみを抱えた者など、様々な状態で男たち つ。よを呑んだ。 は走ってやってきたのだった。みんな股間の超合金貞操帯に引ー られてやってきたのだった。 瞳が金色で、肩よりも長いウェー・フのかかった金髪の超グラマー の異星人は、腿までしかないビンクのスケスケのネグリジェを着て 二十九人の男たちが、ひさしたちの前に倒れてぜいぜい息をつい いたのである。しかも、下は黄金色の金属性のビキニの上下だけだ ていた。 ェイリアン 「んまんま。君たちは・ほくに会いたくて走ってきてくれたのねんった。どう見ても異星人というより、。フレイボーイやペントハウス のグラビアの美女である。 「はじめまして、わたしがジュラク星からやってきたカスことキャ 杉山が胸に手をあててガクガク頷き、涙ぐんだ声をだした。 サリンよ」 ひさしは後頭部に回し蹴りを入れた。 「おまえに会いたくてくるわきゃねーだろっ , この便所のタワシ カスは身をくねらすようにして両手で金髪を後ろからかきあげて セクシーポーズをし、・ハッチン・ハッチン、男たちにウインクをしま くった。 「ぎゃああっ痛いっ ! 痛い痛い痛い頭が痛いっ ! 」 杉山が頭を抱えてのたうちまわった。 ひさしと二十九人の両眼を D 型にした男たちは全員両手を股間に 「す、杉山さん。そんなに強く蹴ったわけじゃ : あてた。胸もワ型にドッキンドッキン打っていた。麻美たけが白け 「ち、ちがうのつ ! 頭の輪がっ ! ぎえええっ ! 」 て見ている。 杉山は体をェビぞりにし、両眼を白眼にして気絶した。と、同時そしてカスは妖しく徴笑しながら言ったのだった。 に、ひさしたちの頭上の入口からスポット・ライトのような光がズ 「さあ、皆さん、なんだか予定より人数がひどく少いようだけど、