どのイメージに注目するか。 ヤモリ 自分自身ーーー 4 へ 先に見た夢 向かいの部屋の女性ーー 向かいの部屋の巨人 君は、君の頭へつっ込んできた鳥に向って鋭く剣を突いた。 数値を決めよ。決めたらⅱへ。 たものが池から出て、君に迫って来る。〔あっ、という間もな く、その「黒くてドロドロしたもの」は、君の足にからみつ く。そして、すごいカで君を池に引き込もうとする。 池の方へひきずられていく君は、必死でその黒いものを剣で 切りつけた。君の脳裏に、ある光景が浮かびあがる。「そう だ、私は、昔こいっと戦って殺されたのだ ! 」恐柿の為に、君 は叫び声を上げるが、もう手遅れだった。何度切りつけても、、 まるで巨大な粘土を切っている様で手応えがない。引っ張るカ は弱まらず、池の中へ引き込まれる瞬間に君は考える。 「あア、また同じ事の繰り返しだ : : : 」 君は剣を振りあげ、まず巨人に突進する。君の剣は巨人の急 所をそれ、脚に突きささった。 君は、自分の中で何か得体の知れないドロドロしたもののイ 巨人はうめき声をあげたものの、大してダメージを受けてい メージが拡大するのを感じる。君の実体は少しずつアメー・ハー ない様だ。怒った巨人は、近くにあった棍棒をつかみ、君の頭 の様にくずれていく。その時、異常に気づいた向かいの部屋の めがけて振りおろしてくる。突きささった剣を引き抜こうとし 女が、ドアを開けて入ってくる。 ていた君は、その一撃をよけられそうもない。 「何とまだ変形術を使えるとは ! しかし愚か者よのう。自分 「殺さないで ! 」という女の叫び声が、君が聞いた最後の音で」 の名も思い出せぬのに、自分に変形術をかけるとは ! 」 一あった。 彼女は残念そうにそう叫んだ。君は、助けを求めようとした 次の瞬間、君の命は・ハラ・ハラの脳みそと共に飛び散ってい が、もうすでに君の声は音にはならなか「た。君の実体はくず」 れてゼリ ーの様なものから液体となり、そして君の意識と共に 霧となってあたりに散っていった。 君は剣を構えて「何か」を待つ。すると、黒くてドロドロし 1 2 1 8 へ へ 暴風雨も疲労もひどくなる一方で、静まる様子はなかった。 君は山道をと・ほとぼと、たよりない足どりで進む。すると、突 7 6
光があった。 にそりましよう。もう一度前屈するとお、今度は、は、。さっきょ りもよく曲がりますねえ : 「どうもねー、これ、光で会話する生物らしいんですわー 一瞬ひるんだ馨だったが、愛の力は偉大であった。 手を翳し、緑色の残像の残るまぶたを、パチパチごまかしながら馨の脇の下から、林医師が首を突き出した。 何とかのぞき見ると、部屋はチカチカいかがわしく七色に点減して「何を言っても聞きやせんのですが、電気を見ると異常に興奮しま してな。天井に飛び上がろうってまー、どたんどたん大騒ぎで。下 の家から文句言われると困るんで、とりあえず、動かせるかぎりの 目が慣れるまでには、しばらくかかった 部屋のほとんどを埋めている巨大なダ・フルペッド の上に、隆子光るもんをありったけ持たせたんだけど、テレビがいっちゃん気に いってるね」 は、手足を縮めてうずくまっていた。 いっしょにペッドに乗っている巨大なテレビを、まるで庇うよう「 : : : わかりました」 ッく に背後に隠し、長さ二メートル近くもあるア ーライトを槍のよ馨はぶるぶる震える拳を、なんとか下ろした。 うに構えて、こっちに向けている。頬を紅潮させ髪をふりみだし、 「おかげさまで、非常に貴重な体験をさせてもらいました。もうけ っこうですから、はやく、その催眠術とやらを解いて、もとに戻し 、 1 ・ : ットライトに照りはえて、なんと 見えそうで見えない胸の谷カセ てやってください」 もあだつぼかったが、瞳は、はっきり、飛んでいた。 「だって、せつかくの実験材料 : : : 」 「・ : : ・なんだってんだ : : : 」 馨は呻いた。 馨が睨むと、医師はふつ、と膨れた。 ーですよ。そーやって、ひとを悪者にすれば。わしが その間テレビは、 「はい、大きくひねってえ、いっちにつ、さんっし、こ 冫いにつ、さんし」せつかく、なんとかこの事態を建設的に明るく捕らえようって、そ う思って言ってるのに ! 」 明るい声で体操番組を流していた。 馨がそのまま立ち尽くしていると、隆子はふつ、と視線をそら「 : : : は : 「だからね。もどんないの。きかないもん。催眠術。言ったろ、こ し、・フラウン管に向き直り、 とばが通じないの。あのひとンとこの光ことばで『手を打っとあな 「おーおきく息を吸ってえ、は、、気持ちよく前屈しましよう。い たは目が覚める』ってどー言えばいいのか、あんた、わかる ? 」 っちつ、さんしつ」 ーライトと「 : : : んな・ : : ・んな無責任な・ : ・ : 」 体操番組に向かって、真剣な顔で両手に抱えたアッパ 「はい、それでは元気良く、しあわせ体操第一「ようーい」 ゼットライトを交互に。ヒカビカさせている。 「両手が床につきますか ? 届かなしカナ。 、、こよあ、はい、大きく後ろ隆子は、揃いのレオタードを着た女性たちがマネキンのようにに 9- 8
トル以上ある変形した風船のような丸い物体だった。 まったのだ。月明りが再び広場を照らした。 ェイリア / 「こ、これがもしかして、異星人の宇宙船っ・ 「す、杉山さんの言っていたことは本当だったのだな : : : 」 ひさしと杉山と麻美は身をのけぞらせて上を見あげている。頭上「へへん。だから言ったでしよ。ぼくは嘘はつかないもん」 の物体が落下してきたら、ひさしたちは虫のように潰れてしまう。 杉山は胸を張る。 「これは、お、お、黄金色の巨大な : : : 」 そのときだった。男の悲鳴のようなものが、遠くから聞こえてく 杉山が指差して言った。 るのにひさしたちは気づいた。 「お尻だわんリ」 四方八方から、男の悲鳴が聞こえてくる。 「ん ? なんだあれは ? 」 ひさしと麻美は・ハタ・ハタと後ろに倒れた。 なるほど杉山の言う通りだった。頭上の宇宙船の形は、とてつも「男性の悲鳴だん。なんだか、こっちへ近づいてくるん」 なく巨大なお尻のような形をしていたのである。 杉山はなぜかうれしそうに言った。 巨人のお尻だけを下から見あげているような感じだった。 ひさしと麻美と杉山は、頭上に浮かぶ人口の下で背中をあわせ て、まわりを見た。 「なんちゅう下品な形の宇宙船だっ ! 」 ひさしは杉山を殴った。 やがて、四方八方から男たちが悲鳴をあげながら、ひさしたちの 「見てひさしさん ! 」 方へすごい勢いで走ってきたのだった。 再び麻美が上を指差した。 まずひとりが公園の木々の下からザ・ハッと出てきて、悲鳴をあげ お尻型宇宙船の、二つのふくらみの谷間のちょうど中央あたり、 ながら走ってきた。両手をぶんぶん振り回している。 ひさしたちのすぐ真上の所に、カメラの絞りが開くように、ぼっ か彼ははだしでパジャマ姿だった。 りと穴が開いたのだ。直径三メートルほどの明るい光の見える入口走るというよりも腰に引きずられているといった感じだった。上 があいたのである。 半身と足が腰に引きずられている。 「お、お尻の穴が開い 「きゃん。あれは町内でも有名な美青年の弘之君だん」 「言うなっ ! 」 杉山は胸に手をあてて両眼をしばたたいた。 ひさしは杉山を殴った。 「あっ。あっちからくるのは三丁目の喜久男君 ! , ああっ、あれは そして驚いたことに、明るい入口だけを残して、宇宙船の姿は滲陽一君だん ! やだん ! 陽一君たら裸だん ! 」 杉山は両眼を掌で隠すふりをして指の間から走ってくる男を見 むように消えてしまったのである。 あっというまに、ぼっかり異次元の入口のように浮かんだ空中のた。 丸い入口だけになってしまった。宇宙船そのものは透明になってし超合金貞操帯をつけた裸の男が、超合金貞操帯に引っぱられるよ 5 3
の認める厳然たる事実だったゞ 〈あなたは〉〈あなたは〉〈あなたは〉 6 7 元金星町は第二宇宙港のすそのに広がった猥雑な町で、スペース 〈自分が〉〈自分が〉〈自分が〉〈自分が〉 2 ・コロニーからの帰還者や異星人、改造人間、人間型機械、霊応 〈愛されていることを〉〈愛されていることを〉〈ことを〉 のつめこまれた場 者、けもの、そのほかありとあらゆるガジェット 〈知っていますか ? 〉〈知っていますか ? 〉 所だった。 そんなこと、知るもんかー 狼少年は燃料切れの車を乗りすてると、よく知っている地下路地 狼少年は唐突に恐怖を越えてしまい、この現実に笑いがこみ上げ に走りこんだ。 てきた。同時に怒りもこみ上げてきた。 狼少年は腰のベルトから—カードを出し、空中車の。ハネルのス そのとき″鳥″も轟音とともに着地した。巨大な足のまわりに砂 ボコリがボワッと舞い上がる。″鳥〃は大またに歩き出す。 リットにすべり込ませた。 なじみの町で、しかも古い町であることが幸いした。カード 〈ハイ。なんでしよう ? 〉 の呈示を求められるような所ではとても逃げきれない。 彼女の声。 狼少年は下へ下へ階段をおりていった。昇降機は彼女の末端神経 「電話回線を : : : 」 〈カードの確認をとりますのでしばらくお待 : : : 愛してるわにつながっている危険性がある。 うす暗い螢光灯が遠い間隔でポツン、ポツンとついている。狼少 ろうすい 狼少年はあわててカードをひっこ抜いた。肩で荒々しく息をつい年は分厚い裸の足でヒタヒタと走った。どこかで漏水しているらし 、濡れた足音だ。長距離走なら得意だ。 これで、誰が自分を愛しているのかがわかった。前々からそうで″鳥″は赤外線カメラと x 線透視カメラで追う物を探した。地下路 はないかと疑っていたが。 地への入り口は入れなかったのでためらわずに破壊した。巨大なフ 空中車と″鳥″はちょうど五十メートルの車間距離を保ちなが ットボールのような胴体をもぐり込ませると、長い首を天井と水平 ら、都市の上空を飛びつづけた。 にのばして走り出した。 やがて空中車の燃料計がを表示したので、仕方なく狼少年はモ 狼少年は自分より大きなものの走る気配を後ろに感じて、。ハニッ トキンセイチョウのいりくんだ路地のまん中に着陸した。とにか クにおちいった。長距離走は得意なはずなのに、突然空気が足りな く、あの巨体が入れないところへうまく逃げ込めばなんとかなると いような気がした。 思った。 とにかく、こんな人のいないところはダメだと感じて、本能的に つかまったらいったいどうなるのか、想像もっかない。 中心街へ向かった。 彼女の気がふれているというのは誰もあえて口にしないが、万人しだいに人影がふえてくる。それにつれてゴチャゴチャした小さ こ 0 わいざっ
こいつら時々 人の心を読むん じゃない力と思・つ ことかあるね 私は道楽で 絵を描いて 、るカ ここへ来ると ししヒント、刀 わくんた それだけじゃあ 妙な気分に なる時があるんだ まるで 彼らがそれを 与えてくれてるそれに よ、つな : 巨大化してるのは ファン・パゴダばかり じゃなく・ : 変な言い方たが その代償として こっちの心の中を のぞかれてるような ュリア ? 11 111- きれい ュリちゃん あのさ 209
がはねた。当たらなかったが、音に驚いてワニは狼少年の尾つぼを 「来るのはわかってたよ」 離した。 丸テー・フルでお茶をすすっていた婆が言った。 「この野郎つ、殺されたいらしいな ! 」 この家に一歩踏み込むと、いきなり自分が巨人になったような気 狼少年は瞬間、ワニの歯の間からスルリ抜け出した。こんな小口 この家 がする。すべての家具が二分の一に縮小されているのだ 径の銃で撃っても、装甲車のようなワニ皮を貫くことはできない。 の主人に合わせて。 狼少年はあともふり返らず走った。 ・ ( シャ・ハシャとはねる汚水が、壁を這うゴキ・フリの群をたたき落、婆は立ち上がっても彼の腰くらいまでしかない。顔はどこか マニンゲン ハネズミに似ているが、確かに年老いたシワクチャの真人間だ。た とす。水に落ちた巨大なゴキ・フリはまるでコウモリのように・ハサ・ だ、目は三十年以上も前から見えず、背丈は小さいのに両手は大男 サと舞う。 狼少年は昔の目印のついたままの ( シゴをの・ほった。毛皮にしみのように節くれだっている。 「のろわれた星のオオカミめが」婆さんは言った、「そこに来客用 こんだ水が、いつまでもしずくとなって垂れた。目印というのは昔 のでかいイスがあるだろ、おすわり : : : 」 クギでひっかいてつけた自分の名まえだった。」 のぼりにのぼりつめて、ついに地上に出た。 狼少年はよくしつけられた大のようにおとなしく腰掛けた。 丸テーゾルの上にはすでになめし皮製の霊応板が置かれていた。 超過密の歓楽街だ。都市の好む夕暮れが近づいて、人出も多い ビショビショの狼少年は人とすれちがうたびにイヤな顔をされ「さあ、なにを視るんだね ? 」 「たのむよ : ・ た。濡れたけもののクセでつい首をゾル・フルふると、わっと人波が : シーラの居場所を・・・・ : 」 崩れた。 「カネは先払いだよ」 狼少年は歩いた。 狼少年は婆さんを睨みつけた。一 婆の家はメイン・ストリー トから少し入った路地の地下室こ た「ないってのかい、まさか ? 」婆さんはわらった、「だいたい、恋 った。こんな地価の高い一等地にどうして百歳をとうに超したア人の居場所も知らないのかね ? 」 さんが住めるかというと、占い師だからである。 「急いでるんだ」 獅子の鼻を押した。 狼少年はできるだけおさえて言った。 しいとも。。でもカネは払ってもらえるんだろう と音をたてて顔「ホッホッホッ : インターフォンと連結した監視カメラがジィーツ ね ? 後払いの場合は先払いの三倍いただくよ」 をこちらに向ける。レンズが焦点を合わせるのを仰ぎ見るご 狼少年は思わず于の間から唸り声をもらした。が、言った。 「入れてよ ! 」 狼少年がカメラに向かって叫ぶと、分厚い木の扉がゆっくりひら「いい。払う」 279
白い羊の群れを蹴ちらしながら、巨大な足をした″鳥″が走って猫少女シーラも叫んだ。 きた。その姿は遠近法を守りながらしだいに大きくなってきた。 「大あたりってのはこのことね ! 彼女、あなたを息子と思い込ん 誰かが追いかけられていた。黒い毛皮をまとった狼少年だった。 でるのよ ! 」 「なんとかしてくれよっ ! 」 「すなおに愛されてあげたら ? 」 6 「どうやって ? 」 ″鳥″は狼少年の尻尾めがけて炎を吐き出した。そして腫れあがっ ストーリ ・メーカーが話をおもしろくするために介入したの た足で踏んづけようとした。 で、″鳥″の足の大きさは倍にふくれあがっていた。 狼少年は飛び上がった。愛されるまえに殺される : 場面もドラゴン・カフェからいきなり大日本盆踊り広場に転換し ていた。 「彼女、ドラマんなかで子どもを失ったでしよ、きっとさびしいの ″鳥″は狼少年を追い、その鳥を猫少女が追っていた。 二人と一羽の登場人物は、盆踊りの輪をズタズタにひき裂きなが シーラの言葉になんとなく納得する。しかし納得はしても、火を ら走りまわった。 吹きレーザーを発射しジェットをふかし、あんな巨大な足をした母 浴衣姿の人々はうちわであおぎながら。 ( タバタと逃げまわった。親など恐くてとても近づけない。 けっこう逃げまどうことを楽しんでいるふうに見える・ーー昔から東日の丸の旗ひるがえる盆踊り広場を蛇行したのち、三つの影は駆 京の住人はいろいろな怪獣に追われているので。なにしろ彼女はけ抜けていった。 v-k 映画のファンなのだ。 液晶テレビ地域に入った。厚さ三センチの板のようなテレビがタ 人々は右往左往して逃げまわる役を演じながら、あの鳥はいった イルのように歩道を覆いつくしている。 いなんの。ハロデイだろうかと考えた。ロードランナーかもしれな ( まって、あなた ! ) ″鳥″は汽笛のように吠えた。 〈あなたは、自分が愛されていることを、知っていますか ? 〉 万単位のスビーカーからキツ。フルちゃんがそう言った。 人々は思った なんだ、ただのキチガイか。つまり彼女本人 ひと ( もうだめだね。新しい女ができたんだ ) 「大きなお世話だっ ! 」 狼少年は負けじと吠えた。 テッキー君はそう答えて背を向けた。 285
のか、おいらは知らないけどーー・それを手に入れたものは、すごい 「じやきくよ。いくらなの ? 」 力をもっことができるんだといって : : : 誰もかれもが、それさえも「安いものだ」 てば、すぐにすごい力をもてるとか、そういうんじゃないだろうけ巨大な顔はにったりと笑った。 どーーでも、もし、それをもって、そうして勉強して、魔道を習え「幾らーー・ ? 」 ば、すごい力をもてるのならーーーおいら、それが欲しい。ロー・ダ「わけはない。 この、ここにあるこの紙に、おまえの名をこう書い ンでなく、おいらが欲しい。もうーー誰からも、森番みたいなやってくれさえすれば、それでよいのだ」 に追っかけまわされて、逃げまわらなくてもよくなって、それでー ヴァレリウスの目が光った。少年は、やせたのらネコのようにぬ 「何とまあ ! 大したちつぼけな小すずめの、ぶさいくなからだにけめない顔つきになった。 ふさわしいちつぼけなねがいであることだ ! 」 「その紙・ー・ー何なの ? 」 ィー・リン・イーは爆笑した。巨大な口がばかりとあいて、さし「大したことではない。何なりと、わしのいうことを、おまえがき わたし半タールもある分厚い、どすぐろい舌がふるえた。 く、という、そういうちょっとした約東にすぎん」 「まあ、 しし」すずめ、おまえはまったくわしを楽しませてくれ「 : ・ るので、わしはおまえにこの暗黒の書を売ってやってもよい。して「わるくない話だろう。おまえはただここに名を書き、そしてこの むろん、ものを買おうというからには、おまえはそのあたいを暗黒の書を手に入れる。安い・ーーまったく安い買い物だ。そうは思 払うのだろうな ? 」 わんか」 「ーーおれ、自分の金なんて、一銭だってもってねえ」 ヴァレリウスは、唇を舌でなめ、黙っていた。 ヴァレリウスはつぶやいた。急に、少年らしく輝いた顔がまた暗 く沈みこんだ。 ゆっくりと、その白い目に、本能的な怯えに似たものがうかんで 「そりやそうだよな。ただでものをくれるやつなんて、いるわけが くる。知らず知らず、少年はあとずさった。 ねえよな。 わかったよ。おいらみたいのが、そんな高そうなも「どうだ。わるくない話じやろう。イ ー・リン・イーは親切だとは の、ほしいなんて、ばっかみたいだったよ。 どうせ、お思わんかの」 いらなんか何一つ手に入れられやしないんだ」 「気の短いわっぱだ。せめて、買えるか買えぬか、あたいをきいて ヴァレリウスは、のろのろとかぶりをふった。 みてはどうだ 少しなら、待ってやってもよい、また心を決ひどくためらいつつも、もういちど、こんどは早くかぶりをふつ め、方策をたてて出直してもよいことだぞ」 に 2
ってくる。 キツ。フルちゃんが画面の中で冷蔵庫に向かって泣き叫んでいた。 ( 色はアンタより黒いのに、体の線はアンタとまるで同じになっち静かだ。 数千という数の人間がいるとはとても思えない。女神の代理人の やったのよおー オモチャの冷蔵庫にとりすがり、抱きついて、涙を流している。姿を目にして、水をうったように静まり返っている。 ウサノ師は言葉を失って腰痛に身悶えした。ひょっとしたらこの〈私たちの母、健やかで美しい私たちの母に祈りをささげよう : ・ イヤなことがあるとすぐに痛・ : 〉 腰痛も神経性のものかもしれない。 む。 イコライジングされた声は重々しく深くすみずみまで響いた。 好きでもないのに、日に三回もこんなことをやらされているの 「お美しい方が何をおっしやるんです」 わけ ウサノ師は必死の思いで説得にあたった。 だ。前任者がストレスでポックリ逝った理由もわかる。 そのうち昼の祈りの時間が来たので、師はホッとして受話器を置師は、ゴンドラの中でコッコッと鳴きながら右往左往している五 羽のニワトリのうち一羽をつかまえ、セラミック製の刃物で首を落 祭壇はマンションの一階から三階全体を吹き抜けにしてある。 とした。 りつすい 立錐の余地もないくらい人をつめこめば、一万人は収容できる広勢いよく噴き出す血潮を信者の頭にふりかけながら、祭壇の炎の さである。 中へ投げ入れた。 師が四階からケムリと共にゴンドラで降下してゆくと、色とりど ″鳥″が巨大なヒナのように黄色いくちばしを開いていた。あまり りの莫大な数の顔が、光きらめくさざ波のようにうごめいているのに大きすぎて、ヒナというより、巨大なチーリツ。フの花が開いて が見えた。 いるようだ。 気分が悪い。 首のない血まみれのニワトリをひと呑みした。 いつものことだ。 〈宗主の血を〉 高所恐怖症なのだ。 また我らの血を ケムリがあるからまだいいが、なかったら今ごろ気絶している。 〈ささげよう〉 金ラメの複雑な刺しゅうのほどこされた振袖をハタハタとひるが ささげましよう えし、ウサノ師は彼女のスポークスマンとして降臨した。 唱和しながら、ウサノ師は次々にニワトリの首をはね、血まみれ ゴンドラは中二階あたりで停止した。真下に祭壇があって、の両手を白い羽根でふきながら下へ落とす。 映像による人工の炎が七色に燃えさかっていた。 ( 悪食な鳥め ! ) いつもながら、信者たちの一様にのつべりした表情に気分が減人嫌悪感が高まって吐きそうだ。 273
気が ついたかな ? ハウエル 先生に エミュー 」カ 助けてくれたんだよ 空気密度の高い この星では それだけ抵抗も 大きくなる エミューは彼女 ( 訓練を受けて 飛べるようになったんだ ゴダはいや この星の植物は確かに 人間の創造力を刺激する なにかを出してくれて いるよ、った だかひきか、んに どうもその人問の持ってる / / 知識とかを学びとってる みたいなんだな ニ十年前 君たちがやって た時か、ら 2 連中は宇宙に 興味を持ったのさ そこへ 出ていこうと してるんだ 彼らなりの 技術で そして で でも ↓ーカナカ プロペラで種子を飛ばす くらいで 確かに 彼らは 失敗したさ この前の 話のつづきだが 一と月程前に 私はこの星の反対側で また別の植物を見つけた 地球にホウセンカと〇。 いう植物があったのを 知ってるかね ? 0 あの巨大な奴だと 思えはいい 種子を思いきり はじけさせて 遠くへ飛ばすんだ 0 223