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1. SFマガジン 1985年12月臨時増刊号

むっとしたように、メイ・ファンは云った。 「むろんだ。私は白魔道師だ。イ ー・リン・イーの暴虐を、この上 「おまえは、ここから出たいのだろう。イ ー・リン・イーはドール見のがしておくわけにはゆかぬ」 に魂をささげた魔道師だ。その《暗黒の十二条》には、こうあるの「本当に、手がとけちまったり、しないんだろうな 1 ・リノ だぞ。たとえどのようなささいないけにえといえど、ドールにささ「とけはせん。早くしてくれ。いま私は結界をはってイ げる機会を逃すまじいこと。つまり、せつかく迷いこんだのだか ィーの目をふさいでいるのだ。しかし長い幽閉でその力はもうかな ら、ちょっとした退屈しのぎにでも、十分おまえをなぶりものにしり弱っている。気づこうものなら、イ ー・リン・イーはただちにや た上で、殺すなり、もっと悲惨な運命なりにあわせてやろうというってきて、そしてわれわれを生まれもっかぬすがたにかえてしまう ことだぞ」 ぞ」 「ど、どうして。おいら何もしていないよ。そんな、ひどい 「ひえツ、やるよ、やるよ」 「黒魔道とはそうしたものだからだ。どれ、子ども、ちょっと手を「それは吸血ヅタだ。じかに手でさわると危い。 私の服をひきさい かしてくれ」 て、それで手をつつんでひきぬきなさい」 「て、て、手つて・ : : ・」 「わ、わかったよ」 「私を、ここから出してくれるのだ。そのためにおまえの力が必要ヴァレリウスはロの中でヤーンの名をとなえた。そして思い切っ て、半透明の壁の中にぐいと手をつつこんだ。 「そんな、おいら、何もできないよ : : : 」 巨大などろどろとしたくずの中に手をつつこんだような、妙な手 「何も、できないことをしてくれ、などとはいっておらん」 ごたえに総毛立ちながら、肩までズボリと壁につつこみ、まずメイ メイ・フプンは云った。 ・ファンの黒い道服をひきちぎると両手にまきつけ、吸血ヅタをひ 「この壁に手をつつこみ、このいまいましい吸血ヅタめを、ひきちきはがしにかかった。 ぎってくれ。とりあえずそうしてくれればいい」 ッタはしつかりとメイ・ファンの手首をいましめており、なかな 「ひえツ、 このヘンなプョ・フョの中へ ? イヤだ、イヤだよ、おい かはなそうとはしなかった。 ら」 「このナイフで切りなさい、子ども」 「えい、わからぬことを。これは何も害はない。ここから出たくは ふいに、どこにもなかったはずのナイフがひょいと空中にあらわ ないのか」 れた。大あわてでそれをつかみとって、ツタを叩き切るなりヴァレ 「そ、そりや、出たいけど : : : 」 リウスはとびすさった。ッタが苦しげにつるをよじらせて、こっち ヴァレリウスは喘ぎ、それからなさけなさそうに目をつぶった。 へおそいかかって来ようとしたからだ。 あわてて両手をひきぬいたが、肩から手さきまで、ぶるぶるする 当「そうもたら必ずことら出てくれるのかい」 6

2. SFマガジン 1985年12月臨時増刊号

のである。 ヴァレリウスは恐しそうに目を見開いて、このようすをじっと見 それは少年の心をおどろきと感嘆でいつばいにしたけれども、しとれていた。 かしそれにつづいてあらわれてきたものほど、ヴァレリウスの心を つぎつぎにメイ・ファンは、奇怪な合成人間を消していった。メ おののかせはしなかった。怪奇な動物たちの次に、イ ー・リン・イイ・ファンの骨のあらわれた指がさし示すと、たちまち白い炎が立 ーが人と獣とをよこしまな魔道によって合成した、ぞっとするようって、そのあいてはひとかたまりの泡と化してゆくのだった。 な不幸な生きものたちが、悲しげにうずくまっていた。頭が三つあヴァレリウスは、魅せられた目にじっとこのありさまを見守って る男もいた。馬の体に、こぶのように二つの頭の生えているもの、 いた。そして身も心も痺れたようになっていたが、ふいに何かの予 女の体に、大の頭をもつもの、男と女と、半身づつつなぎあわせた感にせきたてられてふりかえり、そしてわっと叫んだ。 もの。 「たっ、大変だよ、おっさん ! あ、あいつが来たツ ! 」 人面の蛇も蛇面の人もいた。何をどこからどうといえぬほどめち「わかっている」 やくちゃに融合させられた怪物もあった。二目とみられぬそれらの メイ・ファンは、おちついてこたえた。そしてふりかえった。 生きものは、例の半透明の牢獄におしこめられていたが、メイ・フ そこに、イ ー・リン・イーが立っていた。 アンが通りすぎてゆくと弱々しくざわっいて、手をさしのべたり、 黒の魔道師が、気も狂わんばかりの、激烈な怒りにふるえている こちらに少しでも近づいてこようと争いあった。本能的に、それをことは、すぐわかった。かれはイーゴーを従え、巨大な水品玉をは 救い手と察知したのだろう。 めこんだ杖を手にし、その手がわなわなとふるえていた・ それへ、メイ・ファンは何やら呪文をつぶやいては、傷ついた手「おのれ、メイ・ファン ! 」 をさしのべる。すると、ぼッと白い炎が立って、獣人たちは、一瞬イ ー・リン・イーは吠えた。ヴァレリウスは、はじめてこの魔道 にして泡となって消え去ってしまうのだった。 師のまともな全身をみたのだった。顔は、さっき顔だけがあらわれ 「な、何をするんだよ」 た、そのとおりだったが、その下には、黒いマントをつけた、やせ ヴァレリウスはおどろいて、 こけた、背中にこぶのもりあがった老人のようなからだがあった。 「やめてくれよ、ひどいこと。か、かわいそうな人たちにさ」 「わが貴重な収集を、よくもむざと、うちこわし、めちやめちゃに 「かれらはもう、助からぬ」 してくれたな」 メイ・ファンはおちつき払って、 ィー・リン・イーが叫ぶにつれて、洞窟じゅうが・フルプルとふる 「もう、しよせんもとには戻せぬものならば、せめて人間としてのえた。 尊厳を保ち、死なせてやるのが慈悲だろう」 「よくも、よくも・ーーこのようなひどいことをーーおう、わしの収 「そんな↓ *-= ても」、 ! 、」零一二 集 ! わしの宝 ! わしの生き甲斐 ! きさまなど、とっととその

3. SFマガジン 1985年12月臨時増刊号

ドアが開いて、最前の担当官がトランクを運び入れた。 去られているような、寂し気な小部屋たった。 ごてごてと貼られたシール。確かに冴木のものだ。 二人を案内した担当官は、ロにこそ出して言わなかったが、ポ ト内に迷惑事を持ち込まれるのを、ひどく嫌がっているのがありあ神崎氏は礼も言わずに、ひったくるようにしてトランクを受け取 ると、テーゾルの上へ少々乱暴に放り上げた。 りとわかった。 私は、テー・フルの上にビッキング・ツールを並べて、すぐさま仕「さあ、始めてくれ」 神崎氏の勢いに気圧されて、あわててビッキング・ツールに手を 事にかかれるようにスタン・ハイしていた。 伸ばした。その一つを握った。 部屋に入って四、五分後、あまり若くもない女性がコーヒーを差 し入れてくれた。 テー・フルの上のツールを一瞥すると、胡散臭そうな目つきで私達鍵穴に向かうべき私の手は、トランクに目を向けた瞬間に、行き どころを失って宙に停止した。 をじろじろと見ていった。 トランクのサイズがあきらかに違っているのた。 一時間以上も前から待機する必要などなかったかもしれない。神 同じ『タフネス』でも 2 サイズ大きい、 4 0 0 ではないか。 崎氏も、冴木はぎりぎりまで手荷物を預けようとはしないと言って いや、まだそれだけならたいして問題ではない。肝腎の錠の部分 いた。一分でも長く自分の手にとどめておきたいということだろう 、 0 は、シリーズすべて共通のものが使用されているからだ。 、刀 問題はサイズの違いではない。 もうじき手荷物預りのリミッ トランクがナイロンロー。フでしつかり結わかれているのだ。 ここでトランクが運び込まれても、私に残された時間は既に二十 「どうした。なぜ始めない」 分を切っている。 『タフネスー R200 』に関しては、昨日、おやじの豊富なコレク事情がのみ込めていない。 「ロー。フが掛けてあります」 ションの中から、錠前部分だけを一つと、神崎氏が調達したもの一 「見ればわかる。解けばいいじゃないか」 つ、都合二個を試してみた。最初が十七分、二つ目は十五分で開い まだわかっていない。 ーサルとしては充分過ぎるくらい た。僅か二回のトライだが、 「貸してみろ」 だ。本番は十分もあれば事足りるだろう。二十分というリミット もどかしげにトランクのローゾに手を伸ばそうとした。 は、それ程のプレッシャ 1 には感じられない。 「待ってください」 むしろ、神崎氏の方が時間経過を気にしていた。 待ちきれなくなったか、「様子を見てこよう」そう言って席を立私は神崎氏の手首を損んで止めた。 「ここを見て下さい」 った時だった。

4. SFマガジン 1985年12月臨時増刊号

先日、川又千秋さんからオリジナルの 川又えー、じつは「月刊モデルグラフ ( ざ、しモさきる プラモデル戦闘機をつくったので見にきィックス」という。フラモデル専門誌がある ませんか ? というお誘いがありましのですが、そこで「オリジナル戦闘機コン て、見せていただいたところこれが実にテスト」というのを行なっていまして、 氏ナ機モ繰合 しいわけです。各々にこまかく性能やらままでもオリジナルものをいろいろ考えて 秋ジ闘ラが , 背景が考えられていて、好き者のファン いてつくろうとは思っていたのですが、こ 千リ戦プ氏語 文ォル、三い なら大喜びするに違いない。是非とも ういう機会でもないとなかなか手がつけら 川たデれの熱 マガジンで紹介しましよう。というこれなくて、これはいい機会だということで。 とで今回のこの・フラモデル紹介の企画が 明 ' できたわけです。そしてどうせなら、 レ 氏 ろいろ。フラモについてお話ししていただ 山 こうではないですか、ということで今回 る 佐 , の。フラモの製作者である川又さん、イラ ストを描いていただいた横山さん、そし 手 を てやはりプラモ大好きという佐藤道明さ んにお集まりいただきました。 モ ナ 川又さんの作品の場合、五機のうち ジ 四機までが実際にあったものや、今あるも オ 矛のに手を加えたもので、別の歴史の中では こういったものがつくられるかもしれない という、いわばパラレルワールドものとい 横山じつは僕、そのコンテストの選考 ったもので、残る一機の九一式《はやぶさ委員をやってるんです。それでですね、 Ⅱ》にしてもその延長にあるものと考える又さんは一人で五機もっくったんですよ。 ジ これは、今回のコンテスト参加者の中では ことができると思うのですが、とりあえ 《者 ず、オリジナル戦闘機をつくるにいたった一番多いんです。それでですね、選考委員 オ 参・事情といいますか、その〈んをおききしたは全部で六、七人いるのですが、その中で四 出品したのは僕一人なんですよ。えらいで いのですが。 毳を彜彡り ~ ル 2 0 ノ々

5. SFマガジン 1985年12月臨時増刊号

ョフ一 ということも、知らないんじゃないかな」 おれは、、・ / テス老の、不思議に若々しい ・フルーの瞳を見つめ た。知っていた。だから、興味をひかれて、ここまで来たのだ。 「わしは最初、大学から派遣されてここに来た。遺跡調査のために な。調査はあまり実りあるものじゃなかったから、大学は半年で手 を引いた。しかし、わしは帰らなかった。ここが気に入っていた し、大学は気に入っていなかったからな。それに ハデス老は、べっと唾を吐いた。それは、大学教授らしからぬ仕 種たった。 「女房と娘が、向こうの谷間に眠っている。グライダーの事故たっ 老人は、粘土のかけらを投げ捨て、ズボンの尻で両手をはたい 「陳腐だったか ? 」 「確かにね」 おれは、ポケットから煙草を出し、発火シールをひきむしった。 老人が手を出したので、 ッケージごと渡してやる。ハデス老は、 目を細めて煙を吸い込んだ。 「カメラ持ってるかい ? 事件屋さん」 「ハギーに置いてありますよ」 おれは、ちょっと戸惑って答えた。 「記念撮影でもするんですか ? 」 ( デス老は、煙草を投げ捨て、あいまいに首を振った。 「そんなとこだが、・ ( ギーまで戻っては、間に合わんだろう。あれ を見ろ」 老人は、澄み切った青空を指差した。おれは目を細めた。スゾラ

6. SFマガジン 1985年12月臨時増刊号

大丈夫運転手と 話はつけてあるんだ 局長の 息子が この始末だ ひどい もんさ しつかり ねえ これではとても 次期局長なぞ 任せられませんな 0 0 ′、气はビ ゞトこソ . ・ , 3. ド 1 ~ き 244

7. SFマガジン 1985年12月臨時増刊号

「おお、そら良かった。ほれ、眠くなーる、眠くなーる。この際、 かとなく寒気もしていたのである。 一気にいてまいまひょね ! あそれ、眠くなる、こらせっと、眠く この配慮はありがたかった。 なるつい」 旦那のほうはともかく、この奥さんは信用できるな。と、隆子は 思った。だいたいあんな美味しそうな匂いをたてることができる女手拍子も、林医師の声も、遠く近く、耳に蓋でもされたかのよう にぼやけだし、まばたきの回数がどんどん多くなった。 性に、悪いひとがいるわけがない。 「おお、そうじゃそうじゃ。お茶を飲んで、リラックスしてもら「 : : : あ・ : ・ : 」 視界に靄がかかる。肩のあたりが、ぐったりと重くなってくる。 う ! そーかこの手があったなあ。おまえはほんとうに気が効く 「眠くなるつ、と。 ・ : おい、おまえ、やったぜ ! 」 「あい」 「また、いやですよ、おまいさん」 夫婦が朗らかにじゃれあうのが目に入ったが、その意味にまで気「やつば、銀のペンダントぶらぶらなんかより、一服もるに限るな のつく隆子ではなかった。景気よく湯気をたてている湯飲みに、まああああああ : : : 」 そのことばが脳みその端にひっかかる間もなく、隆子はとうと っすぐ手を伸ばす。」 、深い深い眠りに落ちていったのであった。 「いただきます」 麦茶の濃いような奇妙な味の茶を、隆子が半分ほど飲んだと見る と、林医師はまた、ローエングリンを揺らしだした。 ー 3 「ほな、ちょっとこっち見とってくださいよ。さあて、眠くな 1 ・る ・眠くなーる : : : 眠くならはりまへんか ? どうだす ? 眠くな 青ざめた白色をチラチラとまたたかせながら、テオは陶然と沈黙 していた。 ーる」 しったいいっからここにいるのか、光考も及ばないほど長い長い こと、ずっと、上に上に吹きあげられ続けている。 隆子は驚いた。 微かではあるが、確かに、ロ いつ、逆滝に巻き込まれたのかも覚えていなかった。気がついた ーエングリンが遠くなったり、近く なったりするように見えるのだ。いや、からだのほうが揺れている時には、もう、ここにいた。ここが滝の中だとわかったのは、た のかもしれない。 だ、下に錆花の懐かしい絨毯が見当たらなかったからだ。上昇感覚 「なんだか、ちょっと、効いてきた、ような気が、します、よ : : : 」 よュは、かっ ~ 0 あわてて湯飲みを置こうとしたが、かたかた手がすべって危うく あんなに激しく恐ろしく見えた逆滝の中は、拍子抜けするほどに 失敗するところだった。 静かだった。 《 0 8

8. SFマガジン 1985年12月臨時増刊号

? ら . 〈一第鶩ア ( 第 f 3 、、 0 、ヾ、 連続して四回もスースト。 神崎氏はというと、フォールドばかりを繰り返している。はなか ら、ギャンブルなど目的ではないと言いたげだ。 、。ィーラーは完全に白けきっている。 あまりに露骨な賭け方にテ 経費で落せるんなら、もっと思い切りよく遊んだらいいじゃない かと思うのだが、この人にはそんな考えは浮かびもしないに違いな ディーラーが不機嫌そうにテー・フルをノックした。 自分の番だというのに、うわの空でカジノ内を見渡している。 冴木を探しているのはわかるのだが : 私は肘で小突いて教えてやった。どうせまたフォールドだろう 「ああ、私か、 そう言うと、神崎警部は手元のチッ。フをごっい手で擱んで、 ドの前へ差し出した。」 「五枚のレイズ」 、何を考えているんだか、理解に苦しんだ。 残りの客もみな合わせた。 一「三回の・〈ッティングが続くうちに、チッ。フは堆く積み上って いった。神崎警部は、レイズを繰り返す。降りる気はないらしい ディ 1 ラーは早々と降りてしまった。 なるほど正しい判断だ。 べッティングがすべて終了して全員がオー。フン。 警部の手は川とのナチラル。 「公費をそうそう無駄使いできんしな。少しは元を取り返しておか んと」

9. SFマガジン 1985年12月臨時増刊号

のか、おいらは知らないけどーー・それを手に入れたものは、すごい 「じやきくよ。いくらなの ? 」 力をもっことができるんだといって : : : 誰もかれもが、それさえも「安いものだ」 てば、すぐにすごい力をもてるとか、そういうんじゃないだろうけ巨大な顔はにったりと笑った。 どーーでも、もし、それをもって、そうして勉強して、魔道を習え「幾らーー・ ? 」 ば、すごい力をもてるのならーーーおいら、それが欲しい。ロー・ダ「わけはない。 この、ここにあるこの紙に、おまえの名をこう書い ンでなく、おいらが欲しい。もうーー誰からも、森番みたいなやってくれさえすれば、それでよいのだ」 に追っかけまわされて、逃げまわらなくてもよくなって、それでー ヴァレリウスの目が光った。少年は、やせたのらネコのようにぬ 「何とまあ ! 大したちつぼけな小すずめの、ぶさいくなからだにけめない顔つきになった。 ふさわしいちつぼけなねがいであることだ ! 」 「その紙・ー・ー何なの ? 」 ィー・リン・イーは爆笑した。巨大な口がばかりとあいて、さし「大したことではない。何なりと、わしのいうことを、おまえがき わたし半タールもある分厚い、どすぐろい舌がふるえた。 く、という、そういうちょっとした約東にすぎん」 「まあ、 しし」すずめ、おまえはまったくわしを楽しませてくれ「 : ・ るので、わしはおまえにこの暗黒の書を売ってやってもよい。して「わるくない話だろう。おまえはただここに名を書き、そしてこの むろん、ものを買おうというからには、おまえはそのあたいを暗黒の書を手に入れる。安い・ーーまったく安い買い物だ。そうは思 払うのだろうな ? 」 わんか」 「ーーおれ、自分の金なんて、一銭だってもってねえ」 ヴァレリウスは、唇を舌でなめ、黙っていた。 ヴァレリウスはつぶやいた。急に、少年らしく輝いた顔がまた暗 く沈みこんだ。 ゆっくりと、その白い目に、本能的な怯えに似たものがうかんで 「そりやそうだよな。ただでものをくれるやつなんて、いるわけが くる。知らず知らず、少年はあとずさった。 ねえよな。 わかったよ。おいらみたいのが、そんな高そうなも「どうだ。わるくない話じやろう。イ ー・リン・イーは親切だとは の、ほしいなんて、ばっかみたいだったよ。 どうせ、お思わんかの」 いらなんか何一つ手に入れられやしないんだ」 「気の短いわっぱだ。せめて、買えるか買えぬか、あたいをきいて ヴァレリウスは、のろのろとかぶりをふった。 みてはどうだ 少しなら、待ってやってもよい、また心を決ひどくためらいつつも、もういちど、こんどは早くかぶりをふつ め、方策をたてて出直してもよいことだぞ」 に 2

10. SFマガジン 1985年12月臨時増刊号

こら ほ - フず . ー わい万目お い引のれ 度き前の か胸たで 弁当代は お前の父ちゃんに キてもら、フ からなさあ べ、ルと あの娘も ぐるたろ、フか な何の事 ですかっ 手に持ってる のは何だっ