渡された″シークレット ″を開けた途端、警部の顔が急激に歪ん 私もヘルメットを外して″シークレットの中を覗き込んだの あきれた。ただただ、あきれた。警部のように怒る気力も一瞬に とセットして、スタートさせた。 マシンの作動開始に間髪おかず、トランクから徴かな振動が伝わして失せてしまった。 中には、トランクいつばいにポルノ雑誌が詰め込まれていたの 凝固した酸が、中で破裂したのだ。 おわかりだろう。内部の溶液を急冷して凝固させる為に、これだ警部は、怒りで顔面をまっ赤にしながら、それでも未練がましく けの苦労をやってのけたのだ。 ページをめくって、機密文書の類いが挾み込まれていないかあらた めだした。 ″ほたる″は無事生け捕った。逃げ出す心配は当面ない。 マシンは正常に作動している。後は、解錠の瞬間をじっと待つの最後の一冊まで調べても、何も出て来なかった。 みだ。三分とかからない。 「どういう事だ」 与圧完了の表示が点く。同時に内部 ( ッチのロックも解除され「冴木に弄ばれたって事ですよ」 る。 それ以外に何がある。 カウンターが止まった。 敗北感さえ沸いて来なかった。 「敗戦処理にかかりましよう」 同時に、ポルトアクションの振動が伝わってきた。 やった。 この期に及んでの感はあった。しかし、″シークレット ″を放置 ″シークレット するわけにもいかなカた ″を破ったのだ。 ポルノをトランクから出した。警部の手配した掃除機の電源を 0 z 。吸い込み口を、トランク内のノズルに付けた。隙間をキーの型 取り用。フラスチック粘土で埋めた。一 「課長、突立ってないでドライヤー」 警部はドライヤーを握ると、ノズル周辺に強力な熱風を送った。 の中から出て来た物が何だっ室温で半分溶けかかっているかもしれない。凝固した酸を溶かし て、全部吸い取ってしまうまでに、それ程時間が必要だとは思えな 最終ラウンドの大逆転。・ 冴木に勝てた。と、思った。 シークレット ところがどうだ。″ たと思う ? クラッシュ ! 」 0
カンツ。 心臓の高鳴りが、体内から鼓膜を揺るがす。 ルトの跳ね上る音がした。 目前に外部ハッチがある。 続けてもう一方の鍵穴へ差し込んだ。 減圧を待っていては、時間のロスだ。 「あきます」 担当官からは止められていたが、かまうもんか。 警部に宣告した。 壁面のグリツ。フをがっしりとみ、・フーツを床に圧着。″シーク レットみは腹で壁面へ押しつけた。 素速くキーを回した。 クワシャ。 横目にハッチを見据える。左手を伸ばしてエマージェンシー・グ 前より大きな音がして、いきなりふたが跳ね上がる。 リツ。フにかける。 すかさず警部がふたを押えた。 田 5 い多 tJ りよ ' 氏戸ノしナ 七分二秒。″タフネス〃を破った。 、チカ一気に開いた。 警部は、中味が散乱しないように、ゆっくりとふたを起こす。私猛烈な風圧で、体が壁から引っ剥がされそうになる。一瞬を耐え は″タフネス″に手を差し入れて、″シークレット″を引きずり出きった。・フース内の空気はすべて吐き出された。 した。 全身が痺れている。右手の皮は内出血したかもしれない。が、休 警部はふたを閉ざし、ガムテープで固定した。一 む暇はない。 ″シークレット 〃を両手で振ってみた。中からシャリシャ右胸のポケットのジッパ ーを引いて、・フレイキング・マシンを取 リと紙の擦れ合う音がする。 り出した。″シークレット ″を壁に押えつけておいて、テンキー部 確かに、中には書類らしきものが入っている。 分へマシンを持ってきた。位置決めをしてマシンを押しつける。マ 次の行動に移った。 シンの裏には、圧着テー。フを貼っておいた。左のポケットから、ガ ベルトから、糸を引きちぎった。一 ムテー。フを取り出し、マシンの表からもしつかりと固定した。 うまくいった。 ステーション事務局から貸り受けた、フライトスーツの装着にか 三十秒は経過しただろうか。一 かった。警部の手を借りた。それでも、予定の二分では足りなかっ 左腕を伸ばして、壁のスイッチを押した。外部 ( ッチがゆっくり と閉ざされていく。 完全に閉まると同時に、与圧が始まった。 しつかりと″シークレットみを脇にかかえ込んだ。 ・フレイキング・マシンを、 気閘へ歩み寄る。スーツはフィットしていて動きに無理はない。 、ノチの全開ももどかしく、・フースへ入り込むと、振り向きざま にハッチを閉ざした。 こ 0 円 8
トランクは、あまりに無造作にテーゾルの上に置かれていた。 二人して声を失った。 ロープの。フロテクトも外してあった。 期待はみごとに裏切られた。 さあ開けてみろと言わんばかりだ。 「また、トランクか」 「始めてくれ」 やっと警部が口を開いた。 私は、胸ポケットからビッキング・ツールの入った皮製のケース そう。衣類などの身の回り品を・脇に追いやって、真中にでんとひ を取り出した。 とまわり小ぶりのトランクが居座っていたのだ。 「私は表で待っている。冴木が戻って来るようだったら、ビジフォ トランクの中のトランク。 ンを入れるからすぐに部屋を出るんだ。たぶん、その心配はないと サイズが 2 ランク上になっていた理由がのみ込めた。 思うがな」 「以前使っていたやつじゃないな」 私は、。ヒッキングにかかろうとした。だがトランクの様子が少し シールを剥がした跡がない事からして、それは明白だ。 変だ。 「まさか、これも開きつばなしってことはないだろう」 「待ってくれ」 警部が触って確かめた。そうは甘くなかったようだ。 部屋を出ていこうとする警部を呼び止めた。 「今まで見た事もないやつだが、やれるかね」 「どうした」 トランクを子細に観察した。いやな予感がしてきた。 部屋へ戻って来た警部に私は言った。 「米国はゴダード社の『シークレット』シリーズですね。一般向け 「あいている」 に市販はされていない。公官庁や企業向けにカタログ販売されては なんともあっけなかった。鍵は掛かっていなかったのだ。 いるが、日本にはおそらく十個とないでしよう」 部屋の中なら安心たと気をゆるめたのたろうか。冴木はそんな男「それで、やれそうかね」 心配そうな表情で私を見ている。 には見えなかったが。 「やれなくはない。四百時間ほどかけてやればね」 「冗談だろう」 「本当ですよ。自分で開けてみて下さい」 「どういうことだね」 私は警部を促した。 私は、わかりやすく説明してやった。 ″シークレットみは基本的にここのドアと同じキー構造をもってい 半信半疑の面もちで、警部はトランクのふたに手を掛けた。そし る。トランクの上部側面にあるテンキーで、四桁のキーナイハーを て、慎重に開いていった。 「おつ。開いている」 入力すれば、トランクは開く。しかし、間違ったナイ ( ーを入れた 場合、四回目までは何ということもないのだが、五回目を試した時 手応えでそれがわかったのか、後は一気に開いてしまった。
に、内部に仕掛けられた小さなノズルから大量の強力な酸が噴出し 十時をまわっている。 て、内部の書類等を一瞬にして溶解してしまうのだ。四回キー入力 二人無言のままの状態がどのぐらい続いているだろうか。 に失敗しても、しばらく待てば初期状態を回復して、次の四組の鍵ツインルームに戻って、二人だけの作戦会議を開いているのだ 違いを試せる。しかし、そのインター・ハルは、十分もあるのだ。そが、い っこうにいい案など出て来はしない。ルームサービスで運ん れを根気よく繰り返せば、いずれはプレイキングできる。ただし、 でもらったコーヒーも手つかずのままだ。 四百時間以上の余裕があればの話だが : 「冷めてしまう。口をつけて下さい」 「どうします。試せるだけ試してみますか」 「ええ」 冴木が戻るまでに十や二十は試せるに違いない。宝くじを当てる私は勧めに応じてカップを両手に包み込んだ。かすかな温もりが よりも、まだましな確率だ。 てのひらに伝わってくる。 「いや、待て。ここは一旦引き上げよう。何か策を講じないと、破ひどく疲れてしまった。 れんだろうからな」 宇宙への初めての長旅。もちろんそれによる精神的肉体的疲労感 確かに、この場はヘたな悪あがきは止めた方が良さそうだ。正しもある。が、冴木に二度もしてやられてしまった事から来る、敗北 い判断に思えた。 感挫折感が何といっても疲れの大きな原因だった。 警部はトランクのふたを閉め、私もツールケースを胸ポケットへ いつまでも、無力感にひたりきっているわけにもいくまい しまい込んだ。 ・フラックコーヒーを胃袋にぐいと流し込んで、気持ちを引き締め ドアを出る時に、破ってしまった紙テー・フの。フロテクトの事が気た。 こよっこ。 「今回は諦めるか」 「テービングの方は ? 」 同じ疲労感を漂わせた口調で神崎警部がぼそりと言った。 「亠めあ。メイドに、 この部屋のペッドメイキングを頼んでおくよ。 「宇宙までのこのこやって来て、ドアロック一つ破ってすごすご帰 後で、ルームナン・ハーを間違えたとでも言っておけば済むことだ」 って来ましたじゃ、おやじに合わす顏がない」 事もなげに警部は返事を返した。 「いいじゃないか。章くん、あんたはまだ若いんだ。そう焦る事も 第二ラウンド、冴木からくらったダメージは、かなり決定的なもなかろう。これから、いくらだっていい仕事を私が回してあげる のに思えた。 よ」 「私にも。フライドがあります。・フレイカーにとって、・フレイキング に失敗する事以上につらくみじめな事はない」 「そりや、私とて手ぶらで地球へ帰るのはつらい。気持ちはあんた 円 4
得意気に私に言った。 たいしたもんだ。一回の勝負で、負け分を取り戻してしまった。 作業は一瞬でも早く片付けるにこしたことはない。 いや、それどころか、充分におつりがくる。 三分足らずとは一一一一口え、ドアが開くまでに人目につく危険は充分に 「こちらよろしいかな」 ある。 今が引き際とみて退散した客の空いたばかりの席に、男が一人す私はプレイキングにかかる前に、通路の人通りを確かめた。さす かさず入ってきた。 ートメントは、 がに—ルームだけあって、通路に面したコン。ハ 警部の右隣りである。 八室にとどまる。一般客の出入りはない。たまにホテルのポーイ 見覚えのある顔 : : : 。なんと、冴木ではないか。 : 、ルームサービスに行き来するくらいだ。 警部は勝ち分のチッ・フを数えるのに余念がない。 用事を済ませたポーイが客室のひとつを出ていくのを確認して、 私はまたしても肘で小突いた。 私は冴木の部屋の前に立った。 「隣ですよ、と・な・り」 ドアロックは、電子キーになっている。一 冴木に気付いた警部は、慌てて席を立とうとする。が、 ノ・フの上に付いている、。フッシュホンキーによく似たテンキー 「勝ち逃げは良くない。私ともう一勝負どうです」 に、四桁の数を打ち込めば、解錠できる仕組みになっている。 冴木に引き止められてしまった。 私はポケットから、特製の・フレイキング・マシンを取り出した。 「課長、私はこれで : : : 」 厚目の文庫サイズのポックス型と一一・ロえば、およその大きさと形は想 私は目くばせを送って席を立った。 像できるだろう。 人前では″課長″″金守くん〃と呼び合うように申し合わせてい 表は旧式の電卓よろしく、タッチキーと八桁の液品表示カウンタ・ た。二人とも会社員という様子ではなかったが。 1 が付いている。 冴木が同じテー・フルに付いたのは偶然か ? 裏は、ドアの十個のキーに対応する、十個のポッチが付いてい 気にはなったが、後は警部に冴木の足止めを任せる事にした。 る。マシン内部のソレノイドが引かれて、ポッチが数ミリとび出し 「連れの方はもうリタイヤですか」 てキーを押す仕組だ。 「いい女でも口説きに行くんだろう」 四桁から八桁までの電子キーロックの解錠が一応可能である。 「やば用ねえ : ・・ : 」 ポッチとキーがうまく接触するように位置決めをして、マシンを 冴木は私の方を振り返ってふくみ笑いをみせた。 ガムテー。フでドアに固定した。 私はかまわずカジノを後にして、冴木の。フライベ キーを使って、 っこ 0 カュ / ートルームへ向
「そうは見えなかったが」 気のせいだろうか ? 「第三にドアのテー。ヒング。第四にトランクの中の第二のトラン いやちがう。窓の方向から光が入ってくる。 ク。次々と仕掛けてくる。まるで私達を試しているみたいだ」 直径二十五センチ程の丸窓へ歩み寄った。 「試されてる ? 」 三重窓の外は、直接宇宙空間だ。 「冴木には自信があるんだ。 ″シークレット〃だけは破られないっ 窓を視き込むと、無数のきらめくほたるが、ステーションの外壁 て自信がね。それに、こっちが月まで追って来ないってこともわかをとりまいて宇宙空間を舞っている。 ってるにちがいない」 「警部、見ますか、″宇宙ぼたる″ですよ」 「我々もなめられたもんだな」 美しかった。 「まだ、第三ラウンドが残っている。やれるだけやってみましょ 話には聞いていたし、モ = ター上の映像としては何度か見た事は う。″タフネス″の方はダイヤルキーのナン スーは既にわかってし あったが、実物がこんなに美しいとは : る。錠だけなら、五分くらいで破れる。問題は″シ 1 ・クレット ホテル側の泊り客へのサービスで、ステーションの放熱処理の数 方だが、もう二十分時間があれば、三回のトライ、十二の鍵違いを パーセントを、浄化しきれない汚水の一部を使って行なっているの 試せる」 「たった十二組じやどうしようもない」 噴霧状の汚水、それが″宇宙ぼたる″の正体だ。しかし、それを ″シークレット 「そんなことはない。 ″のキーナン 。 ( ーは、持ち主知っていても、″宇宙ぼたる″の神秘的なまでの優美な輝きは少し が自分で設定できるようになっている。普通、本人が覚えやすい誕も損われる事はない。 生日だとか誕生年とかをキーナイハ ーに選ぶもんです。冴木に関す私は、宇宙にいる自分を初めて実感した。 るデータは ? 」 ″宇宙ぼたる″に見とれているうちに、ぼんやりとだが、一つのア 「揃っている」 イデアが浮かんで来た。 「それじゃ。その中から、十二個数字を選り出しましよう」 ″シークレット ひょっとしたら、 〃を破れるかもしれない。 「わかった。冴木のファイルをあたってみる」 振り向いて、神崎警部に言った。 やれる事とい「たら、これくらいしか思い当らなか「た。案外誕「高熱の〈アドライヤー、それに強力な掃除機。明日までに手配で 生日あたりで一発かもしれない。 きますか、 警部は、自分のトランクを探っている。 「いきなり、何事だね」 私は、コーヒーの残りを飲み干した。すっかり冷めきっている。 「ほたる狩りですよ」 何か光るものが目に入ったような気がした。 円 6
かった。これが終れば、今までの手順を逆に辿って、″シークレッ 「冴木が以前使っていたトランクの写真ありますか」 ″を″タフネス″にしまい込んで、″タフネス〃に元通りのロ→ 「ああ。ある」 クをかければいい。 上着のポケットから取り出した写真をひったくった。そして、 残りタイムが六分弱。充分に余裕がある。 ″タフネス〃と見較べた。 ″シークレット を″タフネス″に戻す段になった。 同一のシールが一枚だけ見つかった。 ガムテー。フを剥がして、″タフネス〃のふたを開けようとした。 うそのように、きれいにそのシールは剥がれた。 気をぬいてやったので、すんでのところで、シールの一枚をガムテ「捜しものは、これですか」 ー。フごと剥がしてしまうところたった。 シールの下から出て来た、マイクロフィルムを警部に示した。 タイム・アツ。フ。 ゲームは終了した。 何かひっかかる。冴木はなぜ、ポルノを入れていた。金庫にポル ノを入れておくというのは、金庫の底の二重帳簿を隠す為の古典的 とも言えるトリックだ。弁護士をやっている冴木が、そのへんの事 情を知っていたとしてもおかしくはない。だとすれば、逆に冴木は やはり何かから、我々の目を逸らそうとして、安易に、トランクの うちの店へ寄るたびに神崎警部はぼやいている。せつかくスパイ 中にポルノを入れたのではないだろうか。 行為の確証が得られたのに、あれ以降、冴木はまったく動く様子を しかし、何から : 見せないというのだ。我々が最終的にシールの下のフィルムを発見 私は、ガムテー。フを剥がす作業を続けなけら考えた。また一分残したとは気付いていない筈だがと言う。 っている。 そんな事はな、。 フィルムをシールの下へ戻す時、警部の目を盗 警部も長年の経験で、ポルノと見て、逆に。ヘージをめくって中をんで、私の名刺を一枚すべり込ませたのだ。 改めたのだろう。 冴木を今、神崎警部に捕えさせるのはもったいない気がした。 しかし、トランク内は空だった。 いずれまた、より強力なプロテクトを考え出して、冴木は平然と テープをきれいに剥がし終えた。警部の手を借りて、″タフネス・″我 . 々の前へ現れるだろう。 の中に " シークレット。を元通りに収めて、疑似キーでロ〉クをし黼えるんならもう一ゲーム楽しんでからでも遅くはない。・フレイ カーの私はそう勝手に思っているのた。 トランクの外はどうだー まだ三十秒残っている。警部に言った。 こ 0 8 っ ~
を変えながら、マシンが二人の視点から死角に入るように気を使っ マシンをしまい込むと、私はドアのノ。フに手をかけた。 「待て」 二人は、私をホテルマンとでも思ったのか、すれ違い際に、陽気警部が鋭く制した。 に「グッナイツ」と声をかけて来た。私は丁重におやすみの挨拶を「私がやる」 返した。 自分でやらないと気が済まないのかと思った。が、そうではなか 斜め向いの部屋へ夫婦連れは消えた。ほっと胸をなでおろす。 った。ドアに近寄って、壁との隙間を上からじっくりと観察してい 一分が経過する。 る。中腰になり、しまいには、しやがみ込んでしまった。 ナン・ハーはまだ探れない。マシンのデジタルカウンターは、 「まずいな」 三千番台をめまぐるしくカウントアップしている。 私を見上げて警部は言った。 いらついてきた。 「ここだよ」 一分三十秒が経過。まだか ! 私も身を低くした。床から三センチくらいのところだ。よく見る 解錠終了を告げる電子音が小さく鳴った。 と、ドアから壁にかけて、五ミリ幅くらいの薄い半透明の紙テー。フ 同時にカチッというドアのス。フリングボルトが跳ね上がる音がしが貼り渡してある。 気付かずに開けていれば、テー。フは切れていた。 一 .0 つん -4 ・ またしても、。フロテクト。 カウンターが示している数字だ : 二人して顔を見合わせた。 ドアから引っぺがそうとマシンに手をかけた。 入室は断念するか、それともかまわず封を破るか : その時、エレベータドアの開く音。 「剥がすのは無理なようだな。跡が残ってしまう」 まずい 「リタイヤですか」 ドアに凭れた。マシンを隠した。 「いや待て、考えがある」 エレベータから歩み出た男を見て、私の緊張は、だらしなく崩れ 言うなり警部は立ち上がった。ノブを損んで思い切り良くドアを 去った。 開いた。 神崎警部だ。 テー。フが切れてしまったのは言うまでもない。 「いや、遅くなってしまった。冴木がなかなか私を離してくれなく 「開きましたよ」 円 2
? ら . 〈一第鶩ア ( 第 f 3 、、 0 、ヾ、 連続して四回もスースト。 神崎氏はというと、フォールドばかりを繰り返している。はなか ら、ギャンブルなど目的ではないと言いたげだ。 、。ィーラーは完全に白けきっている。 あまりに露骨な賭け方にテ 経費で落せるんなら、もっと思い切りよく遊んだらいいじゃない かと思うのだが、この人にはそんな考えは浮かびもしないに違いな ディーラーが不機嫌そうにテー・フルをノックした。 自分の番だというのに、うわの空でカジノ内を見渡している。 冴木を探しているのはわかるのだが : 私は肘で小突いて教えてやった。どうせまたフォールドだろう 「ああ、私か、 そう言うと、神崎警部は手元のチッ。フをごっい手で擱んで、 ドの前へ差し出した。」 「五枚のレイズ」 、何を考えているんだか、理解に苦しんだ。 残りの客もみな合わせた。 一「三回の・〈ッティングが続くうちに、チッ。フは堆く積み上って いった。神崎警部は、レイズを繰り返す。降りる気はないらしい ディ 1 ラーは早々と降りてしまった。 なるほど正しい判断だ。 べッティングがすべて終了して全員がオー。フン。 警部の手は川とのナチラル。 「公費をそうそう無駄使いできんしな。少しは元を取り返しておか んと」
るしかないのだ。 シリンダービンは五個。深度は八段階。約三万組、実質的には二 万組の鍵違いだ。一本のピンに一分というべースを崩したくない。 最終ラウンドのゴングは打ち鳴らされた。 手応えがあった。 ラスト・チャンスだ。ここで失敗すれば、後は尻尾を巻いて地球深度 , ーー 4 。 一分を少しまわっている。 へ逃げ帰るしかない。 ″タフネス″は運び込まれた。 奥から二番目へ移る。 ットぎりぎりだ。 またしても、搭乗手続きのリミ 指先。手首。腕。すべての筋肉の感覚がいつもと違う。 ロー。フの。フロテクトがないのがまだしもの救いだ。 下で。ヒッキングをやったブレイカーなど誰もい 無理もない。 ハッチ・プース 私と警部が待機したブースは、気閘室を隔てて、シャトルが発進やしない。 を待つ、発着工リアに継がっている。はほとんど 0 に近い 二番目がすんなり探れた。 ″タフネス″をガムテー。フでしつかり 固定式のテしフルの上へ、 手元が少し陰る。警部が背後から視き込んでいるのだろうが、少 と貼りつけた。 しも気にはならなかった。 ーのわかっているダイヤルキーをまず外した。ポルトアク私は、集中力の権化と化していた。 ションが即座に返ってくる。 三番、四番とも難なく探り当てた。 ビッキング・ツールは、あらかじめ、長めの糸で結えて腕時計の 一番手前の。ヒンが、一番手こずった。 ベルトに繋いでおいた。 それでも二分は要らなかった。 44 0 乙 00 冖 / ツールの一本を手繰り寄せた。 ビッキングは終了した。 。ヒッキングを開始した。 慎重にキーホールにツールを差し込んでいった。 六分四十七秒。上出来だ。 疑似キーを糸の先から手繰り寄せる。スライド式の鍵山を、ビッ ツールの先の爪が、一番奥のシリンダーピンに触れた。 キング・ツールの先の爪で、 4 2 6 3 7 にセット。 ビンを押してみた。ビンアク・ションが、いつもと微妙に違う。 前夜、二時近くまでここで、警部と私のトランクの錠を相手に、 二つあるうちの一方のキーホールへ疑似キーを差し込んだ。慎重 。ヒンアクションの感覚を何回となく試している。 に回す。 下でのビッキングの感覚はつかめたつもりだ。 シャーラインに沿って、シリンダーはゆっくりと滑るように回転 ここでやしていく。 の客室エリアまで戻っている時間的余裕などない。 ゼロ ゼロ