「ハカバカ。あたしがひさしさんに、こんなことするわけないじゃ ない。それに、あたしにだってはずせないんだもん、あたしとだっ ひさしは自分の股間を指差して言った。 「テイソウタイ ? なあにそれ ? 」 ・ツドに忽然と出 「そ、そうだっ , 麻美はきよとんと首をひねる。 せつかく麻美がまたおれのヘ 「つ、つまりだな、おれが浮気をできないようにするための : : : 」現してくれたというのに、これじゃあ美しくも激しい愛の世界に入 れないじゃないかっ ! 」 ひさしは眉根を寄せてじいいっと麻美を見つめた。 麻美は不思議そうに眼をしばたたいている。 ひさしはそのことに気づき愕然とした。 「まさか麻美。おれが眠っている間に君がこれを : : : 」 「なんてこったっ ! 」 おお神よ、と天井を仰いだ。 低い声でひさしは言った。 「え ? あたしがっ」 麻美はひさしの胸に顔を埋めて、びさしさんの・ハ力、、ハ力と胸を叩 麻美は驚いて自分を指差し、ぶんぶん首を横に振った。 いている。ひさしは、天井を仰いだ後、よしよしと背をさすってや 「どうしてあたしが、ひさしさんにそんなことしなくちゃならない 「しかし、こんな物が麻美と同じように、おれの股間に忽然と出現 しいや、あるはずはない。なん 麻美の顔がみるみる泣き顔になって行く。両眼のふちが赤くなするなんてことがあるだろうか ? でもかんでも朝目が覚めたら忽然と出現しているなんて安易すぎ り、じんわり涙が溜ってきた。 ひさしはあわてた。 る。手抜きだ。作者にも良心があるはずだ。ーーーすると、誰かがお 「ご、ごめんよ。そうだよなっ。麻美がこんなことするわけないよれの寝ている隙に、部屋に忍び込んできてこっそりつけたというこ なっ」 とになるが : : : ん、まてよ」 ひさしは金属ふんどしのために、ひどいガニ股で麻美に歩み寄麻美を抱きしめていたひさしは、部屋の空中を見つめ眉根を寄せ 、床に膝をついて抱きしめた。 ひさしは上はシャッ下は脛た。まてよ、ともう一度呟いて、刑事コロンボのように眉根を揉ん 毛むきだしというひどいかっこうだった。ちなみにプリーフはトイだ。 レに入るときに不便だったので、引っぱりたしてカッターで切って「そういえば、昨晩、寝酒を呑んでペッドに入ってうとうとしてい はずしてしまっていた。今や金属ふんどしがパンツがわりなのだっ たとき、なにか黒い影のような物にのしかかられたような気がした 。あれは麻美じゃないな。ーー麻美、君は昨晩、いつごろお ひさしは麻美を抱きしめた。 れのペッドに出現したんだ ? 」 「ごめんよ麻美、変なこと言って」 ひさしの胸に顔を押しつけてクスンクスンと鼻をすすっている麻 こ 0 5
やだん、と麻美は恥しがる。 で被われていたのである。 ひさしはよいしよっと、黄金色のふんどしを脱ごうとして、手を 、パンツね・ : : ・」 「ひさしさん、すつごし かけた。 麻美の言葉に、ひさしはプン・フン肩を横に振った。 お、おれ、いつのまにこんな物をはいたんだ「うむむ : : : 」 「。ハンツじゃなーい。 ろ ? うう、いてて」 ひさしはカんで顔を赤くして、それを脱ごうとした。 だが、びくともしなかった。 それは黄金色に光る金属製のふんどしそっくりの物だった。 「そ、そんな・ハ力な」 幅十センチほどの黄金色の金属板がぐるりと腰をベルトのように 巻き、それと垂直に、やはり同じ幅十センチほどの黄金色の金属板もう一度ガ = 股になってずりさげようとカむ。 するとどうだろう。ぐぐっと金属板が縮まり、逆にきつく締めつ が股間を前からぐるりと後ろへまわっているのだ。 つまり、黄金色の金属板のふんどしを、ひさしはすもう取りのよけてきたではないか。 うにパンツの上につけているのだった。 「ぎゃあああっ ! 」 ひさしはあまりの痛さに両手で頭を抱えてのけぞった。 「あてて : : : 」 ・こ、じようぶつ」 「どしたのどしたのつ卩 ひさしは金属板の上から股間を押さえ顔を歪めた。 、下こ引っ 「ひさしさん、どうしたの ? 」 麻美は床に膝をつき、ひさしの金属ふんどしをぐいぐし冫 ばろうとした。すると、ますます、金属ふんどしはきつく締めつけ 心配して麻美は訊く。 : 。なにしろ朝起きたばかりてきた。 「この金属のふんどしがきつくって : 引っぱるな 「ぎゃあああっ ! つ、潰れるうう : : : 。触れるなっ。 うう」 だから、元気よいのがしめつけられて : 麻美っ ! 」 腰を後ろに引くようにして内股になって呻く。 ひさしは床に倒れ、股間を金属板の上からかきむしり、体を h ビ 「んまあ、ひさしさん、かわいそっ」 そりにした。眼が半分白眼になっている。 麻美はべッドから降り、ひさしにべったり抱きついてきた。 たのむ麻美、なにか着てくれ。でないとますます痛「どうしよ、どうしよ」 「いててつー 麻美は両拳を口もとにあて、全裸のままひさしのまわりをおろお ろと走り回った。一 「それを脱いじゃえばいいのに」 「おお、そうか。そうだよな。なんでそれにはやく気づかなかった「いででで : : : 」 ひさしは顔面をぐしゃぐしやに歪ませて体をそらせ続ける。その んだ。やつばり麻美は頭がいいな」 腹の上に、いきなり麻美は背をひさしの顔の方に向けてドスンと股 ひさしは指で麻美の頬をちょんと突っついた。 3
いぜ。今日は悲しいことにまだ出現してから一度も愛してないけど ひさしは麻美を足にしがみつかせたまま、入口の中へ頭からとび 込んで行った。 「ひさしさん ! 」 「麻美っ ! 」 ひさしと麻美はもりあがり、ひしと抱きあい、むさぼるようにキ「なんじゃこりゃああっ」 スをした。 ひさしと麻美は歯をむきだしシェーをした。 へキサグラム 眼前に黄金色の砂を敷きつめたまわりが六芒星形のすもうの土俵 「次の人ん ! はやくきてん ! 」 があったのだ。壁や天井が黄金色の部屋の中に土俵だけがぼつんと 入口から杉山の声がした。 ある。向こう側に黄金色の超ビキ三姿のカスが立っていた。 「行かないでつ」 どいつもこいつも、この惑星の男どもは、 「おまえが最後かっー 唇をスッポンと音をたてて離した麻美が哀し気な眼で言った。 なんてひ弱なのつ ! 」 「行くもんか」 ペッと唾を吐いた。リサ・ライオ カスが吐き捨てるように言い ひさしは再び麻美の唇をむさぼった。 ンのように迫力があった。 と、そのとき、ぐいとひさしの腰が動いた。フラダンスのように 「す、するとみんなカスさんとすもうをして負けたのかっ・ クイクイツ一動 ~ 、。 へキサグラム ひさしは眼をしばたたいた。六芒星形の中央の土俵の横に白眼の 「うつ」 杉山が黄金色の軍配を持って、人形のようにぼけっと立っている。 びさしの唇と麻美の唇が離れた。唾の糸を長く引いている。 「スモウ ? なあにそれは ? これはジュラク星に古来より伝わる 「うつ、うつう ? 」 ずつ、ず、ず、とひさしの腰だけがスポット・ライトの方へ向かスンモウという儀式なのよ。この儀式で、女を打ち負かせた男だけ が子供をつくる資格を得ることができるの。古来から女より強い男 って行こうとする。当然体も引きずられた。 という掟がジュラク星にはあっ の子供しかっくってはダメー 「ひさしさん ! 」 よってわたしとおまえ て、それが儀式化されたものなのよ。 ひさしは麻美から引きはがされ、ずるずる引きずられてスポット は、スンモウの儀式をしなければならないの。おまえがわたしに勝 ・ライトの中に入ってしまった。 てば、わたしのこのビキニ型超合金貞操帯と、おまえの物がバカン 麻美がダッシュした。 ひさしの体がふわりと浮かびスポット・ライトの光のチー・フのと同時にはずれるわ。その後わたしたちは即、愛の世界へ没人でき るのよんワ」 中を入口へ向かって吸い込まれて行った。 ・ポーズを取り、ジ、ラクよん、とカスは呟、こ。 麻美もスポット・ライトの中へとび込み、ひさしの足にしがみつ突然セクシー 4
中で杉山さんや正雄君たちと住みはじめた 3 のマンションじ ゃないの。あたしもさっき目を覚まして、ずっとびつくりしてたの」 きよとんとした表情で、麻美が言う。 とういうことなんた ? : : : 寸たらずのカーテンの隙間から差し込んだ細長い朝日が、ロを開「これはいったい、・ け両腕を万歳するようなかっこうにあげて眠っている関ひさしの右そのときナイト・テー・フルの上の電話が、けたたましく鳴った。 ぎくりとしてひさしと麻美は同時に電話を見た。 眼に、ちょうどあたった。 関ひさしの右目蓋がヒクヒクとひきつった。 電話の隣に置いてあるデジタルの目覚し時計は七時一一一〇分を示し ていた。 ひさしはパッと両眼を開け、眩しさに呻き、顔を右にそむけた。 そむけた真ん前に麻美の顔があった。 ひさしはチラと麻美を見てから電話に腕を伸ばし、受話器を耳に 麻美はべッド の下の床にべたんと足をの字にして座り、眠ってあてた。 いるひさしの顔を、覗き込むようにじいいっと見つめているのだっ 「はい、関です : : : 」 〈ぶあっかもん ! 二人ともなにきよとんとしてるんだっ ! もう 麻美はひさしのレモンイエローのワイシャツを着ていた。前ボタ話は始まってんだぞっ ! 〉 ンのほとんどがはずれていて、白い胸のふくらみが見えていた。下「へ ? あんた誰 ? 」 は白のショーツ一枚きりである。 ひさしは眉根を寄せた。 「麻美。起きてたのか」 おれは岬兄悟たっ ! 〉 ひさしは眼をこすって微笑した。 「ミサキ・ケイゴ ? どっかで聞いたことあるような、ないような 「おはよう。ひさしさん : : : 」 麻美は表情を変えず、抑揚のない声で言った。 麻美も受話器に耳をいっしょにあてて聞いている。ひさしと麻美 「うん、おはよう。ん ? あれ ? あれれつリ」 は頬ずりするよなかっこうだった。 ひさしは上半身をガ・ ( と起こした。胸までかかっていた毛布が膝作者は一瞬絶句してから、ヒステリックに叫んだ。 までずれる。。ハジャマがわりのシャツを着ていた。 〈ばつ、・、 ーローっ ! おれは作者だっ ! 〉 「あれれ ? ここは : おれがサラリ ーマン時代住んでいたポロ 「あ、そっか。なあんだ作者か。いつもいつも出演料なしでカ マンションのの部屋じゃないか : : : 」 な、じゃなかった、素晴しい話に登場させてもらいまして、うんざ きよろきよろとひさしはあたりを見まわす。 りじゃなかった、大変楽しませてもらってます。どーもども」 「そうなの。ラヴ・ペア・シリーズ②『女神にグッ・ハイ』好評発売〈挨拶なんてしてるないのつ。これはラヴ・ペア・シリーズの枝 こ 0 0
。ひ弱な美青杉山を見おろした。 「杉山に人選をたのんだのが悪かったんだよなあ・ : 。わたしはおまえだけには絶対負けられん : ・ 「ま、負けられん : ・ 年ばかり選びやがったからなあ : : : 」 儀式を終え、ようやく超合金貞操帯がはずれたひさしは麻美に手・ : 」 伝ってもらいながらいそいで服を着ていった。スンモウの試合をす力スの背後でオレンジ色の炎がタ刊フジのようにメラメラと燃え るとはずれるらしい。マンションに戻ったらね D とひさしと麻美は た。瞳の中も燃えていた。 眼くばせをした。ーー麻美はポッと顔を赤らめた。 「ふふん。ばくだって負けないもん」 そのときだった。 杉山は対抗して少女マンガの瞳になり、背後に負けじとビンクの いつのまにか白眼から黒眼に戻って正気を取り戻した杉山が、ず・ハラの花東の背景を出現させた。 いとカスの前に立った。 カスとひさしと麻美はずつこけた。宇宙船もぐらりと傾いた。 「カスさん泣かないでください。忘れてはいけません。美青年はこ こにもう一人残っているじゃないですか。・ほくがお相手しましょ 杉山は自分を指差した。目覚めても正気ではなかった。そして、 宇宙船内の土俵のまわりをカスに負けた独身美青年たちが胡座を ぼくだってほおら、と真黄色のスポーツウェアのズボンをずりさ かいて取の囲んでいた。 げ、七十枚重ねの超合金貞操帯を示したのであった。 ひさしと麻美は土俵際の席に身を寄せあって座っていた。ポテト カスは一瞬点眼になって後ずさり、今度はだだっ子のように仰向 ・チッ。フをポリポリ食べている。 けになって両手両足をばたっかせて泣きじゃくった。 「はい、ひさしさん。アーンして」 「それをつけた者とは、必ず儀式をしなければならない掟なのじゃ 麻美がポテト・チッ。フをひとっ袋からつまんでひさしのロもとに ああっ , なんでおまえがつけてるんじゃああっー いやよおおおもって行く。 っ ! 負けたらどうすんのおおっ ! 」 っ ! 気味が悪いい 「ぬあっはつは。ぼくは子供の頃、町内のすもう大会ではいつも一 「きゃん。指まで食べちゃだめつ」 番だったのだあっ ! 地球の美青年の意地をかけて・ほくは戦うぞ麻美はあわてて指を引っ込める。ひさしは = ッと笑いながらロを っ ! ぬあっはつはつは」 もぐもぐ動かす。 杉山は大口を開けて笑った。 「おいしい ? 」 ひさしと麻美は頭を抱えた。 麻美は小首を傾げる。 カスはふいに泣き止み、すっくと立ちあがった。鬼のような眼で 「・ほくちゃん、おいちい」 3 4
美を引きはがし訊いた。 ひさしは腕組みをして、ひとりでぶつぶつ呟いた。 「あたし、わかんなー そのとき麻美が玄関までやってきて背後から声をかけてきた。 だって、いつも目が覚めると知らな 「ひさしさん。もう九時を過ぎてしまったけれど、会社はいいの いうちにひさしさんのペッドの中にいるんだもの。でも : : : 」 「でも ? 」 「たぶん明け方頃だと思うわ : : : 」 ひさしは麻美の言葉に、カタンと顎を胸まで落した。ーーー振りか 「そうかつ。すると、あの寝入りばなの金縛りはやつばり : たえり、自分で顎を戻して言った。 しか誰かの気配を感じて、おれは眼を開けようとしたんだ。すると「か、完全に忘れていた。おれはこの話ではまだ三流電気メーカー サラリーマン ・フシューツと顔にいいにおいのするなにか霧のような物がかかっ に勤める会社員だったのだ : : : 」 て、そのとたんおれはなにもかもわからなくなってしまい、朝目覚 ひさしはその後、コマ落しの動作で動いた。 めたら、こうなっていたんだ : : : 」 「ひでえ遅刻だっ。課長や係長にまたねちねち言われるうつ。杉山 「それじゃあ、誰か知らない人がお部屋に忍び込んできて、ひさしのアホにいびられるうつ」 さんとあたしにとってとても大切な場所に、テイソウタイを : : : 」 麻美に手伝ってもらってワイシャツを着、ネクタイを締め、靴下 麻美はひさしをひたと見つめて言った。 をはいた。 そして超合金製貞操帯の上からスラックスをはき、 「うむ。そうだ。そうにちがいないつ」 上着を着た。 ひさしはすっくとガニ股で立ちあがった。そしてガ = 股のままキ「じゃ、麻美行ってくるよっ ! 」 ッチンを通り、玄関へ向かった。 ひさしはドアの外にでて、靴・ヘラを麻美に渡して言った。 玄関を見、ひさしはショックを受けた。」 「うん。さみしいから早く帰ってきてね」 「や、やつばり : : : 」 「もちろん ! 五時一分でタイム・カード押して、エイトマンみた 鉄製ドアが十センチほど通路側に開いていたのだ。起きてから、 いにすっとんで帰ってくるからねつ」 一度もひさしと麻美は出入りをしていない。 ひさしは唇を尖らせて麻美に、チュッとキスをした。 「くっそう : いったい誰がこのおれに金属ふんどし、いや貞操鉄製ドアを閉めた。ーー麻美が内側からロックし、チ = ーンをか 帯なんかを : : : 」 けるのを外から確かめてからドアの前を離れた。 ひさしはドアの隙間を見つめてギリギリ歯ぎしりをした。 「くそっ ! おれも夜寝る前にきちんとドア・チェーンをかけとけ 「これが貞操帯だとすると、誰かがおれに女性とできないようにしば、こんなことにならなかったんだっ。とほほ : : : 」 ようとしたのだ。ううむ。いったい誰だろう : : : 。昔の恋人だろう ひさしはスラックスの下についている超合金貞操帯のため、ひど か ? まさか」 いガニ股で通路を走り、エレベーターに向かった。 6
関びさしと麻美は、中央の。ハネが緩んで窪んだ狭いシングルべッ た出現してくれたんだねっ ! 」 トの中で、毛布にくるまってひしと抱きあった。 パッとひさしは破顔した。 「うひょひょ。なんかすごく新鮮な感じがするな」 「うん。昨晩、ひさしさんが眼っているうちにべッ トの中に忽然と 現われちゃったの」 クスッと麻美がひさしの顔を見て笑った。 「ああ、よかった。もう二度と現われてくれないのかと思って、心 「ん ? どした ? 」 「だって、あの電話の作者の声って、ひさしさんにとってもよく似配で心配で。おれは夜もろくに眠れなかったんだよ。昼間は会社で 杉山のアホにいじめられるし」 てたんですもの」 「ごめんね。さみしかった ? 」 「そ、そうか ? まだ会ったことないけど。 、どんなやっ 「もちろん、さみしかったよ」 なんだろな : : : 」 、・ツドに倒れた。どこから ひさしと麻美はひっしと抱きあってへ ひさしは首をひねった。 「変なこと言って、ごめんなさい。作者なんて気にしないで寝ましか、どうもこいつら芝居が臭くなってきたな、というエコーのかか った作者の呟きがかすかに聞こえて消えた。 「ひ、ひさしさん、なにか下半身にゴッゴッあたる」 「うん。そうしよそうしよ」 ひさしに被いかぶさるように抱きついていた麻美は言った。 二人は徴笑してからタコのように唇を尖らし、チュッとキスをし 「そ、そうだ忘れてた。いてえいてえいてえっ ! 」 て、抱きあって眼を閉じた。 「どしたのどしたの ? 」 「どーしたも、こーしたも、いてええっ ! 」 激痛に関ひさしは両眼をカッと見開いた。 ひさしは上に乗った麻美をはじきとばし、べッドからガ・ハと起き 「いてえええっー いてえいてえいてえ ! 」 て、床に立った。 下半身一部の猛烈な痛さに、あわてて毛布をはいだ。 「う」やっー 「な、なにそれつ」 なんじゃこりゃああっ ! 」 自分の下半身を見、ひさしは思わず両手をあげて上半身だけで踊べッド の上にべたんと足をの字にして座った麻美は両拳を口も とにあて、眼を丸くして言った。 「な、なんだろうこりや ? : : : 」 「どしたの、ひさしさん」 隣に寝ていた全裸の麻美が目を覚まし、白い胸をすり寄せるよう ガニ股で立ったひさしも自分の下半身を見おろし、眼を丸くした。 にしてひさしに抱きついてきた。 ひさしはいつも、上はシャッ下はビキニ・・フリーフというかっ 「どーしたも、こーしたも。あれ ? 麻美じゃないか っ ! またまこうで寝ている。その紺のビキニ・・フリーフの上が、金色に光る物 っこ 0 ℃ / し
ーマノイド型の惑続いて白眼の杉山もスポット・ライトの中を、カスに負けじとセ 発情期に、若い娘は子種を持った男を求めてヒュ 8 ・ポーズをとりつつ吸い込まれて行った。杉山は、ハトャよ 3 それで今回は、地球のあなた 星へ旅することになっているの。 たちにお願いできないかなと思って、この杉山さんにあなたたちをん、とわけのわからないことを呟いていた。 集めてもらったわけなの」 ッパ、ダンベル、犬などを投げつけた。 全員、小石や靴やスリ クネクネと身をくねらせてしゃべっていたカスは、再び唇を突きやがて、ほどなくして、一番最初の男が呼ばれたのだった。 だし、ジュラクよん、と呟いた。セクシー ・ポ 7 ズの後そう呟くの空中に浮かんだ入口からは、ずっと垂直にスポット・ライト状の チュープのような光が広場まで降りている。 が癖らしい 「どうかしら ? お願いできるかしら ? 」 「じゃあみんな、おれ行ってくる。悪いな」 スーツ姿の男が自分を指差し、ニカッと笑った。なかなか美青年 できますできますと全員がガクガク、ガクガク激しく力強く頷い である。 ひさしも思わず頷いてしまったが、麻美の視線に気づき、はっと がんばれよっ、とか、ちきしようこのやろ、とか声があがる。 我にかえった。麻美は不機嫌な表情でひさしの右腕に左腕をからめ・ 二十九人の男たちは勝ち抜きジャンケン、アミダクジなどで順番 てきた。 をきめたのであった。ひさしは麻美の手前もあって、ジャンケンや 「嘘だよ麻美。ウソだからね」 クジには加わらなかった。 ひさしは麻美の耳もとにささやく。 スーツ姿の男は髪をかけあげ、スポット・ライトの光へ向かっ 「こらっ ! そこ私語はつつしみなさいん」 ピリビリと笛を鳴らして杉山がひさしを指差した。 頭上の入口から、白眼の杉山がぬっと顔をだし、おいでおいでを カスは麻美を一瞬チラと見たが、完全に無視して続けた。麻美はしている。あいつはいったい、なにを手伝っているのだろうか ? 。フッとむくれた。 とひさしは首をひねった。 「それじゃあ一人一人、わたしの宇宙船に入ってきて、せっせとわ男はチャールトン・ヘストンのように白い歯をみせて笑いつつス たしと子作りをしてくださいね」 ポット・ライトの光の中に入った。 カスはホテ : ・イ・ビルのきめのポーズのように、様々なセクシー 男はサインをしながら入口へ吸い込まれて行った。 ポーズをいくつかきめて、ジュラクよん、と呟きつつスポット・ラ拍手がおき、下品な指笛が鳴らされた。 イトの中を入口に向かって吸い込まれて行った。 一番めの男が入口に吸い込まれてから五分ほどが経過した。あた 全員上を見あげてやんやの拍手をした。テー。フや花が飛びかっ りは、しんと静まりかえっている。 ひさしと麻美は互いの腰に腕をまわして空中の入口を見あげてい こ 0 こ 0 こ 0
篇で〆切はもう眼の前なんだそっ ! 〉 の下をびろんと伸ばした。 「枝篇 ? 」 「まてよ、麻美の世界へ行く前だとすると : : : 。そうかっー 〈そうつ。おまえはまだサラリー マンをやめてなくて、ときおり麻らしてもおれたちはまだ合体融合しないんだ。この枝篇では、あれ 美がペッドに全裸で出現するという、第一巻目『魔女でもステデをしても両性具有者にならないんだっ。わお。やり放題だぜいっ イ』好評発売中の途中から枝分れした枝篇の世界なんだっ ! 〉 「あ、なーる。それでこのポロマンションにおれはまたいるわけ ひさしがうかれている間に、麻美はワイシャツをするりと脱いで か」 けっして大きくはないが作ったように形良い真白 床に落した。 〈そうつ。だから、そこんとこよーく理解して動いてくれよな。そな・ハストがぶりんと現われた。 れと、枝篇は三人称で行くから〉 さらに麻美は白のショーツに指をかけて脱ごうとし、ひさしに気 「あ、ほんとだ。三人称になってる」 づいた。 ひさしはあたりを見まわして納得した。 ひさしは両眼を D 型にし、じ、 ししいっと麻美が指をかけたショー 〈ということだからつ。もう一度目を覚ます所から始めるからな ツを見つめていた。 ティク・ツー行くぞっ ! 急がないと〆切までにあがんなく「やだん。そんなに見つめないで」 なっちまうつ。ひいいん〉 麻美は。ハスト近くまである髪を揺らせ、くるりと背を向けた。そ してヒップをひさしの方に突きだすようにして、するっとショーツ 作者は、半泣きの声をだして唐突に電話を切った。 「あ、ちょっと。 いったいどんなストーリー くそっ切れてを降ろした。きゅんと上にあがった真白なヒッ。フが現われた。 ヒップをひさしに向けたまま、右足、左足とショーツから引き抜 吐き捨てるように言ってからひさしは受話器を戻した。顔をあげき、クシャクシャのティッシュのようになったそれを床のシャツの ると、麻美がペッド の横に立ちあがっていた。シャツのボタンに手上にポトリと落した。 をかけている。 ひさしはスライムのように顔面をデレデレにし、毛布をまくっ て、パン。ハンと自分の横のシーツを叩いた。 「どしたんだ ? 」 「さ、おいで麻美。隣に入っておいで」 ひさしは眼をしばたたく。 「やだん。なんだか恥しいわ」 「たって、朝目が覚めたら全裸のあたしがペッドにいるんでしよ。 麻美はひさしに背を向けたまま・ハストを両腕で隠し、肩越しに振 服着てたらおかしいもん」 りかえって言った。そして背を向けたまま尻から、ひさしの隣に、 「あ、そかそかそか。そーだねそーだね」 ひさしはガクガク頷いた。そして、なにごとかをふと思いっき鼻しずしずと入ってきた。 ら」
「とってつけたような、むちゃくちゃな話しだな。作者のアホは枝びさしとカスは互いの顔を睨みながらドスンドスンと四股を踏 篇だと思って、 み、土俵の脇にあった塩をまいた。 しいように・ハ力なストーリーにしやがった・ : ・ : 」 杉山が黄金色の軍配を前にだした。 ひさしはぶつぶつ呟きながら後ずさった。麻美が背後からへばり ついてきた。 : 。はつけよ 「見あって見あって : ひさしとカスは互いの眼を睨みながら、身を屈めて両拳を黄金色 「やめてひさしさん ! 」 の砂についた。 ひさしはぎりぎりと歯ぎしりをした。そしてニヒルに笑ってやっ 「のおこったああっ ! 」 「よかろう。そのスンモウとやらを受けてたとうじゃないか。日本杉山が叫んだ。 と同時にカスが、すざまじい鬼のような形相でつかみかかってき 男児として、いやとは言えまい」 いやいやっ、と麻美がスネたが、ひさしは麻美を引きはがし、大た。 丈夫と頷いてみせた。キスも一回してやる。 「うおりゃああっ ! 」 「ひええ」 麻美は後ずさって泣き顔になった。 ひさしは手早く服を脱ぎ、ふんどしそっくりの超合金貞操帯ひと ひさしは恐怖にのけぞり、くるりと踵をかえして走って土俵の外 つになった。生白くて痩せた体だった。 に逃げた。カスはずつこけた。 「くわっす山のくわっちい ひさしの脱いだ服を麻美が拾い、ぎゅっと胸に抱きしめる。 。ハシン、とひさしは超合金貞操帯の脇を叩き、どすこーいと叫ん 杉山がカスに軍配をあげて叫んだ。 で、ガニ股で土俵内に入って行った。 ひさしは麻美に抱きっき胸に顔をうずめてぶるぶる震えていた。 「君と愛の世界に入るつもりはないが、勝負を挑まれちゃあ、引き麻美はいい子いい子よくがんばったわ、とひさしの髪をなでる。 下がるわけにはいかねえ。女だからと言って手加減はしねえぜ。ど カスは土俵の真中に突っ立ち、眉根を揉んでいた。体がわなわな すこ ーい。おひけえなすって」 震えている。 「おまえなあ : : : 」 「望む所だわ」 カスも土俵に入った。リサ・ライオンのようにボディ・ビルのポ そしてカスはワッと突っ伏して泣きだしたのであった。 ーズをきめた。 「この惑星にはわたしに勝てる男はいないのつ ! わたしと子づく 「そんじゃ始めるよん」 りをしてくれる男はいないのつー 一生に一度の発情期だというの いままでぼけっとしていた杉山が土俵に入ってきた。杉山は行司につ ! 選んだ星が悪かったのつリわたしがバカだったのつ」 の役らしい カスは砂を・ハン・ハン叩きながら、おいおい泣きはじめた。 2 4