「あいつにひっかかったのか ! そいつあまたーーーあいつはえらく イシトヴァーンは、ヨナの手からひょいとひったくった包みに腕の立つやつでな。しろうとの手をひねるなんざ、朝めし前だが、 手をつつこみ、冷肉をはさんだパンをとり出して、がつがっとかじめったに手は出さねえんだがな。へえ」 「このチチアに、民兵も、ヴァラキア公のつくった法もとおらない りながら、まじまじとあいてを見た。 というんなら、・ほくは、あいてと同じ武器でーーー」 それから、なおも何か云おうとするヨナを制して云った。 「ばーか」 「おまえ、いくつだ ? 」 イシュトヴァーンは、指をなめながら、 「十二です。でも、ばくーー」 「おおかた、おやじのさっきのようすをみて、阿呆なことを思いつ「十二や三のガキに何ができんだ。たとえ運よく勝ったって、ロを ぬぐわれておしまいさ。あきらめろ、あきらめろ」 いたんだろう」 「でも、イシュトさんだって、・ほくといくつもーー」 彼はそっけなく : 「おまえの姉貴が、チチアに売られてるとか、云ってたな。おやじ「十六だよ、おれは。しかしおらあ三つのときからここに育ち、サ のようすをみて、自分でばくちでかせごうとか、思いたったんだイをおもちゃがわりに、酒をミルクがわりにして育ってる。どた ろ」 い、おまえら、まっとうな衆とは、育ち、氏からしてちがうんだ。 第一、おれは、誰にはどこまでさからってもよくて、誰はこっそり 「お父さんは、だまされたんです」 目をかすめてもよくて、誰には決して手を出さねえって、そういう ョナは叫んだ。 「やつばり、ばくちで敗けて、かけ金のかたに、姉さんを売りとばおきてを知りつくしてる。それなりのうしろだても、ダチもいる。 されてーーーでもそのあとで、何とかしてくめんして、やっとお金をだから、大のおとなどもにもなめられもせずやってゆけるんだ・せ。 ええ」 つくってもっていったのにもう、利子がつくとか、証文がないとか ごまかされて、姉さんをどうしてもかえしてくれなくてーーーそれ「 : ・ で、どうしてもかえせというならもうびと勝負しろと : : : 勝ったら「姉さんを助けようって心がけは、けなげだが、しよせん、長いも 姉さんも証文もかえしてやるといってーー」 のにはまかれろ、ヤーンにはさからうな、というだろ。はじめに一 「あの、のつばのガロスがか ? 」 回でもばくちをやった、おまえのおやじがわるかったのさ。あきら めな。 この、忠告は、ひるめし代とでひきかえにしてやらあ。 「いいえ。お父さんのいってたのは《黒の : : : 」 じゃーな、ヨナ」 「《黒の・フルカス》かよ ! 」 イシュトヴァーンは、少年がカのぬけたようにがつくりとすわり イシュトヴァーンはきゅうっとロ笛を吹いた。そしてまた、せつ せとのこりをたべはじめた。 こむのを見やって、何となく気のとがめるのをしいてふり払い、か 6 4
ひと 「わが愛する男の生まれ変わりが、この国を訪れるという予知をす「それは大きな富ともなり、欲するものすべてを手に入れることが 出来ます」 るまではな。私はその予知を実現にみちびいたまでなのじゃ」 「ふむ。 : このククアナを破減にみちびい それでは、何のことはない。・ 女王はカーティスに向き直った。 たのは私たち自身なのだ。 苦い思いがこみ上げて来た。さらに正確にいえば、カーティスそ「カーティス。いや、いまではまことの名で呼・ほう。アスタル : の人だということになる。しかしカ 1 ティスはそれに気づいている愛するアスタルよ、そなたもそのダイヤに関心を抱いておるのか かすみ のかどうか、相変らず霞がかかったような目で、女王を見つめてい 「いや、私自身は興味はない」 るばかりだった。 ぎごちなくカーティスは答えた。 「じつはそのダイヤ鉱山のことなのですが : : : 」 とも グッドは咳払いするとつづけた。 「だが、私の友のため、あれを手に入れる手助けをしていただきた 「私たちがククアナに来たのは、イグ / シに会うことのほか、いま ひとつの目的があったのです。そのダイヤを掘り出すことです。 「さもあろう」 ・ : あなたが″ 三人の魔女″と呼んだあの鉱山には、まだ厖大な量の アイシャはにつこりした。 ダイヤがのこされているのです。それはご存知でしたか ? 」 「アスタルよ、そなたにはいかなる地上の富ももはや必要はない。 女王はふたたびかぶりをふった。 わたしがともにいる限り、のぞむものすべてが手に入る。 : : : 永遠 「それは、気づかなんだ。・ ・ : あの山には、そなたらの知らぬいまの若さをもそなたに与えることが出来るし、もしのそみとあらば全 ひとつの大きな神秘がかくされておるのでな。それをさぐるのにい 世界をも手に入れて差し上げよう」 そがしかったのじゃ」 アイシャは美しい声をひびかせて笑った。 でもの 「それではわれわれがダイヤを掘ってもさしつかえないでしよう「われらの結婚の引き出物としてな」 な ? われわれにはあれが必要なのです」 私はそらおそろしくなった。たしかに女王は常人ばなれした超能 まじゅっ 「なぜ、あのようなものをほしがる ? 」 力、そして魔術、妖術のたぐいも身につけているようだ。その力が 女王は皮肉げに唇をゆがめた。 現代社会に解き放たれたら、どういうことになるのだろうか ? ( 以下次号 ) 「あれらは、単に美しいだけの石くれではないか。しかもみがかな ければ光りもせぬ」 「しかし、現代世界ではたいへん貴重なものなのです」 私はおだやかにいった。 じしん とみ
「本当なら、今ごろは〈メリー・ウイドウ〉で、札東の勘定で忙し ウエンディの指先に、カがこもった。 いはずなんだ」 「や、やめてくれ ) ~ ( ・つつ ! 」 「人生ってのは、計画通りに行かない方が、おもしろいって、誰か レイクが叫んだ。 が言ってたよ。ジム」 その時には、すでに手遅れだった。 セイフティ 「ああ。しかし、それにも限度ってもんがある」 安全装置がロックされているのではないかという、レイクの希望 二人は、しみじみとうなずき合った。 も、所詮むなしかった。 「ねえ。あっち、やけに静かじゃない ? 」 、っそうけたたましく響いた。 狭い室内では、銃声は、し ジェーンが、声をひそめて言った。 ウエンディの手の中で、トン。フソンは暴れ回った。 「もう寝ちゃったのかしら ? 」 ガラスが割れ、棚は落ち、電灯が破裂した。 さっきまで聞こえていた驕声が、びたりと止んで、居間は不気味女の子たちは、髪の毛をおさえて、悲鳴をあげた。 な静けさに包まれている。 誰一人、ケガをしなかったのが、奇蹟のように思われた。 レイクが、ウエンディの手に飛びついて、トン。フソンを奪わなか 「のぞいてみよう」 レイクが、足音をしのばせて、居間に近づいた。 ったら、きっと誰かが血を流していただろう。 六人の女の子たちが、車座になって、何事かひそびそと話してい 「なにごとなのつつ ! 」 ジェーンとジムが、すっとんで来た。 なにをやってるんだ ? 半ば自失状態で、床に座りこんでいるウエンディと、レイクが手 にしたトン。フソンを見て、すぐに事情を悟ったらしい レイクは、少し背のびした。 「ああ。もうつ ! 」 とたんに、全身の血が凍った。 ウエンディが手にしているのは、ジェーンのトン。フソン・サ・フマ ジェーンは、地団駄をふみながら、叫んだ。 「なんてことをしてくれたのつ。銃はおもちやじゃないのよ。誰か シンガンではないかー にあたったら、どうするつもりなのつつ ! 」 「でね。ジェーンさんが、これをこうやって構えてー・ー」 レイクは、トン。フソンをジェーンに手渡して、言った。 危なっかしい持ち方だったが、ウエンディは、得意気に銃を構え 「セイフティを、かけておかなかったのかい ? 」 て、コッキング・ポルトを引いてみせた。ジェーンになりきったっ もりなのだろう。しかも、まずいことに、トリガーに指までかけて「もちろん、かけておいたわよ」 いるのだ。 ジェーンが、憮然とした表情で答えた。 「でも、あたしのミスね。こんな物を、そこらに投げ出しておくべ 「銀行の天井めがけて : : : 」 る。
「ふふん」 ジェーンは、鼻の先で笑った。 「行くんだ」 くるりと踵を返すと、昻然と顔をあげて、出口に向かった。 レイクが、強い口調で言った。 はっきりと聞こえてくる。 ・ハトカーのサイレンが、 「なんて日なのかしら」 ジェーンが、わめいた。 レイクが、ロを広げて持っているポストン・ハッグの中に、トンゾ ヘイズンの手から、空の・ハ レイクは、それには取りあわずに、 ' ソンを落としこみながら、ジェーンが言った。 グをひったくった。 「まったくだ」 「また来るからな。そん時は、しつかりしてくれよ」 ・ハッグのジッパーを閉めながら、レイクもうなずいた。 そう言い捨てて、レイクは歩き出した。 . 」 二人は、銀行を出ると、小走りにジムの待っ車に急いだ。 「本気じゃないんでしょ ? 」 さっさと銀行を出て行くレイクの背中に、ジェーンが声をかけ銀行の少し先に、後部扉を開けて、一台のイエローキャゾが停ま っていた。昨日の夜、ある大手のタクシー会社のカ 1 ポートから、 盗み出しておいたものだ。銀行の前で、扉を開けて待っていても、 あいにく、レイクは本気だった。 ジ = ーンは、きっとなって、ペイズンを睨みつけた。ペインズ誰にもあやしまれない車といえば、これしかない。 後ろからは、サイレンで他の車を蹴散らしながら、二台のパトカ が、どうして石にならないのか、不思議なくらいだった。 1 が、信号を無視して暴進して来る。 また、クラクションが聞こえた 1 ジェーンとレイクが飛び乗るのと同時に、イエローキャ・フは、急 「ジェーン、警察だ ! 早く " 】」 レイクが、出口のところで叫んだ。・ 発進した。 ジェーンは、さもいまいましげに、銀行の中を、ぐるりと見回し「遅かったな」 こ。トイフソンを持つ手に、リキミが入っていた。 運転手の帽子をかぶったジムが、前を向いたままで、言った。も てつきり撃ち殺されるものと早合点して、心の中で十字を切ったちろん、アクセルはべた踏みだ。 「なんか、あったのかい ? 」 者も多かったろう。 「とんだ邪魔が入っちまってな」 ジェーンは、トリガーを再び引きし・ほった。 トン。フソンが、手の中ではねた。 ソクミラーに映るジムの目に、レイクが顔をしかめてみせた。 「まあ、話したって、信じちゃもらえないたろうけどね」 銃弾は、ことごとく、客や行員の頭上を通過して、壁にめりこん 「ほーお」 だ。全員が、あわてふためき、悲鳴をあげて、床に伏せた。 0
0 豆 .. 夢を背負う中島、川又両氏の今後の御活躍る。 ア・ハエクでなく ) 。 空が見えるところで、風に吹かれながら しかし、それはあくまでも愛する側個人を心から願うものであります。 ・彼の本を読むとき、私はいつもペケット氏 の問題で、その人間が、たとえば仕事その やメリイと一緒にフロリダへ走っていた 他で一般的な評価を受けなければならない 川又千秋、中島梓両氏による公開書簡につり、すぐ目の前を駆けていくジェニーを追 ・場合、評価する個人によって・ ( ラつきはあ いては、この・さんをはじめ、大変多く いかけたりしていた。 るでしようが、欠点は″マイナス″になっ の方々からいろいろなご意見、お便りをいた むなしい。せつない。まるであたりにた てしまうのです。つまりそれは、過酷にも だきました。 ちこめていた優しい空気が吹きはらわれて ・″愛する、愛さない″″受け入れる、受け このような公開書簡の場合、自分の意見ば しまったみたいに。 入れない″を超えた次元で評価される訳で かりが先行してしまい、相手に対する反論は 心のなかに穴があいたようで、虚ろ。 す。当然の事ながら、対象が。フロの作品、 ″あげ足取り″的なものにしかならない場合 この穴をふさぐには、彼の作品を読むの あるいはそれを目指す作品である以上、ど もあると思います。しかし、今回は両氏とも のジャンルにおいても、その評価はなされ 相手の発言をよく聞いた上で御自分の意見をが一番なのに : Good Night Mr. Robert Nathan. もの ・る運命にあります。そして、″しし〃 述べられていた点が素晴らしかったと思いま あなたの夢の中にいつまでも : ・ ( 加 ) す。 ~ しし〃のです。小生の携わる音楽にせ from Johnney よ、美術、映画、すべてのジャンルで″ ″ものは勝ち残っていく : ・ いつものようにマガジンを手にと 中島氏の大きな情熱は、その結果である ある時、ふと手にした本が、いつまでも大 切にその人の心に残っていく : : : そういうこ り、中をちらちらと眺めていたところ、あ ・無数のパル。フのゴミをも愛してやまないと とが、良くあるものです。このお手紙を下さ うことでしよう。、、 る場所でふっと手が止まった。 った方は、小説との幸せな友情を持っことに 、ート・ネイサンが亡 最後になりましたが、六月号を拝見した信じられない。 至った方なのでしよう。ひと昔まえに「文学 もくなったなんて。 かぎりでは、川又氏もたまたま″いし″ に何ができるか ? 」という問いかけがしばし のを少女マンガの中に見出され、感激されあるとき表紙の美しさにひかれて手にし ばなされていたことがありました。文学には たのであって、それ自体が必ずしも、あの た文庫本、それが私と彼との出会いだっ おそらく、何もできないでしようし、だから ジャンルにおいて ししもの以外を排斥こ。 こそそんな問いを発さなければならなかった するという考えには繋らないのではないか現実の重さにたえかねたとき手に取るの のでしよう。しかし小説は、そして物語は人 はいつも『夢の国 : : : 』であり『ジェニー と想像します。 人の生活に潤いと夢を与えてくれるのです。 : 』だった。 いや、減多にお目にかかれない、作家の ところで、このお手紙の方は住所と氏名がど 9 一 他の作品がどうしても欲しくて、神田の こにもなかったのですが、至急お知らせくだ円 生の声を聞かせていただいた思いでした。 さい。本誌の最新号をお送りいたします。 誌を賛美 ( ! ) すると共に、我々の古本屋街を端から端まで歩いたことさえあ
それと対照的に、彼らが愛すべき三人の悪党たちは、それそれ疲レイクは胸に手をあてて、わざとセキこんでみせた。 「んじゃ、ジェーンさんは ? 」 れきって、ソフアにへたりこんでいた。 レイクとジェーンにパーポンのダ・フル、ジムにはジンジャーエ 「あ、あたしも、ほら」 ーポンのグラスを手に、ぎこちなく微笑んだ。 ルのグラスが運ばれてきた。 ウエンディとリッキーは、そろって、ジムの方に向き直った。 三人は、互いの顔を見合わせ、カ無く笑い、そして、なんとなく ジムは、ぎくりと身を固くした。 乾盃した。 アルコールとサブソニックが、疲れた神経を、ゆっくりともみほ 二人は、ジムの前に置かれた、ジンジャーエールのグラスを、意 ぐしていく。 味ありげに見つめている。 さしせまった危機を敏感に察知して、ジムが後ずさりした。 「ふあ ) ~ ・ ) 」 「あ、あのね : : ・・」 レイクが、大あくびをして、言った。 「さー ジムおじさん、踊りましよっ」 「しかし、タフな連中だな」 「そうそう。ほら、早く立って ! 」 「うんざりするほどね」 二人は、有無を言わせず、ジムの手を引っぱった。 ーポンをあおった。 ジェーンは、やけくそ気味に、 「え ? おい。あの。ちょっと・ : : ・」 熱い息を吐き出しながら、レイクをジロリと睨む。 とかなんとか言ってる内に、ジムはフロアの中央に、引きずり出 「そんなことより、本気で、あの子たちを引き連れて、銀行をやる されてしまう。 つもりなの ? 」 「まあ、犯罪史上には残るだろうけどね」 最初は、照れくさそうな顔で、リズムに合わせて、ぎこちなく手 足を動かしていたが、ウエンディたちに、 レイクは苦笑した。 ジムおじさん、若い ) ~ , 」 「きや その時、ウエンディとリッキーが、フロアから駆け戻ってきた。 「すてき。しぶいわく ~ こ 「ねー。踊らないのオ ? 」 などと、黄色い声ではやしたてられてすっかりノッてしまったの 「いや。今は、ちょっとね」 レイクは、ロごもった。ーー・すきを見て、ディスコを脱け出し、 もともと体が大きい上に、動きがダイナミックなので、ジムは、 明日の朝もう一度、オールドデール第一銀行を襲いに行くつもりだ たちまち店中の注目を集めた。店の方も気をきかせて、ジムにスポ から、とはロが裂けても言えない。 ット・ライトをあてたりしたもんだから、フロアはよけいに盛りあ 6 「そ、それに、ほら、酒飲んでるし「急に運動すると、心臓の調子 っこ 0
センジの左手を取り、親指と人差指のあいだのまたを甘噛みした。 分、二人は同じレベルでグリセード隊の仕事につけるようになるだ そのあと、抵抗しない手を自分の太腿にあてがい、しわになった黄ろう。タイの父親が手を回したりすれば、断ることになるかもしれ 5 っ宀 色いドレスのすそを腰のところまで上げさせた。彼の手は、やるべないけれど、 きことを知っているようだった。あとはまかせて、ジョージアは彼しばらくして、彼女はいった。「そんなにたくましい体なのに、 のシャツのボタンをはずしはじめた。 服で、かくしてたのね」そして、相手の体にさわる。 「疲れてない ? 」 「腕立て伏せをやっているのさ」そして、いたずらっ子のように、 「ヨガもね」 「いや」彼はいった。「きみは ? 」それは皮肉ではなく、優しい問 いかけだった。尋ねながら、眉が小さな字型に吊り上がったので彼女は笑った。「グリセード隊に入れるわよ、あなたなら。その それがわかった。 気になったら、魂の滑空だって、きっとできるようになるわ」 「そんなこと、今は、考えないつもりよ」彼女は相手のロに唇を押 し当て、手を彼のウエストまでおろした。彼のほうは、紳士的にそ 老人病患者治療施設 っとジョージアを押し倒した。脱ぎ捨ててあったナイトガウンの上 に、彼女は頭をのせた。 むき出しになった娘の肩に腕を回しながら、サイモン・ファウブ すべては思いどおりに運んだ。もっとも、彼女がドレスを全部脱 1 はいった。「きみに聞いてもらいたい話があるんだ、クイーク = いだのは、一回目が終ってからのことだった。そのあと、起き上がグ。これは十一年前の出来事だ」それ以来、彼はずっと話す相手を ると、明かりを暗くして、固い筋肉を持つ、胸毛の生えた・ ( センジさがしていた。唯一の聞き手は、あの / ートだけだった。「告白と のところに急いで戻っていった。二火は・ヘッドに横たわっていた。一 いってもいいだろうね」 彼女の頭は、相手の胸の上にあった。今ではたしかに疲れがあり、 「十一年前のこと、関係ないわ、あたしには」 腕や脚が重い。 彼は黙り込んだ。この娘は聞く気がないのだろうか。 しばらくして、彼女はいった。「結婚式、招待するわ、・ハセン そのためらいを察したのか、彼女はいった。「いいのよ。関係が あったりしたら、いやだもの。話して、・ハセンジ」 「来週の土曜日だったね」 こうして彼は告白をはじめた。クイ ークエグやタイ・コスターコ ンサイ 「タイとあたしの書類、ちゃんとできればね」 や盆栽が魂のためにやってくれたことを、良心に対して行うため 「できればいいね」本当にそう思っていたのだ。しかし、彼は別のに。「十一年前、ぼくは母親を都市核の老人病患者治療施設に入れ ことを考えていたし、ジョージアのほうも、明日、塔に行って、選た。知ってるかい、その施設 ? 」 択権や何かのことをタイと話し合うときのことを考えていた。多「ええ、多分」
しいこと、ウエンデ おいそれとできるほど、甘い仕事じゃないの。 レイクは、天井を見あげて、嘆息した。 イ ? これは映画やの世界とはちがうのよ。撃たれれば死ぬ 警察を呼んだ方が早いかも知れない。 し、捕まれば一生を棒にふることになるのよ ? わかってるの ? 」 その時。 「わかってるわ」 玄関のドアに、ノックの音が聞こえた。 「じゃあ、話は早いわ。 ケガをしないうちに、お家にお帰りな かなり乱暴に叩いている。 レイクたちの表情に、さっと緊張の色が走った。 「いやよ」 ジェーンはトン。フソンを手にし、レイクとジムもそれそれのパみ 「ウエンディ 1 ガンを握った。 「あたし、もう決めたんだから」 素早く窓辺にかけ寄ったジムが、カーテンの隙間から外をのそい 「強情な子ね ! 」 て言った。 「大きな声出しても、こわくないわよ」 「パトカーは見えない」 ウエンディは、全く動じる気配がなかった。てこでも動かないと「覆面かも知れない」 レイクよ、く いう表情で、ジェーンを見あげている。 ノワーガンを背中でかくすようにして、慎重にドアノ 「ウエンディ」 ・フに手をかけた。 かわってレイクがなだめすかしにかかった。 、クアツ。フに回る。 「ひょっとしたら、学校でまだ教わってないのかもしれないけど、 ドアが、またノックされた。 銀行強盗ってのは悪いことなんだよ」 e> し、刀 「下らない常識だわ」 レイクは、後ろの二人に目顔でうなずいてみせた。無言の合図が 「いや。下るとか下らないとかの問題じゃなくてね。やつばり、人返ってくる。 のお金を盗るのは、よくないと思うんだよね。うん」 ロックを外しながら、レイクが固い声で訊ねた。 我ながら、説得力のかけらもないな。 「誰だ ? 」 と、レイクは自分の言葉にうんざりしながら、言った。自分で思そのとたん。 うくらいだから、ウエンディに利き目のあろう筈がない。ウエンデ ドアが外側から、強いカで引っぱられた。、 イは、しれっとした顔で、応えた。 レイクが、思わずたたらを踏む。 「月並な道徳論をふり回さないで」 無理矢理開かれたドアの隙間から、にぎやかな驕声と共に、女子 お手あげた。 中学生の集団がなだれこんできた。 8
0 、 C5 0 コンピュータに 興味がある テワノ音楽が オカルトに がある ファッションに 興味がある アニメが好き 落語・漫オ ガ好き 便所へ行っ たら必す手を 洗う 心 lll ロ
女王の助けでジャガ族の魔の手を逃がれたアランたちの前に新たな試練 連載第 9 回 新・ソロモン王の宝窟 田中光二 、佐藤道明 イラストレーショ / 96