不斗学のア丿レ / ヾム 96 ドングリ 著者 しやほ・う 埴沙萠 発行者 岡本雅晴 ■印刷 株式会社精興社 写植 株式会社田下フォト・タイプ ロ製本 中央精版印刷株式会社 0 発行所 株式会社あかね書房 〒 101 東京都千代田区西神田 3 ー 2 ー 1 電話東京 ( 3263 ) 0641 ( 代 ) 1991 年 2 月発行 N D C 479 埴沙萠 ドングリ あかね書房 1 9 9 1 著者との契約により検印なし ◎ 1987 S. Hani, printed in Japan I S B N 4 - 2 5 1 - 0 3 3 96-5 54P 23X19Cm ( 科学のアルバム 96 ) 0 表紙写真 じゅくしたクヌギのドングリ ( 10 月 ) に裏表紙写真 ① ② ⑥ ③ ④ ⑤ ⑦ しん ①クヌキのおばな ( 4 月中 ~ 下旬 ) ②クヌギのめばな ( 4 月中 ~ 下旬 ) ③ことしの春に実をむすんだドングリの子 ( 6 月 ) さくわん ④昨年の春に実をむすんだドングリの子 ( 6 月 ) しゆえき ⑤クヌギの樹液にやってきたカプトムシ ( 6 月 ~ 8 月 ) ⑥秋のうちに芽生えたクヌギのドングリ ( 12 月 ) ⑦冬がれのクヌギ林 ( 1 月 ) ー扉写真 や笨をのばすクヌキ、のドングリ ( 4 月 ) 石目次写真 くいさん 高原に 1 本だけ生えたクヌギの木 ( 久住山 , 6 月 )
冬をこすドングリの子 ( 一月 ) 葉を落としてしまったクヌギは、 えだ らかれ木のようです。でも、枝さき ちゃいろ についている小さな茶色の芽を切 みどりいろ 、雪ってみると、なかは緑色で、生き いきしています。これは春になっ ふゅめ て、花や葉になる冬芽です。 ふゅめ それともうひとつ、冬芽とはす かたち こし形のちかう、まるい芽かつい ている枝もあります。これは、昨 をねんはる 」葉年の春に花がさいて実をむすんだ、 ドングリの子です。しつは、クヌ 、いわ - クギのドングリは、冬をこして、二 あき ねんめ 會年目の秋にしゆくすのです。 すがた はやし えだ はる かっ さく
はる 春のクヌギの枝さき。新しい枝や葉 , つほ、み が , いっしょにのびはじめます。指のような 形をしているのは , おばなのつほ、みです。 京ゆめ ・右 , 春になってふくらみはじめた冬芽。上の とかった芽が , 新しい枝や葉になり , 下のま るみのある芽は , おばなになります。左は , たんめん それらの芽の断面です。 はる 芽がふくらむころ ( 三月下旬 5 四月 ) 春がきて、ヤマサクラかさくころ ふゅめ になると、クヌギの冬芽は、きゅ、つ にふくらみはしめます 冬のあいだは、花の芽も葉の芽も おな かたち 同し形をしていましたが、このころ になると、はっきり区別かっよ、つ になります クヌキの花には、おばなとめばな かあります。まるい大きな芽は、お ばなになります。小さなとかった芽 えだ は、葉や枝になり、めばなのつばみ は、この芽の中にあります。 芽がふくらみはしめたクヌギ林に はる 、いわ おお かつけしゅん ばやし かっ
を」当三に 會クメギ林の小みちに落ちたドングリ。 暑い夏がおわり , クヌギの葉がかす ちゃいろ いろ かに色づきはじめるころ , 茶色にじ ゆくしたドングリが , 枝からはなれ て , いきおいよく落ちてきます。 ←落ちたドングリは , かれ草や落ち葉 の色とにているので , 注意してさか さないと , なかなかみつかりません。 動物の目につかないような , " かくれ 色 ( 保護色 ) " をしているのです。 はやし いろ
ぶんぶ 0 クヌギの分布 クヌギの分布は , シイやカシなどを しようようじルりんぶんぶ ふくむ照葉樹林の分布とほばかさなっ ています。 * クヌギのふるさど あわった、一 わった、一 こううりん 熱帯・亜熱帯 降雨林 熱帯・亜熱帯 モンスーン本木 照葉樹林 サノヾンナ・ ス - テ・ツフ。 らくようこうようじルりん 落葉広葉樹林 じようょ ( しんようじルりん 常緑針葉樹林 らくようしんようじルりん 落葉針葉樹林 砂漠 クヌギ林 わった、、 あわったい ⅢⅢⅢⅢⅧⅡ しようようじル叮ん 0 ※「篇作以箭」 ( 佐木高明著、 1971 年 ) に 掲載の図を一部改変。 瓔在、印本で野生のクヌギが生えているのは、岩手、 山形県より南の、あたたかい地方です。しかし、軒 県には生えていません。 らようせんはんとう 外国では、朝鮮半島、中国、、イノ 、。、ールに布してい ねったい こうざん かんたい ますが、寒帯や高山、それに熱帯には生えていません。 こうして布をみると、クヌギは、人類の生活しゃ きこう おんだん すい温暖な気候のところに生える植物のようです。そ おお みちか のため、大むかしから人類にとっては身近な木で、 ろいろなことに利用され、切られてきたことでしよう。 、い ねん クヌギのドングリは、冬をこして二年めにしゆくし さむ さむ ます。でも、寒いのがきらいなクヌギが、寒い冬をこ してドングリをつくるとい、つのは、すこしおかしいと おも ねったい 思います。もともとは、冬のない、しかし熱帯でもな ちほ、つ い地方が、クヌギのふるさとだったのでしよう。 うんなんしよう 中国の雲南省は、冬はあたたかく、夏はすすしい 一年中、春のようなところです。このあたりが、クヌ ギのふるさとなのかもしれません。 ちゅうこく ねんしゅう よ、つ しんるい ちゅうごく しよくぶつ なっ
0 會夏のクヌギの葉にできた , クヌギハアカタマ ノヾチの虫こぶ。クヌギハアカタマフシとよば れています。 たんめん ←クヌギハアカタマフシの断面。まん中にいる ようらう のは幼虫です。
* もくじ 国東半島のクヌギ林・ 2 落ち葉にまもられて ( 十ニ月 ) ふゅ ・ 8 冬をこすドングリの子 ( 一月 ) かっげしゅん がっ 芽がふくらむころ ( 三月下旬ー四月 ) がっちゅう クヌギの花 ( 四月中 5 下旬 ) 新緑のクヌギ林 ( 五月上旬 ) たま 花や葉にできたふしぎな玉 ( 四月 5 六月 ) しようりよく」しゅ らくよ、つ 常緑樹のドングリとその落葉 ( 五月 ) がっ カシやシイ類の花 ( 五月 5 六月 ) ・ ドングリの生長 ( 六月 ) むし クヌギ林に集まる虫 ( 六月 5 八月 ) がっしようしゅん 大きく育ったドングリ ( 八月 5 九月上旬 ) ・ 色づきはじめたドングリ ( 九月 ) がっげしゅん じゅくしたドングリ ( 九月下旬 5 十月 ) ・ いろいろなドングリ ( 九月ー十月 ) がっ ドングリのゆくえ ( 九月下旬 5 十月 ) ゆき 雪のクヌギ林 ( 十ニ月 ) ・ くにさきはんと、つ しんりよく おお ばやしあっ そだ ばやし せいちょう ばやし ばやし がっしようしゅん がっ がっ かっ がっげしゅん がっ かっ がっ がっ がっ がっ がっ がっ がっ かっ がっ がっ 十五年めことに切られるクヌギ林・ クヌギのふるさと・貶 らゆうはいカ ふうはいか 風媒花から虫媒花へ・ ドングリころころ・ ドンクリの林をひろげたのはだれ ? : ドングリのなかま調べ につばんふんか 日本の文化を育てたドングリ・ あとか去」・ ねん はやし よしたにあきのリ イラスト / 吉谷昭憲 かみやまひろみつ 神山博光 むかいなかまさ わたなへよ、つし 渡辺洋二 そだ ばやし
新緑のクヌギ林 ( 五月上旬 ) わかば 花かさきおわると、クヌギの若葉は、い っせいにのびはしめます。 花がさいているあいだは、颶でち 0 た花 ←粉か、めしべにつくのをしやましないよう に、まっていたのでしようか。葉はきゅ、つ みどり つつまれます。 / 、き 春に芽生えたドングリも、ぐんぐん茎を はんば - らいをイ のばし、本葉をひろげます。 ふゅ また、冬のあいだに、ほた木をつくるた めに切られたクヌギの切り株からも、芽か 新緑のクヌギ林。このころは日ことに新しい - ・なみどリ 葉がひろがり 、林は、もえるような若緑で光でてきて、葉をひろげます。このような芽 ひかリ あか 丿かかやきます。林の中も、明るい緑色の光 しいます。 にみちあふれ、ワラビなどがのびてきます。生、疋ん」、 / ひこば、 / と ) みどリいろ あたら ー」′んリよく はる はやし はやし かっしようしゅん かふ
はな 0 花のどこがたねや実に ? クヌギのドングリは , クヌギの実です。 植物学では , 果実といいます。果実とは , 子房のかべが生長して果皮となり , たね をつつんでいる実のことです。 リンゴやナシは , 子房ではなく花床が 生長して , 実のようになったものです。 このような果実を偽果 ( にせものの果実 ) とよんでいます。 しよく - つカ , く せいちょう せいらまう めしべ おしべ 子房 會上 , 虫媒花のヒナゲシの花會クヌギの花粉を , ツノヾ チの足につけてみました にやってきたミッパチ。下 , が , つきませんでした。 ツノヾチの足にたくさんつ 円丙は , クヌギの花粉。 いたヒナゲシの花彩 ) 。 が ま 進 は お が く す あ ン 媒ま 化ヵ 第 ) ば と り な イ 花かた を ら る で ま に ろ は わ や だ の ン け も し せ は れ ク と が リ き イ め は で や が 昆え ク た し の ン の 虫 花 よ 取ミめ ク ヌ の 強 キ、 が リ め い 集 ば の 時じ と の に な も ま 同 花代を お か・ そ っ な の 花ヵ、ば に ク に り・ む 粉 な は リ て に 昆え と き ナ か 風か の が き 虫 : 蜜ま 科ゕ も 媒 っ し で す が も き し 花ゕ た の ま 昆え き か 花 れ お 虫め せ 虫ま イ ま ら に 虫集第 だ 類 ば を せ ん せ の ん 媒 ん な よ つ や ま 足 び 花 花ゕ ク る に 昆え よ び リ 虫せ ら の ら心うはいカ、 うえ う公む そ・ はいしゅ 胚珠 おばな めばな 実 ( 果実 ) たね ( 種子 ) 果皮 ( 子房の皮 ) しはひ 種皮 ( しぶ皮 ) か士ル クヌギ めしべ おしべ 花びら はいしゅ 子房 胚珠 花床 実 ( 果実 ) 実の皮 ー ( 花床の皮 ) こんらゆう たね ( 種子 ) ー 内果皮 外果皮 ( 子房の皮 ) ないかひ リンゴ カ , 、、かひ
ぞうきはやし 0 武蔵野の雑木林 きの そうきはやし か = 畑す 雑木林とは、いろいろな種類の をた田ま 、ちてに木が生えている林のことです。 煢保品で有名になった、武蔵 とうきようきん、一う ぞうきはやし て野 ( 東京近郊 ) の雑木林は、コナ つま ラやクヌギなど、ドングリをつけ をを い草れ るナラ類の林です。 下〔入 むさしのいったい 大むかしは、武蔵野一帯もシラ しようよ、つしゅ カシなどの照葉樹の森でしたが、 ひと えす のちの時代に人びとが切ったため、 そのあとに、コナラなどが生えて ひ育 きたといわれています。 本第 雑木林の木は、燃秤のまいや したくさ 第づき切 にしたり、落ち葉や下草をたい肥 炭にす ひと せいかっ やめま にしたりして、人びとの生活に利 きたし まのお 用されてきました。 えどしたい とくに江戸時代には、わざわざ ぞうきはやし お ~ 、 ' ~ 半。クヌギなどを植えて、雑木林を育 、、「 ~ 。ド第 ) 、てたと〔う記録ものこ「て〔ます。 せきゅ てんき しかし、石油やガス、電気、化 学肥秤をつかう偲では、雑木林 を利用することもなくなり、あれ しゅうたくどうろ にてきました。そして、住宅や道路 すのため、姿を消していっています。 おお むさしの す力た そうきはやし その中国大陸のクヌギが、いつ、どこ を通って日本へはいってきたか、くわし いことはわかっていません。おそらく、 日本が大陸の一部だった時代で、いまよ きおん せんまんねん りすっと気温が高い、五千万年くらい前 のことではないかと考えられています。 ちそう なお、日本では、約二百万年前の地層 かせき から、クヌギの化石がみつかっています。 くに一きはんと・つぞうきはやし 国東半島の雑木林 くにさきはんとう 国東半島で、雑木林として利用されてきた林には、 大きくわけてニつあります。ひとつは、照葉樹の木 が、ひこばえで育っ雑木林です。もうひとつは、や せた土地や乾燥した土地に生える、クロマツを中心 いまはマックイムシの とした雑木林です。しかし、 ために、マツはほとんどかれて、かわりにスギやヒ ノキ、クヌギなどが植えられています。 のま 、よなて い葉「雑 もっ まを 国の野 とお ちゅうごくたいり 一て、つきはやし かんが ひやくまんねんまえ まえ くにさきはんとう