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検索対象: 科学のアルバム 森のキタキツネ
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1. 科学のアルバム 森のキタキツネ

人間のしかけたトラバサミにでもはさまれて、足の さきかちぎれてしまったのでしよ、つか もり 森の斜面には、フキノトウが芽ぶきはじめています。 しやめん あし ゆき 四月になると、雪どけはいっそう早くなり ふるあし しい足あとと古い足あとのみわけがっきにくくな ってきました。 きおく ふきそく わたしは記億をたよりに、不規則な足あとがっ こんど いていた森で、今度はキタキツネがあらわれるの を待っことにしました はつけん 四月二十日、森の斜面で一びきのキツネを発見。 ある よくみると、どこかぎこちない歩きかたです。 まえ よあ かんさっ つぎの日、夜明け前から観察していると、巣と たいばく みられるカッラの大木の根もとから、キツネが出 みぎまえあし しりしていました。しかも、そのキツネは右前足 ふきそく あし あしくび の足首からさきがありません。不規則な足あとは、 おも 、このキツネのものにちかいない、わたしはそう思 ちぶさ いました。それに、おなかにふくらんだ乳房がみ おや えます。どうやらめす親のようです。 こうび キタキツネは、ふつう一 5 三月に交尾し、やく 五十二日後に子をうむといわれています。この巣 こそだ でも、子育てがはしまっているようです。 がっ あし がっ しやめん がっ はや あし あたら

2. 科学のアルバム 森のキタキツネ

ちち おや ・もう子ギッネはめす親の乳をのみません。歯も 力なりはえそろっています ←子ギッネといっしょに草原であそぶめす親。す つかり元気をとりもどしました。 おや 夏の草原で 七月の強い日ざしが、尾根で察している わたしに、ようしゃなくてりつけます。 ちか 子ギッネたちは、巣の近くでそれぞれはら ばいになり、日中の暑さをしのいでいます。 おや きすのなおっためす親は、朝夕の二回、え さを運んできます。その時こくにあわせて、 すこ そうげん 子ギッネたちも、巣から少しはなれた草原に そだ 出てあそびます。育ちざかりの子ギッネは、 、 4 A 干 おや 冬毛がぬけおちてやせほそっためす親より大 おやくち きくみえます。でも、まだめす親のロをめが えさのさいそくをします。 けてとびかかり おや おお めす親は、大きくなった子ギッネのえささ まいにち きせつ がしに、いそかしい毎日です。この季節、ほ かの巣では、おす親も協力してえさを運んで いるのを、ときどきみかけました。しかし、 かそく おや この家族のおす親は、まったくそのすがたを みせなくなってしまいました。 につちゅうあっ おやきようリよく あさゆ、つ おお

3. 科学のアルバム 森のキタキツネ

ちち 子に乳をのませる時問は、一回にニ、三分です。そ の問、立ったままでけいかいをおこたりません ←めす親におくれないようにけんめいに歩く、生後や くニか月の子ギッネ おや しかん 子ギッネの成長 わかば 森がすっかり若葉につつまれると、巣はみ えにくくなり、その、フえ、からだ中をフョに かんさっ さされるので、観察をなげ出したくなります。 くろ 子ギッネは、黒い毛がちや色にかわり、鼻 さきもっき出て、キツネらしくなってきまし た。それに、親のいないときでも、巣から出 ちか て近くであそふようになりました。 おやまいにち ごぜん めす親は毎日、午前七時と午後三時ごろ、 かえ ネズミや鳥のひななどをくわえて巣に帰って きます。すると、えさをめぐって、うばいあ いかはしまります。しかし、えさを食べるの さいしょ は、最初にえさにとびついた一びきだけで、 おやちち ほかの四ひきはめす親の乳をのんでいます。 五月三十日、二ひきの子ギッネは、生まれ てはしめて、めす親につれられて巣を出てい 医、まー ) た。い よいよ、子ギッネに外の世界を くんれん おしえる訓練かはしまったのです。 かっ せいらよう にち おや そと せかい

4. 科学のアルバム 森のキタキツネ

こそだ キタキツネのめすは、三 5 八びきの子をうみます。 キタキツネの子育ては、もつばらめす親 十びきの子が出てきたときは、おどろきました。 ~ 果 のやくめです。 の出入口は数か所あるらしく、別のめす親は、最後 か′、にん まで確認できませんでした。 五月二十一日、めす親が巣にはいったあ そと と、九ひきもの子ギッネが巣の外へ出てき めす親が巣にいるのは、十分ぐらいです。その問だ け、子ギッネは巣の中から出てきてあそびます。 ました。つぎの日には、十びきの子ギッネ ちふさ が、めす親の乳房にむらがっていました。 二日後のことです。めす親が巣の前でク ちふさ ックッとなくと、五ひきだけか乳房にむら がり、あとの五ひきは、巣のそばであそん ちち はんふん でいるだけです。半分にわけて乳をのませ おも るのかと思いましたが、そのよ、つすはあり 、 .4 、をません おやおな せん 以前わたしは、二ひきのめす親が同し巣 かんさっ で、八びきの子を育てたのを観察したこと おなれい かあります。それと同し例なのでしようか それから三日後、巣には五ひきの子ギッ ネが残っていました。別 のめす親と子ギッ ネは、ほかの巣へ移ったのでしよう。 おや おや かっ そだ うつ べっ まえ

5. 科学のアルバム 森のキタキツネ

ひとりだち とおで がっ 九月二十日、それまでなん回も遠出をしていた子 おや かえ キツネか、とうとうめす親のところに帰ってこなく なりました。ひとりだちしていったよ、つです。 ほかの四ひきの子ギッネも、それから六日の間に、 つぎつぎと草原から去っていきました。めす親のけ こそだ がや、おす親が子育てに協力しなかったせいか、成 長がおくれてしまいました。そのため、ほかの巣の 子ギッネよりも、やく一か月もおそい旅だちです。 するどい目つきでえものをねらう子ギッネ。で も , 視力はあまりよくないといわれています。 ちょう そうげん きようりよく げつ 力し たび あいた

6. 科学のアルバム 森のキタキツネ

ちか 十月七日のダぐれ近く、巣からやく一キ 3 ロメートルはなれた森の中で、やっと一び であ かお きのキタキツネに出会いました。顔やから あし だっきから、このキツネが、 足の不自由な めす親からうまれたおすの子ギッネだとわ かり 6 ー ) た。 であ ひろ 出会った森のとなりは、広びろとした畑 です。そこで、食べかけのトウモロコシや くさりかけたスイカをみつけました。キソ ちか かわぎし ネの食べあとです。近くの川岸には、魚や みすとり 水鳥を食べたあとも残っていました。 キタキツネのえものは、おもにネズミや しようどうふつ ウサギなどの小動物ですが、夏から秋にか おお けては、昆虫や植物の実も多く食べます。 きせつ この季節、キタキツネは、おもに早朝と ゅうかたかつどう 夕方活動します。行動はんいがだいたいわ しゅうかん かってきたこの子ギッネにも、一週間に一 であ 度くらいしか出会えません。 がっ こんらゆう わ、つ しよくふつ こうどう なっ 、小に」ゅ、つ あき そうちょう さかな

7. 科学のアルバム 森のキタキツネ

しゅうかん 一週間なにも食べていないと思われる子ギッネ 不安な一週間 がっ は、空腹にもかかわらず、もの音ひとったてま 六月二日、朝からのはげしい雨は、昼すぎ せん。 には小ぶりになりましたか、巣にキソネのい きずついた足をひきずるように歩くめす親 るようすはありません。つぎの日もそのつぎ うつ おな の日も、やはり同しです。ほかの場所へ移っ ふあん たのだろうか。わたしは不安になりました。 ちか がっ 六月八日のダぐれ近く、やっと一びきの子 かお 巣から顔をのぞかせました。 ギッネが、 しゅうかん でも、この一週間、めす親のすがたはあり ません。もしかしたら、死んでしまったので ー ) よ、つカ 六月九日午後二時、森の斜面をあえぎなが おや らおりてくるめす親をみつけました。よくみ ほんある ると、左足二本で歩いているようです。 ようやく巣の前まできたとき、子ギッネた おや ちかとび出してきました。しかし、めす親は クオッとないて子を巣の中にいれると、その ( . いを耋ままうつぶせにたおれてしまいました。 あし おと おや がっ ひだリあし 一 2 うか・な あさ り、つ まえ なか しやめん あめ ひる

8. 科学のアルバム 森のキタキツネ

しゅうかん 子ギッネは、たん生後やくニ週間で目があき、 一か月後ぐらいから巣の外へ出てくるよ、つにな ります てまえ おや ←めす親は、巣の手前で一度あたりをけいかいし てから中にはいります そと ギ子こ ツがけ近たか 近尾ぉ つツ大五ラよんづいえ く根ね巣す回 しが 待まぎネの月のいでいな 度どにでの目め つのでよ十古となてがわの巣す は 移。、の 日ひすう七い考い らざ失がお・動与出て 田お とは な日切きえ け観と敗あす・か わ帰十 元も りたとい察ミひかるのらい 暗三気きの切き株象かをかすとらにキ四 心て時じい にがりのらはいるり ち夕日か のき間う育第顔株象中象でや心えこ こ今えがキ目め 中象ま ちつをのにすくをとと度どいッ でしネかての中あ 知し強にをはあネ斜 さたズら 0 、ぞかると : めし 巣すりを面 森るからようてさまつにまみを をによせ うやもせした近せつの はうままでららるた りづんけは、 わいでしるす巣すつよ えりすたで りそ歌え方 . 里 . く つを法 ほ カうきとうを キし しやめん

9. 科学のアルバム 森のキタキツネ

巣の移動 がっ 五月二日、カッラの根もとの巣には、 も、つキタキツネはいませんでした。どこ すかほかの場所へ移ったのでしようか。 五月七日、もとの巣からやく二百メー トルはなれた場所に、二ひきのキツネが とお いるのを、遠くからみかけました。 つぎの日、こんもりと土のもり上がっ た場所から、とっぜん、子ギッネをくわ えたキツネがとび出してきました。 すうふんご おな 十数分後、また同しキツネが、子ギッ ネをくわえて走り去っていきました。三 どめ 度目のときです。前を走るキツネを追っ すて、ぎこちない足どりのキツネがとび出 していくではありませんか かん わたしに対して、きけんを感したので しようか。またしても、ほかの場所へ巣 うつ 會を移したよ、つです。 ・みぎ ・ひたり がっ あし うつ っち ひやく

10. 科学のアルバム 森のキタキツネ

あとかき おお きせつ 北国の季節が移りかわるなかで、わたしは多くのキ であ タキツネの生と死に出会ってきました。 わか ある年の春、トラバサミに足をはさまれた若いキッ ネが、なんとか巣にたどりついたものの、うえのため あか はっこっか 死んでしまいました。白骨化した足にくいこむ赤さび たわなを、わたしはわすれることができません。 ばんあし ここに出てくる三本足のキタキツネは、たび重なる そだ くなん 苦難を生きぬいて、無事子どもを育てあげました。子 ま ギッネが去っていったタ映えの尾根にすわり、子を待 おや ちつづけるめす親のすがたが、心にやきついています おさな どうぶつえん 動物園のキタキツネしか知らなかったわたしの幼い であ のやま 子どもたちが、野山をかける子ギッネに出会ったとき、 「自由なキツネだね」といったのを今でもよくおばえて います。 もり ゅ、 しかし、森はまた深い雪にとざされ、風で舞い上か あし こなゆき る粉雪にわたしの足あともかき消されてしまいます。 とお きおく あのキタキツネは、今はもう遠い記憶の中でしか会え みぎたかひでおみ ません。 きたぐに さ はる うつ す ゅうば あし こころ おね あし かせ なか 右高英臣 ま かさ あ あ 1943 年、疲阜県多治竟に生まれる。 日本大学芸術学部写真学科を卒業。現在 フリーの写真家として、、、人間と自然との 調和 " をテーマに、自然界の山ふところ さ・ ) え、、らう で撮影中。主な著書に「ライチョウの四 季」「ウミネコのくらし」「エゾリスの森」 「キツッキの森」 ( 共にあかね書房 ) がある。 現住所北海道旭川市神居町雨粉 5 号 自宅岐阜県多治見市池田町 7 の 181 ・写植株式会社田下フォト・タイプ ・発行所株式会社あかね書房 〒 101 東京都千代田区西神田 3 ー 2 ー 1 電話東京 ( 263 ) 0641 ( 代 ) ・発行 1990 年 9 月発行 ◎ 1983 H. Migitaka, Printed in Japan 23cm X 19cm 56P N D C 489 ・科学のアルバム⑩ 森のキタキツネ ・著者右高英臣 ・発行者岡本雅晴 ・印刷株式会社精興社 ・製本中央精版印刷株式会社 著者との契約により検印なし I S B N 4 - 2 5 1 - 0 5 5 7 7 ー 9 みきたかひておみ