しゅうかん 一週間なにも食べていないと思われる子ギッネ 不安な一週間 がっ は、空腹にもかかわらず、もの音ひとったてま 六月二日、朝からのはげしい雨は、昼すぎ せん。 には小ぶりになりましたか、巣にキソネのい きずついた足をひきずるように歩くめす親 るようすはありません。つぎの日もそのつぎ うつ おな の日も、やはり同しです。ほかの場所へ移っ ふあん たのだろうか。わたしは不安になりました。 ちか がっ 六月八日のダぐれ近く、やっと一びきの子 かお 巣から顔をのぞかせました。 ギッネが、 しゅうかん でも、この一週間、めす親のすがたはあり ません。もしかしたら、死んでしまったので ー ) よ、つカ 六月九日午後二時、森の斜面をあえぎなが おや らおりてくるめす親をみつけました。よくみ ほんある ると、左足二本で歩いているようです。 ようやく巣の前まできたとき、子ギッネた おや ちかとび出してきました。しかし、めす親は クオッとないて子を巣の中にいれると、その ( . いを耋ままうつぶせにたおれてしまいました。 あし おと おや がっ ひだリあし 一 2 うか・な あさ り、つ まえ なか しやめん あめ ひる
ちか 十月七日のダぐれ近く、巣からやく一キ 3 ロメートルはなれた森の中で、やっと一び であ かお きのキタキツネに出会いました。顔やから あし だっきから、このキツネが、 足の不自由な めす親からうまれたおすの子ギッネだとわ かり 6 ー ) た。 であ ひろ 出会った森のとなりは、広びろとした畑 です。そこで、食べかけのトウモロコシや くさりかけたスイカをみつけました。キソ ちか かわぎし ネの食べあとです。近くの川岸には、魚や みすとり 水鳥を食べたあとも残っていました。 キタキツネのえものは、おもにネズミや しようどうふつ ウサギなどの小動物ですが、夏から秋にか おお けては、昆虫や植物の実も多く食べます。 きせつ この季節、キタキツネは、おもに早朝と ゅうかたかつどう 夕方活動します。行動はんいがだいたいわ しゅうかん かってきたこの子ギッネにも、一週間に一 であ 度くらいしか出会えません。 がっ こんらゆう わ、つ しよくふつ こうどう なっ 、小に」ゅ、つ あき そうちょう さかな
しゅうかん 子ギッネは、たん生後やくニ週間で目があき、 一か月後ぐらいから巣の外へ出てくるよ、つにな ります てまえ おや ←めす親は、巣の手前で一度あたりをけいかいし てから中にはいります そと ギ子こ ツがけ近たか 近尾ぉ つツ大五ラよんづいえ く根ね巣す回 しが 待まぎネの月のいでいな 度どにでの目め つのでよ十古となてがわの巣す は 移。、の 日ひすう七い考い らざ失がお・動与出て 田お とは な日切きえ け観と敗あす・か わ帰十 元も りたとい察ミひかるのらい 暗三気きの切き株象かをかすとらにキ四 心て時じい にがりのらはいるり ち夕日か のき間う育第顔株象中象でや心えこ こ今えがキ目め 中象ま ちつをのにすくをとと度どいッ でしネかての中あ 知し強にをはあネ斜 さたズら 0 、ぞかると : めし 巣すりを面 森るからようてさまつにまみを をによせ うやもせした近せつの はうままでららるた りづんけは、 わいでしるす巣すつよ えりすたで りそ歌え方 . 里 . く つを法 ほ カうきとうを キし しやめん
ンにト第「 ? ノしウ 生と死、そして新たな出会い せつめんのこ 雪面に残るキタキツネの活動のあとは、 あし 足あとや尿だけではありません。みはらし のよい日だまりには、直径四十センチメー ゆき トルぐらいの雪のくばみかあります。キッ ネが休んだあとです。また、深さ一メート ゅ」 ルをこすななめのあなをほり、雪の下にう すもれたえさを、ほり出したりもします 足あとを追っていると、キツネの死に出 会、つことがあります おやそた キタキツネは、親に育てられている間や びようき 一 ) 、つつ、つに ) ひとりだちの時期ー こ、病気やけが、交通事 おお 故などで多くが死んでいきます。そして、 それらの時期をぶしにすごしたキツネをま さむ ちうけているのが、冬の寒さとうえ、それ に人間の銃やわなです。 こうしたきけんをのりこえたキツネたち 新しいいのちをはぐくんでいくのです あし やす あたら によう かつどう あいた
人間のしかけたトラバサミにでもはさまれて、足の さきかちぎれてしまったのでしよ、つか もり 森の斜面には、フキノトウが芽ぶきはじめています。 しやめん あし ゆき 四月になると、雪どけはいっそう早くなり ふるあし しい足あとと古い足あとのみわけがっきにくくな ってきました。 きおく ふきそく わたしは記億をたよりに、不規則な足あとがっ こんど いていた森で、今度はキタキツネがあらわれるの を待っことにしました はつけん 四月二十日、森の斜面で一びきのキツネを発見。 ある よくみると、どこかぎこちない歩きかたです。 まえ よあ かんさっ つぎの日、夜明け前から観察していると、巣と たいばく みられるカッラの大木の根もとから、キツネが出 みぎまえあし しりしていました。しかも、そのキツネは右前足 ふきそく あし あしくび の足首からさきがありません。不規則な足あとは、 おも 、このキツネのものにちかいない、わたしはそう思 ちぶさ いました。それに、おなかにふくらんだ乳房がみ おや えます。どうやらめす親のようです。 こうび キタキツネは、ふつう一 5 三月に交尾し、やく 五十二日後に子をうむといわれています。この巣 こそだ でも、子育てがはしまっているようです。 がっ あし がっ しやめん がっ はや あし あたら
よる ィ攵 , 人家近くで人間の食べのこしやニワトリの死がい しんかちか にんけ・ん さかな ほした魚までもあさることがあります。
あとかき おお きせつ 北国の季節が移りかわるなかで、わたしは多くのキ であ タキツネの生と死に出会ってきました。 わか ある年の春、トラバサミに足をはさまれた若いキッ ネが、なんとか巣にたどりついたものの、うえのため あか はっこっか 死んでしまいました。白骨化した足にくいこむ赤さび たわなを、わたしはわすれることができません。 ばんあし ここに出てくる三本足のキタキツネは、たび重なる そだ くなん 苦難を生きぬいて、無事子どもを育てあげました。子 ま ギッネが去っていったタ映えの尾根にすわり、子を待 おや ちつづけるめす親のすがたが、心にやきついています おさな どうぶつえん 動物園のキタキツネしか知らなかったわたしの幼い であ のやま 子どもたちが、野山をかける子ギッネに出会ったとき、 「自由なキツネだね」といったのを今でもよくおばえて います。 もり ゅ、 しかし、森はまた深い雪にとざされ、風で舞い上か あし こなゆき る粉雪にわたしの足あともかき消されてしまいます。 とお きおく あのキタキツネは、今はもう遠い記憶の中でしか会え みぎたかひでおみ ません。 きたぐに さ はる うつ す ゅうば あし こころ おね あし かせ なか 右高英臣 ま かさ あ あ 1943 年、疲阜県多治竟に生まれる。 日本大学芸術学部写真学科を卒業。現在 フリーの写真家として、、、人間と自然との 調和 " をテーマに、自然界の山ふところ さ・ ) え、、らう で撮影中。主な著書に「ライチョウの四 季」「ウミネコのくらし」「エゾリスの森」 「キツッキの森」 ( 共にあかね書房 ) がある。 現住所北海道旭川市神居町雨粉 5 号 自宅岐阜県多治見市池田町 7 の 181 ・写植株式会社田下フォト・タイプ ・発行所株式会社あかね書房 〒 101 東京都千代田区西神田 3 ー 2 ー 1 電話東京 ( 263 ) 0641 ( 代 ) ・発行 1990 年 9 月発行 ◎ 1983 H. Migitaka, Printed in Japan 23cm X 19cm 56P N D C 489 ・科学のアルバム⑩ 森のキタキツネ ・著者右高英臣 ・発行者岡本雅晴 ・印刷株式会社精興社 ・製本中央精版印刷株式会社 著者との契約により検印なし I S B N 4 - 2 5 1 - 0 5 5 7 7 ー 9 みきたかひておみ
ろく あさひかわ - ちほう 北海道、旭川地方の森は、一年の半分近く が雪におおわれています。わたしは、そこで キタキツネの一家族に出会いました。これは、 その家族を一年間にわたって追いつづけた記 ~ 、 録です。 ほっかいどう ゅ」 ねんかん かそく てあ ねん一はんぶんちか
、行ま一食」所 のすの , ば場 。。しネまねらた たかべ やキしの③・・食す ① , を【物んやま んらいー・植ふのー かん , た ②はたったわ 古ん動まじべが あたら 朝霧の森で かえ 子ギッネのひとりだちとともに、めす親も巣に帰っ ノてこなくなりました。そのうえ、森は霧にとざされ、 子ギッネたちをみつけるのは、とても困黽です まくそうち そこでわたしは、キツネのふんをさがして、牧草地 ーっり ある なか と、つ や森の中を歩きまわりました。キタキツネは、石や倒 木のわなど目につきやすい場所に、ふんをよくします。 であ 新しいふんがみつかると、あすこそ子ギッネに出会え るよ、つにと、いのるよ、つなきもちになるのでした。 あたら
* もくじ きそく あし 不規則な足あと・ 4 どう 巣の移動・ 8 てあ 三回目の出会い・貶 チツネの成長・ 「や . あん 不安な一週問・ なっそうげん 夏の草原で・ ひとりだち・ あさぎり 朝霧の森で・ 落ち葉のペッド・ おやこ さし力し 親子の再会・ 冬のえささかし・ においのマーク・的 生と死、そして新たな出会い あ毟がき・ こうせいきようりよくやましたよしのぶ 構成協力 / 山下宜信 : 、〔一劦カ東京大学北海道演習林 森林動物研究室 ありさわひろし は \ 、有澤浩 、、、わたなべようし ト / 渡辺洋一一 かいめ しゅうかん 36 51