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検索対象: こんな暮らし方もある
75件見つかりました。

1. こんな暮らし方もある

私はガーンときて、『でも何時間も並んでやっと買えたのに』というと母は、『パパは夜 遅くまで働いているつうのに、子供はあんなくだらないことに金を使いやって恥を知りな さい、恥を ! 』と私をぶつので私は「わかりました』と涙でぐしょぐしょの顔をしてチケ ットのキャンセルに遠い所まで戻りました。 『ああ、私のモ ートンに会えなくなった』と私がグチをこ・ほすと母は、『あんたの教育を 間違えた。もっとお金のありがたみのわかるように厳しくしつけるんだった』とにらみま す。これ以上厳しくされたらどうなるのよ、と、 しいたくなります 誰のおかげで生活できるー その夜、彼女は三つ年下のイトコに電話をする。イトコも厳しいお母さんを持っ彼女と 「同類の女の子」だという。 「イトコは私に同情をし、『まったく、なんで家のママたちはあんなにス。ハルタなんだろ う』とため息をつきました。彼女はこの間、高校へ行く前に「行ってきます』といわなか ったためにひどく怒られたそうです。 『朝はニコニコとして行ってきますっていうのは当たり前でしょ ? ええッ ? 』と腕をギ ュッとっかまれて怒られたのです。その痛さ ! 私もよくわかります。本当に後で真っ赤

2. こんな暮らし方もある

「ユビワが ! 」 いい、私が大切にしていた指輪である。それまでに私が幾 と私は慌てた。小粒だが質の つか持っていた指輪は、貧乏時代に売ったり、また泥棒家政婦に盗まれたりして、後にも 先にもこれ一つしかなくなったという指輪である。 それまで私は指輪などに特に執着がなかったので、売っても盗まれてもさほど借しいと は思わなかった。しかしこのヒスイの指輪だけは気に人って大切にしていたもので、色ん な思い出もあり、また娘に遺してやりたいと思っていた唯一のものでもあったので、さす がに動転して顔色が変わった。 ( と後で娘はいった ) 待合室の椅子の下、そのあたりの床、あちこち探したが見つからない。その指輪を買っ たのはまだ私が若く、指にハリがあった時代たったが、歳月と共に指はだんだん痩せて行 き、指輪は少し大き目になっていた。それをそのまま、さしていたのだ。指輪は何かの弾 みにすべり抜けて落ちたのにちがいない。 昔、お互いに売れない小説を書いていた頃の文学仲間から聞いた話だが、パチンコマニ アであった彼は、毎日のように。ハチンコをしていたが、ある日、一人の客の手からこ・ほれ 落ちた。ハチンコ玉が、弾んで跳ねて隣の客のズボンの折り返しにヒョイと入った。丁度、 玉をすっかり使い果たしていた彼は、その客のズボンの折り返しから、飛び込んだ玉をつ ゆいいっ

3. こんな暮らし方もある

116 「俺だって苦しんでいるんだ ! 」 たの と男はいう。たしかに不倫の愛を愉しんだッケは男にも廻って来る。しかし男は廻って 来たツケを払えばよいが、女の方は人生そのものが曲がってしまう場合が往々にしてある。 もしもその人生に毎いを抱いた場合、「男に欺された」とはいわず、「私は覚悟をもってこ の道を選んだ」といえる自負心を持ちたい。男に気に入られようとして心を砕くよりも、 私はその自負心を培いたい。 おれ だま

4. こんな暮らし方もある

114 「あなたツ ! 奥さんには指一本さわっていないっていったくせに、どういうこと ! 」 といきまいてしまうのである。 夫婦として生活していれば、愛情がなくても妻を抱いてしまう、あるいは抱かなければ ならなくなるという諸般の事青に取り巻かれていることぐらい、わかりそうなものなのに、 をいかなくなるのだ。これが何とも厄 と第三者には簡単に思えることが、当事者にはそうよ 介なのである。 「わかっちゃいるけどやめられない」というやつだ。 覚悟の中には、自分が「わかっちゃいるけどやめられない」という状態になってしまう ことも入れておくべきである。つまり「孤独な苦悩に身をよじる、という状態に耐えなけ ればならないことを」、である。 愛人には資格がいる あきら 不倫の愛には安定はない。諦めと忍耐はどこまでもついて廻る。そうでない場合は闘い となる。愛人の妻との闘い、愛人との闘い、そして己れの情念との闘いだ。 たから不倫の愛に身を委ねる人には、資格が必要だということになってくる。まず第一 に経済的に自立していること、自分の仕事、進むべぎ道を持っていることである。それが

5. こんな暮らし方もある

フロのインタビ = アーである。その三冊は何と何ですか、と質問 タビューが出来るのは、。 といってしまった。そし するのを私はやめた。そしてでは来月のはじめにいらっしゃい て、 「新人類だ。しかたない」 と思ったのたった。 そうして新人類は市民権を得て行くのであろう。「新人類」だと思うことによって、非 常識、鈍感、粗雑、不勉強を我々は許してしまうのである。 「あなたのご主人をもう非難したりしないわ」 と私は三十八歳夫人にいった。 「そう ? 佐藤さんでもそういうようになった ? 」 味「いやもう、エネルギーがつづかない」 朝 と力なく笑う。この笑いはいうまでもなく敗北の笑いであり無力感である。 「いやあ、あなたたちにはマケました」 てャケクソでいうと、向こうは一緒に機嫌よく ( わけのわからぬままに ) 笑っている。 し そっそこの、あっけらかんとした明るさ、朗らかさ、こだわりのなさ、そこから生まれてく るものに好奇心を持とう、それに期待しよう、今はもはやそういう境地に達している。

6. こんな暮らし方もある

ほとんぼうぜん 読み終えた娘は殆ど呆然として、 「可哀そう、この人 : : : 」 とい一つ。 「何が可哀そうなの ! これこそ理想の母親です ! こういうお母さんに育てられたこの 人は、今後、いかなる困難、苦労に遭遇しても耐えて行ける力が養われているにちがいな いのです。あんたなんか、ママのこと、何のかんのといつも文句いってるけど、この人に くら 較べたら、ロックコンサートなんて、高校の頃から行き放題だったし、食事の後片づけな んてしたことはなかったし : 「わかった」 と逃げ出そうとするのをつかまえて、 「よく聞きなさい。このお母さんが立派なのは、少なくとも自分の主義、哲学、人生いか に生きるべきかということを、しつかり持っているその点である。大学の受験勉強のとき ふろ に、風呂洗いをしなかったといって怒るなんて実に見上げたものですよ。このお母さんは 確子供を叱るばかりでなく、自分も人並み以上の働き者。おじいさんの筆洗いをしたり絵の 私具をとかしたり、下の世話までしてるというではないの。えらい ! 実に立派な人だー さんたんささ ママは深く深く低頭して、このお母さんに敬意と讃歎を捧げ、弟子人りをお願いしたい」 「ま、なんなと好きにやって下さい」

7. こんな暮らし方もある

「何をしてることたか ! 」 と父はよく、吐き出すようにいっていた。ハチローは不良少年としてっとに有名 ( ? ) だったが、もうその頃は「少年」と呼ばれるような年齢ではなかったから ( 二十四、五 歳 ) 「不良青年」ともいうべき生活をしていたのだろうか。とにかく定職というものはな もら こづか かった。時々、東京からフラリと現われると、小遣いを貰って帰って行った。兄はソフト ないい声をしていて、よく縁側に立っては歌を歌った。 「からたちの花が咲いたよオ しろいしろい はーなが咲いたよオ : 兄が歌うと父は怒った。 「何た、その柔弱な歌は ! からたちの花が咲いたのがどうした ! 」 兄が『爪色の雨』という処女詩集を出した時も、父は怒っていった。 「爪色 ? 爪とは何だ、爪とは ! 爪みたいなチッポケなものじゃなく、もっと大きなこ とを考えろ ! 」 つぼ その頃、父の書斎に黒と茶色の人り混じった汚らしい壺が飾ってあった。それはハチロ りゅうきゅう ーが持って来て、五円で売りつけていったものだったが、ずっと後になってそれは琉球の これ シビンだったことがわかった。父はよく怒る人だったが、こういう時には怒らない。 つめいろ

8. こんな暮らし方もある

220 こういう時には同じ電車賃を払って大きな物を持ち込むのだから、気がひける、申しわ けない、 というのが普通なんじゃないのフ どうもこの頃の若者のセリフ、本人は道理にかなっていると思っているらしいが、我々 おとなにはどうにもふしぎで理解出来ないことが多い。 同じ電車賃払ってるから、どんなものでも持って入っていい しかし、電車賃が ただ 無料なら遠慮するーー・そういうことなのだろうか ? あっけ その難解さに呆気にとられて見ていると、別の若者がいった。 「人にメイワクかけなきゃいいんだろ ! 」 あぜん 又もや私は唖然として言葉がない。これまた難解ぎわまる発想である。 メイワクかけなきゃいいんだろ、だって ! メイワクかけてるじゃないかー サーフポードを持って電車に乗るのが悪いというのではない。私がいいたいのは、「で かい顔をして乗るな」ということなのだ。少しは遠慮しいしいほかの人に迷惑をかけてい ないかどうか、サーフポードがおばあさんのお尻を押していないか、子供の鼻を塞いでい ないか。それくらいの気くばりを持って乗れ、と いいたい。それが「人間らしさーという ものなのである。 今の若者が自分本位なのは、想像力というものが働かないためであろう。もう少し想像 力を働かせれば、ウェットスーツに身を固めて、人々が泳いでいる中へ、サーフポードで しり ふさ

9. こんな暮らし方もある

ある黒髪の娘さんが私の家に十日間滞在した。その間、我が家の洗面所、風呂場、娘さ か んに当てた部屋には長い脱毛が散乱し、私は毎日それを掻き寄せてはティッシュペー でつまみ取っているうちに、たんだんアタマに来て、彼女のその髪をひつつかんで、裁ち ハサミでザックリ切ったらどんなにキモチよかろうとあらぬ妄想に耽るようになった。 毛髪というものはふしぎなもので、頭にあるうはあんなに美しいものが、いったんそ こから脱け落ちると、枯れ落ち葉よりも汚らし不潔になってしまう。こっちに一本、あ っちに一本、うねうねとうねってタイルにへばりついていたり、部屋の隅に吹き寄せられ たりしているのを見ると、 いったいこの「長き黒髪の主」はこの脱毛をどう感しているの かと意見を訊きたくなる。 つや よく手人れされた艶やかな黒髪を見ると、その人が美しいものへの豊かな感受性を持っ る 味ている人のように思えるが、さにあらす、彼女はただ、人の目に美しく見られたいという 朝ことだけを念頭に置いている鈍感人間であることがわかるのである。 類 デパ トや駅や学校や汽車の手洗いへ行った人は、必ずその洗面台に散乱している黒い 人 はず て汚らしい脱毛を見ている筈である。私の友人はそれがいやで、用を足したあと、目をつぶ そって手を洗うという。 またある友人は、水で流せるものは流すが、流せないところまでヘばりついているのは 仕方ない、ティッシュで掃除をするのよ、といっこ。 ふけ ふろ

10. こんな暮らし方もある

でかい顔するな 1 る 来 醐しかし、許せないのは、やがてテレビが映し出した次のシーンである。 レポーターが「イクを持って、砂浜にたむろしているサーファー族の若者に問うている。 て「電車のほかの乗客が、迷惑だといっていますがフ : し そ若者の細い顔に薄笑いが浮かんだ。 「同じ電車賃払ってんだから、なに持って入ったっていいだろ ! 」 ちょっと待ってちょうだいよ。 、ところを見てくれる人 : : : 女の子たちですよ : : : 」 「つまり、カッコいし 「なに、女の子 : : : ではサーフィンを楽しむためにやるんじゃなくて、女の子に見せるた めにやるんですか ! 」 「そういう若者が多いと思いますよ。そうでない人は、湘南なんかではやらないでしょ 「だから波もないのにウェットスーツを着て海岸をぶらぶらしているのね」 まあ、それもひとつの、 ( 現代的な ) 青春の血がさせる姿であると思えば ( あわれとは 思うが ) 、許せないこともない。