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検索対象: バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)
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1. バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)

の五階に、妹の旭と二人で暮している。それまで旭は大学の寮にいた。小学校の教師になる のが、子供の頃からの旭の希望だったのだ。だが円と暮しはじめてから、旭は円のマネージ のんき ャーのような形になって、学校はやめたも同然になっている。しかし、暢気な彼女はマネー ジャーとして必ずしも有能という方ではない。 旭は子供の頃から姉を尊敬していた。お姉ちゃんはお父さんとお母さんのいいところばっ もら かり貰ってる、どうして私はこう、悪いところばかり受けちゃったんだア、と始終いってい れいり た。円は母の怜悧さを受け、旭は父のお人よしで無鉄砲な面を貰っている。スーツと鼻筋の 通った、日本人形のそれのような円の鼻は母譲りだが、大きくて強い光を放つ目は父にそっ くりである。旭は父の肉の厚い丸い鼻と母の古風に細い目を受けている。二人に共通してい るのは、父譲りの受けロのところだけだが、 「その受け口がさ、お姉ちゃんの方はなぜか可愛くてイロつ。ほいのよ。なのに私の方はちっ とも可愛くないんだなア。なぜかと思ってよくよく見るとだね。こっちは顎ががっしりしす ぎてんのよ。ロは同じでも、顎が違うんだ : : : 」 と旭はいった。 ゞ彼女は姉を敬愛しているので、姉を愛している人 旭は坂口をステキな男だと思ってした。 / のはみんな好ぎになる。しかし坂口はなぜ妻と別れて円と結婚しようとしないのか、それが旭 「には不満である。 月曜から金曜までのワイドショウのプロデーサーにとっては、金曜日の夜が一番くつろ あさひ あご

2. バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)

49 ふナりの男 で : : : 失礼ですが、どちらさまでいらっしゃいますか」 「いえ、あの、よろしいんです。また明日かけます」 急にそんざいにいうと急いで切った。棍棒で殴られでもしたように頭がガーンと鳴ってい た。やつばり、と思った。二人はどこで何をしているのか ? 何も知らないで穏やかな声で 応答していた民枝に腹が立った。夫を疑ったことなど一度もない、信し切った妻の声だった。 しやく その民枝の幸福が癪にさわった。あなたは何も知らないで、裏切られているのですよ、とい ってやればよかったと思った。 呆とべッドに腰を下ろしていると、目の前の電話が鳴 0 た。 「あ、おれーー」 忘れていた故郷からの便りのように坂口の声がいった 「今、まだ銀座にいるんだけどね」 電話の後ろからざわめきが聞えている。坂口は今日、スポンサーの招待で出かけているこ とを、円ははじめて思い出した。 「遅くなったけど、行くよ」 こ「もしもし、もう三十分もしたら行くからね」 突然、かっとした。前後を忘れて叫んでいた。こみ上げてくる吐瀉物のように一 = ロ葉が出て 来た。 う 、」んばう としゃぶつ

3. バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)

240 花子が「もしもし」というと、電話の向うで郁也の声が「ハイ」といった。それきり何も いわないので、また「もしもし」というと、また「ハイ」と答えた。 「郁也くんでしょ ? そうでしょ ? 」 かす というと、暫く黙っていた後で微かなすすり泣きの気配がした。 「郁也くん ! どうしたの ? 郁也くん : 花子が叫ぶとそのまま、電話は切れてしまった。 「それつきりですか ? 」 「またかかってくるかと思ってじっと待ってたんですけど : : : 」 「かかって来ない ? 」 「ええ。それでもしかしたら加納さんの方へかけているかもしれないと思って、かけてみま したの」 花子は心配そうにいっこ。 「どうしたんでしよう ? 」 修次は今日の博道の話を、かいつまんで花子に伝えた。 「で、・ほく二、三日うちに行ってみようと思ってるんです」 「じゃあ、私も ! 」 花子は飛びつくようにいってしまってから、気がついていい直した。 「でも私なんか、顔を出さない方がいいかもしれませんわね ? 」

4. バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)

「そんなことを、なんだってあの人は君に : 「修次さん : : : 」 迸るように高い声が出た。 「あれは私なの : : : 私がいってしまったんです : : : 」 「あの時、あなたが有田牧場へ行ってるってことを奥さんから聞いて電話をかけたら、河合 さんの声が出て来て : : : 河合さんも一緒だと思ったら、私 : : : カーツとなって : : : だって河 合さんは前からあなたのこと、好きなんですもの : : : 私、それを知ってるの。そのことで苦 しんだ時期があるのよ。だもんだから、私、我を忘れて、坂口さんにいってしまったのよ。 あなたが河合さんと福島県へ行ってるって : : : そうしたら坂口さんがなんでそんなところへ 二人で行ってるんだろうっていうもんだから : : : ついうつかり、そこに郁也くんがいるのよ っていってしまったの : いってしまってからも気がっかなかった。坂口さんがこんなこと をするなんて、想像もしなかった : : : 」 ろ 一息にそれだけいって修次の答を待ったが、修次が何もいわないので、「ごめんなさい」 し うとつけ加えた。 顔「私、なんてダメな女だろうとっくづく思ってます。妄想と嫉妬に取り憑かれて、こんなに も逆上したなんて : : : そんな人間だったなんて、自分でも思ったことなかったの : : : 」 「わかった」

5. バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)

になったのはそのためだ。 だってあの人はあなたを愛しているわ、多分、奥さんよりもあなたを愛してる。 だって奥さんはあなたについてはすっかり安心してるでしよ。その安心の分たけ、河合さ んとは違うのよ。河合さんは燃えてるわ。あなたの愛が欲しくて一所懸命になってる。だか ら私、河合さんが気になるの。あなたがいくら河合さんのことは何とも思っていないといっ ても、安心出来ないの。河合さんはあなたへの愛情のために郁也くんを引き受けたのよ。た ってあの人には郁也くんの面倒を見なければならない義理は何もないんだもん : : : 私それが 気にかかるの。 円は民枝よりも、河合花子の存在を気にしている。円にそういわれるまでもなく、修次は ・ほんやりとそのことを意識していた。 有田牧場に一緒に行きたいといった時の花子の口調に、どこか浮き浮きした響があったこ とを修次は思った。花子の好意をいいことに、郁也を押しつけたことが悔やまれた。 修次からの電話があったことを円が知ったのは、その翌日の夜に入ってからだった。 乱「あ、そういえば、加納さんから電話があったわ、昨日の朝 : : : 」 テーブルにタ食を並べながら、ふと思い出したように旭がいった。 混 「昨日の朝 ? 」 とが 咎めるように反問した円に、

6. バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)

11 「円の朝」 の妻 な と る いし、 ア の 今かる ン 彼かあ 生 い地にわそ とそ オこ 。ん 。は女な いん相女 のんも 対 な に円 日 回でとす浮な 優 待 な談 の もの う った ク ) る気 答し の菊回そ目 も つ回て ねの ひ よ地最を 答行 。が べ地答れ冫 て テ直者 がう も低し 女 いはく先 彳皮 らは 苦が のた房 る聞 も の女 : 男 フ ー子はし と 笑ね 、くそ けの じ の 力、の の ンで 、見の し 三妹 妹 と き あ チれ でな よ やと 屯、 に あく なま な 理 . 、 えう しる ケ に 円手 、手 ん り 子るな て る し 、て ツ が ト外出 か ー者のだ 出 だも 、句別 れ の と かれ でし し よ 、も方 、す 配でれ は頃 す かう るな女る じ 、女 らわ 、ち し しは 今か め役性れォ て 彳皮 なの房な や 、が弁な た 女・し ん にのん 日 っ らがな っ 護 て何 て も 目 て し、 彳皮し 、いさ気か士 でのね : す届 女る 人 のなと る し、 生と 、回く ま かか は 盛わ 、場別答な な 開面れ つ性 ッ んか る か し、 が とた雑 、の けにな と っ チ 冫こ な活さ し : 女・士 て イ に一 し 、気 . し 、て の 何 ム甼ろで 別し わが は編 も 主 です 、人 れる よ出別気 、集 知 と はやよ ち の が専長 暗ー 。る やだ れ ら る いが 。るあらばと 何 な し よそ門 と な と べる四 き 。回離 さ彼 で り れ冫 回 か 婚 答 にがは の も い女 な よ 者 甲、も男女 離歴 の る 婚四 をそ と や っ よ のは 、し、 : 連 視 っ 甲カ 歴回 ナこ て斐。、つ をと わ 、性ば ば し 葉 者 け じ女よし はを フ 何 、初 じ は や

7. バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)

返事を待たずにドアーが細目に開いた。 「どうかね ? ご機嫌は ? 」 坂口の声を聞くなり、慌てて引っかぶった毛布から目だけ覗かせて、 「ご機嫌 ? 悪いわー 「まだ悪いのか。困ったねえ」 坂口は不遠慮に部屋に入ってくると、勢いよく窓のカーテンを引いた。 びより 「いい天気だよ、ほら : : : 絶好のゴルフ日和だ」 「じゃあ、行けば、ゴルフに」 つつけんどんにいっこ。 「ところが行けない : 「どうして ? 」 「しなくちゃならんことが出来たからさ」 「なあに ? 」 坂口はべッドに近づいて来て、円の顔に唇を寄せた。 の「ご機嫌をとり結ばなくちゃならないからね」 坂口は拒もうとする円を押えつけて無理やりキスした。 ふ 「何を怒ってるの ? 」 べッドに乗りかかってあやすようにいっこ。

8. バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)

「よしなさいたって、そう簡単にいかないから困っちゃうんですよう。もう一一年も想いつづ なぜかはしゃいだ調子になった。 「二年も ? なんでヤラないんです。ャレばいい」 淳平はヤケクソのようにいい捨てる。 「やればって : : : そう簡単にいかないんですよ 「どうして ? 「奥さんがいるの」 「いたってかまわないじゃないか」 急に言葉が乱暴になった。 「その奥さんを愛しているの、彼は」 「そんなことは別だよ、・ほくなんか、三人の女を同じように愛している 「でも彼と先生とはちがうの」 「どうちがう ? 同じ男じゃないか」 「ちがうんですよ、彼は。そんな人じゃない」 朝 の淳平は新しいものを見つけたように、改めて円を見つめていった。 「こりゃあ、驚いた : : : 深刻に惚れてるんだなあ」 「どうしてわかります ? 」 け

9. バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)

めじり 二人とも思わずそう訊ぎたくなるような笑顔だった。円の好きな、修次の目尻の笑い皺が、 まるで花子への、愛情の証拠のように惜しみなく向けられている。修次は柔和な男だったが、 局であんな笑顔を見せたことはない。少くとも円は一度も見たことがなかった。 したい、どうして二人が : : : と思った。よりにもよって : : : と思った。しかし、だ からといって、二人が恋愛関係にあるとは限らないわ、とすぐに思い直した。二人はただ、 仲のいい、気心の知れた友達なのかもしれない。い や、多分そうだ。売れないアナと成績の 上らないプロデーサー。考えてみると組合せとしてはそう不思議ではない。寂しい人間は 寂しい人と話が合うのだ。最初は花子が何か相談を持ちかけたのかもしれない。修次は優し い男だから、親切に答えたのだろう。 いったん 一旦はそう思ったが、その考えの脇から噴き出す蒸気のように、もうひとつの想像が噴き 上った。 寂しい者同士が寄り添って行く : : : 孤独が二人を惹き寄せる : : : 知らず知らずのうち に相手に慰めを見つけている : : : 気がっかないで求めている・ : 「どうした、急に黙ってしまって : : : 」 淳平の声に我に返った。 「芸能レポーターでもいたの ? 」 「え ? ん 円は曖昧に笑った。その笑い顔はぎごちなくこわばっている筈だったが、淳平は気づかず わき さび じわ

10. バラの木にバラの花咲く (集英社文庫)

・ : 民枝さんがいなかったら、加納はどないになってるか。野垂れ死するか、それとも : ほ くみたいになってるか。とにかくあの人はよう出来たヨメさんや。うちの仕事で今、九州へ 行ってもろてる。民枝さんがおらんので、こんなところへ行きよったんやな」 しいつつ、佐久間は机の上の葉書をもう一度手にして、それを円に渡した。 ーー千葉県銚子、犬吠の近くの外川 それをくり返しながら円は小雨の中を傘もささずに歩いた。今すぐにでも修次に会いたカ 例の仕事も行き詰り、また別の行き詰りもあって : : : と、くり返し思った。別の行き 詰りもあって : : : 別の行き詰りもあって : : : 円は思った。彼は円との関係を清算しようと考 えているのか ? : ・ 梅雨の街は色彩を失っていた。雨の日曜日のせいか、誰も通らない。街はいつもの倍も広 ろく、魚眼レンズで覗いた景色のように円を取り巻いていた。突然、めまいがした。思わず街 灯に片手を突いて耐えた。後ろから現れた母娘らしい二人づれがふり返って、 の 顔「円さんですね ? い つも見てますー とい、つのに、 「ありがとう」