できるあのものの方へ向きを変えて逃げ出し、それら、指 う、と思う」 差されたものよりも、本当に一そう明らかだと信ずるだろ 「それはそうに違いありません」と彼は言った。 う、とは思わないか」 「そしてその後では、もう、その太陽について、これこそ 「ええ、その通りです」と彼は言った。 季節や年を供給するもの、また見られる場所にある一切の 「しかしもし」と私は言った、「人が彼をそこからカずく ものを管理しているものであり、また或る意味では自分たぞ でデコボコの嶮しい上り道を引きずり、太陽の光のところちが見ていたかのもの一切の原因でもある、ということを まで引きずり出すまで、放さないなら、引きずられている推論することができるだろう」 間は苦しがって、腹を立て、光のところへ出てきた時に 「もちろん」と彼は言った、「それへあの後では進むでし は、眼は光線でいつばいになって、現在真実なものと言わ れているものを、一つも見ることができないだろう、とは 「それなら、どうだ。彼は最初の住居とそこでの知恵とあ 思わないか」 の時一緒に縛られていた人々とを想い出して、自分をその 「ええ、突然には、できないでしようーと彼は言った。 変化の故に幸福だと思い、その人々を憐むだろう、とは思 「それじゃ、慣れを必要とするだろう、と思う、もし上のわないか」 方のものを見ようとするなら、ね。そして最初に彼の最も 「ええ、それはたしかに」 楽に見ることのできるのは、影で、その次には水に映った 「またあの時彼らの間に何か栄誉や賞讃をお互いにやりと 人間やその他のものの映像で、その後が本物だ。その次に りする制度があって、通り過ぎていくものを一番鋭く見て は、天にあるものや天そのものを観察するのだが、それはとり、またそれらのうちでどれだけのものがいつも先に進 昼間太陽や太陽の光に眼を注ぐことによってよりも、夜間 み、どれだけのものが後に進み、どれだけのものが同時に 星や月の光にそうすることによっての方が楽だろうー 進むのを常としているかを一番よく憶えていて、そのこと 「ええ、それはもちろんのことです」 から将来にやってくるものを一番有能に予言できる者に褒 「それから最後は太陽だが、それも水の中だとか、太陽に美が与えられるとしたら、彼はそれを欲しがり、あの連中 は異境に当たる場所だとかに現われたそれの像ではなくのもとで尊敬せられて勢力のある人々を羨ましがるだろ て、太陽そのものをそれ自身の国土においてよく見、それう、と君は思うか、それともホメロスの言葉にあるような がどのようなものであるかを、観察することができるだろ気持ちになって、″農奴となって貧乏人の許で他人に仕え
は一一一口った。 「それは何ですか」 「それは人が神々や英雄神たちについて、彼らがどのよう「そしてそれらの物語は」と私は言った、「われわれの国 では、アディマントス君、語られていけないものなのだ。 なものであるかを、言論によって間違った仕方で模倣して いる場合だ、ちょうど或るものと同じようなものを描こう また若い者を聞き手にして、彼が極端に不正なことをして と望んでいるのに、それに少しも似ていないものを描く画も、また不正なことをした父をどんな仕方で懲らしても、 何も驚くべきことをしているのではない、むしろ神々のう 家のようにね」 ちで最初で最大な神々のしたちょうどそのことをしている 「ええ、たしかにそのようなことを非難するのは、正しい ことです。しかし、いったい、どういう風に、またどのようのだろう、などと言ってはならない」 「絶対に」と彼は言った、「そのようなことを彼に語るの なことを言って、われわれは非難しますか」と彼は言った。 はふさわしいことでないと、私には思われます」 「先ず第一に、ウラノス〔天 神〕が、〈シオドスの言 0 てい 「また神々と戦うとか、謀反をするとか、争うとかーー・そ る〔物鴪ナを通りのことをした、そして今度はク。ノ いうことを断じて言って ス〔鬚鞋〕がその神に復讐をしたの霧れは本当のことではないから スに閉じ込めたが、クロ / スが母神ゲに唆かされ はいけない、もしわれわれの国を将来守護しようとする者 と、うことを一一 = ロった て、父神を襲って、去勢し、王位を奪ったという話し 人は最大の、しかも最大な事柄に関する嘘を拙くついたのたちが、軽々しくお互い同士敵対し合うのは、最も恥ずべき だ。しかしたしかにクロノスの所業やその息子からの受難ことだと信じなければならないとすればね、また彼らにギ へシオドスによれば、クロノスによってウラ / スが去勢された 、クロノスと神レアとの末子ゼウス。クロノスは生まれた子供を皆呑み込ん ガンテス〔 時大地にしたたり落ちた血によって生まれた神々。後の神話で だが、レアはゼウスを孕んでいる時、逃れて、この難を避けた。生まれたゼウ は、巨人とされ、ゼウスや神々と戦って、あるい 〕戦争やその他神々や は殺され、あるいは地下に監禁された、という スは成長の後、ク。ノ , 〕は、たといそれが本当であ 0 たにして も、考えのない若い人々に向かってそう軽々しく言われて英雄神たちの自分の同族や身内のものに対する多くのいろ いろさまざまな敵対を物語ったり、色鮮かに描き出したり はいけない、むしろ黙っておくのが、一番よい、しかしも しては、決してならない。むしろ何とかして、いまだかって し何か言う必要があるなら、極めて少数の人が聞くような ことになるために、仔豚ではなくて、何か大きな手に入れ国民は誰一人他の国民に敵対したことはない、またそうい にくい儀牲を捧げた上で、できるだけ少数の人々がこっそうことは敬虔なことでもない、ということを信じさせよう りと聞くのがよい、と私は思うのだが」と私は言った。 とするなら、そのようなことがむしろ子供たちに向かって 「ええ、たしかに、それらの物語はひどいものです」と彼早くから老人によっても老婆によっても語られねばならな
「しかし、なお生ませる年齢にある人の誰かが、生む年齢かの人を父と呼ぶだろう、さらに、以上のような風にして 1 にある女たちと、役人が妻せないのに、関係するなら、同これらの人々の子供たちを孫と呼び、また逆にこの孫たち じ法律が適用される、というのは彼が国に設けた子供をわはかの人々を祖父や祖母と呼び、彼らの母たちと父たちが れわれは不法で、保証を受けない、そして神聖でない子供子供作りに従っていたその期間に生まれてきたものを、男 兄弟や女姉妹と呼ぶだろう、従ってこれは今さっき言った・ と言うだろうから」と私は言った。 ことだが、彼らは互いに関係し合うことはないだろう。し 「それは最も正当ですーと彼は言った。 かし、或る男兄弟と或る女姉妹とが同棲することは、もし 「しかし私は思うが、男たちや女たちが生む年齢を過ぎた 時には、彼らは誰でも彼らの好む者と自由に一緒になるこ籤がそのように出て、。ヒュチアの神託がそれを善しとする とをわれわれは許すだろう、ただし、男たちには、娘や母なら、法律によって許されるだろう」と私は言った。 「それは全く正しいことです」と彼は言った。 や孫娘たちゃ祖母たちと一緒になるのを禁ずる、他方女た ちには息子や父や孫や祖父と一緒になるのを禁ずる。そし てそれらすべてのことを許すにも、先ず、胎児がもし宿っ 一 0 「グラウコン君、君の国の守護者たちにとって婦人た たら、それが一つも陽の目を見ないように努力することを、 ちや子供たちの共有というのは、以上のようなことだ。し またもしどうしてもこの世に出てくるものがあれば、その かし、それがその国制の他のものに一致し、またそれが極 ようなものは育てられないものだ、と覚悟してそれを処置めて最善のものでもあるということは、次に言論の方から するように努力することを、忠告した上でのことにするだ保証して貰わなければならない。それともわれわれはどう ろう」 しようか」 「なるほどそれは結構なことですが、しかし父や娘や今仰「是非ともそう致しましようーと彼は言った。 っしやったものたちを、お互いにどうして見分けるでしょ 「ところで、われわれの意見の一致の基本になるのは、次 のことじゃないか、つまり、立法家が法律を制定するに当た うか」と彼は言った。 「それは決してできないね。しかし彼らのうちの誰かが花って狙わなければならない国家建設のための最大の善は、 婿になった日から数えて、その日以後十カ月目、そして何そもそも何であり、また最大の悪は何であると言うことが できるかを、われわれ自身に訊ね、次にわれわれの今さっ なら十一カ月目に生まれてくる子供たちすべてを、男なら、 き語ったものがわれわれの見るところでは、善の足跡には 息子と呼び、女なら娘と呼ぶだろう、またかの子供たちは めあわ 462
「ええ、もちろん」 「ええ、絶対に思われませんよ」と彼は言った、「ただし、 「しかしねーと私は言った、「束縛から解放し、影から模 私の出遇 0 たことのある極く極く少数の人は別ですがね」 像や光の方へ転向させ、地下から太陽へ坂道を登らせ、そ 「だけど、誰にせよ、言論のやり取りのできない人がね、 してそこへ登ってからは、動物や植物や太陽の光はまだ見。 知らなければならぬことだとわれわれの主張していること ることはできないが 、しかし水に映った神的な映像や有る の何かを、いっか知るだろうと思われるかね」と私は言っ といっても、しかし太陽に比べて比較する ものの影、 火の光によって投影された模 と、別の影とも言うべき光〔のこと〕 「いや、再度のことですが、思われませんよ。そんなこと は眺めることのできるようにする 像の影ではないが、 はね」と彼は言った。 こと、こうした力を、われわれが述べたもろもろの技術へ 「それなら、グラウ 0 ン君、それを知ることこそ〔ならぬコ の専念は、総体として持っている、すなわち、あの比喩では とを知〕、結局、言論のやり取りが奏する本曲そのものでは 身体のうちにある最も明らかなものを、物体的で可視的な ないのか。そしてその本曲は思惟の世界のものだけれど、 われわれの述べた」視覚の能力がそれの模倣物にあ場所における最も明るいものの観察〈導きあげたように、 たるだろう、それは結局、本物の動物を、それから本物の魂のうちにある最も優れたものを、有るもののうちでの最 も優れたものの観察へ導きあげる力を持っているのだ」 星を、それから最後に本物の太陽を眺めようと企てたのだ 「私はその通りに受け入れます」と彼は言った、「尤も、 が。こういう風に、もし人が問答によって知覚のすべてを たしかに、私には、それは受け入れることの難しいもので かりず理性を用いて、それそれのもので有るところのもの そのものへ突進しようと企て、善で有るところのものそのすが、しかしまた或る意味では受け入れないのも難しいこ と ものを思惟そのものを以て捕えぬうちは、引き退かない時とのように思われるのですが、ね。しかしそれでも いうのはそれはただ現在だけ聞かなければならないことな には、思惟的なものの終極に到達するのだ、ちょうどあの 人があの時可視的なものの終極に到達したようにね」と私のではなく、また今後もしばしば繰り返さなければならな いことなのですからーー・それは今言われた通りだと仮定し は一言った。 ておいて、本曲そのものへ進んで行くことにしましよう、 「ええ、全くです」と彼は言った。 「それならどうだ。この歩行を弁証術〔問答術〕と呼ばなそしてちょうど序曲を論じたような風に、それを論するこ 、、問答のカ とにしましよう。だから、仰っしやって下さし いかね」
なるし、また馬や驢馬までそうなって、全く自由に堂々と生じ、何でも好き勝手にやれることが原囚で、一そう大き わ、 % 道を歩く習いとなり、道で出会う人ごとに、もし傍へよけな一そう力強いものとなって、民主制を隷属化するのだ。 なければ、ぶつかるのだ、そしてその他すべてのものもそそして実際に、何かを過度にやるということは、その反動 として、反対のものへの大変化をもたらす傾向があるもの ういう風に自由でいつばいになるのだ」 だ、それは季節においても、植物においても、肉体におい 「ええ、あなたの仰っしやることは私には何も目新しいこ とじゃありませんよ」と彼は言った、「それは田舎へ行くてもだが、特に国制においては一番そうなのだ」 「そのようです」と彼は言った。 際に私自身がしばしば経験するところなんですから」 「というのは過度の自由は、個人にとっても国にとって 「じゃ君は、その総計」と私は言った、「つまり、それら も、過度の隷属より何か他のものへは変化しないようだか すべてのものが寄せ集められるとそれは、たといどんなも らね」 のでも、誰かが隷属状態を持ち出せば、怒って我慢しなく なるほど国民たちの魂を敏感にならせるということに、気「たしかにそのようです」 「それじゃ、当然」と私は言った、「僣主制は民主制より づいているかね。というのは、君は知っているだろうが、 ほかの国制から成立するのではなくて、思うに、極端な自 結局のところ、何ものも決して彼らにとって主人であるこ とのないために、彼らは法律を、書かれたものにせよ、書由から最も大きな最も野蛮な隷属が成立するのだ」 「たしかにそれは道理があります」と彼は言った。 かれないものにせよ、少しも気にしないのだからね」 「しかし」と私は言った、「君の訊ねたのはこれではなくト 「それは、大いに」と彼は言った、「知っていますよ」 て、どのような同じ病気が寡頭制のうちにも民主制のうち にも生じてきて、それを隷属させるか、というのだろう [ 一五「それじゃ、これが」と私は言った、「ねえ、君、私の 思うところでは、僣主制が生まれてくる非常に美しい血気「ええ、あなたの仰「しやる通りです , と彼は言 0 た。 「ところで」と私は言った、「私の言ったのはあの怠け者 壮んな源なんだよ」 の消費的な人間どもの種族のことだ、そのうち最も勇敢な 「ええ、たしかに血気壮んなものですーと彼は言った、 部分は彼らを指導する者で、余り男らしくない部分は従う 「しかしその後はどうなんですか」 「寡頭制のうちに病気として生じてきて、それを亡ぼした者だったがね。これらの者をわれわれは雄蜂に、しかも一 その同じものが」と私は言った、「また民主制のうちにも方の者は針を持ったのに、他方の者は針を持たないのに擬一 564
うどその時には、過ちをしない。しかし皆の者は医者が過利益をなすのが弱者にとって正しいことであろう、と仰っ しやる場合の、その強者というのは普通の言い方での支配 った、支配者が過った、と言うだろう。だから私もまたこ のような者として、さっきは答えたのだ、と解してくれ給者、強者のことですか、それともさっき仰っしやった厳密 え。然るにあの最も厳密なのはこうである。すなわち、支な論でのそれのことですか、はっきりきめて下さい 配者は支配者である限り、過っことはない、しかし過っこ 「厳密な論での支配者である者のことだ。それに対して一 とがなければ、自分にとって最善のことを制定する、そし っ詭弁を弄し、屁理屈をこねてみ給え、もし何か君にでき てこれを被支配者はしなければならないというのである、 るならーー・君にお願い下げなんか頼まないよーーしかし絶 従って最初に言ったちょうどそのことを、すなわち強者の対できっこはないさーと彼は言った。 利益をなすことが正しいことである、と私は言う」 「と仰っしやるのは、私がライオンの鬚を剃り、トラシュ マコスさんに屁理屈をこねるほど気狂いになることができ 一五「ええ、それはそれで結構です、トラシ = マコスさん」ると思われるからですか」と私は言った。 「ともかく今、それを君は企てたのだ、そんなことでも取 と私は言った、「が、私は屁理屈を言っているとあなたに るに足らぬ男なのに」と彼は言った。 は思われますか」 「全くだ」と彼は言った。 「そのようなことは、もう、たくさんです」と私は言っ 「と仰 0 しやるのは、私が議論においてあなたの名声を傷た、「さあ、私に仰っしやって下さい。さっき仰っしやっ た厳密な論での医者は金儲けをする人ですか、それとも病 つけようとして、故意に企んで、さきのように質問したと 人を治療する人ですか。本当に医者である人のことを仰っ 思われるからですか」 しやって下さい 「それは、もうよくわかっている。けれども君には、うま 「病人を治療する人だ」と彼は言った。 くゆきはしないよ。君はこっそりと私の名を傷つけること 家もできないし、また公然と論によって私を打ち負かすこと 「して船長はどうですか。正しい意味での船長は船員の支 もできないんだから」と彼は言った。 配者ですか、それとも船員ですか」 「船員の支配者だ」 国「決してそんなことは企てやしないでしよう、はばかりな 「その場合、彼が船で航海をするということは、勘定に入 がら」と私は言った、「しかし後になってさきのようなこ とが、われわれの間に起こらないように、あなたが強者のれてはならないし、また船員と呼ばれてもならないと思い
150 「ええ、しかし適度というのは、ソクラテスさん」とグラ についてあなたが充分に説明して下さる前に、他の国制に 手を着けようとされるので、あなたのお聞きになったこウコンが言った、「このような言論を聞く場合は、考えの と、つまりその他のものと同様にそれらのすべてを話してある人々にはその全生涯のことでしよう。しかしわれわれ の方のことは構わないで下さい。そしてあなたはわれわれ 下さるまではあなたを放さない、ということがわれわれの の訊ねていることについて、決して怯まずに何でもあなた 間に決議されたのです」 「それならまた私をも」とグラウコンが言った、「その決のよいと思われる仕方で話して下さい、われわれの守護者 たちが子供たちゃ婦人に関して、また出産と教育との中間 議の仲間に入れて下さい でなされるまだ若いものたちの養育ーーこれは実に最も骨 「心配無用」とトラシュマコスが言った、「それらは、ソ の折れるものですが、これに関して、する共同はどんなも クラテス君、われわれ皆の決議だと考えてくれ給え」 のであるかをね。さあ、それがどんな仕方で、なされなけ = 「私を掴えることによ 0 て君たちは何ということを、しればならないか、一つ、言「てみて下さい」 「いい気なもんだ、君、それを話すのは容易なことじゃな でかしたことだろう」と私は言った、「どれほどの言論を、 いんだよ」と私は言った、「というのはわれわれがさきに またもや、いわば最初から国制について君たちは動員して いることか ! それについては、もう話はすんだと思って話したものよりも、なお一そう信じられない点を、多く持 喜んでいたのに、あの時言われたままに、それらを受け入っているからだ。何故って、それは可能だと言われること からしてが、先す信じられないだろうし、またたといそれ れて許してくれるものと満足していたので。それらを君た ちは今呼び迎えることによって、言論のどれほどの大群をらができる限りうまく実現したにしても、それらが最善な ものであるだろう、ということも信じられないだろう。ち 呼びさますのか、知っていないのだ。その大群を見て私は ようどそのためにまた、それらに触れるのは大いにためら あの時は話を省いたのだ、それが大きな荷厄介にならぬよ われるのだ、その言論が〔夢のような〕祈願であると思わ うにとね」 「しかしどうだ」とトラシ = 「 0 スが言「た、「これらのれはすまいか、とね、親しい友よ」 「少しもためらわないで下さい、聴き手になる者は無理解 人々がここへやってきているのは黄金の山を見つけるため な者でもなければ、信じない者でもなければ、意地悪な者 であって、言論を聞くためではない、と思うのかね」 でもありませんからーと彼は言った。 「そうです、適度の言論を聞きにね」と私は言った。 ひる
い力」 うです」と彼は言った。 「それはもちろんですー 「すると自分を変更するのは、自分より優れたものや、よ 「また魂は、最も勇敢で最も思慮のあるのが、外部からのり立派なものへであろうか、それとも自分より劣ったもの 何かの影響によってかき乱され、変化されることの最も少やより醜いものへであろうか」 ないものだろう」 「より悪いものへ、であるのは必然です、いやしくも変化 「そうです」 させられるとしますればね。というのは神が美や徳を欠い 「そうしてたしかにまた、すべての合成された家具や建築ているなどとは、われわれは言わないでしようからね」と や衣服も全く同様で、よく作られてよくあるものが、時やそ彼は言った。 の他の影響によって変化されることの最も少ないものだ」 「君の言うのは全く正しい。神がそのようだとすれば、ア 「ええ、それは、たしかにそうです」 ディマントス君、君は神々のうちの、あるいは人間のうち 「では、生まれつきによって、あるいは技術によって、あ -c の何ものかが、自ら進んで自分を何らかの仕方でより悪い るいはその両方によって立派であるものは、すべて他のも ものにするだろうと思うかね」と私は言った。 のによる変化を最も少なく受けるものだ」 「そんなことは不可能です」と彼は言った。 「そのようです」 「それではまた、神にとっても、自分を変化させようと欲 「ところが神や神に属するものは、あらゆる点で最も優れするなんてことは、不可能なわけだ、むしろ神々はいずれも ている」 できる限りこの上もなく立派で優れていて、いつも自分の 合好のうちに単純に留まっているようだ」と私は言った。 「もちろんです」 「じゃ、その仕方によっては、神は多くの恰好を持っこと 「それは全く必然なことだと、私には思われます」と彼は の最も少ないものだろう」 言った。 「たしかに最も少ないものです 「それでは詩人たちの誰にも、ねえ、君、われわれに向か ってこう言わせてはならないね = 0 「しかし自分で自分を変史し変化させるものだろう 神々は遠来の客人の様子で ありとあらゆる姿をとって、国々を訪れる 「いやしくもそれが変化されるとしますれば、明らかにそ 「オヂ , ~ ィア一七〕 巻、四八五ー四八六行
2 「ええ、大いにそうです」と彼は言った。 っているだろうね」 「それなら」と私は言った、「その国は以上のような風 にして生じたものであり、何かそのようなものであろう、 「しかしね」と私は言った、「このような人々は寡頭制に 言論によって国制の型をスケッチしてざっと仕上げてみた おける人々のように、金銭を欲しがる者であろう、そして 金や銀を闇で無茶苦茶に尊重するだろう、倉庫や自己の宝ところではね、スケッチからでも最も正しい人と最も不正 な人とを充分見ることができるし、すべての国制を何一つ 蔵を所有していて、そこにそれらを貯えて匿しておくこと ができ、またさらに住居の囲いを、文字通り自分の愛の巣省かずにすべてにわたって詳しく論じた日には、それは長 として持っていて、その中で女たちゃその他好む者たちのさの測り知れない仕事なんだから」 「ご尤もです」と彼は言った。 ために湯水のように使うことができるのだから、ね」 「全く本当です」と彼は言った。 「それではまた自分の金銭は惜しむ者であろう、それを尊五「それでは、この国制に応じた人は誰であるか。また、 その人はどういう仕方で生じてき、どのようなものである 重しながらも、公然とはそれを手に入れられないのだから。 か」 しかし他人の金銭は欲望のために浪費することを好む者だ ろう、そして子供が父親からのように、法律から逃げ出し 「私は思いますが」とアディマントスは言った、「彼は勝 て、快楽の木の実をこっそり味わうだろう。彼らは、言論 利愛に関しては、ここのグラウコンに非常に近いものです や愛知と結びついた本当のミ = ーズをないがしろにして、 音楽文芸よりも体操の方を尊敬したために、説得によって 「多分」と私は言った、「その点はね。しかし次のこれら ではなくて、強制によって教育された連中なんだから、 の点ではこの男のようではない、と私には思われるよ」 「それはどのような点ですか」 「彼の方は」と私は言った、「もっと我が強くて、やや教 「あなたの仰っしやるのは、全く善いものと悪いものとか 、 , 、、しかし音楽は好きであり、また聞くことは好 養がなしカ ら混合されてできた国倒です」と彼は言った。 「たしかに混合されている」と私は言った、「しかし気概きだが、決して弁論家的ではないに違いない。そうしてこ のような人は、充分に教養を受けた人のようには奴隷たち 的部分が優勢であるために、その国では特に目立っことが を軽蔑しないので、奴隷たちには非常に苛酷な者である ただ一つだけある、勝利愛あるいは栄誉愛がそれだ」 かく
ことができるのだろうか、碁打ちやサイコロ遊び人にして 「ないよ、もしわれわれが国を形成していた時、君やわれ も、子供の頃からちょうどそれをやるのでなくて、片手間 われすべてのものが互いに一致したことが正しいならね。 にもて遊んでいるのでは、誰だって一人前にはなることが しかしわれわれの一致したことというのは、君が憶えてい るなら、一人の人が多くの術を立派になすことは不可能だできないのに。また楯なり、何かその他の戦争の武器な り、道具なりを手にとれば、即刻重甲歩兵の戦闘なり、何 ということだろう」と私は言った。 かその他の戦闘なりの一人前の競技者となることができる 「ええ、それは本当です」と彼は言った。 「すると、どうだ、戦争に関する勝負は技術的なものだとだろうか、その他の道具はどれ一つ、それを手にとったか らといって、誰一人職人にも体育家にもならず、またそれ は思われないか」と私は言った。 それの道具の知識を受けとらない者にも、充分な練習をつ 「それはもう大いに」と彼は言った。 「ところで製靴の術の方に、戦争の術よりいくらかでも多まない者にも、役立っことはできないのに」 「ええ、たしかに戦争の道具がそのようなものだったら、 く気を使わなければならないのかね」 大したものでしようよ」と彼は言った。 「いや、決してそんなことはありません」 「しかしわれわれは靴工が同時に百姓であったり、機織工 一五「すると」と私は言った、「守護者の仕事は最も重要な であったり、大工であったり、しようと企てることを禁 じ、ただ靴工だけであることを命じた、それは製靴術の仕ものであるだけ、それだけ他の仕事からの最も多くの閉 事がわれわれのために立派になされるためだった。また他と、他方最大の術と配慮とを必要とするだろう」 「少なくとも私はそう思います」と彼は言った。 の人々にしても同様に、それそれの人が生まれつき適して いるもの、そしてそのもののために一生他のことからは閑。「それなら、またちょうどその仕事に適した木性をも、必 を作って好機を逸せずにそれをやれば、立派にやりとげそ要とするのではないか」 家 うなものを、一つ、一人一人に分け与えた。ましてや、戦「それは、もちろんです」 争に関することは、うまくやりとげれば、非常に価値のあ「では、どうも、それがわれわれの力に及ぶことなら、国 の守護に適しているのは誰であり、またどのような性質で 国るものではないか。それともそれは全く造作のないもので あって、人は同時に百姓をしながら、あるいは靴ェでありあるか、それを択び出すのがわれわれの仕事だろう」 「たしかにわれわれの仕事ですー ながら、あるいは何でも他の術をやりながら、軍人である