416 は幾何学。五二六ー五二七。七巻、九章。 に天文学。五二七ー五三〇。七巻、一〇章、 ほ和声学。五三〇ー五三一 00 七巻、一二章。 へジアレクチケー ( 弁証学 ) 。五三一ー五三五 七巻、一三章、一四章。 教育を受ける年齢の段階。五三五ー五四一 七巻、一五章ー一八章。 第四部五四三ー五九二、八巻、九巻 不正義について イ二部及び三部の要約とそこで探究が岐路にそれた四 四九への復帰。五四三ー五四五。八巻、一章、 ロ不正な諸国制とそれらに応じる個人とがその発生と 性格とに関して観察される。 理想的国制 ( 王制 ) の堕落と栄誉制及び栄誉制的人 。五四五ー五五〇。八巻、三章ー五章。 2 寡頭制と寡頭制的人間。五五〇ー五五五。八 巻、六章ー九章。 3 民主制と民主制的人間。五五五ー五六一八 巻、一〇章ー一三章。 4 僭主制と僭主制的人間。五六一一ー五七六。八 巻、一四章ー九巻、三章。 章。 ところで、右の梗概を内容とする話をソクラテスは誰に ( 正しい人間と不正な人間との幸福に関する判定。五 七六ー五九二。九巻、四章ー一三章。 第一の証明 ( 国家と魂との平行関係からされるもの ) 。 五七六ー五八〇。九巻、四章ー六章。 2 第二の証明 ( 心理学的なもの ) 。五八〇ー五八三 九巻、七章、八章。 3 第三の証明 ( 存在論的なもの ) 。五八三ー五八八 九巻、九章ー一一章。 4 その結論。不正義ではなくて、正義が有利なもの である。五八八ー五八二。九巻、一二章ー一三 章。 第五部〔終曲〕五九五ー六二一一〇巻 イ詩歌について第三巻で下された判決の哲学的基礎づ け。五九五ー六〇八。一〇巻、一章ー八章。 ロ正しい人間に対する報い。六〇八ー六二一一 〇巻、九章ー一六章。 生存中の報い。六〇八ー六一一一〇巻、九 章ー一一章。 2 死後の報い、死者の裁判に関する物語によってそ れは描き出される。六一一六ーーー一〇巻、 一一一章ー一六章。
家 189 国 「すると、彼らを愛知者とよりは、むしろ愛臆見者と呼ぶ六巻 なら、われわれは何か度はすれのことを、まさか言ってい ることにはなるまいね。それでも、われわれがそう言うな ら、われわれに対して彼らはひどく腹を立てるかね」 「立てませんよ。もし私の忠告を彼らが聞き入れますなら ね」と彼は言った、「だって真実に対して腹を立てるのは、 法じゃありませんから」 「それでは、それぞれの有るものそのものを歓迎する者は 愛知者と呼ぶべきで、愛臆見者と呼ぶべきではないことに なるね」 「ええ、全くです一 一「それでは愛知者とそうでない者とが」と私は言った、 「やや長い言論の中を通ってきた末、何とかやっとのこと で、両者のそれぞれが誰であるか、その姿を現わしたわけ 「だっておそらくーと彼は言った、「それは短い言論の中 を通ったのでは、容易でなかったでしよう」 ようだねーと私は言った、「ともかく私には、そ の問題は、なお一そう明らかにされ得たろうと思われる よ、もしただこの問題についてだけ語るべきであって、残 りの多くのことを論ずる必要がなかったとすれば、ね。と ころが、どの点で正しい生活と不正な生活とは異なってい るかを、はっきり見きわめようとすると、その必要がある んだよ」 「すると、われわれにとってその次にくるものは何です か」と彼は言った。 「そのつづきになるものより他の何であろう」と私は言っ た、「常に同じままで同じ状態にあるものに、触れること のできる者は愛知者であるが、しかしそうではなくて、多 くのいろいろさまざまな状態にあるもののうちを、さまよ
「それなら耳もまた、自分の徳を失うなら、自分の仕事を 「不可能だ」 拙く仕上げるのではないでしようか」 「それじゃ、必然に悪い魂は悪く支配し、気遣うが、善い 「全くだ」 魂はそれらすべてを善く為すということに、ならねばなり 「それではまたその他、すべてのものにも、この同一の言ません」 が当てはまりますか」 「それは必然だ」 「私はそうだと思う」 「ところで、われわれは正義が魂の徳であるが、不正義は 「それじゃ、さあ、その次にこの点を考察してみて下さ悪であることを、認めはしませんでしたか」 。魂には、存在するもののうちの他の何ものを以てして 「うん、たしかに認めたよ」 も、あなたが為すことのできないような仕事が、何かあり 「それじゃ、正しい魂と正しい人とは、善く生きるが、不 ますか、例えば次のようなことが。つまり、気遣うことや正な人は悪く生きるということになるでしよう」 支配することや忠告することやそのようなすべてのこと 「君の言論によれば、そう見える」と彼は言った。 が。これらのことを、魂より他に、何かそれに正当に帰す「ところが善く生きる人なら、至福であり幸福ですが、そ ることができて、それの固有な仕事だと主張することのでうでない人はその反対ですー きるようなものがありますか」 「それは、もちろんだ」 「ほかには何もない 「それでは正しい人は幸福であるが、不正な人は不幸であ 「しかしさらに生きることは、どうですか。魂の仕事であることになります」 ると主張すべきではありませんか」 「そうだとしておこう」と彼は言った。 「うん、それはもう全く」と彼は言った。 「然るに不幸であることは、得のいくことではなくて、む 「じゃ、魂には徳も何かあると、われわれは主張しませんしろ幸福であることの方がそうですー か」 「それはもちろんだ」 「主張する」 「それでは、恐れながらトラシ、マコスさん、不正義が正 「それでは、トラシマコスさん、そもそも魂は固有の徳。義より得のいくことは決してない、 ということになりま亠 , ・ を失う場合に、自分の仕事をうまく仕上げるものでしよう か、それともそれは不可能なのですか」 「じゃ、それは君のために、ソクラテス君、べンヂス拏
393 いや、どうしてそんなことがあり得よう。 いう者だけの思いなしに、注意を払うだろうか。 クリトン ソクラテス それは、そのただ一人だけに注意を払うだろう。 ところで、その場合の害悪とは、何だろうか。それはど ソクラテス こに属し、その不服従の者のもっている何に関係するもの そうすると、非難を恐れ、賞讃をよろこばねばならない なのかね。 のは、そういう唯一人のそれであって、かの多数者のそれ クリトン ではないことになる。 無論、身体に関係する。これをそれは破壊するのだから クリトン 無論、そうでなければならない。 ソクラテス ソクラテス そうすると、これ以外のことも、 うん、それでいい 従って、かれは飲食にも、体育にも、一般に行動は、そちいち数え上げないが、クリトン、これと同じことではな いのかね。従ってまた、正邪美醜善悪など、いまぼくたち の唯一人の、その道の専門家である人を監督に仰いで、そ これらのことについても、 の人の思いなしに従わなければならないのであって、それが考えてみなければならない、 どうだね、われわれは多数者の思わくを恐れて、これに従 以外の人たちは、これを全部合わせても、その思わくは、 わなければならないのだろうか。それともまた、唯一人で この唯一人のそれに及ばないわけだ。 クリトン も、もし誰かそれに通じているひとがあるなら、その人の 思いなしに従い、この一人のひとを、それ以外の人全部合 それはその通りだ。 せたよりも、もっと恐れ、そのひとの前に恥じなければな ソクラテス さあ、それなら、もしその唯一人のひとの言に従わない。らないのではないかね。そしてもしわれわれが、この先達 に従わないようなことがあれば、われわれはかのものを虐 としたら、どうだろう。その思いなしも賞讃も尊重しない 待し、破減させることになるだろう。かのものとは、正し で、多数の何も分らない連中のそれを有難がるとしたら、 ( 八 ) さによって向上し、不正によって亡びるものだったのだ それで何の害も受けないというようなことが、果してあり が、それとも、そういうものは、何もないわけなのかね。 得るだろうか。 クリ . トン クリ : トン ね。
192 もない者が、何とかして取り引きし難い者、あるいは不正 うふさわしいことなんだからね」 な者になるということができるかね」 「その通りです」 「できません」 「それからたしかにまた、こんなことも考えてみなければ なるまいよ、愛知的な本性とそうでないものとを、君が判「じゃ、この点も、もし愛知的な魂と、そうでない魂とを 調べるのなら、まだその人が極く若い頃に、調査してみる 定しようとする場合はね」 だろう、すなわち、正しくて穏かなものであるか、それと 「それはどのようなことですか」 も交わり難くて粗野なものであるかどうか、をね」 「それが君にこっそりと、奴隷根性に与かっていやしない かということだ。というのは、思うに、狭量は、神的なも「ええ、全くです」 のでも人間的なものでも、それの総体、それの全体を、将「きっと、またこんなことも、君は見過さないだろう、と。 来いつでも慕い求めることになる魂にとって全く反対なも私は思うが」 「それはどのようなことですか」 のだからね」 「物学びがよい者であるか、それとも悪い者であるかとい 「ええ、全く本当です」と彼は言った。 うことだ。それとも君は、何かをなすのに、苦しみながら 「ところで、その心に大度量と時間全体、有全体の観想と なしたり、やっとのことで少しばかり仕上げたりするよう が存している人にとって、人間の生涯が何か大したものだ な者が、いっかその何かを充分に愛するようになるだろ と思われることができると、君には思われるかね」 う、と予期するかね」 「それはできません」と彼は言った。 「また死をも、このような人は何か恐しいことだとは、考「そうなることはできないでしよう」 「しかし、忘却がいつばいつまっていて、もし学んだもの えないのではなかろうか」 を、何一つ保持しておくことができないなら、どうだ。は 「ええ、少しもー たして、その者は知識がからつ。ほでないことができるだろ 「それでは、臆病で奴隷根性の本性には、どうも、真の愛 うかね」 知に与かることはできないようだね」 「いや、どうしてできましよう」 「できない、と私は思います」 「それじや無駄骨折りをした挙句、しまいは、必然に自分自 「それなら、どうだ。きちんとしていて、稼ぎ家でもな く、奴隷根性も持たず、駄法螺吹きでもなく、また臆病で身と、そのような行為とを、憎むことになるとは思わない
でなく、また無知でもなくて、その側で無知と知識との我慢しない男は。われわれは言うだろう、『だってね、は 中間に現われるものであるだろう、と言いはしなかった ばかりながら、君、これら多くの美しいもののうちには、 醜いものとして現われてこないようなものはまさかあるま 「仰っしやる通りです」 。また正しいもののうちには、不正なものとして現われ てこないようなものは。また敬虔なもののうちには、不敬 「ところが、今これらの中間には、われわれが臆見と呼ぶ ものが現われてきているのだ」 虔なものとして現われてこないようなものは』」 「ええ、現われてきています」 「ありません、むしろ」と彼は言った、「それらのものも また、あなたの訊ねていられる他のものも、或る仕方で、 一三「それではわれわれにとって残っているのは、どうも美しいものとしてもまた醜いものとしても現われてくるの は必然ですー あのものを発見することのようだ、あのものというのは、 「しかしどうだ、多くの二倍のものは。二倍のものとして 有ることと有らぬこととの両方に与かっていて、正しくは、 純粋な両者のいずれとも呼び得ないもののことだがね。そよりも、いくらか少なく半分のものとして現われてくるか してそれを発見するのは、もしそれが現われたら、端にあね」 るものには端にあるものを、中間にあるものには中間にあ「いや決して」 るものを割り当てることによって、それが臆見され得るも「それからまた、大きなものや小さなもの、軽いものや重 のであると正当に呼ぶことのできるためなのだ。それとも いものは、その反対のものとしてよりも、いくらかより多 そうではないか」 く、われわれが何々だと言っているものとして名づけられ 得るということは、まさかあるまい」 「その通りです」 「ありません、むしろいつでも」と彼は言った、「それぞ 「それでは以上のことを前提にして、私に、美そのもの、 家 詳しくいえば、美そのもののいつも同じままに同じ仕方でれのものはその両方の名称に与かるでしよう」 止まっているイデアといったものを考えず、多くの美しい 「すると、多くのもののうちのそれぞれは、人がそれは何 ものを信じている立派な人は、語って答うべし、と私は言う何だと言っているものであらぬ、より以上に、何々である のか、どちらだね」 8 だろう、あの、観ることを愛して、もし誰かが美や正は一 「それは、宴会で余興に用いられる、どちらの意味にでも つであり、またその他のものもそうだと言うなら、絶対に
404 ソクラテス、そんなことまで、わたしたちとお前の間 に破壊しようともくろんでいることになりはしないかね。 それともお前は、一国のうちにあって、一旦定められた判で、もう取りきめができていたのだろうか。それとも、む 決が、少しも効力をもたないで、個人の勝手によって無効しろ国家の下す判決は、忠実に守るということが、約東さ にされ、目茶苦茶にされるとしたならば、その国家は、顯れていたのではないかね。 と言ったらだ。そしてもし、ほくたちが、かれらの言うこ 覆をまぬかれて、依然として存立することができると、お とに驚いているならば、多分、こう言うだろう。 前は思っているのかと、 ソクラテスよ、わたしたちの言葉に驚かないで、答え こうたずねるとしたならば、この問いに対して、またほ かにも、この類の問いがなされるとしたならば、これに対ておくれ。ちょうどお前は、問答の扱いには慣れているの して、ぼくたちは、クリトンよ、何と答えたものだろう だからね。さあ、それはこういう間いなのだ。お前はわた か。というのは、これは一旦下された判決は、有効でなけしたち国家に対して、何を不服として、わたしたちを破壊 しようと企てるのか。まず第一に、お前に生を授けたの ればならぬと命ずる法律が、葬られようとしているわけな のだから、その法を守るためには、多くのことが言われる は、わたしたちではなかったのか。つまりわたしたちのし だろう。特に弁論の得意な者なら、、 しくらでも言い分を見きたりによって、お前の父はお前の母を娶り、お前を産ま つけることができるだろう。それとも、ぼくたちは国法に せたのではないのか。そうだとすれば、さあ、はっきり言 ってもらいたいものだ。わたしたちのうちには、婚姻に関 向かって、 それは国家が、われわれに対して、不正を行なったかする法律があるのだが、これがよくないといって、お前は 何か文句をつけるのだろうか。 らです。不当の判決を下したからです 、。ぼくたちの言うことは、これだろう と、こう一一 = ロおうカ いや、文句はありません。 と、ぼくは答えるだろう。 か。それとも、何だろうか。 クリ . トン しかし、そうやって生まれて来てから、お前もそれに いや、ゼウスに誓って、それこそわれわれの言おうとすよって教育された、その扶養や教育についてのしきたり が、いけないというのかね。あるいは、このために定めら ることだよ、ソクラテス。 ソクラテス れた法律や習慣が、お前を音楽や体育で教育することを、 お前の父親に言いつけていたのだが、このような指図はよ では、もし国法が、こう言ったら、どうだね。
言った。 おいて音楽的な人よりも余計に取ることを望むとか、ある 「そりや、もちろんのことだよ、不正な人はそのような性 いはより多くを持っことを要求するとか、するだろうとあ 質であるから、またそのような性質の人々に似てい、正し なたは思いますか」 い人はそのようでないから、似ていないさ」と彼は言った。 「いや、私は思わないね」 「が、どうですか、非音楽的な人よりも、そうすることは」 「これは有難い。それでは両者はそれそれ、彼の似ている 「そりや、必然だよ」と彼は言った。 ちょうどその人々のような者ということになりますね」 「うん、もちろんだ」と彼は言った。 「が、医者はどうですか。食物や飲物の処法において医学 いくらかでも余計に取 「それはそれとして、トラシュマコスさん、あなたは或る的な人あるいは医学的な事柄より、 人を音楽的であると、また他の或る人を非音楽的であるとろうと望むだろうと思いますか」 言いますか」 「いや、決して」 「そうだ」 「しかし医学的でない人よりは ? 」 「そのうちのどちらの人を思慮深いと言い、どちらを思慮「それは望むよ」 、、、ないと一一一一口いま亠丿か」 「それでは一つ、すべての知識や無知識についてみて下さ い。たとい誰にせよ或る識者が、他の識者の為したり、言 「それはもちろん音楽的な人を思慮深い、と言い、非音楽 ったりするものより、多くのものを択、ほうと望むだろう 的な人を思慮がない、 と一一 = ロうさ」 同じ行為のために と、あなたには思われるかどうか、 「それでは思慮深いと言われるちょうどそのことに関し 自分と同じような人に同じだけのものではなくって」 て、彼はまた善いと言われるが、しかし思慮のないちょう どそのことに関して、悪いと言われますか」 「いや、そのことなら、おそらくそうあるのが必然だろ うーと彼は一一一一口った。 「そうだ」 「しかし医者はどうですか。以上のような風に言われます「しかし無識者はどうですか。識者よりも、また無識者よ りも、同じように余計に取りはしないでしようか」 「その通りだ」 「多分」 「それでは、ねえ ししてすか、或る音楽的な人がリュラ 「しかし識者は知恵のある人ですね」 の調子を合わせる際、弦を締めたり、緩めたりすることに 「そうだ」
最善と信じて、自己を配置するとか、あるいは長上の者に君、智慧がないのに、あると思っていることにほかならな いのです。なぜなら、それは知らないことを、知っている よって、そこに配置されるとかした場合には、そこにふみ と思うことだからです。なぜなら、死を知っている者は、 止まって、危険を冒さなければならないと、わたしは思う だれもいないからです。ひょっとすると、それはまた人 のでして、死もまた他のいかなることも、勘定には入りま 間にとって、一切の善いもののうちの、最大のものかもし せん。それよりはむしろ、まず恥を知らなければならない れないのですが、しかしかれらは、それを恐れているので のです。 す。つまりそれが害悪の最大のものであることを、よく知 っているかのようにです。そしてこれこそ、どうみても、 だから、わたしは、とんでもない間違いを犯したことに なるでしよう、アテナイ人諸君、もしもわたしが、諸君の知らないのに、知っていると思っているというので、いま さんざんに悪く言われた無智というものに、ほかならない 選んでくれた、わたしの長上官の命によって、ポチダイア ( 一五 ) でも、アン。ヒポリスでも、またデリオンでも、かれらによのではないでしようか。しかしわたしは、諸君よ、その点 で、この場合も、多分、多くの人々とは違うのです。だか って配置された場所に、他のひとと同様、ふみ止まって、 ら、わたしの方がひとよりも、何らかの点で、智慧がある 死の危険を冒しておきながら、いま神の命によってーーと わたしは信じ、また解したわけなのですがーーわたし自身ということを、もし主張するとなれば、わたしはつまりそ の、あの世のことについては、よくは知らないから、その でも、他の人でも、誰でもよくしらべて . 、智を愛し求めな がら、生きて行かなければならないことになっているの通りにまた、知らないと思っているという点をあげるでし よう。これに対して、不正をなすということ、神でも、人 に、その場において、死を恐れるとか、何か他のものを恐四 れるとかして、命ぜられた持場を放棄するとしたなら、そでも、自分よりすぐれている者があるのに、これに服従し ないということが、悪であり、醜であるということは、知 れこそとんでもない間違いを犯したことになるでしよう。 っているのです。だから、わたしは、悪だと知っている、 そしてその時こそ、神々の存在を認めない者であるとし これらの悪しきものよりも、ひょっとしたら、善いものか て、わたしを裁判所へ引っぱり出すのが、ほんとうに正し いことになるでしよう。神託の意に従わず、死を恐れ、智もしれないものの方を、まず恐れたり、避けたりするよう なことは、決してしないでしよう。 慧がないのに、智慧があると思っているのですからね。 しいですか、諸 だから、いまアニュトスは、あなたがたに向かって、も。 なぜなら、死を恐れるということは、、
267 国家 てやり、他のことについては費用を支出しないで、その他きわめられるか、知っているかね」と私は言った。 の欲望は無駄なものとして押えつける点でも、そうではな 「どこに、でしよう」と彼は言った。 いだろうか」 「孤児の後見へだよ、また何かそのようなことが彼らに起 「ええ、全くです」 こって、不正を働く大きな自由を担めるようになった場合 「彼はうす汚なくって」と私は言った、「そして何からで へだよ」 も利益をあげて、倉を立てる男だーー大衆が賞讃するのも「本当です」 ちょうどこんなのだがねーーそれともこの男はその国倒と -c 「それならこのことから見て明らかなのは、このような人 同じようなものではないかね」 間は、正しい人だと思われることによって、よい評判の得 「たしかに私はそう思いますよ」と彼は言った、「ともか られるその他の取り引きにおいては、徳めいた自制力によ 金銭がその国にとっても、そのような人間においても って自分のうちにある悪いその他の欲望を押えつけている 一番貴重なものです」 のであって、それもその方がより善いことだと説得してで 「というのは」と私は言った、「このような人間は教育に もなく、また言論をもって穏かにしてでもなくて、むしろ 意を用いなかったからだ、と思うよ」 残りの財産のことを恐れるので、強制と恐怖によってだ、 「そうだと思いますーと彼は言った、「でなかったら、盲 ということではないか」 「ええ、全くです」と彼は言った。 〔と〕を合唱団の指導者に立てて、一番尊敬することはな かったでしようから、ね」 「うん、請け合って言うがね」と私は言った、「君、君は 「これはうまい」と私は言った、「だが、次のことを考察彼らの多くのもののうちには、他人のお金を使う必要のあ る場合にはいつでも、雄蜂と同類の欲望があることを発見 してみてくれ。雄蜂的な欲望が彼のうちに無教養のために できるよ」 生じてくると言ってはいけないか、その欲望の或るものは 乞食的で、或るものは悪漢的なものとしてね、尤もこれは 「ええ、そりや、もう、全くね」と彼は言った。 他のことを配慮してそのために力で押えつけられるんだ 「従って、このような人は自分自身のうちに内訌のないも のではなく、また一人ではなくて、むしろ二重のものであ 「ええ、大いに言うべぎです」と彼は言った。 って、大抵の場合、より悪い欲望を征服している善い欲望。 「それなら君はどこに眼をらけたら、彼らの悪漢ぶりを見を持っているだろう」