できるあのものの方へ向きを変えて逃げ出し、それら、指 う、と思う」 差されたものよりも、本当に一そう明らかだと信ずるだろ 「それはそうに違いありません」と彼は言った。 う、とは思わないか」 「そしてその後では、もう、その太陽について、これこそ 「ええ、その通りです」と彼は言った。 季節や年を供給するもの、また見られる場所にある一切の 「しかしもし」と私は言った、「人が彼をそこからカずく ものを管理しているものであり、また或る意味では自分たぞ でデコボコの嶮しい上り道を引きずり、太陽の光のところちが見ていたかのもの一切の原因でもある、ということを まで引きずり出すまで、放さないなら、引きずられている推論することができるだろう」 間は苦しがって、腹を立て、光のところへ出てきた時に 「もちろん」と彼は言った、「それへあの後では進むでし は、眼は光線でいつばいになって、現在真実なものと言わ れているものを、一つも見ることができないだろう、とは 「それなら、どうだ。彼は最初の住居とそこでの知恵とあ 思わないか」 の時一緒に縛られていた人々とを想い出して、自分をその 「ええ、突然には、できないでしようーと彼は言った。 変化の故に幸福だと思い、その人々を憐むだろう、とは思 「それじゃ、慣れを必要とするだろう、と思う、もし上のわないか」 方のものを見ようとするなら、ね。そして最初に彼の最も 「ええ、それはたしかに」 楽に見ることのできるのは、影で、その次には水に映った 「またあの時彼らの間に何か栄誉や賞讃をお互いにやりと 人間やその他のものの映像で、その後が本物だ。その次に りする制度があって、通り過ぎていくものを一番鋭く見て は、天にあるものや天そのものを観察するのだが、それはとり、またそれらのうちでどれだけのものがいつも先に進 昼間太陽や太陽の光に眼を注ぐことによってよりも、夜間 み、どれだけのものが後に進み、どれだけのものが同時に 星や月の光にそうすることによっての方が楽だろうー 進むのを常としているかを一番よく憶えていて、そのこと 「ええ、それはもちろんのことです」 から将来にやってくるものを一番有能に予言できる者に褒 「それから最後は太陽だが、それも水の中だとか、太陽に美が与えられるとしたら、彼はそれを欲しがり、あの連中 は異境に当たる場所だとかに現われたそれの像ではなくのもとで尊敬せられて勢力のある人々を羨ましがるだろ て、太陽そのものをそれ自身の国土においてよく見、それう、と君は思うか、それともホメロスの言葉にあるような がどのようなものであるかを、観察することができるだろ気持ちになって、″農奴となって貧乏人の許で他人に仕え
らない。 これに反し、民主制においては、思うに、少数の・ えたのだ〔言」」 ものは別として、この種族が指導するものであって、その 「そうです、そしてそれも正当にです」と彼は言った。 「ところで」と私は言った、「これら二つのものが生じてうちの最も猛烈な連中がものを言ったり、ことを行なった りする、しかし他の連中は演壇の囲りに群がって、ブイフ くると、ちょうど身体に関しては炎症や胆汁異常がそうす るように、全国制のうちに騒動を起こすのだ、だからまたン言って、違ったことを言う者は我慢しない、従って、こ。 国の善い医者であり立法者である者は、賢い養蜂者に劣らのような国制においては、或る少数の事は除いて、万事が このような種族によって運営されることになるのだ」 ず遠うから用心して、一番好ましいのは、騒動が生じてこ ないようにすることだが、しかし生じてきたなら、できる 「ええ、全くです」と彼は言った。 だけ速かに蜂の巣そのものと一緒に切りとられるようにし 「またこのようなのが、大衆のうちからいつも他の一つと なければならないのだ」 して区別される」 「ええ、絶対にそうです」と彼は言った。 「どのようなのが、ですか」 「それなら」と私は言った、「こういう風に取り上げよう、 「思うに、すべての者が金儲けに従う場合には、本性上一 われわれの望むことをもっとはっきりと見るために、ね」番しまりのある者たちが大抵は一番金持ちになるのだ」 「どういう風にですか」 「そのようです」 「われわれは言論の上で民主制の国を三つに分けよう、事「それじゃ、私は思うが、そこには雄蜂にとって蜜が一番 実もそうなんだがね。すなわち、寡頭制の国に劣らず、そたくさんあるし、またそこからが、一番蜜はとり易いだろ の国のうちに、何でも好き勝手にやれるために生じてくる 」し子ー . し どうして」と彼は言った、「少しのものしか 以上のような種族がその一つだ」 持っていない者たちから蜜をとることができましよう」 「それはそうです」 「それじゃ、私は思うが、このような者たちは、金持ちな 家「しかし、その種族はあの国よりもその国において遙かに ので、雄蜂どもの牧場と呼ばれるだろう 猛烈なのだ」 国 「多分、そうでしようと彼は言った。 「どうしてですか」 「そこでは、尊重されるものではなくて、支配の役から閉 め出されるために、未訓練であって、カのあるものにはな 一一〈「しかし民衆は第三の種族だろう、これらは皆自ら働
「ええ、私はそうだと思います」 時に、また愛銭家であるから、戦争税を払いたがらないの 「国は別かねーと私は言った、「それとも国についてもか で、ね」 ねー 「立派なことじゃありません」 せん 「そりやもう」と彼は言 0 た、「その支配が、一番難しく「しかしどうだ。これは先から〔 = 一四以下 四巻、四〕しばしばわれわ て一番重要なものであるだけ、それだけ一番そうなんですれの非難したことだけれど、このような国制では、同じ人 人が同時に農耕をしたり、金儲けをしたり、戦争をしたり 「じゃ、これを一つ、寡頭制は非常に大きな過ちとして持して多くのことをするのだが、そういうことは正しいこと っているわけだ」 だと思われるかね」 「そのようです」 「いや、何としても思われませんよ」 「しかしどうだ。次のはそれよりいくらかでも小さなもの 「じゃ、これらすべての悪のうちで、次のものをその国が最・ かね」 大のものとして、初めて受け取るかどうか、見てみ給え」 「どのようなことですか」 「それはどのようなことですか」 「自分のものを何でも手放し、また他の人にはこの人のも 「それは、そのような国は必然に一つではなくて、二つ の、すなわち貧乏人たちの国と金持ちたちの国とであるとのを手に入れることが許されること、そして手放して後、 いうことだ、同じところに住みながら、いつも互いに陰謀国の部分の何ものでもなしに、すなわち商人でもなく、職 を企みあっているので、ね」 人でもなく、騎士でもなく、重甲兵でもなくて、世間で貧 「断じて」と彼は言った、「より小さなものではありませ民とか窮民とか呼ばれている者として、国のうちに住むこ んよ」 とが許されることだよ」 「しかしたしかにこれも立派なことじゃないよ、それは、 「ええ、初めてそこで、です , と彼は言 0 た〔以下一〇行目 までアダムの読 みに、 彼らがおそらくどんな戦争もできない者だろうということ よる 〕「決して寡頭制の国ではそのようなことは妨げられ だ、大衆を武装させて使用すれば、敵よりも彼らを恐れざません。でなかったら、或る人々が大金持ちでもないでし るを得ないことになるし、といって、使用しなければ、戦ようし、また或る人々が素寒貧でもないでしようからね」 己少数の者を支 「その通りだ。しかし次の点を考えてみ給え。このような いそのものにおいて全く文字通り少数支者〔 酉配する者の意 たることを示さざるを得ないことになるのでね、それと同人々が金持ちであって、金を使っていたその時には、今さ
「それでは以上の理由によって、また人間の第一次的な類だと考えると、われわれは思うべきかね。全く遠くかけ離 も三つ、すなわち愛知的なもの、愛勝的なもの、愛利的なれているものだと考えると、思うべきではないか。そし ものがあるとわれわれは言うかねー て、その他の快楽は、もしその必要さえなければ、どれ一 「ええ、たしかに」 っ要求はしないものを、と考えて、本当に必要止むを得な 「じゃ、また快楽の種類も三つで、それら人間のそれぞれ いものと呼ぶと思うべきではないか」 の類に一つずつ応じている、と」 「そいつは」と彼は言った、「一つ、よく知らなければな 「全くです」 りませんね」 「ところで、もし君が」と私は言った、「三人のこのよう な人間を捕え、順次にそれぞれの者に、これらの生活のう〈「するとだ」と私は言った、「人間のそれそれの種類の ちでどれが一番愉快であるかと訊ねようとするなら、それ快楽や生活そのものが問題にされる、それもどれがより美 それの者は自分の生活を賞讃するだろう、ということを君しい、あるいはより醜い生き方であるかとか、より悪い は知っているね。金儲けをする人は利を得ることに較べあるいはより善い生き方であるかとかいうことに関してと て、尊敬されることの快楽や学ぶことの快楽は一文の値打 いうのでではなく、むしろただどれがより楽しくて苦痛の ちもない、と言うだろう、尤もそれらのことからお金がい ない生き方であるかということに関してだけ問題にされる くらかでも作れるなら、別だがね」 時に、彼らのうちで誰が一番本当のことを言っているかを 「ええ、その通りです」と彼は言った。 知るには、どういう風にすればよいだろうか」 「それは全く」と彼は言った、「私には言うことができま 「しかし愛誉的な者はどうだ」と私は言った、「金銭から せん」 の快楽を何か俗なものだと考えるのではないか、他方学ぶ ことからの快楽も、学問が栄誉をもたらすのでない限り、 「うん、ではこういう風に考察し給え。立派に批判さるべ 家 きものは、何によって批判されなければならないか。経験 煙やナンセンスだ、と考えるのではないか」 ロゴス と思慮と論証とによってではないか。それともこれらに優 「ええ、それはそうです」と彼は言った。 国 った批判の基準を持っことができるだろうか」 「しかし愛知者は」と私は言った、「真実がどうであるか 的を知ることの快楽と、学びながらつねに何かそのような活「いや、どうしてできましようーと彼は言った。 動に従っていることの快楽とに較べて、その他の快楽を何「じゃ、考察し給え。三人いる人間のうち、誰が一番、わ
「じゃ、また、他に、ライオンの姿を一つ、人間の姿を一 合ったりするままにしておくようなことにするのが、彼に っ作ってくれ。そして最初の者はすっと一番大きなものとって利のあることだ、ということだ、とね」 に、第一一の者は第二番目に大きなものとしてくれ」 「ええ、全くたしかに」と彼は言った、「そういうことを 「それらは」と彼は言った、「前のより容易です。もう造 言うことになるでしよう、不正をすることを賞讃する人 られました」 は、ね」 「他方、正しいことをなすことが利のあることだと言う人 「それじゃ、それら三つあるものを、一つにくつつけて、 はこういうことを主張するのではなかろうか、すなわち、 何とか生まれながらお互いに一緒にくつついているように 人がなしたり、言ったりしなければならぬのは、内なる人 してくれ」 間がその人間のうちで一番勢力のあるものとなるようにな 「もう、くつつけられました」と彼は言った。 「じゃ、それらの囲りに外から一つのものの似像、すなわり、そしてライオンの種族は味方にして、ちょうど野菜は ち人間の似像を造って、それが内部のものを見ることがで育てて培うが、野草は生長するのを妨げる百姓のように、 ふうたい きないで、ただ外部の風袋ばかりを見る者には、一つの動多頭の動物の面倒を見るようになり、そしてまたそれらす べての動物のために、すべてのものに共通な配慮をし、お 物、すなわち人間に見えるようにしてくれ」 互いにも自分自身にも親しいものにした上で、育てるよう 「囲りに造られました」と彼は言った。 になるのに寄与することである、ということをね」 「じゃ、われわれは、この人間にとって不正をすることは 「ええ、たしかにそれらが、他方において、正しいことを 利があるが、しかし正しいことをなすのは有利でない、と 賞讃する人の言うことですよ」 言う人に言おうじゃないか、君の主張するのは、ほかじゃ ない、あのいろいろのものからなる動物やライオンやライ 「じゃ、どんな点から見ても、正しいことを賞讃する人 オンの一党にはご馳走してカの強いものにするが、しかし は、真実のことを言っているが、しかし不正なことを賞讃 人間は飢えさせて弱いものにし、その結果、そいつらのど弸する人は偽りを言っていることになるだろう。実際、快楽。 ちらでもがどこへなりと導いていこうとするところへひっ の点から考察してみても、好評の点から考察してみても、 ばっていかれるようなことにし、そしてその一方を他方に 利益の点から考察してみても、正しいことの賞讃者は本当 8 慣れさせて、親しくさせることができないで、むしろそれのことを言っているが、非難者は、何も健全なことを言わ らが自分達同士の間で咬み合ったり、争ってお互いに食い ず、また何を非難しているかも知らずに、非難しているの
のはこれらすべてのもののうちに上品と品の無さとがある ら利益をうけるためにね、つまり、どこからにせよ、そこ からだ。そして品の無さやリュトモスの無さやハルモニア ではちょうど有益な場所から健康をもたらしてくる徴風の の無さは、言葉遣いの悪さや人の悪さの兄弟であり、その ような何ものかが、美しい作品から出て来て彼らの視覚な 反対のは反対のもの、すなわち思慮のある善い性格の兄弟り、聴覚なりに突き当たって、極く幼い頃から気づかぬ間 であり模倣物であるのだ」 に、彼らを美しい言論との類似、友情、共鳴とにもたらす 「全く以てその通りです」と彼は言った。 ためにね」 「たしかにそういう風にすれば、彼らはもうこの上もなく 三「それではわれわれが監督して、善い性格の似姿をそ立派に育てられるでしよう」と彼は言った。 の詩のうちに作りこむように強制し、きかなければ、その 「ところで、グラウコン君」と私は言った、「音楽による養 者にはわれわれのところで詩を作ることを禁じなければな育が一番権威を持っているのはこれらのことのため、つま らないのは詩人たちだけなのか、それともまたその他の職 り、リュトモスとハルモニアとは、上品さを携えて魂の内 人たちをも監督して、この性格が悪く、しまりが無くて、 部に一番深く潜りこんでいき、魂に一番力強く触れる、従 自由人らしくない、下品なものを、動物の似姿や建築物やってもし人が正しく育てられるなら、それは上品なものに・ その他の製作されるもののうちに作りこまないように禁するが、しかしそうでなければ、正反対なものにするから じ、それを守ることのできない者があれば、その者はわれなんだね。それからまた、それによって然るべきように育 われのところで製作することを許してはならないのか、わてられた者は欠陥のあるものや、美しく作されなかった れわれの守護者たちが悪の似姿の中で、いわば悪い牧場のものや、あるいは美しく生まれてこなかったものを最も鋭 中でのように、育てられ、毎日毎日たくさんのものから、。 敏に知覚する、従って正当に不快を感じ、ただ美しいもの 少しすっ、たくさん摘みとって食べ、それと気づかぬ間にを賞讃して、喜んで魂のうちに迎え入れ、それによって育 家自分の魂のうちで悪の大きいのを、一つ作りあけることの てられて、立派な善い人になるが、しかし醜いものは、彼 ないように、ね。いや、なしろ、美しくて上品なものの本 がまだ若くて理由を把握することのできないう〕ちにさえ 国性を、善い生まれつきによって追跡していくことのできる も、正当に非難し、憎悪するが、理性が到来した時、こう あの職人たちを探し求めなければならないのではないか、 いう風に育てられた者は、それの親類筋に当たるため、そ 若い者たちがいわば健康地に住んで、あらゆる場所かれを認めて一番歓迎するだろうからたね」
「それらはたしかに」と彼は言った、「そうであるに違し 「ええ、もちろんのことです」 四「それにまた、この上なしの一番の不正な者ともね、もしありません」 さっきのところで正義についてそれがどのようなものであ「ところで」と私は言った、「ほかじゃあるまい、類似と いう点では、僣主制的人間は僣主制の国に、民主制的人間 るか一致して認めたこと 。以下に関連する〕が正しいなら」 は民主制の国に応じ、またその他の人及はそういう風であ 「いや、たしかに正しいですよ」と彼は言った。 「それなら、ひっくるめて」と私は言った、「極悪人と呼るだろうー ぶことにしよう。しかし、われわれはさきに〔『巳或る人「もちろんです」 「それなら、徳と幸福との点において、一つの国が他の国 が夢の中でこれこれの性質のものであると言ったが、眼覚 めている時にそのような性質のものである者は、この極悪に対して持っ比は、また一人の人間が他の人間に対して持 っ比ではないか」 人であろう」 「それはもちろんです」 「ええ、全くですー 「ところで、本性上最も僣主的であって、独裁を振う者「すると、僣主制の国はわれわれが最初に述べたような王 は、このような者であることを示すのだ、そして彼が僣主制の国に対して、徳の点では、どうだね」 「正反対です」と彼は言った、「一方は最善の国ですか、 として暮らす期間が長ければ長いだけ、ますますこのよう 他方は最悪の国ですからね」 な者になるのだ」 「私はどちらの国がどちらだと君が言うのか訊ねないだろ 「それは必然ですーとグラウコンがこの話を引きついで言 う」と私は言った、「それは明らかなんだから。しかしさ らに幸福と不幸とに関しても同様に判定するか、それとも 四「すると」と私は言った、「一番邪悪な者であるという違ったようにか。そうしてわれわれは僣主が一人でいるの ことが示される者は、また一番不幸な者であるということ。を眺めて、あるいはまた幾人か僅かな者がその僣主の囲り が示されるのだろうね。そうして最も長い期間また最も多にいるなら、それらの人々を眺めて、眩惑さるべきではな 、むしろ国はその中に入って全体を見物しなければなら く僣主である者は、最も多くまた最も長い期間本当に不幸 ぬのであるから、その隅々にまで潜り込んで、全部を見 な者になっていたということが示されるのだろうね。しか て、その上で意見を示すべきだ」 し多くの人々にはいろいろ多くの意見がある」
112 「そうだ」と私は言った、「尤も、軍人向きで、蓄財家向 次の者たちゃ、さらに、その後の他の人々たちが信じさせ きのではないが」 られるようなのは、あります」 「と、仰っしやると、これとそれとは、またどういう風に 6 「いやそれでも」と私は言った、「彼らが国やお互いのこと を一そう憂えるようにするのには、結構だろうよ。という違うのですか」と彼は言った。 のは君の言おうとしていることが大体わかるから。 「私は君に」と私は言った、「一つ、それを話して上げよ う。ところで、思うに、牧人にとって何にもまして一番恐 一三そして、信するか、どうか、それは、輿論がその偽りをしく、一番恥ずべきことは、羊群を守る補助者としての大 どう取り扱うか、それに応じて決まるだろう。しかしわれどもを、放縦なり、飢なり、何かその他の悪い習慣なりに われとしては、これらの地から生まれた者たちを武装させよって、その犬ども自身が羊どもに手がけて危害を加え、 たから、支配者たちを先頭にして、前進させよう。彼らは大ではなくて、狼に似るようなものとして、そういう風に 進んでいって、国の何処が陣営を設けるのに一番立派であ育てることである」 るか、つまり、国の何処に拠れば、もし国内の者たちのう「恐しいことですーと彼は言った、「ええ、どうしてそう ち、誰かが法律に従おうと欲しないなら、彼らを最もよくでないことがありましよう 抑えることができ、また国外の者のうち、誰かが羊群を襲う「それなら、われわれの補助者たちは、国民たちに対してト 狼のように、敵として攻めてくるなら、彼らを最もよく防ぐ は、彼らよりも優れたものであるから、そのようなことを ことができるかを観察しなければならない。そして陣営をしないように、つまり、好意を持った味方の代わりに、粗 設けたなら、犠牲を捧げなければならない神々にそうした暴な主人に似た者とならないように、あらゆる手段をつく 上で、寝床を作らなければならない。それともどうなんだ」して警戒しなければならぬのではないか」 「ええ、その通りです」と彼は言った。 「警戒しなければなりません」と彼は言った。 「その寝床は寒冷や暑熱から、彼らを庇護してくれるに充「それなら、もし本当に立派な教育を受けているなら、彼 分なようなものではないのか」 らはその用心の最大のものをその身に備えているのではな 「ええ、もちろんのことです。というのは住居のことを、 かろうか」 あなたは仰っしやっているように思われますから」と彼は 「けれども、たしかにそれを受けているのですよ」と彼は 言った。 言った。
「しかし多分」と私は言った、「君はその人がわれわれの 同様に何かほとんど同じようなもので、語るという結果に 国制に調和するとは、主張できないだろう、われわれの許 なるのではないか」 では、各人が一つのことを為すのであるから、一一重の人も 「ええ、たしかに、それはその通りですーと彼は言った。 「しかし別の人の種類はどうかね。またそれが固有な仕方多重の人もいないのだから」 「ええ、たしかに調和しません」 で語られようとするなら、変化のいろいろさまざまなもの 「すると、その理由によって、ただこのような国において を含んでいるのであるから、以上のとは反対のもの、すな のみ、靴屋は靴屋であって、靴作りの傍ら船長であるので わちあらゆるハルモニアとあらゆるリュトモスとを必要と はないのを、また百姓は百姓であって、農耕の傍ら裁判官 するのではないか」 であるのではないのを、また軍人は軍人であって、戦闘の 「ええ、それも全くその通りですー 「ところで、詩人や何かを語る人は皆、表現法のこれら一一傍ら商人であるのではないのを、そしてすべての人々がそ つのうちの甲の型か乙の型か、あるいは両者から混合されうであるのを、発見するのではなかろうか」 「それは本当ですーと彼は言った。 た何かを、手当たり次第に用いるのだね」 「じゃ、多分、知恵によっていろいろさまざまなものにな 「それは必ずそうですーと彼は言った。 「それなら、われわれはどうしたものだろう」と私は言っって、あらゆるものを模倣することのできる人があって、 もし自分自身と自分の詩とを世間に示そうと思ってわれわ た、「われわれの国に受け入れるのは、それらすべて、だ ろうか、それとも混合されないもののどれか一つ、だろうれの国にやってくるなら、われわれは彼が神聖で、不思議 で、面白い人であるかのように、その前に額づぎ、このよ か、それとも混合されたものだろうか」 「もし私の意見が通るなら」と彼は言った、「立派な人のうな人はわれわれの国にはいませんし、またいることも許 されていないのです、と言って、その頭に香油を注ぎ、そ 純粋な模倣者を受け入れるでしよう」 「けれどもね、アディマントス君、混合した模倣者も面白こに羊毛の紐を巻いてやって、他の国へ送り出すだろう、 いものだよ、そして子供たちや子供の教師や大衆の大多数そしてわれわれ自身は利益のために、優れた人の言葉を模 にとっては、君の択ぶものとは反対の模倣者が格段に一番倣し、そして彼の語ることを、われわれが軍人たちを教育 面白いものだよ」 しようと企てた最初のところい = 庇九〕で、法として定めた あの型を用いて語るような、もっと厳粛で、もっと面白く 「ええ、たしかに一番面白い 0 か
340 純粋であった。そして光にはさらに一日旅程進んで到着し ろで、第一の、一番外側のはずみ車の持っている縁の輪 た。そしてそこで光の真中頃に天からそれを縛っている鎖 天〕が一番幅広く、第六番目の星〕が第一一番目で、第 の端がのびてきているのを見たーーというのはこの光は天四番目の〔 己が第三番目で、第八番目の〔月星 天〕が第四番 の締め具であ「て、ちょうど三段橈船の胴体の〔囲りを水目で、第七番目の陽〕が第五番目で、第五番目の星〕 平の方向に巻いている〕索のように、回転する蒼穹全体をが第六番目で、第二番目の気星〕が第七番目で、第三番目 離ればなれにならないようにしておくものであるから の冝星〕が第八番目である。また最も大きなはすみ車の縁 そしてその端からは女神アナンケ〔必然神格化 〕の紡錘がの の輪は。ヒカビカ光っているし、第七番目のは最も輝いてい びているのを見たが、これによってすべての天圏が回転するし、第八番目のはその色をそれに向かって輝いている第 る仕掛けになっていた。その紡錘の軸と鈎とは金剛石から七番目のから貰う、第二番目のと第五番目のとは互いに似 できていたが、そのはずみ車は一部は金剛石から、一部はそていて、さきのより黄色い、第三番目のは最も白い色を持 の他の種類のものからできていた。はずみ車の性質はこのち、第四番目のはやや赤味を帯び、白さで第一一番目にある ようなものである。その形はちょうどこの世のものと同じのが第六番目のである。そして紡錘は全体としてぐるぐる ようであるが、しかし彼の言ったことからして、それは次回りながら同一の方向へ円運動をしているが、円運動して のようなものだと考えなければならない。 一つの大きな、 いるその全体の中で、そのうちにある七つの輪は全体と反 うつろの、すっかり内側のくりぬかれたはずみ車のうち対の方向へ静かに円運動をする。そしてこの七つのうちで に、ちょうど互いにびったりはまった重箱のように、同じ 一番速い速度で進むのは第八番目ので、第二番目の、塞い ような、他の一段と小さなはずみ車がびったりと内側におに同じ速度で進むのは第七番目のと第六番目のと第五番目 さまっているようなものである、そして他の第三のものも、 のとである。〔全体の運動に対して〕逆もどりしながら第 第四のものも、また他の四つのものもそういう風だと考え 三番目の速度で円運動をするのは、彼らに見えたところで なければならない。 というのは、はずみ車は全部で八つ は、第四番目ので、第四番目の速度で進むのは第三番目の で、それらはお互いのうちにおさまっていて、上からだと、 で、第五番目の速度で進むのは第一一番目のである、という。 その縁は輪のように見え、相寄って軸の囲りに一つのはずしかし紡錘自身はアナンケの膝の中で回転している。しか ここでよ み車の連続した表面を作り上げているからである。そしてし上方では、紡錘の輪のそれそれの上に、セイレン 星のこと その軸は第八のはずみ車の真中を垂直に貫いている。とこ が坐っていて、それと一緒に回りながら、一つの声、一つの