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検索対象: 世界の大思想1 プラトン
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1. 世界の大思想1 プラトン

満して、その愛欲の囲りを、、フィフン言いながら、それを極 ら民主制的な人間になってね」 四「ええ、たしかにそれが」と彼は言った、「そのような人端にまで大きくし、育てて憧憬の針をその雄蜂のうちに植 え込むと、その時にはこの魂の指導者は狂気に護衛され 間についてのわれわれの意見でしたし、また今もそうで て、暴れ狂う、そしてもし自分のうちに何か世間で有用だ 「それじゃ . と私は言「た、「今度はこのような人間がすと見なされている何かにまだ羞恥を感じるような意見な り、欲望なりを見つけると、これを殺したり自分の外へ追 でに年寄りになって、彼は彼で自分の風習によって育てた つばらったりするのだ、節度はこれを綺麗に浄め、その後 若い息子を持っている、と想像してくれ給え」 を輸入品の狂気で充たすにいたるまではね」 「ええ、想像します」 「これは全く完全なお話ですよ、僣主制的人間の成立に関 「さらにまた彼に関しては、ちょうどまた彼の父親に関し て起こった五五九 〕と同じことが、起こると想像してくれ。しましてね」と彼は言 0 た。 「すると」と私は言った、「このような理由によって昔か 給え。すなわち、ありとあらゆる違法に導かれる、がこの ら愛欲の神匕は僣主だと言われているのだね」 違法は導く連中によっては全くの自由と名づけられてい る、しかし父親やその他の親類はあの中間にある欲望を援「そうらしいですね」と彼は言った。 「じゃ、君」と私は言った、「また酔っぱらった人間も、 助するが、しかし他方導く者たちは別の方を援助する、と ね。しかし、これら凄腕の魔術師、僣主製造人たちが他の何か僣主繝的な精神を持「ているのではないか」 仕方では若者を捕えておけないと見込んだ時には、怠け者「ええ、たしかに持「ています」 「それからたしかにまた、気の狂った者や精神の錯乱した で、手持ちのものを散財する欲望どもの指導者として何か 或る一つの愛欲を彼のうちに植え込もうと工夫する、つま者も、人間のみならず神々をさえも支配しようと企て、ま たそうできるものと想像する」 一種の羽根のある大きな雄蜂をねーーそれともこのよ 「ええ、全く」と彼は言った。 うな人々の愛欲を他の何だと思うかね 「つまり」と私は言った、「ねえ、君、おかしなことだが、 「私はそれより他のものだとは思いません」と彼は言っ 厳密な意味での僣主制的人間になるのは、本性によって 「そういうことにな 0 て、他の欲望どもが、香や没薬や花か、あるいは生活によ 0 てか、あるいはその両方によ 0 て か、呑兵衛や助平や気狂いになった時のことなのだよ」 冠や酒に、またそういうような会合で解放される快楽に飽 もつやく

2. 世界の大思想1 プラトン

それが神々からも人間たちからも受けている栄誉は、実際「それでは正しい人について、こういう風に解さなければ ならぬわけだ、つまり彼が貧乏になろうが、病気になろう 受けている通りだと考えられるとわれわれもまた認むべき だ、とね。それは正しい人だと思われることから、正義が が、あるいはほかの何か世間で悪と思われているものに陥 手に入れて、正義を持っている人々に授ける勝利の褒美をろうが、それらのことは結局、この人にとっては、生きて いるうちにか、あるいはまた死んで後にか、何か善いもの も貰うためなのだ、すでに正しくあることから出てくる善 いものは、正義を本当に受け入れている人々に、これを正になるのだ、とね。だってね、正しい人になろうと心から 義は授けて、欺くことのないものだということが明らかに切に望み、徳に励んで、人間の力に及ぶ限り、神と同じよ されたのだからね」と私は言った。 うになろうと望む者が、神々によっておろそかにされるな んてことは、決してないからね」 「正しいことです、あなたの要求なさるのは」と彼は言っ 「ええ」と彼は言った、「そのような者は同じようなお方 からおろそかにされないのが当然ですよ」 「それでは」と私は言った、「先す第一にこの点を返して 貰えないだろうか、それは、彼らがいずれも、どのような 「では、不正な人については以上のこととは反対のことを ものであるか、神々に気づかれないことはないという点だ考えなければならぬのではないか」 「ええ、確かにそうです」 「じゃ、神々から正しい人に授けられる勝利の褒美は何か 「お返し致しましようーと彼は言った。 「しかしもし気づかれないことがないとすれば、一方は神そのようなことであるだろう」 「ええ、ともかく私の考えでは、そうですね」と彼は言っ に愛される者であり、他方は神に憎まれる者であろう、ま 〕もわれわれが言ったようにね」 た初めのところで〔五一一 とうだろう」と私は言った、「事 「しかし人間からのは、、、 「それはそうです」 「しかし神に愛される者にとっては、神から生じてくるも実有りのままを述べなければならないなら、こうじゃな、 しもて の一切がこの上もなく善いものとして生じてくるというこ か。凄腕の不正な人々は、コースの下手からは〔。ー ' の往 よく走るが、上手からはそうでない走者とちょうど同じこ とを、われわれは認めはしないだろうか、尤も以前の過失か ら何か避け得ない悪が彼に備わっていたのなら、別だがね」とをするのではないか。彼らは初めには烈しい勢いで跳び 出すが、しかし終わりには笑いものになる、耳を肩の上に 「ええ、全くですー

3. 世界の大思想1 プラトン

178 きる限り似ている者は、その人々の運命に最もよく似たそ 「それなら」と私は言った、「先ず第一にこの点を、すなれを持つだろう、と是非とも認めざるを得ないようにされ わち、われわれは正義と不正義がどのようなものであるか るためであったのであって、それらが生じ得るということ を探究しながら、ここまでやってきたのだということを想を、証明するためではなかったわけだね」 い出さなければならないねー 「ええ、あなたの仰っしやることは本当ですーと彼は言っ 「ええ、想い出さなければなりません。しかしそれがどう だ、と仰っしやるんですか」と彼は言った。 「それでは、最も美しい人間はどのようなものであるか、 「何でもないさ。しかしわれわれが正義はどのようなものその典型を描き、その絵にどの部分も申分のないものを与 であるかを発見するなら、人間にしても正しいものは、ほ え得るのに、そのような人間が実際に生じることができる かならぬその正義から少しも異なっていてはならない、正という証明はなし得ない者があれば、その人を、それだけ 義と全然同じような性質の者でなければならない、と要求うまくない絵かきであるだろう、と君は思うかね」 するであろうか。それともそれにできるだけ近くあって、 「絶対に思いませんよ、私は」と彼は言った。 他の何ものにもまして一番多くそれに与かっているなら、 「それならどうだ。われわれもまた、言論によって真実の それで満足するだろうか」 国の典型を作っていたのではないか」 「全くです」 「そういう風なら」と彼は言った、「われわれは満足する でしよう 「それなら、もしわれわれが国を語られた通りに建設する 「それでは」と私は言った、「正義がそのものとしては、 ことができるということ証明し得ないなら、そのために どのようなものであるかということを、また人間も完全にそれだけわれわれはうまく語っていないと思われるかね」 「もちろん、そんなことはありません」と彼は言った。 正しい人は、もし生じ得たとして、生じ得たとすればどの ようなものであるかということを、また逆に、不正義や不 「それなら、本当のことはーと私は言った、「そうである 正な人についてそのような問題を、探究してきたのは、典わけだ。しかし、もしまたあのことを、つまり如何にすれ 型のため、すなわち、その人々が幸福やその反対のものに ばそれは最もよく生じ得るか、またそれは如何なる点で最 関してわれわれにはどのようなものに見えるか、その人々 も可能であろうか、ということを証明することをも、君の に着眼しながら、われわれ自身についても、その人々にで ために努力しなければならないとすれば、そのような証明

4. 世界の大思想1 プラトン

者は、友人だと思われはするが、しかしそうでない、とし関してか」 「馬の徳に関してです」 ましよう。また敵についても同じように定義を変えましょ 馬の 「すると大もまた害されれば、犬の徳に関して、 う」と彼は言った。 徳に関してではなくて、一そう悪くなるのではないか」 「では友人であるのは、どうも、この定義によれば、善い 人だが、敵であるのは邪悪な人だ、ということになるよう「それは必ず」 「しかし、人間のことは、君、そう言っちゃいけないの。 だね」 か、つまり害されれば、人間の徳に関して一そう悪くな 「ええ」 「それでは君は正しいことの定義、すなわち最初にわれわる、と」 「いや、全くそうなりますー れの言ったところでは、友人に善いことをし、敵に悪いこ とをするのが正しいことだというのだったが、それに付け「しかるに正義は人間の徳ではないか」 「それもまた必ずそうですー 加えをすることを命じるかね、つまり、それに加えて今は 善い人である友人「それでは、人間のうちで害された者は、君、必ず、一そ 次のように言うことを命じるかね、 う不正にならなくちゃなるまい」 には善いことをし、悪い人である敵は害する、と」 「ええ、全くです」と彼は言った、「そうすれば、立派な「そのようです」 「ところで、音楽家はその音楽術によって人々を非音楽家 定義になると思います」 にすることができるか」 「できません」 九「ところで、どんな人間をにせよ、害するということは 「しかし馬術家は馬術によって非馬術家にすること、が ? 正しい男のすることかね」と私は言った。 「それは、もう大いにね」と彼は言った、「邪悪で敵であ「できません」 「しかし正しい人はあの正義によって不正な人にすること 家る人々をなら、害さなければなりません」 が ? あるいはひっくるめて訊いて、善い人は徳によって 「しかし害されれば、馬は一そう善くなるか、それとも一 悪い人にすることが ? 」 国そう悪くなるか」 「いや、できません」 「一そう悪く」 「だって、私は思うが、冷くすることは温さの働きじゃな 「それは犬の徳〔卓越性〕に関してか、それとも馬の徳に

5. 世界の大思想1 プラトン

かし何を言ったのか、私はもう知っちゃいませんよ、だけ人々に悪いことをするのが、正しいことだということにな どやつばり私にはこう思われます、正義とは友人を益し、 敵を害することだ、と」 「いや、ソクラテスさん、それはよしてくださいよ。だって 「しかし君が友人だと言うのは、それぞれの人に有益だとその言論は邪悪なもののようですからね」と彼は言った。 思われる人か、それともたとえそう思われなくとも有益で 「それじゃ、不正な人々を害し、正しい人々を益するのが ある人かね、また敵というのも同様かね」 正しいことかね」と私は言った。 「人は有益だと考える者なら、親しくし、邪悪だと考える 「この言論はさきのより立派にみえます」 者なら、憎むようですーと彼は言った。 「それじゃ、ポレマルコス君、人間を見誤る多くの人々に・ 「ところで人間たちはこの点に関して過ちを犯して、その は、友人を害するのが正しいことであるーーーというのは彼 結果多数の人々が実はそうでないのに、有益であると彼ら らは邪悪な友人を持っているからーーということに、また に思われることになり、また多数の人々がその反対のこと敵を益するのが正しいことである・ーーというのは善い敵を になりはしないかね」 持っているからーーということになってくるね。そしてそ 「ええ、彼らは過ちを犯します」 ういう風に言うとなると、それはあのシモニデスが言った 「それではそれらの人々にとっては、善い人々が敵であとわれわれの主張したことと正反対だ」 り、悪い人々が友人であることになるね」 「ええ、そうです。そういうことになります。しかし、わ 「全くです」 れわれは定義を変えてみましよう。というのは友人と敵と 「しかしそれにも拘らす、その場合にそれらの人々にとつを正しく定義しなかったようですから」と彼は言った。 て正しいことというのは、その邪悪な人々を益し、その善「それはどういう風に定義したからなのだ、ポレマルコス い人々を害することかね」 「そうえみます」 「有益だと思われる者、それを友人だとしたからなのです」 「然るに善い人々は正しくて不正なことをしないような人「しかし今は、どういう風に定義を変えることにしよう か」と私は言った。 人だね」 「本当に」 「有益だと思われるばかりでなく、また、そうである者を 「それでは、君の言論によると、何も不正なことをしない 友人だ、としましよう。しかし思われはするが、そうでない

6. 世界の大思想1 プラトン

318 いこれらの人々の誰の術についても知識は持たなくとも。とを知っている。何故なら善い詩人は、何によらす、彼が しかしそれにも拘らす、もし彼が優れた画家であるなら、 詩を作るものについて立派に作ろうとするなら、知ってい 大工を描いて、それを遠くから示すことによって、子供たて作るのでなければならない、でなければ、作ることがで ちや考えのない大人たちを欺くことができるだろう、彼ら きないに違いないからだ、ということをね。だから調べて には本当の大工であると思われるので、ね」 みなければならない、その人々は出会ったのが、模倣者で 「ええ、そうですともー あって彼らに欺かれているのであるか、そして彼らの作品 「けれども、ねえ、君、私は思うが、すべてこのような人を見て、それが有るものから三段離れているもので、真実 人については、次のことを考えなければならないよ。誰かを知らなくても、容易に作ることのできるものである が或る人について、職人の技術のすべてを、またその他そというのは彼らが作るのは、見かけであって、有るもので はないのだからーーーことに気づかないのであるか、それと れぞれ一人一人が知っていることのすべてを、知っている 人間に、しかもどんな人よりも精確に知っている人間に出も善い詩人たちは、多くの人々に彼らが上手に言っている と思われることについて、何かいつばしのことを言ってい 会った、とわれわれに報告するなら、その時、このような るのであるか、そして本当に知っているのであるか、どう 人に対しては、君はほんとにお人好しな男だ、それで、ど かを」 うも、誰か魔術使か、模倣者かに出会って欺かれた結果、 冫いたったのだ、それは君自身が 彼を万能の知者だと思うこ 「ええ、全くです、調べてみなければなりません」と彼は 知識と無知識と模倣とを、調べてみることができないから言った。 だ、と答えなければならないよ」 「それなら、もし誰かが両方とも、すなわち、模倣される 「それは全く本当ですーと彼は言った。 筈のものと、その影像とを、作ることができるなら、この 影像の製作に自分が真剣な努力を払うことを許し、この影 三「それでは」と私は言った、「その次には、悲劇とそれ像を自分の所有する最善のものとして自分の生活の正面に の指導者たるホメロスを調べてみなければならないね、わ立てる、と君は思うかね」 「いや、私は思いませんよ」 れわれは或る人々から、こんなことを聞くものだからね、 「けれども、私は思うが、もし彼がちょうど模倣する当の つまり、これらの詩人はすべての技術を、また徳や悪徳に ものについて、また本当に識っている者であるなら、模倣 関係のあるすべての人間的なことを、そしてまた神的なこ

7. 世界の大思想1 プラトン

293 国家 「ええ、それは正当な要求です」と彼は言った、「そしてな僣主たちに巡りあった人々に属するかのような振りをし 僣主制の国より以上に不幸な国はなく、また王制の国よりてみては、 われわれが訊ねることに関して誰か答えて 以上に幸福な国はないということは、誰にも明らかです」くれる者を持っことができるようにね」 「すると」と私は言った、「人間についてもその同じこと 「ええ、全くです」 を要求するなら、正当な要求だろうね、それは、彼らにつ いて判定する者は、心を以て人間の性格のうちに潜り込ん 五「それでは、さあ、どうか」と私は言った、「こう、 でよく見わけることができる者であり、子供のように外か風にして考察してくれ給え。国と人間との類似点を思い出 ら見て、彼らが外の人々に対して装っている僣主的な道具して、その上で両者を細かに代わる代わる見つめて、それ 立ての厳めしい外観に眩惑されないで、むしろ充分に見通らの情態を言ってくれ」 す者であるべきだという要求だが。だからもしその者、す「それはどのようなのを、ですか」と彼は言った。 なわち一方では判定する能力を持ち、他方では同じところ 「先ず第一に」と私は言った、「国に関して言うと、僣主 で一緒に住んで、その傍に居合わせて、家のうちでの行為 制の国を君は自由なものと言うだろうか、それとも奴隷的 において、彼が家族のそれぞれの者に対してどうであるか なものと言うだろうか」 というのはこれらの者の間で芝居がかりの道具立てを 「この上なしの一番奴隷的なものだ、とーと彼は言った。 また ぬいだ裸のところが一番よく見られるのだから 「それでも、その国のうちに主人と自由人とを君は見るの 国民的危機においてはどうであるか、を経験した者からわ れわれすべての者は聞かなければならぬ、と私が思い、そ 「見ます、それは極く小さい部分ですが」と彼は言った。 してその者にそれらすべてを見た上で、僣主は幸福と不幸「しかし、ほとんどその全体がその国では、しかも最も優 とに関して他の人々に較べてどうであるかを、報告してく れた部分さえもが、不名誉で不幸なことに、奴隷であるの れるように、とわれわれが願うならば、どうだ」 を見ます」 「それらもまた、非常に正当な要求でしよう」と彼は言っ 「それなら」と私は言った、「人間が国に類似しているも のであるなら、またその男のうちにも同一の配列があっ 4 「それなら、一つ、どうだね」と私は言った、「われわれて、彼の魂は多くの奴隷状態と不自由とに充ちていて、魂 が、これらの判定する能力を持っていて、すでにそのようのうちで一番優れていたその部分が奴隷であるが、しかし

8. 世界の大思想1 プラトン

「それらはたしかに」と彼は言った、「そうであるに違し 「ええ、もちろんのことです」 四「それにまた、この上なしの一番の不正な者ともね、もしありません」 さっきのところで正義についてそれがどのようなものであ「ところで」と私は言った、「ほかじゃあるまい、類似と いう点では、僣主制的人間は僣主制の国に、民主制的人間 るか一致して認めたこと 。以下に関連する〕が正しいなら」 は民主制の国に応じ、またその他の人及はそういう風であ 「いや、たしかに正しいですよ」と彼は言った。 「それなら、ひっくるめて」と私は言った、「極悪人と呼るだろうー ぶことにしよう。しかし、われわれはさきに〔『巳或る人「もちろんです」 「それなら、徳と幸福との点において、一つの国が他の国 が夢の中でこれこれの性質のものであると言ったが、眼覚 めている時にそのような性質のものである者は、この極悪に対して持っ比は、また一人の人間が他の人間に対して持 っ比ではないか」 人であろう」 「それはもちろんです」 「ええ、全くですー 「ところで、本性上最も僣主的であって、独裁を振う者「すると、僣主制の国はわれわれが最初に述べたような王 は、このような者であることを示すのだ、そして彼が僣主制の国に対して、徳の点では、どうだね」 「正反対です」と彼は言った、「一方は最善の国ですか、 として暮らす期間が長ければ長いだけ、ますますこのよう 他方は最悪の国ですからね」 な者になるのだ」 「私はどちらの国がどちらだと君が言うのか訊ねないだろ 「それは必然ですーとグラウコンがこの話を引きついで言 う」と私は言った、「それは明らかなんだから。しかしさ らに幸福と不幸とに関しても同様に判定するか、それとも 四「すると」と私は言った、「一番邪悪な者であるという違ったようにか。そうしてわれわれは僣主が一人でいるの ことが示される者は、また一番不幸な者であるということ。を眺めて、あるいはまた幾人か僅かな者がその僣主の囲り が示されるのだろうね。そうして最も長い期間また最も多にいるなら、それらの人々を眺めて、眩惑さるべきではな 、むしろ国はその中に入って全体を見物しなければなら く僣主である者は、最も多くまた最も長い期間本当に不幸 ぬのであるから、その隅々にまで潜り込んで、全部を見 な者になっていたということが示されるのだろうね。しか て、その上で意見を示すべきだ」 し多くの人々にはいろいろ多くの意見がある」

9. 世界の大思想1 プラトン

である正義より有利であると、あなたは主張されますか」気づかれなければ、有利なものである。しかしそれは語る 「全くだ、そう主張する、そしてその理由もすでに語っ に足らない、むしろさ 0 き〔」 . 。〕私の言 0 たものがそう た」と彼は言った。 なんだ」と彼は言った。 「それが、あなたの言おうと思っていられることだという。 「ではどうです、それらのものについて、次の点ではどう 仰っしゃいますか。思うに、そのうち一方を、徳と、他方ことは、わからなくはありません」と私は言った、「しか を悪とお呼びでしよう しこの点は不審です、つまり、不正義は徳と知恵の部分の 「もちろんだ」 うちに置かれるが、正義はその反対のもののうちに置かれ 「では、正義は徳と、不正義は悪と、お呼びになるのでは るのが」 ありませんか」 「いや、全くそういう風に置くのだ」 「こりや面白い、さもありなんだ、私がまた不正義は有利「それは、あなた、もう余りに難かしすぎて、本当を言う であるが、正義はそうでないと、言っているからにはね」 と、もはや何とも言うべきことが、なかなか見つかりませ と彼は言った。 ん。というのは、もし不正義は有利ではあるが、しかしそ ったい、何と」 れは悪いものである、あるいは醜いものであると、他の多 「おやっ ! それでは他に、い 「あべこべだ」と彼は言った。 くの人々のように、承認なさるなら、何とか言うべきこと 「本当に正義を悪と、ですか」 もあるでしよう、世間で信じられているところに従って言 「いや違う、むしろ全くお上品なお人好し、とだ」 えますので。しかし今、あなたは明らかに、それは美しい 「それじゃ、不正義はお人悪ると呼ぶのですね」 ものでもありカ強いものでもある、と仰っしやることでし 「いや、違う、むしろ才覚よし、とだ」と彼は言った。 よう、そしてその他、われわれが正に属せしめるのを常と 「きっと、また不正な人々は、トラシュマコスさん、思慮していたことでも、それに属せしめられることでしよう、 があって善い者だと、あなたには思われるでしよう」 あなたがそれを徳や知恵のうちにすら、敢えておかれる以 「完全に不正をなすことができ、国表や人間どもの種族を上はねーと私は言った。 自分たちの支配下におく力のある人々なら、ね。しかし君「君の予言は全く本当だ」と彼は言った。 は、私がおそらく巾着切りのことを言っているのだ、と思 「しかしそれでもーと私は言った、「あなたが心に思って っているんだろう。そうだ、こういうような者でも、もし いらっしやるちょうどそのことを、ロにしていられる、と

10. 世界の大思想1 プラトン

彼らは見ると、今に大人になったら、すべてそのような者 ~ 〈「じゃ、次には、アイスキロスの文句の通り、他の国 たちに仕返しをなさるのですそ、そしてお父さんより男に に配されし他の人〔「テ。 ( イ攻めの七人」〕のことを語るべきでは なるのですぞ、とけしかけるのだ。そして彼は外出すると、 、、、こ = 」し、計画によ 0 て〔 嫗矼〕むしろ国の方を先 他にそのようなことを聞き、また国の中で自分自身のこと きに、ね」 をやっている人々はお人好しと呼ばれて、人に物の数にも「ええ、全くです」と彼は言った。 入れられていなしが 、、、、しかし自分自身のことをやらない人「ところが、私の思うところでは、そのような国制の次の 人は尊敬され賞讃されているのを見る。こういう次第で、 は寡頭制だろう」 若者は、一方ではすべてそのようなことを聞いたり見たり 「しかし」と彼は言った、「どのような組織のことを寡頭 し、他方では父親の言葉を聞いたり、近くから父親の行な 制と仰っしゃいますか」 いを見たりして、他の人々のそれとひきくらべるうちに、 「財産評価による国制のことだ、そこでは金持ちたちは支 これらの両方によって、すなわち、一方魂のうちの思惟的 配権を持っているが、貧乏人は支配権に与からないのだ」 部分に水を注いで大きく育てる父親自身と、他方欲望的部「わかりました」と彼は言った。 分と気概的部分とにそうする他の人々とによってひつばら 「それでは、初めに栄誉制から寡頭制へどういう風にして れる。彼は生まれつきは悪い人間ではないが、他の人々と変化するかということを、語らなければならぬのではない の悪い交わりをしてきたことのために、この両方によって ひき寄せられてその真中にやってきたのだ、そして自分の うちにおける支配権を、真中の愛勝的な気概的部分に譲り 「ところがさ」と私は言った、「どういう風にして変化す めくら 渡し、かくて高慢な愛誉的な人間になったのだ」 るかは、盲にだって明らかなんだよ」 「たしかに」と彼は言った、「あなたはこの人の生い立ち 「どういう風にしてですか」 をお話し下さったように私は思います」 「お倉がさ」と私は言った、「あのめいめいの持っている 「それでは」と私は言った、「われわれは第二の国倒と第黄金のいつばいつま 0 た奴がさ、このような国制を亡ぼす 二の人間とを持っているわけだ」 んだよ。というのは先す第一に、彼らは自分たちのために 「持っています」と彼は言った。 それの使い途を見つけ出して、法律をそれに都合のいいよ うに曲げていくからだよ、彼ら自身も彼らの妻たちも守っ